結論
三ツ星ベルトは、自動車や産業機械の動力を伝えるゴムのベルトで稼ぐ会社だ。国内のベルト事業が利益の約6割を生み、海外が売上の約6割を占める。筆者の結論は「今の値段は高い。実質では利益が増えない」である。財務は堅く下は固い。ただ10年で見れば、成長は物価止まりと見るからだ。
稼ぎ頭は国内ベルトで、利益率は25%に達する。ベルトは安い部品だが、切れれば機械が止まる。顧客は値段より品質と納期を重く見るので、値下げ競争になりにくい。一方、海外ベルトの利益率は9%ほどで、為替と自動車メーカーの値下げ要求に振り回される。
最大の論点は電動化だ。エンジン車向けのベルトは減っていく。会社は2030年度までに約60億円の売上減を見込み、電動化対応品などで約100億円を上積みする計画を掲げる。筆者は、穴埋めに成功しても数量は伸びず、売上の伸びは物価の分にとどまると見ている。
無借金で、純現金が約240億円ある。利益の約7割を配当に回すので、現金は溜まらない。ただ、還元が厚くても利益は増えない。10年後の中立の利益は今の1.2倍ほどで、増えた分の多くは物価である。中立の倍率も、資本コストの壁に近い11倍台にとどまる。
事業の質は悪くない。ただ、今の値段を大きく上回る利益成長を買う理由は乏しい。割安になるのは、海外の利益率が定着して10%を超えたときだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見て、この会社は「悪くないが、買い増したくなるほどではない」と言える。理由は三つある。
一つ目は、株主が自由に使える利益の大きさだ。国内の高収益は魅力だが、工場の更新や新物流棟に年100億円規模の設備投資が要る。稼いだ利益の一部は、設備に消える。
二つ目は、10年後を見通せる度合いだ。ベルトは成熟した部品で、需要が倍になる事業ではない。売上の約47%を握る自動車向けは、電動化で中身が入れ替わる。会社は穴を埋めると言うが、新しい用途で国内並みの高収益を取れるかは分からない。分からない部分は、確信度を下げて見る。
三つ目は、資本の使い方だ。無借金で現金も厚いが、還元に回しても利益は増えず、ROEは9%前後にとどまる。資本コストを少し上回る程度の事業に、大きく払う理由はない。
安全域、つまり払う値段と本質価値の差で見ると、中立の筋書きで今の値段にほぼ等しく、割安とは言えない。悲観の筋書きでも、純現金と政策保有株が下を支え、大きく壊れる確率は低い。保有を続けたい会社ではあるが、今の値段で新たに買う会社ではない。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく三つに分かれる。国内ベルト、海外ベルト、建設資材(その他を含む)である。
国内ベルトは、自動車のエンジン回りで使う伝動ベルト、農業機械や工作機械向けの産業用ベルト、食品工場や物流施設で使う搬送ベルトを作る。売上は約290億円と小さいが、利益は約73億円で、全体の約6割を稼ぐ。販売は代理店を重視した網で行い、新品を載せる機械メーカーだけでなく、補修で買い替える現場にも売る。
海外ベルトは売上が約510億円で、いちばん大きい。北米やアジアで、自動車用・産業機械用・事務機器用のベルトを作って売る。伝動ベルトの約7割は海外の工場で作るので、為替の影響を受けやすい。利益率は2024年3月期に5%を割り込んだあと、9%近くまで戻した。
建設資材は防水シートや遮水シートの事業で、売上は約70億円である。年ごとの利益の振れが大きく、2026年3月期はほぼゼロだった。そのほか、銀ナノ粒子を使う接合材などの電子材料を、次の柱として育てている。
全体では、売上の約47%が自動車向けである。残りは産業機械、農業機械、事務機器、建設に散らばる。自動車への依存の高さが、この会社の強みでもあり、弱みでもある。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、国内の利益率に表れている。国内ベルトの利益率は過去10年、おおむね19〜33%で動き、25%前後が定位置だ。バンドー化学など限られた競合と向き合う中で、値段を保ってきたことになる。ベルトは機械の中では安い部品だが、切れると機械が止まる。顧客が値段より品質と納期を優先する構造が、この高収益を支えている。
海外は別の話だ。海外ベルトの利益率は5〜11%の幅で動き、国内の三分の一ほどにとどまる。自動車メーカーの値下げ要求、中国・インドの新興メーカー、為替の三つが重なる。筆者は、海外で国内並みの収益を取るのは難しいと見る。
資本効率は並みである。ROEは過去10年の中央値で8%弱、会社の目標も2026年度で9%、2030年度で10%と控えめだ。自己資本比率が78%と厚いので、利益が出てもROEは上がりにくい。
経営は株主の方を向き始めている。配当性向を高い水準に保ち、政策保有株の売却目標も前の計画の15億円から50億円に引き上げた。ただ、トヨタ自動車や三菱UFJフィナンシャル・グループなど、上場株を約177億円まだ持つ。縮減は途中だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ベルトの需要は、二つの力が逆向きに動いている。一つは物流と産業の自動化で、搬送ベルトの世界市場は年4%ほどの伸びが見込まれる。もう一つは自動車の電動化で、エンジン車向けの伝動ベルトを少しずつ削る。
搬送ベルトは、ネット通販の拡大で物流施設の投資が続き、食品工場の自動化も進む。会社は樹脂製の搬送ベルトを拡販しているが、売上全体に占める割合はまだ小さい。伝動ベルトは自動車向けが多く、エンジンの本数に数量が連動する。会社の試算では、2030年度に内燃機関の四輪車の生産が半分になると、売上は約60億円減る。
電動化はベルトをなくすわけではない。電動パワーステアリング用のタイミングベルトや、二輪・多用途四輪、ロボット向けなど、新しい用途がある。会社はこれらで約100億円の上積みを見込む。ただ、新しい用途は競争も厳しい。
競合は国内のバンドー化学、ニッタが持分法で組むゲイツ系のメーカー、欧米の大手、そして値段で攻める中国・インドの新興メーカーだ。補修市場は、車の台数が増えるアジアで伸びる一方、新興メーカーの安価品との競争になる。
循環の位置は、直近は回復の途中にある。2027年3月期の第1四半期は売上が1割以上伸び、営業利益も大きく伸びた。筆者は、これは山というより、在庫調整が終わった戻りだと見ている。
資本政策と M&A
還元は手厚い。配当は株主資本配当率で5.4%程度を目安に安定させる方針で、直近は利益の約7割を配当に回している。2022年には、配当性向の目標を一時100%まで引き上げた経緯もある。2024年度からの3年間の計画では、営業キャッシュフロー約450億円を、配当150億円、成長投資300億円、自社株買い数十億円規模などに配る。
政策保有株は縮減の途中だ。上場株は71銘柄・約177億円で、トヨタ自動車と三菱UFJフィナンシャル・グループが大半を占める。今期は3銘柄を約13億円売った。計画の売却額は3年で50億円である。
設備投資は今期100億円と大きい。国内に新物流棟を建て、滋賀・四国の工場にも投じた。M&Aに使う枠は3年で約50億円と小さく、大型買収で価値を壊す心配は薄い。
株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)が約14%で、三菱UFJ銀行が約4%。支配株主はいない。過去には海外のアクティブファンドが約4%を持った時期があり、資本効率への圧力は残っている。筆者は、買収されるより、株主から還元と持ち合い解消を迫られる展開の方が起きやすいと見ている。
持ち合い株には含み益がある。評価差額金は約 100 億円だ。筆者は、配当で戻してきた会社でも半分だけを価値に足した。
見直し(費用点検):セグメント外の費用(調整額、今 36 億円)が中立で 5 億円に減っていたが、削減の根拠が無く、物価 1.34 倍の 48 億円に直し(売上比は今と同じ約 3.7%)、純利益〜時価総額へ流した。悲観は利益が数億円に細るので、純現金+含み益の床 360 億円で置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電動化はベルトの敵ではなく、入れ替えの機会になる。電動パワーステアリング用のタイミングベルト、二輪や多用途四輪、パーソナルモビリティ向けなど、新しい用途はすでに量産に入っている。会社は2030年度までに、エンジン車向けの減少を上回る約100億円の上積みを見込む。
国内ベルトの利益率は25%前後で、10年を通じて崩れていない。補修向けは車が走る限り需要があり、代理店網という資産がある。物流自動化と食品工場の自動化で、搬送ベルトは年4%ほどの伸びが見込まれ、樹脂ベルトで取り込める。
海外ベルトは伸びしろが大きい。利益率は2024年3月期の5%弱から9%近くまで戻り、今期の第1四半期は営業利益が4割近く伸びた。インドや北米で補修向けのシェアが上がれば、利益率は11%に届く。会社は2030年度に営業利益130億円、ROE10%を目標に掲げる。
財務は堅い。無借金で純現金が240億円あり、政策保有株の売却と合わせれば、自社株買いにも使える。2022年に配当性向の目標を一時100%へ上げた会社が、資本効率を意識しなくなるとは考えにくい。10年で見れば、数量は海外で3割伸び、利益は今の2倍に近づく。
慎重な見方
利益の約6割を国内ベルトに頼る構造が、まず危うい。国内の自動車向けは、エンジン車の生産が減れば直接ぶつかる。会社の試算でも、エンジン車が半分になれば約60億円の売上が消える。補う約100億円は、まだ立証されていない新しい用途だ。電動パワーステアリング用などは、ゲイツ系のメーカーや欧米大手が先に押さえている場面がある。
海外ベルトは、自動車メーカーの値下げ要求と為替に振り回される。利益率は2024年3月期に5%を割り込んだ。中国・インドの新興メーカーが汎用品を安く売り、補修市場でも値段の差が開く。米国の関税や、伝動ベルトの約7割を海外で作る構造も、収益のぶれを大きくする。
資本効率も弱い。ROEは過去10年の中央値で8%弱、会社の目標でも10%だ。自己資本が厚いので、利益が伸びても資本コストを大きく超えない。政策保有株を約177億円持ち、縮減は途中である。
2030年度の営業利益130億円という目標は、物価で売上が膨らむ分を考えれば、実質では今と変わらない。ここまで来ても、今の値段を超える水準の利益は見えない。10年で見れば、数量は国内で減り、海外も横ばいに近い。
どちらに重みを置いたか
国内の値決めの強さと堅い財務では、強気の見方が正しい。一方、10年の成長については慎重な見方の指摘が強い。会社の目標は物価込みの数字で、実質では今と変わらない。電動化の穴埋めも立証されていない。確率は、中立を最も厚く置きつつ、やや悲観と悲観を合わせて4割弱に寄せた。自動車が売上の約47%を占め、海外の利益率にも過去に5%割れがあるからだ。結果として、本質価値は今の時価総額を4割ほど下回り、割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,160 円1,157 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,566 円435 億円)。 今の値に割り戻すと 3,109 円865 億円、今との差 −27.0%、 期待の年率 +3.0%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 7,544 円2,098 億円 | 2,395 円666 億円 | +133.3% | +8.8% | 795 円221 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,874 円1,634 億円 | 2,118 円589 億円 | +87.6% | +6.5% | 1,598 円445 億円 |
| 中立 | 36% | 4,527 円1,259 億円 | 1,791 円498 億円 | +48.3% | +4.0% | 2,274 円633 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,488 円692 億円 | 1,230 円342 億円 | −12.7% | −1.4% | 892 円248 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,294 円360 億円 | 90 円25 億円 | −67.5% | −10.6% | 166 円46 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,160 円1,157 億円 | 1,566 円435 億円 | +34.4% | +3.0% | 5,726 円1,593 億円 |
今の株価時価総額 4,260 円1,185 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 電動化の穴を埋め、海外で稼ぎが厚くなる 利益 127 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 7,544 円2,098 億円
電動パワーステアリング用のタイミングベルトや二輪・多用途四輪向けが想定より早く育ち、エンジン車向けの減少を埋める。インドと北米で補修向けのシェアが伸び、海外ベルトの利益率は11%に乗る。国内は食品工場・物流施設向けの搬送ベルトが堅調で、数量は今の水準を保ち、利益率も25%を維持する。会社が掲げる2030年度の営業利益130億円は、物価分を考えれば十分に超える。余った現金は政策保有株の売却資金とあわせて自社株買いに回り、自己資本の膨らみは抑えられる。それでも10年間の数量の伸びは、海外の合計で3割にとどまる。ベルトは成熟した部品で、需要が倍になる世界ではない。
- 国内ベルト:数量 14.5(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定。伝動と搬送を本数に直した数))× 価格 2,680(1 本あたりの平均売上(円・名目。物価・製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 389 億円・営業利益 97 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・利益率 25.0%
- 海外ベルト:数量 44.0(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定))× 価格 2,010(1 本あたりの平均売上(円・名目。物価・製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 885 億円・営業利益 97 億円。数量 1.30 倍・価格 1.34 倍・利益率 11.0%
- 建設資材・その他:数量 1,375(受注・出荷の件数(件・推定))× 価格 0.13(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 184 億円・営業利益 9 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍・利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 125 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 15.56 倍、時価総額 2,098 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外で国内並みに近い収益を取り、電動化の穴も埋めきる必要がある。海外ベルトは過去10年に利益率が5〜11%で動いており、上の端が続く確率は高くない。
やや楽観 20% 海外が伸び、国内は高収益を保つ 利益 105 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 5,874 円1,634 億円
海外ベルトは補修向けとアジアの産業機械向けで数量が2割増える。エンジン車向けの減少は電動化対応品と二輪・多用途四輪向けで半分以上を埋める。国内ベルトは人口減で数量がわずかに減るが、搬送ベルトと高付加価値品の値上げで利益率は23%台に保たれる。海外の利益率は10%まで上がり、国内の高収益に頼る構図が少し和らぐ。建設資材は防水・水処理で堅実に推移する。会社の中計が描く2030年度のROE10%は、この筋書きの後半で届く。配当は利益の約7割を保ち、自己資本は緩やかに増える。国内の競合であるバンドー化学との力関係は変わらず、値決めの強さも保たれる。電動化は脅威から、新しい用途への入れ替えの途中という位置づけに変わる。
- 国内ベルト:数量 14.1(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定。伝動と搬送を本数に直した数))× 価格 2,680(1 本あたりの平均売上(円・名目。物価・製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 377 億円・営業利益 89 億円。数量 0.97 倍・価格 1.34 倍・利益率 23.5%
- 海外ベルト:数量 40.6(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定))× 価格 2,010(1 本あたりの平均売上(円・名目。物価・製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 817 億円・営業利益 82 億円。数量 1.20 倍・価格 1.34 倍・利益率 10.0%
- 建設資材・その他:数量 1,313(受注・出荷の件数(件・推定))× 価格 0.13(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 176 億円・営業利益 7 億円。数量 1.05 倍・価格 1.34 倍・利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 103 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 14.39 倍、時価総額 1,634 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の電動化対応が計画の7〜8割は進み、補修とアジア産業機械が下支えする見立て。2030年度の中計目標が物価込みで達成される近辺で、実績のある中計の進捗を踏まえた。
中立 36% 電動化は穴埋めにとどまり、利益は物価並みに伸びる 利益 85 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,527 円1,259 億円
エンジン車向けの需要は減るが、電動化対応品・補修・産業機械向けが減少の大半を埋める。国内ベルトは人口減と自動車生産の縮小で数量が5%ほど減り、搬送ベルトの伸びがそれを和らげる。値段は物価並みに上がり、利益率は22%に下がる。海外ベルトは数量が1割強増え、利益率は8〜9%にとどまる。10年後の営業利益は今の1.7倍ほどになるが、増えた分の大半は物価によるものだ。会社が掲げる2030年度のROE10%には届かず、9%前後で止まる。配当は利益の約7割を保ち、自己資本は緩やかに増える。バンドー化学との国内の競争構造は変わらない。
- 国内ベルト:数量 13.8(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定。伝動と搬送を本数に直した数))× 価格 2,680(1 本あたりの平均売上(円・名目。物価・製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 369 億円・営業利益 81 億円。数量 0.95 倍・価格 1.34 倍・利益率 22.0%
- 海外ベルト:数量 37.9(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定))× 価格 2,010(1 本あたりの平均売上(円・名目。物価・製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 762 億円・営業利益 65 億円。数量 1.12 倍・価格 1.34 倍・利益率 8.5%
- 建設資材・その他:数量 1,250(受注・出荷の件数(件・推定))× 価格 0.13(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 168 億円・営業利益 5 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 83 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 1,259 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ベルトの数量は成熟し、国内の高収益と海外の薄利という今の構図がそのまま10年続く見立て。中計の達成度合いと過去10年の実績の中央に置いた。
やや悲観 24% 電動化が早く、海外の薄利が続く 利益 54 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 2,488 円692 億円
エンジン車の生産が想定より早く縮み、国内の自動車向けベルトの数量は1割減る。電動化対応品は伸びるが、エンジン車向けの減少を埋めきれない。海外では中国・インドの新興メーカーとの値段競争が強まり、海外ベルトの値段は物価ほど上がらず、利益率は7%に沈む。国内ベルトも売上の縮小で固定費の負担が重くなり、利益率は19%まで下がる。建設資材は赤字すれすれが続く。それでも事業が壊れるわけではない。配当は維持され、自己資本はゆっくり積み上がるが、稼ぐ力は資本コストに届かなくなる。会社は電動化対応品の拡販を続けるが、国内の高収益を支えてきた補修向けの数量が先に細り、全社の利益の伸びを物価の分すら下回らせる。2030年度の営業利益130億円という目標は、この筋書きでは10年たっても届かない。
- 国内ベルト:数量 13.1(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定。伝動と搬送を本数に直した数))× 価格 2,680(1 本あたりの平均売上(円・名目。物価・製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 350 億円・営業利益 66 億円。数量 0.90 倍・価格 1.34 倍・利益率 19.0%
- 海外ベルト:数量 33.9(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定))× 価格 1,950(1 本あたりの平均売上(円・名目。物価・製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 661 億円・営業利益 46 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍・利益率 7.0%
- 建設資材・その他:数量 1,125(受注・出荷の件数(件・推定))× 価格 0.13(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 151 億円・営業利益 3 億円。数量 0.90 倍・価格 1.34 倍・利益率 2.0%
倍率:事業の ROE 7.1% が k 7.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k=12.1 倍が上限。内燃機関向けが縮み利益が先細る見立てなので、上限の 8 割台の 11.03 倍に置いた(7 割へは引き上げない)。余った現金は谷で食われるとみて 75 億円を足した(今の 0.75 倍)。(費用・利益の見直しで再計算:純利益 54 億円、事業の ROE 4.4%、正当化 PER の上限 12.1 倍。上限に対する置き方の割合は変えず 10.00 倍)
確率:自動車が売上の約47%を占め、内燃機関向けの減少が計画より早まる確率は軽くない。海外の利益率が過去に5%を割った実績もあるので、やや悲観にも厚めに置いた。
悲観 12% 構造的に負ける:電動化と新興勢で収益力を失う 利益 3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,294 円360 億円
エンジン車の生産が急速に縮み、国内の自動車向けベルトは数量が4分の3まで減る。電動パワーステアリング用など新しい製品は、ゲイツ系のメーカーや欧米大手に取られる場面が増える。中国・インドの新興メーカーが汎用品の値段を引き下げ、海外ベルトは数量の減少に値下げが重なって、利益率が3%まで落ちる。国内は工場の稼働が下がり、利益率が12%に低下する。海外の拠点の減損も出て、自己資本は今の水準を割る。もはや値決め力のある優良な部品会社ではなく、普通の素材加工会社として評価される。配当は削られ、DOE5.4%程度という目安は守られない。政策保有株の売却と純現金が下を支えるので事業が止まることはないが、株主にとっては長く待つだけの10年になる。
- 国内ベルト:数量 10.9(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定。伝動と搬送を本数に直した数))× 価格 2,600(1 本あたりの平均売上(円・名目。物価・製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 283 億円・営業利益 34 億円。数量 0.75 倍・価格 1.30 倍・利益率 12.0%
- 海外ベルト:数量 28.8(ベルトの出荷本数換算(百万本・推定))× 価格 1,875(1 本あたりの平均売上(円・名目。物価・製品の組み合わせの変化を含む))→ 売上 540 億円・営業利益 16 億円。数量 0.85 倍・価格 1.25 倍・利益率 3.0%
- 建設資材・その他:数量 1,000(受注・出荷の件数(件・推定))× 価格 0.13(1 件あたりの平均売上(億円・名目))→ 売上 130 億円・営業利益 1 億円。数量 0.80 倍・価格 1.30 倍・利益率 1.0%
倍率:利益が数億円に細り、純利益に倍率を掛けても意味がないので、売れる資産の床で置く。純現金約 240 億円と持ち合い株の含み益の税引き後の合計 360 億円を床とし、今の自己資本 1,016 億円の 0.354 倍とした(費用の見直し前と同じ額)。
確率:電動化の急加速、中国・インドの新興メーカーの台頭、米国の関税の三つが重なる筋書き。単独では中程度でも、重なれば海外の拠点が採算割れに近づく。国内の高収益に依存する構造上、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内ベルト
自動車・産業機械・農機向けの伝動ベルトと、食品工場・物流向けの搬送ベルト。利益の約6割を稼ぐ。
| 数量ベルトの出荷本数換算(百万本・推定。伝動と搬送を本数に直した数) | 価格1 本あたりの平均売上(円・名目。物価・製品の組み合わせの変化を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14.5 | 2,000 | 290 | 73 |
| 10 年後 中立 | 13.8 | 2,680 | 369 | 81 |
取り方:本数の開示は無いので推定。国内ベルトの平均単価を1本あたり二千円前後(自動車用の小さなベルトから搬送ベルトまでの平均)と置き、売上290億円を約1,450万本に直した。国内の市場は約900億円・シェアは3割強という見立てと整合する。数量は実質の本数で、物価の分は1本あたりの売上に入れた。セグメント利益は有価証券報告書の値。
海外ベルト
北米・アジアなどで作る自動車用・産業機械用・事務機器用のベルト。売上の約6割。
| 数量ベルトの出荷本数換算(百万本・推定) | 価格1 本あたりの平均売上(円・名目。物価・製品の組み合わせの変化を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 33.9 | 1,500 | 508 | 45 |
| 10 年後 中立 | 37.9 | 2,010 | 762 | 65 |
取り方:本数の開示は無いので推定。海外は自動車用・事務機器用の小さなベルトが多く、平均単価を1本あたり千五百円前後と置き、売上508億円を約3,390万本に直した。日本を除く世界の伝動ベルト市場は約1兆円、シェアは5%前後という見立てと整合する。数量は実質の本数、物価は1本あたりの売上に入れた。セグメント利益は有価証券報告書の値。
建設資材・その他
防水・遮水シートと防水工事、電子材料(銀ナノ粒子の接合材など)、設備機械。
| 数量受注・出荷の件数(件・推定) | 価格1 件あたりの平均売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,250 | 0.10 | 125 | 5 |
| 10 年後 中立 | 1,250 | 0.13 | 168 | 5 |
取り方:件数の開示は無いので推定。防水・遮水の工事や資材の納入、電子材料・設備機械の販売を、1件あたり約1,000万円として年1,250件と置いた。建設資材68億円とその他58億円の合計。物価の分は1件あたりの売上に入れた。セグメント利益は建設資材0.9億円とその他3.6億円の合計。
リスクと懸念
電動化のペース
売上の約47%は自動車向けで、エンジン車向けは減る。会社は2030年度までに約60億円の減少を見込むが、エンジン車の生産が想定より早く縮めば、国内ベルトの数量と固定費の負担に直接響く。国内の高収益が崩れるのが最大の筋書きである。
海外ベルトの収益の振れ
海外ベルトの利益率は5〜11%で動き、2024年3月期は5%を割った。自動車メーカーの値下げ要求、中国・インドの新興メーカー、為替が重なると、売上が伸びても利益が出ない。伝動ベルトの約7割を海外で作るため、この振れは全社に及ぶ。
国内への利益の集中
セグメント利益の約6割は、売上の3割ほどの国内ベルトが生む。国内の需要は人口減と自動車生産の縮小で細る方向にあり、利益率が25%を保てなければ、全体の利益が大きく崩れる。建設資材は利益がほぼゼロで、補う力はない。
原材料と調達
ゴム、帆布、繊維、樹脂の価格上昇や調達の制約が、利益率を直接削る。価格転嫁は国内では通りやすいが、海外では自動車メーカーとの交渉で遅れやすい。原材料の価格は物価の上昇と別に動くので、転嫁の遅れは一時的に利益を削る。
米国の関税と地政学
米国は海外売上の約3割を占める大きな市場で、部材や製品の輸出入に関税がかかれば採算が動く。為替の変動も重なる。中国での自動車生産の変調も、アジアの補修需要を通じて響く。
資本効率の低さ
自己資本比率が約78%と厚く、ROEは9%前後にとどまる。還元を厚くしても利益は増えず、倍率を上げる材料になりにくい。政策保有株の縮減や自社株買いが遅れれば、資本効率への株主の不満が表に出る可能性がある。
今後の分かれ目
- 海外ベルトの利益率が10%を超えて2年以上続いたら
- 楽観・やや楽観の筋書きに確率を移す。海外が稼げる構造に変わったことになり、倍率の上限も上がる。
- 国内ベルトの利益率が20%を割ったら
- やや悲観・悲観に確率を移す。利益の約6割を稼ぐ部分の値決め力が崩れた合図になる。
- 電動化対応品の売上が計画の約100億円に向けて開示され、エンジン車向けの減少を上回ったら
- 中立から楽観寄りに見直す。穴埋めの立証になる。
- エンジン車の生産が会社の想定(2030年度に半減)より早く縮んだら
- やや悲観の確率を上げる。国内の固定費負担が増え、利益率が下がる。
- 政策保有株の売却が加速し、自社株買いが数百億円規模で行われたら
- 資本効率が改善する方向なので、ROEの前提を少し上げる。ただし利益そのものは増えないので価値の上振れは限られる。
- 中国・インドの新興メーカーが補修市場で値段を下げ、海外の値段が物価に届かなくなったら
- 悲観側の確率を上げる。海外の薄利がさらに薄くなる。
見ておくもの
- 国内ベルトのセグメント利益率(25%前後を保てるか)と、海外ベルトの利益率(9%を超えて定着するか)
- 電動パワーステアリング用など電動化対応品の売上と、エンジン車向けの減少幅の開示
- 政策保有株の売却額と、自社株買いの実施・規模
- 米国・インド・タイの拠点の稼働と、中国・インドの新興メーカーとの値段の差
倍率と資本コストの決め方
売上は国内・海外・その他ごとに、実質の市場 × シェアの数量と値段の指数で積んだ(市場の大きさは開示が無く推定)。物価の分は値段の指数に入れ、数量には混ぜていない。倍率は今の株価や過去・同業の倍率を見ず、k 7.5% と事業の ROE から正当化 PER を式で出して決めた。中立は ROE が k をわずかに上回るだけなので、下限 1÷k の近くに置いている。悲観側は ROE が k 以下で、やや悲観は上限 1÷k の 8 割台、悲観は利益が数億円に細るので、純現金+含み益の床で置いた。今の株価との比較は最後にビルドの計算で見た。 上場の持ち合い株の含み益(評価差額金 100 億円)の半分を余った現金に足した。悲観の床には、含み益を含む売却後の額がすでに入っている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.52→15.56 倍・やや楽観 PER 10.75→14.39 倍・中立 PER 11.42→13.33 倍・やや悲観 PER 10→11.03 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。