結論
朝日ラバーは、埼玉と福島に工場を持つ、精密なゴム部品の会社だ。看板は、車の室内灯の LED にかぶせて色を出すシリコーンのキャップ「ASA COLOR LED」である。医療では、採血管や点滴の薬を混ぜる口のゴム栓を作る。筆者の結論は「割高」。技術は面白いが、それが利益の厚みになっていない。
売上は 78 億円で、営業利益率は前期 2.5% だった。過去 12 年で利益率が 7% を超えたのは 2 年だけで、前の年は赤字だった。車の部品は採用される車種の売れ行きに左右され、値段は自動車会社に押される。
明るい材料は医療だ。採血用のゴム栓やシリンジの部品は需要が年々伸び、売上は前期 8% 増えた。医療は売上の 4 分の 1 まで育っている。
新しい 5 か年の中期経営計画は、2031 年 3 月期に売上 100 億円、営業利益率 5% を掲げる。届けば利益は今の 2.5 倍だが、過去にこの水準を保てた期間は短い。筆者は届く手前で止まると見る。
今の値段は、医療の伸びと計画の達成を先に織り込んでいるように見える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「技術はあるが、稼ぐ仕組みが弱い」と見る。色と光、ゴムの表面の技術で難しい注文に応える力は本物だ。だが、その技術に見合う値段を取れていない。
事業の価値は、株主のものになる利益で決まる。朝日ラバーの純利益は 1.6 億円で、前の年は赤字だった。設備投資は償却を上回り、利益の多くが機械の更新に消える。株主に残る現金は薄い。
医療のゴム栓は、10 年先も続く堀になりうる。そこが育てば、会社の質は変わる。ただ今は売上の 4 分の 1 で、全体を引き上げるには時間がかかる。
今の値段は自己資本の 0.7 倍だ。PBR が 1 倍を割ることは割安の証拠にならない。ROE が資本コストに届かない限り、筆者はこの値段でも高いと見る。
筆者なら、医療の売上が全体の 3 割を超え、全社の利益率が 5% を 2 年続けて超えるのを見るまで、高い値は払わない。
何で稼ぐ会社か
事業は工業用ゴムと医療・衛生用ゴムの 2 つだ。工業用ゴムは売上 59 億円で全体の 4 分の 3 を占める。中身は、車の室内灯の色と光をそろえる ASA COLOR LED、スイッチや O リングなどの精密ゴム、RFID タグ、つまり無線で読む荷札を包むゴム、そして卓球のラケットに貼るラバーだ。
ASA COLOR LED は、白い LED にシリコーンのキャップをかぶせて好きな色を出す製品である。色ごとに LED を作り分けるより安く、色のばらつきも小さい。高級車の室内の足元やドアの照明に使われる。ただ採用は車種ごとで、その車が売れなければ量は落ちる。
医療・衛生用ゴムは売上 19 億円だ。採血管の栓、点滴の薬を混ぜる口のゴム栓、液が逆流しない弁、薬を詰めた注射器のガスケットを作る。外科医が手技を練習するシミュレータの部品もある。営業利益率は 7% と、工業用より高い。
売上の 76% は日本、16% は中国で、中国の工場も持つ。顧客は自動車の部品会社と医療機器の会社が中心だ。設備投資は年 7 億円前後と、売上に比べて重い。
小さな会社だが、技術の幅は広い。その幅が利益の厚みにつながるかが、この会社の課題である。
優良さと弱いところ
優良さは中くらいより下、と筆者は見る。色と光を扱う技術、ゴムの表面を加工する技術は本物で、他社に断られた難しい注文を受ける力がある。ただその強みが、値段を決める力になっていない。営業利益率は過去 12 年の中央値で 3% 台だ。
堀、つまり他社がまねできない強みは、医療のゴム栓に少しある。医療機器の部品は一度採用されると、変えるには国の手続きと品質の確認が要る。顧客は簡単には乗り換えない。ここは 10 年先も続きやすい。
工業用は違う。車の部品は採用が車種ごとで、モデルが変われば量が消える。値段は毎年の値下げを求められる。
財務は堅い。現金と定期預金は 23 億円あり、借入とほぼ同じだ。自己資本比率は 52% ある。設備投資が重く、利益の多くが機械の更新に回るのが弱みだ。
経営は独立しており、創業家に近い株主が安定して支える。資本の使い方は保守的で、無理な買収はしない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
車の室内の照明は、高級車から大衆車へ広がってきた。足元やドアの縁を色で照らす演出は、電気自動車で特に好まれる。数量は世界の新車の台数と、1 台あたりの照明の数で決まる。世界の新車は 10 年で横ばいに近いが、照明の数は少しずつ増えると筆者は見る。
ただ競合も多い。LED の会社が自ら色を出す LED を作り、樹脂のレンズで色を変える方法もある。朝日ラバーのシリコーンのキャップは、その中の一つの方法にすぎない。中国の自動車会社の台頭で、日本の部品会社の採用の機会も変わる。
医療用ゴムの需要は伸びる。高齢化で採血と点滴の回数は増え、薬を詰めた注射器への移りも進む。世界の市場は年 5% 前後で伸びる。この市場には、住友ゴムの医療用ゴム栓や、米国のウエスト・ファーマシューティカルなど大手がいる。朝日ラバーは小さく、すき間の製品で戦う。
原料のシリコーンや合成ゴムは、原油と円安で値上がりしやすい。値上げを顧客に回す力が弱いので、原料高の年は利益が削られる。前期の下期もイラン情勢で調達の値段が上がった。
筆者は、医療の伸びが工業用の浮き沈みを少し和らげると見る。
資本政策と M&A
還元は利益に比べて厚い。配当は前期の年 0.9 億円から今期 1.1 億円ほどへ増やす予定で、配当性向は 6 割前後になる。自己株の取得は役員の株式報酬の分にとどまり、大きな買い戻しはしていない。株主優待はない。
大株主は創業家に近い資産管理会社と取引先で、親会社はない。上位は伊藤コーポレーションの 10%、晋文金属の 7%、従業員持株会の 5% だ。経営は独立している。
設備投資は年 7 億円前後と重く、借入は 23 億円ある。中期経営計画の成長投資と配当の両立で、借入は少し増えている。買収の大きな歴史はなく、今後も自前の技術で伸ばす方針だ。
親会社がない分、株主への戻り方は経営の方針しだいだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
朝日ラバーには、他社にない技術がある。白い LED にシリコーンのキャップで色を付ける ASA COLOR LED は、色のばらつきが小さく、作り分けの手間もいらない。電気自動車は室内の照明の演出を重んじ、1 台あたりの照明の数は増えていく。採用の車種が増えれば、量は大きく伸びる。
医療はさらに有望だ。採血用と薬液混注用のゴム栓、プレフィルドシリンジのガスケットは、前期も売上が 8% 伸びた。医療の部品は一度採用されれば長く続き、利益率も工業用より高い。10 年で医療の売上が倍近くになれば、会社の利益率は大きく変わる。
中期経営計画は 2031 年 3 月期に営業利益率 5% を掲げる。2018 年には 7% 台を出した実績もある。財務は堅く、配当も増やしている。今の値段は自己資本を大きく下回り、届けば上値は大きい。
親会社がなく経営は独立しており、配当も増やしている。技術の幅を医療に振り向ければ、10 年後には医療の部品の会社として評価される姿も描ける。
慎重な見方
利益率の歴史が厳しい。営業利益率は過去 12 年の中央値で 3% 台にとどまり、7% を超えたのは 2 年だけだ。前の年は赤字だった。技術があっても、値段を決める力がない証拠だ。
ASA COLOR LED は車種次第の製品だ。前期も採用車種の販売の不振で減った。LED の会社が自ら色を出す製品を作れば、キャップの出番は減る。中国の自動車会社が伸びる中で、日本の小さな部品会社の採用の機会は細る。
医療は伸びるが、大手がいる市場だ。住友ゴムやウエスト・ファーマシューティカルと比べれば、朝日ラバーは小さい。大きな注文は大手に流れる。
設備投資は償却を上回り、借入は増えている。原料高と円安で利益は振れやすい。中期経営計画の 5% は、前の計画でも届かなかった水準だ。
医療の伸びも、会社の規模を考えれば全体を変えるには小さい。工業用の浮き沈みが続く限り、利益率は 3% 前後に戻る。技術の幅の広さは、裏を返せば一つひとつの製品の規模が小さいということでもある。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方がやや強い。技術の強みは本物だが、過去 12 年の利益率がそれを利益に変えられていないことを示している。医療の伸びは確かで、確率を楽観側に少し寄せた。中立は中期経営計画の手前で止まる姿にした。医療が全体の 3 割を超え、利益率 5% が続く証拠が出れば、確率は楽観側に動かす。今はその手前で、中立の重みを最も厚くした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 760 円34 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 232 円10 億円)。 今の値に割り戻すと 500 円22 億円、今との差 −35.5%、 期待の年率 +2.5%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,796 円81 億円 | 379 円17 億円 | +180.6% | +10.9% | 174 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,214 円55 億円 | 312 円14 億円 | +97.0% | +7.0% | 305 円14 億円 |
| 中立 | 40% | 755 円34 億円 | 245 円11 億円 | +29.1% | +2.6% | 400 円18 億円 |
| やや悲観 | 22% | 245 円11 億円 | 156 円7 億円 | −48.2% | −6.4% | 88 円4 億円 |
| 悲観 | 10% | 178 円8 億円 | 67 円3 億円 | −68.4% | −10.9% | 25 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 760 円34 億円 | 232 円10 億円 | +28.0% | +2.5% | 992 円45 億円 |
今の株価時価総額 775 円35 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 医療が倍近くに育ち、利益率が 2018 年を超える 利益 7 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 1,796 円81 億円
電気自動車の室内の照明の演出が広がり、ASA COLOR LED の採用車種が増える。工業用の出荷は 10 年で 25% 増え、値段は物価に近い 1.32 倍で通る。利益率は 7% に上がる。
医療は採血と点滴、薬を詰めた注射器の部品が伸び、出荷は 1.7 倍になる。海外の医療機器の会社の採用も取れ、利益率は 10% に上がる。
全社の営業利益は 8 億円を超え、利益率は 5.7% と中期経営計画を上回る。配当は利益に合わせて増え、ROE は資本コストをわずかに上回る。
技術の強みが、ようやく利益の厚みに変わる姿だ。
- 工業用ゴム:数量 125(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.79(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 98 億円・営業利益 7 億円。出荷 1.25 倍・単価 1.32 倍・利益率 7%
- 医療・衛生用ゴム:数量 170(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.26(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 43 億円・営業利益 4 億円。出荷 1.70 倍・単価 1.34 倍・利益率 10%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍。全体の PER 12.4 倍、時価総額 81 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:医療が 1.7 倍に育ち、室内照明の採用が広がる筋書き。全社の利益率は過去 12 年の山の 7.4% に近い 5.7% で、開示の裏づけは中期経営計画の目標(5%)だけなので低く置いた。
やや楽観 20% 中期経営計画の 5% に近づく 利益 5 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,214 円55 億円
工業用の出荷は 10 年で 15% 増える。室内照明の採用は少しずつ広がり、精密ゴムと卓球ラバーも伸びる。値段は 1.30 倍で、利益率は 6% に上がる。
医療は出荷が 1.5 倍になり、利益率は 9% に上がる。医療の売上は全体の 3 割近くまで育つ。
全社の営業利益は 5.6 億円、利益率は 4.4% と、中期経営計画の 5% に近づく。設備投資は重いままだが、借入は増えない。
配当は増え続け、ROE は 6% 台に上がる。資本コストにはまだ届かないが、会社の質は今より良くなる。
技術の幅を医療に振り向ける方針が実る姿だ。
- 工業用ゴム:数量 115(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.77(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 89 億円・営業利益 5 億円。出荷 1.15 倍・単価 1.30 倍・利益率 6%
- 医療・衛生用ゴム:数量 150(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.25(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 3 億円。出荷 1.50 倍・単価 1.32 倍・利益率 9%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 54 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:医療が 1.5 倍に育ち、工業用も新しい採用で伸びて、中期経営計画の利益率にほぼ届く筋書き。医療の前期の伸び(8%)と、過去に 7% 台を出した実績を根拠に置いた。
中立 40% 医療は伸びるが、工業用は横ばいで利益率 3% 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 755 円34 億円
工業用の出荷は 10 年で 5% 増えるにとどまる。室内照明の採用は増えるが、車種の入れ替わりで量が消える年もある。値段は自動車会社の値下げの要求で 1.25 倍にとどまり、利益率は 5% を保つ。
医療は採血と点滴の需要で出荷が 1.35 倍になる。利益率は 8% に上がり、医療が利益の 4 割を稼ぐ。
本社の費用は物価で増え、全社の営業利益は 3.5 億円、利益率は 3.1% になる。10 年の償却は今の 4.9 億円前後で、物価では増えないが、機械の更新は新しい値段で入り、設備投資は償却を上回る。
配当は今の配当性向を保ち、ROE は 4% 台にとどまる。
- 工業用ゴム:数量 105(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.74(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 78 億円・営業利益 4 億円。出荷 1.05 倍・単価 1.25 倍・利益率 5%
- 医療・衛生用ゴム:数量 135(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.25(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 33 億円・営業利益 3 億円。出荷 1.35 倍・単価 1.30 倍・利益率 8%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 34 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:医療の需要の伸びと、工業用の車種ごとの浮き沈みが打ち消し合う標準の姿。全社の営業利益率は過去 12 年の中央値前後の 3.1% に置き、中期経営計画の 5% には届かない。
やや悲観 22% 採用車種が減り、原料高に負ける 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 245 円11 億円
ASA COLOR LED の採用車種が減る。LED の会社が自ら色を出す製品を広げ、中国の自動車会社の採用は取れない。工業用の出荷は 10 年で 1 割減り、値段は 1.18 倍にとどまる。利益率は 3% に落ちる。
医療は伸びるが、大手との競争で出荷は 1.15 倍、利益率は 6% にとどまる。
原料のシリコーンと合成ゴムは円安と原油高で上がり、値上げは追いつかない。全社の営業利益は 0.5 億円まで落ちる。
配当は減り、設備の更新は借入に頼る。稼ぐ力では値が付かず、手元の資産が値の支えになる。
- 工業用ゴム:数量 90.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.70(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 63 億円・営業利益 2 億円。出荷 0.90 倍・単価 1.18 倍・利益率 3%
- 医療・衛生用ゴム:数量 115(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.23(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。出荷 1.15 倍・単価 1.22 倍・利益率 6%
倍率:純利益がほぼゼロで PER では値が付かない(稼ぐ力 0.35÷k = 約 4 億円)。下の売れる資産の床 11 億円の方が大きいので、今の自己資本 50.2 億円に 0.22 倍で床に合わせた。EV(時価総額+純負債 7 億円)÷ 営業利益は 35 倍と高く出るが、営業利益がほぼゼロのためで、facts の純負債は定期預金を除いた値。定期を入れると純負債はほぼゼロで、利益の倍率では測れないので床の資産で置いた。
確率:室内照明の採用が細り、原料高を値段に回せない筋書き。前の年の赤字と、過去 12 年で利益率 1% を割った年が 3 回ある実績から厚めに置いた。
悲観 10% 車の部品で負け、医療だけが残る 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 178 円8 億円
構造的に負ける。室内照明は LED の会社の色付きの製品に置き換わり、ASA COLOR LED の採用は細る。RFID タグも安い品に押される。工業用の出荷は 10 年で 25% 減り、値段は 1.10 倍にとどまり、赤字になる。
医療は出荷が横ばいで、大手との値下げの競争で利益率は 4% に落ちる。全社の営業損益は 2.4 億円の赤字になる。
工場の統廃合と減損で、自己資本は 3 割ほど減る。配当は止まる。
残るのは医療の部品の事業と、工場の土地くらいだ。医療の事業を同業に売る道もあるが、値段は買い手が決める。
- 工業用ゴム:数量 75.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.65(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 49 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.75 倍・単価 1.10 倍・赤字
- 医療・衛生用ゴム:数量 100(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.22(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。出荷 1.00 倍・単価 1.15 倍・利益率 4%
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。今の自己資本 50.2 億円に 0.16 倍で、下の売れる資産の床に合わせた。
確率:構造的に負ける筋書き。室内照明の方法が置き換わり、工業用が赤字に沈む。医療が残るので売上が半分を割ることはなく、財務も堅いので 10% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
工業用ゴム
車の室内照明用の ASA COLOR LED、スイッチ・O リングなどの精密ゴム、RFID タグ用ゴム、卓球ラバー。
| 数量出荷量の指数(2026/03 = 100・推定) | 価格出荷量 1 単位あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.59 | 59 | 3 |
| 10 年後 中立 | 105 | 0.74 | 78 | 4 |
取り方:セグメント売上 59.47 億円・利益 3.05 億円(2026/03 短信)。製品ごとの数量の開示がないため今を 100 とする指数の推定。数量は世界の新車の台数と 1 台あたりの照明の数、単価は自動車会社の値下げの要求で物価を下回ると見る。
医療・衛生用ゴム
採血用・薬液混注用のゴム栓、医療用逆止弁、プレフィルドシリンジのガスケット、手技シミュレータ。
| 数量出荷量の指数(2026/03 = 100・推定) | 価格出荷量 1 単位あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.19 | 19 | 1 |
| 10 年後 中立 | 135 | 0.25 | 33 | 3 |
取り方:セグメント売上 19.05 億円・利益 1.32 億円(2026/03 短信。前期は 1.74 億円で製品の構成で振れる)。数量の開示がないため今を 100 とする指数の推定。数量は採血と点滴の回数、シリンジへの移りで伸びると見る。
リスクと懸念
採用車種への依存
ASA COLOR LED は車種ごとの採用で、その車が売れなければ量が落ちる。前期も採用車種の販売の不振で減った。モデルの切り替えで、量が一度に消えることもある。
技術の置き換え
LED の会社が自ら色を出す製品を作り、樹脂のレンズで色を変える方法もある。シリコーンのキャップは、室内照明の色の出し方の一つにすぎない。
原料高と円安
シリコーンと合成ゴムは原油と円安で値上がりしやすい。自動車の部品は値上げを回しにくく、原料高の年は利益が削られる。前期の下期もイラン情勢で調達の値段が上がった。
医療の大手との競争
医療用ゴム栓には住友ゴムやウエスト・ファーマシューティカルなど大手がいる。大きな注文は大手に流れやすく、朝日ラバーはすき間の製品で戦う。
重い設備投資
設備投資は年 7 億円前後で、償却を上回る。機械の更新は物価で高くなり、株主に残る現金が薄い。借入は 23 億円まで増えている。
中国の事業
売上の 16% は中国で、現地の工場も持つ。米中の対立や中国の景気の停滞で、受注と工場の稼働が落ちる恐れがある。
今後の分かれ目
- 医療・衛生用ゴムの売上が 3 年続けて 5% 以上伸びたら
- 医療が会社の質を変える姿が進んでいるとみて、やや楽観の確率を上げる。
- 中期経営計画の営業利益率 5% に 2029/03 期までに近づいたら
- 技術を利益に変える力がついたとみて、中立の利益率を見直す。
- ASA COLOR LED の大きな採用車種が終わり、後継が決まらなかったら
- 工業用の量が細るとみて、やや悲観の確率を上げる。
- 全社の営業利益率が再び 1% を割ったら
- 原料高と値下げに負ける姿とみて、悲観側を厚くする。
- 自己株の取得や配当性向の引き上げを数字で示したら
- 株主に残す姿勢が強まったとみて、戻り方を 1.0 に上げる。
見ておくもの
- 医療・衛生用ゴムの売上と利益率
- ASA COLOR LED の採用車種の数
- 全社の営業利益率(中期経営計画の目標 5%)
- 設備投資と償却の差
- 原料の値段と値上げの浸透
- 中国の売上と工場の稼働
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE が k を下回る中立で、PER の上限 1÷k = 12.1 倍の約 8 割の 9.5 倍にした。楽観だけ ROE が k を上回り、式の 12.4 倍の範囲の 12 倍。今の PBR 0.7 倍・PER 22 倍前後は根拠にしていない。facts の純負債は 3 か月超の定期を除いた値なので、定期を入れてほぼゼロと見た。悲観側は稼ぐ力より売れる資産の床が大きく、床で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→12.4 倍・やや楽観 PER 11→12.12 倍・中立 PER 9.5→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% + quality 0.75% = 8.25%。同じ領域に済んだ会社はない。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表す。