結論
クオンツ総研ホールディングス(旧M&A総研)は、中堅・中小企業のM&A仲介で稼ぐ新興の会社だ。2026年1月に社名を変え、戦略コンサルティングを第二の柱に据えた。仲介で稼いだ利益を、人の採用に注ぎ込む構図である。
筆者の結論は「適正の範囲。ただし割安とは言いにくい」だ。仲介の稼ぐ力は戻ってきた。それでも10年の価値は、今の時価総額をわずかに下回る。分かれ目は、コンサルが黒字の事業になるか、仲介の担い手が流出し続けるかだ。
足元は回復局面にある。2025年9月期は成約が伸びず、営業利益が4割減った。2026年9月期は9か月で営業利益が4割増え、成約単価も大型案件も戻った。ただし案件を担うアドバイザーは、前年より1割近く減っている。
10年の見立ては、仲介の件数が緩やかに増え、1件の報酬が物価並みに上がるというものだ。コンサルは赤字を抜けて稼ぎ手になると置くが、根拠はまだ乏しい。
財務の姿も変わった。無借金の現金持ちだった会社が、航空機を持つリース事業と自社株買いで、自己資本比率を3割以下に落とした。創業者が株の6割近くを持つことも、見落とせない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「稼いだ利益を株主が自由に使えるか」を見る。仲介は設備も在庫も要らず、利益の大半を返せる事業だ。この点は優れている。
問題は、その利益が10年続くかだ。稼ぎの源は人で、人は動く。アドバイザーが減っていることは、先の利益の減少を意味しうる。筆者がいちばん気にしているのは、ここである。
経営の資本配分には疑問が残る。仲介が不振の年に、赤字のコンサルの人員を倍増させた。成功すれば第二の柱だが、失敗の費用は株主が払う。創業者が6割近くを持つため、少数株主は止められない。
資産の面でも変化があった。借金をしてリース用の航空機を持ち、純現金は消えた。短期で売る前提とはいえ、金利と市況の影響を受ける資産だ。
それでも、仲介の収益力は本物だ。利益率は4割前後に戻り、大型案件は増えている。
安全域は薄い。中立の10年後の価値は、今の値段を少し下回る。割高と言うほどではないが、買いたい水準でもない。コンサルの黒字化と、仲介の人材流出の止まりが見えれば、評価は変わる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は成約報酬だ。会社を売りたい経営者と、買いたい会社を引き合わせ、成約した時に報酬を受け取る。2026年9月期の売上の約8割を、この仲介が占める見込みだ。
仲介は役割ごとに会社が分かれている。祖業は全業種向けのM&A総合研究所で、製造・建設・IT・医療に絞った特化型と、高額案件のエグゼクティブ向けが続く。海外案件はシンガポールを拠点に取り組む。見込み客は機械で見つけて点数をつけ、人は成約の仕上げに集中する形をうたう。
稼ぎを決めるのはアドバイザー、つまり仲介の担当者の数と経験だ。2026年6月末で337名と、前年の372名から減った。報酬は成果に連動する割合が大きく、人が他社に動きやすい。
第二の柱はコンサルティングだ。戦略や業務改善、IT・DX、人事の支援を手がける。人員は2025年9月末の136名から、2026年6月末の274名へ倍増し、期末には300名を目指す。売上は急に伸びているが、採用と教育の費用で赤字が続く。
三つ目は総研リースだ。航空機などのオペレーティングリース商品を組成して投資家に売る。M&Aで会社を譲った経営者の資産運用の受け皿という位置づけである。2026年は航空機を自社で持ち、売却までの間、資産と借入金が連結の貸借対照表に載った。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、いまのところ深くない。強みは成約の速さとデータの使い方で、仕組みは他社にもまねされうる。
評価できる点はある。仲介部門の利益率は、4割前後に戻った。成約までの期間は平均7.2か月と、業界平均の9か月より短い。分野別の窓口を作り、大型案件の数も増えた。
弱点は人だ。仲介の担当者は減り、受託残高も減り始めた。報酬は成果に連動するため、他社が条件を上げれば流出しやすい。筆者は、案件の入口の厚みが、金融機関や会計事務所の網を持つ最大手ほどではないと見ている。
資本の使い方は、評価が割れる。仲介が不振の年に、コンサルの採用を急いだ。仲介の利益で赤字の新事業を支える賭けで、当たれば大きいが、外れれば仲介の力を削る。
数字の質にも注意がいる。上場後の2年で純利益は4倍強になったが、山の翌年に半分へ落ちた。山の高い利益率は実力とは見ない。
創業者が株の6割近くを握る。決断は速いが、少数株主が口を挟む余地は小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のM&Aは、2025年に過去最多の5,115件、取引額は約35.7兆円となった。経営者の高齢化と後継者難が需要を支える。この流れは10年先も続く。
ただし需要の大きさと、会社の取り分は別の話だ。M&A支援機関として登録された事業者は2,781件に達した。日本M&Aセンターは売上500億円規模の最大手で、M&Aキャピタルパートナーズは大型案件に強い。当社の売上は約166億円で、その次の層にいる。
規制の風向きも変わった。中小M&Aガイドラインは2024年に第3版となり、手数料と業務内容の開示、利益相反の禁止が具体化された。売り手と買い手の両方から報酬を取る構造への目は厳しい。料率を高く保つのは難しくなる。
景気には敏感だ。買い手の資金繰りが悪化すれば、成約は3〜4割落ちうる。人件費は固定費として残るため、利益は件数の落ち込み以上に減る。
コンサルの市場は別の競争だ。戦略ファーム、会計系大手、大手SIerが相手で、人の質と実績がものを言う。短期間に人を倍増させる戦略は、質の維持が最大の課題になる。
生成AIは両刃だ。事務が減れば1人の件数は増える。売り手が自分で買い手を探せる世界では、仲介の価値が薄れる。
資本政策と M&A
還元の姿勢は、この1年で変わった。2025年9月期に初配当を出し、自己株式の全量を消却した。2026年9月期は、約38億円の自社株買いを完了し、7月末に消却した。ただし期末配当は未定で、無配の見通しも出ている。
手元の資金は、リース事業に回った。2025年12月に55億円を借り入れ、航空機を持った。原則として早期に売却し、借入を返す方針だ。資産と負債が膨らんだため、自己資本比率は29%台に下がった。
買収に頼る会社ではない。成長の源は、仲介の担当者とコンサルの人数だ。
創業者が株の約58%を持つ。上場時の約74%から下がったが、支配は動かない。親子上場や持ち合いはなく、買収される側になる確率は、10年以内に約19%と見積もられている。決めるのは創業者だ。
なお、純現金は今や時価総額の1割に満たない。余った現金として別に足さない。
2026年5〜6月の自己株式取得(約38億円)は実行済みで、株数に反映した。この分は10年の還元に入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
後継者難は10年先も続く。国内のM&Aは過去最多を更新し、需要の土台は厚い。この会社は、その波を最も軽い体制で取り込める。機械で見込み客を探し、人は成約に集中する。成約までの期間は業界の平均より短く、速さは売り手に選ばれる理由になる。
仲介の業績は、すでに底を打った。成約単価は上がり、大型案件は増え、仲介部門の利益率は4割に戻った。アドバイザーの減少は、不採算の人員の整理を含んでいる。1人当たりの売上は3割増えた。
コンサルは、仲介の第二の柱になる。短期間に人員を倍増させたのは、需要を先に取る動きだ。仲介で会社を譲った経営者と、買った会社の双方に、統合や改革の支援を売れる。M&Aの全工程を一社で完結できる強みは、同業にない。
財務は規律を保っている。リース用の航空機は早期に売り、借入は返す。還元は初配当と自社株買いで再開した。創業者が経営と株を握るため、意思決定が速い。
10年で仲介が年420件に戻り、コンサルが500名で収益を生めば、利益は今の3倍を超える。
慎重な見方
業績の回復は、まだ脆い。2025年9月期は、会社の計画を下方修正し、それにも届かなかった。成約率の回復の遅れが原因で、同じことが再び起きない保証はない。
案件を担うアドバイザーは、3四半期連続で減った。受託残高も減り始めた。仲介は人が全てで、担当者の流出は半年先の売上を削る。報酬は成果連動のため、他社が条件を上げれば歯止めがきかない。
コンサルは賭けだ。人員は倍増したが、赤字は広がり、通期の見通しも下げられた。戦略ファームや会計系大手が相手で、新参が高単価の案件を継続的に取るのは難しい。人を増やすほど固定費は重くなり、仲介の利益を食う。
財務の姿は悪化した。自己資本比率は6割台から3割以下に下がり、有利子負債は増えた。航空機のリース事業は、仲介の本業と関係が薄く、市況と金利に左右される。
創業者が株の6割近くを握る。少数株主の声は届きにくい。
仲介の件数が横ばいで、手数料が下がり、コンサルが伸びなければ、利益は今より小さくなる。
どちらに重みを置いたか
仲介の収益力は強気の言い分が正しい。だが、人の流出とコンサルの賭けという慎重な指摘も、同じ重さで効く。10年の利益の半分は、コンサルの黒字化に頼る構図だ。
確率は中立に厚く置き、悲観をやや重く置いた。成約率の回復の遅れと、担当者の減少が、実際に起きているためだ。総合の価値は今の時価総額を7%ほど下回り、適正の範囲に入る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 2,479 円1,257 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 523 円265 億円)。 今の値に割り戻すと 1,444 円732 億円、今との差 +36.6%、 期待の年率 +11.0%(資本コスト 8.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,225 円2,649 億円 | 969 円491 億円 | +485.9% | +19.3% | 619 円314 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,850 円1,952 億円 | 706 円358 億円 | +331.1% | +15.7% | 911 円462 億円 |
| 中立 | 35% | 2,950 円1,495 億円 | 533 円270 億円 | +229.5% | +12.7% | 1,219 円618 億円 |
| やや悲観 | 22% | 649 円329 億円 | 327 円166 億円 | −7.6% | −0.8% | 215 円109 億円 |
| 悲観 | 13% | 85 円43 億円 | 203 円103 億円 | −72.7% | −12.2% | 38 円19 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,479 円1,257 億円 | 523 円265 億円 | +184.0% | +11.0% | 3,002 円1,522 億円 |
今の株価時価総額 1,057 円536 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 件数が伸び、コンサルも育つ最良の10年 利益 123 億円 · PER 21.2 倍 · 株価時価総額 5,225 円2,649 億円
仲介の担当者が増え、成約率が戻る。年の成約は420件と、今の1.8倍になる。報酬は大型案件の比率の上昇で、物価を上回って1.42倍になる。仲介部門の営業利益率は4割を保つ。
同時にコンサルが当たる。人員は500名まで増え、稼働率の高さがそのまま収益になる。売上は180億円と仲介の7割に迫り、利益率は2割に乗る。赤字の10年前が嘘のようだ。
リース事業は、M&Aで会社を譲った経営者の資産運用の受け皿として育つ。ただし利益への寄与は小さい。創業者の下で、株主への還元は純利益の6割台を保つ。
この筋書きでは、仲介とコンサルの二つの柱が同時に立つ。一度に噛み合う確率は低いが、起きれば会社の規模は今の3倍近くになる。
- M&A仲介(総研・特化型・エグゼクティブ・海外):数量 420(年間の成約件数(件))× 価格 0.91(1件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 383 億円・営業利益 153 億円。成約420件 × 1件0.912億円、売上383億円、営業利益率40%
- コンサルティング:数量 500(期中の平均人員(名))× 価格 0.36(1人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 180 億円・営業利益 36 億円。平均500名 × 1人0.36億円、売上180億円、営業利益率20%
- リース・その他:数量 300(組成額(億円))× 価格 0.03(組成額1億円あたりの収益(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 4 億円。組成額300億円 × 収益率3.0%、売上9.0億円
倍率:事業の純利益 123 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 156.6% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 82.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.1 倍。全体の PER 21.15 倍、時価総額 2,601 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:件数と単価の両面が揃う確率は低い。コンサルの黒字化と、仲介の人材の流出止めが、同時に必要になる。
やや楽観 20% 仲介は復調し、コンサルは黒字に乗る 利益 91 億円 · PER 21.0 倍 · 株価時価総額 3,850 円1,952 億円
成約は年350件まで戻る。アドバイザーの流出に歯止めがかかり、受託残高も再び増える。報酬は大型案件の比率が上がり、物価をやや上回る1.38倍だ。営業利益率は38%で止まる。
コンサルは450名に達し、売上は144億円になる。黒字になるが、採用と教育に費用がかさみ、利益率は17%にとどまる。
競合の仲介会社が増え、手数料の開示も進むため、伸びを妨げる力は残る。それでも、最大手の日本M&Aセンターに次ぐ規模の仲介会社として、地位は保つ。
還元は純利益の6割を目安に、配当と自社株買いを続ける。中立よりひと回り良い10年だが、人の確保という弱点は消えない。
- M&A仲介(総研・特化型・エグゼクティブ・海外):数量 350(年間の成約件数(件))× 価格 0.89(1件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 310 億円・営業利益 118 億円。成約350件 × 1件0.886億円、売上310億円、営業利益率38%
- コンサルティング:数量 450(期中の平均人員(名))× 価格 0.32(1人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 144 億円・営業利益 24 億円。平均450名 × 1人0.32億円、売上144億円、営業利益率17%
- リース・その他:数量 250(組成額(億円))× 価格 0.03(組成額1億円あたりの収益(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。組成額250億円 × 収益率2.8%、売上6.9億円
倍率:事業の純利益 91 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 132.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 70.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.0 倍。全体の PER 20.96 倍、時価総額 1,907 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:仲介の再成長とコンサルの黒字化は、会社がいま掲げる道筋そのものだ。ただし、どちらも途中で崩れる余地が残るため、強気の筋書きほどは確率を置けない。
中立 35% 仲介は緩やかに増え、コンサルは並みの稼ぎ手になる 利益 70 億円 · PER 20.8 倍 · 株価時価総額 2,950 円1,495 億円
成約は年300件と、今より3割ほど増える。後継者難の需要は強いが、アドバイザーの人数と、競合の増加が伸びを抑える。1件の報酬は物価並みの1.34倍になり、大型化による押し上げは、手数料の開示や値引き圧力と相殺される。
仲介の営業利益率は36%に落ち着く。人件費が物価で上がるうえ、成果連動の報酬を保たないと人が流出するためだ。
コンサルは人員400名、売上120億円の規模になる。立ち上げ期の赤字は抜けるが、利益率は14%と並みの水準だ。戦略ファームのような高い収益には届かない。
還元は純利益の5割台に落ち着く。大きな成功も失敗もなく、人の力で稼ぎ続ける10年だ。利益は今の2倍になるが、うち半分はコンサルの黒字化による。
- M&A仲介(総研・特化型・エグゼクティブ・海外):数量 300(年間の成約件数(件))× 価格 0.86(1件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 258 億円・営業利益 93 億円。成約300件 × 1件0.860億円、売上258億円、営業利益率36%
- コンサルティング:数量 400(期中の平均人員(名))× 価格 0.30(1人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 120 億円・営業利益 17 億円。平均400名 × 1人0.30億円、売上120億円、営業利益率14%
- リース・その他:数量 200(組成額(億円))× 価格 0.03(組成額1億円あたりの収益(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。組成額200億円 × 収益率2.7%、売上5.4億円
倍率:事業の純利益 70 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 112.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 60.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.8 倍。全体の PER 20.75 倍、時価総額 1,452 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要は強いが、人と競合が伸びを抑える。コンサルの黒字化を織り込んだうえで、いちばん素直な筋書きとして最も厚く置く。
やや悲観 22% 成約は横ばい、コンサルは伸び悩む 利益 32 億円 · PER 9.1 倍 · 株価時価総額 649 円329 億円
成約は年235件と今のまま動かない。アドバイザーの流出が続き、新規の採用で穴を埋めるだけになる。報酬は競争で値引きが広がり、1.20倍にとどまる。物価に届かない。
仲介の営業利益率は28%に下がる。人件費は物価で上がるが、売上の伸びがそれに追いつかない。
コンサルは採用を絞り、200名で収支が釣り合う程度に縮む。売上は50億円で、利益はほぼない。会社は赤字の部門の整理を迫られる。
リース事業は小さな利益にとどまる。景気の谷が来れば、一時的に成約が3割落ちる局面もある。還元は続くが、自社株買いは細る。事業は存続するが、成長の物語は終わった10年である。
- M&A仲介(総研・特化型・エグゼクティブ・海外):数量 235(年間の成約件数(件))× 価格 0.77(1件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 181 億円・営業利益 51 億円。成約235件 × 1件0.770億円、売上181億円、営業利益率28%
- コンサルティング:数量 200(期中の平均人員(名))× 価格 0.25(1人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 0 億円。平均200名 × 1人0.25億円、売上50億円、営業利益率0%
- リース・その他:数量 100(組成額(億円))× 価格 0.02(組成額1億円あたりの収益(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。組成額100億円 × 収益率2.2%、売上2.2億円
倍率:ROE 17.9%(現金の利息を除く事業の純利益÷自己資本)。k 8.5%。RONIC=k+残る割合1/2×(ROE−k)=13.4%。g 4%から正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.0倍。伸びと堀の持ちを低く見て、上限の6.50割(PER 9.13倍)に置いた。
確率:競合の増加、人材の流出、コンサルの失速のどれかが起きれば、この筋書きに入る。起きやすい形なので、やや厚めに置く。
悲観 13% 人材が去り、構造的に稼ぐ力を失う 利益 6 億円 · PER 7.2 倍 · 株価時価総額 85 円43 億円
アドバイザーが他社に引き抜かれ、成約は年150件まで落ちる。手数料の透明化と値下げ圧力で、1件の報酬は物価の分を失い、今の水準で止まる。
営業利益率は1割まで下がる。固定費の人件費と家賃は、売上が落ちても同じようには減らせない。
コンサルは採用が裏目に出て、顧客の定着もなく80名規模へ縮む。赤字の部門は閉じるか売却される。リース事業は小さく、航空機の売却益も一回きりで終わる。
会社は存続するが、高収益の仲介会社ではなく、小さな専門会社として評価される。還元は利益の減少に合わせて縮む。創業者の持株比率が高く、少数株主の発言力が弱いことも、立て直しの遅れを招く。
- M&A仲介(総研・特化型・エグゼクティブ・海外):数量 150(年間の成約件数(件))× 価格 0.64(1件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 96 億円・営業利益 10 億円。成約150件 × 1件0.642億円、売上96億円、営業利益率10%
- コンサルティング:数量 80.0(期中の平均人員(名))× 価格 0.20(1人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 −1 億円。平均80名 × 1人0.20億円、売上16億円、営業利益率-5%
- リース・その他:数量 50.0(組成額(億円))× 価格 0.02(組成額1億円あたりの収益(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。組成額50億円 × 収益率2.0%、売上1.0億円
倍率:ROE 5.4%(現金の利息を除く事業の純利益÷自己資本)が k 8.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、RONICは使わない。正当化PERは1÷k=11.1倍。稼ぐ力(純利益÷k)から出す。ROE 5.4%(現金の利息を除く事業の純利益÷自己資本)が k 8.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、RONICは使わない。正当化PERは1÷k=11.1倍。稼ぐ力(純利益÷k)から出す。その6.50割(PER 7.22倍)に置いた。
確率:人材の流出、規制の強化、コンサルの失敗が重なる複合の筋書き。単独でも起きうるが、重なる確率は低い。成約率の回復の遅れが現にあるため、慎重に重く置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
M&A仲介(総研・特化型・エグゼクティブ・海外)
中堅・中小企業のM&Aを仲介し、成約時に成功報酬を受け取る。祖業の総合型と、製造・建設・IT・医療の特化型、高額案件向けを含む。
| 数量年間の成約件数(件) | 価格1件あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 235 | 0.64 | 151 | 56 |
| 10 年後 中立 | 300 | 0.86 | 258 | 93 |
取り方:成約件数は開示を追い切れていないため推定。2025年9月期の仲介売上は、前期の約163億円に単体の減収率7.1%を当てて約151億円と置き、235件×0.642億円とした。2026年9月期は9か月で177件、1件あたり売上は約0.72億円で、これは2025年9月期より高い。数量は件数(実質)、物価の分は1件あたりの売上に入れる。営業利益56億円は、利益率を約37%と見た推定。
コンサルティング
戦略、業務改善、IT・DX、M&A、人事の総合コンサル。2025年から人員を急増させている。
| 数量期中の平均人員(名) | 価格1人あたりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 75.0 | 0.18 | 13 | −7 |
| 10 年後 中立 | 400 | 0.30 | 120 | 17 |
取り方:2025年9月期は人員が28名から136名に増え、期中の平均を約75名と置いた。売上は約13億円と推定、セグメント損失7.4億円は報じられた実績。採用直後の人員が多く、1人あたり売上は低い。稼働率は90%程度とされる。 数量は実物(人員数)で、名目の市場の伸びからは置いていない。1人あたり売上が10年で約1.7倍になるのは物価によるものでなく、採用直後で低い今の水準から稼働が上がるという事業の理由による。
リース・その他
総研リースの組成するオペレーティングリース商品の手数料と、小さな周辺収益。2026年は航空機を自社で持ち、連結の貸借対照表に載っている。
| 数量組成額(億円) | 価格組成額1億円あたりの収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 100 | 0.02 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 200 | 0.03 | 5 | 2 |
取り方:開示が乏しく、売上約2億円は2025年9月期の連結売上から仲介とコンサルを引いた推定。営業利益1.4億円は全社の営業利益50億円に合わせた残りで、本社費などの調整も含む。リース部門の実力を示す数字ではない。 価格は物価で伸びる単価でなく収益率(組成額に対する率)。数量の組成額は金額なので10年2倍には物価が含まれるが、事業が小さく(営業利益は全社の約3%)、全社の純利益への影響は1%程度のため置き直さない。
リスクと懸念
アドバイザーの流出
仲介の担当者は2026年6月末で337名と、前年から1割近く減った。報酬は成果連動のため、他社が条件を上げれば人は動く。減少が続けば、半年から1年先の成約と受託残高を削り、仲介の利益を弱める。
成約率の回復の遅れ
2025年9月期は、成約率が想定より回復せず、下方修正した計画にも届かなかった。2026年9月期は戻りつつあるが、会社は成約率の改善に時間がかかると説明している。再び遅れれば、増益の前提が崩れる。
コンサルの収益化
人員は136名から274名へ倍増し、2026年9月期の通期見通しも下げられた。9か月の損失は約7億円にのぼる。会社は2027年9月期に本格化と言うだけで、損益分岐の人員や時期は示していない。人を増やすほど固定費は重くなる。
財務の変化と金利
航空機のリース事業で借入が増え、自己資本比率は29%台に下がった。早期売却の前提が外れれば、金利負担と資産の価格下落が残る。金利が上がる局面では、純利益を削る力が増す。
手数料の透明化
中小M&Aガイドライン第3版は、手数料と業務内容の開示を求めた。売り手が複数社の料率を比べて値切る流れが強まれば、1件の報酬の伸びが物価に追いつかず、利益率が構造的に縮む。
創業者への集中
創業者が株の約58%を持つ。経営の判断は速いが、少数株主が資本配分に口を挟む余地は小さい。コンサルへの投資や航空機のような本業外の事業も、創業者の判断で進む。
今後の分かれ目
- アドバイザーの人数が4四半期続けて増えたら
- 中立から強気寄りに確率を移す。人材の流出が止まり、仲介の再成長が本物だと示す。
- コンサルが2027年9月期に営業黒字になったら
- 中立のコンサルの利益を上げ、強気の確率を増やす。黒字が稼働率の高さから来ているかを確かめる。
- 成約率が再び落ちて、通期の計画を下げたら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。2025年と同じ構図の繰り返しで、成約の質を疑う。
- 手数料の上限や明示の義務が定められたら
- 悲観の確率を上げる。1件の報酬が物価に届かず、利益率が縮む。
- 航空機の売却が進み、借入が返済されたら
- 財務の懸念は後退する。売却益の分だけ純利益は膨らむが、毎年の稼ぎではない。
- 創業者が持株を大きく売ったり、TOBの話が出たりしたら
- 支配の構図が変わる。価格と買い手の目的を見て、少数株主に有利かを判断する。
見ておくもの
- 四半期の成約件数と1件あたりの売上
- アドバイザーの人数と受託残高
- コンサルの人員・稼働率・セグメント損益
- 自己資本比率と有利子負債(航空機の売却の進み具合)
- 手数料に関する行政の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から決めた。資本コストは基本7.5%に質の上乗せ1.5%を足した9%、長期の成長率は4%、残る割合は並みの1/2で正当化PERを出し、中立はその7.5割に置いた。同じ領域の2社(上乗せ1.0%)より高いのは、人の流出・創業者への集中・未成熟なコンサルを抱えるため。今の株価と今のPERは倍率に使っていない。数量は成約件数と人員で実質、物価は1件・1人あたりの売上の側に入れ、二重には掛けていない。事務所の賃借は営業費用の固定費で、悲観の利益率に入れた。会計はすでにIFRSで、10年後の数字も今と同じ形(家賃は費用に含めた営業利益)にそろえた。リース用の航空機は早期売却の前提で別建てとし、将来の営業利益には含めていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.21→21.15 倍・やや楽観 PER 12.9→20.96 倍・中立 PER 11.61→20.75 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。