結論
ストライクグループは、中堅・中小企業のM&Aをまとめる専業の仲介会社だ。成約すれば報酬が入り、営業利益率は3割台を保つ。売り先を探す経営者に向けた直接の営業に強い。
筆者の結論は「ほぼ適正」である。事業の質は高く、財務は無借金で厚い。だが同業が増え、手数料への社会の目も厳しくなる。上振れの力は、値段の安さを打ち消すほどには強くない。
直近は増員の最中だ。2025年9月期は、コンサルタントを74名増やして成約は275組。ところが計画には届かず、営業利益は減った。人が育つまでの時間が、利益を食った形になる。
最新の四半期では、売上が3割伸び、営業利益は2倍を超えた。1組で1億円を超える大型案件が増えたためだ。増員の成果が出始めているのは確かである。
10年の見立ては単純だ。後継者のいない経営者は増え続け、組数は人数に応じて増える。ただ売上の伸びの大半は、物価の上昇による単価の伸びである。景気が悪くなれば買い手が止まり、成約は一気に細る。強みも弱みも、人に集まる会社だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「稼いだ利益を株主が自由に使えるか」を見る。この会社は設備も在庫もほとんど要らない。利益の大部分が配当と自社株買いに回り、残りが現金になる。オーナーの手元に残る利益と純利益の差が小さい、数少ない事業だ。
問題は、その利益が10年先も続くかである。仲介は、経営者の一生に一度の決断を手伝う仕事だ。信頼がすべてで、その信頼を守る仕組みは、同業のなかで見ても特別に強いとは言えない。
堀は広くない。集客の仕組みと提携網は強いが、仲介そのものは誰でも始められる。値段、つまり手数料率を自分で決める力は、規制と競争のもとで弱まる方向にある。筆者は、この点を最も重く見ている。
増員の成果も、まだ決算に十分には出ていない。人を増やして利益率を落とした今は、種をまいた段階だ。収穫の確かさは見えていない。
資本の使い方は評価できる。借金に頼らず、買収で価値を壊した経歴もない。安全域は、中立で10年後の価値が今の水準と近く、割安と呼べるほどの余裕はない。わからないことが2つある。増員が組数につながるのか、手数料への規制がどこまで進むのか。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は成約報酬だ。会社を売りたい経営者と、買いたい会社を引き合わせ、契約がまとまった時に報酬を受け取る。報酬は取引の大きさに応じた段階式で、小さな案件ほど料率が高い。
売り手の多くは、後継者のいない中堅・中小企業だ。案件の入口は二つある。一つは税理士協同組合などの提携網で、全国23団体、6万6,000人超の税理士につながる。もう一つは、ダイレクトメールや電話による直接の営業だ。この直接営業が、同社の特色である。
人の力が収益を決める。M&Aコンサルタントが1年にこなせる案件には限りがあり、組数は人数と経験で決まる。同社は近年、新卒採用へ軸足を移し、人を増やして組数を押し上げる路線をとっている。
1組あたりの売上は、1組平均で約7,400万円。1億円を超える案件が増えると、平均は押し上げられる。このほか、買い手側の支援や、FA(財務アドバイザー)業務、周辺のコンサルティングが少しある。
費用の中心は人件費と広告宣伝費だ。人件費は物価で上がり、成約が減った年でも簡単には減らせない。この固定費の重さが、景気の谷で利益を大きく削る。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、集客の仕組みと提携網にある。直接営業のノウハウは、長年の試行で磨かれた。税理士協同組合との関係は、一朝一夕には作れない。
資本効率は申し分ない。ROEは過去10年で20%台を保ち、借金もない。工場も在庫も要らず、稼いだ利益の大半を株主に返せる事業だ。上場後の10年で、売上は約30倍に伸びた。
ただし堀は広くない。仲介は参入の壁が低い。登録された支援機関は2,781件に達し、日本M&Aセンターは最大手として規模を持ち、M&Aキャピタルパートナーズは大型案件に絞って高単価を取る。ストライクは中堅・中小の裾野で数を取る位置にある。
弱点は二つある。一つは人への依存だ。増員が実って利益が戻るかどうかは、人が育つ速さで決まる。もう一つは、直近の計画未達である。2025年9月期は、310組の計画に対して275組にとどまった。増員のペースに、成約が追いつかなかった。
経営は荒井邦彦社長のもとで、現場の営業を重んじている。人についての細かな事実は、確かめられたものだけを書いた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のM&Aは、2025年に過去最多の5,115件となった。取引金額は約35.7兆円だ。背景には、経営者の高齢化と後継者難がある。この需要は10年先も消えない。
ただし、会社が伸びる余地は需要ほど大きくない。M&A支援機関として登録された事業者は2,781件に達した。仲介会社が増えれば、1社あたりの取り分は薄まる。銀行や会計事務所系の参入も続く。
規制の風向きも変わった。中小企業庁の中小M&Aガイドラインは、2024年に第3版となり、手数料と提供業務の開示、利益相反の禁止事項が具体化された。手数料に上限をかける規制ではないが、料率を高く保つことは難しくなる。売り手と買い手の両方から報酬を取る構造は、これからも批判の的になる。
技術の面では、生成AIが案件の発掘と企業価値の見積もりを効率化する。事務が減れば利益率は上がる。だが売り手が自分で買い手を探せる世界では、仲介の価値そのものが薄れる。
景気の影響も無視できない。買い手の資金繰りが悪くなると、成約は景気後退期に3〜4割落ちうる。同社のような中堅・中小向けは、案件の数が多い分、大型案件より落ち込みは緩やかだが、固定費の重さは変わらない。
資本政策と M&A
還元は厚い。純利益の概ね50%を目安とするが、2027年9月期までは一時的に増やし、1株配当を据え置く方針だ。2025年9月期の配当性向は73%に達した。純利益のほとんどを返せるのは、事業にお金がほとんど要らないからだ。
手元の現金は純額で202億円ある。時価総額の4分の1にあたる。うち賞与や納税、賃料に備える分を除いた約150億円を、事業に要らない現金とみる。
買収を重ねて大きくなるタイプの会社ではない。成長の源は、コンサルタントの人数と生産性だ。2026年4月には持株会社体制へ移り、社名をストライクグループに改め、1株を3株に分けた。周辺事業を広げる器とみられるが、買収に使う意図は確かめられていない。
買収される側になる可能性は、kabufuのモデルで10年以内に約21%と見積もられている。仲介会社自身がM&Aの対象になるという皮肉な構図だが、人が資産の会社を買うのは難しい。
還元の点検(P3 2026-10-19):方針は純利益の概ね50%で、2027年9月期までだけ配当を据え置き(性向73%)。10年平均は(2年73%+8年50%)≒55%に当たるので、中立の還元を70%から55%に下げ、留保は自己資本に残した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
後継者のいない中堅・中小企業は、これから10年でさらに増える。経営者の高齢化は止まらず、事業承継のM&Aは増え続ける需要の波に乗っている。ストライクは、全国23団体の税理士協同組合という他社が持たない入口と、直接営業の仕組みを持つ。
増員の成果はもう出始めている。最新の四半期では売上が3割増え、営業利益は2倍を超えた。1組1億円を超える大型案件は13組と、前年の7組から倍近くに増えた。人が育つほど、1人あたりの稼ぎは上がる。
2028年9月期の成約329組という目標は、すでに今期の勢いで届く水準にある。10年かければ、500組を超えることも十分ありうる。1組の売上も、大型化で物価を上回って伸びる。
生成AIは追い風でもある。案件の発掘や企業価値の見積もりといった下準備の手間が減れば、1人がこなせる組数が増え、利益率は戻る。
財務は無借金で、現金が厚い。還元は性向7割台で、景気が悪くなっても配当を守れる。組数が560組、1組の売上が1.45倍になれば、利益は今の3倍を超える。
慎重な見方
仲介会社は急増している。登録された支援機関は2,781件を数え、銀行や会計事務所系が次々に入ってくる。参入の壁が低い事業で、最大手は規模で勝ち、ストライクは差をつけにくい。
2025年9月期は、計画の310組に対して275組と未達だった。74名も増員したのに、利益は減った。人を増やすほど固定費が膨らみ、景気が悪くなれば、人件費がそのまま利益を食う。直近の四半期の好調は、大型案件の偶然の集まりとも読める。
手数料への批判は、これから強まる。売り手と買い手の両方から報酬を取る構造は、利益相反として疑われ続ける。2024年のガイドライン改訂は、手数料と提供業務の開示を求めた。売り手が料率を比べて値切る時代に入り、小さな案件ほど料率が下がりやすい。
直接営業には限界もある。DMや電話による集客は、広告費がかさみ、規制や社会の目の変化にも弱い。生成AIが案件発掘を安価にすれば、仲介の価値は薄まる。件数が現状のまま止まり、手数料が下がれば、利益は今より小さくなる。
どちらに重みを置いたか
事業の質では強気の見方が優勢だ。増員の成果が見え、無借金で、還元も厚い。だが慎重な見方の指摘も的を射ている。計画に届かなかった実績と、手数料への圧力という2点は、10年の利益の伸びを数と値段の両面から削る。
確率は中立に厚く置き、同じ領域の会社に合わせて、やや悲観をやや重く置いた。売上の伸びの大半は物価で、取り扱う数の拡大ではないからだ。総合では、本質価値が今の時価総額と近く、適正の範囲に入る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 3,958 円2,280 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 644 円371 億円)。 今の値に割り戻すと 2,369 円1,365 億円、今との差 +65.0%、 期待の年率 +12.4%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 7,575 円4,364 億円 | 977 円563 億円 | +495.6% | +19.5% | 855 円493 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,895 円3,396 億円 | 805 円464 億円 | +366.6% | +16.7% | 1,340 円772 億円 |
| 中立 | 38% | 4,578 円2,637 億円 | 670 円386 億円 | +265.4% | +13.8% | 1,994 円1,149 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,239 円714 億円 | 476 円274 億円 | +19.4% | +1.8% | 343 円198 億円 |
| 悲観 | 12% | 288 円166 億円 | 292 円168 億円 | −59.6% | −8.7% | 70 円40 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,958 円2,280 億円 | 644 円371 億円 | +220.5% | +12.4% | 4,602 円2,651 億円 |
今の株価時価総額 1,436 円827 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 組数が増え、大型案件で単価も伸びる 利益 158 億円 · PER 25.9 倍 · 株価時価総額 7,575 円4,364 億円
増員した人材が育ち、成約は年560組まで増える。税理士協同組合のネットワークと直接営業の集客が噛み合い、案件の取りこぼしが減る。1組1億円を超える中堅の案件が増え、1組あたりの売上は物価を上回って1.45倍になる。生成AIが案件の下調べを軽くし、1人あたりの組数も上がる。手数料の開示ルールは料率を崩さない。営業利益率は4割近くまで戻る。還元は厚いまま、現金も大きくは貯まらない。小さな会社の仲介から、中堅の案件も取れる総合的な仲介会社へ育った姿である。入口の網、集客の仕組み、人材の育成という三つが、10年を通じて同時に働いた筋書きだ。小さな会社の仲介から、中堅の案件も取れる総合的な仲介会社へ育った姿である。入口の網、集客の仕組み、人材の育成という三つが、10年を通じて同時に働いた筋書きだ。景気の谷も大きな傷にならず、毎年の組数が着実に積み上がる。
- M&A仲介(中堅・中小企業向け):数量 560(年間の成約組数(組))× 価格 1.07(1組あたりの売上(億円・名目))→ 売上 599 億円・営業利益 222 億円。成約560組 × 1組1.0701億円、売上599億円、営業利益率37%
倍率:事業の純利益 156 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 79.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 43.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 25.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 25.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 25.94 倍、時価総額 4,184 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:増員の成果、大型化、手数料への規制が弱いこと、の三つが同時にそろう必要がある。直近は計画に届かなかった実績もあり、連続して噛み合う確率は高くない。
やや楽観 20% 増員が実り、組数も単価も上がる 利益 121 億円 · PER 25.8 倍 · 株価時価総額 5,895 円3,396 億円
成約は年480組まで増える。中期目標の329組は通過点となり、その後も増員の効果が残る。1組の売上は1.38倍に上がる。大型案件が増える一方、小さな案件では手数料の値引きが広がり、単価は物価を少し上回る程度にとどまる。人件費も物価で上がるため、営業利益率は35%にとどまる。競合は増え続けるが、直接営業の仕組みと提携網で一定の案件は確保できる。ファンドや周辺の収益は小さく、利益は本業で伸びる。還元は厚く、現金は余り続ける。中立より一段よいが、手数料と競争の重しは残る10年である。増員への先行投資が回収され、利益率も守られる、手堅い成功の10年である。
- M&A仲介(中堅・中小企業向け):数量 480(年間の成約組数(組))× 価格 1.02(1組あたりの売上(億円・名目))→ 売上 489 億円・営業利益 171 億円。成約480組 × 1組1.0184億円、売上489億円、営業利益率35%
倍率:事業の純利益 119 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 74.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 40.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 25.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 25.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 25.77 倍、時価総額 3,224 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の四半期は大型案件が増えて利益が戻っており、中期目標の329組は手が届く。ただし競争と手数料の圧力が残るので、強気の筋書きほどには噛み合わないとみる。
中立 38% 組数は増えるが、値段は物価並みに上がる 利益 93 億円 · PER 25.6 倍 · 株価時価総額 4,578 円2,637 億円
成約は年400組へ、今より45%増える。後継者難の需要は強く、増員した人材が戦力になる。ただ、同業の増加と人数の限界が伸びを抑える。1組あたりの売上は物価並みの1.34倍に上がる。大型化による押し上げは、手数料の開示と値引きの圧力で打ち消される。人件費は物価で上がり、営業利益率は33%に落ち着く。増員で利益率が落ちた直近の水準から、少し戻る形だ。大きな不祥事はなく、事業は安定して続く。還元は純利益の7割を目安に続き、現金は貯め込まない。大きな成功も失敗もなく、人の力で稼ぎ続ける10年である。組数の増え方は、人を増やしただけ着実に上がるが、同業の増加が頭打ちの要因として残る。人材の定着が、この筋書きを支える土台になる。
- M&A仲介(中堅・中小企業向け):数量 400(年間の成約組数(組))× 価格 0.99(1組あたりの売上(億円・名目))→ 売上 396 億円・営業利益 131 億円。成約400組 × 1組0.9889億円、売上396億円、営業利益率33%
倍率:事業の純利益 91 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 69.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 38.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 25.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 25.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 25.59 倍、時価総額 2,476 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要は強いが、人数の限界と同業の増加が伸びを抑える。1組の売上は物価並みに収まる、いちばん素直な筋書き。直近の計画未達も踏まえて中立に厚く置いた。
やや悲観 20% 増員が空回りし、手数料に圧力がかかる 利益 53 億円 · PER 9.2 倍 · 株価時価総額 1,239 円714 億円
成約は年310組にとどまる。増員したのに1人あたりの組数が上がらず、人件費だけが重くなる。売り手が複数の仲介会社の料率を比べ、小さな案件で値引きが広がる。1組の売上は1.2倍と、物価に届かない。営業利益率は27%に落ち、利益は今の水準を割る。景気の谷が来れば、成約が一時的に3割落ちる局面もある。事業は続くが、増員の投資は回収できない。還元は利益に合わせて縮み、現金は買収や投資の失敗で目減りする。人と広告費を積み増した分が、そのまま利益を削る10年になる。組数が伸びなければ、増員は利益ではなく負担として残る。この筋書きは、直近の計画未達がそのまま長引く姿でもある。
- M&A仲介(中堅・中小企業向け):数量 310(年間の成約組数(組))× 価格 0.89(1組あたりの売上(億円・名目))→ 売上 275 億円・営業利益 74 億円。成約310組 × 1組0.8856億円、売上275億円、営業利益率27%
倍率:ROE 13.8%(現金の利息を除く事業の純利益÷自己資本)。k 7.5%。RONIC=k+残る割合1/2×(ROE−k)=11.1%。g 4%から正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.2倍。伸びと堀の持ちを低く見て、上限の7.00割(PER 9.97倍)に置いた。余った現金112.5億円(今の0.75倍)は帳簿の値のまま足した。(還元を方針に合わせて再計算:還元 350→274 億円、自己資本 366→442 億円、事業の ROE 20.1%→15.5%、正当化 PER の上限 16.0→14.8 倍。上限に対する置き方の割合は変えず 9.22 倍)
確率:増員で利益率が落ちた事実があり、人が増えても組数が伸びない恐れは現実的。手数料の開示が進めば値引きも起きやすい。同じ領域の会社と同じく、やや重めに置いた。
悲観 12% 競争と規制で稼ぐ力を失う 利益 14 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 288 円166 億円
手数料の透明化と値下げ圧力で料率が下がり、1組の売上は今の水準のまま止まる。物価の上昇分をまるごと失う形だ。両面から報酬を取る構造への批判が訴訟や行政指導に発展し、信頼が傷つく。成約は230組まで減る。生成AIが案件の発掘を安くし、売り手が自分で買い手を探せるようになる。コンサルタントの人件費と広告費は固定費として残るため、営業利益率は12%まで下がる。会社は存続するが、高収益の仲介会社ではなく、普通の人材サービス会社として扱われる。還元は縮み、積んだ現金の一部は立て直しに使われる。もはや成長の物語は残らず、事業の立て直しと人員の整理が続く。それでも無借金の財務が、存続の土台を守る。
- M&A仲介(中堅・中小企業向け):数量 230(年間の成約組数(組))× 価格 0.74(1組あたりの売上(億円・名目))→ 売上 170 億円・営業利益 20 億円。成約230組 × 1組0.738億円、売上170億円、営業利益率12%
倍率:ROE 4.0%(現金の利息を除く事業の純利益÷自己資本)が k 7.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、RONIC は使わない。正当化PERは1÷k=11.8倍。稼ぐ力から出し、その約 6 割(PER 7.0倍)に置いた。構造的に負けた姿で利益の振れも大きいので、やや悲観より低く置く。余った現金は半分の75億円(今の0.5倍)を帳簿の値で足した。
確率:手数料規制、利益相反の訴訟、信頼の毀損、AIによる中抜きが重なる複合の筋書き。単独でも起きうるが、重なる確率は低い。同じ領域の会社と同じく1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
M&A仲介(中堅・中小企業向け)
中堅・中小企業のM&Aを仲介し、成約時に成功報酬を受け取る。FA業務や周辺コンサルティングの小さな収益も含める。
| 数量年間の成約組数(組) | 価格1組あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 275 | 0.74 | 203 | 63 |
| 10 年後 中立 | 400 | 0.99 | 396 | 131 |
取り方:2025年9月期の成約は275組(前期252組)。売上203億円を275組×0.738億円(約7,380万円、周辺収益込み)と置いた。数量は成約組数(実質)、物価の分は1組あたりの売上に入れる。営業利益63億円は実績で、コンサルタントを74名増やした先行投資で利益率は31%に下がっている。
リスクと懸念
手数料の開示と規制
中小M&Aガイドライン第3版は、手数料と提供業務の開示を求め、利益相反の禁止を具体化した。上限規制まで進まなくても、売り手が料率を比べて値切るようになれば、小さな案件ほど単価が下がる。1組の売上の伸びが物価に追いつかず、利益率が構造的に縮む。
増員が成果につながらない
2025年9月期は74名の増員に対し、成約は計画の310組に届かず275組だった。人は育つのに時間がかかる。成約が追いつかなければ、人件費と広告費だけが固定費として残り、営業利益率は3割を割り込む。
景気後退と買い手の慎重化
買い手の資金調達が難しくなると、成約が止まり、組数が3〜4割落ちうる。報酬は成約した時にしか入らず、人件費と賃料は固定的に残る。利益は組数の落ち込み以上に減る。
直接営業への依存
集客の一部はダイレクトメールと電話に頼る。広告費がかさみ、反応率が落ちれば、同じ組数を取るための費用が上がる。営業手法への規制や社会の目の変化にも弱い。
競合の急増と人材の流出
登録された支援機関は2,781件に達した。最大手の日本M&Aセンター、大型案件に絞るM&Aキャピタルパートナーズ、銀行・会計事務所系が入り乱れる。仲介は参入が容易で、育てた人材の引き抜きも起きやすい。
信頼の毀損
仲介は信頼が命の事業だ。両面から報酬を取る構造への批判が訴訟や行政指導に発展したり、同業の不祥事が業界全体の信用を傷つけたりすれば、案件の入口との関係が揺らぐ。
今後の分かれ目
- 成約組数が2期連続で計画を上回り、1組の売上も上がったら
- 中立から強気寄りに確率を移す。増員の成果が本物だったことを示す。
- 中小企業庁が手数料の上限や、より厳しい明示の義務を設けたら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。料率が下がると、1組の売上の伸びが物価に届かなくなる。
- 営業利益率が3割を割り込んだまま、増員だけが続いたら
- 増員の失敗として、やや悲観の筋書きに近づく。固定費の重さが利益を削る。
- 生成AIで案件の発掘と企業価値の見積もりの手間が大きく減ったら
- 1人あたりの組数が増え、利益率が上がる。強気の筋書きに寄る。
- 景気後退で買い手の資金調達が細ったら
- 組数が3〜4割落ちる谷として、やや悲観の筋書きに近づく。固定費が重く、利益は大きく減る。
- 同業の大手が統合を進めたり、自社が買収の対象になったりしたら
- 規模の優位が薄れる。買われる側に回る場合は、事業の価値より人材が残るかどうかを確かめる。
見ておくもの
- 四半期の成約組数と1組あたりの売上
- 1億円以上の大型案件の組数
- コンサルタント数と1人あたりの成約組数
- 中小M&Aガイドラインの改訂と手数料に関する行政の動き
- 広告宣伝費の対売上比率と営業利益率
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から決めた。資本コストは基本7.5%に質の上乗せ1.0%を足した8.5%、長期の成長率は4%、残る割合は並みの1/2で正当化PERを出し、中立はその7.5割に置いた。増員の成果がまだ確かでなく、組数の波と手数料への圧力があるので、上限すれすれにはしていない。今の株価と今のPERは倍率に使っていない。数量は成約組数で実質、物価は1組あたりの売上の側に入れ、二重には掛けていない。事務所の賃借は営業費用に入る固定費で、悲観の利益率に織り込んだ(今と同じ家賃を費用に入れる形でそろえ、新リース会計基準で数字の形が変わる点は10年後の置き方に影響させていない)。2025年9月期の営業利益率31%は増員の先行投資で押し下げられており、中立は33%まで戻る形とした。同じ領域のM&Aキャピタルパートナーズとは、資本コストと悲観の深さを同じ物差しで置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.32→25.94 倍・やや楽観 PER 12.85→25.77 倍・中立 PER 11.76→25.59 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。