結論
ボーイングは、民間旅客機(737・787・777・767)の商用機部門(BCA)、軍用機・ミサイル・宇宙・衛星の防衛・宇宙部門(BDS)、部品・整備・改修・訓練のグローバル・サービス部門(BGS)の 3 つを持つ、エアバスと並ぶ世界の民間機の複占の一角である。2025 年は売上 895 億ドル、納入 600 機(2018 年の 806 機にまだ届かない)。営業利益は売却益を除くと約 −53 億ドルの赤字で、純利益 22 億ドルはジェプセン売却益によるもの。2026 年 4〜6 月期は売上 246 億ドル(+8%)、営業利益 1.6 億ドル、純損失 4.3 億ドル、FCF +6 億ドル、737 は月 47 機へ。受注残は過去最高の 7,153 億ドル(民間機 6,200 機超)に達した。
この会社の特色は、需要の問題がなく、供給と品質の問題だけがあること。受注は 10 年分以上積み上がり、エアバスも供給が足りない。ボーイングの課題は 737 の増産の許可(FAA)、777X の認証(初納入 2027 年)、スピリットの統合、防衛の固定価格契約(KC-46・T-7・MQ-25・VC-25B)の損失の終息、そして純負債 約 260 億ドルの返済である。
バリュー投資の観点では、事業の位置は強いが、利益がまだ出ていない。時価総額 1,504 億ドルは 2025 年の純利益(売却益込み)の 67 倍。セグメントごとに市場 × シェア × 価格で積み上げると、2028 年の中立の純利益は 55 億ドル、2035 年は 145 億ドル。10 年後の倍率を利益ベースの上限 14.9 倍(事業の ROE 23%・g 4.5%・k 9.25%・堀 強)の 8 割の 11.9 倍に置いて資本コスト 9.25% で割り引くと、今の値段に中立では届かず、確率で加重すると 5 割弱の割高で、楽観がそろって初めて見合う水準になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず 10 年後もこの事業があるかを問う。ある。大型旅客機を作れるのは世界で 2 社だけで、空の旅の需要は物価以上に伸びる。堀は、複占・認証・乗員訓練の共通性という本物だが、品質の失敗で何度も傷ついてきた。堀は存在するが、手入れが悪く、広がっていない。
次にオーナー利益を見る。2025 年の営業利益は赤字、FCF は −19 億ドル、純利益 22 億ドルは売却益。2026 年の FCF 目標は +10〜30 億ドルで、時価総額 1,504 億ドルに対する FCF の利回りは 0.1〜0.2%。国債 5% の足元にも及ばず、利益が出るまで待つ投資になる。2028 年の中立の純利益 55 億ドル、2035 年の 145 億ドルまで育って初めて、利回りが資本コストに近づく。
資本配分は、2013〜2019 年に 500 億ドル超を自社株買いと配当に使い、そのあと自己資本を消して増資した実績が示すとおり、評価できない。現経営は返済を優先し、新型機は後回しにして健全な方向だが、その時の開発費が資本を食う。安全域:中立の筋書きの 10 年の収益は年 3% 弱で、資本コスト 9.25% に届かない。事業の予測のしやすさ(受注残)は高いが、利益率と固定価格契約の結果は予測しにくく、確信度は低い。値段に見合う安全域は無い。事業の予測のしやすさ(受注残)は高いが、利益率と固定価格契約の結果は予測しにくく、確信度は低い。値段に見合う安全域は無い。
何で稼ぐ会社か
商用機部門(BCA、2025 年売上 415 億ドル・利益率 −17.1%)は、狭胴機の 737 MAX(受注残の過半。月産 47 機)、広胴機の 787(月 7〜10 機)、777・777X(貨物の 777F を含む)、767(貨物機・空中給油機の KC-46 の母機)を作り、航空会社・リース会社に売る。737 は 2019 年の 2 度の墜落・2024 年 1 月のドア部品の脱落で、FAA が月産を 38 機に制限し、2026 年にようやく 47 機に戻した。777X は 2020 年の予定が 2027 年へ延び、2025 年 10 月に 49 億ドルの費用を計上した。2025 年に完全子会社にしたスピリット・エアロシステムズ(胴体・主翼の部品)のウィチタ工場が戻り、品質の源流を握った。
防衛・宇宙部門(BDS、同 272 億ドル・利益率 −0.5%)は、F-15EX・F/A-18・空中給油機 KC-46・哨戒機 P-8・ヘリの AH-64 アパッチと CH-47 チヌーク、無人給油機 MQ-25、練習機 T-7、大統領専用機 VC-25B、ミサイル(JDAM など)、衛星、スペース・ローンチ・システム(SLS)、国際宇宙ステーションの運用を持つ。2025 年 3 月に空軍の次世代戦闘機 F-47 を受注した。固定価格の開発契約(KC-46・T-7・MQ-25・VC-25B・スターライナー)が、この 6 年で 100 億ドル規模の損失を出してきた。
グローバル・サービス部門(BGS、同約 208 億ドル・利益率 約 19%)は、航空会社への部品供給(アビアル)・整備の改修・訓練・デジタル運航と、米軍・同盟国への維持整備を担う。2025 年 11 月にジェプセン(航空地図)をソーラ・ラボに売却して債務を減らした。利益の質が高く、営業利益は全社で唯一安定して黒字。
優良さと弱いところ
堀は機体の複占にある。大型旅客機を認証・設計・量産できる会社は世界でボーイングとエアバスの 2 社だけ(中国の COMAC は国内向けで、西側の認証を持たない)。1 度発注した航空会社は、整備・乗員訓練・部品の共通性で同じ機種を 20〜30 年使い続ける。受注残 7,150 億ドル(6,200 機超)は売上の約 8 年分で、需要の裏付けは強い。BGS の部品・整備は、飛んでいる 1 万機超の機体が増えるほど積み上がる。
弱い点は、製造・品質・認証の文化と財務である。2019 年の MAX 墜落で自己資本を消し、2020 年のコロナと 777X の遅れで債務が急増し、2024 年に 210 億ドルの増資をした。自己資本比率は 3.2%、2025 年の ROE 41% は自己資本が小さいための見かけの値。資本効率は「優良」から遠い。第二に、価格を決める力。エアバスが先に売り切れる局面で値上げが通っているが、ボーイングは納入が遅れるたびに航空会社へ補償を払ってきた。第三に、防衛の固定価格の開発契約で、見積もりの甘さによる損失が繰り返された。
経営は、2024 年 8 月に就任したケリー・オートバーグ CEO(元ロックウェル・コリンズの CEO)が、品質・安全・財務の立て直しを優先している。新型機は財務が直ってから、と明言している。経営の方向は正しいが、実績は途上である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
民間機は、供給が制約となる局面にある。世界の受注残は約 18,100 機(稼働機の約 6 割)で、2026 年の納入は約 1,690 機(2018 年の 1,753 機に届かない)。エンジン・部品・整備士・主翼などの不足から、需給の不均衡は 2031〜34 年まで続く(IATA)。エアバスは 2026 年の納入を約 870 機と見込み、A320 の月産 75 機の達成は 2027 年末ごろまで遅れる(P&W のエンジン不足)。ボーイングは 2026 年上半期に 314 機(Q2 は 171 機、うち 737 が 129 機)を納入した。2026 年に中東の戦闘で燃料費が上がり、IATA の航空会社の純利益見通しは 410 億ドルから 230 億ドルへ下がった。航空会社の収益悪化は、納入の延期より整備の先送りや退役の増加として先に出る。
機体は事実上の複占で、COMAC の C919(月 10〜15 機程度)は中国国内向け、エンブラエルは小型機。新型の狭胴機(737・A320 の次の世代)を先に出した方が 2040 年代を握り、エアバスは A321XLR で長距離の中型機にも手を伸ばしている。ボーイングの 737-7・-10 は 2026 年に認証を見込み、初納入は 2027 年。
防衛は予算が構造的に増える(2027 会計年度の要求は総額 1.5 兆ドル。調整予算 3,500 億ドルは別の法案で成立は未定)。主契約者は、ロッキード・マーチン、RTX、ノースロップ・グラマン、ジェネラル・ダイナミクス、ボーイングの 5 社の寡占だが、アンドゥリル・パランティア・スペース X などの新興が、無人機・宇宙・指揮統制のソフトで調達を取ろうとしている。ボーイングは F-47 を取った一方、戦闘機以外の BDS の事業は固定価格の損失で利益を出せていない。
資本政策と M&A
資本配分は、返済が最優先。2025 年末の有利子負債 541 億ドルは、ジェプセン売却(約 100 億ドル)と増資後の現金で、2026 年 6 月末に 459 億ドル(現金等 200 億ドル、純負債 約 259 億ドル)へ減った。2026 年内の償還が数十億ドルあり、借入枠 100 億ドル(未使用)が下支えする。配当は 2020 年から停止(2019 年は年 46 億ドルの配当を出していた)、自社株買いも無い。2013〜2019 年に自社株買いと配当へ 500 億ドル超を使った後で MAX 危機に陥った経緯があり、バリュー投資の観点では、割高な局面での自社株買いが資本を痛めた例として重い。
M&A は、2025 年に完全子会社化したスピリット・エアロシステムズ(新株発行、約 47 億ドル相当)、2025 年に発表したジェプセン売却(11 月完了)と、「内製に戻して品質を握る」方向。大きな買収はもう無く、買われる側になることも政治的にあり得ない。新型機は「財務が直ってから」で、そのとき数百億ドルの開発費が出る。
FCF は 2025 年 −19 億ドル、2026 年の目標は +10〜30 億ドル。多くの投資家は 2028 年の FCF 100 億ドル規模を期待するが、会社はその数値を保証していない。株式報酬は年 10 億ドル規模で、自社株買いが無い間は株が増える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注残 7,153 億ドルは売上の 8 年分で、航空会社は納入枠が 2033 年ごろまで埋まっている。エアバスも A320 の月産 75 機が 2027 年末まで遅れ、供給が足りないので、ボーイングの価格は物価以上に上がる。737 は月 47 機に戻り、第 2 の生産ラインが 2026 年 7 月に動き出し、次は 52・57・63 機と 5 機刻みで上がる。787 は月 10 機から 14 機へ、777X は 2027 年に初納入されて年 60 機へ向かう。BCA の利益率は、増産で固定費が薄まり、異常な生産コストが消え、2018 年の 12% を超えて 13% まで届く。
防衛では、F-47 が 2030 年代の空軍の主力戦闘機として実費型で入り、KC-46・T-7・MQ-25 の固定価格の損失は 2027 年までにほぼ尽きる。BGS は部品供給の内製と整備で利益率 19% を保ち、全社の利益の下支えになる。ジェプセン売却・増資・スピリット統合で構造は片付き、2030 年までに債務を完済すれば、配当と自社株買いが戻り、株主への還元は年 100 億ドル超。10 年後の純利益は 200 億ドル超、倍率も利益ベースの上限の内側で 14 倍前後が付く。
慎重な見方
株価は、回復の完成を前提にしている。2025 年の営業利益は赤字、2026 年上半期も BCA が赤字(Q2 −2.7%)。時価総額 1,504 億ドルは、売却益込みの純利益の 67 倍、FCF 見通しの 50〜150 倍で、利益の裏付けが無い。737 は FAA が 5 機ずつ許可するもので、品質の事案が 1 つ出れば止まる。主翼がボトルネックで、スピリットの統合も途上。777X は 2020 年の予定が 2027 年へ延び、2025 年にも 49 億ドルの追加費用が出た。2026 年だけで VC-25B の追加損失(2.8 億ドル)、KC-46 の損失(2025 年 Q4 に 6 億ドル)が続いている。
防衛の固定価格の開発契約は、この 6 年で 100 億ドル規模の損失を出した経営の弱点で、F-47 は実費型でも利益は薄い。債務は 459 億ドルで、2026〜2028 年の償還が重い。景気後退で航空会社が引き渡しを延ばせば、2019 年・2020 年のように自己資本が消え、再び増資を迫られる(2024 年に 210 億ドルの増資をしたばかり)。リーマンでの株価の下げは −69%、コロナは −56%。エアバスの商用機部門が 9% 台の利益率を維持している間、ボーイングは 3〜4% の年が続くだろう。
どちらに重みを置いたか
事業の位置と受注の厚さは強気の見方が強く、需要の消滅という悲観は薄い。ただし、値段と過去の実績は慎重な見方が強い。ボーイングは 2019 年以降、MAX・777X・787・防衛の固定価格のどれかが毎年計画から外れてきた。確率は中立 34% に厚く置き、やや悲観 26%・悲観 12% を合わせて 38%、楽観とやや楽観は 28%。結論は「優れた位置の事業だが、今の値段は回復の完成を織り込んでいて、利益ベースの倍率では割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 194.69 ドル1,539 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 27.14 ドル215 億ドル)。 今の値に割り戻すと 97.82 ドル773 億ドル、今との差 −47.8%、 期待の年率 +1.7%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 380.32 ドル3,007 億ドル | 75.89 ドル600 億ドル | +143.2% | +9.3% | 36.50 ドル289 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 290.37 ドル2,296 億ドル | 56.92 ドル450 億ドル | +85.2% | +6.4% | 69.46 ドル549 億ドル |
| 中立 | 34% | 219.18 ドル1,733 億ドル | 31.62 ドル250 億ドル | +33.7% | +2.9% | 85.27 ドル674 億ドル |
| やや悲観 | 26% | 96.81 ドル765 億ドル | 7.59 ドル60 億ドル | −44.3% | −5.7% | 27.14 ドル215 億ドル |
| 悲観 | 12% | 54.19 ドル428 億ドル | −25.30 ドル−200 億ドル | −84.6% | −17.1% | 3.47 ドル27 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 194.69 ドル1,539 億ドル | 27.14 ドル215 億ドル | +18.3% | +1.7% | 221.84 ドル1,754 億ドル |
今の株価時価総額 187.55 ドル1,483 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:737 は月 63 機、新型機の投入が決まり、BCA の利益率が 13% に届く 利益 211 億ドル · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 380.32 ドル3,007 億ドル
2035 年、737 は月 60 機超(第 2 ライン)、787 は月 14 機、777X は年 60 機。納入は年 1,100 機近く。世界の民間機市場(実質で 2025 年の 1.9 倍)の売上シェアは 40%(2018 年の 45% までは戻らず)。新型の狭胴機の開発を財務が回復した後に始め、2030 年代後半の機種の入れ替えを握る。BCA の利益率は 13%(2018 年の 12% を超え、エアバス商用機の 9〜10% を上回る)、BDS は F-47 の量産と宇宙で 8.5%、BGS は部品の自社供給と整備の内製で 19.5%。価格は物価並み(10 年 1.41 倍)。売上は 2,276 億ドル、営業利益 275 億ドル、純利益 211 億ドル。債務を完済し、配当と自社株買いが 2029 年から回る。
- 商用機(BCA):数量 2,300(民間機の世界の納入額・売上ベース(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 56.4%(ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 1,297 億ドル・営業利益 169 億ドル。市場 2,300 億ドル × シェア 40.0% × 価格 1.41 倍
- 防衛・宇宙(BDS):数量 3,700(米国防総省の調達+研究開発(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。同盟国向けの輸出売上は同じ市場に混ぜて扱う))× 価格 13.4%(ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 495 億ドル・営業利益 42 億ドル。市場 3,700 億ドル × シェア 9.5% × 価格 1.41 倍
- グローバル・サービス(BGS):数量 2,450(民間機の部品・整備・改修・訓練と米軍機の維持整備の世界の合計市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 19.7%(ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 484 億ドル・営業利益 94 億ドル。市場 2,450 億ドル × シェア 14.0% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 31.0%(この筋書きの純利益 211.0 ÷ 自己資本 681 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 9.2%(基本 8.0% + quality +1.2%)+ 残る割合 0.67 ×(ROE − k)= 23.7%(堀は強:大型旅客機は複占で、型式認証・サプライチェーン・乗員訓練の共通性が新規参入と切り替えを妨げる(残る割合 2/3))。g は 4.0%(g は 4.5%(構造的な成長。民間機の納入数(市場)の実質伸びは 10 年の間は年 +5% だが、10 年目以降は実質 1% + 価格 3.5%))。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=15.8 倍に対し、90% の 14.2 倍に置いた(生産が安定しシェア 40% を取り戻す筋書きなので上限の近く)。時価総額=純利益 211.0 億ドル × 14.2 倍=3007 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:737 の月産を 63 機まで上げ、777X・787 が安定し、新型機(737 の後継の狭胴機)を財務を直したうえで投入する展開。過去 10 年でこれに近いのは 2010〜2018 年だけで、1 割弱。
やや楽観 20% やや楽観:737 は月 57 機、777X・787 が安定し、BCA の利益率は 11.5% 利益 173 億ドル · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 290.37 ドル2,296 億ドル
2035 年、737 は月 57 機、787 は月 12 機、777X は年 50 機。納入は年約 1,000 機。市場の売上シェアは 39%。BCA の利益率は 11.5%、BDS は 8%、BGS は 19%。売上は 2,098 億ドル、営業利益 229 億ドル、純利益 173 億ドル。債務は完済し、配当と自社株買いが 2030 年から戻る。競合と照らすと、エアバスは A220・A320・A350 の 3 本柱で A320 を月 75 機に乗せ、ボーイングの納入は同時期のエアバスの 7 割前後。中国の COMAC の C919 は国内向けに月 10〜15 機となり、ボーイングの中国向けの取りこぼしを生むが、世界の他地域には出にくい。うまくいけば純利益は 2028 年の中立(55 億ドル)の 3 倍。
- 商用機(BCA):数量 2,150(民間機の世界の納入額・売上ベース(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 55.0%(ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 1,182 億ドル・営業利益 136 億ドル。市場 2,150 億ドル × シェア 39.0% × 価格 1.41 倍
- 防衛・宇宙(BDS):数量 3,560(米国防総省の調達+研究開発(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。同盟国向けの輸出売上は同じ市場に混ぜて扱う))× 価格 13.0%(ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 462 億ドル・営業利益 37 億ドル。市場 3,560 億ドル × シェア 9.2% × 価格 1.41 倍
- グローバル・サービス(BGS):数量 2,350(民間機の部品・整備・改修・訓練と米軍機の維持整備の世界の合計市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 19.3%(ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 454 億ドル・営業利益 86 億ドル。市場 2,350 億ドル × シェア 13.7% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 28.6%(この筋書きの純利益 173.0 ÷ 自己資本 604 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 9.2%(基本 8.0% + quality +1.2%)+ 残る割合 0.67 ×(ROE − k)= 22.2%(堀は強:大型旅客機は複占で、型式認証・サプライチェーン・乗員訓練の共通性が新規参入と切り替えを妨げる(残る割合 2/3))。g は 4.0%(g は 4.5%(構造的な成長。民間機の納入数(市場)の実質伸びは 10 年の間は年 +5% だが、10 年目以降は実質 1% + 価格 3.5%))。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=15.6 倍に対し、85% の 13.3 倍に置いた(737 が月 52 機を超えて安定し、受注残が埋まり続ける筋書き)。時価総額=純利益 173.0 億ドル × 13.3 倍=2296 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:737 が月 52 機を超えて安定し、民間の需要の強さで受注残が埋まり続ける展開。足元の受注残 7,150 億ドルの厚さと、エアバスも供給が足りない現状から、中立の次に厚く置いた。
中立 34% 中立:737 は月 52〜57 機、BCA の利益率は 10.5%、民間機市場の売上シェアは 38% 利益 145 億ドル · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 219.18 ドル1,733 億ドル
2035 年、民間機の市場は実質で今の 1.67 倍(納入数 年 +5%)、価格は物価並み(1.41 倍)。737 は月 52〜57 機、787 は月 10〜12 機、777X は年 40 機前後。ボーイングの売上シェアは 38%(2018 年の 45% には戻らない。エアバスの供給の遅れが解消し、COMAC が国内で伸びるため)。BCA の利益率は 10.5%(2018 年の 12% の手前)、BDS は 7.5%(旧来の 8〜10% より低い。F-47 は実費型だが競争入札で薄い)、BGS は 18.5%。売上は 1,944 億ドル(年 +8.1%)、営業利益 196 億ドル、純利益 145 億ドル(2028 年の中立の約 2.6 倍。借り換えの利払いは約 12 億ドルの純負担)。債務は 2030 年までに完済し、配当は 2031 年に戻る。競合と照らすと、エアバスの商用機部門が 9〜10% で、ボーイングは機体の工場を直した分だけ上回る。うまくいけばオーナー利益は FCF で年 150 億ドルを超える。
- 商用機(BCA):数量 2,000(民間機の世界の納入額・売上ベース(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 53.6%(ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 1,072 億ドル・営業利益 113 億ドル。市場 2,000 億ドル × シェア 38.0% × 価格 1.41 倍
- 防衛・宇宙(BDS):数量 3,466(米国防総省の調達+研究開発(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。同盟国向けの輸出売上は同じ市場に混ぜて扱う))× 価格 12.7%(ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 440 億ドル・営業利益 33 億ドル。市場 3,466 億ドル × シェア 9.0% × 価格 1.41 倍
- グローバル・サービス(BGS):数量 2,272(民間機の部品・整備・改修・訓練と米軍機の維持整備の世界の合計市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 19.0%(ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 432 億ドル・営業利益 80 億ドル。市場 2,272 億ドル × シェア 13.5% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 23.2%(この筋書きの純利益 145.0 ÷ 自己資本 626 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 9.2%(基本 8.0% + quality +1.2%)+ 残る割合 0.67 ×(ROE − k)= 18.5%(堀は強:大型旅客機は複占で、型式認証・サプライチェーン・乗員訓練の共通性が新規参入と切り替えを妨げる(残る割合 2/3))。g は 4.0%(g は 4.5%(構造的な成長。民間機の納入数(市場)の実質伸びは 10 年の間は年 +5% だが、10 年目以降は実質 1% + 価格 3.5%))。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=14.9 倍に対し、80% の 11.9 倍に置いた(複占と受注残の厚さは強いが、2019 年以降毎年どこかの計画が外れてきた実行の履歴と純負債があるので 8 割)。時価総額=純利益 145.0 億ドル × 11.9 倍=1733 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:民間機の需要の構造(受注残 18,100 機・供給の不足が 2031〜34 年まで)は強いが、ボーイングの製造の質の回復は途中で、財務の返済に 3〜4 年かかる。強気と慎重の見方の落としどころ。
やや悲観 26% やや悲観:品質問題が再発し、シェアを 36% に落として BCA の利益率は 6.5% 利益 77 億ドル · PER 9.9 倍 · 株価時価総額 96.81 ドル765 億ドル
2035 年、737 の月産は 47 機から伸びず、次の事案で FAA が再び上限を設ける。787・777X も遅れが続き、航空会社が発注先をエアバスに移す。ボーイングの売上シェアは 36%、BCA の利益率は 6.5%、BDS は 5%(KC-46 型の固定価格契約の損失が続く)、BGS は 17%。売上は 1,728 億ドル、営業利益 116 億ドル、純利益 77 億ドル。債務の完済は 2032 年まで遅れ、配当は戻るが小さい。競合と照らすと、エアバスが A321XLR と A350 で長距離・大型でも差を広げ、COMAC が中国と新興国向けを取る。BDS ではロッキード・マーチンやノースロップ・グラマンが主要な案件を握り、ボーイングは薄い利益の仕事が残る。競合に負ければ純利益は 2028 年の中立の 1.4 倍にとどまる。
- 商用機(BCA):数量 1,850(民間機の世界の納入額・売上ベース(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 50.8%(ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 939 億ドル・営業利益 61 億ドル。市場 1,850 億ドル × シェア 36.0% × 価格 1.41 倍
- 防衛・宇宙(BDS):数量 3,300(米国防総省の調達+研究開発(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。同盟国向けの輸出売上は同じ市場に混ぜて扱う))× 価格 12.0%(ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 395 億ドル・営業利益 20 億ドル。市場 3,300 億ドル × シェア 8.5% × 価格 1.41 倍
- グローバル・サービス(BGS):数量 2,150(民間機の部品・整備・改修・訓練と米軍機の維持整備の世界の合計市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 18.3%(ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 394 億ドル・営業利益 67 億ドル。市場 2,150 億ドル × シェア 13.0% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 17.1%(この筋書きの純利益 77.0 ÷ 自己資本 449 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 9.2%(基本 8.0% + quality +1.2%)+ 残る割合 0.67 ×(ROE − k)= 14.5%(堀は強:大型旅客機は複占で、型式認証・サプライチェーン・乗員訓練の共通性が新規参入と切り替えを妨げる(残る割合 2/3))。g は 4.0%(g は 4.5%(構造的な成長。民間機の納入数(市場)の実質伸びは 10 年の間は年 +5% だが、10 年目以降は実質 1% + 価格 3.5%))。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=13.8 倍に対し、72% の 9.9 倍に置いた(エアバスに負け利益率が戻らない筋書き)。時価総額=純利益 77.0 億ドル × 9.9 倍=765 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:2019 年の 737 MAX・2024 年のドア部品の脱落・2025 年の 777X と、7 年間に重大な品質・認証の問題が 3 回。同じ頻度で次が起きる確率は 4 分の 1 強。
悲観 12% 悲観:新型機への投資を迫られ、構造的に負けて優良ではなくなる 利益 45 億ドル · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 54.19 ドル428 億ドル
2035 年、エアバスの A320neo の後継が先に出て、ボーイングは 737 の置き換え機を出せないまま、MAX の更新の発注を失い続ける。売上シェアは 33%、BCA の利益率は 4.5%、BDS は 2%(固定価格の赤字が続く)、BGS は 15.5%。売上は 1,389 億ドル、営業利益 55 億ドル、純利益はならして 45 億ドル。新型機の開発費で増資(約 200 億ドルを想定)を再び行う。ここまで負ければ、ボーイングは優良な寡占企業ではなく、景気に揺れる防衛・機体の会社になり、時価総額は今の 3 割弱(約 430 億ドル)。エアバスが世界の民間機の 6 割強を占める。
- 商用機(BCA):数量 1,550(民間機の世界の納入額・売上ベース(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 46.5%(ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 721 億ドル・営業利益 32 億ドル。市場 1,550 億ドル × シェア 33.0% × 価格 1.41 倍
- 防衛・宇宙(BDS):数量 3,000(米国防総省の調達+研究開発(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。同盟国向けの輸出売上は同じ市場に混ぜて扱う))× 価格 11.3%(ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 338 億ドル・営業利益 7 億ドル。市場 3,000 億ドル × シェア 8.0% × 価格 1.41 倍
- グローバル・サービス(BGS):数量 1,950(民間機の部品・整備・改修・訓練と米軍機の維持整備の世界の合計市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 16.9%(ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 330 億ドル・営業利益 51 億ドル。市場 1,950 億ドル × シェア 12.0% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 9.7%(この筋書きの純利益 45.0 ÷ 自己資本 464 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 9.2%(基本 8.0% + quality +1.2%)+ 残る割合 0.67 ×(ROE − k)= 9.5%(堀は強:大型旅客機は複占で、型式認証・サプライチェーン・乗員訓練の共通性が新規参入と切り替えを妨げる(残る割合 2/3))。g は 4.0%(g は 4.5%(構造的な成長。民間機の納入数(市場)の実質伸びは 10 年の間は年 +5% だが、10 年目以降は実質 1% + 価格 3.5%))。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=11.1 倍に対し、86% の 9.5 倍に置いた(シェアを失い ROE が 9.7% に低下する構造的な負け)。時価総額=純利益 45.0 億ドル × 9.5 倍=428 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:品質・認証の失敗が重なり、エアバスとの差が決定的に開き、新型の狭胴機の開発(数百億ドル)で財務が再び悪化する展開。ボーイングは 2019 年以降に自己資本を消し、2024 年に 210 億ドルの増資をしており、1 割は軽くない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
商用機(BCA)
737 MAX・787・777・767 の機体の製造と販売。受注残 5,967 億ドル。納入ごとに売上を計上(787 の一部は進行基準)。
| 数量民間機の世界の納入額・売上ベース(億ドル。2025 年の価格に換算した実質) | 価格ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,200 | 34.6% | 415 | −71 |
| 10 年後 中立 | 2,000 | 53.6% | 1,072 | 113 |
取り方:世界の民間機の納入額(売上ベース)を、ボーイング 415 億ドル・エアバス商用機 約 680 億ドル・エンブラエル・ATR・COMAC など約 105 億ドルの合計 約 1,200 億ドルと推定した(業界ノートの約 1,400 億ドルは 1 機 8,000 万ドル × 約 1,700 機の定価ベース。ボーイングの売上計上は値引き後で小さい)。シェア 34.6%。2025 年の納入は 600 機(1 機あたり約 6,900 万ドル)。営業利益は −17.1% の −71 億ドル(777X の 49 億ドルの費用を含む)。売上 = 市場 × シェア × 価格(価格指数は中立で 3 年 1.11 倍・10 年 1.41 倍)。競合はエアバス(シェア 約 56%・利益率 9% 前後)が主で、中国の COMAC は国内向け。
防衛・宇宙(BDS)
戦闘機(F-15EX・F/A-18・F-47)、給油機 KC-46、P-8、ヘリ(AH-64・CH-47)、ミサイル、衛星、SLS、宇宙ステーション。顧客は米国防総省・NASA と同盟国。
| 数量米国防総省の調達+研究開発(億ドル。2025 年の価格に換算した実質。同盟国向けの輸出売上は同じ市場に混ぜて扱う) | 価格ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,000 | 9.1% | 272 | −1 |
| 10 年後 中立 | 3,466 | 12.7% | 440 | 33 |
取り方:業界ノートの米国防総省の調達+研究開発 約 3,000 億ドルを市場に置き、シェア 9.1%(売上 272 億ドル)。営業利益は −0.5% の −1 億ドル(KC-46 で Q4 に 6 億ドルの損失を含む)。売上 = 市場 × シェア × 価格。競合はロッキード・マーチン(売上 約 750 億ドル・利益率 10% 前後)、RTX のレイセオン、ノースロップ・グラマン、ジェネラル・ダイナミクスで、いずれも固定価格の開発契約が少なく利益率が高い。ボーイングは固定価格の損失で最下位。
グローバル・サービス(BGS)
民間機の部品供給・整備の改修・訓練・デジタル運航と、米軍・同盟国の機体の維持整備。利益の質が高い。
| 数量民間機の部品・整備・改修・訓練と米軍機の維持整備の世界の合計市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質) | 価格ボーイングのシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,600 | 13.0% | 208 | 39 |
| 10 年後 中立 | 2,272 | 19.0% | 432 | 80 |
取り方:民間機のアフターマーケット(部品・整備・改修)約 600〜700 億ドル(業界ノートの推定)、訓練・デジタル運航と、米軍機の維持整備の合計を約 1,600 億ドルと推定し、ボーイングのシェアを 13% と置いた(売上は全社売上 895 億ドルから BCA・BDS を引いた 約 208 億ドル。ジェプセンの 2025 年 11 月までの売上を含む)。営業利益率は約 19% で 39 億ドル(Q2 2026 は 18.1%)。売上 = 市場 × シェア × 価格。競合はエアバスのサービス部門・GE エアロスペース・RTX のコリンズ・ハネウェル・AAR・ロッキード・マーチン(軍用機の維持整備)。
リスクと懸念
品質・認証の再発
2019 年の MAX の墜落、2024 年 1 月のドア部品の脱落、2026 年 3 月の 737 の配線不良(約 25 機の点検)と、品質の事案が繰り返された。FAA は 5 機刻みで月産の上限を上げており、1 件の事案で再び止まる。737 の増産が止まれば、BCA の固定費が薄まらず、利益率の回復が数年遅れる。
777X・737-7・737-10 の認証
777X は 2020 年の予定が 2027 年へ延び、2025 年 10 月に 49 億ドルの費用、2026 年の現金に約 20 億ドルの圧力。737-7 は 2026 年に認証を得たが、737-10 はエンジンの防氷の問題で遅れている。認証が再び延びれば追加の費用と、航空会社への補償が膨らむ。
防衛の固定価格契約の損失
KC-46・T-7・MQ-25・VC-25B(2026 年 Q2 に 2.8 億ドル、2025 年 Q4 の KC-46 で 6 億ドル)の損失がこの 6 年で 100 億ドル規模。F-47 は実費型だが、競争入札の薄い利益率。次の固定価格の契約を取れば、また損失を出す恐れがある。
財務の弱さと増資
有利子負債 459 億ドル、純負債 約 259 億ドル、自己資本比率 3.2%。景気後退や認証の失敗で現金が減れば、2024 年の 210 億ドルの増資に続く増資を迫られ、既存の株主の持ち分が薄まる。2026〜2028 年の償還が重い。
景気後退と航空会社の収益
2026 年の中東の戦闘で燃料費が上がり、IATA の航空会社の純利益見通しは 410 億ドルから 230 億ドルへ下がった。景気後退で引き渡しの延期・キャンセルが起きれば、受注残が厚くても納入が落ち、運転資金が悪化する(リーマンで株価 −69%、コロナで −56%)。
エアバスとの差と新型機
エアバスは A320 を月 70〜75 機まで増産し、A321XLR で長距離も取る。次の狭胴機の開発をどちらが先に出すかが 2040 年代を決める。ボーイングは財務を直すまで新型機を出せず、後継を出し遅れれば、737 の更新の発注を失う。
関税・中国向け・サプライチェーン
中国は 2025 年に一時ボーイング機の受け入れを止め、関税の応酬の影響を受けやすい。主翼(レントン)・エンジン(CFM の LEAP)・部品の供給が詰まると増産が止まる。受注残に占める中国向けの比率は小さいが、世界の最大の成長市場を失う影響は大きい。
今後の分かれ目
- 737 の月産が 52 機、さらに 57 機へ、FAA の了承を得て 2027 年内に上がったら
- BCA の利益率が 2028 年に 8% 台へ届く道が見え、やや楽観・楽観の確率を上げる。2028 年の純利益は 70 億ドル近くに上がる。
- 777X の認証飛行試験が 2026 年内に終わり、2027 年に初納入されたら
- 追加費用の不安が消え、BCA の利益率の回復が確かになる。中立の確率を楽観側へ動かし、2028 年の利益を見直す(倍率は利益ベースの上限の内側)。
- 737 の品質の事案が再び起き、FAA が月産の上限を下げたら
- BCA の利益率の回復が 2 年以上遅れる。やや悲観・悲観の確率を上げ、債務の返済も遅れる。
- KC-46・T-7・MQ-25・VC-25B のどれかで数億ドル以上の追加損失が出続けたら
- BDS が黒字に戻る時期が 2027 年から 2029 年以降へずれる。BDS の利益率の置き方を 1〜2pt 下げる。
- 景気後退で航空会社が引き渡しの延期・キャンセルを求め、FCF が大きなマイナスに戻ったら
- 増資の可能性が出る。悲観の確率を 15% 以上に上げ、時価総額の算出は増資後の価値で行う。
- 株価が下がり、時価総額が 2028 年の中立の純利益の 15 倍前後(約 800 億ドル)になったら
- 回復が遅れても 10 年の収益率が資本コストの 9.25% を超える水準。安全域が出る。安全域が出る。
見ておくもの
- 737 の月産(47 → 52 機)と FAA の了承、主翼とスピリット(ウィチタ)の品質
- 777X の認証飛行試験の完了と 2027 年の初納入、737-7・-10 の認証
- BCA の営業利益率(Q2 −2.7%)が黒字化する時期、年間の FCF(2026 年の目標 10〜30 億ドル)
- BDS の固定価格契約(KC-46・T-7・MQ-25・VC-25B)の追加損失の有無、F-47 の契約の形
- 純負債(約 259 億ドル)と償還のスケジュール、増資の有無
- エアバスの A320 の月産(70〜75 機)と受注・納入、COMAC の C919 の海外承認
- IATA の航空会社の収益見通しと世界の旅客数・燃料価格
倍率と資本コストの決め方
今の PER 67 倍(売却益込みの純利益)や FCF の利回りを見る前に、セグメントごとに市場 × シェア × 物価指数で売上を積み上げ、利益率を置いて 2028 年・2035 年の純利益を出した。倍率は利益ベースの正当化 PER((1−g÷RONIC)÷(k−g)、k 9.25%=基本 8.0% + quality 1.25%、g 4.5%、RONIC=k+2/3×(ROE−k)、堀は複占で強。moat_why)の上限(10 年の中立で 14.9 倍)の 8 割の 11.9 倍に置いた:実行の履歴(2019 年以降毎年どこかの計画が外れた)と純負債が理由。悲観側は ROE が下がる分だけ上限が下がる。純負債は 1 ドルで引き、EV ÷ 営業利益も 20 倍以下で確認した。増資は payout に負で入れた。今の 67 倍にも過去の PER にも寄せていない。結果は 5 割弱の割高。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 5% + β 1.22 × 5%。k=基本 8.0% + quality 1.25% = 9.25%。景気への連動と財務の弱さ(純負債 270 億ドル・自己資本比率 3.2%)を k に入れた。品質・認証・固定価格契約の個別の問題は k に足さず、筋書きと確率(やや悲観・悲観 38%)と悲観の深さ(増資を含む)で表した。複占の堀は強いが、利益が出ていない間の負債の重さを debt の上限で見た。