結論
櫻護謨は、消防ホースと防災の資機材、航空機やロケットの部品を作る会社だ。1918 年の創業で、東京・笹塚の旧本社工場の跡地にショッピングモールも持つ。
筆者の結論は「割安」の側だ。理由は航空宇宙の部品にある。三菱重工を主な客に、防衛と宇宙の需要が伸び、前の期の営業利益は 12 億円と倍近くに増えた。受注残も売上の 1.5 年分ある。
利益の質は以前より良くなった。航空宇宙の部品は、認定を取るのに何年もかかり、一度採用されると長く使われる。消防ホースは自治体が決まった周期で入れ替えるので、需要は景気に左右されにくい。
帳簿の外にも価値がある。笹塚のモールは時価 66 億円と、簿価の 3 倍だ。ただ賃料の利益は細く、売る方針も無いので、価値の中心には置かない。悪い時の床として見る。
弱みは三菱重工と防衛予算への依存だ。2021〜2023 年は営業利益率が 4% 以下の谷だった。それでも中立の筋書きで、利益で測った価値は今の値段を上回る。筆者は、防衛の需要が一巡しても、今の値段には安全域があると見る。
分かれ目は 2027 年度より先の防衛の予算と、三菱重工との取引の行方だ。そこが崩れない限り、地味な老舗の値段は稼ぐ力に比べて低い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「地味な二つの事業に、防衛の追い風が吹いている」形だ。10 年後も消防ホースは自治体に納められ、航空宇宙の部品は三菱重工の機体に載っているだろう。事業は今より強いと筆者は見る。
株主のものになる利益で見ると、設備の投資は年 2〜3 億円で、償却とほぼ同じだ。営業利益の多くが手元に残る。新しい事務棟の 10 億円は一度きりで、そのあとは利益が現金になる。今の工場の償却は取得した時の値段のままで、会計の利益は物価で少し膨らむ。
堀、つまり他社がまねできない強みは、航空宇宙の認定にある。ただ客は三菱重工に偏り、その先は国の予算だ。堀は深いが、狭い。
安全域は二つある。一つは中立の筋書きでも価値が今の値段を上回ること。もう一つは笹塚の土地だ。経営が売らない限り値段には効かないが、最悪の時の床になる。オーナーとして持つなら、防衛の予算の行方を見続けることになる。経営が土地と現金の使い道を株主に示せば、評価はさらに上がる。
何で稼ぐ会社か
売上 145 億円のうち、消防・防災が 57%、航空宇宙・工業用品が 39%、不動産賃貸が 4% だ。利益は逆で、営業利益の 6 割を航空宇宙が稼ぐ。
消防・防災は、消防ホース、消火栓のホース、吸管、救助の資機材、作業の安全機器を作る。主な客は全国の消防本部などの官公庁で、売上の 2 割にあたる。ビルや工場の消火栓のホースは民間に売る。自治体の入札で、国内首位の帝国繊維、芦森工業などと競う。前の期は売上が 21% 増え、受注残は 20 億円と 7 倍に膨らんだ。大口の更新の案件が入ったとみられる。
航空宇宙・工業用品は、官需の大型機の部品、エンジンの部品、民間機のシール、宇宙関連の製品、原油タンクのシールを作る。三菱重工が最大の客で、売上の 1 割を占める。1990 年にボーイングから複合材の工程の認定を受けた。売上 57 億円に対し、利益は 11 億円と利益率 19% に達した。受注残は 88 億円ある。
不動産賃貸は、子会社の二十一世紀が笹塚ショッピングモールを営む。1978 年に旧本社工場の跡地で開いた。土地は 8,603 平方メートルで、賃料は年 5 億円になる。
工場は栃木県の大田原製作所に集める。2027 年 7 月には 10 億円をかけた新しい事務棟が動き、省人化の設備も入れる。社員は連結で 351 人と小さな会社だ。研究開発には年 3 億円を使い、宇宙向けの量産の技術や、脱炭素の燃料を貯める設備のゴムを開発している。
優良さと弱いところ
強みは二つある。一つ目は航空宇宙の認定だ。航空機やロケットの部品は、安全のために客と国の認定が要る。取るのに何年もかかり、一度採用されると機体が飛ぶ限り同じ部品が使われる。新しい会社は入りにくい。
二つ目は消防ホースの安定した需要だ。ホースは使えば傷み、自治体は決まった周期で入れ替える。人口が減っても消防の装備は減らしにくい。景気にほとんど左右されない。
弱みも二つある。一つ目は客の偏りだ。航空宇宙の多くは三菱重工向けで、その先は防衛の予算にある。予算の方針が変われば、量は大きく揺れる。二つ目は消防の値決めだ。自治体の入札で、国内の 5 割を握る帝国繊維と競う。値段を自分で決める力は弱い。
利益の振れは大きい。2020 年 3 月期に 11 億円あった営業利益は、2022 年 3 月期に赤字に落ちた。前の期の 12 億円は、防衛の追い風の山の側にある。
財務は堅い。自己資本比率は 51% で、借入は 40 億円あるが手元の現金と株でほぼ賄える。経営は創業家の流れをくむ個人の大株主が支え、方針は保守的だ。自己資本利益率は直近 7% で、資本コストにわずかに届かない。笹塚の土地を低い利回りで持ち続けていることも、資本の効率を押し下げている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
防衛と宇宙は、10 年の追い風だ。国は 2023 年度からの 5 年間で防衛費を 43 兆円とし、それまでの 1.6 倍に増やした。装備の調達は増え、三菱重工の防衛・宇宙の売上は 2026 年 3 月期に初めて 1 兆円を超えた。受注も過去最高だ。
2027 年度より先も、防衛費を国内総生産の 2% の水準で保つ方針は変わりにくい。周りの国との緊張が続き、装備の更新は止めにくい。ただ増額の伸びは、2027 年度で一巡する。そのあとは横ばいに近い。
宇宙は伸びる市場だ。H3 ロケットの打ち上げが増え、民間の宇宙の事業も広がる。金属 3D プリンタで作る部品は、少ない数を高い精度で作るのに向く。櫻護謨はここに力を入れている。
民間機は、ボーイングとエアバスの生産が回復する途中だ。シール部品の需要は機体の数とともに伸びる。
消防は成熟した市場だ。全国の消防本部の数はほぼ変わらず、ホースの需要は更新の周期で決まる。国土強靱化と大規模災害への備えで、大口径のホースや救助の資機材は少し伸びる。自治体の財政は苦しく、値段は物価並みにとどまる。
ゴムと金属の資材、人件費は上がり続ける。防衛の部品は原価に利益を乗せる契約が多く、上昇を値段に回しやすい。消防の入札は回しにくい。
人手不足も効く。ゴムの成形や金属の加工の技能を持つ人は減り、地方の工場は人を集めにくい。省人化の設備に投じる会社と、投じない会社の差が開く。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。方針は連結の配当性向 30% で、利益に合わせて増減する。前の期の配当の総額は 1.9 億円だった。自社株買いの実績は乏しく、株主優待も無い。
資本の使い方は保守的だ。2021 年に神奈川工場を、2022 年に幡ヶ谷の土地を売り、借入を減らしてきた。いまは大田原の新しい事務棟に 10 億円を投じ、自己資金と借入で賄う。
笹塚のモールは時価 66 億円で、簿価との差は 44 億円ある。売る方針は示されていない。売れば時価総額に近い現金が入るが、賃料の収入を失う。
株主は個人が上位に並び、中村浩士氏、岩﨑哲也氏、梶原祐理子氏の 3 人で 3 割を持つ。りそな銀行と東京海上も株主だ。買収の話は無いが、土地と稼ぐ力の割に値段が低く、外から狙われる余地はある。防衛の部品を持つ会社は、国の安全保障の面から買い手が限られる点には注意がいる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
防衛の追い風は始まったばかりだ。国は 5 年で防衛費を 1.6 倍にし、三菱重工の防衛・宇宙の売上は初めて 1 兆円を超えた。櫻護謨の航空宇宙の受注残は 88 億円と、売上の 1.5 年分ある。
航空宇宙の部品は、一度採用されれば機体が飛ぶ限り同じ部品が使われる。認定を取るのに何年もかかるので、新しい会社は入れない。利益率 19% は、その堀の結果だ。
宇宙も伸びる。金属 3D プリンタで作るエンジン部品は、ロケットの打ち上げが増えるほど量が増える。ボーイングの認定を持つ複合材の技術も、民間機の回復で生きる。
消防は景気に左右されない土台だ。受注残は 20 億円と 7 倍になった。大口の更新の案件が続けば、消防の利益率も上がる。
笹塚の土地は時価 66 億円で、時価総額とほぼ同じだ。事業の価値に土地がまるごと付いてくる。土地を活用する話が出れば、値段は一気に見直される。
財務も堅い。自己資本比率は 51% で、借入は手元の現金と株でほぼ賄える。資本コストを超える利益が見えてきた今、値段は過去の谷の記憶に引きずられている。配当は性向 30% で、利益が増えればそのまま増える。
慎重な見方
利益は防衛の予算の山にある。2022 年 3 月期には営業赤字で、2023 年 3 月期も利益率 4% だった。前の期の 8.5% は、三菱重工の受注が膨らんだ一時の数字かもしれない。防衛費の増額は 2027 年度で一巡し、そこから先は伸びない。
客の偏りも重い。航空宇宙の多くは三菱重工向けだ。三菱重工が部品を内製したり、海外から買ったりすれば、量はすぐに細る。小さな会社に交渉の力は無い。
消防は国内首位の帝国繊維が 5 割を握る。自治体の入札で、値段は上がらない。資材と人件費が上がれば、利益は削られる。
笹塚の土地は、売らなければ株主の価値にならない。個人の大株主が経営を支え、売る方針は示されていない。賃料の利益は年 1 億円に満たず、時価 66 億円に対して利回りは 1.4% だ。
新しい事務棟の 10 億円で借入は増える。金利が上がれば利払いも増える。自己資本利益率は 7% で、資本コストに届かない。宇宙の部品も、量産に入るまでは研究開発の費用が先に出ていく。前の期の航空宇宙の利益率 19% が、平年の姿だという証拠はまだ無い。
どちらに重みを置いたか
防衛の追い風と航空宇宙の認定という強気の見方の方が、数字の裏付けが厚い。受注残が売上の 1.5 年分あり、三菱重工の防衛・宇宙の受注も過去最高だからだ。確率は中立に厚く置きつつ、楽観側を悲観側より厚くした。ただ 2021〜2023 年の谷を考え、悲観の確率も 1 割残した。笹塚の土地は売る方針が無いので価値の中心に置かず、悲観の床にだけ入れた。土地を除いた事業の利益だけで測っても、中立の価値は今の値段を上回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 7,024 円136 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,406 円27 億円)。 今の値に割り戻すと 4,042 円78 億円、今との差 +20.1%、 期待の年率 +9.6%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 15,047 円291 億円 | 2,264 円44 億円 | +414.4% | +17.8% | 1,731 円33 億円 |
| やや楽観 | 24% | 9,955 円193 億円 | 1,788 円35 億円 | +249.0% | +13.3% | 2,819 円55 億円 |
| 中立 | 38% | 7,040 円136 億円 | 1,442 円28 億円 | +152.1% | +9.7% | 3,223 円62 億円 |
| やや悲観 | 18% | 1,954 円38 億円 | 868 円17 億円 | −16.1% | −1.7% | 508 円10 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,034 円20 億円 | 460 円9 億円 | −55.6% | −7.8% | 149 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,024 円136 億円 | 1,406 円27 億円 | +150.5% | +9.6% | 8,430 円163 億円 |
今の株価時価総額 3,365 円65 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 防衛と宇宙の需要が 2 倍になり、航空宇宙が会社の柱になる 利益 22 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 15,047 円291 億円
国の防衛予算は国内総生産の 2% の水準で定着し、装備の調達は 10 年で大きく増える。三菱重工が手がける航空機とミサイル、ロケットの数が増え、櫻護謨の部品の出荷は 2 倍になる。
宇宙では金属 3D プリンタで作るエンジン部品が量産に入り、新しい柱になる。ボーイングの認定を持つ複合材の技術も、民間機の生産回復で生きる。航空宇宙の利益率は今の 19% を保つ。
消防・防災は、国土強靱化と大規模災害への備えで自治体の更新が進み、大口径ホースなど高い製品が伸びる。
全社の営業利益率は 12% に乗り、過去 30 年で最も高い。配当は性向 30% のまま増え、自己資本利益率は 11% に上がる。笹塚の土地は持ったまま賃料を生み続ける。
- 消防・防災:数量 26.1(出荷の量(消防ホース 1 本に換算した万本、推定))× 価格 4.90(1 本換算の単価(万円・名目))→ 売上 128 億円・営業利益 10 億円。数量 今の 1.10 倍 × 単価 今の 1.40 倍、利益率 8.0%
- 航空宇宙・工業用品:数量 20.0(出荷した部品の点数(千点、推定))× 価格 8.02(千点あたりの売上(億円・名目))→ 売上 160 億円・営業利益 30 億円。数量 今の 2.00 倍 × 単価 今の 1.40 倍、利益率 19.0%
- 不動産賃貸:数量 8.6(貸している土地(千平方メートル))× 価格 0.83(千平方メートルあたりの年の賃料(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.40 倍、利益率 20.0%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.1 倍、時価総額 291 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防衛予算の増額は 2027 年度まで決まっており、受注残も積み上がっている。ただ航空宇宙の量が 2 倍で利益率 19% を保つには、新しい機体と宇宙の量産がそろう必要があり、低めに置いた。
やや楽観 24% 航空宇宙が 7 割増え、利益率 10% 台に乗る 利益 16 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 9,955 円193 億円
防衛の装備の調達は 2027 年度までの増額のあとも高い水準を保つ。三菱重工向けの部品は 7 割増え、宇宙の部品も少しずつ量産に乗る。航空宇宙の利益率は 17% で、前の期の山よりは下がるが高い水準だ。
消防・防災は自治体の更新需要に支えられ、量は少し増える。資材高を値段に回せるようになり、利益率は 7% に上がる。
全社の営業利益率は 10% 前後になる。配当は性向 30% で増え、自己資本は利益で厚くなる。自己資本利益率は資本コストをわずかに上回る。
大田原の新しい事務棟と省人化の設備で、人手不足の中でも生産を保てる。笹塚の土地は持ったまま賃料を生み、売る動きは無い。
- 消防・防災:数量 24.9(出荷の量(消防ホース 1 本に換算した万本、推定))× 価格 4.80(1 本換算の単価(万円・名目))→ 売上 119 億円・営業利益 8 億円。数量 今の 1.05 倍 × 単価 今の 1.37 倍、利益率 7.0%
- 航空宇宙・工業用品:数量 17.0(出荷した部品の点数(千点、推定))× 価格 7.85(千点あたりの売上(億円・名目))→ 売上 133 億円・営業利益 23 億円。数量 今の 1.70 倍 × 単価 今の 1.37 倍、利益率 17.0%
- 不動産賃貸:数量 8.6(貸している土地(千平方メートル))× 価格 0.81(千平方メートルあたりの年の賃料(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.37 倍、利益率 18.0%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 11.99 倍、時価総額 193 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:前の期の航空宇宙の受注残は 88 億円と売上の 1.5 年分あり、三菱重工の防衛・宇宙の受注も過去最高だ。量が 7 割増える筋は、数字の裏付けがある。
中立 38% 航空宇宙が 5 割増え、消防は物価並みで続く 利益 12 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 7,040 円136 億円
防衛の装備の調達が増え、三菱重工向けの部品の量は 10 年で 5 割増える。年 4% ほどの伸びで、2027 年度までの予算の増額が終わったあとは緩やかになる。航空宇宙の利益率は 15% で、前の期の 19% から少し戻る。
消防・防災は、自治体の消防本部が古いホースを決まった周期で入れ替える需要に支えられ、量は今のままだ。帝国繊維などとの入札が続き、単価は物価並みにとどまる。利益率は 6% だ。
全社の営業利益率は 8% で、直近の水準に近い。今ある工場の償却は取得した時の値段のままで、会計の利益は少し助かる。ただ老朽設備の更新は上がった建設費で払う。
配当は性向 30% で増える。笹塚の土地は持ったまま賃料を生み、売る動きは無い。自己資本利益率は 7% 台で、資本コストにわずかに届かない。
- 消防・防災:数量 23.7(出荷の量(消防ホース 1 本に換算した万本、推定))× 価格 4.69(1 本換算の単価(万円・名目))→ 売上 111 億円・営業利益 7 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.34 倍、利益率 6.0%
- 航空宇宙・工業用品:数量 15.0(出荷した部品の点数(千点、推定))× 価格 7.68(千点あたりの売上(億円・名目))→ 売上 115 億円・営業利益 17 億円。数量 今の 1.50 倍 × 単価 今の 1.34 倍、利益率 15.0%
- 不動産賃貸:数量 8.6(貸している土地(千平方メートル))× 価格 0.80(千平方メートルあたりの年の賃料(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.34 倍、利益率 18.0%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 136 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防衛予算の増額が量に出る一方、利益率は前の期の山から少し戻る。いちばん起きやすい形に厚く置いた。
やや悲観 18% 防衛の増額が一巡し、利益率が半分に戻る 利益 4 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,954 円38 億円
防衛予算の増額は 2027 年度で止まり、装備の調達は横ばいになる。三菱重工は部品の内製や海外からの調達を増やし、櫻護謨の取り分は少ししか増えない。航空宇宙の利益率は 10% に下がる。
消防・防災は自治体の財政が苦しく、更新の周期が延びる。入札の値段は上がらず、利益率は 4% に落ちる。
全社の営業利益率は 4% 前後で、2021〜2023 年の谷に近い。配当は性向 30% で減る。笹塚の土地は持ったままだが、売って株主に戻す動きは無い。
稼ぐ力は資本コストを大きく下回り、ためた利益は帳簿の額ほどの価値を生まない。省人化の設備に投じた分も、量が増えないので回収が遅れる。
- 消防・防災:数量 22.5(出荷の量(消防ホース 1 本に換算した万本、推定))× 価格 4.38(1 本換算の単価(万円・名目))→ 売上 99 億円・営業利益 4 億円。数量 今の 0.95 倍 × 単価 今の 1.25 倍、利益率 4.0%
- 航空宇宙・工業用品:数量 11.0(出荷した部品の点数(千点、推定))× 価格 7.16(千点あたりの売上(億円・名目))→ 売上 79 億円・営業利益 8 億円。数量 今の 1.10 倍 × 単価 今の 1.25 倍、利益率 10.0%
- 不動産賃貸:数量 8.6(貸している土地(千平方メートル))× 価格 0.74(千平方メートルあたりの年の賃料(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.25 倍、利益率 15.0%
倍率:純利益 4.2 億円の稼ぐ力(純利益÷k で約 52 億円)が売れる資産の床(約 23 億円)より大きいので PER で置く。ROE 3% は k を大きく下回り、上限 1÷k の 72% の 9.0 倍。
確率:2021〜2023 年は営業利益率が −1〜4% だった。防衛の需要が一巡し、消防の値段が上がらなければ、この水準に戻る筋は現実にある。
悲観 10% 三菱重工の取引が細り、消防も入札で負ける 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,034 円20 億円
三菱重工が部品の調達を見直し、櫻護謨の取引は大きく細る。民間機の部品も海外の大手に取られ、航空宇宙の量は 2 割減る。利益率は 3% に落ちる。
消防・防災は帝国繊維との入札で負けが込み、量が 15% 減る。資材と人件費は上がり続け、利益はほとんど残らない。
全社は営業赤字に沈む。新しい事務棟の借入の利払いが重くなる。配当は大きく減る。
価値は笹塚の土地と政策保有株の売れる額に頼る。ただ個人の大株主が経営を握り、土地を売って株主に戻す動きは起きにくい。清算は少数株主には決められないので、その床より安い値もありうる。古い設備の更新も先送りされ、工場の競争力はさらに落ちる。
- 消防・防災:数量 20.1(出荷の量(消防ホース 1 本に換算した万本、推定))× 価格 4.03(1 本換算の単価(万円・名目))→ 売上 81 億円・営業利益 2 億円。数量 今の 0.85 倍 × 単価 今の 1.15 倍、利益率 2.0%
- 航空宇宙・工業用品:数量 8.0(出荷した部品の点数(千点、推定))× 価格 6.59(千点あたりの売上(億円・名目))→ 売上 53 億円・営業利益 2 億円。数量 今の 0.80 倍 × 単価 今の 1.15 倍、利益率 3.0%
- 不動産賃貸:数量 8.2(貸している土地(千平方メートル))× 価格 0.68(千平方メートルあたりの年の賃料(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 0.95 倍 × 単価 今の 1.15 倍、利益率 12.0%
倍率:赤字で PER は当てない。売れる資産の床(約 23 億円)より少し下の 20 億円を、今の自己資本 100 億円に対する PBR 0.20 倍として置いた。清算は少数株主には決められないため床を下回ってよい。
確率:売上の 1 割を三菱重工に頼り、2022 年 3 月期には営業赤字を出した。ただ受注残が厚く、谷の確率は高くしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
消防・防災
消防ホース、消火栓ホース、吸管、救助の資機材、作業の安全機器。主な客は消防本部などの官公庁。
| 数量出荷の量(消防ホース 1 本に換算した万本、推定) | 価格1 本換算の単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 23.7 | 3.50 | 83 | 5 |
| 10 年後 中立 | 23.7 | 4.69 | 111 | 7 |
取り方:本数は非開示のため、売上 83.0 億円を消防ホース 1 本約 3.5 万円に換算して割り、約 23.7 万本相当と推定(資機材も同じ単価で換算した)。営業利益 5.22 億円は開示。
航空宇宙・工業用品
官需の大型機・エンジンの部品、民間機のシール、宇宙関連の製品、複合材、ダクト、原油タンクのシール、金型。
| 数量出荷した部品の点数(千点、推定) | 価格千点あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 5.73 | 57 | 11 |
| 10 年後 中立 | 15.0 | 7.68 | 115 | 17 |
取り方:点数は非開示のため、大型機の部品からシールまでの平均単価を 1 点約 57 万円と見て、売上 57.3 億円から約 1 万点と推定。営業利益 11.02 億円は開示。数量の伸びは、防衛の装備の調達と三菱重工の防衛・宇宙の売上の伸びに合わせた。
不動産賃貸
笹塚ショッピングモールなどの賃料(子会社 二十一世紀)。
| 数量貸している土地(千平方メートル) | 価格千平方メートルあたりの年の賃料(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.6 | 0.59 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 8.6 | 0.80 | 7 | 1 |
取り方:笹塚等の土地 8,603 平方メートル(有報)で売上 5.11 億円を割った。営業利益 0.92 億円は開示。本社の費用など約 4.9 億円は調整に入れた。
リスクと懸念
三菱重工と防衛予算への依存
航空宇宙の多くは三菱重工向けで、その先は国の防衛予算だ。防衛費の増額は 2027 年度で一巡する。三菱重工が部品を内製したり海外から買ったりすれば、量はすぐに細る。
利益の山と谷
営業利益は 2020 年 3 月期の 11 億円から、2022 年 3 月期に赤字へ落ちた。前の期の 12 億円は追い風の山の側にあり、谷が来れば半分以下に戻りうる。
消防の入札と値段
消防ホースは国内首位の帝国繊維が 5 割を握り、自治体の入札で値段が決まる。資材と人件費の上昇を回しきれなければ、消防の利益率は 4% 台に戻る。
笹塚の土地が株主に届かない
モールは時価 66 億円だが、賃料の利益は年 1 億円に満たない。売る方針は無く、個人の大株主が経営を支える。土地の価値が株主に戻らないまま、低い利回りで持ち続ける恐れがある。
設備の更新と人手
大田原の工場は 1970 年代に集めた古い設備が多い。新しい事務棟の 10 億円に続き、老朽設備の更新が上がった建設費で要る。技能を持つ人の確保も難しくなっている。
資材の調達
ゴムや金属の資材は値上がりし、調達にかかる日数も延びている。会社は調達先を増やし、代わりの材料を探すが、防衛の部品は材料を変えにくい。
今後の分かれ目
- 航空宇宙の受注残が 100 億円を超えて積み上がったら
- 量の伸びが続く証拠として、やや楽観の確率を上げる。
- 防衛費の増額が 2028 年度以降に止まるか減ったら
- やや悲観の確率を上げる。
- 宇宙の部品が量産に入り、売上が数億円の規模になったら
- 楽観の筋の数量を見直す。
- 笹塚の土地の売却や再開発の方針を数字で示したら
- 土地の価値を余り資産として足すか見直し、悲観の床も上げる。
- 三菱重工向けの売上が 2 期続けて減ったら
- 客の偏りの危うさが出たとして、中立の数量を下げる。
- 配当性向を上げるか自社株買いを始めたら
- 株主への戻り方を見直す。
見ておくもの
- 航空宇宙の受注高と受注残
- 三菱重工向けの売上
- 国の防衛費と装備の調達
- 消防の受注残と利益率
- 笹塚の土地の扱い
- 大田原の設備投資
倍率と資本コストの決め方
消防はホース換算の本数(推定)× 単価、航空宇宙は部品の点数(推定)× 千点あたりの売上、賃貸は土地の広さ × 賃料で積み、数量は実質、単価は名目(中立 1.34 倍)。償却は今の約 2.8 億円を物価で増やさず、新しい事務棟と更新の分を足して 10 年後に約 3.5 億円とした。k は 7.5% + quality 0.5% の 8.0%。中立の ROE は 7% で k にわずかに届かず、PER は上限 1÷k の 85%。笹塚の含み益は賃料を利益に残すので、悲観の床だけに入れた。今の株価・PBR は倍率に使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→13.1 倍・やや楽観 PER 11.9→11.99 倍・中立 PER 10.6→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5% で 8.0%。同じゴム製品の産業用ゴム部品の会社より、消防の安定した需要の分だけ循環は軽いが、三菱重工への偏りを寿命の側で上乗せした。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 8.50%。