結論
帝国繊維は、消防ホースで国内首位とされる防災の専門会社だ。1903年に麻の会社として生まれ、いまは売上の8割強を、消防・救助・送排水・セキュリティの機材と特殊車両が占める。買い手の4割台半ばは官公庁である。
筆者の結論は「やや割高」だ。10年先の中心の見立てで、価値は今の時価総額を2割ほど下回る。事業が悪いのではない。今期の急な増益と、株主に戻りにくい資産の厚みを、今の値段がどちらも織り込んでいるからだ。
事業の質は良い。災害が増えるほど需要は増え、納入の実績が参入の壁になる。ただ売上は大型案件で波打ち、買い手が役所なので値段は入札で決まる。堀は「普通」と見る。
資産の面白さは、ヒューリック株にある。時価で290億円ほどと推定され、時価総額の4割近い。長年売られていない。物言う株主が毎年のように還元を迫るが、経営の動きは遅い。
財務は堅い。借金はなく、自己資本比率は約8割だ。それでも自己資本利益率は5%台にとどまる。眠る資産が利益率を押し下げているのだ。
新しい中期計画は、2028年度に営業利益58億円と、総還元性向50%水準を掲げた。ただ営業利益の今期予想はすでにこれを上回る。計画が控えめなのか、今期が山なのか。筆者は後者の可能性を重く見ている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業と資産を分けて見る。
事業は良い。防災の需要は景気に左右されにくく、10年後も消えない。ホースと車両と排水を一社で提案する力は、他社がすぐにはまねできない。しかも工場と運転資金のほかに、大きな投資を要しない。株主のものになる利益は、純利益の大半と見てよい。
ただ、堀は広くない。買い手が役所で、値段は入札で決まる。大型案件の波もある。長く持てば利益が複利で増えるタイプではなく、物価に歩調を合わせて伸びる会社だと筆者は見る。
資本の使い方は評価が分かれる。眠る資産が大きく、自己資本利益率は5%台にとどまる。ヒューリック株は、事業と関係のない株を何十年も持ち続けた結果だ。還元は進みつつあるが、動いたのは外から圧力が強まってからである。
安全域は、床の資産にある。純現金とヒューリック株の税後を合わせると、時価総額の4割近い。ただ、それが株主に戻る保証はなく、戻り方は半分と見た。今の値段は、事業の好調と資産の戻りを、どちらも織り込んでいる。
10年後に今より強い会社になっているか。送排水とセキュリティが育てば、利益の質は上がる。ただ、役所が買い手である限り、値段の力は変わらない。筆者は、会社が良くなるかどうかより、持つ資産の使い道が変わるかどうかが、株主の取り分を決めると見ている。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は防災・セキュリティ事業で、売上の約81%、セグメント利益の約75%を占める。品目は消防ホース、救助資機材、防火衣、救助工作車、空港用の化学消防車、原子力施設や石油コンビナート向けの大型資機材だ。
成長の芯は2つある。1つは大量送排水システムだ。洪水や津波のあとに、ポンプと太いホースで大量の水をくみ出す仕組みで、自治体の事業継続計画に組み込まれ始めた。もう1つはセキュリティ機器で、ボディスキャナーや爆発物検知器を空港や公共施設へ売っている。
売り先は官公庁が4割台半ばを占める。消防、自治体、防衛省、原子力関連、空港が主な顧客だ。受注残は2025年末で200億円を超え、救助工作車と空港用化学消防車が積み上がっている。
繊維事業は売上の約17%だ。麻の生地と、防護服向けの耐熱・耐切創などの高機能繊維を作る。麻はアパレル向けが減り、官公庁向けが増えた。
不動産賃貸は売上の2%に満たないが、ショッピングセンターに貸す土地の利益率は7割を超え、安定した副収入になっている。
生産は栃木の下野工場と鹿沼工場が担う。下野工場は新設して能力を押し上げる計画で、中期計画は両工場の革新を柱の1つに掲げる。
新しい中期計画は、防災事業を送排水・セキュリティ・消防防災の3つに分け直した。ホースや車両のような基盤の事業で稼ぎ、送排水とセキュリティで伸ばす構図である。自社で作らない機器は仕入れて売る商社の側面もあり、利益率は品目で大きく違う。
優良さと弱いところ
いちばんの強みは、120年を超える納入の実績だ。消防ホースは国の規格に合う品でなければ使えず、現場で破れれば消火も人命も危うい。自治体は実績のない会社の品をなかなか選ばない。これが国内首位を支える壁である。
もう1つの強みは、ホースから車両、排水、探知機まで、防災の現場に要る品を一社で提案できる点だ。商社とメーカーの両面を持つので、大型案件を総合で受けやすい。
弱みも明確だ。官公庁向けは入札で決まり、値段を自分で決められない。車両や原子力向けの大型案件は年ごとの波が大きい。2023年は営業利益が26億円まで落ち、翌年から戻した。今期の急な増益にも、この波が混じっている。
資本効率は低い。自己資本利益率は過去10年の中央値で6%、前の中期計画が掲げた8%に届かなかった。原因は事業ではなく、使い道のない現金と投資有価証券が資産の半分ほどを占めることだ。
経営は保守的で、動きが遅い。物言う株主の提案に毎年のように反対し、還元の拡大は後手に回ってきた。国内首位でも、買い手が役所で値段を握られる。筆者は堀を「普通」にとどめた。
財務の堅さは、安全の面では強みだが、資本の使い方の面では弱みでもある。借金がなく現金が厚いのは、災害で需要が急に増えた時に先行して仕入れられる備えになる。一方で、備えが長年の余りになり、株主に戻らない期間が長く続いた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場は、国と自治体の防災・安全の予算と、災害の増え方で決まる。景気の波は小さいが、大型案件の有無で売上が年ごとに揺れる。
追い風は3つある。第1に水害の増加だ。線状降水帯による浸水が毎年のように起き、自治体が大量に水をくみ出す装備を買い足している。第2に国土強靱化の予算で、消防車両や資機材も更新の時期にきている。第3に安全保障と治安で、空港や公共施設の検査機器、防衛省向けの防護繊維の需要が伸びる。原子力発電関連の大型の防災資機材も、今期の売上を押し上げた。
逆風は人口減と、役所の予算の制約だ。消防団員は人口とともに細り、ホースの本数は伸びにくい。車両は更新の周期が長く、ここで当社が取り分を増やせるかが勝負になる。
競合は領域ごとに違う。消防車ではモリタホールディングスが、ポンプ車とはしご車で国内の約6割を持つと自社で説明している。当社は救助工作車や空港用の特殊車両で戦う。ホースでは足盛産業など同業がある。送排水やセキュリティでは、海外の防災機器メーカーが強敵になりうる。
繊維は別の市場だ。麻の衣料は人口減と輸入品に押されて細り、防護服向けの高機能繊維が増える。全体は横ばいから微減と筆者は見る。
10年のうちに、この市場の質は少しずつ変わる。ホースのような単価の安い消耗品の比重が下がり、車両・排水・探知機といった高単価の機器の比重が上がる。売上は伸びやすいが、案件ごとの波は大きくなる。
資本政策と M&A
還元は、前の中期計画の配当性向40%目標から、新しい計画の総還元性向50%水準へ進む。配当は2025年12月期に増え、今期もさらに増やす計画だ。自社株買いは2025年に11億円を上限に実施した。物言う株主の提案には反対しながら、自分で上限を決めて動いたかたちである。
最大の論点はヒューリック株だ。当社は同社株を約1,700万株、2%強持つ。時価で290億円ほどと推定され、時価総額の4割近い。旧富士銀行の流れをくむ持ち合いで、ヒューリックも当社株を3%強持つ。
ニッポン・アクティブ・バリュー・ファンドは2025年、2026年と株主提案を重ね、共同保有を含めて1割前後を持つと報じられた。2025年の総会では、株式報酬の議案の賛成は1割ほどで否決された。みずほ銀行、明治安田生命、損保ジャパンなどの安定株主が厚く、提案は通りにくい。
M&Aは、新しい計画が「アライアンスによる収益機会」を掲げるにとどまり、具体の案件は見えない。買われる側の可能性は、安定株主の厚さと物言う株主の存在で、両方向に引っ張られている。
自社株の保有は5%台にあり、従業員向けの株式報酬にも使われている。株数を減らす方向の消却に踏み込めば、還元の姿勢が変わった合図になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
防災は、増えることはあっても減りにくい需要だ。水害は年々激しくなり、自治体は大量送排水の装備を揃え始めたばかりである。国土強靱化の予算は続き、消防車両の更新時期も重なる。当社は国内首位のホースを足場に、車両、送排水、探知機まで一社で提案でき、大型案件を総合で取れる。
今期は営業利益が上期だけで、通期の当初予想の95%に達した。中期計画の目標、営業利益58億円は、前倒しで超える勢いだ。受注残は200億円を超え、下野工場で生産能力も増える。送排水とセキュリティの利益率は高く、全社の利益率は水準を切り上げられる。
資産の裏付けもある。ヒューリック株は時価で290億円ほどあり、純現金も100億円を超える。物言う株主が1割前後を持ち、経営は総還元性向50%水準を明言した。還元が進めば、自己資本利益率は8%を超え、倍率も上がる。10年後に営業利益が100億円を超える道は十分に見える。
繊維にも芽がある。防護服向けの耐熱・耐切創の繊維は、バッテリー火災のような新しい課題への商材に広がり、麻も環境にやさしい素材として官公庁向けが伸びている。小さな事業だが、利益率は高い。
慎重な見方
今期の増益は、原子力向けの大型資機材や空港用の車両など、一度きりに近い案件が押し上げている。2023年には営業利益が26億円まで落ちた会社だ。波のある売上の山を、10年続く水準とみなしてはいけない。
買い手は役所で、値段は入札で決まる。送排水やセキュリティは新しい市場だが、参入が相次げば値段は下がる。自社で作らない機器では、取り次ぎで取れる利益に限りがありうる。車両にはモリタという大きな相手がいる。
中期計画の目標は営業利益58億円で、今期の予想より低い。会社自身も、今期の水準が続くとは置いていないと読める。前の計画は、ROE8%の目標にも届かなかった。
ヒューリック株は、長年売られていない。安定株主の多い会社で、物言う株主の提案も2025年に否決された。眠る資産が、そのまま株主に戻る保証はない。持ち合いが続くなら、事業の稼ぎで測る価値のほうが重い。
下野工場の新設は、需要が読みどおりなら効く投資だが、外れれば固定費の重しになる。受注残は200億円を超えて見えるが、その中身は大型の特殊車両に偏る。件数の少ない案件に頼る構造は、1件の遅れや失注が利益に響く弱さを持つ。
どちらに重みを置いたか
値段の面では、慎重な見方がやや強い。強気の見方は事業の質と資産の厚みに説得力がある。ただ、今期の水準が10年続くことを裏づける材料は、受注残の積み上がりにとどまる。
一方で、ヒューリック株と純現金の床は、悲観を深くしすぎない根拠になる。そこで確率は、中立に4割を置き、やや楽観以上を合わせて28%、やや悲観以下を合わせて32%とした。悲観の底は床の資産で止まる。
強気の見方が正しければ、還元の拡大が先に表に出る。その時は見立てを上方へ直せばよい。今は、事業が良いことと、値段が安いことを、分けて考えるべき局面だと筆者は見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,598 円942 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 981 円257 億円)。 今の値に割り戻すと 2,429 円636 億円、今との差 −18.2%、 期待の年率 +4.4%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,685 円1,488 億円 | 1,215 円318 億円 | +132.5% | +8.8% | 552 円144 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,715 円1,234 億円 | 1,131 円296 億円 | +97.0% | +7.0% | 1,169 円306 億円 |
| 中立 | 40% | 3,977 円1,041 億円 | 1,039 円272 億円 | +69.0% | +5.4% | 2,007 円525 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,282 円597 億円 | 925 円242 億円 | +8.0% | +0.8% | 705 円185 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,070 円280 億円 | 386 円101 億円 | −50.9% | −6.9% | 146 円38 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,598 円942 億円 | 981 円257 億円 | +54.3% | +4.4% | 4,579 円1,198 億円 |
今の株価時価総額 2,968 円777 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 送排水とセキュリティが育ち、利益の水準が一段上がる 利益 90 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 5,685 円1,488 億円
水害が増え、自治体と企業の事業継続計画に、大量送排水の装備が広く入る。市場は実質で3割ほど膨らみ、当社は総合提案の強みで取り分を1割へ高める。
原子力施設と空港でも更新が続き、特殊車両が積み上がる。下野工場の増強が効き、大型案件の波も平らになる。
セキュリティ機器は、空港と公共施設で標準の装備になり、利益率の高い売上が増える。全社の営業利益率は16%台に乗り、利益は今の3倍近くになる。
物言う株主の圧力で、還元も進む。ヒューリック株の一部を売り、買収と自社株買いに使うため、手元の現金は今より薄くなる。
資本の使い方は変わる。ただし、買収の失敗で現金を目減りさせる芽も同時に増える。倍率は、利益の質と成長が評価され、高めに置かれる。
- 防災・セキュリティ:数量 2.9(国内の防災・安全の調達市場(実質・億ドル相当。今の値段で測る)× 当社シェア)× 価格 201(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍)× 入札・競争による上げ下げ)→ 売上 592 億円・営業利益 119 億円。市場が実質 1.30 倍、シェア 10%。値段は物価並み。営業利益率 20%
- 繊維:数量 0.5(麻・防護繊維などの対象市場(実質・億ドル相当)× 当社シェア)× 価格 201(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 97 億円・営業利益 15 億円。市場 1.0 倍、シェア 4.8%。営業利益率 16%
- 不動産賃貸:数量 0.0(賃貸収入の実質額(億ドル相当。今の値段で測る))× 価格 180(実質 1 ドルあたりの賃料収入(円)=150 円 × 賃料改定の倍率)→ 売上 7 億円・営業利益 5 億円。賃料が 1.20 倍。営業利益率 75%
倍率:事業の純利益 87 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)188 億円。全体の PER 16.21 倍、時価総額 1,594 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 14.85 倍・時価総額 1,376 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:水害・治安・原子力の需要がそろって強まり、取り分も1割へ届く必要がある。重なる確率は低く、8%にとどめた。
やや楽観 20% 需要は堅調で、取り分も少し伸びる 利益 75 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 4,715 円1,234 億円
防災の市場は実質で2割強増え、当社の取り分は9.5%まで上がる。送排水とセキュリティが育ち、車両の更新も追い風になる。値段は物価並みに上がる。
大型案件の波は残るが、受注残の積み上がりが売上を支える。営業利益率は全社で15%台を保つ。
繊維は、麻が細る一方で高機能繊維が育ち、横ばいに近い。
還元は総還元性向50%水準で進み、ヒューリック株は売られないが、現金の一部は買収に回る。倍率は、利益の質が高めに評価される。
ホースの縮みは、車両と送排水の伸びで十分に埋まる。全社の営業利益は90億円台に乗り、今期の予想を大きく上回る。
- 防災・セキュリティ:数量 2.6(国内の防災・安全の調達市場(実質・億ドル相当。今の値段で測る)× 当社シェア)× 価格 201(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍)× 入札・競争による上げ下げ)→ 売上 528 億円・営業利益 98 億円。市場が実質 1.22 倍、シェア 9.5%。値段は物価並み。営業利益率 18.5%
- 繊維:数量 0.4(麻・防護繊維などの対象市場(実質・億ドル相当)× 当社シェア)× 価格 201(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 87 億円・営業利益 14 億円。市場 0.96 倍、シェア 4.5%。営業利益率 15.5%
- 不動産賃貸:数量 0.0(賃貸収入の実質額(億ドル相当。今の値段で測る))× 価格 176(実質 1 ドルあたりの賃料収入(円)=150 円 × 賃料改定の倍率)→ 売上 6 億円・営業利益 5 億円。賃料が 1.17 倍。営業利益率 75%
倍率:事業の純利益 70 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)218 億円。全体の PER 15.62 倍、時価総額 1,318 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 14.11 倍・時価総額 1,109 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:受注残は厚く、今期の勢いも本物だ。ただ慎重な見方がやや強いので、やや楽観は20%とした。
中立 40% 大型案件が一巡し、物価並みの成長に落ち着く 利益 62 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,977 円1,041 億円
防災の市場は実質で15%ほど増え、当社の取り分は9%へ上がる。送排水とセキュリティが育つが、値段は役所の入札で抑えられ、物価並みの上げにとどまる。
今期の急な増益のうち、一度きりに近い大型案件の分は戻る。全社の営業利益は77億円ほどで、今期の予想を上回るが、物価の3%を引くと伸びは小さい。
繊維は、麻が細り、高機能繊維がそれを補う。不動産賃貸は安定している。
ヒューリック株は売られず、還元は総還元性向50%水準で進む。自己資本利益率は資本コストを少し上回る程度で、倍率は普通の優良企業に収まる。
ここでは、ヒューリック株が10年間ほぼ売られないと置く。事業の稼ぎは物価に歩調を合わせて伸び、純現金は少しずつ増える。
- 防災・セキュリティ:数量 2.3(国内の防災・安全の調達市場(実質・億ドル相当。今の値段で測る)× 当社シェア)× 価格 201(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍)× 入札・競争による上げ下げ)→ 売上 472 億円・営業利益 83 億円。市場が実質 1.15 倍、シェア 9%。値段は物価並み(1.34 倍)。営業利益率 17.5%
- 繊維:数量 0.4(麻・防護繊維などの対象市場(実質・億ドル相当)× 当社シェア)× 価格 201(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 76 億円・営業利益 11 億円。市場 0.92 倍、シェア 4.1%。営業利益率 14%
- 不動産賃貸:数量 0.0(賃貸収入の実質額(億ドル相当。今の値段で測る))× 価格 173(実質 1 ドルあたりの賃料収入(円)=150 円 × 賃料改定の倍率)→ 売上 6 億円・営業利益 5 億円。賃料は長期契約で物価に遅れ、1.15 倍にとどまる。営業利益率 75%
倍率:事業の純利益 58 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)240 億円。全体の PER 14.89 倍、時価総額 1,096 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 13.33 倍・時価総額 902 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:強気と慎重の言い分の落としどころ。大型案件は一巡するが、需要の底は堅い。10年の中心の見立てとして4割を置いた。
やや悲観 22% 予算の波と入札競争で、利益が元の水準に戻る 利益 37 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 2,282 円597 億円
予算の波と競争で、利益が元の水準に戻る。防災の市場は実質で5%増にとどまり、取り分は今の8%のままだ。入札で値段が抑えられ、物価の伸びに追いつかない。
大型案件が谷に入り、営業利益率は10%を割る。2023年の谷に近い姿だ。送排水とセキュリティは育つが、参入が増えて利益は薄い。
繊維は麻が細り、利益が減る。ヒューリック株は売られず、還元は配当の維持にとどまる。自己資本利益率は資本コストを下回り、ためた利益は額面未満の価値になる。
下野工場の固定費が重く、稼働率も上がりにくい。物言う株主の圧力は続くが、安定株主が厚く、大きな変化は起きない。
- 防災・セキュリティ:数量 1.9(国内の防災・安全の調達市場(実質・億ドル相当。今の値段で測る)× 当社シェア)× 価格 195(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍)× 入札・競争による上げ下げ)→ 売上 371 億円・営業利益 52 億円。市場が実質 1.05 倍、シェアは今の 8%。入札で値段は 1.30 倍にとどまる。営業利益率 14%
- 繊維:数量 0.3(麻・防護繊維などの対象市場(実質・億ドル相当)× 当社シェア)× 価格 195(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 63 億円・営業利益 6 億円。市場 0.85 倍、シェア 3.8%。営業利益率 9%
- 不動産賃貸:数量 0.0(賃貸収入の実質額(億ドル相当。今の値段で測る))× 価格 165(実質 1 ドルあたりの賃料収入(円)=150 円 × 賃料改定の倍率)→ 売上 6 億円・営業利益 5 億円。賃料が 1.10 倍。営業利益率 75%
倍率:事業の ROE 5.4% が k 7.5% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PER は 1÷k=13.8 倍が上限。稼ぐ力は入札の値下がりと予算の谷で下振れしうるので、上限の約 7 割の 9.5 倍に置いた。余った現金(持ち合い株を R4 の holdings に移した後の約 78 億円)は谷で食う前提で今の 0.75 倍の約 59 億円、戻り方 0.5 を掛けて足した。持ち合い株と賃貸不動産は R4 で資産の値を別に足す。
確率:役所の予算の波と入札の競争は現実的で、2023年の谷も最近だ。慎重な見方がやや強いので、やや悲観は22%と厚めに置いた。
悲観 10% 大型案件が消え、価格競争で利益がほぼ消える 利益 13 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,070 円280 億円
国土強靱化の予算が終わり、大型案件が消える。防災の市場は実質で1割以上縮み、送排水とセキュリティは海外勢との価格競争になって、取り分は6.8%まで落ちる。入札で値段を叩かれ、営業利益率は10%にとどまる。
繊維は麻が崩れ、利益がほぼ消える。本社費は削るが、新設した工場の固定費が重しになる。全社の営業利益は10億円ほどで、事業の稼ぐ力は小さい。
価値は、純現金のうち事業に要らない分と、ヒューリック株の税後で測る床に落ち着く。物言う株主も効かず、床の資産は戻らない。配当は削られる。
防災の需要そのものは消えないが、取り分と値段が落ち、事業が稼ぐお金は今の3割ほどに縮む。
- 防災・セキュリティ:数量 1.4(国内の防災・安全の調達市場(実質・億ドル相当。今の値段で測る)× 当社シェア)× 価格 180(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍)× 入札・競争による上げ下げ)→ 売上 244 億円・営業利益 24 億円。市場が実質 0.88 倍に縮み、シェアは 6.8%。値段は 1.20 倍。営業利益率 10%
- 繊維:数量 0.2(麻・防護繊維などの対象市場(実質・億ドル相当)× 当社シェア)× 価格 180(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。市場 0.75 倍、シェア 3%。営業利益率 2%
- 不動産賃貸:数量 0.0(賃貸収入の実質額(億ドル相当。今の値段で測る))× 価格 150(実質 1 ドルあたりの賃料収入(円)=150 円 × 賃料改定の倍率)→ 売上 6 億円・営業利益 4 億円。賃料は据え置き。営業利益率 75%
倍率:価値は、純現金のうち事業に要らない分とヒューリック株の税後で測る床に置く。稼ぐ力は事業の純利益 11 億円と小さく、床(280 億円)のほうが大きい。今の自己資本 722 億円に PBR 0.39 倍を掛けた形で、床の資産額と一致させた。
確率:国内首位の地位と、ヒューリック株と純現金の床がある。構造的に負ける筋書きは重いが、確率は低く10%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
防災・セキュリティ
消防ホース、救助資機材、防火衣、救助工作車、空港用化学消防車、大量送排水システム、セキュリティ機器、原子力・石油施設向けの大型資機材。
| 数量国内の防災・安全の調達市場(実質・億ドル相当。今の値段で測る)× 当社シェア | 価格実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍)× 入札・競争による上げ下げ | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.8 | 150 | 273 | 43 |
| 10 年後 中立 | 2.3 | 201 | 472 | 83 |
取り方:会社開示の売上 272.6 億円・営業利益 43.0 億円(2025/12 期)。物量の開示は無い。国内の防災・安全の調達市場(消防車両・ホース・資機材・防火衣・送排水・探知機・空港用などの合計)を、確かな統計が無いので筆者が粗く 3,400 億円と置き、当社の取り分を約 8% と推定した。市場規模は実質で、150 円で割って億ドル相当にした。市場の大きさは推定で、売上の積み上げ方(市場の伸び × シェア × 値段)を見やすくするための置き方である。
繊維
麻の生地、化合繊、官公庁向けの繊維資材、防護服向けの耐熱・耐切創などの高機能繊維。
| 数量麻・防護繊維などの対象市場(実質・億ドル相当)× 当社シェア | 価格実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.4 | 150 | 58 | 10 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 201 | 76 | 11 |
取り方:会社開示の売上 58.4 億円・営業利益 9.9 億円。麻・防護繊維・官公庁向け繊維資材の対象市場を、統計が無いので粗く 1,500 億円と置き、当社の取り分を約 3.9% と推定した。市場は実質、150 円で割って億ドル相当にした。麻のアパレル向けは減り、官公庁向けは増えている。
不動産賃貸
ショッピングセンター向けの貸地など。賃料は長期契約で、物価には遅れて追いつく。
| 数量賃貸収入の実質額(億ドル相当。今の値段で測る) | 価格実質 1 ドルあたりの賃料収入(円)=150 円 × 賃料改定の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 150 | 6 | 4 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 173 | 6 | 5 |
取り方:会社開示の売上 5.5 億円・営業利益 4.1 億円。貸地中心で数量は実質ほぼ固定。賃料は長期契約で、物価には遅れて追いつくので、価格は 10 年で 1.15 倍前後に置いた。
リスクと懸念
大型案件の波
原子力向けや空港用車両などの大型案件は、年ごとの波が大きい。今期の急な増益には、この波の山が混じっている。大型案件が一巡すれば、利益率は元の水準へ戻りうる。2023年には営業利益が26億円まで落ちた。
入札による値段の抑え込み
買い手の4割台半ばは官公庁で、値段は入札で決まる。送排水やセキュリティの市場に同業や海外メーカーが入れば、値段は物価の伸びに追いつかない。値決め力は強くない。
眠る資産が戻らない
ヒューリック株は時価で時価総額の4割近いが、長年売られていない。安定株主が厚く、物言う株主の提案は2025年に否決された。還元が遅れると、資産の価値は株主に届かない。
災害・予算の変動
防災の需要は、災害の多さと国や自治体の予算で動く。国土強靱化の予算が打ち切られたり、財政の都合で更新が先送りされたりすれば、受注は細る。災害が少ない年は、緊急の調達も減る。
工場の固定費
下野工場などの新設で、固定費が増える。需要が計画に届かなければ、稼働率が下がり、利益率を押し下げる。新工場の立ち上がりと受注の積み上がりが合っているかを、見る必要がある。
ホースと繊維の縮み
ホースの本数は消防団員とともに細り、麻の衣料は輸入品に押されて減る。この2つの縮みを、送排水やセキュリティの伸びで埋め続けられるかが、10年の分かれ目になる。
今後の分かれ目
- 防災の営業利益率が、2年続けて13%を割ったら
- 今期の水準が一度きりだったと判断し、やや悲観・悲観の確率を上げる。入札の競争か大型案件の谷が効いている合図になる。
- 受注残が300億円を超えて積み上がったら
- 送排水やセキュリティの需要が構造的に強いと見て、やや楽観以上の確率を引き上げる。
- ヒューリック株を売って、自社株買いや増配に回す方針が出たら
- 余った現金の戻り方を1.0に近づける。眠る資産が株主に届く見通しがはっきりし、見立てが上がる。
- ニッポン・アクティブ・バリュー・ファンドの提案が総会で3割を超える賛成を得たら
- 経営が還元に動かざるをえなくなる。戻り方の前提を引き上げ、取締役会の変化も確かめる。
- 送排水やセキュリティで、海外メーカーが国内の大型案件を続けて取ったら
- 当社のシェアの前提を引き下げ、悲観側の確率を上げる。価格競争が量にも及ぶ合図だ。
- 国土強靱化の予算が、更新から新設へ方針を変えたり、規模を縮めたりしたら
- 市場の実質の伸びを下げ、中立の数量を引き下げる。
見ておくもの
- 防災の営業利益率と、受注残の推移
- 送排水・セキュリティの売上と、入札での採用の広がり
- 下野工場の稼働率と、固定費の重さ
- ヒューリック株の保有と、総還元性向(配当と自社株買い)の実績
- ニッポン・アクティブ・バリュー・ファンドの保有比率と、総会での賛成率
倍率と資本コストの決め方
売上は、防災・繊維・不動産賃貸の3つに分け、市場の実質の伸び × 当社のシェア × 値段で積んだ。今の株価と PER は見ずに筋書きを置いた。倍率は、資本コスト 7.5%(基本 7.5% に、循環 −0.25%・値決め力 +0.25%・寿命 −0.25%)と長期成長 3.75%、事業の ROE から出る正当化 PER の 8.5〜9.5 割に置いた。10年後の数字は、今期の急な増益を一度きりの分だけ戻した形にした。市場規模とシェアは統計が無く、筆者の粗い推定である。ヒューリック株の時価は推定で、戻り方は 0.5 に抑えた。リース会計の影響は小さく、特に調整していない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。