結論
バンドー化学は、自動車や産業機械の動力を伝えるゴムベルトで稼ぐ会社だ。筆者の結論は「今の値段は、10年で見れば割高」である。ベルトの数量が伸びにくく、利益の伸びがほぼ物価止まりと見るからだ。
売上の半分強は自動車部品、残りの大半が産業資材だ。売上は5期連続で過去最高だが、利益は振れる。2025年3月期は海外子会社の減損で営業利益が35億円まで落ち、翌期は121億円に戻った。この121億円には、雹災の保険金15億円ほどが混じる。ならした稼ぐ力は、会社予想の110億円あたりだろう。
最大の論点は電動化だ。エンジン回りのベルトは、電気自動車が増えれば減る。会社は電動パワーステアリング用や電動二輪向けで穴を埋める構えだが、数量は横ばいから微減が筆者の見立てだ。産業資材は農機や軽搬送、ロボット向けで伸びるが、市場の伸びは年数%にとどまる。
財務は堅い。純現金は165億円で、自己資本比率は70%ある。ただ、この現金は運転資金と設備投資に要る額の範囲で、余剰とは見ない。ROEは中立で8%ほどと資本コストに届かない。堅さは下値を支えるが、倍率を押し上げる材料にはならない。
割安になる条件ははっきりしている。電動化対応品が穴埋めを超えて伸び、利益率が9%台のまま定着することだ。その確証は、まだ決算に出ていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、バンドー化学は「堅いが、10年で割に合うとは言いにくい会社」だ。理由は三つある。
一つ目は、事業の力だ。補修市場と品質で守られる部分はあるが、堀は強くない。自動車の電動化で、売上の過半を占める事業に逆風が吹く。しかも海外では、新興メーカーが値段で迫っている。
二つ目は、稼ぐ力に対する資本の厚さだ。自己資本は900億円超あるのに、ROEは中立で8%ほどにとどまる。資本コストの8.5%に届かない。こういう会社は、ためた利益が額面未満の価値しか持たない。
三つ目は、経営の資本の使い方だ。還元は厚くなったが、買収の減損も出た。新規事業に使うお金が成果を出すまで、筆者は静観する。
安全域でいえば、純現金と財務の堅さが悪い筋書きの下を支える。ただ、10年の期待値は今の時価総額を下回る。堅い会社だが、安い会社ではない。
何で稼ぐ会社か
事業は三つに分かれる。自動車部品、産業資材、高機能エラストマー製品だ。売上の約5割が自動車部品、約3割が産業資材、約1割強がエラストマーである。
自動車部品は、エンジンの補機を回すVリブドベルトやタイミングベルトを、自動車メーカーと補修市場に売る。売上は約600億円、利益率は9%台だ。国内では伝動ベルトの最大手級で、三ツ星ベルトとニッタが主な競合になる。海外は米国のゲイツなど世界大手と競る。電動パワーステアリング用や電動二輪向けも、この事業で伸ばす計画だ。
産業資材は、農業機械、工作機械、物流施設の搬送機、ロボットなどに使うベルトだ。売上は約390億円、利益率は8%台で、補修需要が厚い。ベルトは機械の中では安い部品だが、切れれば機械が止まる。顧客は値段より品質と納期を重くみる。
高機能エラストマー製品は、ゴムや樹脂の機能部材で、車載用部品や加飾フィルム、画面用の透明粘着シートがある。売上は約140億円で利益率は3%と低く、2025年3月期までは赤字だった。電子資材の研磨材や医療機器は、まだ育成の段階だ。
売上の約6割は海外で、アジアが中心だ。海外で作って売る比率が高く、為替と現地メーカーの値下げ要求の影響が大きい。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、補修市場と品質にある。ベルトは新車に付けるだけでなく、切れたら交換する消耗品だ。交換の時は、機械メーカーが決めた規格品を買い続けるのが普通で、顧客は値段より品質と納期を重くみる。国内は3社が中心で、値段は崩れにくい。ただし堀は強くない。世界では大手が控え、新車向けは自動車メーカーの値下げ要求を受ける。
利益率は直近で20年来の高さにある。過去10年のROEの中央値は7%台で、中計の目標の12%に届いたことはない。前の中計もほぼ同じ目標を掲げて未達に終わった。筆者は、今の利益水準が定位置になる保証はないと見る。
資本効率は低い。自己資本比率が70%で、純現金もあるので、ROEが上がりにくい構造だ。減損も響く。2025年3月期は連結子会社で約50億円を損失にした。買収や拠点の見立てが外れた痕跡である。
経営は株主還元を強める方向にある。配当性向を5割ほどに引き上げ、自社株買いも出している。ただ利益そのものが増えるわけではない。事業の質は悪くないが、「買い増したい会社」とまでは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ベルトの需要には、逆向きの力が二つ働いている。一つは物流と産業の自動化で、搬送用の世界市場は年4%ほどの伸びが見込まれる。もう一つは電動化で、エンジン補機用の伝動ベルトは、電気自動車が増えるほど減る。
国内の自動車用伝動ベルトは、バンドー化学、三ツ星ベルト、ニッタの3社が中心だ。ニッタは持ち分法の会社を通じて米国のゲイツと組んでいる。世界ではゲイツとコンチネンタルが大きく、アジアでは中国やインドの新興メーカーが値段で攻めてくる。筆者の粗い推定では、国内市場は1,000億円台、バンドーのシェアは3割前後である。
循環の面では、自動車の生産台数と設備投資に連動する。振れは素材ほど大きくないが、2020年3月期と2022年3月期に営業利益率が3%を割った。原材料のゴムや溶剤は石油由来で、中東情勢の不透明感は直近の経営者も口にしている。値上げは顧客に説明したうえで進める構えだ。
10年で見れば、市場全体の数量は人口減と電動化で横ばいから微減、産業向けだけが年数%で伸びる。価格は物価並みに上がる。会社全体の数量は成熟で、売上の伸びは物価分が中心になる、というのが筆者の見立てだ。
資本政策と M&A
還元は厚くなってきた。2026年3月期の配当性向は47%で、創業120周年の記念配当も含む。さらに、自社株買いも約20億円あった。来期は記念配当が外れて配当は減る予想で、方針は性向5割が目処である。
中計では4年間で設備投資を240億円と置き、買収などの戦略投資も検討するとした。過去には医療機器会社の子会社化があり、2025年3月期には約50億円の減損が出た。買収の成果は、まだ利益に出ていない。
買い手として動く余地はあるが、筆者は新規事業への資金の使い方を慎重に見る。TOBなどの再編は、時価総額が約1,000億円と小さく、純現金も厚いので、買われる側になる可能性はある。ただし経営陣が動く材料は見当たらない。
自己資本比率が70%の会社が、還元を増やす余地は大きい。ただ利益が増えなければ、還元だけでは価値は上がらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電動化はベルトの敵ではなく、入れ替えの機会になる。電動パワーステアリング用のベルトは、エンジン車でも電気自動車でも要る。電動二輪やパーソナルモビリティ向けも新しい需要で、会社はここを重点に置く。エンジン車の減少を、こうした新しい用途が埋めても不思議ではない。
産業資材は成長市場にいる。物流の自動化、ロボット、大型農機といった分野でベルトの需要は積み上がり、市場は年4%ほどで伸びる。軽搬送ベルトやシンクロベルトで取れるシェアも広がる。
利益の質も上がっている。直近の利益率は自動車部品で9%台、産業資材で8%台だ。値上げの定着で、この水準が保てれば、中計の目標の営業利益120億円は現実の線にある。電子材料の研磨材や光学用の透明粘着シートも育てば、低収益のエラストマー部門が稼ぎ頭の一つになる。
純現金と自己資本比率70%という厚みは、買収や設備の余力でもある。強気の筋書きでは、利益は今の1.8倍ほどになる。
慎重な見方
利益は一過性に支えられている。2026年3月期の営業利益121億円には、雹災の保険金が15億円ほど入っている。ならせば100億円強で、会社自身の来期予想も110億円に下がる。
自動車の電動化は、時間の問題ではない。エンジン補機のベルトは、電気自動車では要らなくなる。売上の半分強を占める事業が、10年かけて削られる。電動パワーステアリング用で穴を埋める話は聞くが、数量の証拠はまだ決算に出ていない。
海外では中国やインドの新興メーカーが値段で攻める。自動車メーカーの値下げ要求も続く。連結子会社では、2025年3月期に約50億円の減損を出した。買収や新規事業の見立てが外れることは、この会社に実際にあった。
中計の目標も信頼しにくい。前の中計で掲げた営業利益120億円・ROE12%は未達に終わり、今の中計でも同じ数字を掲げている。ROEは資本コストに届かない。還元を増やしても、利益が増えない限り倍率は上がらない。
どちらに重みを置いたか
産業資材の堅さと財務では、強気の見方が正しい。だが10年の成長については、慎重な見方の指摘が強い。電動化の穴埋めに数量の証拠が出ておらず、目標を掲げて未達に終わった過去もある。そこで確率は、中立とやや悲観に厚めに置いた。楽観側は、穴埋めが数量で確かめられるまで薄く置く。悲観は、電動化と新興勢の値下げ、買収の減損が重なる筋書きだ。財務が堅いので、下は深くならない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,536 円1,026 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,351 円546 億円)。 今の値に割り戻すと 1,984 円803 億円、今との差 −23.0%、 期待の年率 +4.2%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,688 円1,897 億円 | 1,730 円700 億円 | +149.0% | +9.6% | 513 円208 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,528 円1,427 億円 | 1,582 円640 億円 | +98.2% | +7.1% | 1,022 円413 億円 |
| 中立 | 36% | 2,856 円1,156 億円 | 1,483 円600 億円 | +68.3% | +5.3% | 1,562 円632 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,573 円637 億円 | 1,186 円480 億円 | +7.1% | +0.7% | 662 円268 億円 |
| 悲観 | 12% | 416 円168 億円 | 643 円260 億円 | −58.9% | −8.5% | 127 円51 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,536 円1,026 億円 | 1,351 円546 億円 | +50.8% | +4.2% | 3,887 円1,573 億円 |
今の株価時価総額 2,578 円1,043 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 電動化の穴を埋め、産業向けと新規事業で稼ぎが厚くなる 利益 153 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 4,688 円1,897 億円
電動パワーステアリング用のベルトと電動二輪向けが想定より早く育ち、エンジン車向けの減少を上回る。自動車部品の数量は今より1割増え、値上げも定着して利益率は10%を超える。
産業資材は物流の自動化とロボット、大型農機向けで数量が2割台半ば伸びる。補修の厚みで利益率は10%に乗る。電子資材の研磨材や透明粘着シートが利益を出し始め、エラストマーと新規事業の売上は6割近く増える。
中計の営業利益120億円・ROE12%に、物価の分も含めて10年かけて届く。自己資本は厚いまま、還元が積み上がる。会社の目標に近づく数少ない筋書きで、筆者は確率を低く置いている。
- 自動車部品:数量 111(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定))× 価格 804(1本あたりの平均売上(円・名目。製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 891 億円・営業利益 96 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍・利益率 10.8%
- 産業資材:数量 75.0(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定))× 価格 867(1本あたりの平均売上(円・名目。製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 650 億円・営業利益 65 億円。数量 1.25 倍・価格 1.34 倍・利益率 10.0%
- 高機能エラストマー・新規事業:数量 3,216(受注・出荷の件数(件・推定))× 価格 0.13(1件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 431 億円・営業利益 35 億円。数量 1.60 倍・価格 1.34 倍・利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 153 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍。全体の PER 12.43 倍、時価総額 1,897 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電動化の穴埋めと新規事業の黒字化が同時に要る。前の中計も、目標のROE12%に届かず終わっている。実績に照らして強い楽観は8%にとどめる。
やや楽観 20% 電動化は穴埋めを超え、産業資材が伸びる 利益 122 億円 · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 3,528 円1,427 億円
電動化対応品が計画の7〜8割は進み、エンジン車向けの減少をほぼ埋める。自動車部品の数量は横ばい、利益率は10%に乗る。国内の補修は値段が保たれ、アジアの二輪向けも堅調に推移する。電動パワーステアリング用のベルトは、エンジン車でも電気自動車でも使われる。
産業資材は農機・軽搬送・ロボット向けで数量が15%ほど増える。エラストマーと新規事業は3割増えるが、利益率は6%どまりで、新規事業の立ち上がりは遅い。
会社の目標のうち営業利益は物価込みでおおむね達成するが、ROEは10%に届かない。補修と産業向けが支え、国内の値段も保たれる。
- 自動車部品:数量 103(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定))× 価格 804(1本あたりの平均売上(円・名目。製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 826 億円・営業利益 83 億円。数量 1.02 倍・価格 1.34 倍・利益率 10.0%
- 産業資材:数量 69.0(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定))× 価格 867(1本あたりの平均売上(円・名目。製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 598 億円・営業利益 55 億円。数量 1.15 倍・価格 1.34 倍・利益率 9.2%
- 高機能エラストマー・新規事業:数量 2,613(受注・出荷の件数(件・推定))× 価格 0.13(1件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 350 億円・営業利益 21 億円。数量 1.30 倍・価格 1.34 倍・利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 122 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.7 倍。全体の PER 11.69 倍、時価総額 1,427 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電動化対応品が計画の7〜8割進み、産業資材が年数%で伸びる見立て。中計の目標を物価込みでおおむね達成する筋書きで、実現の確度は中程度とみて20%を置いた。
中立 36% 電動化は穴埋めにとどまり、利益は物価並みに伸びる 利益 101 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,856 円1,156 億円
エンジン車向けの需要は減るが、電動化対応品と補修、新興国の二輪向けが減少の大半を埋める。自動車部品の数量は5%ほど減り、利益率は今の9%台を保つ。
産業資材は数量が5%ほど増える。農機と軽搬送が支え、利益率は8%台で止まる。エラストマーと新規事業は数量が1割増え、利益率は4%台に上がるが、まだ薄い。
売上は物価の分で3割ほど増えるが、数量はほぼ横ばいで、営業利益は今より2割ほど増えるにとどまる。ROEは8%で、資本コストに届かない。補修と産業向けが下を支えるが、新規事業は大きな利益を生まない。値上げは物価並みに通るが、人件費や原材料の上昇に飲まれ、利益率は今より少し下がる。
- 自動車部品:数量 95.7(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定))× 価格 804(1本あたりの平均売上(円・名目。製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 769 億円・営業利益 72 億円。数量 0.95 倍・価格 1.34 倍・利益率 9.3%
- 産業資材:数量 63.0(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定))× 価格 867(1本あたりの平均売上(円・名目。製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 546 億円・営業利益 46 億円。数量 1.05 倍・価格 1.34 倍・利益率 8.5%
- 高機能エラストマー・新規事業:数量 2,211(受注・出荷の件数(件・推定))× 価格 0.13(1件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 296 億円・営業利益 13 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍・利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 101 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 1,154 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は成熟し、今の利益率の構図が10年続く見立て。中計の達成度と、過去10年の実績の中央に置いた。慎重な見方の指摘が強いので、確率は中立とやや悲観に寄せた。
やや悲観 24% 電動化が早く、新車向けの値段が削られる 利益 67 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,573 円637 億円
電動化が計画より早く進み、国内外の自動車向けベルトの数量が1割強減る。新車向けでは自動車メーカーの値下げ要求も強まり、利益率は7%に下がる。売上の過半を占める事業の収益が、じわじわ削られていく。
産業資材は数量が横ばいで、中国やインドの新興メーカーとの値段の競争で利益率が7%に下がる。エラストマーと新規事業は伸びず、利益率は2%どまりになる。
会社は固定費を削って耐えるが、営業利益は90億円を割る。ROEは5〜6%で、資本コストを大きく下回る。純現金があるので財務は傷まないが、稼ぐ力は大きく落ちる。
- 自動車部品:数量 88.6(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定))× 価格 804(1本あたりの平均売上(円・名目。製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 713 億円・営業利益 50 億円。数量 0.88 倍・価格 1.34 倍・利益率 7.0%
- 産業資材:数量 58.8(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定))× 価格 867(1本あたりの平均売上(円・名目。製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 510 億円・営業利益 35 億円。数量 0.98 倍・価格 1.34 倍・利益率 6.8%
- 高機能エラストマー・新規事業:数量 2,010(受注・出荷の件数(件・推定))× 価格 0.13(1件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 261 億円・営業利益 5 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍・利益率 2.0%
倍率:事業の ROE 5.6% が k 8.75% を大きく下回るので、伸びても価値は増えない。稼ぐ力から出し、上限 1÷k=11.8 倍の 8 割弱の 9.0 倍に置いた(7割へ引き上げない)。 持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので足していない。
確率:売上の過半が自動車向けで、電動化の進みが計画より早い確率は軽くない。新車向けの値下げ要求と原材料の上昇も重なりうるので、24%を置いた。
悲観 12% 構造的に負ける:電動化と新興勢で収益力を失う 利益 20 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 416 円168 億円
電動化が急速に進み、国内外の自動車向けベルトは数量が3割減る。新興メーカーの値下げと自動車メーカーの要求が重なり、値上げは物価に届かない。利益率は3〜4%に落ちる。
産業資材も新興勢の値段攻勢で数量が15%減り、利益率は3%になる。育てた新規事業は黒字にならず、買収した子会社で100億円の減損が出る。
ベルトの工場は稼働が落ちて固定費が重くなる。営業利益は30億円を割り、ROEは2%を下回る。それでも純現金と財務の堅さで、会社は存続し続ける。ただ、事業の価値は今の半分を割る。会社は固定費を削り、配当も減らして耐える。
- 自動車部品:数量 70.5(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定))× 価格 768(1本あたりの平均売上(円・名目。製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 541 億円・営業利益 19 億円。数量 0.70 倍・価格 1.28 倍・利益率 3.5%
- 産業資材:数量 51.0(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定))× 価格 828(1本あたりの平均売上(円・名目。製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 422 億円・営業利益 13 億円。数量 0.85 倍・価格 1.28 倍・利益率 3.0%
- 高機能エラストマー・新規事業:数量 1,709(受注・出荷の件数(件・推定))× 価格 0.13(1件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 214 億円・営業利益 −2 億円。数量 0.85 倍・価格 1.25 倍・利益率 -1.0%
倍率:事業の ROE 1.8% が k 8.75% を大きく下回り、ためた利益は額面未満の価値しかない。稼ぐ力(事業の純利益÷k)から出し、上限 1÷k=11.8 倍の 7 割強の 8.5 倍に置いた。自己資本は買収した子会社の減損100億円を引いた。
確率:電動化の急加速と新興メーカーの値下げ、買収の減損が重なる筋書き。単独では中程度でも、重なれば収益力を失う。過去20年で営業利益率が2.4%まで落ちた年もあり、12%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自動車部品
エンジン補機用の伝動ベルトと、電動パワーステアリング・電動二輪向けのベルト。売上の約5割。
| 数量ベルトの出荷本数換算(百万本・推定) | 価格1本あたりの平均売上(円・名目。製品の組み合わせの変化を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 101 | 600 | 604 | 57 |
| 10 年後 中立 | 95.7 | 804 | 769 | 72 |
取り方:本数の開示は無いので推定。自動車用ベルトの平均単価を小型品中心の数百円台(六百円ほど)と置き、売上604億円を約1.0億本に直した。国内の市場は1,000億円台でシェアは3割前後という見立てと整合する。数量は実質の本数、物価の分は単価に入れた。セグメント利益は決算の値。
産業資材
農機・工作機械・物流搬送・ロボット向けの産業用ベルト。補修需要が厚い。
| 数量ベルトの出荷本数換算(百万本・推定) | 価格1本あたりの平均売上(円・名目。製品の組み合わせの変化を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 647 | 388 | 33 |
| 10 年後 中立 | 63.0 | 867 | 546 | 46 |
取り方:本数の開示は無いので推定。産業用ベルトは自動車用より大きく高く、小型の軽搬送ベルトから大型の農機用までの平均で六百五十円ほどと置き、売上388億円を約0.6億本に直した。数量は実質の本数、物価の分は単価に入れた。
高機能エラストマー・新規事業
車載部品・加飾フィルム・透明粘着シートと、電子資材(研磨材)・医療機器など育成中の事業。
| 数量受注・出荷の件数(件・推定) | 価格1件あたりの平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,010 | 0.10 | 201 | 4 |
| 10 年後 中立 | 2,211 | 0.13 | 296 | 13 |
取り方:件数の開示は無いので推定。部材や機器の納入1件を約1,000万円と置き、売上約201億円を年約2,010件に直した(エラストマー144億円と、新規事業などの合計)。セグメント利益はエラストマーの値で、新規事業の損益と本社費は調整に入れる。
リスクと懸念
電動化のペース
売上の過半は自動車部品で、エンジン補機のベルトは電気自動車が増えるほど減る。会社は電動パワーステアリング用や電動二輪向けで穴埋めを狙うが、数量の証拠は決算にまだ出ていない。エンジン車の生産が想定より早く縮めば、国内外の工場の稼働が落ちる。
新興メーカーと自動車メーカーの値下げ要求
海外では中国やインドの新興メーカーが値段で攻める。新車向けは自動車メーカーの値下げ要求も強い。値上げが物価に届かない状態が続くと、利益率が9%台から崩れる。
買収・新規事業の減損
2025年3月期に連結子会社で約50億円の減損が出た。医療機器や電子資材など、育成中の事業が黒字にならなければ、同じことが再び起きる。ここは過去に実際に外れた領域だ。
原材料と調達
合成ゴムや溶剤は石油(ナフサ)由来で、中東情勢で調達と価格が不安定になる。値上げは顧客への説明が要り、遅れた分は利益率を直接削る。
一過性の利益
2026年3月期の営業利益121億円には、雹災の保険金15億円ほどが入る。ならした稼ぐ力は会社予想の110億円あたりで、直近の数字をそのまま延ばすと割高に評価してしまう。
資本効率の低さ
自己資本比率が70%と厚く、ROEは8%前後にとどまる。目標の12%には前の中計も届かなかった。還元を厚くしても利益は増えず、倍率を上げる材料になりにくい。
今後の分かれ目
- 電動化対応品の売上が開示され、エンジン車向けの減少を上回ったら
- 中立から強気寄りに見直す。穴埋めの立証になり、自動車部品の数量の前提が上がる。
- 自動車部品の利益率が9%を割ったら
- やや悲観・悲観に確率を移す。値上げの定着が崩れた合図になる。
- 電子資材や医療機器が黒字になり、エラストマーと新規事業の利益率が5%を超えたら
- 楽観寄りに確率を移す。育成中の事業が利益を生む構造に変わったことになる。
- エンジン車の生産が想定より早く縮んだら
- やや悲観の確率を上げる。国内外の工場の固定費負担が増え、利益率が下がる。
- 大規模な自社株買いや政策保有株の売却が行われたら
- ROEの前提を少し上げる。ただ利益そのものは増えないので、価値の上振れは限られる。
- 中国・インドの新興メーカーが補修市場で値段を下げ、海外の値段が物価に届かなくなったら
- 悲観側の確率を上げる。海外の薄利がさらに薄くなる。
見ておくもの
- 自動車部品の利益率(9%台を保てるか)と、電動化対応品の売上の開示
- 産業資材の数量(農機・軽搬送・ロボット向け)と補修の厚み
- エラストマー・電子資材・医療機器の黒字化と、減損の有無
- 中東情勢による原材料の価格と、値上げの浸透
倍率と資本コストの決め方
売上は自動車部品・産業資材・エラストマー等ごとに、推定の本数と1本あたりの売上の指数で積んだ(本数は開示が無く推定。物価の分は単価に入れ、数量には混ぜていない)。倍率は今の株価や過去・同業の倍率を見ず、k 8.75% と事業の ROE から正当化 PER を式で出した。中立は ROE が k を下回るので上限 1÷k の内側に置き、やや悲観・悲観は稼ぐ力から出して7割へ引き上げていない。今の株価との比較は最後にビルドの計算で見た。リースは製造会社で借りる比率が小さく、純現金の読みには影響させていない。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→12.43 倍・やや楽観 PER 11.5→11.69 倍・中立 PER 11→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。