結論
大石産業は、鶏卵トレーなどのパルプモウルドと、重包装袋、フィルムを作る北九州の包装資材メーカーだ。売上は235億円、営業利益は7億円。現金は60億円あり、時価総額101億円の半分を超える。
筆者の結論は「割高」だ。厚い現金と、プラスチックから紙への切り替えという追い風は評価できる。ただ、営業利益率は3%まで下がり、ROEは3.7%と資本コストに届かない。稼ぐ力がここまで細ると、現金は安全域にはなっても、値上がりの理由にはなりにくい。中立の10年でも時価総額は今の水準に届かず、確率で重みを付けた価値は今を3割ほど下回る。
会社は茨城工場に約23億円を投じ、パルプモウルドの能力を4割増やす。完成は2026年6月。売上は伸びるが、減価償却と人件費が先に利益を削り、2027年3月期の経常利益は4割の減益予想だ。
筆者は、中立の10年で営業利益が今より少し増えて9億円台と見る。投資が実を結べば上振れ、実らなければ現金を食う。その分かれ目にある会社だ。株主にとっては、現金の使い道を経営がどう決めるかが、この会社を持つ理由のすべてになる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、厚い現金と堅い需要先を持つ点は魅力だが、稼ぐ力の薄さが気になる。年33億円を投じても、営業利益は7億円しか残らない。株主が自由に使える利益は、見かけの純利益よりさらに小さい。
堀は中程度だ。パルプモウルドの技術と顧客との長い関係は、簡単には崩れない。ただし、原料の値動きに利益が揺さぶられ、価格を自分で決められない。10年後の利益を確信を持って言える事業ではない。
資本配分は慎重とは言いがたい。現金の半分以上を新工場に回す決断は、投資が成功すれば報われるが、失敗すれば現金が消える。マレーシアの赤字も長引いている。
安全域は、現金60億円と上場株13億円にある。事業が崩れても、時価総額の7割近くは資産で支えられる。筆者は、この資産の厚みを悲観の床には使いつつ、中立の稼ぎには高い倍率を付けなかった。
何で稼ぐ会社か
事業は2つの柱でできている。緩衝機能材は売上116億円、営業利益12億円で、利益の大半を稼ぐ。主力はパルプモウルドで、古紙を溶かして型に流し、鶏卵トレーや青果トレー、工業用の緩衝材に成形する。前期は6%伸びて69億円。段ボールは36億円で、工業・農業向けだ。宙吊り式の包装容器「ゆりかーご」などの成型品も持つ。
包装機能材は売上114億円、営業利益6億円。重包装袋は製粉、飼料、合成樹脂、化学薬品向けの大きな紙袋で、約69億円。フィルムは食品容器用のポリスチレンフィルムと自動車向けのキャストフィルムで45億円。前期は減収減益だった。
最大の顧客はエフピコで、売上の12.7%を占める。食品トレーの大手だ。ほかに共通の費用が約11億円あり、セグメント利益の合計18億円から連結の営業利益7億円へ大きく削る。
海外はマレーシアに集中する。包装資材のCORE PAXは売上29億円で、経常損失が続く。連結の従業員は594人。2026年4月に子会社のアクシスを吸収合併した。製品の多くは受注生産に近く、顧客ごとの仕様に合わせた金型や生産ラインが必要になるため、取引は長期で安定しやすい一方、設備の更新費は重い。
優良さと弱いところ
強みは、パルプモウルドの技術と、鶏卵・青果という安定した需要先を持つことだ。古紙を原料にし、環境規制でプラスチックから紙への切り替えが進むなか、同社の主力は追い風を受ける。1972年の総販売代理店契約以来、50年以上の実績がある。顧客のエフピコとは長い取引で、乗り換えにくい。
弱みは、価格が原料に左右され、自力で決めにくいことだ。クラフト原紙、樹脂、古紙、LPガスの値動きが原価を直撃する。営業利益率は過去12年で3%から8%まで振れ、足元は3%の安値圏にある。
財務は強い。自己資本比率70%、現金は60億円で、借入はほぼない。ただ投資は年33億円と減価償却12億円を大きく上回り、手元資金は急速に減っている。
資本効率は低い。ROEは過去10年の中央値で6%、足元は3.7%。配当はDOE2%を目安とし、配当性向は5割を超える。中期経営計画「New Challenge 2027」はパルプモウルドの供給力強化と特殊フィルムへの参入を掲げる。数値目標は開示が乏しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
パルプモウルドの需要は、卵の消費が安定していることと、プラスチック包装の削減で底堅い。国内の卵トレーは、プラスチックとの競争が続くが、環境意識の高まりで紙が有利になる局面が増えている。青果や工業用の緩衝材でも、発泡スチロールからの置き換えが進む。数量は10年で緩やかな増加とみる。
ただし、古紙の価格と、エネルギー(LPG・LNG)の価格が利益を左右する。2023年3月には八戸工場の火災があり、設備事故の影響も示した。同業の包装メーカーは人手不足で賃金が上がり、費用の転嫁が競争の焦点になる。
重包装袋は、製粉・飼料の国内需要が人口減で縮み、紙袋からバルク輸送や樹脂袋への切り替えも進む。数量は減る。フィルムは、食品容器の需要が安定する一方、自動車や電子材料向けへ広げるための新ラインに投資している。
中東情勢の長期化でナフサ由来の樹脂が不安定になるリスクもある。国内の人口減と物流費の上昇が重なり、薄利の包装資材は規模と技術の差が生き残りを分ける。大手の製紙・段ボール会社はグループで包装全般を提案できるが、同社のように特定の技術に絞った会社は、用途を選んで勝負する形になる。
資本政策と M&A
配当は、連結純資産配当率(DOE)2.0%以上を目安にした安定配当で、前期の年間は中間と期末あわせて4億円ほど。純利益の5〜6割にあたる。自社株買いの実績は見当たらない。
政策保有株は、上場15銘柄で13億円。連結純資産の5%以下に縮める方針で、配当は利益に入っているので、価値は別に足していない。
投資は、パルプモウルド茨城工場に約23億円で、完成は2026年6月、能力は約4割増える。前期の設備投資は33億円で、減価償却の2.7倍。現金は前期に13億円減った。借入は使わず手元資金と一部の長期借入で賄う方針だ。
M&Aは、2019年に柳沢製袋を取得し、2026年4月にアクシスを吸収合併した。マレーシア子会社の損失が続く点は、資本配分の弱点である。10年の還元は、DOE2%の水準を土台に、中立で45億円とした。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
プラスチックから紙への切り替えは、世界的な流れだ。パルプモウルドはその直接の受け皿で、卵トレーから青果、工業用の緩衝材まで用途が広がる。茨城工場で能力が4割増えれば、取りこぼしていた需要を取り込める。高付加価値の製品「パラミル」も育っている。
2027年3月期の減益は、投資の先行による一時的な現象にすぎない。減価償却と人件費の増加が先に出るが、稼働が上がれば利益率は回復する。前期もセグメント利益は緩衝機能材で35%増えており、中身は悪くない。
フィルムの多層Tダイの新ラインは、電子材料・自動車・ヘルスケア向けの高付加価値市場への入口だ。マレーシアの赤字も、立ち上げ期の一時的な費用とみなせる。
現金60億円、自己資本比率70%と財務が厚く、不況でも潰れない。時価総額は自己資本の半分で、資産面の安全域が大きい。
さらにDOE2%以上の配当方針が、下値を支える。環境規制の強まりは、紙の緩衝材やトレーの採用を、これから一段と後押しするはずだ。
慎重な見方
営業利益は7億円で前期比2割減、経常利益も4割の減益が予想されている。売上は伸びても、人件費、償却、原料高が利益を食っている。営業利益率は3%と、過去12年の中でも低い。
年33億円の投資は、営業利益の4.6倍にあたる。能力を増やしても、需要が伴わなければ稼働率が上がらず、償却だけが重くなる。茨城工場への23億円は、ROEが3.7%の会社にとって重い賭けだ。
重包装袋は人口減で縮み、フィルムも前期は7.5%の減収だった。マレーシアでは損失が続き、撤退の判断も遅れている。
現金が厚いのは、使い道を見つけられていないことの裏返しでもある。ROEは資本コストに届かず、現金は株主に戻らなければ価値を生まない。
パルプモウルドの競争相手には、プラスチックの大手や海外の紙器メーカーがあり、価格競争が起きれば利益率は容易に崩れる。さらに、卵の消費が横ばいの中で、パルプモウルドの伸びを支えるには、青果や工業用で新しい顧客を取り続ける必要がある。人手不足で工場の人員を確保する費用も、これから重くなる。
どちらに重みを置いたか
需要の追い風と財務の厚みでは強気の見方に分がある。しかし、稼ぐ力が細り、投資が先行して現金が減る現実は、慎重な見方が重い。10年の中立は、営業利益が9億円台と少し増える程度に置いた。確率はやや悲観を28%と厚めにし、投資が実らない筋書きを残した。現金の厚みは悲観の床として効くが、上振れの理由にはしなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,390 円109 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 537 円42 億円)。 今の値に割り戻すと 1,029 円81 億円、今との差 −19.8%、 期待の年率 +4.2%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,748 円216 億円 | 701 円55 億円 | +168.8% | +10.4% | 241 円19 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,188 円172 億円 | 637 円50 億円 | +120.2% | +8.2% | 480 円38 億円 |
| 中立 | 38% | 1,661 円130 億円 | 574 円45 億円 | +74.2% | +5.7% | 849 円67 億円 |
| やや悲観 | 28% | 537 円42 億円 | 484 円38 億円 | −20.4% | −2.3% | 286 円22 億円 |
| 悲観 | 10% | 446 円35 億円 | 255 円20 億円 | −45.3% | −5.9% | 70 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,390 円109 億円 | 537 円42 億円 | +50.2% | +4.2% | 1,927 円151 億円 |
今の株価時価総額 1,283 円101 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% パルプモウルドの新工場が当たり、特殊フィルムも育つ 利益 16 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,748 円216 億円
プラスチックから紙への切り替えが加速し、パルプモウルドの出荷が3割増える。茨城工場はフル稼働し、高付加価値の「パラミル」が全体の単価を押し上げる。緩衝機能材の営業利益率は11%に上がる。包装機能材も特殊フィルムの新ラインが電子材料・自動車向けで受注を取り、利益率は6%に回復する。マレーシア事業は黒字化する。共通の費用は賃金の上昇で増えるが、売上の伸びに吸収される。営業利益は19億円に達し、ROEは7%台。それでも資本コストには届かない。配当は増配し、10年で55億円。この筋書きが成り立つには、新工場の稼働、環境規制の追い風、特殊フィルムの受注という3つがそろう必要がある。
- 緩衝機能材(パルプモウルド・段ボール・成型品):数量 60.5(出荷量(千t相当の推定))× 価格 3.45(1千tあたり売上(億円・名目。古紙・原紙の値動きを含む))→ 売上 209 億円・営業利益 23 億円。出荷1.3倍、営業利益率11%
- 包装機能材(重包装袋・フィルム・その他):数量 37.5(出荷量(千t相当の推定))× 価格 4.14(1千tあたり売上(億円・名目。樹脂・原紙の値動きを含む))→ 売上 155 億円・営業利益 9 億円。出荷0.95倍、営業利益率6%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 216 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新工場の稼働、プラスチック代替の加速、特殊フィルムの立ち上げが同時に成功する必要がある。足元の利益率が3%まで下がっており、確率は低く置いた。
やや楽観 17% 新工場が稼働し、利益率が少し回復 利益 12 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,188 円172 億円
パルプモウルドの出荷が2割増え、茨城工場の稼働が上がる。緩衝機能材の営業利益率は10%に戻る。包装機能材は重包装袋の縮みをフィルムの高付加価値化で補い、利益率は5.5%。共通の費用は賃金の上昇で増えるが、事業の成長で吸収される。営業利益は14億円で、前期の2倍。マレーシアは赤字が縮小する。茨城工場が計画どおり立ち上がり、環境規制の追い風を受けた形で、特別な好材料は要らない。原料の値上がりも転嫁できる。配当は10年で50億円。ROEは5%台で、資本コストにはまだ届かない。新工場が計画どおりに動き、環境規制の追い風を受けた形で、特別な好材料は要らない。原料の値上がりも転嫁できる。
- 緩衝機能材(パルプモウルド・段ボール・成型品):数量 55.9(出荷量(千t相当の推定))× 価格 3.40(1千tあたり売上(億円・名目。古紙・原紙の値動きを含む))→ 売上 190 億円・営業利益 19 億円。出荷1.2倍、営業利益率10%
- 包装機能材(重包装袋・フィルム・その他):数量 36.3(出荷量(千t相当の推定))× 価格 4.08(1千tあたり売上(億円・名目。樹脂・原紙の値動きを含む))→ 売上 148 億円・営業利益 8 億円。出荷0.92倍、営業利益率5.5%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 172 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新工場が計画どおり立ち上がり、前期に落ちた利益率が回復する筋書き。実績が乏しいため、やや低めに置いた。
中立 38% 新工場で量は伸びるが、費用が追いつく 利益 9 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,661 円130 億円
パルプモウルドの出荷は10年で12%増え、プラスチック代替が続く。単価は物価並みに上がり、古紙の値動きは転嫁できる。緩衝機能材の利益率は9%で、今の10%からやや下がる。重包装袋は人口減で量が縮み、フィルムは新ラインの立ち上げで一部を補う。包装機能材の出荷は12%減、利益率は5%。共通の費用は約12.8億円に増え、営業利益は10億円。減価償却は既存設備を物価で増やさず、茨城工場の分だけ新しい値段で足す。更新投資は償却より多い分が現金から出る。現金60億円の利息は増えるが、投資で減る。純利益は9億円、配当は10年で45億円。
- 緩衝機能材(パルプモウルド・段ボール・成型品):数量 52.1(出荷量(千t相当の推定))× 価格 3.35(1千tあたり売上(億円・名目。古紙・原紙の値動きを含む))→ 売上 175 億円・営業利益 16 億円。出荷1.12倍、営業利益率9%
- 包装機能材(重包装袋・フィルム・その他):数量 34.8(出荷量(千t相当の推定))× 価格 4.02(1千tあたり売上(億円・名目。樹脂・原紙の値動きを含む))→ 売上 140 億円・営業利益 7 億円。出荷0.88倍、営業利益率5%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 130 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:パルプモウルドは追い風で量が伸びるが、償却・人件費・原料高が利益を抑える筋書きが最も自然。2027年3月期の会社予想(営業利益6億円台)からの緩やかな回復とも合う。
やや悲観 28% 投資が実らず、費用だけが残る 利益 4 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 537 円42 億円
茨城工場の稼働が上がらず、パルプモウルドの出荷は横ばい。プラスチックとの価格競争で単価が伸びず、利益率は7.5%に下がる。重包装袋は縮み、フィルムも伸びない。包装機能材の利益率は4%。マレーシアの赤字は続く。共通の費用は賃金の上昇で増え、営業利益は4億円まで落ちる。現金は投資で減り、利息も細る。配当はDOE2%を下限に、10年で38億円。減損の可能性も残る。それでも借入は無く、事業は存続する。プラスチックとの価格競争で採用が伸び悩み、環境規制の追い風を取り込めない。経営は費用の圧縮を急ぐが、人員削減には限りがある。
- 緩衝機能材(パルプモウルド・段ボール・成型品):数量 46.6(出荷量(千t相当の推定))× 価格 3.25(1千tあたり売上(億円・名目。古紙・原紙の値動きを含む))→ 売上 151 億円・営業利益 11 億円。出荷1.0倍、営業利益率7.5%
- 包装機能材(重包装袋・フィルム・その他):数量 31.6(出荷量(千t相当の推定))× 価格 3.84(1千tあたり売上(億円・名目。樹脂・原紙の値動きを含む))→ 売上 121 億円・営業利益 5 億円。出荷0.8倍、営業利益率4%
倍率:事業のROEは約1.5%でk以下、正当化PERの上限は1÷k=12.5倍。稼ぎが細り、堀の持ちを低く見て、上限の約6割の7.5倍に置いた。余った現金は戻り方0.75を掛けて足した。
確率:前期は営業利益が2割減り、次期予想も大幅な減益。新工場の稼働が遅れて費用だけが先に出る形は、足元の流れの延長にあり、厚めに置いた。
悲観 10% 原料高と競合で薄利が赤字に転落 利益 −5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 446 円35 億円
古紙・樹脂・エネルギーの高騰を転嫁できず、緩衝機能材の利益率は4%に落ちる。新工場は稼働率が上がらず、減損が出る。重包装袋は4割縮み、フィルムも失注が続く。マレーシア事業を整理する費用も出る。営業利益は赤字に沈み、配当はDOE2%の最低線近くまで削る。顧客のエフピコが調達先を分散し、取引量が減ることも重なる。自己資本は減損で目減りし、株主の価値は現金と上場株の売却価値が下支えする水準になる。この筋書きでは、顧客のエフピコが調達先を分散し、取引量が減ることも重なる。経営は事業の縮小を迫られ、資産の売却や整理に動くことになる。
- 緩衝機能材(パルプモウルド・段ボール・成型品):数量 39.6(出荷量(千t相当の推定))× 価格 3.00(1千tあたり売上(億円・名目。古紙・原紙の値動きを含む))→ 売上 119 億円・営業利益 5 億円。出荷0.85倍、営業利益率4%
- 包装機能材(重包装袋・フィルム・その他):数量 23.7(出荷量(千t相当の推定))× 価格 3.45(1千tあたり売上(億円・名目。樹脂・原紙の値動きを含む))→ 売上 82 億円・営業利益 0 億円。出荷0.6倍、営業利益率0%
倍率:赤字の年で、今の自己資本195億円に約0.18倍。稼ぐ力ではなく、現金と上場株の税後が床になる。市場の値付けからは置いていない。減損で自己資本は150億円に減る。
確率:原料高の転嫁が遅れ、新工場が稼働せず、マレーシアも赤字が続く複合の筋書き。構造的に負ける形で、一定の確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
緩衝機能材(パルプモウルド・段ボール・成型品)
鶏卵・青果・工業用のパルプモウルドトレー、工業・農業向け段ボール、樹脂成型品。売上の約半分で、利益の中心。
| 数量出荷量(千t相当の推定) | 価格1千tあたり売上(億円・名目。古紙・原紙の値動きを含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 46.6 | 2.50 | 116 | 12 |
| 10 年後 中立 | 52.1 | 3.35 | 175 | 16 |
取り方:2026/03期のセグメント売上116.4億円(パルプモウルド69億円・段ボール36億円・成型12億円)、セグメント利益11.8億円(有報)。出荷量は開示が無く、平均単価(1kgあたり二百五十円と推定)で割った推定。数量は実質、単価は名目。
包装機能材(重包装袋・フィルム・その他)
製粉・飼料・樹脂・化学薬品向けの重包装袋、食品容器用ポリスチレンフィルム、自動車向けキャストフィルム。その他事業4.5億円を含む。
| 数量出荷量(千t相当の推定) | 価格1千tあたり売上(億円・名目。樹脂・原紙の値動きを含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 39.5 | 3.00 | 119 | 6 |
| 10 年後 中立 | 34.8 | 4.02 | 140 | 7 |
取り方:2026/03期のセグメント売上114.0億円(フィルム45億円・重包装袋69億円)に、その他4.5億円を足した。セグメント利益は包装機能材6.3億円・その他-0.3億円の合計。出荷量は平均単価(1kgあたり三百円と推定)で割った推定。
リスクと懸念
大型投資が稼ぎにつながらない
茨城工場に約23億円を投じ、能力を4割増やす。需要が伴わなければ稼働率が上がらず、償却だけが重くなる。前期の設備投資は減価償却の2.7倍で、現金は急速に減っている。
原料・エネルギーの高騰
クラフト原紙、樹脂、古紙、LPG・LNGの値動きが原価を左右する。中東情勢でナフサ由来の原料が不安定になると、値上げの転嫁が遅れて利益率が崩れる。
マレーシア事業の赤字
包装資材のCORE PAXは売上29億円に対し経常損失が続く。撤退や追加の出資が必要になれば、減損が出る。
顧客集中
エフピコが売上の12.7%を占める。食品トレー大手の調達方針が変われば、数量と価格の両方に影響する。
設備事故・災害
2023年3月に八戸工場の火災があった。パルプモウルドは設備の稼働が収益に直結し、事故の影響が大きい。
人件費の上昇
連結594人の小所帯で、賃金上昇は利益率に直結する。共通の費用が約11億円あり、増え続けると営業利益が消える。
AIエージェント代替は小さい
売り物は製品で、人の時間を売る事業ではない。受発注や事務は効率化できるが、利益の源は工場の稼働にある。
今後の分かれ目
- 茨城工場が稼働し、パルプモウルドの出荷が前年比で1割以上伸びる
- 投資が実っている証拠。中立の上側、やや楽観の確率を上げる。
- 2027年3月期の経常利益が予想の6億円を下回る
- 減価償却と人件費の負担が想定より重い。やや悲観に寄せる。
- マレーシア事業を撤退・縮小する
- 赤字の止血になる。短期は減損が出るが、資本効率の改善として評価する。
- 古紙・原紙の価格が急騰し、値上げの転嫁が遅れる
- 利益率が2%台に落ちる合図。悲観の確率を上げる。
- 特殊フィルム(電子材料・自動車・ヘルスケア)で新規受注が出る
- 高付加価値化の成功。フィルムの利益率を見直し、上振れの材料にする。
- 自社株買いや増配など、現金を戻す動きが出る
- 現金の戻り方を上げる材料。余った現金の価値を厚く見る。
見ておくもの
- パルプモウルドの出荷量と茨城工場の稼働率
- 営業利益率(前期3%、2027年3月期予想は低下)
- 古紙・原紙・樹脂の価格
- 現金残高と設備投資
- マレーシア子会社の損益
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(資本コスト7.75%、ROEがk以下なので上限は1÷k=12.5倍)から置き、中立は上限の約7割。今の株価や過去のPERには寄せていない。現金60億円のうち、運転資金(月商1.5か月分で約30億円)と茨城工場の残りの投資(約23億円)を引いた25億円だけを余った現金とし、戻り方は0.75とした。上場株13億円の配当は利益に入っているので、価値を別に足していない。減価償却は既存設備を物価で増やさず、新工場の分だけ新しい値段で足した。数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→12.9 倍・やや楽観 PER 9.5→12.9 倍・中立 PER 9→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。