結論
ウエストホールディングスは、産業用太陽光の施工・販売を本業に、系統用蓄電所の開発、自社の発電所での売電、省エネ、保守を束ねる再エネ会社だ。電力会社の系列ではなく、創業者系の筆頭株主が 4 割超を持つ独立系である。筆者の結論は、今の値段は割高ということだ。理由は、利益の山を長く続く力として買っているように見えるからである。
2025 年 8 月期の営業利益は 86 億円。これを会社は 2027 年 8 月期に 135 億円まで引き上げる計画だ。押し上げ役は蓄電所で、完成した蓄電所を売る事業が 1 年で 10 か所から 30 か所に増える見込みである。
ただ、この売上は案件が完成して引き渡した年に立つ、いわば単発の稼ぎだ。買い手は商社・金融・電力会社など資金力のある相手で、参入も相次ぐ。太陽光の施工で起きたことが、蓄電所でも起きうる。補助や制度で急に膨らんだ市場は、数年で値段が落ち着く。
財務の弱さも見逃せない。純負債は時価総額の 6 割を超え、自己資本比率は 24% だ。自社発電所の借入が大半とはいえ、金利が上がる 10 年では利益を削る。
筆者は、成長が続く姿も十分ありうると考える。ただ、それを織り込んでも本質価値は今の時価総額をかなり下回る。高い倍率を払うには、利益が何年も同じ水準で続く確信が要る。この事業にその確信は持てない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10 年後も強い事業かが最初の問いである。蓄電所の開発は、いまは利益率が 26% と高い。だが、堀が浅い事業に高い利益率が出ているときは、競争がまだ追いついていないだけだと考える。商社や外資が本格参入すれば、利益率は 10% 台に落ち着く。それが中立の見立てだ。
次に、稼いだお金をどう使っているか。自社の発電所と蓄電所を持つのは理にかなう。ただ、借入に頼って増やす道は、事業の利益が一度崩れたときに身動きを奪う。純負債が時価総額の 6 割を超える会社を、筆者は長く持ちたいとは思わない。
安全域はどうか。悲観の場合、太陽光の施工も蓄電所の販売も大きく落ちる。頼れるのは自社の発電所の売電収入だけだ。資産を売っても負債を払うと手元にほとんど残らず、安全域は薄い。
最後に、わかりやすさ。蓄電所の売上は案件の引き渡しで立つ単発の稼ぎで、来期の姿が読みにくい。会社は 2027 年 8 月期まで利益が伸びると言うが、その先は誰にも見通せない。見通せない事業の利益に、高い倍率は払えない。確信度は低めに置く。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は 5 つある。最大は太陽光の施工と販売で、2025 年 8 月期の売上 329 億円と全体の 7 割弱を占める。工場や公共施設の屋根・遊休地に発電所を建て、完成品を投資家や事業会社に売る。以前は固定価格買取制度(FIT)の開発案件が主力だったが、制度が終わり、いまは自家消費や、買い手が先に決まる非 FIT 案件へ移っている。大阪ガスとは資本業務提携を結び、新しく作る非 FIT の電気 80 万 kW を優先して売る取り決めがある。
2 本目が系統用蓄電所である。送電網につないで電気を貯め、市場で売り買いする大型の蓄電池施設だ。ウエストは用地探しから設計・建設までを自前で行い、完成した蓄電所を売る。2025 年 8 月期は 10 か所を売って売上 57 億円、営業利益 15 億円。利益率は 26% と、ほかの事業の倍近い。2026 年 4 月には広島で 1 万 kW 級の蓄電所を稼働し、初めて自社で持った。運用は東芝に任せる。
残りの 3 つは、積み上がる側の収入である。自社発電所の売電とグリーン電力の供給が売上 62 億円、省エネ設備の賃貸が 12 億円、太陽光と蓄電所の保守が 20 億円。この 3 つで営業利益は 25 億円ほど。景気や案件の波に左右されにくい。
会社の目標は、日本一の「ファブレス」再エネ電力会社だ。工場は持たず、機器は中国・台湾・韓国から輸入し、施工は協力会社に任せる。従業員は連結で約 360 人、単体では 34 人と、身軽な持株会社である。
優良さと弱いところ
優良な会社かといえば、実力は高いが、堀は浅いと筆者は見る。営業利益率は 18% と、建設業としては異例に高い。過去 10 年の自己資本利益率(ROE)の中央値は 20% に近く、資本効率のよい会社だったのは確かだ。
ただ、その高さの出どころが問題である。太陽光の施工も、蓄電所も、買い手が決まれば利益が立つ、案件ごとの勝負だ。他社がまねできない強みと呼べるのは、用地と系統接続の権利を先に押さえる開発力、そして電力を買う相手とのつながりくらいだ。どちらも、資金力のある商社や電力会社が本気を出せば追いつかれうる。
利益率は、実は山と谷の振れが大きい。10 年前は 15%、2017 年は 8% まで落ち、2006 年と 2008 年には赤字の期もある。経営は創業者系の 1 人の株主が 4 割超を握るため、意思決定は速いが、少数株主の利益は経営者の考え方に左右される。
財務は薄い。自己資本比率は 24% で、純負債は自己資本の 1.6 倍だ。借入の一部は発電所を担保にしたもので返済の責任が限られるが、財務制限条項付きの借入が 109 億円ある。そのため景気や金利で崩れる余地が、同じ領域の電力系の会社よりずっと大きい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社が戦う市場は、国内の太陽光施工と、系統用蓄電所の 2 つで、電力会社系の電気工事会社とは別物だ。
太陽光の施工は、FIT の終わりで頭打ちになった。新しい需要は、自家消費・PPA(電気の長期売買契約)・屋根置きなどで、1 件が小さく、競争が厳しい。ウエストの再エネ受注残は 2025 年 8 月末で 26 億円と、前年の半分にまで減った。国内の人口は減り、土地や系統の制約も強まるので、数量は中立で 10 年に 0.9 倍前後とみる。
一方の蓄電所は、国の脱炭素電源の入札で蓄電池が 100 万 kW 超、1 回目と 2 回目で計 2 GW 超が選ばれるなど、国の後押しで急に立ち上がる市場である。ウエストは 2030 年度までに 6 か所・20 万 kW の大型蓄電所を開発する計画を持つ。再エネが増えるほど、余った電気を貯める需要は伸びる。数量が増えるのは確かだ。
問題は値段である。蓄電池の価格は世界で下がり続けており、設備価格が下がれば、完成品を売る値段も下がる。しかも開発会社が増えれば、用地や接続枠を取り合い、利益率は縮む。住友商事や外資系ファンドなど、資金力のある競合がすでに動いている。需要が伸びても、開発で稼ぐ会社の取り分は薄くなると考えるのが自然だ。
10 年先には、蓄電所は売って稼ぐ事業から、持って稼ぐ事業へ移る。ウエストも自社保有を増やす方針で、方向は正しい。ただ、持つ事業は資金と借入を食い、ROE は下がる。
資本政策と M&A
資本政策は、成長に使う会社の姿である。配当は期末の年 1 回で、2025 年 8 月期の配当性向は 48% で、2026 年 8 月期は増配を予想する。自社株買いは 2024 年 8 月期に約 28 億円を行ったが、2025 年 8 月期はゼロだった。
稼いだお金の使い道は、自社発電所と蓄電所の保有だ。純負債は 2014 年 8 月期の実質無借金から、2025 年 8 月期は 584 億円まで増えた。三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券と約 70 億円の蓄電所ファンドを組み、外部の資金も使う。借入の一部は発電所の収入だけで返す形で、会社全体への影響を抑えている。
M&A は、これまで大型のものは確認できない。筆頭株主は吉川隆氏で、持株比率は 43.8% だ。JERA が約 2.4%、信託銀行が約 6% を持つ。創業者系の大株主が支配しているため、買収される可能性は低いが、非上場化(MBO)や親族への承継が話題になる可能性は残る。
筆者が気にするのは、利益が伸びる局面で借入も増えている点だ。成長のお金を外から借りる会社は、金利が上がる 10 年では利益が削られる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
蓄電所は、国策で必ず伸びる市場だ。再エネが増えれば、余る昼の電気を貯めて夜に使う仕組みが要る。国の長期脱炭素電源の入札でも、蓄電池は大きな枠を取った。ウエストはその中で、用地・系統接続・建設・保守まで一貫して行う数少ない独立系だ。東芝や大阪ガス、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券など、買い手や運用の相手も押さえている。
実績も出ている。2025 年 8 月期は 10 か所を売り、営業利益率 26% を稼いだ。2026 年 8 月期の第 3 四半期までの累計営業利益は 46 億円と前年の 2.3 倍で、会社予想は市場の期待を下回る水準だった。次の期は 30 か所・180 億円を見込む。
太陽光の施工は FIT が終わって落ち込むが、自家消費と非 FIT で別の柱ができる。自社の発電所と蓄電所が増えれば、売電や運用の収入が毎年積み上がり、案件の波が小さくなる。営業利益率 20% 前後を保てるなら、10 年後の営業利益は 250 億円を超える。ROE も 20% 近くに戻る。創業者が 4 割を持つ会社は意思決定が速く、市場の変化に先回りできる強みもある。
慎重な見方
今の利益は、蓄電所の初期ブームで押し上げられた山だ。完成品を売る事業は、案件が途切れれば翌年の売上が消える。しかも 2025 年 8 月期の営業利益は、前期より 18% 減っていた。太陽光の施工が縮み、蓄電所がその穴を埋めている段階にすぎない。
蓄電所の開発には、商社・金融・電力会社が次々に入ってくる。用地や接続枠の争奪が起きれば、利益率 26% は保てない。蓄電池の価格は世界で下がり続けており、売値も下がる。制度の見直しで入札の条件が変われば、案件ごと消える恐れもある。
借入が重いのも気がかりだ。純負債は 584 億円と時価総額の 6 割を超え、自己資本比率は 24%、利払いを払う力は営業利益の 8 倍にとどまる。金利が上がる 10 年では、利払いだけで年 15 億円ほど利益が削られる。財務制限条項付きの借入が 109 億円あり、利益が落ちれば条件に触れる可能性もある。
経営は創業者系の 1 人が 4 割超を握り、会社の資金の使い道に少数株主の声は届きにくい。しかも 2006 年と 2008 年には赤字の期があり、過去の高い ROE は例外的な好況だった。
どちらに重みを置いたか
強いのは慎重な見方だ。蓄電所の需要が伸びること自体は疑わないが、開発で稼ぐ会社の取り分は、競争と電池価格の下落で薄くなる。会社の計画が通っても、10 年後に利益が 2027 年の水準を大きく上回るとは考えにくい。
確率は、中立を中心にやや悲観側へ寄せた。強気の筋書きは、蓄電所の販売が 10 年続いて高い利益率も保つ条件が重なる。実現すれば大きいが、確率は 1 割にとどめた。逆に、借入の重さと案件の波を考えると、やや悲観が 2 割台半ばは妥当だ。悲観の確率は、利益の山が崩れて借入が重荷になる姿として 12% に置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/08 期)
確率で加重した株価時価総額 2,420 円960 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 936 円371 億円)。 今の値に割り戻すと 1,631 円647 億円、今との差 −25.1%、 期待の年率 +4.4%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 6,075 円2,409 億円 | 1,614 円640 億円 | +253.3% | +13.5% | 769 円305 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,742 円1,484 億円 | 1,261 円500 億円 | +129.9% | +8.7% | 1,001 円397 億円 |
| 中立 | 33% | 2,678 円1,062 億円 | 1,109 円440 億円 | +74.1% | +5.7% | 1,250 円496 億円 |
| やや悲観 | 25% | 632 円251 億円 | 555 円220 億円 | −45.4% | −5.9% | 297 円118 億円 |
| 悲観 | 12% | 183 円72 億円 | 151 円60 億円 | −84.7% | −17.1% | 40 円16 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,420 円960 億円 | 936 円371 億円 | +54.2% | +4.4% | 3,356 円1,331 億円 |
今の株価時価総額 2,176 円863 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:蓄電所の開発が 10 年続き、保有の収入が土台になる 利益 168 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 6,075 円2,409 億円
蓄電所は国の脱炭素電源の入札と、自社保有の増加で、10 年にわたって数量が伸びる。ウエストは用地・系統接続・建設・保守の一貫体制で他社に先んじ、年 250MW 規模の販売を保つ。電池の価格は下がるが、大きな案件の比率が上がり、1MW あたりの販売額は保たれる。
自社保有の発電所と蓄電所の収入は 140 億円を超え、案件の波を和らげる。太陽光の施工は自家消費と非 FIT で下げ止まり、大阪ガスなどへの販売が支える。借入は発電所の収入で返せる形が中心で、金利上昇の影響も吸収できる。
創業者系の筆頭株主の方針も、配当と成長投資のバランスが取れた形で続く。営業利益は 290 億円近くに達し、ROE も 20% 近くを保つ。10 年のあいだ競合に押されず、利益率を守り切る、うまくいった姿である。
- 太陽光 EPC・販売:数量 260(施工容量(MW、推定))× 価格 182(1MW あたり販売額(百万円))→ 売上 472 億円・営業利益 61 億円。自家消費・非 FIT に切り替わり下げ止まる
- 系統用蓄電所の開発・販売:数量 250(販売容量(MW、推定))× 価格 330(1MW あたり販売額(百万円))→ 売上 825 億円・営業利益 182 億円。年 250MW を販売、利益率も保つ
- 電力(自社売電・グリーン電力供給):数量 700(販売電力量(GWh、推定))× 価格 21(平均販売単価(円/kWh))→ 売上 144 億円・営業利益 38 億円。自社保有の増加で売電収入が積み上がる
- 省エネ(ESCO):数量 140(契約施設数(件、推定))× 価格 13(1 件あたり売上(百万円))→ 売上 18 億円・営業利益 5 億円。更新需要で件数が増える
- メンテナンス(O&M):数量 2,400(管理容量(MW、推定))× 価格 1.74(1MW あたり年間売上(百万円))→ 売上 42 億円・営業利益 13 億円。管理容量が自社施工分で伸びる
倍率:事業の純利益 168 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.3% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.34 倍、時価総額 2,409 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:蓄電所の販売が 10 年続き、利益率も保ち、保有の収入が土台に育つ条件が重なる必要があり、競合と電池価格の下落を考えると 1 割にとどめた。
やや楽観 20% やや楽観:蓄電所は伸びるが、利益率は競争で落ち着く 利益 112 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,742 円1,484 億円
蓄電所の販売は年 180MW 規模に育つ。競合の参入と電池価格の下落で、利益率は今の 26% から 20% に落ち着く。それでも用地と接続枠を持つ強みで、案件は途切れない。
太陽光の施工は FIT の終わりで縮むが、自家消費の需要で 10% ほどの減少にとどまる。自社発電所の売電収入は積み上がり、電力事業は 120 億円を超える。省エネと保守も、自社施工分の増加で緩やかに伸びる。
借入は増えるが、収入が積み上がる分で返済を支え、財務制限条項に触れる場面はない。配当は利益の 5 割を保つ。営業利益は 200 億円ほどで、ROE は 15% 近い。大きな失敗もなく、大きな成功もない、起伏の少ない 10 年になる。
- 太陽光 EPC・販売:数量 245(施工容量(MW、推定))× 価格 179(1MW あたり販売額(百万円))→ 売上 438 億円・営業利益 55 億円。自家消費の需要で減少が緩やか
- 系統用蓄電所の開発・販売:数量 180(販売容量(MW、推定))× 価格 315(1MW あたり販売額(百万円))→ 売上 567 億円・営業利益 113 億円。利益率は 26% から 20% へ落ち着く
- 電力(自社売電・グリーン電力供給):数量 600(販売電力量(GWh、推定))× 価格 21(平均販売単価(円/kWh))→ 売上 124 億円・営業利益 31 億円。自社発電所の積み増しで増加
- 省エネ(ESCO):数量 135(契約施設数(件、推定))× 価格 13(1 件あたり売上(百万円))→ 売上 17 億円・営業利益 5 億円。契約が緩やかに伸びる
- メンテナンス(O&M):数量 2,200(管理容量(MW、推定))× 価格 1.74(1MW あたり年間売上(百万円))→ 売上 38 億円・営業利益 12 億円。自社施工分が積み上がる
倍率:事業の純利益 112 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.7% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍。全体の PER 13.25 倍、時価総額 1,484 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:蓄電所の数量は伸びるが、競合の参入で利益率は 20% 前後に下がる姿。会社計画に近いが、10 年の持続は割り引いて 2 割とした。
中立 33% 中立:蓄電所は伸びるが、取り分が薄くなり利益は横ばい 利益 86 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 2,678 円1,062 億円
蓄電所の需要は国の後押しで伸び、販売は年 130MW ほどに育つ。ただ、競合の参入で利益率は 18% に下がり、電池の価格下落で 1MW あたりの販売額も伸びない。売上は増えても、利益は 2027 年 8 月期の計画とほぼ同じ水準にとどまる。
太陽光の施工は FIT の終わりで 10% 弱縮み、自家消費・非 FIT の案件が埋める。自社発電所と蓄電所の保有が増え、電力事業の売上は 100 億円を超える。省エネと保守は地味ながら着実に増える。
純負債は発電所の増加とともに増え、金利が上がるので、利払いが利益を 15 億円ほど削る。配当は利益の 5 割強を続け、自己資本は薄いまま緩やかに積み上がる。営業利益は 150 億円台で、物価で名目が伸びる分を、競争が相殺する 10 年になる。
- 太陽光 EPC・販売:数量 230(施工容量(MW、推定))× 価格 176(1MW あたり販売額(百万円))→ 売上 405 億円・営業利益 49 億円。自家消費・非 FIT で縮みを緩和
- 系統用蓄電所の開発・販売:数量 130(販売容量(MW、推定))× 価格 300(1MW あたり販売額(百万円))→ 売上 390 億円・営業利益 70 億円。利益率は 18%。電池価格が実質で 2 割ほど下がり(10 年 0.8 倍)、物価の 1.34 倍を打ち消して売値は 1.05 倍にとどまる
- 電力(自社売電・グリーン電力供給):数量 520(販売電力量(GWh、推定))× 価格 21(平均販売単価(円/kWh))→ 売上 107 億円・営業利益 27 億円。自社保有の増加で売電収入が伸びる
- 省エネ(ESCO):数量 130(契約施設数(件、推定))× 価格 13(1 件あたり売上(百万円))→ 売上 17 億円・営業利益 5 億円。契約が緩やかに増える
- メンテナンス(O&M):数量 2,000(管理容量(MW、推定))× 価格 1.74(1MW あたり年間売上(百万円))→ 売上 35 億円・営業利益 11 億円。管理容量が増える
倍率:事業の純利益 86 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.3 倍。全体の PER 12.35 倍、時価総額 1,062 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:蓄電所の需要の伸びと、競争・電池価格の下落による取り分の低下がほぼ釣り合う、最も重みを置く姿。
やや悲観 25% やや悲観:競争と電池価格の下落で、蓄電所の稼ぎが細る 利益 33 億円 · PER 7.6 倍 · 株価時価総額 632 円251 億円
蓄電所の開発に商社や外資が本格的に参入し、用地と接続枠の取り合いが激しくなる。ウエストの販売は年 60MW にとどまり、利益率は 12% まで落ちる。電池価格の下落で売値も下がり、開発で稼ぐ事業は見る影もなく細る。
太陽光の施工は FIT の終わりと人口減で、年 170MW まで縮む。価格競争で利益率は 8% 台に落ちる。自社発電所の売電は残るものの、出力抑制と市場価格の低下で伸びは鈍い。
借入は金利が上がる中で重荷になり、利払いが利益を大きく削る。配当は維持するが、成長投資は止まる。営業利益は 70 億円ほどで、ROE は資本コストを下回る。稼ぎの柱が一つ崩れ、会社は守りに入る 10 年だ。
- 太陽光 EPC・販売:数量 170(施工容量(MW、推定))× 価格 168(1MW あたり販売額(百万円))→ 売上 286 億円・営業利益 24 億円。FIT 終了と人口減で縮小、価格競争
- 系統用蓄電所の開発・販売:数量 60.0(販売容量(MW、推定))× 価格 270(1MW あたり販売額(百万円))→ 売上 162 億円・営業利益 19 億円。競争で件数も利益率も落ちる
- 電力(自社売電・グリーン電力供給):数量 450(販売電力量(GWh、推定))× 価格 21(平均販売単価(円/kWh))→ 売上 93 億円・営業利益 20 億円。出力抑制と市場価格の低下で伸びが鈍る
- 省エネ(ESCO):数量 110(契約施設数(件、推定))× 価格 13(1 件あたり売上(百万円))→ 売上 14 億円・営業利益 4 億円。契約が減る
- メンテナンス(O&M):数量 1,800(管理容量(MW、推定))× 価格 1.74(1MW あたり年間売上(百万円))→ 売上 31 億円・営業利益 9 億円。管理容量の伸びが鈍い
倍率:事業の ROE 5.9% は k 9% 以下。伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 10.5 倍が上限。ROE が k を下回り、利益率の低い事業が中心になるので、上限の 7.2 割の 7.6 倍に置いた。純利益 33 億円 × 7.6 倍で時価総額 251 億円。
確率:競合の参入と制度の見直しで蓄電所の販売が伸びず、太陽光の施工も縮み続ける姿。借入の重さを考え、2 割台半ばに置いた。
悲観 12% 悲観:蓄電所の事業が崩れ、借入が重荷になる 利益 −5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 183 円72 億円
蓄電所は制度の見直しと競合の参入で、販売が年 15MW にまで落ち込む。残った案件も、電池の値下がりで赤字になる。太陽光の施工も縮み、受注は低迷して固定費が重くのしかかる。
自社発電所は出力抑制と電力価格の下落で、収入が想定を下回る。借入の返済と金利上昇で、利払いが営業利益を上回り、財務制限条項に触れて借り換えの条件が悪化する。配当は大きく減らし、資産の売却で借入を返す。
営業利益は 10 億円を割り、純利益は赤字になる。筆頭株主の 4 割超の持株も、経営の立て直しに動く。会社は、稼ぎの柱を失い、もう優良ではなくなった 10 年だ。
- 太陽光 EPC・販売:数量 100(施工容量(MW、推定))× 価格 151(1MW あたり販売額(百万円))→ 売上 151 億円・営業利益 6 億円。受注が低迷し固定費が重い
- 系統用蓄電所の開発・販売:数量 15.0(販売容量(MW、推定))× 価格 250(1MW あたり販売額(百万円))→ 売上 38 億円・営業利益 −2 億円。制度の見直しと競争で販売が激減
- 電力(自社売電・グリーン電力供給):数量 300(販売電力量(GWh、推定))× 価格 17(平均販売単価(円/kWh))→ 売上 51 億円・営業利益 8 億円。出力抑制と市場価格の低下で収入が減る
- 省エネ(ESCO):数量 90.0(契約施設数(件、推定))× 価格 13(1 件あたり売上(百万円))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。契約が減る
- メンテナンス(O&M):数量 1,500(管理容量(MW、推定))× 価格 1.74(1MW あたり年間売上(百万円))→ 売上 26 億円・営業利益 7 億円。管理容量の伸びが止まる
倍率:稼ぐ力はほぼ無く、床は売れる資産の税後で測る(赤字の谷で EV ÷ 営業利益は 100 倍を超えるが、利益が小さい年の値で参考にならない)。自己資本は減損で 222 億円に減るとして、今の自己資本 362 億円に PBR 0.2 倍を掛けた。
確率:利益の山が崩れて借入が重荷になる姿。過去に赤字の期が 2 回あり、財務の脆さもあるため、悲観を 12% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
太陽光 EPC・販売
産業・公共向け太陽光発電所の設計・施工・販売。FIT の開発型から、自家消費・PPA・非 FIT 向けの受託型へ移っている。
| 数量施工容量(MW、推定) | 価格1MW あたり販売額(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 250 | 132 | 329 | 46 |
| 10 年後 中立 | 230 | 176 | 405 | 49 |
取り方:再エネ事業の売上 328.8 億円(有報)を、施工容量と 1MW あたりの販売額に分けた推定。開示は金額だけなので、年 250MW・1.3 億円/MW とおいた。容量は実質、販売額は名目。
系統用蓄電所の開発・販売
特別高圧・高圧の系統用蓄電所を開発・建設して販売する。2025 年に事業化し、自社保有も増やす。
| 数量販売容量(MW、推定) | 価格1MW あたり販売額(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 20.0 | 286 | 57 | 15 |
| 10 年後 中立 | 130 | 300 | 390 | 70 |
取り方:蓄電所の売上 57.1 億円は 10 か所の販売(有報)。高圧中心で 1 か所約 2MW と仮定し、年 20MW・2.9 億円/MW とおいた。推定。 売値は電池価格の下落が物価を打ち消し、名目で伸びにくい(10 年で 1.05 倍)。
電力(自社売電・グリーン電力供給)
自社の太陽光発電所の売電と、顧客へのグリーン電力の供給。ストック収益の柱。
| 数量販売電力量(GWh、推定) | 価格平均販売単価(円/kWh) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 400 | 15 | 62 | 16 |
| 10 年後 中立 | 520 | 21 | 107 | 27 |
取り方:電力事業の売上 61.6 億円を、年 400GWh・電力単価(円/kWh)15.4 に分けた推定。自社発電所は 2.3 億円/MW 前後で積み増している。
省エネ(ESCO)
顧客の設備を省エネ機器に更新し、設備の賃貸料と電気代の削減分で回収する。
| 数量契約施設数(件、推定) | 価格1 件あたり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 120 | 9.63 | 12 | 3 |
| 10 年後 中立 | 130 | 13 | 17 | 5 |
取り方:省エネ事業の売上 11.6 億円を 120 件・1 件約 960 万円に分けた推定。
メンテナンス(O&M)
太陽光・蓄電所の保守運用。自社施工分が管理容量に積み上がる。
| 数量管理容量(MW、推定) | 価格1MW あたり年間売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 1,500 | 1.30 | 20 | 6 |
| 10 年後 中立 | 2,000 | 1.74 | 35 | 11 |
取り方:メンテナンスの売上 19.5 億円を、管理容量約 1.5GW・年 130 万円/MW に分けた推定(約 710 件・約 1GW 規模の施工実績から見て妥当な桁)。
リスクと懸念
蓄電所の利益率の低下と案件の途切れ
蓄電所の売上は完成品を売った年に立つ単発の稼ぎで、営業利益率 26% が保たれる保証はない。商社・金融・電力会社の参入で用地や接続枠の争奪が強まれば、利益率は縮み、次の年の売上は読みにくくなる。会社が見込む 2027 年 8 月期の 30 か所が遅れれば、利益計画の核が崩れる。
太陽光の施工の縮小
FIT の開発案件が終わり、再エネ事業の売上は前期 22% 減、営業利益は 45% 減だった。受注残は 26 億円で前年の半分以下に落ちている。自家消費・非 FIT の受託型への切り替えが進まなければ、最大の売上の柱が細り続ける。
借入の重さと金利
純負債は 584 億円で、時価総額の 6 割を超える。借入の一部は発電所の収入だけで返す形だが、財務制限条項付きの借入が 109 億円ある。金利が 3.5% 前後まで上がれば、10 年で利益が 15 億円ほど削られる。
制度と系統の制約
蓄電所の入札条件や、再エネの出力抑制、電気事業法の改正は、案件ごとの採算に直接効く。農地転用や地域住民の合意が遅れると、引き渡しが翌期にずれ、利益の期ずれが起きる。
調達と為替
太陽光パネルや蓄電池は、中国・台湾・韓国のメーカーから輸入する。円安や輸出規制、メーカーの供給の都合で、仕入れ値と工期が動く。為替は筋書きでは 150 円で固定したが、現実には利益の振れ要因だ。
筆頭株主への依存とガバナンス
筆頭株主の吉川隆氏は 43.8% を持つ。意思決定は速いが、資金の使い道や配当の方針は支配株主の考えに左右される。単体の従業員は 34 人と少なく、持株会社の統治は 41 社の子会社への目配りに頼る。
今後の分かれ目
- 蓄電所の販売が 2027 年 8 月期に会社計画どおり 30 か所前後に届いたら
- やや楽観・楽観の確率を上げてよい。開発力が競争の中でも通用する証拠になる。
- 蓄電所の 1 か所あたりの販売額や利益率が目に見えて下がったら
- やや悲観側へ重みを移す。開発事業の稼ぎが薄くなり始めた合図だ。
- 自社保有の発電所・蓄電所からの収入が全体の利益の半分を超えたら
- 利益の質が上がり、倍率を高めに置いてよい。案件の波が小さくなる。
- 再エネ事業の受注残が増加に転じたら
- 太陽光の施工が底を打った証拠として、中立の数量をやや上げてよい。
- 財務制限条項に触れる、または借入の借り換え条件が悪化したら
- 悲観の確率を上げる。借入の重さが利益を食う局面に入る。
- 筆頭株主の持株の売却や、非上場化の提案が出たら
- 資本政策の前提が変わる。買付価格しだいで評価を見直す。
見ておくもの
- 蓄電所の販売件数・1 か所あたりの販売額・利益率(四半期)
- 再エネ事業の受注残の増減
- 自社発電所・蓄電所の稼働容量と電力事業の利益
- 純負債と財務制限条項の状況
- 長期脱炭素電源オークションの入札条件と蓄電池の落札量
倍率と資本コストの決め方
数量と価格は、売上をセグメントごとに MW・件・GWh と名目単価に分けた推定で、今の株価は使っていない。価格は物価 3% を入れた 10 年 1.34 倍を基本に置き、蓄電所だけは、電池価格の実質 2% 前後の下落(中立で 10 年 0.8 倍)が物価 1.34 倍を打ち消し、名目 1.05 倍にした。倍率は ROE と k から式で出し、市場の PER は参照していない。今の時価総額は最後に比べただけで、本質価値が下回る結論は、利益の山を買っている面と、k を 9% と高く置いた効果の両方による。k は同じ領域の電力系の会社(8.0〜8.2%)より高いが、系列の安定受注が無い点、借入の重さ、政策依存の寿命から quality を +2.0% とした。同領域でも事業の中身が違うため、市場の見通しは電力系の節ではなく固有に置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.6→14.34 倍・やや楽観 PER 10.9→13.25 倍・中立 PER 10.6→12.35 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 2.0% = 9.5%。同じ領域の電力系の工事会社(quality 0.2〜0.8%)より高いのは、系列の安定受注が無く、政策と市場に値段が左右される点と、純負債が時価総額の 6 割を超える点のため。個別のリスクは筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 9.00%。