結論
ハビックスは岐阜の不織布と衛生用紙の会社だ。紙おむつやペットシーツの表面材、クッキングペーパー、おむつの包み紙を作り、売上の 2 割強をユニ・チャームに頼る。筆者の結論は「やや割高」で、一番の理由は事業の稼ぎが資本コストに届かないことにある。
同社はいま、時価総額を超える 44 億円を投じて、ユニ・チャーム向けにペット用品を受託生産する工場を建てている。2027 年 4 月に動き出せば売上は 1 割以上増える。だが、この商売は相手の注文しだいで、値段も相手が強い。
過去 10 年の営業利益率は 3〜7% の帯にあり、原料と燃料が跳ねた 2022/03 期には大きな赤字を出した。新工場で規模は増えても、利益の質が変わる証拠はまだ無い。借入で建てる分、金利の上がる世の中では利払いも重くなる。
10 年後の中立の姿では、確率で重みを付けた価値は今の時価総額を 2 割ほど下回る。今の値段に届くのは受託がうまく育った時だけで、筆者はそれを前提にした値段だと見る。
バリュー投資の観点から
オーナーとして持ち続けたい事業かと問われれば、筆者は迷う。紙おむつやペットシーツの素材は 10 年後も確実に要る。だが、この会社がその稼ぎのどれだけを自分のものにできるかは心もとない。
バリュー投資の観点で一番気になるのは、稼いだお金がどこへ行くかだ。過去 10 年、利益の多くは設備の更新と新しい設備に回り、株主に戻ったのは 2 割強にとどまる。新工場もまた、1 社の注文に向けた大きな設備だ。資本コストを超えて稼げない事業に、お金を積み増す形になっている。
安全域はどうか。今の時価総額は自己資本の半分に満たないが、自己資本の大半は工場の設備で、売って現金に変わるものではない。稼ぐ力で測れば、今の値段は受託の成功をある程度前提にしている。値段に安全域があるとは言いにくい。受託が数年きちんと稼ぐのを確かめてからでも遅くない会社だ。
何で稼ぐ会社か
事業は 2 本の柱でできている。売上の 56% を占める不織布と、44% を占める衛生向けの原紙だ。
不織布は 2 種類ある。パルプを原料にしたものは、家庭のクッキングペーパーや、肉や魚のパックの下に敷くドリップ吸収シートになる。化学繊維の不織布は、紙おむつやペットシーツの肌に触れる表面材として納める。
原紙は、紙おむつやペットシーツを包む薄い紙や、おしぼり用の紙だ。どちらも大手の衛生用品メーカーに素材として売る商売で、最大の相手はユニ・チャームプロダクツ。前期は売上の 22.8% を占めた。
いま事業の形を変えようとしている。長期ビジョンは「素材メーカーから衛生用品メーカーへ」。本巣市の岐阜工場に 44 億円でペット用品の製造設備を入れ、2027 年 4 月からユニ・チャーム向けの受託生産を始める。自社ブランドの「Kireine」も育てる。素材を売るだけでなく、完成品まで作って付加価値を取りにいく狙いだ。
社員は約 200 人と小さく、工場は岐阜に集まる。設備産業なので、値上げの遅れと稼働の差がそのまま利益に響く。
優良さと弱いところ
優良さは並だ。筆者は、技術で他社を寄せつけない会社ではなく、大手の衛生用品メーカーの調達網に入り込んで長く付き合う会社と見る。
強みは、紙おむつやペットシーツという量の安定した用途に、素材を切らさず納めてきた信頼だ。ユニ・チャームが新しい受託の相手に選んだこと自体、品質と供給の実績の証しといえる。
弱みは値決め力だ。相手は国内最大手の衛生用品メーカーで、原料のパルプや燃料が上がっても値上げは後追いになる。2022/03 期の赤字はその表れだ。過去 10 年の ROE の中央値は 7% 弱で、資本コストに届かない。
新工場はこの弱みを強めもする。1 社のために 44 億円の設備を持てば、取引の主導権はさらに相手に寄る。
経営は堅実で、無理な買収はしてこなかった。ただ、稼いだお金の多くを設備に回し、株主へ戻すのは配当だけという配分は、資本の稼ぎが低い会社としては物足りない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の紙おむつは、赤ちゃん用が出生数の減少で縮み、大人用が高齢化で伸びる。不織布の表面材の量は差し引きでほぼ横ばいだ。クッキングペーパーやドリップシートは食品の量に結びつき、人口とともにじわりと細る。
ペット用品は数少ない伸びしろだ。犬と猫の飼育数は横ばいでも、1 頭あたりの支出は増えている。ペットシーツは使い捨てで、景気に左右されにくい。ユニ・チャームが国内の生産を増やす中で、受託の相手を持つことには意味がある。
業界全体では、パルプと燃料の値上がりが利益を揺らす。2026 年には家庭用紙の大手が 1〜3 割の値上げを打ち出した。素材の会社は、大手が最終製品の値上げを通したあとで、ようやく自分の値上げを認めてもらう順番になる。
競合は、不織布でクラレクラフレックスやダイワボウの系列、海外では中国や韓国の大手だ。量で勝負する化合繊の不織布は、輸入品との値段の争いになりやすい。
10 年の見通しとして、筆者は数量を全体でほぼ横ばい、値段を物価並みと見る。伸びるのはペット用品と大人用おむつだけで、そこで誰が受託を取るかが中堅の素材会社の明暗を分ける。
資本政策と M&A
還元は配当だけで、性向 25% 以上を目安にしている。前期の配当総額は 1.25 億円で、純利益の 2 割強にあたる。自社株買いの実績は乏しい。
いまは工場への投資が最優先だ。44 億円のうち 23 億円がこれから出ていき、タームローン 20 億円で賄う。純負債は 25 億円前後へ膨らむ見込みで、10 年の間は借入の返済と配当の維持が資金の行き先になる。
政策保有株は十六フィナンシャルグループなど地元の銀行株を中心に 2.5 億円ほど。大株主は創業家筋の個人と十六銀行で、親会社はない。時価総額が小さく、同業の再編や顧客による買収の候補にはなりうるが、具体的な話は無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
新しい工場はこの会社の転機になる。ユニ・チャームは国内のペット用品の生産を伸ばしたいが、自前の工場を建てるより、素材を長く納めてきた相手に任せた方が早い。そこで選ばれたのがハビックスだ。受託は 2027 年 4 月に始まることが決まっており、絵空事ではない。
会社の計画では、2028/03 期の売上は 145 億円と前期の 2 割増になる。受託が育てば工場の稼働は上がり、重い償却も利益に変わっていく。素材を作る工場と製品を作る工場が隣にあれば、運ぶ手間も在庫も減る。
不織布にも追い風がある。大人用おむつは高齢化で伸び続け、クッキングペーパーのような使い捨ての台所用品も手堅い。値上げは後追いでも、2024/03 期以降は通ってきた。
時価総額は自己資本の半分に満たない。受託で利益率が過去の平均の 5〜6% に戻れば、純利益は今の倍近くになりうる。小さな会社が大手の生産の一部を担う形は、いったん根づけば簡単には外されない。設備と人を新しく揃える手間を考えれば、相手にとっても乗り換えは面倒だからだ。
慎重な見方
この会社の弱さは、いちばん大きな顧客にますます頼る形になることだ。売上の 2 割強がすでにユニ・チャーム向けで、新工場もその 1 社のために建てた。相手が調達先を見直せば、工場は動く理由を失う。
受託の値段は相手が決める。原料や燃料が上がっても、受託の単価は後から少しだけ上がる。2022/03 期に 24 億円の赤字を出したのは、まさにこの弱さが表に出た時だった。
借入も重くなる。純負債は 25 億円前後に膨らみ、借り換えの金利は 3.5% 前後へ上がる。営業利益が 5 億円前後の会社にとって、利払いの増加は小さくない。
本業の量は増えない。赤ちゃん用おむつは出生数とともに縮み、表面材は中国や韓国の安い品と争う。過去 10 年の ROE の中央値は 7% 弱で、資本コストに届いた年はほとんど無い。新しい設備にお金を入れるほど、株主の価値は薄まる。受託で売上が増えても、利益の取り分が増える保証は無い。規模の拡大を価値の拡大と取り違えてはいけない。
どちらに重みを置いたか
顧客 1 社への寄りと値決め力の弱さという慎重な側の指摘の方が、事実に裏打ちされている。受託が始まるのは確かだが、それで利益の質が変わる証拠はまだ無い。確率はやや悲観と悲観に厚めに置き、楽観は受託と新用途がそろう場合に限って薄く置いた。中立は会社の計画を少し割り引いた姿で、受託の開始そのものは織り込んでいる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 543 円43 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 169 円13 億円)。 今の値に割り戻すと 339 円27 億円、今との差 −17.7%、 期待の年率 +5.6%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,242 円98 億円 | 267 円21 億円 | +266.3% | +13.9% | 106 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 847 円67 億円 | 216 円17 億円 | +158.1% | +9.9% | 213 円17 億円 |
| 中立 | 38% | 593 円47 億円 | 184 円15 億円 | +88.7% | +6.6% | 295 円23 億円 |
| やや悲観 | 23% | 201 円16 億円 | 127 円10 億円 | −20.3% | −2.2% | 76 円6 億円 |
| 悲観 | 12% | 127 円10 億円 | 64 円5 億円 | −53.7% | −7.4% | 23 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 543 円43 億円 | 169 円13 億円 | +72.9% | +5.6% | 712 円56 億円 |
今の株価時価総額 412 円32 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 受託が育ち、衛生用品の会社に脱皮する 利益 9 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,242 円98 億円
新しい岐阜工場の受託生産が軌道に乗り、ペットシーツの生産は年 12 億枚まで膨らむ。ユニ・チャームが国内のペット用品の生産を外に出す流れが続き、ハビックスは素材と製品の両方を納める相手になる。
不織布は大人用おむつと調理用の需要に、産業向けの新しい用途が加わり、出荷は 2 割増える。素材から製品までを一つの敷地でこなせる強みが値決めにも効き、利益率は今の倍近くに戻る。
それでも事業の資本の稼ぎは資本コストに届かない。設備を足して売上を伸ばす事業で、伸びのたびにお金が要るからだ。売上は 240 億円に届くが、株主の取り分を大きく増やすには、稼いだお金を設備より還元へ回す決断も要る。
- 不織布:数量 12,000(不織布の出荷量(トン・年、推定))× 価格 9.48(1 トンあたりの売上(十万円・名目))→ 売上 114 億円・営業利益 8 億円。1.2 万トン × 1 トン 95 万円(今の 1.40 倍)、利益率 7%
- 衛生向け原紙:数量 24,000(衛生用紙の出荷量(トン・年、推定))× 価格 2.86(1 トンあたりの売上(十万円・名目))→ 売上 69 億円・営業利益 3 億円。2.4 万トン × 1 トン 29 万円、利益率 4%
- ペットケア製品の受託生産:数量 12.0(ペットシーツなどの生産枚数(億枚・年))× 価格 469(1 枚あたりの売上(銭・名目))→ 売上 56 億円・営業利益 4 億円。12 億枚 × 1 枚 469 銭、利益率 7%(新設備の償却 2.9 億円込み)
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 98 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ユニ・チャームとの受託が新工場の能力いっぱいまで伸び、不織布の新しい用途も当たる筋書き。顧客 1 社の都合で決まる部分が大きく、全部がそろう確率は低い。
やや楽観 20% 受託は計画どおり、不織布はじわり伸びる 利益 6 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 847 円67 億円
受託生産は計画どおり立ち上がり、10 年後に年 9 億枚を作る。新工場の償却は重いが、稼働が上がるにつれて利益に変わっていく。
不織布は大人用おむつとクッキングペーパーで 1 割伸び、薄い衛生用紙は国内の赤ちゃん用おむつの縮みで少し減る。値上げは物価並みに通り、利益率は過去の平均の 5% 台に近づく。
借入で建てた工場の利払いは増えるが、増えた利益の方が大きい。配当は性向 3 割前後で増えていく。それでも事業の稼ぎは資本コストの 6 割ほどで、規模が増えるほど株主の価値が増える形にはまだならない。
- 不織布:数量 11,000(不織布の出荷量(トン・年、推定))× 価格 9.08(1 トンあたりの売上(十万円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 6 億円。1.1 万トン × 1 トン 91 万円、利益率 6%
- 衛生向け原紙:数量 23,500(衛生用紙の出荷量(トン・年、推定))× 価格 2.86(1 トンあたりの売上(十万円・名目))→ 売上 67 億円・営業利益 2 億円。2.35 万トン × 1 トン 29 万円、利益率 3.5%
- ペットケア製品の受託生産:数量 9.0(ペットシーツなどの生産枚数(億枚・年))× 価格 469(1 枚あたりの売上(銭・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 3 億円。9 億枚 × 1 枚 469 銭、利益率 6%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 67 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画(2028/03 期に売上 145 億円)を延ばした姿。受託は始まることが決まっており、相手の需要も底堅いので、中立の次に厚く置く。
中立 38% 受託で規模は増えるが、稼ぐ力は変わらない 利益 4 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 593 円47 億円
受託生産は 10 年後に年 7 億枚で落ち着く。売上は今の 1.6 倍の約 190 億円になるが、半分近くは物価の分だ。
不織布の出荷はほぼ横ばいで、大人用おむつの伸びが赤ちゃん用の縮みを埋める程度にとどまる。衛生用紙は 1 割弱減る。パルプと燃料の値上がりを後追いで価格に移す商売は変わらず、利益率は 3〜5% の帯から抜けない。
新工場の借入で純負債は 25 億円前後まで膨らみ、借り換えの金利 3.5% が利益を削る。配当は今の水準を物価並みに増やすのが精一杯だ。ためた利益は工場の更新と借入の返済に吸われ、規模の割に株主へ残るものは少ない。
- 不織布:数量 10,300(不織布の出荷量(トン・年、推定))× 価格 9.08(1 トンあたりの売上(十万円・名目))→ 売上 93 億円・営業利益 5 億円。1.03 万トン × 1 トン 91 万円、利益率 5%
- 衛生向け原紙:数量 23,000(衛生用紙の出荷量(トン・年、推定))× 価格 2.86(1 トンあたりの売上(十万円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 2 億円。2.3 万トン × 1 トン 29 万円、利益率 3%
- ペットケア製品の受託生産:数量 7.0(ペットシーツなどの生産枚数(億枚・年))× 価格 469(1 枚あたりの売上(銭・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 2 億円。7 億枚 × 1 枚 469 銭、利益率 5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.8% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 47 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受託の開始は決まっており売上は増えるが、原紙と不織布は値上げを物価並みに通すのがやっとという、過去 10 年の実績どおりの姿。いちばん起こりやすい。
やや悲観 23% 受託は細り、値上げも後手に回る 利益 2 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 201 円16 億円
受託生産は年 5 億枚で頭打ちになる。ペット用品の国内の伸びが鈍り、ユニ・チャームが自社工場や海外からの調達を優先するためだ。新工場は 7 割ほどしか動かず、償却が重く残る。工場の固定費は量が減っても減らない。
不織布は中国や韓国の安い品に押されて出荷が 1 割落ち、衛生用紙も 15% 減る。値上げは物価に届かず、利益率は 1〜4% に沈む。パルプと燃料の値段が上がるたびに、取り戻すのに 1 年以上かかる。
借入の利払いが利益の半分近くを食い、純利益は 2 億円を切る。配当は据え置きが続く。会社は残るが、設備に入れたお金がほとんど報われない姿だ。
- 不織布:数量 9,000(不織布の出荷量(トン・年、推定))× 価格 8.80(1 トンあたりの売上(十万円・名目))→ 売上 79 億円・営業利益 3 億円。0.9 万トン × 1 トン 88 万円(今の 1.30 倍)、利益率 4%
- 衛生向け原紙:数量 21,000(衛生用紙の出荷量(トン・年、推定))× 価格 2.78(1 トンあたりの売上(十万円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 1 億円。2.1 万トン × 1 トン 28 万円、利益率 2%
- ペットケア製品の受託生産:数量 5.0(ペットシーツなどの生産枚数(億枚・年))× 価格 455(1 枚あたりの売上(銭・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。5 億枚 × 1 枚 455 銭、利益率 3%
倍率:事業の ROE 1.7% が k を大きく下回るので、価値は稼ぐ力(純利益÷k)で測る。正当化 PER の上限 1÷k=11.1 倍の 8 割の 9.0 倍に置き、中立より下げた。
確率:原料と燃料の高騰で 2022/03 期に赤字を出した実績があり、値上げが遅れる年が続く姿は十分ありうる。受託の量も相手の都合で減りうるので厚めに置く。
悲観 12% 最大の顧客を失い、新工場が重荷になる 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 127 円10 億円
ユニ・チャームが受託と表面材の調達を他社や海外に移す。新しい岐阜工場はほとんど動かず、残った設備の減損で自己資本は 60 億円まで減る。
不織布は 25%、衛生用紙は 3 割近く出荷が落ち、原料高を価格に移せないまま営業赤字が続く。借入 25 億円の返済が重く、配当は大きく削られる。銀行との約束を守るため、残った工場の一部を手放す話も出てくる。
残る価値は、工場の土地と設備を同業や顧客に売って借入を返した残りしかない。素材の会社が 1 社のために大きな設備を持つ危うさが、そのまま表に出る筋書きだ。
- 不織布:数量 7,500(不織布の出荷量(トン・年、推定))× 価格 8.47(1 トンあたりの売上(十万円・名目))→ 売上 64 億円・営業利益 1 億円。0.75 万トン × 1 トン 85 万円、利益率 1%
- 衛生向け原紙:数量 18,000(衛生用紙の出荷量(トン・年、推定))× 価格 2.67(1 トンあたりの売上(十万円・名目))→ 売上 48 億円・営業利益 0 億円。1.8 万トン × 1 トン 27 万円、利益率 −1%
- ペットケア製品の受託生産:数量 2.0(ペットシーツなどの生産枚数(億枚・年))× 価格 438(1 枚あたりの売上(銭・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 −1 億円。2 億枚 × 1 枚 438 銭、利益率 −10%(償却が重く残る)
倍率:赤字なので PBR で測る。床は今の自己資本 77 億円に掛け、工場の土地・設備の売却価値の税後から借入を引いた残り(約 10 億円)を上限とした。
確率:売上の 2 割強を 1 社に頼り、新工場もその 1 社のために建てた。相手が調達を切り替えれば一気に崩れるので、普通の素材会社より悲観を厚めに置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
不織布
パルプ不織布(クッキングペーパー・ドリップ吸収シート)と化合繊不織布(紙おむつ・ペットシーツの表面材)。
| 数量不織布の出荷量(トン・年、推定) | 価格1 トンあたりの売上(十万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,000 | 6.77 | 68 | 4 |
| 10 年後 中立 | 10,300 | 9.08 | 93 | 5 |
取り方:品目別の数量は開示が無いので、売上 67.7 億円をパルプ・化合繊の不織布の 1 トン 68 万円前後と見て約 1 万トンと推定(推定)。営業利益は全社 4.3 億円を売上と利益率の差で割り振った推定。
衛生向け原紙
紙おむつ・ペットシーツの包み紙、おしぼり用などの薄い衛生用紙。
| 数量衛生用紙の出荷量(トン・年、推定) | 価格1 トンあたりの売上(十万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25,000 | 2.14 | 53 | 2 |
| 10 年後 中立 | 23,000 | 2.86 | 66 | 2 |
取り方:売上 53.4 億円を薄葉の衛生用紙 1 トン 21 万円前後と見て約 2.5 万トンと推定(推定)。営業利益は割り振りの推定。
ペットケア製品の受託生産
2027 年 4 月に始めるユニ・チャーム向けのペットシーツなどの受託生産(新しい岐阜工場)。
| 数量ペットシーツなどの生産枚数(億枚・年) | 価格1 枚あたりの売上(銭・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 350 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 7.0 | 469 | 33 | 2 |
取り方:2027 年 4 月開始のため今は 0。新設備 44 億円の規模から、成熟時に年 7 億枚前後、1 枚 350 銭前後の受託単価と推定(推定)。
リスクと懸念
最大の顧客への依存
ユニ・チャーム向けが売上の 2 割強を占め、新工場もその受託のために建てた。相手が調達先を変えたり、海外の工場へ移したりすれば、売上と稼働が一度に落ちる。取引の条件も相手に決められやすい。
原料と燃料の値上がり
パルプ・化学繊維・重油や電気の値段が上がると、値上げが通るまでの間に利益が消える。2022/03 期の大きな赤字は原燃料の急騰と重なった。中東の情勢で前期は業績予想を出せなかったほどだ。
新工場の立ち上げ
44 億円の設備は時価総額を上回る。完成は当初の 2026 年 12 月から 2027 年 3 月にずれた。立ち上げが遅れたり、量が計画に届かなかったりすれば、年 3 億円近い償却と利払いがそのまま利益を削る。
金利と借入
設備資金をタームローンで賄うので、純負債は 25 億円前後に膨らむ。借り換えの金利が 3.5% 前後へ上がれば、利払いは今の数倍になる。営業利益 5 億円前後の会社には軽くない。
輸入品との値段の争い
化学繊維の不織布は、中国や韓国の大手が量と値段で攻めてくる。表面材の品質の差が縮めば、国内の衛生用品メーカーは安い輸入品に切り替えやすい。
今後の分かれ目
- 2028/03 期に受託が計画どおり立ち上がり、売上 145 億円前後で営業利益率が 5% を超えたら
- やや楽観の筋書きに近づく。受託の稼働と利益率が数年続くかを見て確率を楽観側に寄せる。
- ユニ・チャーム向けの売上比率が下がる、または受託の量の見直しが出たら
- 悲観側の筋書きの確率を上げる。新工場の減損の可能性も見る。
- パルプや燃料が再び急騰し、値上げが半年以上遅れたら
- やや悲観の姿が現実になる。2022/03 期のような赤字の再来もありうる。
- 自社ブランドの Kireine や産業向けの不織布が売上の 1 割を超えたら
- 顧客 1 社への寄りが薄まり、値決めの弱さも和らぐ。中立の利益率を上げてよい。
- 同業や顧客による買収・資本提携の話が出たら
- 時価総額が自己資本の半分以下なので、買収の値段は今の時価総額を上回りやすい。ただし本質の稼ぐ力は変わらない。
見ておくもの
- 新しい岐阜工場の稼働と受託の売上(2027 年 4 月以降)
- ユニ・チャーム向けの売上比率
- 営業利益率とパルプ・燃料の値段の差
- 純負債と借り換えの金利
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PBR から置かず、事業の ROE が k 9.0% を下回る(中立 3.8%)ので正当化 PER の上限 1÷k=11.1 倍から、利益の質に応じて 8.5〜9.5 割で置いた。時価総額が自己資本の半分以下なのは割安の根拠にしていない。悲観は工場の売却価値の税後から借入を引いた床で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→11.11 倍・やや楽観 PER 10→11.11 倍・中立 PER 9.5→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 1.5%。同業の特殊紙の会社(9.5%)より循環は小さい用途だが、顧客 1 社への寄りを寿命で見た。