結論
中越パルプ工業は、新聞用紙と印刷用紙を軸に、パルプと売電も手がける製紙の中堅だ。売上は約 1,100 億円。富山の高岡と鹿児島の川内に主力の工場がある。
筆者の結論は「やや割高」だ。いちばんの理由は、稼ぐ力が資本コストに届かないこと。営業利益は売上の 2〜3% で、純資産に対する利益率は過去 10 年の中央値で 2.5% しかない。帳簿の純資産は、額面どおりの価値にならない。
会社は 2030 年度に営業利益 80 億円、ROE 8% を掲げる。紙の需要減を値上げと拡販で埋め、費用を削り、家庭紙や特殊紙で構成を変える筋書きだ。方向は妥当だが、前の計画も営業利益 40 億円を掲げて届かなかった。
追い風もある。日本製紙の八代工場が被災し、新聞用紙の代替生産を引き受けた。同業の撤退で、中越の工場は埋まりやすい。ただ、足元の収益は原木チップや重油の高騰で薄い。
筆者は、10 年後の中立を営業利益 50 億円ほどと見る。計画の 8 割に届かない水準だ。借り換えで利払いが増える分も重い。10 年の筋書きを確率で重みづけした本質価値は、今の時価総額を 3 割ほど下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点でまず見るのは、株主の手元に残る利益だ。中越パルプはここが弱い。
減価償却費は年 61 億円ほど。営業利益は 27 億円だ。設備を回し続けるだけで稼ぎが消え、さらに脱炭素の投資が数百億円控えている。帳簿の利益と、株主が自由に使える現金は離れている。
次に資本の使い方を見る。ROE が資本コストを大きく下回る状態が長い。それでも会社は配当を増やし、設備に資金を向ける。事業に再投資しても、借りた金の費用を稼げない時期が続いてきた。投資の中身が、これから問われる。
安全域はどうか。今の時価総額は自己資本の半分に満たない。一見すると割安だが、ROE が資本コストに届かない会社の純資産は、額面の価値を持たない。
10 年後も存在し、今より強いか。筆者の答えは「存在はするが、強くなると言い切れない」だ。木質バイオマス発電と自前パルプは確かな資産だが、本業の紙は縮み続ける。確信を持てない事業には、安全域を厚くとる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、紙とパルプの製造だ。連結の売上の約 8 割を占める。
1 つ目はグラフィック用紙。新聞用紙と印刷用紙で、売上の半分を占める本業だ。高岡と川内で作る。需要は毎年 5〜9% 縮んでおり、利益はほぼ出ていない。
2 つ目は、紙の残りの用途。段ボール原紙などの包装用紙、特殊紙、衛生用紙(家庭紙)だ。2024 年 2 月に高岡で家庭紙の新しい抄紙機が動き出した。フル生産が続く。脱プラスチックで紙の包装が選ばれる流れにも乗る。
3 つ目は外販のパルプ。川内の工場が、紙にしない分を売る。価格は海外の市況と円相場で動き、利益の波が大きい。
4 つ目は発電。木質バイオマスで電気を作って売る。川内の発電所は最大 2.4 万キロワット級で、固定価格での買い取りに支えられ、利益率は 1 割近い。
最後に、紙袋・紙管などの加工、木材チップ、造林、機械の施工がある。セルロースナノファイバー、略して CNF(木を細かくほぐした軽くて強い新素材)の事業もここだ。化粧品やはんだ材料で採用が始まったが、まだ売上の 1% 程度にとどまる。
売り先は紙の卸に偏る。上位 3 社で売上の約 46% を占め、いずれも紙パルプ商社系だ。
優良さと弱いところ
事業の質は「普通」から「やや弱い」だ。
強みは三つある。一つ目は、王子ホールディングスが約 2 割を持つ株主として控えること。合弁の工場もあり、供給を守る業界の協力関係に入りやすい。八代工場の被災では、王子・大王製紙と並んで新聞用紙の代替生産を引き受けた。二つ目は、川内が持つ木質バイオマス発電と、自社で作るパルプ。電気とパルプを自前で持てば、原料と電力の高騰に耐えやすい。三つ目は自己資本比率が 5 割と、同業の中で厚いことだ。
弱みは値決め力にある。新聞用紙も印刷用紙も、買い手の需要が縮む中で値上げを繰り返してきた。上げるたびに紙離れが進む。大手に比べ規模も小さく、買い手の商社に価格を押される。
資本効率も弱い。ROE は過去 10 年の中央値で 2.5%、最近の最高でも 6.7% だ。減価償却費は年 61 億円ほどあり、営業利益の 2 倍を超える。設備を維持するだけで、稼ぎの大半が消える。
合弁の失敗もある。王子との合弁でボード紙を作る OCIB は、操業の不調で 2024 年度に費用が 2 億円悪化した。経営が資本を配るときの甘さを示す例だ。
堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるものは、バイオマス発電と自前のパルプくらいだ。強い堀とは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の紙は、構造的な縮小の途中にある。
日本製紙連合会の見通しでは、2026 年の紙・板紙の内需は 1,998.5 万トンと、集計開始以来初めて 2,000 万トンを割る。グラフィック用紙は 592 万トンで 6.8% 減。新聞用紙は 126 万トンで 9.4% 減り、14 年連続のマイナスだ。部数の減少と、情報の取り方の変化が背景にある。
一方、包装用紙の減り方は緩い。通販と食品の需要が支え、プラスチックから紙への切り替えが追い風になる。家庭紙は紙の中で唯一、プラスの伸びを見込む。ただ輸入紙の攻勢が強まっている。
競争の構図は、大手の王子ホールディングスと日本製紙が上にいて、大王製紙・北越コーポレーション・中越パルプ工業が中堅として続く。輸入紙は輸送費の壁で、まだ限られる。印刷用紙では、中国からの輸出圧力が強まっている。
需要が縮む中で、各社は抄紙機を止めて能力を減らしてきた。他社が撤退すれば、残る工場の稼働率が上がり、値上げもしやすくなる。八代工場の被災は、その流れを一時的に早めた。
コスト面では、原木チップ・重油・薬品の高騰が利益を削る。今期の計画では、一過性の悪化要因を 32 億円と見ている。
資本政策と M&A
資本政策は、配当を守りながら設備の更新と脱炭素に資金を回す形だ。
中期経営計画 2030 は、5 年間で設備に約 700 億円を投じる。原資は営業キャッシュ約 510 億円と、借入約 240 億円。株主還元は約 80 億円で、連結配当性向 30% と連結 DOE(自己資本に対する配当の率)2.5% を指標にする。今期の配当予想は前期から 3 割強の増配だ。
筆者は、この還元の水準を 10 年続けても、利益から無理なく出せると見る。DOE を下限に置く方針で、利益が減る年も配当は急には減らない。ただ、その分は借金が増える。
政策保有株は、2031 年 3 月末までに時価の約 3 割、30 億円ほどを減らす。持ち合い株の配当は利益に入っている。売れば受取配当が減るので、価値は別に足さない。
買収の側に回る余地は小さい。合弁や外部連携を検討するとしているが、対象は決まっていない。買われる側では、王子が約 2 割の筆頭株主だ。ただ、関係は協力が中心で、TOB の動きは見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
縮む市場の中で、勝ち残る側に回りつつある。大手が新聞用紙の工場を止め、八代工場も被災した。残る工場の稼働率は上がり、値上げもしやすい。会社はグラフィック用紙の売上比率を 51% から 43% へ下げ、家庭紙と特殊紙で埋める。
家庭紙の新しい機械は、立ち上がり直後からフル生産だ。衛生用紙は数量も金額も前年を上回った。脱プラスチックの流れで、包装用紙と耐油紙の引き合いも強い。
費用面では、重油とチップの高騰が一過性のものなら、今期見込む 32 億円の悪化要因が消えるだけで、営業利益は 55 億円まで戻る。中計の 80 億円は、販売強化 17 億円・費用削減 25 億円・構成転換 11 億円の積み上げで、一つずつ手が届く数字だ。
配当も厚い。DOE 2.5% を下限に置き、今期は前期から 3 割強増やす。自己資本比率は 5 割で、倒れる心配は小さい。王子という後ろ盾もある。
新聞用紙の最大手の日本製紙が八代で止まった今、残る工場は貴重だ。代替生産を引き受けた実績は、顧客との関係を深める。紙の需要が縮んでも、供給の側がそれ以上に絞られれば、残った会社の利益は厚くなる。
慎重な見方
前の計画は営業利益 40 億円・ROE 5% を掲げ、届かなかった。今回の 80 億円は、足元の 27 億円の 3 倍だ。紙の需要は毎年縮み、値上げのたびに紙離れが進む。八代工場の代替生産は、日本製紙が復旧すれば消える一時需要にすぎない。
コストの重さも変わらない。償却費は年 61 億円で営業利益の 2 倍。そのうえ、設備に 5 年で約 700 億円を投じる計画だ。営業キャッシュで足りず、借入は約 240 億円増える。借金が増えれば、借り換えで金利が 3.5% 前後に上がる。利払いが増え、利益はさらに削られる。
合弁の OCIB のように、投資が不調に終わる例もある。CNF は採用が増えても、売上はまだ 1% ほど。新規事業が利益に効くのは、計画の後半の話だ。
売り先も偏る。紙パルプ商社系の上位 3 社で売上の約 46% を占め、価格交渉は不利だ。大手より小さい規模で、同じ脱炭素の投資を背負う。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。理由は三つ。第一に、過去の計画が届いていない。第二に、償却が重く、利益が厚くなっても現金に残りにくい。第三に、投資の増える分は借金で賄うので、金利の上がる世界では利益の増えが小さくなる。
ただし、強気の見方にも確かな材料がある。同業の撤退で稼働率が上がり、家庭紙と包装用紙が伸びる。倒れる心配が小さい財務と、王子の後ろ盾も評価できる。そこで悲観の確率は 15% にとどめた。
確率は、中立を 37%、やや悲観を 28%、悲観を 15% に置いた。楽観は 5%、やや楽観は 15%。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,262 円285 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,108 円139 億円)。 今の値に割り戻すと 1,706 円215 億円、今との差 −19.1%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 6,180 円777 億円 | 1,908 円240 億円 | +283.5% | +14.4% | 404 円51 億円 |
| やや楽観 | 15% | 4,362 円549 億円 | 1,511 円190 億円 | +178.5% | +10.8% | 881 円111 億円 |
| 中立 | 37% | 2,454 円309 億円 | 1,272 円160 億円 | +76.7% | +5.9% | 1,379 円173 億円 |
| やや悲観 | 28% | 971 円122 億円 | 954 円120 億円 | −8.7% | −0.9% | 539 円68 億円 |
| 悲観 | 15% | 795 円100 億円 | 318 円40 億円 | −47.2% | −6.2% | 167 円21 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,262 円285 億円 | 1,108 円139 億円 | +59.8% | +4.8% | 3,370 円424 億円 |
今の株価時価総額 2,109 円265 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 5% 楽観:計画の 80 億円を超え、家庭紙と特殊紙が育つ 利益 68 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 6,180 円777 億円
同業の撤退が続き、新聞用紙の稼働率が 9 割を保つ。当社の国内シェアは 6% 台から 8% に上がり、紙の需要が年 4% 縮んでも出荷量は今の 0.86 倍にとどまる。価格は物価より少し強く 1.40 倍。
家庭紙は新しい機械に続く増設を進め、包装・特殊紙の出荷は 1.4 倍になる。外販パルプも 1.3 倍に伸びる。CNF や外部連携の新規事業は、売上 100 億円規模の事業に育つ。
営業利益は 100 億円を超え、計画の 80 億円を上回る。借金は設備投資で増えるが、利益の増えが利払いを上回る。純利益は 68 億円、ROE は 8% 台に乗る。
- グラフィック用紙(新聞・印刷):数量 32.8(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 21(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 674 億円・営業利益 24 億円。出荷 0.86 倍、価格 1.40 倍。利益率 3.5%
- 包装・特殊紙・衛生用紙:数量 29.9(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 21(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 636 億円・営業利益 41 億円。出荷 1.42 倍、価格 1.40 倍。利益率 6.5%
- 外販パルプ:数量 14.8(外販量(万トン・年))× 価格 16(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 236 億円・営業利益 20 億円。出荷 1.3 倍、価格 1.45 倍。利益率 8.5%
- 発電(売電):数量 280(売電量(GWh・年))× 価格 23(1 GWh あたり売上(百万円・名目))→ 売上 65 億円・営業利益 5 億円。売電量横ばい、価格 1.15 倍。利益率 7%
- その他(加工・チップ・造林・CNF・施工):数量 263(実質売上(億円・今の値段))× 価格 1.34(物価指数(今=1.0))→ 売上 352 億円・営業利益 16 億円。実質 1.5 倍、物価 1.34 倍。利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 68 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 777 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気の見方が全部当たる必要がある。同業の撤退が続き、費用の高騰が一服し、家庭紙・包装・パルプが同時に伸びる。5% を置いた。
やや楽観 15% やや楽観:計画の 7〜8 割に届く 利益 48 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 4,362 円549 億円
同業の工場停止で稼働率が上がり、値上げもある程度通る。グラフィック用紙は需要が年 4.5% 縮み、当社のシェアは 7.5% へ上がる。出荷は今の 0.78 倍、価格は 1.37 倍。
家庭紙と特殊紙が伸びて、包装・特殊紙の出荷は 1.3 倍。パルプは 1.2 倍。重油とチップの高騰は収まり、費用削減も計画の 7 割が実現する。
営業利益は 76 億円前後で、計画に近い。借入は設備投資で増えるが、利益が厚いため利払いの増えは中立より小さい。純利益は 48 億円、ROE は 6% 台に乗る。配当は DOE を満たしつつ、利益に応じて増える。
- グラフィック用紙(新聞・印刷):数量 29.7(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 20(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 599 億円・営業利益 15 億円。出荷 0.78 倍、価格 1.37 倍。利益率 2.5%
- 包装・特殊紙・衛生用紙:数量 27.4(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 21(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 570 億円・営業利益 30 億円。出荷 1.3 倍、価格 1.37 倍。利益率 5.2%
- 外販パルプ:数量 13.7(外販量(万トン・年))× 価格 15(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 211 億円・営業利益 15 億円。出荷 1.2 倍、価格 1.40 倍。利益率 7%
- 発電(売電):数量 280(売電量(GWh・年))× 価格 23(1 GWh あたり売上(百万円・名目))→ 売上 63 億円・営業利益 5 億円。価格 1.12 倍。利益率 7.5%
- その他(加工・チップ・造林・CNF・施工):数量 228(実質売上(億円・今の値段))× 価格 1.34(物価指数(今=1.0))→ 売上 305 億円・営業利益 12 億円。実質 1.3 倍、物価 1.34 倍。利益率 4%
倍率:事業の純利益 48 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 549 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:八代の代替需要と家庭紙の伸びが追い風で、計画の 7〜8 割まで届く可能性は十分ある。ただ過去の計画が届いていないので、中立より少し低い 15% とした。
中立 37% 中立:営業利益 50 億円まで戻り、そこで頭打ち 利益 27 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,454 円309 億円
グラフィック用紙は需要が年 5% ほど縮み、10 年で 0.6 倍になる。同業の撤退でシェアは 6% 台から 7% へ上がり、当社の出荷は今の 0.7 倍。価格は物価並みに 1.34 倍。利益率は、費用削減で 1.5% を保つ。
家庭紙と包装・特殊紙は出荷が 1.18 倍に伸び、利益率は 4%。外販パルプは 1.08 倍。バイオマス発電は固定価格の買い取りが物価に連動せず、2035 年前後の期間満了後も市場価格に近づくので、価格は 1.10 倍にとどまる。
営業利益は約 49 億円。償却は新しい機械の分が加わり、10 年目で約 72 億円になる。物価の 1.34 倍(約 82 億円)ほどには増えない。ただ脱炭素の投資は建築費の上昇で膨らみ、借入は 230 億円ほど増える。利払いは今より 15 億円重い。純利益は 27 億円。
- グラフィック用紙(新聞・印刷):数量 26.7(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 20(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 525 億円・営業利益 8 億円。出荷 0.7 倍、価格 1.34 倍。利益率 1.5%
- 包装・特殊紙・衛生用紙:数量 24.8(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 20(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 506 億円・営業利益 20 億円。出荷 1.18 倍、価格 1.34 倍。利益率 4%
- 外販パルプ:数量 12.3(外販量(万トン・年))× 価格 15(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 181 億円・営業利益 9 億円。出荷 1.08 倍、価格 1.34 倍。利益率 5%
- 発電(売電):数量 280(売電量(GWh・年))× 価格 22(1 GWh あたり売上(百万円・名目))→ 売上 62 億円・営業利益 4 億円。売電量横ばい、価格 1.10 倍(固定価格で物価に連動しない)。利益率 7%
- その他(加工・チップ・造林・CNF・施工):数量 193(実質売上(億円・今の値段))× 価格 1.34(物価指数(今=1.0))→ 売上 258 億円・営業利益 8 億円。実質 1.1 倍、物価 1.34 倍。利益率 3%
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 309 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気と慎重の議論の落としどころ。会社の計画 80 億円の 6 割ほどで、ここ 12 年の最高の 62 億円も下回る。償却の重さ、利払いの増え、過去の計画の未達を考え、中立に最も厚く 37% を置いた。
やや悲観 28% やや悲観:値上げが費用の高騰に届かず、利益が細る 利益 11 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 971 円122 億円
グラフィック用紙の需要が年 6% 縮み、八代の代替需要も消える。価格は費用の上昇に届かず 1.25 倍にとどまる。固定費が重く、国内の紙は赤字になる。
家庭紙は大手との競争で単価が伸びず、包装・特殊紙の利益率は 3%。外販パルプは円高と海外の安値で、価格は 1.2 倍にとどまる。脱炭素の投資は縮小するが、借入は 150 億円ほど増える。
営業利益は 23 億円で、今とほぼ同じ名目額。物価を除けば 4 分の 3 に細る。利払いは今より 12 億円ほど重くなり、純利益は 11 億円まで下がる。配当は DOE の下限を守れず、引き下げに向かう。
- グラフィック用紙(新聞・印刷):数量 21.0(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 18(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 385 億円・営業利益 −4 億円。出荷 0.55 倍、価格 1.25 倍。利益率 -1%
- 包装・特殊紙・衛生用紙:数量 22.1(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 19(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 420 億円・営業利益 13 億円。出荷 1.05 倍、価格 1.25 倍。利益率 3%
- 外販パルプ:数量 11.4(外販量(万トン・年))× 価格 13(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 150 億円・営業利益 6 億円。出荷横ばい、価格 1.20 倍。利益率 4%
- 発電(売電):数量 266(売電量(GWh・年))× 価格 21(1 GWh あたり売上(百万円・名目))→ 売上 56 億円・営業利益 3 億円。売電量 0.95 倍、価格 1.05 倍。利益率 6%
- その他(加工・チップ・造林・CNF・施工):数量 175(実質売上(億円・今の値段))× 価格 1.25(物価指数(今=1.0))→ 売上 219 億円・営業利益 4 億円。実質横ばい、価格 1.25 倍。利益率 2%
倍率:ROE は 2% 弱で資本コストを大きく下回る。稼ぐ力は純利益 ÷ k の約 119 億円。設備と政策保有株の売却余地が下支えするので、上限 1÷k の約 10.8 倍に近い 11.1 倍とした。PBR は約 0.2 倍で、中立より低い。
確率:過去の計画は未達で、償却と利払いが重い。紙の需要減が速まり、値上げが費用の高騰に届かない筋書きは、中立の次に起きやすい。28% を置いた。
悲観 15% 悲観:紙の縮小が速く、設備と借金だけが残る 利益 −30 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 795 円100 億円
グラフィック用紙の需要が年 8% 以上で縮み、八代工場が復旧して代替需要が消える。当社の出荷は今の 0.4 倍、価格は物価に負けて 1.12 倍。国内の紙は大きな赤字になる。
包装・特殊紙も大手との価格競争で赤字になり、パルプは市況の安値で利益が出ない。高岡の機械を止め、減損と人員削減の費用が出る。CNF や新規事業は育たない。
営業利益は約 -21 億円。借入は 250 億円ほど増え、金利は 3.5% 超まで上がる。純損益は 30 億円の赤字。株主に残る価値は、売れる資産と減損後の自己資本の 25% 前後に縮む。
- グラフィック用紙(新聞・印刷):数量 15.2(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 16(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 251 億円・営業利益 −15 億円。出荷 0.4 倍、価格 1.12 倍。利益率 -6%
- 包装・特殊紙・衛生用紙:数量 19.4(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 17(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 339 億円・営業利益 −3 億円。出荷 0.92 倍、価格 1.15 倍。利益率 -1%
- 外販パルプ:数量 10.3(外販量(万トン・年))× 価格 12(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 124 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.9 倍、価格 1.10 倍。利益率 0%
- 発電(売電):数量 252(売電量(GWh・年))× 価格 20(1 GWh あたり売上(百万円・名目))→ 売上 51 億円・営業利益 1 億円。売電量 0.9 倍、価格横ばい。利益率 2%
- その他(加工・チップ・造林・CNF・施工):数量 158(実質売上(億円・今の値段))× 価格 1.12(物価指数(今=1.0))→ 売上 176 億円・営業利益 −4 億円。実質 0.9 倍、価格 1.12 倍。利益率 -2%
倍率:赤字で稼ぐ力はなく、償却前利益では純有利子負債 約 600 億円を返し切れない。株主に残るのは、政策保有株と社有林の売却余地、減損後の自己資本の一部。減損後の自己資本 400 億円の 25% に置いた。EV÷営業利益は意味を持たない水準。
確率:構造的に負ける筋書き。同業の撤退が進まず、需要が速く縮み、脱炭素の投資が重荷になる。自己資本比率が 5 割あり、王子の後ろ盾があるので、日本製紙・三菱製紙(16〜18%)より低い 15% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
グラフィック用紙(新聞・印刷)
新聞用紙と印刷用紙。高岡・川内で作る本業で、需要が毎年縮む。
| 数量当社の出荷量(万トン・年) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 38.1 | 15 | 560 | −1 |
| 10 年後 中立 | 26.7 | 20 | 525 | 8 |
取り方:2026 年の国内グラフィック用紙の内需は 592 万トン(日本製紙連合会)。当社の紙の生産は 60 万トン(有報)で、売上構成の 51%(中計 2030)をグラフィックとして 560 億円、1 トン約 14.7 万円とおくと約 38 万トン、国内シェア 6% 台。推定。営業利益は紙・パルプ全体の 17 億円から、包装・衛生用紙とパルプの分を引いた残りで、ほぼゼロ。
包装・特殊紙・衛生用紙
段ボール原紙などの包装用紙、特殊紙、板紙、家庭紙。減り方が緩く、伸びる余地がある。
| 数量当社の出荷量(万トン・年) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 21.1 | 15 | 320 | 10 |
| 10 年後 中立 | 24.8 | 20 | 506 | 20 |
取り方:紙の販売額 883 億円からグラフィック分 560 億円を引いた約 320 億円を、紙の生産 60 万トンの残り約 21 万トンで割り、1 トン約 15 万円とした(推定)。家庭紙の新しい機械はフル生産。営業利益は紙・パルプ全体 17 億円からグラフィックとパルプを引いた約 10 億円。
外販パルプ
自社の紙に使わず売るパルプ。川内の工場で作る。市況と円相場で値が動く。
| 数量外販量(万トン・年) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.4 | 11 | 125 | 8 |
| 10 年後 中立 | 12.3 | 15 | 181 | 9 |
取り方:パルプの販売額は 121.5 億円(有報)。川内の外販が年 6 万トン強、高岡分などを合わせて約 11 万トン、1 トン約 11 万円とした(推定。為替は 150 円)。営業利益は残りの推定。
発電(売電)
木質バイオマスなどの電気を売る。固定価格での買い取りが中心で、利益率が高い。
| 数量売電量(GWh・年) | 価格1 GWh あたり売上(百万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 280 | 20 | 57 | 5 |
| 10 年後 中立 | 280 | 22 | 62 | 4 |
取り方:発電セグメントの売上 56.6 億円・営業利益 5.1 億円(有報)。売上を固定価格での買い取り単価(1 キロワット時あたり二十円前後と推定)で割り、売電量を約 280 GWh と推定した(開示は無い)。単価は契約で固定され、物価に連動しないので、価格の伸びは物価より低く置く。
その他(加工・チップ・造林・CNF・施工)
紙加工品、木材チップ、造林、機械の施工、CNF。幅広い小さな事業の集まり。
| 数量実質売上(億円・今の値段) | 価格物価指数(今=1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 175 | 1.00 | 175 | 5 |
| 10 年後 中立 | 193 | 1.34 | 258 | 8 |
取り方:その他セグメントの売上 175 億円・営業利益 4.9 億円(有報)。製品が多様で数量の開示が無いため、今の値段で見た売上を数量とし、物価の分を価格の指数に分けた。セグメント間取引を含むため、5 セグメントの売上計は連結より約 130 億円多い(連結では消去される)。
リスクと懸念
グラフィック用紙の縮小が計画より速い
新聞用紙は 2026 年に 9.4% 減り、14 年連続のマイナスだ。印刷用紙も中国からの輸出圧力を受ける。縮小が年 8% 以上に加速し、工場の集約が間に合わなければ、稼働率が落ちて固定費が重くなる。設備の除却損と人員削減の費用も出る。売上の半分を占める本業なので、影響は大きい。
八代工場の代替需要は一時的
日本製紙の八代工場が被災し、中越は王子・大王製紙とともに新聞用紙の代替生産を引き受けた。これは復旧までの需要で、再開すれば消える。逆に再開が遅れれば、稼働率の追い風は長引く。足元の利益に織り込みすぎると、中計の達成を誤って見る。
償却と投資の重さ
減価償却費は年 61 億円で営業利益の 2 倍を超える。中計は 5 年で設備に約 700 億円を投じ、うち脱炭素と新規事業に約 335 億円を充てる。営業キャッシュ約 510 億円では足りず、約 240 億円を借りる。投資の成果が出なければ、償却と利払いだけが残る。
金利の上昇
有利子負債 333 億円のうち、1 年以内の返済が 219 億円ある。借り換えのたびに金利が 3.5% 前後へ上がる。今の水準の借金だけでも、10 年で利払いが 7 億円増える。設備投資の借入が加われば、増えは 15 億円ほどになる。営業利益が 50 億円の会社には重い。
原燃料の高騰と値上げの限界
原木チップ、重油、薬品の高騰で、今期の計画は 32 億円の悪化を見込む。値上げで転嫁を試みるが、紙の買い手は商社系の上位 3 社に偏る。価格交渉の力は弱く、上げるたびに紙離れも進む。費用の上昇に価格が届かなければ、利益率はさらに薄くなる。
合弁事業と新規事業の不調
王子との合弁 OCIB は操業の不調が続き、2024 年度に費用が 2 億円悪化した。CNF は化粧品や電子材料で採用が出始めたが、売上は 1% ほど。バイオリファイナリーやM&Aなどの新規事業は、中計の後半での事業化を想定する段階だ。投資額が先行し、収益が追いつかない恐れがある。
バイオマス発電の価格
川内の発電所は 2015 年 11 月に運転を始めた。固定価格での買い取りは、おおむね 20 年で終わる。2035 年前後には市場価格に近づくとみる。利益率が 1 割近い発電が、最も安定した稼ぎの柱であるだけに、期間満了後の価格が下がる影響は小さくない。
今後の分かれ目
- グラフィック用紙の内需の縮小が年 5% 以内に収まり、当社の稼働率が 9 割を保てたら
- 本業の赤字が止まり、中立の営業利益 50 億円の根拠が強まる。年 8% 以上に加速したら、やや悲観の確率を上げる。
- 2027 年度に営業利益が 40 億円を超え、重油とチップの高騰が収まったら
- 計画の 80 億円への道が見えてくる。中立から楽観寄りへ確率を少し移す。27 億円前後で止まれば、中立の営業利益を 40 億円台に下げて見る。
- 家庭紙の売上が増設を含めて 2028 年度までに今の 1.5 倍になったら
- 包装・特殊紙の出荷を伸ばす根拠が強まる。伸びが止まり、大手との価格競争で単価が下がれば、中立の利益率 4% が高すぎると見直す。
- 八代工場の再開が 2027 年度以降にずれ込んだら
- 代替需要が長引き、稼働率の追い風が続く。再開が早まれば、一時需要が消える前提で見直す。
- 国債金利が想定より上がり、借り換え金利が 5% 近くになったら
- 利払いが年 10 億円以上増え、純利益は中立でも 3 割以上減る。借入を抑え、投資を絞る動きが出るかを見る。
- 王子が持株を 3 割へ増やす、または TOB の動きが出たら
- 支配株主のもとで資本が配られる見通しが立つ。ただし筋書きの確率は変えず、少数株主への条件を見て判断する。
見ておくもの
- 日本製紙連合会の月次統計(新聞用紙・印刷用紙の内需と出荷)
- 営業利益の四半期の進み方と、今期計画の 23 億円(中東情勢などの一過性悪化を含む)の達成
- 家庭紙・包装用紙の販売数量と、高岡の新しい機械の稼働
- 営業キャッシュ・フローと設備投資の差、有利子負債と1年内返済
- 政策保有株の売却の進み(2031 年 3 月末までに時価の約 3 割)
- OCIB の黒字化と、CNF の売上
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の経済性だけで置いた。10 年後の中立は、純利益 27 億円・ROE 4% 台。ROE が資本コスト 8.75% に届かないので、正当化 PER の上限は 1÷k の約 10.8 倍。縮む紙・弱い堀・借金の増えは k の上乗せと残る割合 1/3 で見ているので重ねて引かず、同じ領域の会社(日本製紙・三菱製紙・北越)と同じ上限の約 9 割の 9.7 倍に置いた。市場の PER・PBR や今の株価からは逆算していない。今の株価が倍になっても半分になっても、この計算は動かない。純有利子負債が時価総額と同じ規模なので、EV÷営業利益でも確かめ、中立で約 16 倍に収まる。リースは、新リース会計基準で 2028/03 期から BS に載るが、工場中心の会社で影響は小さい。10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。償却は、今ある設備を取得時の値段のままとし、10 年目で約 72 億円(物価で一律 1.34 倍なら約 82 億円)と置いた。政策保有株の配当は利益に入っているので、価値を別に足していない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.75% を足した。赤字が続く会社ではなく、自己資本比率も 5 割あるので上乗せ(distress)は付けない。八代の代替需要の剥落、合弁 OCIB の不調、買い手の商社への偏りなど個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.75%。