結論
相模ゴム工業は、神奈川県厚木市のコンドームの会社だ。「サガミオリジナル」の0.01ミリのポリウレタン製品は、世界でも作れる会社が限られる技術である。筆者の結論は割高だ。技術は本物でも、それが株主の資本に見合う利益になっていない。
ヘルスケアの事業は売上の8割で、営業利益率は16%ある。ところが本社費が年5億円かかり、事業の利益の3分の2を食う。2026/03期の営業利益は2億円弱で、最終利益は為替差益に支えられた。工場の機械は帳簿で80億円あり、その償却も重い。
海外は伸びている。ポリウレタン製品の海外の数量は1年で1.4倍になり、中国向けの越境ECと東南アジアが支える。中期経営計画は2030年に営業利益10億円、ROE 12.5%を掲げる。だが2017/03期の山から利益が崩れた経緯を見ると、その再現を前提にはできない。筆者は、ROEが資本コストの半分ほどにとどまる姿を中心に見る。物言う株主が1割前後を持つことは、上振れの材料として残る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、相模ゴム工業は「良い製品を持つ、稼げない会社」だ。0.01ミリの技術は本物で、世界でも作れる会社は少ない。それでも株主にとって大事なのは、その技術がどれだけの利益を生むかである。
今の会社は、資本に対して資本コストの半分ほどしか稼げていない。本社費と設備の償却が重く、売上が数%揺れると利益が消える。帳簿の自己資本は116億円あるが、その多くは機械と工場で、稼ぐ力に変わっていない。帳簿の6割という値段は、安いように見えて、稼ぐ力からみれば高い。
オーナーとして持ち続けたいかと問えば、慎重になる。技術の堀は狭まりうるし、需要は中国の規制と流行に振られる。安全域を言えるのは、物言う株主が会社を動かし、本社費と借金が減った時だ。今はその手前にある。
逆に言えば、本社費と借金が減れば、技術の価値が利益に出てくる。そこが見直しの分かれ目になる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱はヘルスケアで、売上の8割を占める。ポリウレタン製と天然ゴム製のコンドーム、潤滑ゼリー、哺乳ボトルなどを作る。中でもポリウレタン製の薄い製品が看板だ。天然ゴムを使わないのでゴムのにおいやアレルギーが無く、熱を伝えやすい。薄く均一に作るには長年の製造の技術が要り、まねは簡単ではない。
売り先は、国内のドラッグストアとディスカウント店、ECのマーケットプレイス、そして海外だ。国内の店頭は細っているが、訪日客の買いとECが伸びている。海外は中国向けの越境ECと東南アジアの販売店が中心で、ポリウレタン製品の数量のうち4割超が海外向けになった。
残りはプラスチックで、食品や医療向けのフィルムと袋、加工品を作る。売上は12億円ほどで、赤字を半分以下に縮めた途中にある。介護のサービスなど採算の悪い事業は2025年に譲渡・閉鎖した。
生産は厚木の本社工場が中心で、機械の帳簿の価値は80億円を超える。毎年7億円ほどの償却が出る、設備の重い事業だ。
数量の開示は無いが、売上から推して年に8,000万個前後を売るとみる。ポリウレタン製は1個の値段が天然ゴム製の数倍で、比率が上がるほど売上が増える。
優良さと弱いところ
製品の質は高いが、会社としての資本の質は低いとみる。ポリウレタンの薄い製品は、国内ではオカモトと並ぶ二強で、技術の差は今も残る。値上げを通して原価の上昇を吸収できたのは、ブランドの力の表れだ。
弱さは3つある。1つ目は本社費の重さで、年5億円の全社費が事業の利益の3分の2を食う。売上60億円の会社には重すぎる。2つ目は設備の重さで、機械に80億円を投じ、償却が利益を圧迫する。3つ目は利益の振れだ。2017/03期に29%あった営業利益率は、中国の需要の山が過ぎて数年でほぼゼロになった。
財務も強くない。短期の借入が52億円あり、営業利益は支払利息の1.5倍ほどしかない。金利が上がれば利払いはさらに増える。経営は創業家が担い、2025年に親から長男へ社長が代わった。社外の取締役を入れ替え、意思決定を強めると言う。物言う株主が株を持ち、資本の使い方に外から圧力がかかっている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のコンドームの市場は、ゆっくり縮む。使う世代の人口が減り、若い世代の性行動も細っている。業種ノートでは、国内は人口減で縮み、海外の伸びが主軸になるとみる。筆者は国内の数量が10年で15%ほど減るとみる。
伸びるのはアジアだ。中国と東南アジアでは、日本の薄い製品が高品質の品として売れる。中国向けは越境ECが入口で、規制と現地の競合に左右される。2017年ごろには訪日客の爆買いで需要が膨らみ、その後しぼんだ。同じ山と谷を、筆者はまた起こりうるとみる。
競争は国内ではオカモトとの二強だ。両社とも0.01ミリの製品を持ち、店頭の棚と値引きで争う。海外では世界大手のデュレックスなどの英米のブランドと、中国やマレーシアの安いメーカーがいる。中国のメーカーが薄い製品を作れるようになれば、日本の2社の差は縮む。
原料の天然ゴムとポリウレタン樹脂の値段、電気代と人件費は物価で上がる。値上げが通るかどうかが利益を決める。
医療と衛生の需要という面もある。性感染症の予防の啓発や、避妊の手段としての位置づけは、新興国で需要を下支えする。ただ、それは安い天然ゴム製の需要で、相模ゴムの得意な高い製品とは重ならない。
資本政策と M&A
配当は据え置きで、利益に関係なく毎年1億円ほどを払う。自社株買いの実績はほとんど無い。借入は短期が中心で、毎年少しずつ返している。投資有価証券は13億円あり、取引先などの株を持つ。
株主の顔ぶれが特徴的だ。創業家が合わせて2割ほどを持つ一方、物言う株主のオアシス・マネジメントが1割近くを持つと大量保有報告書で届け出ている。米国の証券会社名義の口座も1割強ある。創業家と外の株主の間で、資本の使い方が争点になりうる。
買収の面では、物言う株主が会社の売却や非公開化を求める道もある。その時は、土地と設備、技術の価値で値段が決まる。筆者が望むのは、本社費を削り、持ち株を売って借金を返すことだ。それだけでROEは目に見えて上がる。株主優待は無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
相模ゴム工業は、世界でも数少ない技術を帳簿の6割で買える会社だ。0.01ミリのポリウレタン製品は、作るのに長年の製造の技術が要り、まねは簡単ではない。国内ではオカモトとの二強で、値上げを通して原価の上昇を吸収できた。
海外は伸び始めた。ポリウレタン製品の海外の数量は1年で1.4倍になり、比率は4割を超えた。中国向けの越境ECと東南アジアの販売店は、まだ入口にすぎない。2017/03期には営業利益率29%を出した実績がある。需要の波が戻れば、利益は数倍になる。
会社も変わり始めた。採算の悪い介護の事業を手放し、プラスチックの赤字を半分以下にした。中期経営計画は2030年に営業利益10億円、ROE 12.5%を掲げる。
物言う株主も味方だ。オアシス・マネジメントが1割近くを持ち、本社費の削減や持ち株の売却、会社の売却を迫りうる。土地と設備と技術を合わせれば、今の値段より高く買う相手はいるはずだ。
慎重な見方
技術が良くても、株主は儲からない。ヘルスケアの利益の3分の2を本社費が食い、2026/03期の営業利益は2億円弱だった。最終利益は為替差益に支えられた。今期も会社は最終利益を1億円未満と見込む。
2017年の山は再現しにくい。あの利益は訪日客の爆買いという一時の波で、波が引くと数年で利益はほぼ消えた。今の越境ECの伸びも、中国の規制と現地の競合しだいで止まる。中国のメーカーが薄い製品を安く作れるようになれば、日本の2社の差は縮む。
国内は確実に縮む。使う世代の人口は減り、店頭ではオカモトと値引きで争う。
財務も弱い。短期の借入が52億円あり、営業利益は支払利息の1.5倍しかない。機械に80億円を投じたが、それを稼ぎに変えられていない。設備の更新は物価で高くなり、償却はむしろ増える。帳簿の6割という値段は、この稼げなさを考えれば高い。
物言う株主に期待するのも危うい。創業家が2割を持ち、会社の売却に応じる保証は無い。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。技術と海外の伸びは本物だが、本社費と設備の重さがそれを打ち消している。過去の利益の崩れを見れば、中期経営計画の数字を前提にはできない。中立に4割弱、やや悲観と悲観に合わせて3割強を置いた。物言う株主による会社の売却は、楽観側の上振れとして小さく残した。本社費の削減か、持ち株の売却による借金の返済が見えれば、確率を楽観側に寄せる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 655 円71 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 120 円13 億円)。 今の値に割り戻すと 402 円44 億円、今との差 −34.0%、 期待の年率 +2.4%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,723 円187 億円 | 228 円25 億円 | +220.4% | +12.3% | 156 円17 億円 |
| やや楽観 | 20% | 936 円102 億円 | 147 円16 億円 | +77.9% | +5.9% | 217 円24 億円 |
| 中立 | 37% | 702 円76 億円 | 120 円13 億円 | +34.9% | +3.0% | 304 円33 億円 |
| やや悲観 | 22% | 212 円23 億円 | 101 円11 億円 | −48.6% | −6.4% | 69 円7 億円 |
| 悲観 | 13% | 184 円20 億円 | 46 円5 億円 | −62.2% | −9.3% | 30 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 655 円71 億円 | 120 円13 億円 | +27.4% | +2.4% | 776 円84 億円 |
今の株価時価総額 609 円66 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 薄さの技術で海外が伸び、中計を超える 利益 14 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 1,723 円187 億円
0.01 ミリのポリウレタン製品が、アジアで定番になる筋書きだ。中国向けの越境 EC と東南アジアの販売網で、海外の数量は 10 年で 3 倍を超える。天然ゴムを使わないのでアレルギーの心配が無く、薄さで他社と差がつく。値段は物価以上に上げても通り、ヘルスケアの利益率は 2 割を超える。プラスチックは高付加価値の加工品に絞って黒字を保つ。本社費は事業の撤退で身軽になる。営業利益は 20 億円台に乗り、中計の目標を数年遅れで上回る。物言う株主の圧力で還元も厚くなる。それでも本社工場と設備の重さで、ROE は資本コストに並ぶところで止まる。
- ヘルスケア(コンドーム・潤滑ゼリー):数量 120(販売数量(百万個・推定))× 価格 0.92(1 百万個あたりの売上(億円。今は 1 万個あたり 60 万円相当で、ポリウレタンの比率と値上げを含む名目))→ 売上 111 億円・営業利益 26 億円。推定 1.2 億個(今の 1.54 倍)× 1 万個 92 万円相当(物価 1.34 倍 × ポリウレタンの比率上げ 1.15 倍)、利益率 23.5%
- プラスチック:数量 3,000(出荷量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円。今は 40 万円相当))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。推定 3,000 トン × 1 トン 54 万円相当(物価 1.34 倍)、利益率 2%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 187 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ポリウレタンの海外数量が 1 年で 1.4 倍になった勢いが 10 年続き、中計の利益率 12.5% を超える筋書き。2017/03 期に営業利益率 29% を出した実績はあるが、その後の崩れも大きかったので 1 割未満に止めた。
やや楽観 20% 中計の後ろ倒しで利益が戻る 利益 8 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 936 円102 億円
中期経営計画の目標に、数年遅れで近づく筋書きだ。国内のドラッグストアの店頭は細るが、EC とディスカウント店、訪日客の買いで数量を保つ。海外はポリウレタンの数量が 2 倍に増え、売上の 4 割を超える。値上げは物価並みに通り、ポリウレタンの比率が上がって 1 個あたりの売上も増える。ヘルスケアの利益率は 2 割に届く。プラスチックは収支とんとんに戻る。本社費は物価で増えるが、事業の整理で伸びを抑える。営業利益は 10 億円を超え、借金の返済も進む。それでも ROE は資本コストの 6 割ほどにとどまり、設備の重さが資本の稼ぎを抑える。
- ヘルスケア(コンドーム・潤滑ゼリー):数量 100(販売数量(百万個・推定))× 価格 0.88(1 百万個あたりの売上(億円。今は 1 万個あたり 60 万円相当で、ポリウレタンの比率と値上げを含む名目))→ 売上 88 億円・営業利益 18 億円。推定 1 億個(今の 1.28 倍)× 1 万個 88 万円相当(1.34 倍 × 1.10 倍)、利益率 20%
- プラスチック:数量 2,900(出荷量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円。今は 40 万円相当))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。推定 2,900 トン × 54 万円相当、利益率 1%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 102 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の 2030 年の目標(営業利益 10 億円)に、数年遅れで近づく筋書き。直近の値上げと海外の伸びは本物だが、本社費の重さが変わらないので 2 割とした。
中立 37% 海外の伸びで国内の縮みを埋めるが、本社費が重い 利益 6 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 702 円76 億円
国内のコンドームの数量は、若い世代の人口減で 10 年に 15% ほど減る。その分をアジア向けのポリウレタン製品で埋め、全体の数量は 2 割強増える。値段は物価並みに上がり、ポリウレタンの比率が上がる分だけ少し上乗せになる。ヘルスケアの利益率は 18% と今より少し高い水準に落ち着く。設備は更新のたびに物価の分だけ高くなり、減価償却は今の年 7 億円から少しずつ増える。プラスチックは利益をほとんど生まない。本社費は物価で増え、事業の利益の 4 割を食い続ける。営業利益は 9 億円弱、ROE は 4% 前後だ。会社は続くが、帳簿の価値を稼ぎで正当化できない。
- ヘルスケア(コンドーム・潤滑ゼリー):数量 97.5(販売数量(百万個・推定))× 価格 0.84(1 百万個あたりの売上(億円。今は 1 万個あたり 60 万円相当で、ポリウレタンの比率と値上げを含む名目))→ 売上 82 億円・営業利益 15 億円。推定 9,750 万個(今の 1.25 倍)× 1 万個 84 万円相当(物価 1.34 倍 × 比率上げ 1.05 倍)、利益率 18%
- プラスチック:数量 2,700(出荷量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円。今は 40 万円相当))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。推定 2,700 トン(今の 0.91 倍)× 54 万円相当、利益率 1%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.9% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 76 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内は人口減で縮み、海外のポリウレタンで埋める業種ノートの中立どおり。オカモトの中立と同じ物差しで、もっとも起こりやすいとみた。
やや悲観 22% 海外の伸びが止まり、国内の店頭が細る 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 212 円23 億円
中国向けの越境 EC は、規制と現地の競合で伸びが止まる。国内はドラッグストアの店頭が細り、オカモトとの値引きの競争が続く。数量は今とほぼ同じで、値上げは物価に届かない。ヘルスケアの利益率は 13% に下がり、本社費を賄うと営業利益はわずかになる。借金は借り換えのたびに金利が上がり、利払いが利益をさらに削る。純利益は年 1 億円に届かず、配当は据え置きが精いっぱいだ。設備は重いが、それを稼ぎに変えられない。値段は、持っている株と土地と在庫を売って借金を返した残りに近づく。営業利益が小さいので、借金を足した事業の値段で見ても利益の 40 倍を超え、利益では値が付かない。物言う株主は売却を迫るが、創業家は応じない。
- ヘルスケア(コンドーム・潤滑ゼリー):数量 78.0(販売数量(百万個・推定))× 価格 0.75(1 百万個あたりの売上(億円。今は 1 万個あたり 60 万円相当で、ポリウレタンの比率と値上げを含む名目))→ 売上 59 億円・営業利益 8 億円。推定 7,800 万個(今と同じ)× 1 万個 75 万円相当(1.25 倍)、利益率 13%
- プラスチック:数量 2,400(出荷量(トン・推定))× 価格 0.00(1 トンあたりの売上(億円。今は 40 万円相当))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。推定 2,400 トン × 48 万円相当、利益率 −3%
倍率:ROE が 1% 未満で稼ぐ力(純利益÷k)は 10 億円ほど。EV÷営業利益は 40 倍を超え、利益では値が付かない筋書き。値段は床の資産(約 23 億、floor_assets_why)まで。今の自己資本 116 億に対し 0.20 倍。
確率:越境 EC の伸びが止まり、国内の店頭も細る筋書き。2023/03 期から 3 期で営業利益が 7 億円から赤字まで落ちた実績があるので、厚めに置いた。
悲観 13% 薄さの差が消え、設備が重荷になる 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 184 円20 億円
中国のメーカーがポリウレタンの薄い製品を安く作れるようになり、相模ゴムの技術の差が消える。海外の取引先は安い方に乗り換え、国内でも値下げの競争に巻き込まれる。国内の数量は人口減で 2 割減り、ヘルスケアの利益率は 1 桁に落ちる。本社費と設備の償却は残り、営業損益は赤字に沈む。借金の金利は上がり、純損益も赤字になる。配当は減らし、設備の一部は減損になる。創業家と物言う株主の間で会社の売却が話し合われても、買い手が払うのは土地と在庫と持ち株の価値ほどだ。厚木の工場は住宅地に近く、土地としての値打ちは残る。だが機械は薄い製品の専用で、ほかに転用しにくい。
- ヘルスケア(コンドーム・潤滑ゼリー):数量 62.0(販売数量(百万個・推定))× 価格 0.69(1 百万個あたりの売上(億円。今は 1 万個あたり 60 万円相当で、ポリウレタンの比率と値上げを含む名目))→ 売上 43 億円・営業利益 3 億円。推定 6,200 万個(今の 0.8 倍)× 1 万個 69 万円相当(1.15 倍)、利益率 8%
- プラスチック:数量 2,000(出荷量(トン・推定))× 価格 0.00(1 トンあたりの売上(億円。今は 40 万円相当))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。推定 2,000 トン × 46 万円相当、利益率 −5%
倍率:赤字なので PBR で置く。価値は稼ぐ力でなく床の資産で、赤字の年に削られた分を引いて約 20 億(floor_assets_why)。今の自己資本 116 億に対し 0.17 倍。
確率:中国や東南アジアのメーカーがポリウレタンの薄い製品で追いつき、相模ゴムの差が消える構造的な負け。単一の製品に頼る会社で、利益の崩れの実績もあるので 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ヘルスケア(コンドーム・潤滑ゼリー)
「サガミオリジナル」のポリウレタン製と天然ゴム製のコンドーム、潤滑ゼリー、哺乳ボトルなど。国内のドラッグストア・EC と、アジアへの輸出。
| 数量販売数量(百万個・推定) | 価格1 百万個あたりの売上(億円。今は 1 万個あたり 60 万円相当で、ポリウレタンの比率と値上げを含む名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 78.0 | 0.60 | 47 | 8 |
| 10 年後 中立 | 97.5 | 0.84 | 82 | 15 |
取り方:数量の開示は無い。ポリウレタン製(高い)と天然ゴム製(安い)、ゼリーを合わせて 1 万個あたり 60 万円相当と置き、売上 46.75 億円から約 7,800 万個と推定。セグメント利益は決算説明資料の値。
プラスチック
食品・医療向けのフィルム、袋、加工品。赤字を縮めている途中。
| 数量出荷量(トン・推定) | 価格1 トンあたりの売上(億円。今は 40 万円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,975 | 0.00 | 12 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2,700 | 0.01 | 14 | 0 |
取り方:出荷量の開示は無い。フィルムと加工品の平均を 1 トン 40 万円相当と置き、売上 11.90 億円から約 2,975 トンと推定。
リスクと懸念
中国の需要と越境ECの規制
海外の伸びは中国向けの越境ECに頼る。中国の通関や販売の規制が変われば、伸びは急に止まる。2017年の山のあとの急落は、需要の波に頼る危うさを示した。
技術の差の縮小
中国や東南アジアのメーカーが薄いポリウレタン製品を安く作れるようになれば、相模ゴムの差は消える。値段の競争に巻き込まれれば、ヘルスケアの利益率は1桁に落ちる。
本社費と設備の重さ
全社費は年5億円で、事業の利益の3分の2を食う。機械の帳簿は80億円あり、更新のたびに物価の分だけ高くなる。売上が少し落ちるだけで営業利益が消える体質だ。
借金と金利
短期の借入が52億円あり、営業利益は支払利息の1.5倍ほど。借り換えの金利が上がれば利払いが増え、純利益はさらに細る。持ち株の売却で返す手はある。
国内の市場の縮み
使う世代の人口が減り、国内の数量は10年で15%ほど減るとみる。ドラッグストアの店頭ではオカモトとの値引きの争いが続く。
今後の分かれ目
- ポリウレタン製品の海外の数量が2年続けて2割以上伸びたら
- 海外が国内の縮みを大きく上回る形が見える。やや楽観の確率を上げる。
- 本社費を年1億円以上削ると発表したら
- 事業の利益がそのまま残る形に近づき、中立の営業利益が上がる。
- 物言う株主が株主提案や会社の売却を求めたら
- 土地と設備と技術の価値で値段がつく道が開く。楽観側の上振れとして見る。
- 中国の越境ECの規制が強まったら
- 海外の伸びの前提が崩れる。やや悲観の確率を上げる。
- 投資有価証券を売って借入を返したら
- 利払いが減り、資本の使い方が変わった印になる。悲観の深さが浅くなる。
見ておくもの
- ヘルスケアのセグメント利益と全社費
- ポリウレタン製品の海外の数量と比率
- 短期借入金の残高
- 大株主(オアシス・マネジメントなど)の保有と提案
- 中期経営計画の年度目標に対する達成率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価から置いていない。10年後の事業のROEは楽観でもk 7.5%並みで、それ以外は大きく下回るので、正当化PERの上限は1÷k=12.5倍。利益の質(本社費の重さ・利益の崩れの実績)で7〜9割を選んだ。今のPBR 0.6倍は根拠にしていない。悲観は現金・持ち株の税後・在庫・厚木の土地・設備の処分価値から負債を引いた約20〜23億で置いた。新リース会計基準の影響は小さい(工場は自社保有)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.2→13.7 倍・やや楽観 PER 10→13.33 倍・中立 PER 8.75→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。