結論
ストライクグループは、中堅・中小企業の売却と買収を仲介し、成約に応じた報酬を得る会社である。筆者の結論は「割安」だ。AIによる仲介業務の代替、手数料率の低下、競争激化を織り込んでも、10年間の株主還元と将来の稼ぐ力を合わせた価値は、基準時価総額の804億円を上回ると見る。
強みは、会社を売りたい経営者と買いたい企業を結びつける案件獲得力にある。2025年9月期の成約は275組で、会社が推計する国内年間約1万2,000組のM&A市場に対する数量シェアは約2.3%だった。税理士団体との提携は2026年に全国47都道府県へ広がり、買収候補企業を探す仕組みも蓄積している。ただし、この紹介網は競合が使えない独占網ではなく、仲介先の乗り換えも一度の取引なら難しくない。
2026年10月21日には、2026年9月期の会社予想を売上高271億円、営業利益104億円、純利益71億円へ上方修正した。大型案件の成立が利益を押し上げており、事業の勢いは確かに強い。しかし、大型案件に恵まれた年度の営業利益率が10年先まで続くと考えるのは危うい。中立では成約組数が伸びても、平均手数料の実質価値と営業利益率は低下すると見ている。
最大の論点は、10年後にも人を介したM&A仲介に現在に近い報酬が支払われるかだ。AIは候補探索、企業価値評価、資料作成、契約書確認を大きく安くする。最終的な交渉と責任の引き受けには人が残るとしても、仕事量が減るほど仲介報酬を維持しにくくなる。将来の安定成長を当然視せず、10年後以降の名目成長をゼロとする慎重な評価でも、一定の安全域が残る。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、ストライクは理解しやすい稼ぎ方と、高い資本効率を備えた魅力的な会社である。工場や大量の在庫を抱えず、人と取引情報を使って高い利益を生み出す。借金に頼る必要も小さく、業績が一時的に悪化しても会社の存続が危ぶまれる可能性は低い。
それでも、この会社の将来利益を簡単に予測できるとは思わない。顧客が毎年契約を更新する業務ソフトとは違い、M&Aの依頼は一回性である。次の案件を取るためには、提携先との関係、担当者の能力、広告、営業活動を維持しなければならない。競合が手数料を下げたり、AIが案件探索と資料作成を安くしたりすれば、顧客は仲介会社の価値を厳しく見直すようになる。
同社には、全国の税理士団体との提携や実績の蓄積という優位がある。しかし、これらは絶対的な独占でも、法的に保護された顧客の囲い込みでもない。だから、長期の超過利益が永遠に続くとは考えず、優位が徐々に薄まることを前提に評価する方が適切だ。現在の高いROEよりも、新しく採用する人材や周辺事業に投じる資金がどれほどの利益を増やすかを重視したい。
現在の時価総額には、将来の仲介手数料が大きく縮む可能性も相応に反映されていると見る。利益の伸びを2026年の好業績から直線的に延ばさず、長期の成長率をゼロまで落としてなお価値が残るなら、安全域は存在する。ただし、AIと規制が仲介そのものの報酬構造を変える場合、過去の高利益率は価値の根拠にならない。その変化を早く見極めることが、長期株主に求められる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は明快である。会社を譲渡したい経営者から案件を受託し、買収候補企業を探して条件をまとめ、最終的にM&Aが成約すれば報酬を受け取る。通常の仲介では売り手と買い手の双方が顧客となるため、一つの取引から双方の手数料を得られる。この点が、単独の売り手または買い手だけを支援するFA業務との違いである。
2025年9月期の売上高203億円は、275組の成約から生まれた。1組当たりの売上高は約7,390万円となる。これには最終成約報酬のほか、基本合意に伴う報酬なども含まれるため、純粋な成功報酬単価とは同じではない。2024年の平均単価は約7,200万円で、2025年には大型案件の増加によって上昇した。2026年6月までの9か月間も212組が成約し、平均単価は約7,540万円だった。
案件獲得経路には、金融機関や会計事務所などからの紹介と、会社自身による直接営業がある。2025年の新規受託では紹介が約半分を占めた。税理士団体との全国的な提携、1999年から運営するM&Aマッチングサイト「SMART」、過去の成約情報が案件を集める仕組みになっている。一方、紹介が増えるほど提携先への紹介料も増えるので、売上が伸びた分がそのまま利益になるわけではない。
2026年4月には持株会社へ移行し、既存の仲介会社に加えて、FAを担当するストライク・ファイナンシャルアドバイザリーと、M&A戦略を支援するストライク・ストラテジックコンサルティングを整えた。さらに台湾での子会社設立を決め、海外案件にも足場を築こうとしている。ただし、現時点の公表業績はM&A仲介を中心とする単一セグメントであり、周辺事業の売上を独立して把握できない。将来の収益を評価する際に、開示されていない新規事業の利益を大きく先取りするべきではない。
優良さと弱いところ
同社の競争力は、資金を大量に投じなくても利益を増やせるところにある。2025年9月期の自己資本は約215億円で、純利益は約47億円だった。過去10年間のROE中央値は26.2%と高く、営業赤字の年度もない。2021年から2025年にかけて純利益は約24億円から47億円へ増えた。同期間の自己資本増加額に対する純利益増加額は約19%で、粗い増分収益性も資本コストを上回っている。ただし、自己資本には余剰資金が混ざるため、これは厳密な増分投下資本利益率ではない。
競争上の堀、すなわち他社にまねされにくい強みとしては、紹介ネットワーク、成約経験、経営者からの信用がある。事業承継は経営者にとって一生に一度の重大な判断になりやすく、経験豊富な担当者に任せたい需要は残る。会社が蓄積した案件情報や買い手候補の知識にも実用的な価値がある。
ただし、堀を「強い」とは判定しない。取引が終われば顧客との契約も基本的に終わり、継続課金による解約障壁はない。金融機関や税理士は複数の仲介会社を紹介でき、優秀な担当者が競合へ移る可能性もある。手数料の実績上昇は大型案件の構成比上昇でも説明でき、同じサービスを恒常的に値上げできた証拠とは言えない。
財務は極めて健全である。2025年9月期の純現金は約202億円で、自己資本比率も約87%だった。しかし、この現金の全額を自由に配れるわけではない。人件費、成功報酬に連動する賞与、納税、将来の事業投資を賄う必要がある。高い過去ROEと現金の厚さを評価する一方で、人への依存度と手数料の持続性を慎重に見るべき会社である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のM&A市場には、後継者不足と企業の事業再編という長い追い風がある。帝国データバンクが示した2025年度の公表M&A件数は5,228件で、前年度から増加した。一方、ストライクは未公表案件を含む国内市場を2025年に年間約1万2,000組と推計している。両者は対象範囲が違うため同じ統計として比較できないが、小規模な非公表取引を含む市場には相当の広がりがある。
ストライクの275組を会社推計市場と比較すると、数量シェアは約2.3%となる。競合の日本M&Aセンターは2025年度に1,061件の成約実績を公表し、M&Aキャピタルパートナーズも2025年9月期にグループで248件を成約した。年度や数え方に差があるため厳密なシェア比較には使えないが、ストライクは最大手ではなく、有力な複数社の一角という位置づけである。さらにクオンツ総研、銀行系、会計事務所系、独立した仲介会社、オンラインのマッチングサービスが競争相手となる。
会社が推計する市場は今後も拡大すると考える。経営者の高齢化に加え、企業が人材や技術を取得するための成長戦略型M&Aも増えている。ただし、後継者不在企業の売却需要は無限ではない。地域の企業数そのものが減る局面では、成約件数の伸びが鈍る可能性がある。中立では2035年の国内市場を年間1万9,000組程度と想定し、ストライクがシェアを約3%に高めると見ている。
規制も業界の収益構造を変え始めた。中小企業庁の中小M&Aガイドライン第3版は、手数料や業務内容の説明、利益相反への対応、不適切な買い手への対処を強めている。売り手と買い手の双方から料金を取る仕組みには、利用者の利益と仲介会社の利益が一致しない場面がある。この問題が深刻になれば片側FAへの移行や手数料率の低下が進む。AIが案件探索や評価を低価格化する動きも重なり、業界の取引数量が増えても一件当たりの利益が減る時代は十分にあり得る。
資本政策と M&A
資本配分は、これまで大型設備より人材採用と紹介網の拡充が中心だった。2021年から2025年まで、利益の増加とともに自己資本と現金が積み上がった。2025年には自己株式の消却も実施したが、長期にわたる大規模な自社株買いが株主価値を押し上げたという実績はまだ乏しい。2026年の持株会社化は、M&A仲介、FA、戦略コンサルを分けて経営判断を速めるためのもので、上場廃止を伴う再編ではない。
2026年4月公表の中期計画では、2028年9月期に新規受託1,639件、成約411組、売上高300億円、営業利益101億円を掲げた。連結ROEは25%以上を目指すとしている。2026年10月21日の業績予想上方修正によって、2026年9月期の予想営業利益が約104億円となり、従来の2028年目標を一時的に上回る見通しになった。ただし、大型案件の寄与が大きいため、これを新しい恒常的な利益水準とは断定しない。
株主還元は明確に強化された。2028年9月期までの配当下限は、現在の株数では年間約37億円に相当し、配当性向50%を維持し、50%を下回る場合には増配する方針である。自社株買いは機動的に検討するものの、実施額の数字の約束はない。会社が示したキャッシュ配分では、2026年9月末の実質キャッシュ予想166億円のうち、守りの資金102億円、成長投資資金54億円、余剰資金10億円という区分だった。
将来の株主価値を左右するのは、利益を貯めるだけでなく、利益率を維持できる案件獲得へ再投資するか、余剰分を適切に還元できるかである。台湾子会社など新事業への投資は合理的な範囲なら評価できるが、買収した事業の収益性が低ければ高ROE企業の魅力を薄める。中立では配当と機動的な自社株買いを合わせて利益の6割強を還元するものの、すべての留保資金が高い利回りで再投資されるとは考えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
日本の中小企業は、事業承継と成長戦略の両面でM&Aを必要としている。家族内で承継できない会社を外部へ引き継ぐ需要は続き、企業の規模拡大や人材獲得を目的としたM&Aも広がる。日本の事業承継M&Aは、米国などに比べれば仲介市場としてなお発展途上にあり、成約件数が長期間増え続ける余地がある。
ストライクは、全国47都道府県の税理士団体との提携を完成させた。地方の税理士は顧問先の事業承継問題を早い段階で知ることができるため、この情報経路は新規案件の獲得に有利に働く。1999年から続くSMARTの運営と数千件に及ぶ成約経験も、買い手候補との接点を広げる基盤になる。2026年にはFAと戦略コンサルティングの専門会社を設け、台湾への進出も始めた。中小企業の承継に限らず、中堅企業の買収戦略、スタートアップの出口戦略、国際取引まで顧客を広げられる。
2026年10月には大型案件の成立によって会社予想を大幅に引き上げた。これは規模の大きな案件を扱う能力が育っている証拠でもある。人材育成が進み、一人当たりの成約生産性が上がれば、従来より低い追加費用で案件を増やせる。業務の自動化は、同社が持つ営業網と顧客からの信頼を強化する方向にも利用できる。最終交渉や経営者の意思決定への支援には人が残るため、単純なマッチングの自動化だけでは仲介会社の存在意義は失われない。
利益を増やしたうえで配当や自社株買いを厚くすれば、株主は成長と還元の双方から利益を得られる。大規模な設備投資や借入によって成長を追う必要がないことは、他業種にはない強みである。
慎重な見方
M&A仲介業界は、需要が成長することと仲介会社が高い報酬を維持できることを混同しやすい。成約を取り付けるには人の交渉力が必要だが、企業評価、候補企業の抽出、資料作成、買い手の調査、契約条件の整理など、現在人が行う仕事の多くはAIエージェントによって自動化される。顧客がそれを理解すれば、高額な成功報酬の根拠を問い直すようになる。
中小M&Aガイドラインの強化も収益性への圧力となる。売り手と買い手の双方から報酬を受け取る仕組みは、利益相反を疑われやすい。買い手による経営者保証の引き継ぎ不履行など、取引後の問題が発生すれば、仲介会社にはより重い説明責任が求められる。管理部門とコンプライアンスの費用が増える一方、顧客との手数料交渉は厳しくなる。契約締結からクロージングまでの期間が長くなっていることは、すでに業務負担の増加を示している。
紹介網も独占的な資産ではない。金融機関、会計事務所、税理士は日本M&AセンターやM&Aキャピタルパートナーズ、その他の仲介会社とも関係を結ぶことができる。紹介経由の案件が増えるほど紹介料率の負担も増す。優秀なコンサルタントの採用競争によって給与や賞与も上がり、取引数量が増加しても利益率は低下し得る。
さらに、2026年の大幅上方修正は大型案件の集中という性質を持つ。これが毎年続くと見込むのは危険だ。事業承継需要はいずれ人口減少や中小企業数の減少と向き合う。業界が成熟した後、AIを利用した低価格仲介や片側FAが主流になれば、現在の高い利益率を取り戻すことは難しい。
どちらに重みを置いたか
長期の数量拡大には十分な根拠があり、国内市場で約2%のシェアしか持たないストライクには成長余地がある。ただし、紹介網は独占ではなく、案件の平均報酬と営業利益率を過去の好調期のまま維持する根拠は弱い。中立では数量増加と手数料圧縮を同時に見込み、10年後以降の名目成長はゼロとした。確率は上側26%、中立35%、下側39%とやや慎重に配分した。下に寄せる理由は、AI代替だけではなく、両面仲介への規制、案件の長期化、紹介料の増加という既に観察できる会社固有の変化である。それでも高い資本効率と株主還元が価値を支えると判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,502 円1,441 億円(+ 還元の換算額還元の合計 913 円526 億円)。 今の値に割り戻すと 1,886 円1,086 億円、今との差 +10.1%、 期待の年率 +8.5%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 7,892 円4,547 億円 | 2,187 円1,260 億円 | +488.4% | +23.5% | 806 円465 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,473 円2,577 億円 | 1,293 円745 億円 | +236.6% | +15.3% | 1,038 円598 億円 |
| 中立 | 35% | 2,381 円1,371 億円 | 946 円545 億円 | +94.2% | +8.3% | 1,164 円671 億円 |
| やや悲観 | 27% | 700 円403 億円 | 486 円280 億円 | −30.8% | −4.4% | 320 円184 億円 |
| 悲観 | 12% | 358 円206 億円 | 356 円205 億円 | −58.3% | −10.6% | 86 円49 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,502 円1,441 億円 | 913 円526 億円 | +99.3% | +8.5% | 3,414 円1,967 億円 |
今の株価時価総額 1,713 円987 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 全国紹介網を武器に国内有力仲介会社から準大手へ成長 利益 320 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 7,892 円4,547 億円
国内のM&A市場は、後継者不在に加えて企業の成長戦略や業界再編で年間2万4,000組へ拡大する。ストライクは全国の税理士団体との提携を活用し、地方の経営者との早期接点を増やす。コンサルタントの育成が順調に進み、SMARTと社内の案件データベースも成約率の改善に役立つ。2035年のシェアは約5%まで上昇し、年間1,200組を仲介する。
FAや戦略コンサルティングの拡大、台湾を起点とした国際案件の取り込みも進む。大型案件が増えるため、平均売上単価は名目で上昇する。AIによる業務効率化は人件費や資料作成コストを抑えるが、主要な増収要因は市場とシェアの拡大である。営業利益率は36%を保ち、高い利益を生み出す。
創業経営陣は余剰資金を高い収益性の事業と株主還元に振り向け、財務の健全性を維持する。自社株買いと配当は増加しつつ、引き続き多額の現金を保有する。10年後のROEは40%台で、M&A支援の総合企業として強い地位を確立する。
- M&A仲介・FA・付随サービス:数量 1,200(成約組数(組/年、同一取引を1組と数える))× 価格 1.05(成約1組当たり平均売上高(億円/組、成功報酬・基本合意報酬・付随収入込み))→ 売上 1,260 億円・営業利益 454 億円。国内市場24,000組×シェア5.0%=1,200組。平均単価1.05億円は2025年の1.42倍で、大型案件比率上昇が物価上昇に加わる。
倍率:資本コストk7.25%、10年後のROE44.4%、堀の残存割合0.5でRONICは約25.8%。長期g_long0%なので正当化PER=(1−0÷RONIC)÷(0.0725−0)=13.79倍。AIエージェント代替と手数料の成熟を長期成長率に織り込み、利益の質を理由とする追加減額はしない。余剰現金240億円には税後受取利息相当1.4%を控除し、株主への戻り方0.75を掛けて別に評価する。320−240×0.014を13.79倍し、240×0.75を加えた時価総額は約4,546.5億円。
確率:国内M&A市場の実質的な拡大に加え、ストライクがシェアを約5%まで上げるには、採用・育成・紹介網・大型案件のすべてで高い成果が必要になる。現在の提携網を評価して可能性は残すが、競合も同時に拡大するため高い確率は与えない。
やや楽観 18% 市場拡大を取り込み、シェアも着実に上昇 利益 180 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,473 円2,577 億円
国内M&A市場は年間2万1,000組まで増え、ストライクのシェアは約4%に上昇する。成約は840組となり、全国の紹介網と直接営業がともに伸びる。新卒採用の増加で一時的に低下した生産性は、人材が成熟するにつれて改善する。金融機関や税理士との提携も継続し、大型案件の取り扱いは現在より広がる。
手数料の透明化は進むものの、信頼できる仲介会社への需要は強い。取引規模が大きくなった効果によって平均売上単価も上昇する。ただし、顧客はAIで基礎調査や価値評価を行えるようになり、単純な資料作成部分の料金は低下する。従って、平均単価の名目上昇率は物価上昇率をやや下回る。
営業利益率は32%を確保する。利益は大幅に増えるが、採用費、紹介料、コンプライアンス費用も増加する。高い資本効率と財務の健全性は維持され、配当と機動的な自社株買いを継続する。
- M&A仲介・FA・付随サービス:数量 840(成約組数(組/年、同一取引を1組と数える))× 価格 0.94(成約1組当たり平均売上高(億円/組、成功報酬・基本合意報酬・付随収入込み))→ 売上 790 億円・営業利益 253 億円。国内市場21,000組×シェア4.0%=840組。平均単価0.94億円は2025年の1.27倍で、物価上昇1.34倍より低い。
倍率:k7.25%、ROE30.3%、堀の残存割合0.5でRONICは約18.8%。AIエージェント代替による2035年以降の業界成熟を考え、長期名目成長率g_long0%を使用する。正当化PERは13.79倍で、その上限をそのまま用いる。10年後の余剰現金170億円について、受取利息相当1.4%を純利益から控除し、戻り方0.75を掛けて評価する。
確率:全国の税理士団体との提携や新規受託の増加は確認できるため、市場以上の成長を一定程度期待できる。ただし日本M&Aセンターなどの競合にも紹介網と案件データがあり、シェア4%には相応の実行力が必要になる。
中立 35% 取引市場は伸びるが、手数料と利益率は成熟する 利益 94 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,381 円1,371 億円
国内市場は2025年の推計約1万2,000組から、2035年には約1万9,000組へ拡大する。ストライクは紹介網の強化と人材育成によってシェアを3%まで広げ、成約組数は570組となる。会社の2028年計画にある411組をさらに上回るが、成長率は初期より緩やかになる。新設FA会社や戦略コンサルティング会社も事業を続けるものの、利益の大部分をM&A仲介が生む構造は変わらない。
案件単価は名目では上昇するが、10年間の物価上昇には届かない。企業価値評価、契約書作成、買い手候補の抽出はAIエージェントの普及で安価になり、顧客は仲介会社に成果と責任を求めるようになる。手数料の透明化と片側FAの利用拡大も、高い料率を維持する妨げとなる。平均売上単価は0.82億円、営業利益率は28%となる。
利益は2025年より増えるが、自己資本も積み上がるためROEは過去の中央値を下回る。株主への還元は配当を基本に継続し、必要に応じて自社株買いも行う。2035年以降には国内の中小企業数減少とAI代替が重なり、名目の持続成長率はゼロに近づく。
- M&A仲介・FA・付随サービス:数量 570(成約組数(組/年、同一取引を1組と数える))× 価格 0.82(成約1組当たり平均売上高(億円/組、成功報酬・基本合意報酬・付随収入込み))→ 売上 467 億円・営業利益 131 億円。国内市場19,000組×シェア3.0%=570組。2025年比で数量2.07倍、単価1.11倍。物価1.34倍を下回る単価上昇に、AI代替と手数料率低下を反映した。
倍率:k7.25%、2035年の事業ROEは94÷485=19.4%。堀は普通で残存割合0.5、RONICは約13.3%。AIエージェント代替・規制・成熟市場による2035年以降のg_long0%から、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.79倍とした。2035年までの数量拡大は既に純利益94億円へ反映しており、倍率で再び高成長を数えない。余剰現金135億円は税後利息1.4%を利益から除き、回収可能性0.75を掛けて評価する。
確率:後継者不足と企業再編による市場拡大は長期の中心見通しとして妥当である。全国の紹介網でシェアを2.3%から3.0%へ伸ばす一方、競争とAI代替で手数料の実質単価が下落する筋が、確認できる強みとリスクの両方に整合する。
やや悲観 27% 市場は成長しても仲介会社の取り分が減る 利益 32 億円 · PER 11.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 700 円403 億円
国内M&A市場は年間1万7,000組まで増えるが、仲介業界の競争は激しくなる。ストライクはシェアをほぼ維持するものの、オンライン仲介会社や銀行系FAに案件を奪われ、2035年の成約は374組程度にとどまる。中小M&Aガイドラインに対応した確認作業が増え、契約締結からクロージングまでの期間も長くなる。
AIエージェントの普及で企業評価と候補探索の費用が下がり、仲介会社の料金交渉力が弱まる。平均売上単価は名目で2025年を下回り、営業利益率も20%に低下する。紹介案件にかかる費用、コンサルタントの報酬、コンプライアンス費用が重く、売上に比べ利益の減少が大きくなる。
持株会社化後の新規事業は成長しても仲介部門の収益低下を埋められない。ROEは資本コストを下回る水準となり、経営陣は採用を抑えて配当を維持しようとするが、余剰現金の株主還元には慎重になる。市場自体は消えないものの、かつての高収益企業としての優位は大きく薄れる。
- M&A仲介・FA・付随サービス:数量 374(成約組数(組/年、同一取引を1組と数える))× 価格 0.62(成約1組当たり平均売上高(億円/組、成功報酬・基本合意報酬・付随収入込み))→ 売上 232 億円・営業利益 46 億円。国内市場17,000組×シェア2.2%=374組。単価0.62億円は2025年の約0.84倍で、競争とAI代替が物価上昇を上回って料金を押し下げる。
倍率:ROEは約7.0%で資本コスト7.25%を下回る。2035年以降も仲介の利益が縮む場合、利益を長く成長させる価値は認められないため、稼ぐ力の上限1÷k=13.79倍を下回る11.5倍とする。余剰現金60億円の利息相当を除き、その75%を事業価値とは別に評価する。
確率:売り手と買い手の双方から報酬を得る仕組みへの監視が強まり、AIが案件探索や価格評価を安価にする可能性がある。紹介料と人件費の上昇は既に起きているため、需要増加が利益増加に直結しない筋には相応の確率を与える。
悲観 12% 仲介報酬の構造が崩れ、資産価値が下支えする 利益 15 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 358 円206 億円
国内M&A市場は年間1万5,000組程度を維持するものの、仲介業界の形は変わる。オンラインの案件探索とAIエージェントによる企業評価・買い手候補の調査が一般化し、高額な両面仲介手数料を支払う顧客が減る。ストライクは競合に紹介案件を奪われ、市場シェアが約1.5%まで低下する。2035年の成約は220組に減り、平均売上単価も0.52億円となる。
仲介手数料の値下げに加えて、経営者保証の扱いや利益相反への規制が強まる。契約内容の確認、顧客の適格性審査、取引後のトラブルへの対応に費用がかかる。人員削減と拠点統合を進めても固定費は残り、営業利益率は18%まで低下する。FAと戦略コンサルティングもAIによる工数代替の影響を受け、高収益の新しい柱には育たない。
経営陣は成長投資を縮小し、現金を守りながら事業を続ける。10年間に積み上げた利益の一部は還元されるが、ROEは大きく低下する。企業価値は将来利益よりも、今ある現金と換金可能な資産によって支えられる状況となる。
- M&A仲介・FA・付随サービス:数量 220(成約組数(組/年、同一取引を1組と数える))× 価格 0.52(成約1組当たり平均売上高(億円/組、成功報酬・基本合意報酬・付随収入込み))→ 売上 114 億円・営業利益 21 億円。国内市場15,000組×シェア約1.47%=220組。単価は2025年の約0.70倍。売上高は2025年比約56%に縮小する。
倍率:2035年のROE約3.8%は資本コスト7.25%を大きく下回るため、成長利益ではなく純現金と換金可能資産を床に評価する。PBRの計算基準は2035年の自己資本395億円ではなく2025年9月期の214.7億円とし、214.7×0.96=206.1億円とする。現金等の床202億円を下回らないが、ため込んだ帳簿資本を額面で評価しない。
確率:AIによる低価格化、利益相反規制、主要紹介先の離反、優秀な人材の流出が重なる複合的な悪化を想定する。国内の事業承継需要が完全になくなるとは見ないため会社の消滅までは想定しないが、収益構造を根本的に失う危険として無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
M&A仲介・FA・付随サービス
中小企業の事業承継、成長戦略、企業再編に関するM&A仲介を中核とする。売り手・買い手の基本合意報酬と成約報酬が主な収入で、FA・企業価値評価・戦略コンサルティングを含む。
| 数量成約組数(組/年、同一取引を1組と数える) | 価格成約1組当たり平均売上高(億円/組、成功報酬・基本合意報酬・付随収入込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 275 | 0.74 | 203 | 63 |
| 10 年後 中立 | 570 | 0.82 | 467 | 131 |
取り方:2025年9月期の有価証券報告書にある成約組数275組と、添付factsの売上高203.1億円を使用した。203.1÷275=0.7385億円/組である。2024年は252組、2025年は275組で、平均案件単価は約7,200万円から7,400万円へ上昇した。2026年9月期第3四半期までには212組、売上高160.03億円、平均単価約7,540万円を開示している。2026年10月21日の通期修正予想は売上270.77億円、営業利益104.01億円、純利益71.39億円であり、直近の進捗と大型案件増加を評価した。ただし2026年9月期の本決算は未発表のため、起点の確定実績は2025年9月期とした。会社の報告セグメントはM&A仲介事業の単一セグメントであり、FAや戦略コンサルの独立売上高は開示されていない。したがって実績の全売上をこのセグメントに集約する。数量は名目金額でなく実際の成約組数であり、価格には案件規模、成功報酬率、基本合意報酬、物価による名目変化を含む。AIエージェント代替の型は、主力が人月課金でない成果報酬型、新設戦略コンサルティングの工数部分は人月型である。工数部分の数量0.65倍・単価1.20倍という影響は独立売上がないため全社平均単価と利益率の慎重な伸びに織り込む。なお、台湾合弁会社の非支配株主持分は将来の純利益で控除する想定で、海外利益を過大に積まない。
リスクと懸念
AIエージェント代替による仲介価値の低下
企業価値評価、買い手候補の抽出、財務資料の整理、契約書確認、初期的なデューデリジェンスなどはAIによる代替が進みやすい。主力の成功報酬は直接の人月課金ではないが、提供する仕事の多くが安くなれば顧客は手数料を引き下げようとする。新設された戦略コンサルティング事業は人の工数への依存度が高く、より直接の代替リスクを持つ。最終交渉に人が必要でも、高い報酬率が守られるとは限らない。
両面仲介への規制と利益相反
売り手と買い手の双方から報酬を受け取る仲介形態には、仲介会社が本来守るべき顧客利益と成約を優先する動機が対立する問題がある。中小M&Aガイドライン第3版で手数料説明や買い手の適格性確認が強まっており、今後さらに規制が厳しくなる可能性がある。片側FAへの移行が進めば、一取引から得る報酬と営業利益率が大きく変わり得る。
紹介網の競争と紹介料負担
税理士団体との全国提携は案件獲得に有利だが、独占的な顧客基盤ではない。紹介先は日本M&Aセンターや銀行系仲介会社とも関係を持てる。紹介案件が増えるほど紹介料の支払いも増え、直接営業に比べた案件利益率が低くなる可能性がある。会社自身も近年、紹介案件の増加と原価率への影響を説明している。
大型案件への依存と成約時期の変動
2026年の利益上方修正には、複数の大型案件が成約し平均単価が上昇した影響がある。基本合意からクロージングまでの期間は長期化しており、案件の成約時期が数か月ずれるだけでも年度利益が大きく変動する。景気後退や買収資金の調達環境悪化によって買い手が慎重になれば、受託件数が伸びても売上計上と利益の実現が遅れる。
人材採用と案件生産性の悪化
仲介事業は優秀なコンサルタントの能力と顧客との信頼に大きく依存する。若手採用を増やすと、戦力化まで固定給与や教育費が先行する。経験豊富な担当者が競合へ移った場合は顧客接点と案件情報も失われやすい。新卒社員の生産性が想定より長く低迷すれば、成約組数の成長が給与・紹介料・広告費の増加に追いつかず利益率を圧迫する。
資本配分と新規事業の採算
2026年の持株会社化によってFA、戦略コンサルティング、海外事業などの投資先が増えた。新規事業が高い利益率を生まず、買収や投資に現金を使い続ければ、これまでの高ROEを維持できなくなる。会社はROE25%以上を目標とし、配当を強化しているが、大規模な自社株買いの金額は約束していない。現金を貯めること自体を株主価値の増加と混同してはならない。
今後の分かれ目
- 年間成約組数が2028年の会社目標411組を超えた後も安定的に増え、受託件数から成約への転換率も改善したら
- 全国紹介網の効果が確認できるため、中立のシェア3%という見通しを上方修正する。大型案件だけでなく通常案件も増えていることを確認したい。
- 成約組数が増えているのに平均売上単価が継続して低下し、物価上昇を大幅に下回ったら
- AI代替、手数料競争、取引規模の小型化のいずれが原因かを調べる。構造的な料金低下なら中立の単価と営業利益率を引き下げる。
- M&A仲介の両面報酬に新たな制限が設けられ、片側FAへの移行が進んだら
- 一取引当たりの収入が変わるため、数量を単に維持するだけでは利益を守れない。やや悲観と悲観の確率を高める。
- 2026年の上方修正後に、大型案件を除いた平均単価と成約生産性も高水準を維持できたら
- 2026年の利益増加が一時的な案件構成だけではないと判断し、10年後の利益率を見直す。
- FAや戦略コンサルティングの売上が独立開示され、工数を増やさず継続的に利益を伸ばす実績が確認できたら
- 新規事業のAI代替リスクを再評価する。ただし、独自データや継続契約などの堀が確認できるまでは、高い長期成長率を認めない。
- 純現金が増加し続ける一方で、自社株買いが実行されずROEが低下したら
- 余剰現金の株主への戻り方を再評価し、将来利益と配当の両方を保守的に修正する。逆に配当性向50%以上と合理的な自社株買いが定着すれば、資本配分への評価を高める。
見ておくもの
- 四半期・通期の成約組数と成約件数、特に大型案件を除いた成約組数
- 一組当たりの平均売上高と大型案件構成比
- 新規受託件数、基本合意組数、基本合意から成約までの期間
- コンサルタント数と一人当たり成約生産性
- 直接受託と紹介受託の構成比、案件紹介料の売上高比率
- FA・戦略コンサルティングの独立した売上高と利益の開示
- 中小M&Aガイドラインの改訂、両面仲介に対する規制・自主規制の動向
- 営業利益率、純現金、配当性向、自社株取得額、ROEの推移
倍率と資本コストの決め方
2025年9月期の成約275組と平均売上単価約0.739億円を実績の起点とし、会社推計の国内市場約12,000組とストライクの数量シェア約2.3%から各筋書きの成約数を積んだ。2035年の国内市場は楽観24,000組、やや楽観21,000組、中立19,000組、やや悲観17,000組、悲観15,000組とし、シェアの差で数量を変えた。単価には物価と手数料率・大型案件構成・AIによる価格圧力を含め、物価を数量に重ねていない。倍率は過去や現在のPER・PBRを参照せず、k7.25%、RONIC、長期成長率0%から算定した。楽観から中立は正当化PERの上限をそのまま使用した。2035年の自己資本は2025年の214.7億円を起点に10年間の純利益累計から配当・買戻しを引いて推計した。楽観は累計利益約1,765億円・還元1,260億円、やや楽観は1,125億円・745億円、中立は815億円・545億円、やや悲観は520億円・280億円、悲観は385億円・205億円である。悲観のPBRは現在の自己資本に掛け、将来の自己資本に掛けていない。2026年10月21日の業績上方修正は株価基準日10月16日より後の公表であるため、804億円との比較には時点差がある。2027年以降の新リース会計適用ではオフィス賃貸の資産・負債計上方法が変わるが、将来の利益率は家賃を営業費用とする現在の形で揃えた。直近の短信では継続企業の前提に関する注記はなく、ストライクグループ自身の上場廃止予定も確認されていない。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%と株式リスクプレミアム4.5%による基準7.5%に、事業の循環・価格支配力・負債・寿命の調整合計マイナス0.25%を加えた。βと企業規模のプレミアムは用いない。