結論
不二ラテックスは、ドアや便座を静かに閉めるダンパーと、コンドームなどのゴム製品をつくる栃木の会社だ。筆者の結論は「やや割高」。ダンパーの稼ぎは強いが、借金と本社費がその果実を吸い取る。
稼ぎの源は精密機器事業だ。売上は44億円で、利益率は23%に達する。ただ全社の営業利益は4億円しかない。本社などの費用が年5億円あり、赤字の食品容器や医療機器の穴も重い。ダンパーの利益の半分が、全社の費用に消える構造だ。
財務は重い。純有利子負債は28億円で、時価総額と同じ額だ。工場の再編と栃木の新拠点に投資が続き、借入契約には、経常損益を2期連続で赤字にしないという条件が付く。利益が少し崩れると、財務が揺らぐ。
それでも楽観の余地はある。精密機器の受注は2期続けて伸び、工場の統合で固定費は下がる見込みだ。10年の期待は年率5%台で資本コストを下回り、悲観の下値は薄く、やや割高と見る。
利益の質も見ておきたい。前期の純利益は0.6億円で、工場の再編費用と1.7億円の減損が重なった。会社は来期に純利益2.9億円を見込むが、これは再編費用が消える前提の数字で、構造改革が計画どおり進むかが最大の焦点になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い製品に、重い荷物が付いている」。ダンパーは利益率が高いが、全社の費用と借金が、その果実を株主から遠ざける。
オーナー利益(株主が自由に使える利益)は、設備の更新と工場の再編に使われる。減価償却の2.9億円を超える設備投資が続き、配当は純利益を超えている。借金で配当を払う形が続けば、長くは持たない。
経営の資本配分には評価できる点がある。不採算の製造をやめ、工場を統合する決断は、痛みを伴う正しい動きだ。ただ、借金を減らし、ダンパーの利益を全社に届かせる道は、まだ途中にある。
安全域は薄い。期待の年率は5%台で資本コストを下回り、悲観では財務制限条項が働く。売買を急ぐ理由はなく、精密機器の利益が全社に届く確認を待つのがよい。
要するに、事業の質は悪くないが、財務の質が足を引っ張る。借金を減らして初めて、ダンパーの利益が株主に届き始める。
何で稼ぐ会社か
精密機器事業が売上の65%、利益の大半を占める。ダンパーと緩衝器は、ドア・引き出し・便座・自動車の内装などが勢いよく閉まるのを防ぐ部品だ。顧客の機器に組み込まれ、一度採用されると長く使われる。
医療機器事業は、コンドームなどのゴム製医療機器だ。2025年に栃木工場でのコンドーム製造をやめ、OEMを軸に続ける。売上は前期に16%減ったが、コスト構造の改善で赤字を抜けた。
食品容器事業は国内最大手をうたうが、売上は2億円ほどで赤字が続く。SP事業(風船)は売上が8割近く減り、縮小の途上にある。この2つの赤字は、全社の足を引っ張っている。
生産は栃木県に集中する。4つの工場を2つに減らす再編の途中で、真岡工場は2027年3月期に統合する。精密機器の次世代拠点の用地も、栃木インター産業団地に確保した。
従業員は253人。上位3社の販売先が売上の37%を占める。子会社は国内販売の不二ライフと、中国の販売会社の2社だ。
売上の地域は国内が中心で、海外は中国の販売子会社を通じた小さな規模にとどまる。原材料は天然ゴム・シリコン・樹脂で、価格の変動が採算に響く。受注から出荷までの期間は短く、在庫は適正に保たれている。
優良さと弱いところ
筆者は、堀(他社がまねできない強み)は「普通」と見る。ダンパーは一度採用されれば、顧客の機器の設計に組み込まれ、乗り換えに時間がかかる。ただ、小型のダンパーでは、TOKなど国内外の競合が同じ市場を狙う。
精密機器の数字は力強い。利益率は前期に23%まで上がり、受注残も2割近く増えた。静音と緩衝を両立する製品の開発に、研究費の8割を回している。
弱みは全社の費用構造だ。本社費などが年5億円あり、赤字の事業が2つある。全社の営業利益率は6%で、精密機器の23%とは大きく離れる。この差を縮められるかが、会社の評価を決める。
経営は、不採算のコンドーム製造をやめ、工場を統合する決断をした。痛みを伴う構造改革を実行した点は評価する。一方、借入には財務制限条項が付き、純資産を前年から2割以上減らせない。経営の自由度は低い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ダンパーの需要は、住宅設備・家電・自動車の生産で決まる。国内の住宅と家電は成熟しており、量は伸びにくい。自動車の内装は、電動化で内装の質感が重視され、静音・高級感のためのダンパーが増える。
小型ロータリーダンパーの世界市場は、約7,000万米ドルの小さな市場だ。調査会社は年6%台の伸びを予測するが、名目の数字で、数量では3%台と見る。国内最大手の座を維持できても、市場そのものが小さい。
競合のTOKは、直径8ミリの世界最小級のダンパーを2025年に出し、高級家具や住設に狙いを定める。小型化と静音で競争が進み、新製品の開発力が価格を決める。中国のメーカーが低価格品で追い上げる動きもある。
医療機器のコンドーム市場は、国内で縮小が続く。オカモトなどの大手が主導し、OEMを軸にする不二ラテックスは、受託の価格競争にさらされる。栃木の生産集中は、災害のリスクにもなる。
業界の構造として、ダンパーは「小さな部品だが止まると困る」性格を持つ。顧客は設計を変えたがらず、一度の採用が数年単位の取引につながる。ただ裏を返せば、新規の採用を逃すと数年間は挽回できず、開発力の差がそのまま売上の差になる。
資本政策と M&A
還元は、DOE(株主資本配当率)2.8%以上を目安に置く。2026年3月期の配当は総額1.0億円で、純利益を超えた。来期は少し増える予想だ。配当は純利益が薄い年でも下げない方針を示している。
投資は工場の再編に集中している。栃木工場を閉め、栃木千塚工場へ統合し、真岡工場も統合する。設備投資は年に3〜4億円で、減価償却をやや上回る。借入はシンジケートローンが2本あり、土地と建物を担保に入れている。
財務制限条項は重い。連結純資産を前年同期の75%以上に保つことと、経常損益を2期連続で赤字にしないことが条件だ。抵触すると期限の利益を失う恐れがある。会社は35億円のコミットメントラインも持つ。
大株主は個人が上位5名で46%を占める。オーナー色が強く、TOBやMBOの可能性はゼロとは言えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
精密機器は受注が2期続けて伸び、利益率は23%まで上がった。自動車の内装と住設で静音と緩衝の要求が高まり、数量と価格の両方が伸びる。次世代拠点が稼働すれば、供給の制約も外れる。
全社の費用は、工場の統合で下がる。栃木工場の閉鎖で製造費が減り、真岡工場の統合でさらに減る。赤字の食品容器とSP事業は縮小・撤退で、赤字が止まる。全社の営業利益率は、会社予想の7%から8%台へ上がる余地がある。
借金は、利益の積み上がりで減る。純有利子負債は2年で3億円減っており、この流れが続けば、財務の重さは和らぐ。PBRは0.63倍と、資産の裏づけも厚い。栃木の土地と本社ビルの含み益を考えれば、下値も固い。
加えて、会社が掲げる配当方針は株主還元への姿勢を示す。業績が戻れば、配当の水準はそのまま増配の余地に変わる。
医療機器はOEM中心に切り替えて固定費が軽くなり、少量でも黒字を保てる体質になった。精密機器の伸びに加え、この下支えが全社の利益を押し上げる。
慎重な見方
全社の営業利益は4億円しかなく、純有利子負債は28億円だ。借金の返済に十数年かかる。利息が上がる局面で、営業利益の3割が利払いに消える。
精密機器の23%という利益率は、前年の17%から急に上がった数字で、持続するかは分からない。顧客の上位3社で売上の37%を占め、1社が離れれば揺らぐ。小型ダンパーはTOKなどが追い、価格競争に巻き込まれる恐れがある。
財務制限条項が、手足を縛る。経常損益を2期連続で赤字にしない条件があり、利益が少し崩れるだけで抵触する。配当は純利益を超え、借金で払っている。生産が栃木に集中する災害リスクも、保険では防ぎきれない。
新しい拠点の投資は、物価高で建築費が膨らみやすい。投資の回収が遅れれば、借金の返済はさらに先送りになる。
医療機器も、受託の価格競争にさらされ続ける。OEMは顧客の発注次第で数量が動き、自社の意思では売上を作れない。
本社費の年5億円は、売上が伸びなくても物価で膨らむ固定費で、精密機器の増益を毎年削っていく。
どちらに重みを置いたか
ほぼ互角だ。精密機器の強さは本物だが、借金と本社費の重さも本物だ。そのため確率は中立を軸に、やや楽観22%・やや悲観22%と対称に置いた。悲観は財務制限条項の働きを考えて10%、楽観は条件の多さから8%にとどめた。期待の年率は5%台で、資本コストを下回る。楽観の根拠は精密機器の実績、悲観の根拠は財務の構造で、どちらも数字に裏づけがある。判断の分かれ目は、全社費用が工場統合でどこまで減るかにある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,200 円41 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 850 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 1,981 円25 億円、今との差 +0.2%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 7,623 円97 億円 | 1,570 円20 億円 | +365.0% | +16.6% | 735 円9 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,995 円63 億円 | 1,176 円15 億円 | +212.1% | +12.1% | 1,358 円17 億円 |
| 中立 | 38% | 3,377 円43 億円 | 900 円11 億円 | +116.3% | +8.0% | 1,625 円21 億円 |
| やや悲観 | 22% | 765 円10 億円 | 473 円6 億円 | −37.3% | −4.6% | 273 円3 億円 |
| 悲観 | 10% | 395 円5 億円 | 197 円3 億円 | −70.1% | −11.4% | 59 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,200 円41 億円 | 850 円11 億円 | +104.9% | +7.4% | 4,050 円51 億円 |
今の株価時価総額 1,977 円25 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 自動車の内装と住設で伸び、全社の費用も下がる 利益 8 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 7,623 円97 億円
電動化で自動車の内装に静音ダンパーが広がり、住設・家電の高級品にも採用が増える。精密機器の出荷は今の1.3倍になり、売値は物価並みに上がる。
次世代拠点が稼働し、供給の制約が外れる。工場の統合で全社の費用が抑えられ、利益率は21%を保つ。赤字の食品容器は黒字化し、SP事業は撤退を終える。
営業利益は12億円近くまで伸び、借金は返済で半分以下になる。配当は増え、財務制限条項への不安は消える。会社が掲げる成長がすべて実現する筋書きだ。
成長が重なれば、10年後の姿は今の会社とは別物になる。精密機器が稼ぐ利益が、はじめて株主にまで届く。
- 精密機器事業(ダンパー・ショックアブソーバ):数量 2,600(出荷個数(万個、推定))× 価格 295(1個あたり売値(円、推定))→ 売上 77 億円・営業利益 16 億円。利益率21.0%
- 医療機器事業(コンドーム・メディカル製品):数量 440(出荷点数(万点、推定))× 価格 670(1点あたり売値(円、推定))→ 売上 29 億円・営業利益 2 億円。利益率7.0%
- 食品容器事業:数量 900(出荷個数(万個、推定))× 価格 27(1個あたり売値(円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。利益率2.0%
- SP事業(風船・販促品):数量 0.0(出荷個数(万個、推定))× 価格 27(1個あたり売値(円、推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.8 倍、時価総額 97 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:実現の条件が多い上振れ。8%にとどめた。
やや楽観 22% 精密機器が着実に伸び、借金が減る 利益 5 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 4,995 円63 億円
精密機器の出荷は今の2割強増え、利益率は19%に保たれる。栃木の統合で全社費用の増え方が抑えられ、医療機器は小さな黒字を保つ。
食品容器は統合で赤字が縮み、SP事業は撤退する。営業利益は9億円近くになり、借金の返済が進む。
配当はDOEの目安を守る。強気の主張がほぼ当たる筋書きで、ROEは資本コストにわずかに届かない水準まで上がる。
派手ではないが、借金が減り財務の制約が外れる分だけ、株主の取り分は目に見えて増える。
医療機器は小さな黒字を保ち、食品容器の赤字も統合で縮む。全社の費用が売上の伸びに追いつかれ、営業利益率は少しずつ改善していく。
- 精密機器事業(ダンパー・ショックアブソーバ):数量 2,450(出荷個数(万個、推定))× 価格 293(1個あたり売値(円、推定))→ 売上 72 億円・営業利益 14 億円。利益率19.0%
- 医療機器事業(コンドーム・メディカル製品):数量 420(出荷点数(万点、推定))× 価格 670(1点あたり売値(円、推定))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。利益率6.0%
- 食品容器事業:数量 800(出荷個数(万個、推定))× 価格 27(1個あたり売値(円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。利益率0.0%
- SP事業(風船・販促品):数量 0.0(出荷個数(万個、推定))× 価格 27(1個あたり売値(円、推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 63 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:精密機器の高い利益率が続き、借金が計画どおり減る筋書き。
中立 38% 精密機器は伸びるが、全社費用が果実を吸い取る 利益 4 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,377 円43 億円
精密機器の出荷は今の1.15倍で、売値は物価に遅れ、1.3倍になる。利益率は18%と、前期の23%よりも落ち着く。医療機器はOEM中心で小さな黒字、食品容器は小さな赤字が続く。SP事業は撤退する。
全社費用は物価で増え、6.5億円になる。営業利益は6.6億円と、前期の1.6倍だが、売上比では7%にとどまる。
利払いは借り換えで増え、純利益は3.4億円ほど。配当はDOEの目安を守り、借金は少しずつ減る。ROEは資本コストを下回る、地味な10年である。
結局のところ、ダンパーの稼ぎ力と全社費用・借金の重さが打ち消し合い、資本コストにわずかに届かない水準で落ち着く。
- 精密機器事業(ダンパー・ショックアブソーバ):数量 2,300(出荷個数(万個、推定))× 価格 286(1個あたり売値(円、推定))→ 売上 66 億円・営業利益 12 億円。利益率18.0%
- 医療機器事業(コンドーム・メディカル製品):数量 400(出荷点数(万点、推定))× 価格 670(1点あたり売値(円、推定))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。利益率5.0%
- 食品容器事業:数量 800(出荷個数(万個、推定))× 価格 27(1個あたり売値(円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。利益率-1.0%
- SP事業(風船・販促品):数量 0.0(出荷個数(万個、推定))× 価格 27(1個あたり売値(円、推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 43 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社予想(営業利益率7%)の延長で、精密機器が着実に伸びる中心の筋書き。
やや悲観 22% 価格競争で精密機器の利益率が落ち、赤字に近づく 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 765 円10 億円
小型ダンパーの価格競争が強まり、上位の販売先の1社が調達先を分散する。精密機器の利益率は14%に下がり、売値も物価に追いつかない。
全社費用は物価で増え続け、営業利益は1億円台前半に落ちる。利払いが増え、経常損益は赤字に近づく。財務制限条項への余裕が薄れ、配当は据え置きか減配になる。
構造的に地盤を失い、もう優良ではなくなっている筋書きだ。栃木の遊休地を売って借金を減らす。
この筋書きでは、会社は存続するが、株主に回る利益はほとんど残らない。財務の条件が経営の選択肢を狭め続ける。
医療機器は受託の価格競争で薄利に沈み、食品容器の赤字も残る。リストラで固定費は減るが、精密機器の利益減を埋めるには足りない。
- 精密機器事業(ダンパー・ショックアブソーバ):数量 2,000(出荷個数(万個、推定))× 価格 282(1個あたり売値(円、推定))→ 売上 56 億円・営業利益 8 億円。利益率14.0%
- 医療機器事業(コンドーム・メディカル製品):数量 370(出荷点数(万点、推定))× 価格 650(1点あたり売値(円、推定))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。利益率3.0%
- 食品容器事業:数量 700(出荷個数(万個、推定))× 価格 26(1個あたり売値(円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。利益率-3.0%
- SP事業(風船・販促品):数量 0.0(出荷個数(万個、推定))× 価格 27(1個あたり売値(円、推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退
倍率:営業利益が小さく利払い後は赤字に近いため、稼ぐ力で測れず PBR で置く。借金が重く、資産は担保に入っているため、減損後の自己資本36億円に0.27倍(約10億円)。今の自己資本40.5億円に対しては0.24倍で、中立より低い。
確率:小型ダンパーの価格競争と上位顧客の離反で、利益率が落ちる筋書き。
悲観 10% 財務制限条項に抵触し、精密機器の利益も崩れる 利益 −5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 395 円5 億円
電動化で機械式ダンパーの一部が置き換わり、中国メーカーの低価格品が広がる。精密機器の出荷は2割減り、利益率は8%に落ちる。
全社費用は変わらず、営業赤字になる。経常損益が2期連続で赤字になり、財務制限条項に抵触して、借入の返済を迫られる。配当は止まり、土地と工場の売却が進む。
価値は、担保に入った土地と建物から借入を引いた残りまで落ちる。清算されない限り少数株主は資産の使い道を決められない。
最悪のケースでも、土地と建物という実物資産が残るため、価値がゼロになるわけではない。ただし株主の取り分は借入の返済後の残りに限られる。
- 精密機器事業(ダンパー・ショックアブソーバ):数量 1,600(出荷個数(万個、推定))× 価格 264(1個あたり売値(円、推定))→ 売上 42 億円・営業利益 3 億円。利益率8.0%
- 医療機器事業(コンドーム・メディカル製品):数量 300(出荷点数(万点、推定))× 価格 625(1点あたり売値(円、推定))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。利益率0.0%
- 食品容器事業:数量 500(出荷個数(万個、推定))× 価格 24(1個あたり売値(円、推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。利益率-5.0%
- SP事業(風船・販促品):数量 0.0(出荷個数(万個、推定))× 価格 27(1個あたり売値(円、推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退
倍率:稼ぐ力は赤字で、床は売れる資産から借入を引いた残りで測る。累積の赤字と減損で自己資本が20億円まで減り、土地・建物は担保に入っているため、0.25倍(約5億円)。今の自己資本40.5億円に対しては0.12倍。
確率:電動化での置き換えと価格競争が重なり、財務制限条項が働く筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
精密機器事業(ダンパー・ショックアブソーバ)
ドアや便座、引き出し、自動車の内装部品などの動きをなめらかに止める、ダンパーと緩衝器。栃木で作り、住宅設備・家電・自動車・産業設備に売る。
| 数量出荷個数(万個、推定) | 価格1個あたり売値(円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 220 | 44 | 10 |
| 10 年後 中立 | 2,300 | 286 | 66 | 12 |
取り方:売上44.0億円(前期比+8.1%)・セグメント利益10.2億円(利益率23%)。受注高は38.2億円、受注残9.2億円。個数は開示がなく、1個あたりの売値は約220(ロータリーダンパーと大型のショックアブソーバの平均、推定)と置いて逆算した。前期は利益が3億円伸びた。
医療機器事業(コンドーム・メディカル製品)
コンドームなどのゴム製医療機器とヘルスケア商品。栃木工場での製造をやめ、OEM(他社ブランドの受託)を軸に続ける。
| 数量出荷点数(万点、推定) | 価格1点あたり売値(円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 425 | 500 | 21 | 1 |
| 10 年後 中立 | 400 | 670 | 27 | 1 |
取り方:売上21.3億円(前期比−15.8%、製造停止の影響)・セグメント利益0.6億円(利益率2.8%)。1点あたり約500(推定)として点数を逆算した。コスト構造の改善で、赤字を抜けた。
食品容器事業
ゴム製の食品容器。国内最大手をうたうが、規模は小さく赤字が続く。
| 数量出荷個数(万個、推定) | 価格1個あたり売値(円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 910 | 20 | 2 | −1 |
| 10 年後 中立 | 800 | 27 | 2 | 0 |
取り方:売上1.8億円(前期比−14.0%)・セグメント損失1.2億円。1個あたりの売値は約20(推定)と置いた。真岡工場は2027年3月期中に栃木へ統合する予定で、統合の費用が重い。
SP事業(風船・販促品)
ゴム風船やフィルムバルーン。売上が急減し、縮小・撤退の途上にある。
| 数量出荷個数(万個、推定) | 価格1個あたり売値(円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 430 | 20 | 1 | −1 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 27 | 0 | 0 |
取り方:売上0.9億円(前期比−77.7%)・セグメント損失0.5億円。1個あたりの売値は約20(推定)と置いた。10年のうちに撤退すると見て、中立の筋書きでは売上を置かない。
リスクと懸念
借金の重さと財務制限条項
純有利子負債は28億円で時価総額と同じ額。シンジケートローンには、連結純資産を前年の75%以上に保つこと、連結経常損益を2期連続で赤字にしないことが付く。抵触すれば期限の利益を失う恐れがある。
精密機器への依存と顧客の集中
利益の大半を精密機器が稼ぐ。上位3社で売上の37%を占め、1社が調達先を分散するだけで利益が動く。前期の利益率23%は、前々期の17%から急に上がった数字で、続くかは分からない。
小型ダンパーの競争と置き換え
TOKなどが小型で静音のダンパーを出し、中国メーカーが低価格品で追い上げる。電動化や電子制御の部品に置き換わる可能性もある。製品の寿命は読みにくい。
本社費と赤字事業
全社の費用は年5億円ほどで、食品容器とSP事業の赤字も重い。物価で費用が増えれば、精密機器の利益の伸びが吸い取られる。統合と撤退が計画どおり進むかが鍵になる。
栃木への生産集中と設備の老朽化
生産が栃木県に集中し、地震や水害で止まる恐れがある。一部の工場は老朽化しており、統合と新拠点の投資は、物価で上がる建築費で膨らむ。
原材料の価格と供給
シリコンオイル、樹脂、天然ゴムなどの価格は上がり続け、供給が滞る恐れがある。顧客に転嫁できるかは、販売先との交渉に左右される。
今後の分かれ目
- 精密機器の利益率が2期続けて20%を超える
- 前期の23%が一時的でない証拠になる。やや楽観・楽観の確率を上げてよい。
- 経常損益が赤字に転じる
- 財務制限条項への距離が縮む。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 純有利子負債が年2億円以上のペースで減る
- 財務の重さが和らぐ。k の debt を見直してよい。
- 上位の販売先の売上比率が大きく動く
- 顧客の集中リスクが現実になる。売上の筋書きを見直す。
- 旧栃木工場や物流倉庫跡地の売却が発表される
- 遊休資産の現金化で借入が減る。価値を別に足す根拠になるか、金額と時期を確かめる。
見ておくもの
- 精密機器の受注高と受注残(前期38.2億円・9.2億円)
- 精密機器の営業利益率(前期23%)
- 純有利子負債と経常損益(財務制限条項)
- 全社費用(本社費など)の増減
- 真岡工場の統合と次世代拠点の進み方
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROEが資本コストを下回る会社の上限1÷kを出発点に、借金が重く全社費用の影響が大きいことから上限の7〜8.5割に置いた。今の株価や同業の倍率からは置いていない。10年の利益は、精密機器と医療機器の出荷量と売値から積み、全社費用を物価で増やし、利払いを借り換えの3.5%で入れた。結果は今の値段に近く出たが、数字を寄せにいってはいない。減価償却は物価で増やさず、新拠点の償却は取得時の値段で足した。新リース会計基準(2028年3月期から)の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→12.8 倍・やや楽観 PER 9.1→11.76 倍・中立 PER 8.6→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.25% を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.50%。