結論
笹徳印刷は愛知県豊明市の印刷会社だ。菓子や日用品の箱と包材が売上の 7 割、カタログや書籍の印刷が 3 割を占める。筆者の結論は「やや割高」だ。一番の理由は、本業の営業利益率が 0.5% まで落ち、利益の大半を持ち合いの株の配当に頼っていることにある。
帳簿だけ見れば安い。時価総額は自己資本の 3 分の 1 にすぎない。だが自己資本の 4 割強は、トヨタやブラザー、王子ホールディングスなど取引先の株だ。会社は売る数値目標を持たず、その配当は利益にすでに入っている。
10 年の間、箱の仕事は関東の新しいラインで少し伸び、刷り物の仕事は細っていく。2030 年の計画でも営業利益率は 2.5% にとどまる。筆者は、帳簿の安さを埋めるだけの稼ぐ力は戻らないと見る。
救いは、悲観の深さが浅いことだ。取引先の株という床があり、赤字に沈んでも時価総額の半分ほどは残ると見る。
本業が自力で資本コストを稼げるかが、見直しの分かれ目になる。
バリュー投資の観点から
オーナーとして持ちたい事業かと問われれば、筆者はためらう。箱は 10 年後も要り、王子やトヨタ系との取引も続くだろう。だがその取引から株主の取り分をどれだけ引き出せるかは心もとない。
バリュー投資の観点で一番気になるのは、利益の出どころだ。2026/06 期の純利益は 1.9 億円だが、本業の営業利益は 0.6 億円しかない。残りは持ち合いの株の配当と利息で稼いでいる。株主は、本業でなく株の運用を高い手数料で預けているのに近い。
安全域はどうか。持ち合いの株を税後で数えれば、今の時価総額にほぼ並ぶ。だが会社は売らない。売らない資産は、株主の手に戻る現金ではない。筆者が見方を変えるのは、持ち合いを減らして還元に回すと会社が数字で約束した時だ。
それまでは、帳簿の安さを割安の根拠にしない。本業が自分の力で資本コストを稼げるようになるまで、筆者は慎重な側に立つ。
何で稼ぐ会社か
事業は 2 つの分野に分かれる。1 つはパッケージング分野で、売上の 72% を占める。菓子や食品、化粧品、土産物、トイレットペーパーなどの紙箱と、フィルムの軟包装を企画から刷り、加工まで手がける。本社のある豊明市と一宮市、埼玉県本庄市の関東工場で作る。
もう 1 つはコミュニケーション分野だ。自動車の整備書や販売店のカタログ、書籍やカレンダーを刷り、映像やウェブの制作、イベントの運営も請け負う。創業は 1890 年で、トヨタ系の取引先と長く付き合ってきた。
最大の客は王子ネピアで、売上の約 1 割を占める。王子ホールディングスの完全子会社である王子マテリアが議決権の 18% を持ち、紙の調達と箱の販売の両面で王子グループとの縁が深い。
会社は「発想から発送まで」を掲げ、刷った物の保管・梱包・発送まで請け負う仕事を広げている。ただ稼ぎの仕組みは昔ながらの印刷業と変わらない。機械の稼働を上げ、紙やインキ、人件費の上がりを値段に移せるかで利益が決まる。
関東工場の増設は、この会社の次の 10 年を左右する賭けだ。豊明の工場は中部の客に近いが、首都圏の菓子・食品の箱を取るには運ぶ距離が重かった。埼玉に紙器のラインを置き、東日本の客に近い所で刷って届ける形に変える。
優良さと弱いところ
優良さは並より下だと筆者は見る。長所は、王子グループやトヨタ系の客と何十年も続く取引だ。箱は中身の商品と一緒に設計され、一度採用されると同じ形で発注が続く。
だが取引の長さは値決めの力になっていない。2026/06 期は人件費や紙、電気代の上がりを売値に移すのが遅れ、営業利益率は 0.5% に沈んだ。上場以来、この率が 3% を超えた年は無い。
資本の稼ぎも低い。ROE は直近 2〜4% で、資本コストの半分に届かない。自己資本の 4 割強が取引先の株で、本業に使っていない資本が重いからだ。
変化の兆しはある。2023 年の上場で株主の目にさらされ、2026 年 8 月に配当性向 30% 以上の方針を掲げ、自社株買いも続けている。ただ持ち合いの株を減らす数値目標は無い。
筆者が足りないと見るのは、資本を株主の目で使う意識だ。持ち合いの株を持ち続ける限り、本業の改善だけでは資本の稼ぎは上がらない。
人の面でも課題がある。印刷の技能を持つ働き手は高齢化し、採用の費用は毎年上がる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
印刷の市場は二手に分かれている。カタログやチラシ、書籍の刷り物はデジタル化で量が減り続け、値段の競争も厳しい。一方、食品や日用品の箱は中身の消費とともに動き、量はゆっくりとしか減らない。
紙の箱には追い風もある。プラスチックを減らす流れで、包装を紙に置き換える動きが続く。箱の設計から刷りまでこなせる会社は、置き換えの相談で客に頼られる。
競合は、TOPPAN や大日本印刷のような大手と、各地の中堅の紙器会社だ。同じ領域の古林紙工も、花王や味の素の箱を作りながら利益率は数 % にとどまる。大手は規模で紙と加工の費用を下げ、中堅は客との近さで勝負する。客が調達先を絞るたび、中堅は値段か量を譲る。
筆者は 10 年で、国内の箱の量はほぼ横ばいから少し減り、刷り物の量は 3 割減ると見る。値段は箱で物価並み、刷り物は物価に届かない。人手不足で印刷の働き手の賃金は上がり続け、値上げの遅れはそのまま利益を削る。
悲観の深さも考えておく。印刷業界はこの 30 年で需要が大きく減り、中堅の廃業や統合が続いてきた。箱は印刷の中では底堅いが、客が調達先を絞る局面では中堅が真っ先に外される。
大手と比べた中堅の弱みは、紙を買う量の少なさと、機械を更新する資金の薄さだ。
資本政策と M&A
還元の方針は 2026 年 8 月に変わった。配当性向 30% 以上を目途とし、2030/06 期までは今の年配当(総額で約 1.1 億円)を下限にする。自社株買いも 2025 年に 1.1 億円、2026 年 2 月から上限 1.4 億円で続けている。
政策保有の上場株は 33 銘柄で約 31 億円ある。トヨタ、ブラザー、王子ホールディングス、デンソー、リンナイなどで、取引の関係を理由に持つ。縮める数値目標は示していない。航空機リースの匿名組合にも出資する。
王子マテリアが議決権の 18% を持つ。王子グループが箱の仕事を取り込むために株を買い増す道は理屈の上ではあるが、そうした動きは開示されていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の時価総額は 30 億円で、持っている株や匿名組合の出資は 43 億円ある。税を引いても、本業の工場と客の取引がほぼただで付いてくる計算だ。
本業も底を打ちつつある。関東工場に紙器のラインを増やし、東日本と西日本の菓子・食品の箱を取りに行く。2027/06 期の売上は 6% 増える計画だ。値上げは遅れて通るもので、物価が上がる世の中では利益率は戻る。2030 年の計画どおりなら営業利益は今の 6 倍になる。
還元も変わり始めた。配当性向 30% 以上と今の配当を下限にすることを約束し、自社株買いも続ける。王子マテリアが 18% を持つので、王子グループが箱の仕事を取り込む再編の芽もある。悪い方を見ても、取引先の株という厚い床があり、下がる余地は小さい。
人手不足は印刷の中堅を減らし、残った会社の値決めの力を少しずつ戻す。廃業する同業の客を引き取れれば、量も単価も上向く。
トヨタ系の整備書やカタログの仕事は、車が売れ続ける限り無くならない。
慎重な見方
資産の厚さは株主のものではない。トヨタや王子の株は取引の証しで、売れば取引に響く。会社は縮める数字を示しておらず、その配当はすでに利益に入っている。二重に数えてはいけない。
本業は薄い。営業利益率は上場以来 3% を超えたことが無く、2026/06 期は 0.5% だ。2030 年の目標を達成しても 2.5% にとどまり、資本の稼ぎは 4% と資本コストの半分だ。刷り物の量は毎年減り、値段の競争で単価も上がらない。
関東の増設は減価償却を増やす。機械の値段も建屋の費用も上がっており、新しいラインの採算は今の工場より厳しい。人手不足で賃金は上がり続け、値上げの遅れが続けば利益はさらに削られる。帳簿の安さは、この稼ぐ力の低さを映しているだけだ。
王子グループとの縁も両刃だ。最大の客であり大株主でもある相手には、値上げを強く言いにくい。
刷り物の分野は赤字のまま縮み、工場の整理の費用が先々に控える。上場から日が浅く、資本の使い方の実績も乏しい。
どちらに重みを置いたか
資産が株主の手に届かないという慎重な側の指摘の方が、会社の資本の方針という事実に支えられている。配当方針の変更は前進だが、持ち合いを売る数字が出るまで価値に数えない。確率は中立を中心にやや悲観を厚めにし、計画を上回る姿は薄く置いた。持ち合いの株が床を支えるので、悲観の深さは中堅の印刷会社の中では浅い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 650 円35 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 227 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 430 円23 億円、今との差 −21.8%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 1,141 円62 億円 | 333 円18 億円 | +167.9% | +10.4% | 74 円4 億円 |
| やや楽観 | 18% | 930 円50 億円 | 296 円16 億円 | +122.8% | +8.3% | 221 円12 億円 |
| 中立 | 42% | 760 円41 億円 | 240 円13 億円 | +81.8% | +6.2% | 420 円23 億円 |
| やや悲観 | 23% | 305 円17 億円 | 185 円10 億円 | −10.9% | −1.2% | 113 円6 億円 |
| 悲観 | 12% | 303 円16 億円 | 111 円6 億円 | −24.7% | −2.8% | 50 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 650 円35 億円 | 227 円12 億円 | +59.4% | +4.8% | 877 円47 億円 |
今の株価時価総額 550 円30 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 5% 関東の箱が伸び、計画を上回る 利益 5 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,141 円62 億円
関東工場の紙器ラインが満杯になり、東日本の菓子・食品の箱を次々に取る。プラスチックから紙への置き換えも追い風になり、箱の出荷は 10 年で 2 割増える。値上げは物価を少し上回って通り、箱の営業利益率は 3.5% に戻る。
刷り物は量が減るが、発送までまとめて請け負う仕事が単価を支え、小さな黒字に戻る。持ち合いの株の配当は物価とともに増え、利益の 3 割を支え続ける。
それでも資本の稼ぎは資本コストに届かない。持ち合いの株が自己資本の 4 割を占め、本業に使っていない資本が重いからだ。
王子グループとの取引も深まり、ネピアの箱に加えて他の家庭紙の包装も任される。
- パッケージング(紙器・軟包装):数量 10.5(紙器・包材の出荷数(億個・年、推定))× 価格 1,380(1 個あたりの売上(銭・名目))→ 売上 145 億円・営業利益 5 億円。10.5 億個 × 1,380 銭(今の 1.38 倍)、利益率 3.5%
- コミュニケーション(商業・出版印刷・制作):数量 55.0(刷り物の出荷(百万部・年、推定))× 価格 65(1 部あたりの売上(円・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 1 億円。5,500 万部 × 65 円、利益率 1.5%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 62 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:関東の新ラインが満杯になり、刷り物の赤字も止まる姿。上場以来届いていない営業利益率 3.5% が要り、確率は薄い。
やや楽観 18% 2030 年の計画をほぼ達成する 利益 4 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 930 円50 億円
箱の出荷は関東の増設と全国の営業で 10 年に 14% 増える。値上げは物価並みに通り、箱の営業利益率は 3% に戻る。2024/06 期の水準だ。
刷り物は量が 4 分の 3 に減るが、整備書や教育向けの仕事、カードゲームの印刷などで小さな黒字を保つ。
配当性向 30% と下限の配当を守り、自社株買いも続ける。それでも利益の多くは会社に残り、資本の稼ぎは 4% 前後だ。会社は堅く続くが、株主にとっては物足りない姿だ。
関東の増設は採算に乗り、償却を吸収して余りある利益を生む。持ち合いの株の配当も物価とともに増え、純利益の 4 割を支える。
- パッケージング(紙器・軟包装):数量 10.0(紙器・包材の出荷数(億個・年、推定))× 価格 1,360(1 個あたりの売上(銭・名目))→ 売上 136 億円・営業利益 4 億円。10.0 億個 × 1,360 銭、利益率 3%
- コミュニケーション(商業・出版印刷・制作):数量 52.0(刷り物の出荷(百万部・年、推定))× 価格 64(1 部あたりの売上(円・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 0 億円。5,200 万部 × 64 円、利益率 0.5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.9% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 50 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の 2030 年計画(営業利益率 2.5%)を数年遅れで超える姿。値上げの遅れが解ければ届く水準なので、中立の次に厚く置く。
中立 42% 箱は少し伸び、刷り物は細る 利益 4 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 760 円41 億円
箱の出荷は関東の増設で 10 年に 1 割増える。値段は物価並みに上がるが、大手の客との交渉で上がった費用を全部は移せず、箱の営業利益率は 2.5% にとどまる。
刷り物は量が 3 割減り、単価も物価に届かない。発送までの請け負いで赤字は止めるが、利益はほとんど出ない。
増設の償却は今の機械より高い値段で積み上がり、更新の投資で現金は細る。持ち合いの株の配当と匿名組合の利益が、純利益の半分近くを支える形は変わらない。
配当は下限を守り、自社株買いは年に 2,000 万円ほどにとどまる。資本の稼ぎは 3% 台で、資本コストの半分にも届かない。
- パッケージング(紙器・軟包装):数量 9.6(紙器・包材の出荷数(億個・年、推定))× 価格 1,340(1 個あたりの売上(銭・名目))→ 売上 129 億円・営業利益 3 億円。9.6 億個 × 1,340 銭(今の 1.34 倍)、利益率 2.5%
- コミュニケーション(商業・出版印刷・制作):数量 48.5(刷り物の出荷(百万部・年、推定))× 価格 63(1 部あたりの売上(円・名目))→ 売上 31 億円・営業利益 0 億円。4,850 万部 × 63 円(今の 1.26 倍)、利益率 0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.2% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 41 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:上場以来の営業利益率(0.5〜2.9%)の上の方に戻り、刷り物が 3 割減る姿。過去の実績と計画の間で、いちばん起こりやすい。
やや悲観 23% 値上げが追いつかず、本業が赤字すれすれ 利益 2 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 305 円17 億円
人件費と紙、電気代の上がりに値上げが追いつかない年が続く。箱の出荷は客の調達先の絞り込みで 5% 減り、営業利益率は 1% にとどまる。
刷り物は量が 4 割減り、赤字が続く。整理するか続けるかの判断を先送りし、固定費が残る。
純利益の大半は持ち合いの株の配当になり、本業の稼ぎはほとんど残らない。下限の配当を守るため、利益を超える配当を払う年もある。会社は株を売らないので、株主には配当の細い流れしか届かない。
関東の増設も稼働が上がらず、償却の重さだけが残る。人手が足りず、受けた仕事を外注に回して採算がさらに悪くなる。
- パッケージング(紙器・軟包装):数量 8.3(紙器・包材の出荷数(億個・年、推定))× 価格 1,300(1 個あたりの売上(銭・名目))→ 売上 108 億円・営業利益 1 億円。8.3 億個 × 1,300 銭、利益率 1%
- コミュニケーション(商業・出版印刷・制作):数量 41.6(刷り物の出荷(百万部・年、推定))× 価格 60(1 部あたりの売上(円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 −1 億円。4,160 万部 × 60 円、利益率 −2%
倍率:事業の ROE 1.5% が k を大きく下回るので、価値は稼ぐ力(純利益÷k=約 18 億円)で上限を測る。純利益の大半が配当なので PER 11 倍とした。 営業利益が 0.6 億円と小さいので EV÷営業利益は 40 倍と高く出るが、価値の大半は営業外の配当と売れる資産の床にあり、EV では測らない。
確率:2026/06 期の 0.5% という利益率が一時でなく続く姿。直近 3 期で利益率が下がり続けているので厚めに置く。
悲観 12% 刷り物から退き、箱でも負ける 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 303 円16 億円
大手の印刷会社が箱でも量を取りにくる。笹徳印刷は大口の客を失い、箱の出荷は 2 割減る。値上げは通らず、箱の営業利益は赤字になる。
刷り物は半分に減り、工場の一部を閉じて減損を出す。自己資本は 85 億円まで減る。関東の増設も稼働が上がらず、償却だけが重く残る。
配当は下限を守れず減らされる。残る価値は持ち合いの株と借入を返した残りだ。ただ会社はその株を売らずに持ち続けるので、株主がその価値を手にできるとは限らない。
王子グループも包装の調達先を見直し、ネピアの箱の量が減る。帳簿の価値と株主の手取りの差は、会社が残る限り埋まらない。
- パッケージング(紙器・軟包装):数量 7.0(紙器・包材の出荷数(億個・年、推定))× 価格 1,250(1 個あたりの売上(銭・名目))→ 売上 88 億円・営業利益 −1 億円。7.0 億個 × 1,250 銭、利益率 −1%
- コミュニケーション(商業・出版印刷・制作):数量 34.7(刷り物の出荷(百万部・年、推定))× 価格 57(1 部あたりの売上(円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 −1 億円。3,470 万部 × 57 円、利益率 −4%
倍率:赤字なので PBR で測る。床は今の自己資本 96 億円に掛け、売れる資産の床(約 16 億円)と並ぶ 0.17 倍。
確率:大手と地場の紙器会社に挟まれ、中堅の専業が構造的に負ける筋書き。持ち合いの株が床を支えるので、深さはあるが確率は普通に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
パッケージング(紙器・軟包装)
菓子・食品・化粧品・日用品の紙箱とフィルムの軟包装。王子ネピアなどに納める。
| 数量紙器・包材の出荷数(億個・年、推定) | 価格1 個あたりの売上(銭・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 8.8 | 1,000 | 88 | 1 |
| 10 年後 中立 | 9.6 | 1,340 | 129 | 3 |
取り方:個数の開示は無いので、分野の売上 87.6 億円を 1 個 1,000 銭前後と見て年 8.76 億個と推定(推定)。営業利益は全社 0.63 億円のうち、刷り物の赤字を見て箱に 1.2 億円を割り振った推定。
コミュニケーション(商業・出版印刷・制作)
自動車の整備書やカタログ、書籍・カレンダーの印刷と、映像・ウェブ制作、イベント運営。
| 数量刷り物の出荷(百万部・年、推定) | 価格1 部あたりの売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 69.3 | 50 | 35 | −1 |
| 10 年後 中立 | 48.5 | 63 | 31 | 0 |
取り方:部数の開示は無いので、分野の売上 34.6 億円を 1 部 50 円前後と見て年 6,930 万部と推定(推定)。量の減りと値段の競争で赤字とみた推定。
リスクと懸念
値上げの遅れ
人件費・紙・インキ・電気・物流の費用が上がっても、売値に移すのは後追いになる。2026/06 期は営業利益率が 0.5% まで落ちた。物価 3% の世の中では、この遅れが毎年の利益を削る。
刷り物の縮小
カタログ・チラシ・書籍の刷り物はデジタル化で量が減り続け、値段の競争も厳しい。売上の 3 割を占める分野で、赤字が固まれば工場の整理と減損が要る。
関東の増設の採算
関東工場に紙器のラインを増やした。機械と建屋の値段が上がった時期の投資で、償却は今の機械より重い。稼働が上がらなければ利益を押し下げる。
持ち合いの株の扱い
トヨタや王子など約 31 億円の取引先の株を持つ。株価が下がれば自己資本が目減りし、配当が減れば純利益の半分近くが揺らぐ。逆に売る方針に転じれば還元は大きく増える。
王子グループへの依存
王子マテリアが議決権の 18% を持ち、最大の客は王子ネピアだ。王子グループの調達の方針が変われば、箱の量と値段が大きく動く。再編の芽にもなりうる。
今後の分かれ目
- 持ち合いの株を減らす数値目標を示し、売った資金を還元に回したら
- 株の価値を税後で足し、戻り方を上げる。価値は大きく上がる。
- 営業利益率が 2 期続けて 2.5% を超えたら
- 値上げの定着とみて、やや楽観の確率を上げる。
- 関東工場の稼働が上がらず、償却で減益が続いたら
- やや悲観に近づく。増設の投資が資本コストを下回るかを見る。
- 刷り物の工場を閉じる・事業を売る判断をしたら
- 一度の損失は出るが、赤字の芽を断つので中立の利益率は少し上がる。
- 王子グループが出資を増やす、または再編を持ちかけたら
- 買われる側として価値が見直される。ただし発表までは数えない。
見ておくもの
- 箱の分野の売上と値上げの浸透
- 刷り物の分野の売上の減り方
- 関東工場の稼働と償却
- 持ち合いの株の売却と還元の額
- 王子マテリアの持株比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PBR(0.3 倍前後)から置かず、事業の ROE(中立 3.2%)が k 8.75% を下回るので上限 1÷k=12.1 倍から利益の質で 8〜9.5 割に置いた。持ち合いの株は配当を利益に残すので価値に足さず、悲観の床にだけ税後で数えた。リースは製造業で小さく、新しい会計基準の影響は軽い。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→11.43 倍・やや楽観 PER 10.9→11.43 倍・中立 PER 9.7→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 0.75%。同じ領域の古林紙工(0.5%)より、縮む刷り物の比重が大きい分を寿命で重く見た。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 8.75%。