結論
北越コーポレーションは、新潟と和歌山に工場を持つ中堅の製紙会社だ。印刷用紙と、食品や化粧品の箱に使う白板紙が柱で、パルプも売る。筆者の結論は「割高」である。いちばんの理由は、10 年かけて利益が増えても、株主の取り分が資本コストに届かないことだ。
今期の営業利益は 75 億円。前の中期計画が最終年度に掲げた 200 億円には遠い。会社は来期を 30 億円と見ている。新しい計画は 2029 年度に 240 億円を狙うが、前の計画も届かなかった。
国内の印刷用紙は、毎年 5% ほど細る。輸出を伸ばして穴を埋める筋書きだが、米国向けは関税と値下がりの影響を受けやすい。パルプも市況に利益を左右される。
救いは財務の体力だ。自己資本比率は 6 割ある。日本製紙のような危うさはない。大王製紙の株も約 4 分の 1 持つ。ただこの株は、売って現金にしてこそ価値になる。
10 年後の筋書きを確率で重ねると、本質価値は今の時価総額の半分に届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家が最初に見るのは、持ち続けて手元に残る利益だ。北越は、そこが弱い。
工場は大きく、古い。設備を維持するだけで、利益の大半が消える。10 年の利益の合計は、自己資本の 3 割強にとどまる。そのまま蓄えても、資本コストに届く稼ぎにはならない。
次に、お金の使い方を見る。大王製紙株の持ち合いに、長く資金を寝かせてきた。会社は 2026 年に、持ち合いを下げると決めた。この向きは評価できる。だが売った資金を、借金の返済に使うのか、成長投資か、株主に返すのか。そこがまだ見えない。
安全域はある。自己資本比率が高く、倒れる会社ではない。しかし払ってよい値段は、稼ぐ力から決まる。ROE が資本コストに届かない会社の自己資本は、帳簿の額どおりの価値にならない。
筆者の見立ては「続くが、増えない」だ。紙は縮み、白板紙とパルプが支える。大王製紙株の売却益を除けば、10 年先の姿に確信を持てない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は紙とパルプで、売上の 9 割を占める。
1 つ目は洋紙。印刷用紙・情報用紙・包装用紙・特殊紙で、売上の半分を超える。新潟工場が主力だ。国内で縮む本業で、輸出が 3 割近くまで増えている。
2 つ目は白板紙。食品の箱、化粧品の箱、トレーディングカードに使う厚い紙だ。高級白板紙に強く、需要は洋紙よりずっと底堅い。
3 つ目はパルプ。自社の紙に使う分のほか、外にも売る。カナダの子会社もここに入る。市況で利益が大きく振れる。
4 つ目はパッケージング・紙加工。売上は 174 億円と小さいが、紙容器の Halopack や紙カップを伸ばす場だ。会社は、原紙から容器の成形まで自前で一貫して作る形を目指している。
ほかに木材、エネルギー、倉庫などがある。工場は新潟・和歌山・市川・勝田などに自前で持ち、賃借への依存は小さい。
開示のセグメントは、紙パルプと紙加工の 2 つだけだ。利益は紙パルプで 60 億円、紙加工で 6 億円。紙パルプの中の洋紙・白板紙・パルプの内訳は開示がなく、この分析では推定で分けた。
優良さと弱いところ
事業の質は「そこそこ」と見る。強みはある。だが堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。
強みの 1 つは、白板紙と特殊紙の品ぞろえだ。大手が手を出しにくい小ロットの高級品で、値段に差が出る。もう 1 つは、財務の厚さ。自己資本比率は 6 割ある。
弱みは資本効率だ。ROE(自己資本利益率)は過去 10 年の中央値で 5% 台、今期は 3% を切った。資本コストの 9% 前後には、ほとんどの年で届いていない。
値決めも弱い。印刷用紙は王子・日本製紙との横並びで、値上げは原燃料の転嫁にとどまる。
経営には課題が残る。18 年続いた前社長の再任に、2023 年の総会で 35% が反対した。大王製紙との相互持ち合いは、長く投資家の批判を受けた。2026 年 4 月に生え抜きの若本社長へ代わり、前社長は会長として資本政策を見る。事業の改善が進むかが試される。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の洋紙は構造的に縮んでいる。2026 年の紙・板紙の内需は 1,998 万トンで、集計が始まってから初めて 2,000 万トンを割る見通しだ(日本製紙連合会)。新聞用紙は前年比 9% 減。ピークの 2000 年から 4 割減った。
筆者は、印刷用紙の縮みが年 5% ほど続くと見る。10 年で国内の需要は 6 割の水準になる。広告のデジタル化と人口減が、同じ向きに効く。
一方、板紙は底堅い。ネット通販と食品の包装が支える。白板紙は食品の一次容器とトレーディングカードで、むしろ伸びる余地がある。
国内の競争は王子と日本製紙が 2 強で、北越は上場の製紙会社で 5 番手にいる。輸出は海外の工場と値段で戦う。北越は洋紙の輸出比率を 27% から 38% に上げる。ただ米国向けは関税に弱い。
コストは古紙・パルプ・燃料・電力で、物価と一緒に上がる。値上げが遅れる期は、利益が一気に細る。2026 年 3 月期は海外パルプの市況が軟化して、利益を削った。
同業の再編は、設備を減らす方向で進む。残る側の価格決定力は上がる。北越は大王製紙との提携で、輸送や調達の費用を削っている。
資本政策と M&A
資本政策の最大の論点は、大王製紙との関係だ。
北越は大王製紙の株を約 25%(議決権で 24.8%)持つ。大王製紙は北越株を 1.4% 持つ。2026 年 3 月、両社は持ち分を対等な 20% 程度に寄せ、中期的には 5〜10% に下げると発表した。
筆者は、これを北越の株主にとって前向きな動きと見る。もたれ合いをやめれば、約 375 億円の株が現金に近づく。この額は北越の時価総額の 3 割近いが、売れば税がかかるので、筆者は税引き後の 7 割で数える。ただ売却の時期と値段は決まっていない。大王製紙は収益力が低く、株価が下がる余地もある。
還元は控えめだ。配当性向は 3 割前後で、自社株買いは目立たない。2023 年には、英国のファンドが自社株買いと社外取締役の過半を株主提案した。
中期計画は 4 年で 1,500 億円を投じる。うち 500 億円は M&A など戦略投資だ。買収で価値を壊さないかが気になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
洋紙の縮みは織り込み済みで、会社は手を打っている。輸出を 27% から 38% に上げる計画で、専任の営業本部も作った。印刷用紙は縮むが、設備を減らせば残る工場の稼働は保てる。
白板紙は食品容器とトレーディングカードで伸びる。高級品に強く、輸入品に置き換わりにくい。紙加工の Halopack と紙カップが加われば、原紙から容器まで稼げる。
大王製紙との提携は、輸送と調達で効果が出始めている。目標は 27 年 3 月期に 30 億円の増益だ。
財務は安全だ。自己資本比率は 6 割で、借金は小さい。大王製紙株の持ち合いは外に出て、約 375 億円が動く。借金返済や自社株買いに回せば、1 株の価値が上がる。
新社長は工場畑の生え抜きだ。コスト削減と稼働率の改善は得意分野になる。中計の営業利益 240 億円は、パルプ市況の戻りと輸出の伸びで、十分に狙える。原燃料の上昇も、値上げを通す体制が整ってきた。
慎重な見方
計画を信じにくい。前の中計は営業利益 200 億円を掲げて、実績は 75 億円だった。今期はさらに 30 億円と、会社自身が見ている。4〜6 月は前年の 2 割にまで落ちた。
輸出が頼みでは危ない。米国の関税、インドや中国の安い紙、為替の振れが重なる。汎用品の輸出は、値下がりに耐えられない。
パルプは市況商品だ。値上げを通しても、市況が崩れれば帳消しになる。
白板紙は有望だが、規模が小さい。洋紙の落ち込みを埋めきれず、利益は 10 年で増えにくい。紙加工の売上は 174 億円と、全体の 6% でしかない。
計画の中身も心もとない。投資 1,500 億円のうち、500 億円は使い道が決まっていない戦略投資だ。業績が弱い時の M&A は、割高な買い物になりやすい。
大王製紙株は、売れば現金になるとは限らない。相手は借金が重く、株価は低迷している。売る側が先に動けば、値が崩れる。売却先も限られる。
最後に ROE だ。5% 台の中央値は、資本コスト 9% 前後に届かない。10 年先に設備を更新するお金も要る。稼いだ利益のほとんどが、設備に消える。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。理由は 3 つある。会社の計画は、2 回続けて未達だった。国内の洋紙は縮む一方で、輸出の穴埋めは不確かだ。ROE が資本コストに届かない事業は、どんな回復でも時価総額に結びつきにくい。
強気の見方にも根拠はある。財務が厚く、白板紙が堅く、大王製紙株が現金に変わりうる。この 3 点があるので、悲観の確率は 14% にとどめた。
確率は、楽観 5%、やや楽観 15%、中立 38%、やや悲観 28%、悲観 14%。慎重側に少し寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 902 円1,433 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 238 円379 億円)。 今の値に割り戻すと 569 円903 億円、今との差 −32.3%、 期待の年率 +3.1%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 1,708 円2,713 億円 | 409 円650 億円 | +152.0% | +9.7% | 106 円168 億円 |
| やや楽観 | 15% | 1,403 円2,228 億円 | 353 円560 億円 | +108.9% | +7.6% | 263 円418 億円 |
| 中立 | 38% | 1,097 円1,743 億円 | 283 円450 億円 | +64.4% | +5.1% | 525 円833 億円 |
| やや悲観 | 28% | 597 円948 億円 | 189 円300 億円 | −6.5% | −0.7% | 220 円349 億円 |
| 悲観 | 14% | 159 円252 億円 | 31 円50 億円 | −77.4% | −13.8% | 27 円42 億円 |
| 加重平均 | 100% | 902 円1,433 億円 | 238 円379 億円 | +35.8% | +3.1% | 1,140 円1,812 億円 |
今の株価時価総額 840 円1,334 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 5% 楽観:輸出と白板紙が計画どおり伸びる 利益 190 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,708 円2,713 億円
輸出が計画どおりに進み、洋紙の出荷は今の 8 割に踏みとどまる。米国向けは 2 割を超え、インドでも特殊紙で売る。印刷用紙の工場は稼働が上がり、利益率が 5% に戻る。
白板紙は食品容器とカードで需要が伸び、出荷は 5% 増える。Halopack と紙カップが立ち上がり、紙加工の出荷は 7 割増える。パルプは市況が戻り、利益率は 8% に上がる。
営業利益は 250 億円台。会社が 2029 年度に掲げる 240 億円に届き、物価の分だけ上積みする。大王製紙の株は 5〜10% まで下げる途中で現金になり、借金返済と還元に回る。それでも ROE は 6% ほどで、資本コストには届かない。
- 洋紙(印刷・情報・包装・特殊紙):数量 95.0(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 18(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 1,734 億円・営業利益 87 億円。出荷は今の 0.83 倍、価格 1.40 倍。利益率 5%
- 白板紙:数量 65.1(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 14(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 911 億円・営業利益 64 億円。出荷 1.05 倍、価格 1.40 倍。利益率 7%
- パルプ(外販・海外):数量 65.0(外販・海外の販売量(万トン・年))× 価格 12(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 770 億円・営業利益 62 億円。販売 1.08 倍、価格 1.45 倍。利益率 8%
- パッケージング・紙加工:数量 20.0(加工品の出荷(原紙換算・万トン・年))× 価格 20(原紙 1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 406 億円・営業利益 28 億円。出荷 1.7 倍、価格 1.40 倍。利益率 7%
倍率:事業の純利益 186 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)262 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 2,520 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:輸出の伸びと市況の回復が重なる必要があり、計画が 2 回続けて未達だった実績を考えると、5% にとどめた。
やや楽観 15% やや楽観:輸出は計画の 8 割、白板紙は堅調 利益 150 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,403 円2,228 億円
輸出は計画の 8 割ほどで、洋紙の出荷は今の 8 割弱になる。国内の縮みを輸出が半分ほど埋める。価格は物価並みに上がり、利益率は 4% に戻る。
白板紙は出荷を横ばいで守り、食品容器の需要が下支えする。パルプは平均的な市況で、利益率は 6.5%。紙加工は 25% 増える。
営業利益は 190 億円ほどで、中期計画の 8 割に届く。国内の縮みは続くものの、設備の整理が進んで残る工場の稼働が上がり、利益が戻る。
大王製紙の株は 10% 台まで下がり、手取りで借金を減らす。還元は増えるが、ROE は 5% ほどにとどまる。会社の計画どおりには進まないが、悪い方向にも大きく振れない。
- 洋紙(印刷・情報・包装・特殊紙):数量 90.0(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 18(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 1,608 億円・営業利益 64 億円。出荷 0.78 倍、価格 1.37 倍。利益率 4%
- 白板紙:数量 62.0(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 14(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 849 億円・営業利益 51 億円。出荷 1.0 倍、価格 1.37 倍。利益率 6%
- パルプ(外販・海外):数量 62.0(外販・海外の販売量(万トン・年))× 価格 11(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 709 億円・営業利益 46 億円。販売 1.03 倍、価格 1.40 倍。利益率 6.5%
- パッケージング・紙加工:数量 15.0(加工品の出荷(原紙換算・万トン・年))× 価格 20(原紙 1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 298 億円・営業利益 18 億円。出荷 1.25 倍、価格 1.37 倍。利益率 6%
倍率:事業の純利益 146 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)262 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 2,036 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:輸出と市況がそこそこ噛み合う筋書き。財務の厚さと白板紙の堅さを評価して 15% を置いた。
中立 38% 中立:洋紙は 3 割弱縮み、白板紙とパルプが支える 利益 110 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,097 円1,743 億円
洋紙は国内が年 5% ほどで縮み、輸出は 3 割強まで増える。出荷は今の 75% になり、価格は物価並みの 1.34 倍。設備の整理で利益率は 3% を保つ。
白板紙は 5% 減にとどまり、価格は 1.34 倍。利益率は 5%。パルプは出荷が横ばいで、市況を平均すると利益率 5%。紙加工は 17 万トンに 4 割増える。
営業利益は 145 億円。中期計画の 240 億円の 6 割だ。縮む洋紙の穴埋めに、利益の伸びの大半が使われる。大王製紙の株は 20% 前後まで下げるが、時期は遅れる。ROE は 4% 弱で、10 年を通して資本コストを下回る。
- 洋紙(印刷・情報・包装・特殊紙):数量 86.0(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 17(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 1,503 億円・営業利益 45 億円。出荷 0.75 倍、価格 1.34 倍。利益率 3%
- 白板紙:数量 58.9(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 13(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 789 億円・営業利益 40 億円。出荷 0.95 倍、価格 1.34 倍。利益率 5%
- パルプ(外販・海外):数量 60.0(外販・海外の販売量(万トン・年))× 価格 11(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 657 億円・営業利益 33 億円。販売 1.0 倍、価格 1.34 倍。利益率 5%
- パッケージング・紙加工:数量 17.0(加工品の出荷(原紙換算・万トン・年))× 価格 19(原紙 1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 330 億円・営業利益 17 億円。出荷 1.4 倍、価格 1.34 倍。利益率 5%
倍率:事業の純利益 106 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)262 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 1,551 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:洋紙の縮みと輸出の伸びの綱引きは、筆者は縮みがやや強いと見る。中計の達成を前提にせず、中立に最大の 38% を置いた。
やや悲観 28% やや悲観:国内の縮みが加速し、輸出は伸びない 利益 45 億円 · PER 10.1 倍 · 株価時価総額 597 円948 億円
国内の印刷用紙は年 7% で縮む。輸出は米国の関税と海外の安値に阻まれ、洋紙の出荷は今の 6 割弱まで減る。価格は 1.30 倍にとどまり、固定費を吸収できず、利益率は 1% 前後に落ちる。
白板紙は 1 割減る。需要は底堅いが、競合の増産と古紙の値上がりで利益率は 3.5%。パルプは市況が弱く、利益率は 3%。紙加工は小さく伸びる。
営業利益は 70 億円ほどで、今期とほぼ同じ。そこに借り換えの利払い増がのしかかり、純利益は 45 億円。
大王製紙の株の売却は遅れ、現金化は思うように進まない。設備の更新費は減らせず、配当は性向を保てなくなって今より下がる。中期計画の 240 億円は、この筋書きでは遠い数字になる。
- 洋紙(印刷・情報・包装・特殊紙):数量 68.0(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 17(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 1,153 億円・営業利益 12 億円。出荷 0.59 倍、価格 1.30 倍。利益率 1%
- 白板紙:数量 55.8(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 13(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 725 億円・営業利益 25 億円。出荷 0.9 倍、価格 1.30 倍。利益率 3.5%
- パルプ(外販・海外):数量 58.0(外販・海外の販売量(万トン・年))× 価格 11(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 616 億円・営業利益 19 億円。販売 0.97 倍、価格 1.30 倍。利益率 3%
- パッケージング・紙加工:数量 13.0(加工品の出荷(原紙換算・万トン・年))× 価格 19(原紙 1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 245 億円・営業利益 7 億円。出荷 1.08 倍、価格 1.30 倍。利益率 3%
倍率:純利益は薄く ROE は 2% 弱で資本コストを大きく下回る。国内の縮みが速く利益が年 1〜2% 先細る前提なので、1÷(k+1.5%) の約 9.3 倍を丸めて 10.13 倍に置いた。k の上乗せとは別に、利益そのものが縮む分を倍率に入れた。
確率:国内の印刷用紙は縮みが速まる向きで、輸出の穴埋めは関税と海外の安値に阻まれやすい。慎重側に寄せ、28% を置いた。
悲観 14% 悲観:構造的に負け、資本を入れ直す 利益 −55 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 159 円252 億円
国内の印刷用紙は年 10% で縮み、国内の出荷は今の 3 分の 1 まで落ちる。輸出は米国の関税とインド・中国の安値で伸びず、洋紙の出荷は今の 4 割になる。価格は物価に負けて 1.15 倍にとどまり、洋紙は赤字になる。
白板紙も、競合の増産で価格が崩れる。パルプは市況が低迷し、赤字すれすれだ。紙加工は伸びきれない。
営業利益は赤字に沈み、設備の減損で純損益は 55 億円の赤字。借金の返済が重くなり、大王製紙の株も低い値段で手放すことになる。配当は大きく減らし、残りは資産の売却で賄う。株主に残る価値は、売れる資産の税引き後が上限になる。
会社の計画は取り下げられ、国内の拠点を大きく閉じる再編に入る。
- 洋紙(印刷・情報・包装・特殊紙):数量 45.0(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 15(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 675 億円・営業利益 −27 億円。出荷 0.39 倍、価格 1.15 倍。利益率 -4%
- 白板紙:数量 46.5(当社の出荷量(万トン・年))× 価格 12(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 535 億円・営業利益 5 億円。出荷 0.75 倍、価格 1.15 倍。利益率 1%
- パルプ(外販・海外):数量 55.0(外販・海外の販売量(万トン・年))× 価格 9.40(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 517 億円・営業利益 0 億円。販売 0.92 倍、価格 1.15 倍。利益率 0%
- パッケージング・紙加工:数量 11.0(加工品の出荷(原紙換算・万トン・年))× 価格 17(原紙 1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 183 億円・営業利益 2 億円。出荷 0.92 倍、価格 1.15 倍。利益率 1%
倍率:赤字で稼ぐ力はなく、事業の価値は借金の返済に回る。株主に残るのは、大王製紙株を低い値段で売った分の税引き後(約 210 億円)が中心で、今の自己資本の 1 割ほど。EV÷営業利益は意味を持たない水準で、残る資産で測った。
確率:洋紙の需要の急減、輸出の失敗、パルプの低迷が重なる筋書き。自己資本比率が 6 割あり、倒れるまでには至らないため、14% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
洋紙(印刷・情報・包装・特殊紙)
印刷用紙・情報用紙・包装用紙・特殊紙。国内で縮む本業で、輸出が 3 割近くある。
| 数量当社の出荷量(万トン・年) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 115 | 13 | 1,500 | 20 |
| 10 年後 中立 | 86.0 | 17 | 1,503 | 45 |
取り方:洋紙の売上は紙パルプ事業 2,614 億円のうち約 1,500 億円と推定(開示は紙パルプ全体のみ)。輸出比率 27% を含め出荷量を約 115 万トン(国内 84 万トンは国内グラフィック用紙の内需 635 万トンの 13%、輸出 31 万トン)とし、1 トンあたり 13 万円台とした。営業利益 20 億円は、紙パルプの 59.6 億円を洋紙・白板紙・パルプに分けた推定。
白板紙
食品・化粧品の箱、トレーディングカードに使う厚い紙。洋紙より需要が底堅い。
| 数量当社の出荷量(万トン・年) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 62.0 | 10 | 620 | 24 |
| 10 年後 中立 | 58.9 | 13 | 789 | 40 |
取り方:白板紙の売上を約 620 億円と推定。高級白板紙に強く、新潟・市川・勝田の拠点で作る。出荷量を約 62 万トン、1 トン 10 万円とした(国内の白板紙需要の 2 割強に当たる推定)。営業利益 24 億円は紙パルプの利益の按分。
パルプ(外販・海外)
自社の紙に使う分のほか、外にも売るパルプ。カナダの子会社を含む。市況で利益が振れる。
| 数量外販・海外の販売量(万トン・年) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 8.17 | 490 | 16 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 11 | 657 | 33 |
取り方:パルプの売上を約 490 億円と推定(紙パルプ 2,614 億円から洋紙・白板紙を引いた残り)。販売量を約 60 万トン、1 トン 8 万円台(海外市況の軟化後)とした。営業利益 15.6 億円は紙パルプの利益の按分。
パッケージング・紙加工
紙容器 Halopack、紙カップなどの加工品。自社の原紙で容器まで作る一貫体制を伸ばす。
| 数量加工品の出荷(原紙換算・万トン・年) | 価格原紙 1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 15 | 174 | 6 |
| 10 年後 中立 | 17.0 | 19 | 330 | 17 |
取り方:パッケージング・紙加工事業の売上 174 億円、営業利益 5.6 億円(有報)。原紙換算で約 12 万トン、1 トン 14.5 万円とした。
リスクと懸念
洋紙の縮みが想定より速い
国内の内需は 2026 年に初めて 2,000 万トンを割る。印刷用紙が年 8〜10% で縮み、拠点の集約が間に合わなければ、稼働率が落ちて固定費が重くなる。設備の整理費用と人員削減の費用も先に出る。
輸出頼みの計画の脆さ
中計は洋紙の輸出比率を 27% から 38% へ、米国向けを 9% から 21% へ上げる。関税、為替、インドや中国の安い紙に押されると、台数は増えても値段で負け、採算が悪化するおそれがある。
パルプ市況の振れ
パルプは市況商品で、2026 年 3 月期は海外の販売量と価格が下がって利益を削った。自社の紙より外販・海外のぶれが大きい。値上げを通しても、市況が崩れれば一期で帳消しになる。
大王製紙株の価値と売却
北越は大王製紙の株を約 24.8% 持つ(相当額は約 375 億円)。2026 年 3 月、20% 程度へ寄せ、中期的に 5〜10% へ下げる方針を示した。ただ大王製紙は借金が重く、収益力が低い。売る側が動けば値が崩れるおそれもある。
原燃料・電力コストの転嫁の遅れ
古紙・パルプ・重油・電力は物価と一緒に上がる。値上げを顧客に受け入れてもらうまで数か月かかる。2026 年 3 月期は原燃料の改善で価格の下落を補いきれず、営業利益が 6 割落ちた。
設備の更新と資本効率
製紙は大きな設備を維持し続ける装置産業。中計の 4 年間の投資 1,500 億円のうち、維持更新が 600 億円を占める。稼いだ利益の多くが設備に消え、ROE が資本コストに届かない状態が続くおそれがある。
株主構成とガバナンス
2023 年にはオアシスが約 18% を保有し、社長再任の賛成率は 65% まで下がった。大王製紙との関係は対等化へ動くが、大株主の入れ替わりや買い集めが起きれば、経営方針が突然変わる可能性がある。
今後の分かれ目
- 大王製紙株の売却が 2028 年度までに進み、手取りで借金を減らすか自社株買いに回る
- 余剰資産の価値が目に見える形で株主に届く。持ち合いの解消が進んだ分、本質価値を押し上げる。
- 洋紙の輸出比率が 2029 年度に 35% を超え、利益率が輸出分で 4% 台を保つ
- 洋紙の縮みの穴埋めが効き、中立から楽観側へ確率を寄せる。値下がりで利益率が 1% に落ちるなら、やや悲観に寄せる。
- 国内の印刷用紙の需要が年 7% を超えて縮む年が 2 年続く
- 拠点の集約が追いつかず、稼働率が下がる。やや悲観の確率を上げ、洋紙の営業利益は赤字に近づく。
- 白板紙の出荷が食品容器・カード向けで 5% 超増え、営業利益が 40 億円を超える
- 紙パルプの利益の下支えが強まる。中立の利益が 20〜30 億円上積みされる。
- パルプ市況が 2 年以上低迷し、外販・海外の営業利益が赤字になる
- 利益が 3 割以上削られ、やや悲観の筋書きへ寄る。パルプから撤退する選択肢も議論に上がる。
- 大王製紙との統合や、大株主による買い集めが表に出る
- 株価に変動が生じるが、価値の中身は変わらない。統合の条件で資本効率が上がるかを見て確率を直す。
見ておくもの
- 洋紙の輸出比率(27% から 38% へ)と米国向けの比率、輸出分の採算
- 国内の印刷用紙の内需(日本製紙連合会)と、白板紙の出荷
- 大王製紙株の持分比率(20% 程度、その後 5〜10%)と売却の手取りの使い道
- パルプの海外市況と、外販・海外の営業利益
- 27 年 3 月期の営業利益 30 億円の達成度と、中期計画 2030 の進み方
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE と資本コストから決めた。10 年後の中立は ROE が 4% 弱で、資本コスト 8.25% に届かないため、正当化 PER の上限(1÷k、約 10.8 倍)の 9 割の 9.7 倍に置いた(洋紙の縮みや借金は k の上乗せで見ているので、倍率では重ねて引いていない)。今の株価や同業の倍率からは置いていない。大王製紙株は事業から切り離し、時価の相当額 375 億円の税引き後 7 割(約 262 億円)に戻り方 0.5 を掛けて別に足した(今の時価総額の 3 割近い)。新リース会計基準は、北越が工場を自社で持つため影響が小さい。10 年後の数字は、今と同じ形(家賃を費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.75% を足した。事業が傾いて存続が危ぶまれる会社ではないので、上乗せ(distress)は付けない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.25%。