結論
光ビジネスフォームは、伝票や帳票を刷る印刷会社から出発し、今は自治体の納付書や督促状、企業の請求書を、個人情報を預かって印字から発送まで請け負う仕事が売上の 6 割を占める。筆者の結論は割高だ。現金と有価証券は時価総額の 7 割を超えるが、本業の ROE は 2% 前後で、資本コストの半分にも届かない。
2026 年は値上げと工場の集約が効き、営業利益は 5 億円へ戻る見込みだ。それでも利益率は 6% 台で、紙の需要は毎年細る。2021〜2023 年の高い利益はワクチン接種や給付金の通知という特需で、普段の年の実力ではない。
厚い現金は確かに価値だが、経営陣は自己資本を厚く持つ方針を崩していない。大株主の提案した高い配当も退けた。現金が株主に戻る道筋が細い以上、帳簿の額どおりには数えられない。10 年の中立では、今の値段に届かない。会社が還元の方針を純資産に結びつけるなど、現金の扱いを変えた時が見直しの分かれ目になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「堅いが伸びない事業に、使わない現金を抱えた会社」だ。DPP の仕事は信用で守られ、明日なくなることはない。その点は評価できる。
だが、オーナーの目で見ると、稼ぎが細い。営業利益に償却を足したオーナー利益は年 5〜7 億円で、そのうち工場の更新に毎年 2 億円前後が要る。紙の通知は 10 年で減っていく。値上げが通るのは原価が上がった時だけで、自分から値段を決められる強さは無い。
資本の配分は、ここ 2 年で良くなった。自社株買いを PBR 1 倍を下回る値段で行ったのは理にかなう。ただ、それは株主の提案に押された面が大きく、手元資金を厚く持つ考えは変わっていない。
安全域の面では、現金と有価証券の厚さが下を支える。それでも、その現金が少数株主に戻る保証は無い。今の値段は、現金を帳簿どおりに数え、本業にも平均以上の利益を見込んでようやく届く水準で、払う値段に対する安全域は乏しい。
何で稼ぐ会社か
事業は印刷関連の 1 本だが、中身は 3 つに分かれる。いちばん大きいのが DPP、つまりデータ・プリント・プロセスで、売上 77 億円のうち 47 億円を稼ぐ。自治体から住民のデータを預かり、納付書や督促状、投票所の入場券を一人ひとり印字して、封入し、発送する。企業の請求書や契約のお知らせも同じ仕組みで請け負う。最大の顧客は大和総研で、売上の 1 割強を占める。
2 つめは、伝票や振込用紙、明細書を刷る昔ながらのビジネスフォームで、売上は 25 億円。ペーパーレスの波を最も直接に受け、毎年少しずつ減っている。
3 つめが WEB と BPO で、合わせて 6 億円弱。紙の通知を電子化するサイトや、通知を送ったあとの問い合わせ・申込書の回収・データ作成を代行する。会社は DPP を起点にこの 2 つを伸ばす計画だったが、人材派遣やコールセンターの大手に価格で負け、2025 年に目標を下げた。
2024 年に高尾工場を止め、印刷を千葉の野田工場に集めた。立ち上げに手間取り 2024〜2025 年は利益が落ちたが、2026 年は工程が落ち着き、外注も使って原価が下がった。高尾の建物は建て替えをやめ、5 億円ほどの改修で使い直す。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、個人情報を扱ってきた信用にある。自治体の通知物は一度でも誤送付を出せば取引を失う。セキュリティの認証と事故の無い実績を積んだ会社しか入札に呼ばれない。同業が設備を畳むなかで、残った会社に仕事が回る「残存者の利益」も働いている。
ただし、この堀は値段を決める力にはなっていない。自治体の仕事は入札で決まり、紙と郵送の値上がりを転嫁するのに時間がかかる。営業利益率は 2014〜2020 年の多くの年で 2〜6%、特需の年を除くと 4% 前後が実力だ。
資本の効率は低い。自己資本 94 億円のうち、半分近くは現金と有価証券で、本業に使われていない。ROE は過去 10 年の中央値で 3% 台にとどまる。経営陣はこの資本を「不測の事態に備えて不可欠」と言い、配当と自社株買いを増やしてはいるが、資本そのものを軽くする考えは見えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ビジネスフォームの業界は、紙の帳票が減る流れの中にある。企業の伝票は電子化され、銀行の振込用紙も窓口の縮小で減った。業界の大手の TOPPAN エッジや、小林クリエイト、ビーエフ・ドリームなどがひしめき、中小の同業は設備の更新をあきらめて撤退が続く。
残るのは、法令で紙の通知が求められる仕事だ。住民税や国民健康保険の納付書、督促状、選挙の入場整理券、保険の契約のお知らせは、電子交付が広がっても紙を望む人がいる限り無くならない。戸籍法の改正やマイナ保険証の切り替えのように、制度が変わるたびに大量の通知が出る特需もある。
逆風は 3 つある。国が自治体のデジタル化を進め、マイナポータルでの通知が増えること。紙・インキ・郵送料が上がり、発注する側が電子化を急ぐこと。そして AI エージェントが、申請受付や問い合わせ対応といった定型の作業を安く代わり始めたこと。DPP の数量は 10 年で 1〜2 割減る、と筆者は見ている。値段は人手不足と原価高で物価並みに上がる。同業が減るほど、残った会社の値上げは通りやすくなる。
資本政策と M&A
還元は、ここ 2 年で大きく厚くなった。2025 年 12 月期は配当の総額 2.4 億円に、自社株買い 2.1 億円を合わせた総還元性向は 301% だった。配当は 2028 年に 2025 年の 1.3 倍を目標に掲げ、PBR 1 倍を目指すと明言している。
きっかけの一つは、10.8% を持つ投資組合の株主提案だ。純資産配当率 6% の配当と監査役の解任を求めたが、会社は反対し、手元資金は成長投資と事業の備えに使うと答えた。高尾工場の建て替え 20〜25 億円を 5 億円の改修に縮めたのも、資金の使い方を問われた結果と読める。
大きな買収の歴史は無く、今後も見込みにくい。現金と債券で 30 億円を超える手元資金は、配当で少しずつ戻る形で、筆者は帳簿の額の 4 分の 3 ほどしか株主の価値に数えない。時価総額が 64 億円と小さく、同業や投資ファンドによる買収の受け皿になる可能性は残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
現金と有価証券で 48 億円、時価総額の 7 割を超える。工場の土地もある。本業がゼロでも、資産の大半は手元にある計算だ。2026 年は値上げと野田工場への集約で営業利益が 5 億円に戻り、純利益は 3.4 億円の見込みだ。会社は中計で 2028 年に営業利益率 6%、配当の 3 割増、PBR 1 倍を掲げた。
通知物の業界では中小の撤退が続き、残る会社に仕事が集まる。自治体の通知は法令で紙が求められ、制度改正のたびに特需が出る。2021〜2022 年にはワクチン接種と給付金で営業利益が 20 億円まで跳ねた。数年に一度の特需を足せば、平均の利益は今の予想より高い。
10.8% を持つ投資組合が還元を迫り、会社は 2 年で総還元性向を 300% に上げた。株主の圧力が続けば、自社株買いはさらに進み、余った現金は株主に戻る。時価総額 64 億円の小ささは、同業や投資ファンドが丸ごと買う値段としても手頃だ。
慎重な見方
現金が厚くても、使われなければ株主の価値にならない。経営陣は投資組合の高い配当の提案を退け、自己資本を厚く持つことが不可欠だと言い切った。ROE は過去 10 年の中央値で 3% 台で、資本コストの半分にも届かない。帳簿の価値は、それを稼ぐ力に変えられない限り、帳簿の額では数えられない。
本業も細る。紙の帳票は毎年減り、DPP も自治体のデジタル化で通数が減っていく。値段は入札で決まり、紙と郵送の値上がりを転嫁するのに時間がかかる。2024〜2025 年に利益率が 2% 台へ落ちたのは、特需が無い年の素の姿だ。WEB と BPO を伸ばす計画は大手に価格で負けて縮み、今は AI エージェントが定型の受付や代行を安く代わり始めている。
大和総研という一社で売上の 1 割強を占めるのも危うい。2026 年の回復は値上げと工程の集約によるもので、二度は効かない。特需は当てにできず、平均の利益に入れるのは無理がある。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや勝つ。現金と有価証券の厚さは本物で、下値は守られている。だが、その現金を株主に戻す意思が弱く、本業の ROE は資本コストを大きく下回る。2026 年の回復は値上げと集約による一度きりの改善の色が濃い。確率は中立を軸に、2024〜2025 年に現に起きた利益率 2% 台の姿を重く見て、やや悲観の側に寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 935 円50 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 608 円33 億円)。 今の値に割り戻すと 832 円45 億円、今との差 −29.5%、 期待の年率 +2.7%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,664 円90 億円 | 836 円45 億円 | +111.9% | +7.8% | 175 円9 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,303 円70 億円 | 744 円40 億円 | +73.4% | +5.7% | 409 円22 億円 |
| 中立 | 38% | 1,037 円56 億円 | 651 円35 億円 | +43.0% | +3.6% | 641 円35 億円 |
| やや悲観 | 23% | 500 円27 億円 | 520 円28 億円 | −13.5% | −1.4% | 235 円13 億円 |
| 悲観 | 12% | 409 円22 億円 | 279 円15 億円 | −41.7% | −5.3% | 83 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 935 円50 億円 | 608 円33 億円 | +30.8% | +2.7% | 1,543 円83 億円 |
今の株価時価総額 1,180 円63 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 残存者として通知物を集め、利益率が 7% 台に乗る 利益 6 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 1,664 円90 億円
ビジネスフォームの同業が設備を畳み、自治体と金融の通知物が残った会社に集まる。光ビジネスフォームは個人情報を扱ってきた実績で受け皿になり、DPP の通数は 10 年後も今と同じだけ残る。選挙・給付金・制度改正の特需も数年おきに入る。価格は物価をやや上回って通り、野田工場への集約と外注の使い分けで工程の無駄も減る。営業利益率は 7% 台に乗り、2021〜2023 年の山には届かないが、普段の年としては過去最高の水準になる。手元資金の一部は自社株買いに回り、配当の総額は年 3 億円台から段階的に増える。それでも ROE は資本コストに届かず、厚い自己資本が足を引っ張る。
- 印刷関連(ビジネスフォーム):数量 410(印刷物の出荷(百万枚相当、推定))× 価格 6.12(1 枚あたり売上(円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。枚数 0.75 倍(実質)・単価 1.36 倍(名目)
- DPP(データ・プリント・プロセス):数量 157(通知物の通数(百万通、推定))× 価格 41(1 通あたり売上(円・名目、郵送料は除く))→ 売上 65 億円・営業利益 6 億円。通数 1.00 倍・単価 1.38 倍、償却は物価で増やさない
- WEB・BPO:数量 730(受託の工数(人月相当、推定))× 価格 107(1 人月あたり売上(万円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。工数 1.00 倍(AI の売り物の開示なし)・単価 1.34 倍
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 12.95 倍、時価総額 90 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:同業の撤退で通知物の受け皿になり、値上げも通る筋書き。2022 年のような特需の再来も要り、重なる確度は低い。
やや楽観 20% 値上げが定着し、中計の 6% 前後を保つ 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,303 円70 億円
2026 年に通した値上げと、印刷を野田工場に集めた効果が定着する。紙の帳票は年に 3〜4% ずつ減るが、DPP の通数は自治体の通知が支え、10 年で 5% ほどの減りで済む。単価は物価並みに上がり、営業利益率は中計の 2028 年目標 6% 前後を保つ。WEB・BPO は申請受付や問い合わせ代行が伸びるが、AI エージェントが定型の受付を代わる分だけ工数は細る。還元は年 3 億円強の配当を軸に、手元資金の一部で自社株買いを続ける。PBR 1 倍を目指す会社の約束が、少しずつ数字になる筋書きだ。それでも厚い自己資本のせいで、ROE は 5% 台にとどまる。
- 印刷関連(ビジネスフォーム):数量 383(印刷物の出荷(百万枚相当、推定))× 価格 6.03(1 枚あたり売上(円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。枚数 0.70 倍・単価 1.34 倍
- DPP(データ・プリント・プロセス):数量 149(通知物の通数(百万通、推定))× 価格 41(1 通あたり売上(円・名目、郵送料は除く))→ 売上 61 億円・営業利益 5 億円。通数 0.95 倍・単価 1.36 倍
- WEB・BPO:数量 657(受託の工数(人月相当、推定))× 価格 104(1 人月あたり売上(万円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。工数 0.90 倍・単価 1.30 倍
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 70 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年の上方修正(営業利益 5 億円)で値上げと工程集約の効果は実績になった。それを 10 年保てるかの上振れ。
中立 38% 中立:紙は細り、DPP の残存者利益で 4〜5% を保つ 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,037 円56 億円
紙の帳票は 10 年で 3 分の 2 に減る。DPP の通数も、マイナポータルや電子交付で 15% ほど減るが、納付書・督促状・選挙の入場券のように紙で届ける決まりのある通知は残る。同業の撤退で残る会社に仕事が回り、単価は物価並みに上がる。営業利益率は 4.7% 前後で、2024〜2025 年の 2% 台よりは上、会社が目指す 6% には届かない。WEB・BPO は AI エージェントに定型の作業を代わられ、工数は 4 分の 3 に細る。配当は年 3 億円前後を保ち、純利益を上回る還元が続くので自己資本は少し減る。それでも ROE は 4% 前後で、資本コストを下回り続ける。
- 印刷関連(ビジネスフォーム):数量 356(印刷物の出荷(百万枚相当、推定))× 価格 5.85(1 枚あたり売上(円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 0 億円。枚数 0.65 倍・単価 1.30 倍(帳票は値上げが通りにくい)
- DPP(データ・プリント・プロセス):数量 133(通知物の通数(百万通、推定))× 価格 40(1 通あたり売上(円・名目、郵送料は除く))→ 売上 53 億円・営業利益 3 億円。通数 0.85 倍・単価 1.34 倍
- WEB・BPO:数量 548(受託の工数(人月相当、推定))× 価格 100(1 人月あたり売上(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。工数 0.75 倍(AI エージェント代替)・単価 1.25 倍
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 56 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:紙の通知が電子化で減る流れは止まらないが、自治体と金融の通知物は法令で残る。会社の見直した計画より少し低い中心の筋書き。
やや悲観 23% 電子化が早まり、利益率は 2% 台に戻る 利益 2 億円 · PER 6.9 倍 · 株価時価総額 500 円27 億円
自治体の通知の電子化が国の旗振りで早まり、DPP の通数は 10 年で 3 割近く減る。紙と郵送料の値上がりが電子化をさらに後押しする。値上げは一部しか通らず、営業利益率は 2024〜2025 年と同じ 2% 台に戻る。帳票は 10 年で半分近くまで減り、赤字すれすれになる。WEB・BPO は人材派遣やコールセンターの大手、AI エージェントの安い代行に挟まれて縮む。配当は年 2 億円前後に下げざるを得ず、手元資金は減らないが、使い道も見えない。厚い現金と土地を抱えたまま、稼ぐ力だけが細る筋書きだ。
- 印刷関連(ビジネスフォーム):数量 301(印刷物の出荷(百万枚相当、推定))× 価格 5.63(1 枚あたり売上(円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。枚数 0.55 倍・単価 1.25 倍
- DPP(データ・プリント・プロセス):数量 113(通知物の通数(百万通、推定))× 価格 39(1 通あたり売上(円・名目、郵送料は除く))→ 売上 44 億円・営業利益 2 億円。通数 0.72 倍・単価 1.30 倍
- WEB・BPO:数量 438(受託の工数(人月相当、推定))× 価格 96(1 人月あたり売上(万円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。工数 0.60 倍・単価 1.20 倍
倍率:ROE は k 8.25% に届かないので、ためた利益は帳簿の額より価値が低く、PER の上限は 1÷k = 11.4 倍。やや悲観は伸びと値決めを低く見て上限の 6 割の 6.9 倍。余った現金は谷で食う分を引いて 22.5 億円とし、戻り方 0.75 を掛けた。稼ぐ力(事業の純利益÷k+余った現金)より下に置いている。
確率:2024〜2025 年の利益率 2% 台が現に起きた水準で、特需が無い年の姿として重く見る。
悲観 12% 紙の通知が大きく消え、赤字すれすれで現金だけが残る 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 409 円22 億円
法令の改正で納付書や督促状の電子交付が原則になり、DPP の通数は 10 年で半分近くまで減る。帳票は 4 割まで縮み、工場の固定費を賄えない。大和総研のような大口の顧客が内製や他社に移れば、売上の 1 割強が一度に消える。営業損益は赤字すれすれで、配当は大きく減る。会社に残る価値は、現金と債券、売れる株、それに工場の土地だけになる。ただ経営陣は自己資本を厚く持つ方針で、少数株主にその現金が戻る道筋は細い。赤字の工場を抱えたまま、現金が少しずつ減っていく。工場の土地を売って縮む道も、従業員と地域を考えれば決断は遅れるだろう。
- 印刷関連(ビジネスフォーム):数量 219(印刷物の出荷(百万枚相当、推定))× 価格 5.18(1 枚あたり売上(円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。枚数 0.40 倍・単価 1.15 倍
- DPP(データ・プリント・プロセス):数量 86.1(通知物の通数(百万通、推定))× 価格 36(1 通あたり売上(円・名目、郵送料は除く))→ 売上 31 億円・営業利益 0 億円。通数 0.55 倍・単価 1.20 倍
- WEB・BPO:数量 365(受託の工数(人月相当、推定))× 価格 88(1 人月あたり売上(万円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。工数 0.50 倍・単価 1.10 倍
倍率:稼ぐ力は無く、純現金と売れる資産の床で置いた。床 22 億円=(現金 30 億円−運転資金 10 億円−赤字で減る 5 億円+投資有価証券の税後 15 億円)×戻り方 0.75。今の自己資本 93.7 億円に対する PBR で書いた。
確率:通知の電子化が一気に進む構造的な負け。紙で届ける法令の縛りが残る限り急には起きないので 12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
印刷関連(ビジネスフォーム)
伝票・振込用紙・明細書など、決まった様式の帳票と一般の印刷物。紙の需要の減りを最も直接に受ける部分。
| 数量印刷物の出荷(百万枚相当、推定) | 価格1 枚あたり売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 547 | 4.50 | 25 | 0 |
| 10 年後 中立 | 356 | 5.85 | 21 | 0 |
取り方:製品分類の売上 24.6 億円(2025/12 期、中計の開示)を 1 枚 4.5 円の平均単価で割った推定の枚数。単一セグメントなので営業利益は会社全体 2.0 億円を分類ごとの採算の見立てで割り振った推定。
DPP(データ・プリント・プロセス)
自治体の納付書・督促状・投票所入場券や企業の請求書・契約のお知らせを、個人情報を預かって印字・封入・発送まで一貫で請け負う。売上の 6 割を占める柱。
| 数量通知物の通数(百万通、推定) | 価格1 通あたり売上(円・名目、郵送料は除く) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 157 | 30 | 47 | 2 |
| 10 年後 中立 | 133 | 40 | 53 | 3 |
取り方:製品分類の売上 47.0 億円(2025/12 期)を 1 通 30 円(印字・データ処理・封入封緘の加工賃の推定)で割った推定の通数。
WEB・BPO
紙の通知の電子化、申請受付サイト、通知発送後の問い合わせ・回収・データ作成の代行。人手と工数で稼ぐ部分。
| 数量受託の工数(人月相当、推定) | 価格1 人月あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 730 | 80 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 548 | 100 | 5 | 0 |
取り方:WEB 1.3 億円と BPO 4.5 億円の合計 5.8 億円を 1 人月 80 万円で割った工数の推定。人月で売る型なので AI エージェント代替の型(数量 10 年 0.55〜0.75 倍)を当てる。
リスクと懸念
自治体の通知の電子化
国が自治体のデジタル化を進め、納付書や督促状、各種の通知をマイナポータルで届ける動きが広がっている。紙で届ける法令の縛りが緩めば、DPP の通数は一気に減る。売上の 6 割を占める柱なので、通数が 1 割減るだけで営業利益の多くが消える。
大口顧客への偏り
大和総研だけで売上の 1 割強を占める。金融機関の通知の仕事は、相手の方針一つで内製や他社に移る。失えば売上と工場の稼働が同時に落ち、固定費を賄えなくなる。
紙と郵送の値上がりの転嫁
紙・インキ・物流・人件費が上がり続けている。自治体の仕事は入札で決まり、転嫁には時間がかかる。2024〜2025 年に利益率が 2% 台まで落ちたのは、原価高と工場の集約の手間取りが重なったためだ。
AI エージェント代替
WEB・BPO の申請受付や問い合わせ対応、データ作成は、人の工数で売る仕事だ。AI エージェントが定型の作業を安く代わり始めており、工数は 10 年で 4 分の 3 程度に細ると見る。会社が伸ばしたい分野ほど、置き換えの波を受ける。
現金が株主に戻らない
現金と有価証券で 48 億円を持つが、経営陣は自己資本を厚く保つ方針だ。株主提案の高い配当も退けた。現金が成果の出ない投資や運転資金に留まれば、株主の価値にはならない。
個人情報の事故
住民や顧客の個人情報を大量に預かる。誤送付や漏えい、ランサムウェアの被害を一度でも出せば、自治体の入札から外され、信用という唯一の堀を失う。
今後の分かれ目
- 2027 年以降も営業利益率 6% 前後を保ち、値上げが定着したら
- やや楽観の筋書きに確率を寄せる。値上げが一度きりでなかったことになる。
- 自治体の通知の電子交付が法令で原則になったら
- DPP の通数の前提を下げ、やや悲観と悲観に確率を寄せる。
- 配当方針を純資産に連動させる、または大きな自社株買いを決めたら
- 余った現金の戻り方を 1.0 に上げ、本質価値を上に直す。
- 大和総研など大口の顧客を失ったら
- 売上の 1 割強と工場の稼働が落ちる。悲観の確率を上げる。
- 同業や投資ファンドが買収を提案したら
- 現金と土地が評価され、帳簿に近い値段がつく可能性がある。筋書きの外の上振れとして見る。
見ておくもの
- 営業利益率(2026 年予想 6.5%、2028 年目標 6%)
- DPP の売上と自治体の電子交付の制度の動き
- 配当と自社株買いの額、株主提案の行方
- 大和総研向けの売上
- 高尾工場の改修の費用と稼働
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額 64 億円や PBR 0.67 倍には寄せていない。製品分類ごとに数量(枚数・通数・工数)と名目の単価で 10 年の利益を積み、倍率は ROE が k に届かないので 1÷k = 11.4 倍を上限に、中立 7.5 割・やや楽観 8 割・楽観 8.5 割で置いた。PBR 1 倍割れは割安の根拠にしていない。余った現金 30 億円は戻り方 0.75 で足した。減価償却は年 2 億円弱のまま物価で増やさず、高尾の改修 5 億円は更新の投資として利益率に含めた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.7→12.95 倍・やや楽観 PER 9.1→12.12 倍・中立 PER 8.6→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。