結論
りそなホールディングスは、りそな銀行・埼玉りそな銀行・関西みらい銀行を傘下に持ち、首都圏・近畿圏の中小企業・個人向けリテール金融に特化するグループで、銀行本体が信託免許を持つ「信託併営リテール金融グループ」という点が3メガバンクと最も異なる。海外展開はほぼ持たず、2003年の実質国有化・公的資金注入(ピーク3兆円規模)から2015年の完済、2018年の優先株消却という再生の歴史を背負う。2026年4月発表の中期経営計画「Shift to the Next Stage」は、2028年度にROE12%超・総還元性向50%以上を掲げ、政策金利が1.5%まで上がればROE14%も視野に入ると説明する。デジタル(りそなグループアプリ1,000万ダウンロード超)や十六フィナンシャルグループとの提携による広域化も進める。
ここでは国内貸出・信託・資産運用の3つを数量(名目残高)×価格(利ざや・預金ベータ35%)で積み、自己資本は今+純利益−還元で流した。資本コストは基本7.5%に品質0%(国内専業で人口減の影響を受ける一方、リテール基盤と信託手数料が下支え)。倍率は利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の約7.3割に置いた。中立は10年後にROE12.1%、PERは約12.3倍となる。確率で重みづけた本質価値は今の時価総額を2割ほど下回り、「やや割高」と見る。
バリュー投資の観点から
オーナー利益の面では、国内の金利正常化による預貸ざや拡大と、信託・資産運用業務の手数料収入が、大きな追加投資を伴わずに利益を押し上げる構造になっており、バリュー投資の観点では評価できる。堀の広さについては、近畿圏・首都圏の中小企業取引の厚みと信託機能を組み合わせた総合提案力という独自の強みを持つ一方、海外事業をほぼ持たないため収益源の多様化という点では3メガバンクより堀が狭いと見る。経営の資本配分については、総還元性向50%以上・政策保有株式の計画的な削減という規律は評価できるが、2003年の実質国有化という過去は、信用サイクル悪化時の脆さへの警戒を残す材料であり、十六フィナンシャルグループとの提携が将来どこまで深化するかという経営判断の巧拙も見極めが必要である。最後の安全域の判断では、名目の成長と利ざやの広がりを数えた本質価値は今の時価総額を2割ほど下回り、安全域はないと見る。
何で稼ぐ会社か
りそな銀行(首都圏)・埼玉りそな銀行(埼玉)・関西みらい銀行(近畿圏、関西アーバン銀行・近畿大阪銀行・みなと銀行が統合)の3つの銀行を中核に、法人・個人向けの貸出・預金業務を展開する。最大の特徴は、りそな銀行本体が銀行業務と信託業務を併せ持つ「信託併営」体制で、遺言・相続・事業承継・不動産仲介をワンストップで提供できる点にあり、本邦最大級の信託併営リテール金融グループと位置づけられる。法人取引では大企業向けより中小企業向けが中心で、大阪府内企業の4割超を取り込むなど近畿圏で高いシェアを持ち、2025年のメインバンク調査では取引社数が3メガバンクに次ぐ規模となっている。個人向けでは、2020年に利用者数がATM利用を上回った「りそなグループアプリ」が2026年に1,000万ダウンロードを超え、投資一任サービス(ファンドラップ)や保険販売の窓口として機能している。このアプリは2024年の業務提携を機に十六フィナンシャルグループなど地方銀行にも外販され、りそなが単独のM&Aでなく「アライアンス」でリテール基盤を広げる戦略の軸になっている。海外拠点はごく限られ、3メガバンクのような海外CIB・海外貸出の収益源を持たない代わりに、国内の金利正常化の恩恵をそのまま享受できる構造である。グループ全体では、国内貸出(法人・中小企業・個人)、信託・資産承継、資産運用・保険(個人窓口)の3本柱で収益を積み上げている。
優良さと弱いところ
堀は、近畿圏・首都圏における中小企業取引の厚み(大阪府内企業の4割超)と、銀行本体が持つ信託機能を組み合わせた総合提案力にある。相続・事業承継は一度関係を築くと長期にわたり取引が継続しやすく、価格決定力の一部を支える。デジタルでは「りそなグループアプリ」が1,000万ダウンロードを超え、地銀への外販を通じてりそな発の金融インフラとして広がり始めており、3メガバンクにはない「アライアンスのハブ」という独自の位置づけを持つ。弱点は、海外事業をほぼ持たないため収益源の多様化がメガバンクより乏しく、国内の金利サイクルと中小企業の業況に収益が強く紐づくことである。自己資本の脆さを示す単純指標は3.8%と低く、2003年の実質国有化・公的資金注入という過去の経験は、信用サイクル悪化時の脆さへの警戒材料として残る。経営の資本配分では、総還元性向50%以上・政策保有株式を2030年3月までに簿価で3分の2以上削減する計画を掲げ、2026年3月期も自社株買いを実施するなど規律は改善傾向にある。十六フィナンシャルグループとの提携が将来的な資本提携・広域再編の芽になるかが、優良さをさらに広げられるかの分かれ目になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の銀行業は2024年の政策金利解除以降「金利のある世界」の初期段階にあり、りそなは海外CIBを持たない分、国内の預貸ざや拡大という追い風を最も直接に享受できる立場にある。一方、国内の貸出需要そのものは人口減少や企業の内部留保志向で伸びが鈍く、中小企業中心のりそなにとっても量でなく価格(利ざや)で稼ぐ局面が続く。地方銀行では「1県1行」体制への収束に向けた再編ドミノが進行中で、りそなは自ら統合の主体になるのではなく、十六フィナンシャルグループなど複数の地方銀行とアプリ・ファンドラップ・国際業務での業務提携を広げる「アライアンス」路線を取っている。SBIホールディングスが提携地銀を核に「第4のメガバンク」構想を進める中、りそなも地銀との資本提携を視野に入れていると報じられており、提携が深化すれば広域のリテール基盤をメガバンク並みの規模に積み上げられる可能性がある。資産運用・資産管理の分野では、NISA拡充や相続を背景にした公募投資信託残高の拡大が追い風で、信託機能を持つりそなは遺言・事業承継の需要取り込みでも優位に立つ。競争の形では、近畿圏・首都圏の中小企業取引で地方銀行・信用金庫と競合し、個人向けではネット銀行・証券会社との競合もある。中長期的には、政策保有株式の削減進捗と自社株買いの継続が資本効率の改善を支え、中期経営計画が掲げるROE12%超・政策金利1.5%でROE14%という目標の達成ペースが、3メガバンクとの評価の差を決める分かれ目になる。
資本政策と M&A
株主還元は配当と自社株買いを組み合わせ、総還元性向50%以上を下限として明確化し、2030年3月期にはDOE(株主資本配当率)目標を3.5%程度へ引き上げた。2026年3月期は自社株買いを実施し、増配の方針も示している。政策保有株式は2030年3月までに簿価で3分の2以上を削減し、連結純資産に対する時価比率を10%程度まで下げる計画で、2026年3月期は削減が進み、2年累計の進捗率は38.5%と計画を上回るペースにある。M&Aでは、りそな自身が買収対象になる規模ではなく、2024年の十六フィナンシャルグループとの戦略的業務提携(将来的な資本提携も視野とされる)のような、地方銀行とのアライアンス拡大を通じた広域化が成長戦略の軸である。1990年代末からの経営統合(大和銀行・あさひ銀行・関西アーバン銀行等の統合)の経験を踏まえ、無理な一体化よりアプリ・業務面での連携を先行させる慎重な姿勢がうかがえる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内の金利正常化はりそなにとって最も直接的な追い風で、海外CIBを持たない分、国内の預貸ざや拡大の恩恵をそのまま享受できる。2026年3月期に純利益2,587億円・ROE8.9%まで改善した勢いを踏まえれば、中期経営計画「Shift to the Next Stage」が掲げる2028年度ROE12%超、政策金利1.5%ならROE14%という目標は射程に入っている。近畿圏・首都圏での中小企業取引の厚みと、本邦最大級の信託併営体制による相続・事業承継需要の取り込みは、人口減少下でも安定した収益源になる。「りそなグループアプリ」は1,000万ダウンロードを超え、十六フィナンシャルグループなど複数の地方銀行への外販を通じて、りそな発のアプリ・投資一任サービスが広域のリテール基盤を形成する「アライアンスのハブ」になりうる。総還元性向50%以上・政策保有株式の2030年3月までの大幅削減という資本政策の規律も改善が明確で、2026年3月期も自社株買いを実施した。β0.71・資本コスト6.05%という地方銀行並みの低さを保ったまま、ROE・還元姿勢をメガバンク並みに引き上げられれば、今のPBR1.80倍はむしろ割安という評価も成り立つ。
慎重な見方
金利が上がる過程は、預貸ざやの拡大と同時に中小企業の資金繰りを厳しくし、与信費用を押し上げる副作用も伴う。りそなの取引先は大企業より中小企業が中心であるため、地域経済の悪化や原材料高の影響をメガバンクより強く受けやすい。りそなの自己資本の脆さを示す単純指標は3.8%と低く、2003年の実質国有化・公的資金注入という過去の経験は、信用サイクル悪化局面での脆さを示す材料として残る。海外事業をほぼ持たないため、国内の金利サイクルと中小企業の業況に収益が強く依存し、メガバンクのような海外CIB・海外貸出による収益源の多様化を欠く。十六フィナンシャルグループとの業務提携も、現時点ではファンドラップ・国際業務連携など限定的な協業にとどまり、資本提携・経営統合に進むかどうかは不確実である。中期経営計画が掲げる2028年度ROE12%超・政策金利1.5%でROE14%という目標は、政策金利が計画通り上がることが前提で、金利上昇が計画より遅れたり、中小企業の与信費用が想定を上回れば達成は遠のく。今のPBR1.80倍はβ0.71という低い資本コストの会社としてはすでに高めの評価で、目標が計画より遅れるだけで割高に見える値段である。
どちらに重みを置いたか
国内の金利正常化の恩恵をメガバンクより直接に受けられる点、信託併営・アプリ外販という独自の強みを持つ点では強い見方に分があるが、海外事業を持たないための収益源の限定性、中小企業取引に偏ることでの与信費用の感応度、そして自己資本の脆さと2003年の実質国有化という過去は軽くない。確率は中立に最も重みを置きつつ、ROE・倍率の絶対水準はメガバンク並みに置くという物差しをとり、確率の配分はやや慎重な側に寄せた。利益ベースの正当化PER(新しく投じるお金の稼ぎだけを薄める)で中立・楽観を置くと、10年の本質価値は 今の時価総額を2割ほど下回る「やや割高」になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,135 円7.00 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,024 円2.29 兆円)。 今の値に割り戻すと 2,234 円4.99 兆円、今との差 +1.1%、 期待の年率 +6.5%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 4,400 円9.83 兆円 | 1,157 円2.58 兆円 | +151.5% | +9.7% | 611 円1.37 兆円 |
| やや楽観 | 24% | 4,146 円9.26 兆円 | 1,173 円2.62 兆円 | +140.7% | +9.2% | 1,277 円2.85 兆円 |
| 中立 | 32% | 3,733 円8.34 兆円 | 1,156 円2.58 兆円 | +121.2% | +8.3% | 1,565 円3.49 兆円 |
| やや悲観 | 22% | 1,951 円4.36 兆円 | 978 円2.18 兆円 | +32.6% | +2.9% | 645 円1.44 兆円 |
| 悲観 | 11% | 291 円6,502 億円 | 270 円6,031 億円 | −74.6% | −12.8% | 62 円1,379 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,135 円7.00 兆円 | 1,024 円2.29 兆円 | +88.2% | +6.5% | 4,159 円9.29 兆円 |
今の株価時価総額 2,210 円4.94 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 11% 海外に頼らずROE13%近くまで高める10年 利益 5,683 億円 · PER 17.3 倍 · 株価時価総額 4,400 円9.83 兆円
10年間で短期金利2%・長期金利3%が定着し、国内の預貸ざやは高水準で安定する。りそな銀行グループは首都圏・近畿圏の中小企業取引の厚みと信託機能を組み合わせた総合提案力を強め、政策金利が1.5%まで一段上昇した局面では会社が展望するROE14%に近い13%近くまで高まる(手数料率は横ばいなので、14%には届かない)。十六フィナンシャルグループなど複数の地方銀行との提携が資本提携まで深化し、りそなグループアプリが広域のリテール基盤を支える金融インフラとして定着する。政策保有株式の削減はほぼ完了し、浮いた資本は大規模な自社株買いに回る。海外事業を持たないことがむしろ国内の金利メリットを最大化する強みとして働く、理想が最も実現した10年になる。
- 国内貸出(法人・中小企業・個人):数量 52.3(国内貸出残高(兆円))× 価格 2.4%(預貸ざや(%))→ 売上 12,557 億円・営業利益 7,031 億円。残高 52.3 兆円(名目)× 利ざや 2.40%、利益率 56%
- 信託・資産承継:数量 50.0(信託財産残高(兆円))× 価格 0.1%(信託関連業務の実効手数料率(%))→ 売上 649 億円・営業利益 390 億円。残高 50.0 兆円(名目)× 率 0.13%、利益率 60%
- 資産運用・保険(個人窓口):数量 14.0(預かり資産残高(投信・保険等、兆円))× 価格 1.3%(実効手数料率(%))→ 売上 1,750 億円・営業利益 980 億円。残高 14.0 兆円(名目)× 率 1.25%、利益率 56%
倍率:事業の純利益 5,683 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.3 倍。全体の PER 17.29 倍、時価総額 98,259 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%の定常化に加え、政策金利1.5%までの一段の上昇とアライアンス拡大が10年間すべて噛み合う前提で、確度は高くない。
やや楽観 24% アライアンスを軸に安定成長 利益 5,383 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 4,146 円9.26 兆円
短期金利2%・長期金利3%への定常化が進み、国内の預貸ざやは高水準で安定する。りそな銀行グループの中小企業取引・信託・資産承継業務は安定成長を続け、十六フィナンシャルグループとの提携関係もファンドラップ・アプリ外販を中心に深化し、提携先の地方銀行がさらに増える。政策保有株式の削減はほぼ完了し、自社株買いが継続する。中期経営計画が描いた「海外に頼らず資本効率を上げる」方向性が10年間おおむね維持され、首都圏・近畿圏の中小企業取引の厚みと信託機能が優良さの土台として保たれたまま、ROE12%台で安定する、業界見通しの上位レンジに近い10年になる。
- 国内貸出(法人・中小企業・個人):数量 50.1(国内貸出残高(兆円))× 価格 2.2%(預貸ざや(%))→ 売上 11,031 億円・営業利益 6,379 億円。残高 50.1 兆円(名目)× 利ざや 2.20%、利益率 58%
- 信託・資産承継:数量 46.6(信託財産残高(兆円))× 価格 0.1%(信託関連業務の実効手数料率(%))→ 売上 606 億円・営業利益 364 億円。残高 46.6 兆円(名目)× 率 0.13%、利益率 60%
- 資産運用・保険(個人窓口):数量 13.0(預かり資産残高(投信・保険等、兆円))× 価格 1.3%(実効手数料率(%))→ 売上 1,625 億円・営業利益 923 億円。残高 13.0 兆円(名目)× 率 1.25%、利益率 57%
倍率:事業の純利益 5,383 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.2 倍、時価総額 92,588 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画の方向性が10年間おおむね維持され、アプリ外販・十六FG等との提携深化が進む、業界見通しの上位レンジに近い想定。
中立 32% 中立:金利は定常化し倍率も平常化 利益 4,933 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 3,733 円8.34 兆円
10年の間に短期金利2%・長期金利3%が定着し、国内の預貸ざやは高めの水準で安定する一方、中小企業の与信費用も景気循環を1〜2周してならした水準に戻る。りそな銀行グループの信託・資産承継業務はNISA定着後の標準的な成長軌道に乗る。十六フィナンシャルグループとの提携は現状の業務提携の範囲で安定し、資本提携までは進まない。政策保有株式の削減は完了し、総還元性向50%以上を維持する。ROE12%前後で資本コストを上回る水準は保つが、政策金利1.5%でのROE14%には届かない、標準的な10年になる。
- 国内貸出(法人・中小企業・個人):数量 48.0(国内貸出残高(兆円))× 価格 1.9%(預貸ざや(%))→ 売上 9,112 億円・営業利益 5,256 億円。残高 48.0 兆円(名目)× 利ざや 1.90%、利益率 58%
- 信託・資産承継:数量 44.4(信託財産残高(兆円))× 価格 0.1%(信託関連業務の実効手数料率(%))→ 売上 577 億円・営業利益 338 億円。残高 44.4 兆円(名目)× 率 0.13%、利益率 59%
- 資産運用・保険(個人窓口):数量 12.0(預かり資産残高(投信・保険等、兆円))× 価格 1.3%(実効手数料率(%))→ 売上 1,500 億円・営業利益 831 億円。残高 12.0 兆円(名目)× 率 1.25%、利益率 55%
倍率:事業の純利益 4,933 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.9 倍、時価総額 83,368 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、中小企業の与信費用も景気循環を経て平均的な水準に戻る、最も重みを置く中心シナリオ。
やや悲観 22% 地銀再編・デジタル競争の激化で成長が鈍る 利益 3,368 億円 · PBR 1.5 倍 · 株価時価総額 1,951 円4.36 兆円
国内の金利正常化は進むが、地方銀行の再編ドミノやデジタル専業銀行との競争が激化し、りそなグループアプリの優位性も徐々に薄れる。中小企業取引への依存度の高さから与信費用も景気循環のたびに上振れしやすく、信託・資産承継業務の手数料率もグローバルな資産管理会社・ネット証券との競争で低下圧力を受ける。十六フィナンシャルグループとの提携も深化が計画より遅れる。政策保有株式の削減は完了するが、与信費用の増加分を自社株買いの抑制で吸収する場面も出る。海外に頼らない構造の裏返しとして、国内競争の激化が重く響く10年になる。
- 国内貸出(法人・中小企業・個人):数量 43.7(国内貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(預貸ざや(%))→ 売上 5,686 億円・営業利益 3,264 億円。残高 43.7 兆円(名目)× 利ざや 1.30%、利益率 57%
- 信託・資産承継:数量 40.0(信託財産残高(兆円))× 価格 0.1%(信託関連業務の実効手数料率(%))→ 売上 480 億円・営業利益 269 億円。残高 40.0 兆円(名目)× 率 0.12%、利益率 56%
- 資産運用・保険(個人窓口):数量 10.0(預かり資産残高(投信・保険等、兆円))× 価格 1.1%(実効手数料率(%))→ 売上 1,100 億円・営業利益 603 億円。残高 10.0 兆円(名目)× 率 1.10%、利益率 55%
倍率:ROE9.1%はk7.5%を超えるが、与信費用が増え利ざやも伸びない筋書き。稼ぐ力(純利益3,368億円÷k)は約4.5兆円で、今の自己資本2.9兆円に1.5倍を掛けた約4.4兆円を置く(稼ぐ力の約97%)。
確率:地銀再編・デジタル専業との競争激化で非金利収益の伸びが鈍り、与信費用も上振れる想定。10年という期間では景気の弱い年も相応に混ざる。
悲観 11% 構造的に負け、資本効率が戻らない10年 利益 1,016 億円 · PER 6.4 倍 · 株価時価総額 291 円6,502 億円
10年のどこかで世界的な信用収縮が発生し、中小企業取引先の業績悪化で与信費用が急増する。同時に地方銀行再編・デジタル専業との競争で非金利収益の成長も止まり、りそなグループアプリの外販網も伸び悩む。十六フィナンシャルグループとの提携も実質的な進展がなく、信託・資産承継業務の手数料率も低下が続く。りそな銀行グループが保有する国内株式・債券の評価損も資本を圧迫し、政策保有株式の削減で確保した資本も信用コストの穴埋めに費やされる。海外事業を持たないため収益源の多様化で損失を補えず、ROEが資本コストを下回る水準にとどまる、構造的に負ける苦しい10年になる。
- 国内貸出(法人・中小企業・個人):数量 37.6(国内貸出残高(兆円))× 価格 0.4%(預貸ざや(%))→ 売上 1,315 億円・営業利益 888 億円。残高 37.6 兆円(名目)× 利ざや 0.35%、利益率 68%
- 信託・資産承継:数量 34.8(信託財産残高(兆円))× 価格 0.0%(信託関連業務の実効手数料率(%))→ 売上 139 億円・営業利益 95 億円。残高 34.8 兆円(名目)× 率 0.04%、利益率 68%
- 資産運用・保険(個人窓口):数量 8.0(預かり資産残高(投信・保険等、兆円))× 価格 0.4%(実効手数料率(%))→ 売上 280 億円・営業利益 152 億円。残高 8.0 兆円(名目)× 率 0.35%、利益率 54%
倍率:ROE 3.2% が k 7.5% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値。PER は 1÷k = 13.3 倍が上限で、目減りは ROE÷k = 0.42 に比例するので、上限 × 0.42 × 0.9 で 5.1 倍になる。ただし利益が出て配当を続ける筋書きで、自己資本の 0.2 倍を割る値(倒産に近い時のもの)にはしない。0.2 倍に相当する 6.3 倍を下限とし、6.4 倍に置いた。やや悲観の 12.9 倍より低い。構造的に負けた筋書き。売れる資産の床は足さない。
確率:リーマン級の信用収縮に加え、中小企業取引先の業況悪化・デジタル競争での劣後が10年のどこかで重なる想定。自己資本の脆さと実質国有化の過去を踏まえ、他のメガバンク以上に相応の確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内貸出(法人・中小企業・個人)
りそな銀行・埼玉りそな銀行・関西みらい銀行による首都圏・近畿圏の法人・中小企業・個人向け融資と、その利ざや(貸出金利と調達コストの差)。
| 数量国内貸出残高(兆円) | 価格預貸ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 34.0 | 1.4% | 4,760 | 2,900 |
| 10 年後 中立 | 48.0 | 1.9% | 9,112 | 5,256 |
取り方:グループの国内貸出残高を34兆円、預貸ざやを1.4%(中小企業中心のため全国平均よりやや高め)とおき、兆円×%×10000で億円に換算した。 2026-10-18 の直し:預金ベータ(政策金利の上げに預金金利が付いていく割合)を 35% と置いた。短期金利が今の 1% 前後から 2% へ上がる間に、変動金利の貸出の金利はほぼ全部上がり、預金の金利は 35% だけ上がるので、固定金利の住宅ローンや定期預金の遅れも含めて中立の利ざやは 3 年で +0.30%、10 年で +0.50% 広がると置いた(利ざやは率なので物価では上がらない)。 残高はお金の量なので名目経済に合わせて伸びる:中立で年 3.5%(物価 3% + 実質 +0.5%)。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+36%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
信託・資産承継
りそな銀行本体が持つ信託機能による遺言・相続・事業承継・不動産仲介業務と、信託財産の管理受託。
| 数量信託財産残高(兆円) | 価格信託関連業務の実効手数料率(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 0.1% | 390 | 200 |
| 10 年後 中立 | 44.4 | 0.1% | 577 | 338 |
取り方:りそな銀行の信託財産残高を30兆円、信託関連業務の実効手数料率を0.13%とおいた。 預かり・受託資産はお金の量なので名目で伸びる:中立で年 4.0%(物価 3% + 実質の資産形成)以上。手数料率は率なので物価では上がらない。(点検 2026-10-19・R23b:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。信託関連業務の実効手数料率は値上げの開示がないので、10年を通して中立・楽観とも0.13%の横ばいに置いた(やや悲観・悲観は競争で下がる)。二重がけなし)
資産運用・保険(個人窓口)
りそな銀行グループの窓口とりそなグループアプリを通じた投資信託・保険の販売、資産運用コンサルティングの手数料収入。
| 数量預かり資産残高(投信・保険等、兆円) | 価格実効手数料率(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.5 | 1.3% | 938 | 500 |
| 10 年後 中立 | 12.0 | 1.3% | 1,500 | 831 |
取り方:投信・保険等の預かり資産残高を7.5兆円、実効手数料率を1.25%とおいた。りそなグループアプリ経由の個人向け取引拡大を反映。 預かり・受託資産はお金の量なので名目で伸びる:中立で年 4.5%(物価 3% + 実質の資産形成)以上。手数料率は率なので物価では上がらない。(点検 2026-10-19・R23b:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。実効手数料率は値上げの開示がないので、10年を通して中立・楽観とも1.25%の横ばいに置いた(やや悲観・悲観は競争で下がる)。二重がけなし)
リスクと懸念
中小企業取引への偏りによる与信費用の増加
りそな銀行グループの取引先は大企業より中小企業が中心で、金利上昇や原材料高で資金繰りが厳しくなった場合、地域経済の悪化の影響をメガバンクより強く受けやすい。与信費用が想定を上回れば、中期経営計画が掲げるROE12%超の目標達成が遅れ、倍率の評価も下がりやすい。
海外事業をほぼ持たない収益源の限定性
3メガバンクは海外CIB・海外貸出で収益源を多様化しているが、りそなは国内のリテール・中小企業取引に収益がほぼ集中している。国内の金利正常化という追い風が最も直接に効く一方、国内経済の悪化や人口減少が続けば、収益源を分散できないまま成長の上限に早く達するリスクがある。
自己資本の脆さと実質国有化の過去
自己資本比率の単純指標は3.8%と低めで、2003年に不良債権処理のため実質国有化・公的資金注入を受けた過去がある。2015年に完済し規律は改善しているが、信用サイクルが大きく悪化した場合、他のメガバンクより資本の脆さが相対的に大きく出やすい構造は残る。
十六フィナンシャルグループ等との提携が深化しないリスク
十六フィナンシャルグループとの業務提携はファンドラップ・国際業務連携など限定的な協業にとどまり、将来の資本提携・経営統合に進むかは不確実である。提携が現状の範囲に留まれば、りそなが目指す「アライアンスによる広域化」の成長余地は限られ、単独での中小企業市場の奪い合いに戻る。
デジタル専業銀行・地銀再編との競争激化
りそなグループアプリの1,000万ダウンロードという優位は、デジタル専業銀行や、再編で規模を拡大する地方銀行グループの追随によって徐々に薄れる可能性がある。アプリの外販網拡大が計画より遅れれば、デジタルでの差別化という成長戦略の柱が弱まる。
政策保有株式削減・還元計画の遅延
総還元性向50%以上、2030年3月までの政策保有株式の簿価3分の2以上削減という計画は市場に高く評価されているが、保有先企業との関係や市況の悪化で削減が計画より遅れれば、資本効率の改善ペースが鈍り、今のPBR1.80倍が織り込む期待との差が広がる。
中期経営計画の目標が未達になるリスク
2028年度ROE12%超・政策金利1.5%でROE14%という目標は、2026年3月期の実力値ROE8.9%から大きく引き上げる野心的な目標であり、政策金利の上昇ペースが計画より遅れたり中小企業の与信費用が想定を上回れば、今の株価が織り込む成長期待との差が割高方向に広がる。
今後の分かれ目
- 日銀が政策金利を1.5%へ向けて計画より速いペースで上げたら
- 楽観・やや楽観の筋書きの確率を上げてよい。国内の預貸ざやの拡大ペースを決算で確認する。
- 十六フィナンシャルグループなど地方銀行との提携が資本提携・経営統合に発展したら
- 楽観側の確率を上げ、アライアンスによる広域化という独自路線の実現度が高まったと見る。
- 中小企業取引先の与信費用が四半期で急増したら
- やや悲観・悲観側の筋書きに重みを移す。地域経済・原材料高の影響度を確認する。
- りそなグループアプリの外販先地銀・ダウンロード数が計画を明確に上回ったら
- デジタルでの差別化が確認できたとみて楽観側の確率をやや上げる。
- 政策保有株式の削減が2030年3月の計画を上回って進んだら
- 資本効率改善のペースが速いとみて楽観側の確率を上げる。
- 中期経営計画のROE12%超・政策金利1.5%でROE14%という目標が上方修正されたら
- 楽観側の筋書きの前提を上方修正し、価値を見直す。
見ておくもの
- 日銀の政策金利・国内の預貸ざやの推移
- 中小企業取引先の与信費用(信用コスト)の推移
- 十六フィナンシャルグループ等との提携の深化度(資本提携の有無)
- りそなグループアプリのダウンロード数・外販先地銀の数
- 政策保有株式の削減進捗(2030年3月までに簿価3分の2以上)
- 総還元性向・自社株買いの実施規模
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに、中立・やや楽観・楽観は10年後のROEと資本コスト7.5%・g3.5%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(RONICはkを超える分の半分だけ残す)を出し、その約7.3割に置いた(国内専業で利ざや拡大が素直に効く反面、海外の分散が無い)。やや悲観は稼ぐ力に近い純資産のPBR、悲観の PER は ROE÷k に比例して目減りさせた値(上限 × ROE÷k × 0.9。自己資本の 0.2 倍相当を下限)で、6.4 倍(やや悲観の 12.9 倍より低い)。ROEは結果として出し、自己資本は今の値+期間の純利益−還元で流した(悲観の谷だけ評価損の分を小さく)。利益は数量(残高・名目)×価格(利ざや・預金ベータ35%)で積んだ。結論は今の株価に寄せて決めていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.6→17.29 倍・やや楽観 PER 12.5→17.2 倍・中立 PER 12.3→16.9 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本7.5%に quality +0.0% を足した 7.5%(β・規模は使わない)。中小企業・個人向けで景気への振れは並み(循環0)、リテール基盤と信託手数料で調達が安く値決め力−0.25、銀行の借金は仕入れで0、国内専業で人口減の影響を受け寿命+0.25。合計0%。
同じ業種(銀行業)の AI 分析
読んだ資料
- 中期経営計画(2026~2028年度)Shift to the Next Stage(りそなホールディングス)
- りそなHDが「3年で預金5兆円増」の異例計画を公表(ダイヤモンド)
- りそなホールディングス、中期経営計画策定とマテリアリティ改定-総還元性向50%以上を目標に
- りそなHD、政策保有株削減ペース2倍にアップ 今後4年で800億円(ニッキンオンライン)
- 株式会社十六フィナンシャルグループとのリテール分野における戦略的業務提携について(りそなホールディングス)
- りそなHDと十六FG、業務提携に持たせた「含み」資本提携に向けての協議も検討(東洋経済)
- 公的資金の完済について(りそなグループのあゆみ)
- 全国155万3,601社の“メインバンク“調査「りそなHD」みずほFGを逆転しシェア3位に(東京商工リサーチ)
- なぜ「りそなグループアプリ」は1,000万DLを突破できた?(マイナビニュース)