結論
特種東海製紙は、特殊紙・段ボール原紙・衛生用紙を作る中堅の製紙会社だ。売上は約 950 億円。静岡の山林と水力発電を源流に持ち、近年は廃棄物燃料などのリサイクル会社を買い足している。
筆者の結論は「割高」だ。いちばんの理由は、稼ぐ力に比べて値段が高いこと。ROE は 5% 台で、資本コストの 8% に届かない。この水準の会社に、今の時価総額は重い。
良い点ははっきりしている。純有利子負債は自己資本の 0.2 倍ほどで、自己資本比率は 6 割ある。段ボール原紙は日本製紙と販売会社を共有し、需要は紙の中では底堅い。
悩ましいのは伸び方だ。会社は 2029 年 3 月期に経常利益 80 億円を掲げる。前の計画も経常利益 80 億円・ROE 7% を狙ったが、57 億円・5.4% で終わった。今期の営業利益予想は 32 億円と、むしろ減る。
10 年後の中立は、営業利益が 65 億円前後。物価で売上は 1.4 倍になるが、実質の稼ぎはほぼ横ばいだ。10 年の筋書きを確率で重みづけした本質価値は、今の時価総額を 4 割強下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で最初に見るのは、株主の手元に残る利益だ。純利益は 40 億円台で、設備の更新などに 3 年で 240 億円を使う。守りの投資が重く、自由に使える現金は多くない。
次に資本の使い方。ROE は 5% 台で、資本コストを下回る。この状態で借金を増やして還元を厚くしても、ためた利益の価値は上がらない。会社も自覚があり、PBR 1 倍割れを重要課題に挙げている。この姿勢は評価できる。ただ、まず必要なのは利益を上げることだ。
安全域は厚いほうだ。借金は軽く、純資産は時価総額を上回る。しかし ROE が資本コストを下回る会社の純資産は、額面どおりの価値にならない。帳簿の資産が多いことは、割安の理由にならない。
10 年後も存在し、今より強いか。筆者の答えは「存在する。強さは今と同じ程度」だ。特殊紙は縮む市場の小さな隙間にあり、環境関連は買収の巧拙に左右される。確信を持てない部分には、安全域を厚く取る。
何で稼ぐ会社か
収益は 4 つの柱でできている。
1 つ目は産業素材。売上の約 4 割を占める段ボール原紙とクラフト紙だ。島田工場(静岡)の子会社・新東海製紙が作り、販売は日本製紙との共同会社に任せる。当社の持ち分は 35% で、この会社の利益は営業利益でなく持分法の利益として入る。大井川の水力発電による売電も、この事業に入る。
2 つ目は特殊素材。ファンシーペーパー(装飾性の高い紙)、高級印刷用紙、絶縁や耐熱に使う機能紙、アラミドペーパー。100 種類を超える銘柄を少量ずつ売る。営業利益は約 15 億円で、売上に対する利益率はいちばん高い。
3 つ目は生活商品。トイレットペーパー、ペーパータオル、食材用の紙だ。約 8 億円の利益が出ている。
4 つ目は環境関連。廃棄物を固めた燃料(RPF)の製造、家電・廃プラスチックのリサイクル、山林を生かした土木・緑化、ウイスキーが入る。2023 年からトーエイ、貴藤などを買い、利益は 1 億円ほどから 8 億円近くに増えた。
紙で稼ぎながら、リサイクルを第 2 の柱に育てる。事業の方向は、この一点に尽きる。
優良さと弱いところ
事業の質は、紙の会社としては「普通よりやや良い」と筆者は見る。
強みは、小さく切り分けた市場で戦っていることだ。特殊紙は 100 種類を超える銘柄を持ち、大手の汎用品とぶつかりにくい。絶縁・耐熱の機能紙とアラミドペーパーは、電機や電池の部材として顧客と仕様を詰める。一度採用されれば切り替えにくく、値上げも通しやすい。
財務の堅さも質の一部だ。自己資本比率は約 6 割で、営業利益で支払利息を割った倍率は約 15 倍ある。紙の景気が悪くなっても、すぐ資金繰りに困ることはない。
弱みは三つある。一つ目は、資本の稼ぎが薄いこと。ROE は過去 10 年の中央値で 5.7% にとどまり、会社自身が見積もる資本コスト 9% を下回る。二つ目は、利益の見えにくさだ。売上の約 4 割を占める段ボール原紙の利益は持分法で入り、日本製紙が主導する共同会社の需要に左右される。三つ目は、新しい柱の再現性。環境関連は買収で伸びた事業で、買った会社が利益を出し続けるかは、数をこなすほど読みにくくなる。
堀と呼べるのは、山林と水力という自前の資源と、製紙とリサイクルを両方持つ珍しい構成くらいだ。堀は広がっていないが、狭まっているとも言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の紙は、用途で明暗が分かれる。
印刷・情報用紙は構造的に縮んでいる。日本製紙連合会の見通しでは、2026 年のグラフィック用紙の内需は前年より 6.8% 減る。同社のファンシーペーパーも、この流れの外にあるわけではない。高級感を売るぶん減り方は緩いが、出版・広告のデジタル化で数量は細る。
包装用紙は底堅い。2026 年は 1% 減にとどまる。通販と食品の需要が支える。ただ人口が減る国では、長い目で見て横ばいから微減だ。同社は 2026 年 4 月、日本製紙・トーモクなどと協業検討の覚書を結んだ。原紙の専業が組んで、生産・物流・調達の無駄を削る狙いだ。
衛生用紙は生活必需品だが、供給が余りやすい。ペーパータオルは新規参入と輸入品が増え、価格競争が強まりやすい。原料の古紙は調達が難しくなっている。
伸びる領域は 2 つある。絶縁・耐熱の機能紙は、会社の試算で電材市場が年 5% 伸びる。廃棄物の再資源化は、資源の安全保障と規制を背景に、構造的に伸びる。ただ人口減で廃棄物の量そのものは減る。
同業は、洋紙の日本製紙・王子ホールディングス、家庭紙の大王製紙など。当社は規模で劣るぶん、まねされにくい小さな市場に寄せている。
資本政策と M&A
資本政策は、還元を厚くしながら、買収で第 2 の柱を作る二本立てだ。
2026 年 5 月に還元の方針を変えた。中計の 3 年間は、配当性向 50% か純資産配当率(DOE)4.0% の高いほうを配当にする。自社株買いも機動的に行う。前の方針は総還元性向 30% 以上で、実績は 43% だった。
同時に、成長投資に 230 億円以上、設備の更新などに 240 億円を使う。営業キャッシュフロー 400 億円では足りず、借入を 230 億円以上増やす計画だ。還元を上げながら借金も増やす。ROE を上げたい狙いはわかるが、利益が伸びなければ財務の余裕を削る。
M&A は、環境関連で買う側に回っている。2023〜2026 年に 88 億円を投じ、トーエイ、貴藤、フジエダロードを子会社にした。次の 3 年は 190 億円以上を見込む。
再編では、巴川コーポレーションから特殊機能紙の営業権を譲り受けた。筆者は、段ボール原紙で日本製紙との距離がさらに縮まる可能性を見る。当社自身が買われるかどうかは、大株主が信託口中心で支配株主がいないため、読みにくい。政策保有株は縮減する方針だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
小さな市場を押さえた会社として、地味でも利益は積み上がる。営業利益は 3 年連続で増え、経常利益は過去最高の水準にある。特殊印刷用紙と衛生用紙は値上げが通り、利益が戻った。
環境関連は、計画どおりに伸びた。買収した会社が利益を出し、セグメント利益は 3 年で 1 億円ほどから 8 億円近くになった。次の 3 年で 17 億円を狙う。リサイクルは規制と資源の安全保障を背景に、構造的に伸びる市場だ。
機能紙は、電機・電池向けの市場が年 5% で伸びる。アラミドペーパーの増産投資に踏み切れば、成長の芽が実になる。絶縁や耐熱の用途は置き換えにくく、値段も保ちやすい。
段ボール原紙は、日本製紙・トーモクとの協業でコストを削れる。生産・物流・調達の無駄を共同で減らせば、持分法の利益の下支えになる。
財務は軽い。自己資本比率は約 6 割で、借入を増やす余力が十分にある。環境の買収を 190 億円以上続けられる。配当性向 50% か DOE 4% を守るので、株主還元も厚くなる。計画どおりなら、ROE は 7% に近づく。
慎重な見方
目標を外し続けてきた会社だ。前の計画は経常利益 80 億円・ROE 7% を掲げ、結果は 57 億円・5.4% だった。今回も同じ数字を 3 年後に置き直しただけに見える。今期の営業利益予想は 32 億円で、前期より減る。
特殊印刷用紙は、印刷市場の縮小で数量が細る。値上げは一巡し、次は顧客離れを早める。機能紙は、需要先の停滞で数量が落ちた。アラミドペーパーの増産は、前の計画で 30 億円を投じるはずが実行されず、持ち越された。
段ボール原紙は、利益の中身が見えにくい。売上の 4 割を占めるのに、利益は持分法で入る。日本製紙が主導する共同会社の需要が弱れば、営業利益に出ないまま利益が減る。
環境関連は、買って伸ばした事業だ。買収の価格が高ければ成果は出ない。有利子負債を 230 億円以上増やし、還元を DOE 4% で厚くすれば、財務の余裕は減っていく。ROE が資本コストを下回るまま借金を増やすのは、価値を高めない。
衛生用紙は新規参入と輸入品で価格競争が強まり、利益の計画 9 億円に届かない可能性がある。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。理由は三つ。第一に、会社は目標を外し続けた。第二に、稼ぐ力が資本コストに届かず、今の値段は回復を先取りしている。第三に、売上の 4 割を占める段ボール原紙の利益が持分法にあり、確かめにくい。
強気の見方には、軽い借金と、環境関連の確かな伸びがある。ただ、それは利益を押し上げても、ROE を資本コスト以上に引き上げるほどではない。
確率は、中立 40%、やや悲観 28%、悲観 12% に置いた。楽観は 5%、やや楽観は 15%。借金が軽いぶん、悲観の確率はほかの紙会社より低くした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,761 円604 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 891 円306 億円)。 今の値に割り戻すと 1,448 円497 億円、今との差 −33.1%、 期待の年率 +2.1%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 3,079 円1,057 億円 | 1,107 円380 億円 | +93.4% | +6.8% | 209 円72 億円 |
| やや楽観 | 15% | 2,590 円889 億円 | 1,078 円370 億円 | +69.5% | +5.4% | 550 円189 億円 |
| 中立 | 40% | 2,139 円734 億円 | 1,049 円360 億円 | +47.3% | +4.0% | 1,275 円438 億円 |
| やや悲観 | 28% | 1,059 円364 億円 | 757 円260 億円 | −16.0% | −1.7% | 509 円175 億円 |
| 悲観 | 12% | 554 円190 億円 | 350 円120 億円 | −58.3% | −8.4% | 108 円37 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,761 円604 億円 | 891 円306 億円 | +22.5% | +2.1% | 2,652 円910 億円 |
今の株価時価総額 2,164 円743 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 5% 楽観:機能紙と環境が計画を上回って伸びる 利益 78 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,079 円1,057 億円
アラミドペーパーの増産が当たり、電機・電池向けの機能紙が伸びる。特殊素材の出荷量は今の 1.05 倍、価格は物価を少し上回る 1.40 倍。利益率は 9% に上がる。
環境関連は、買収した会社が次々に利益を出す。取り扱い規模は実質で 2 倍強、シェアは 1.9% に上がり、利益率は 6.5%。セグメント利益は 40 億円近くに届く。
段ボール原紙は、日本製紙・トーモクとの協業でコストが下がり、利益率は 4.5%。衛生用紙も値上げが通り、5.5%。営業利益は 100 億円前後、純利益は 78 億円に乗る。
還元は DOE 4% の方針どおりで、10 年で 380 億円。借入は増えるが、利益の伸びで軽く保つ。ただ ROE は 7% 台にとどまり、資本コストには届かない。
- 産業素材(段ボール原紙・クラフト紙・水力発電):数量 41.7(当社の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 13(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 530 億円・営業利益 24 億円。出荷量は今の 0.97 倍、価格 1.40 倍。利益率 4.5%
- 特殊素材(ファンシーペーパー・機能紙・アラミドペーパー):数量 8.2(当社の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 35(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 287 億円・営業利益 26 億円。出荷量は今の 1.05 倍、価格 1.40 倍。利益率 9.0%
- 生活商品(トイレットペーパー・ペーパータオル・食材紙):数量 13.5(当社の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 19(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 260 億円・営業利益 14 億円。出荷量は今の 1.02 倍、価格 1.38 倍。利益率 5.5%
- 環境関連(リサイクル・土木緑化・ウイスキー):数量 418(対象市場(実質・推定 2 兆円)× 当社シェア(約 0.9%)で測った取り扱い規模(億円相当))× 価格 1.40(物価の指数(今 = 1.00。名目の値上がりを 1.34 倍で表す))→ 売上 585 億円・営業利益 38 億円。取り扱い規模は今の 2.27 倍(市場 1.10 倍、シェア 1.90%)、価格 1.40 倍。利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 78 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 1,006 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:機能紙の増産が当たり、環境の買収も成功し、段ボール原紙の協業も進む、という好条件の重なりが要る。過去の計画未達の実績を踏まえ 5% とした。
やや楽観 15% やや楽観:計画に近い形で 10 年かけて届く 利益 65 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,590 円889 億円
機能紙は需要が戻り、特殊素材の出荷量は今の 0.97 倍。ファンシーペーパーの縮小を、機能紙の伸びがほぼ埋める。価格は物価並みの 1.37 倍で、利益率は 8%。
環境関連は、買収が計画の 190 億円に近い額で進み、シェアは 1.7% へ。利益率は 6%。段ボール原紙は協業が実って 4%、衛生用紙は 5%。
営業利益は 80 億円前後、純利益は 65 億円。計画の経常利益 80 億円には 2030 年代前半に届く。還元は 10 年で 370 億円。借入は 300 億円台まで増えるが、利払いは営業利益の 1 割台にとどまる。
- 産業素材(段ボール原紙・クラフト紙・水力発電):数量 40.9(当社の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 12(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 508 億円・営業利益 20 億円。出荷量は今の 0.95 倍、価格 1.37 倍。利益率 4.0%
- 特殊素材(ファンシーペーパー・機能紙・アラミドペーパー):数量 7.6(当社の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 34(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 259 億円・営業利益 21 億円。出荷量は今の 0.97 倍、価格 1.37 倍。利益率 8.0%
- 生活商品(トイレットペーパー・ペーパータオル・食材紙):数量 13.2(当社の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 19(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 251 億円・営業利益 13 億円。出荷量は今の 1.00 倍、価格 1.36 倍。利益率 5.0%
- 環境関連(リサイクル・土木緑化・ウイスキー):数量 367(対象市場(実質・推定 2 兆円)× 当社シェア(約 0.9%)で測った取り扱い規模(億円相当))× 価格 1.37(物価の指数(今 = 1.00。名目の値上がりを 1.34 倍で表す))→ 売上 503 億円・営業利益 30 億円。取り扱い規模は今の 2.00 倍(市場 1.08 倍、シェア 1.70%)、価格 1.37 倍。利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 65 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 838 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:経常利益 80 億円の計画に近い水準へ、会社が数年遅れで届く筋書き。環境の伸びは確かだが、拡販の遅れという過去の癖は残る。
中立 40% 中立:計画の水準に届くが、実質の稼ぎは横ばい 利益 53 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,139 円734 億円
ファンシーペーパーは縮むが、機能紙とアラミドが一部を埋める。特殊素材の出荷量は今の 0.9 倍、価格は物価並みの 1.34 倍。利益率は 7% で、今よりわずかに下がる。
段ボール原紙は出荷量が 0.93 倍に細り、利益率は 3.5%。衛生用紙は出荷量が横ばいで、価格競争の中で 4.2%。環境関連は、買収で取り扱い規模が実質 1.8 倍に増え、シェアは 1.6%、利益率は 5.5%。
営業利益は 65 億円前後。物価を除けば今と同じ水準の稼ぎだ。持分法の利益と受取配当を足し、純利益は 53 億円。借入は 300 億円まで増え、利払いが年 10 億円ほど残る。
還元は DOE 4% の方針で、10 年に 360 億円。純利益の 7 割近くを返し、自己資本は 960 億円にとどまる。ROE は 5.5% で、資本コストには届かない。
- 産業素材(段ボール原紙・クラフト紙・水力発電):数量 40.0(当社の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 12(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 486 億円・営業利益 17 億円。出荷量は今の 0.93 倍、価格 1.34 倍。利益率 3.5%
- 特殊素材(ファンシーペーパー・機能紙・アラミドペーパー):数量 7.0(当社の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 34(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 235 億円・営業利益 16 億円。出荷量は今の 0.90 倍、価格 1.34 倍。利益率 7.0%
- 生活商品(トイレットペーパー・ペーパータオル・食材紙):数量 13.2(当社の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 19(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 248 億円・営業利益 10 億円。出荷量は今の 1.00 倍、価格 1.34 倍。利益率 4.2%
- 環境関連(リサイクル・土木緑化・ウイスキー):数量 336(対象市場(実質・推定 2 兆円)× 当社シェア(約 0.9%)で測った取り扱い規模(億円相当))× 価格 1.34(物価の指数(今 = 1.00。名目の値上がりを 1.34 倍で表す))→ 売上 450 億円・営業利益 25 億円。取り扱い規模は今の 1.83 倍(市場 1.05 倍、シェア 1.60%)、価格 1.34 倍。利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 53 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 684 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気と慎重の議論の落としどころ。環境の伸びと紙の縮小が打ち消し合い、営業利益は名目で伸びても、物価を除けばほぼ横ばい。借金の軽さを考え、確率は 40% とした。
やや悲観 28% やや悲観:紙の縮小が速く、買収が実を結ばない 利益 31 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,059 円364 億円
特殊印刷用紙は需要が年 5% で縮み、機能紙も需要先の停滞で伸びない。特殊素材の出荷量は今の 0.78 倍、価格は物価に追いつかず 1.28 倍。利益率は 5.5% に下がる。
段ボール原紙は共同会社の需要が弱り、出荷量は 0.88 倍。利益率は 2.5%。衛生用紙は輸入品とペーパータオルの新規参入で、利益率が 3.2%。
環境関連は、買収の価格が高くつき、シェアは 1.25% どまり。利益率は 4%。営業利益は 40 億円弱、純利益は 31 億円。
会社は還元の方針を見直し、10 年の還元は 260 億円。それでも利益を上回る年が出て、自己資本は 950 億円前後で足踏みする。ROE は 3% 台にまで落ちる。
- 産業素材(段ボール原紙・クラフト紙・水力発電):数量 37.8(当社の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 12(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 439 億円・営業利益 11 億円。出荷量は今の 0.88 倍、価格 1.28 倍。利益率 2.5%
- 特殊素材(ファンシーペーパー・機能紙・アラミドペーパー):数量 6.1(当社の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 32(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 195 億円・営業利益 11 億円。出荷量は今の 0.78 倍、価格 1.28 倍。利益率 5.5%
- 生活商品(トイレットペーパー・ペーパータオル・食材紙):数量 12.5(当社の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 18(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 223 億円・営業利益 7 億円。出荷量は今の 0.95 倍、価格 1.27 倍。利益率 3.2%
- 環境関連(リサイクル・土木緑化・ウイスキー):数量 250(対象市場(実質・推定 2 兆円)× 当社シェア(約 0.9%)で測った取り扱い規模(億円相当))× 価格 1.28(物価の指数(今 = 1.00。名目の値上がりを 1.34 倍で表す))→ 売上 320 億円・営業利益 13 億円。取り扱い規模は今の 1.36 倍(市場 1.00 倍、シェア 1.25%)、価格 1.28 倍。利益率 4.0%
倍率:事業の ROE は 3% 台で資本コストに届かない。純利益 31 億円の稼ぐ力で測り、紙の縮小で利益が年 2% ほど先細る前提なので、1÷(k+2%)=10 倍に置いた(k の上乗せとは別に、利益そのものが縮む分)。
確率:前の計画を外した実績があり、買収で伸ばす事業の再現性にも不安がある。中立に次いで現実味のある筋書きとして 28% を置いた。
悲観 12% 悲観:構造的に負け、資本を入れ直す 利益 6 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 554 円190 億円
特殊印刷用紙は市場ごと縮み、機能紙とアラミドも海外品に押される。特殊素材の出荷量は今の 0.62 倍、価格は 1.15 倍にとどまり、利益率は 3%。
段ボール原紙は共同会社の再編で価格交渉力を失い、利益率は 1%。衛生用紙は価格競争で 1.5%。環境関連は、高値づかみの買収で減損が出て、利益率は 2%。
営業利益は 10 億円ほど。持分法の利益も細り、純利益は 6 億円。還元は 120 億円に減らし、減損で自己資本は 760 億円に縮む。
売れる資産(社有林・水力発電所・工場用地・環境子会社)を税後で約 400 億円と見て、借入の約 200 億円を返したあとの約 190 億円が、株主に残る価値の目安になる。還元の 120 億円は、手元の資金と資産の売却から払う。
- 産業素材(段ボール原紙・クラフト紙・水力発電):数量 35.3(当社の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 10(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 368 億円・営業利益 4 億円。出荷量は今の 0.82 倍、価格 1.15 倍。利益率 1.0%
- 特殊素材(ファンシーペーパー・機能紙・アラミドペーパー):数量 4.8(当社の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 29(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 139 億円・営業利益 4 億円。出荷量は今の 0.62 倍、価格 1.15 倍。利益率 3.0%
- 生活商品(トイレットペーパー・ペーパータオル・食材紙):数量 11.6(当社の出荷量(万トン・年、推定))× 価格 16(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 182 億円・営業利益 3 億円。出荷量は今の 0.88 倍、価格 1.12 倍。利益率 1.5%
- 環境関連(リサイクル・土木緑化・ウイスキー):数量 171(対象市場(実質・推定 2 兆円)× 当社シェア(約 0.9%)で測った取り扱い規模(億円相当))× 価格 1.15(物価の指数(今 = 1.00。名目の値上がりを 1.34 倍で表す))→ 売上 197 億円・営業利益 4 億円。取り扱い規模は今の 0.93 倍(市場 0.95 倍、シェア 0.90%)、価格 1.15 倍。利益率 2.0%
倍率:稼ぐ力は純利益 6 億円を k で割っても約 75 億円で、売れる資産(税後約 400 億円)から借入約 200 億円を引いた約 190 億円のほうが大きい。今の自己資本 833 億円に 0.228 を掛けた。減損で自己資本が減る分は、倍率の側ではなく筋書きの自己資本に入れた。EV÷営業利益は営業利益が 10 億円と小さく意味を持たない水準で、倍率ではなく残る資産で測った。
確率:紙の縮小が速く、機能紙の拡販に失敗し、環境の買収でも減損が出る、という複合の筋書き。財務が軽く、すぐに破綻する形ではないので 12% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
産業素材(段ボール原紙・クラフト紙・水力発電)
新東海製紙(島田工場)が作る段ボール原紙とクラフト紙、大井川の水力発電による売電。販売は日本製紙との共同会社。
| 数量当社の出荷量(万トン・年、推定) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 43.0 | 9.07 | 390 | 13 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 12 | 486 | 17 |
取り方:段ボール原紙・クラフト紙の売上は連結の約 4 割という会社の説明から、外部売上を約 390 億円とし、1 トンあたり約 9 万円で割って出荷量を約 43 万トンとした(推定)。営業利益 13 億円は、セグメント利益 20 億円から持分法の利益(共同会社 NTI)を除いた推定。持分法の分は営業外に入る。
特殊素材(ファンシーペーパー・機能紙・アラミドペーパー)
特殊印刷用紙、絶縁・耐熱の機能紙、アラミドペーパー。100 種類超の銘柄を少量ずつ売る。
| 数量当社の出荷量(万トン・年、推定) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.8 | 25 | 195 | 15 |
| 10 年後 中立 | 7.0 | 34 | 235 | 16 |
取り方:2026/03 期の 3 四半期累計の売上 149 億円から、通期の外部売上を約 195 億円とし、1 トンあたり約 25 万円(ファンシーペーパーや機能紙は汎用紙の 2〜3 倍の単価)で出荷量を約 7.8 万トンとした(推定)。営業利益 15 億円は会社開示のセグメント利益(1,494 百万円)。
生活商品(トイレットペーパー・ペーパータオル・食材紙)
衛生用紙と、ラミネート加工品。生活必需品で需要は安定するが、競合が多い。
| 数量当社の出荷量(万トン・年、推定) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 13.2 | 14 | 185 | 8 |
| 10 年後 中立 | 13.2 | 19 | 248 | 10 |
取り方:3 四半期累計の売上 146 億円から通期の外部売上を約 185 億円とし、1 トンあたり約 14 万円で出荷量を約 13.2 万トンとした(推定)。営業利益 8 億円は会社開示のセグメント利益(798 百万円)。
環境関連(リサイクル・土木緑化・ウイスキー)
廃棄物燃料(RPF)、家電・廃プラスチックのリサイクル、山林を生かした土木・緑化、ウイスキー。買収で伸びている。
| 数量対象市場(実質・推定 2 兆円)× 当社シェア(約 0.9%)で測った取り扱い規模(億円相当) | 価格物価の指数(今 = 1.00。名目の値上がりを 1.34 倍で表す) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 184 | 1.00 | 184 | 8 |
| 10 年後 中立 | 336 | 1.34 | 450 | 25 |
取り方:廃棄物の処理・再資源化・土木緑化・森林関連の国内の対象市場を、実質で約 2 兆円と推定し、当社シェアを約 0.9% とみて、取り扱い規模を約 184 億円(今の外部売上)に置いた。物価の分は価格の指数に入れる。商品が重さや件数でそろわないので、市場規模 × シェアで置いた推定。営業利益 8 億円は会社開示のセグメント利益(755 百万円)。 【数量は実物】市場は実質(10 年で 1.05 倍)に置き、取り扱い規模が 1.83 倍になる分はシェア(0.9% から 1.6%、買収による)の伸び。市場の名目の伸びは使っていない。物価は価格側だけに掛けた。
リスクと懸念
段ボール原紙の利益が持分法で見えにくい
売上の約 4 割を占める段ボール原紙・クラフト紙は、日本製紙との共同販売会社(持分 35%)を通じて売られ、利益は持分法で入る。共同会社の需要や価格交渉は、当社の意思だけでは決まらない。2026 年 4 月の協業検討も、成果が出るまで時間がかかる。
特殊印刷用紙の縮小と機能紙の需要の波
ファンシーペーパーや高級印刷用紙は、出版・広告のデジタル化で数量が細る。機能紙は、顧客の電機・電池の生産が落ちると、前期のように数量が減る。アラミドペーパーの増産投資は前の計画で見送られ、拡販が遅れている。
環境関連の買収が利益を出さない
次の 3 年で 190 億円以上を環境関連の買収に使う計画だ。買う会社が増えるほど、価格と中身を見極める難しさが増す。のれんや設備の減損が出れば、セグメント利益の計画 17 億円どころか、自己資本も削る。
借入の増加と金利
営業キャッシュフロー 400 億円に対し、成長投資 230 億円以上、設備の更新 240 億円、還元 90〜160 億円を計画する。借入が 230 億円以上増える。借り換えで金利が 3.5% 前後になれば、利払いは今より重い。純有利子負債は今の 194 億円から大きく増えうる。
衛生用紙の価格競争
ペーパータオルは新規参入と輸入品が増え、供給が余りやすい。古紙の調達も難しくなり、原料の段ボール古紙を配合した新製品の品質と価格の両立が問われる。生活商品の利益 8 億円は、価格が崩れれば簡単に消える。
計画を外す癖
前の計画は営業利益 50 億円・経常利益 80 億円・ROE 7% を狙い、いずれも未達だった。今期の営業利益予想は 32 億円と減る。新しい計画の経常利益 80 億円・ROE 7% も、拡販の遅れを取り戻せなければ届かない。
今後の分かれ目
- 機能紙の需要が戻り、アラミドペーパーの増産投資が 2027 年度までに決まったら
- 特殊素材の利益が計画の 17 億円に近づく。中立の営業利益を上に見直し、確率を中立から楽観側へ少し移す。投資の決定が 2028 年度以降へずれ込めば、やや悲観へ寄せる。
- 日本製紙・トーモクとの協業が、工場の相互補完や共同生産まで進んだら
- 段ボール原紙のコストが下がり、持分法の利益が増える。公正取引の審査と出資比率の調整に時間がかかる点は織り込む。
- 環境関連の買収で、買った会社が 2 年以内に利益を出し始めたら
- セグメント利益 17 億円が現実味を帯び、環境の利益率が 6% に近づく。買収後に減損が出れば、やや悲観の確率を上げる。
- 借入が 400 億円を超え、営業利益÷支払利息が 8 倍を割ったら
- 還元の厚さが財務を削っている合図。DOE 4% の配当方針が見直されうる。純利益は借り換えの金利で 1 割ほど減る。
- 衛生用紙のペーパータオルの価格が崩れ、生活商品が営業赤字に戻ったら
- 事業の入れ替えか撤退を迫られる。生活商品の利益 8 億円が消え、中立の営業利益は 55 億円前後に下がる。
- 自社株買いが、時価総額の 1 割規模で行われたら
- ROE は上がって見えるが、利益そのものは変わらない。本質価値の評価は動かさず、資本の使い方の判断だけを前向きに見直す。
見ておくもの
- 特殊素材の四半期の営業利益と、アラミドペーパーの増産投資の決定時期
- 日本製紙連合会の月次統計での包装用紙・グラフィック用紙の内需と、日本製紙・トーモクとの協業の進展
- 環境関連のセグメント利益(計画 17 億円)と、買収案件の公表・のれんの額
- 純有利子負債と、営業利益÷支払利息。借入が計画どおり増えるか
- 配当性向 50% か DOE 4% のどちらが効いているかと、自社株買いの実施額
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の経済性だけで置いた。10 年後の中立は、純利益を 53 億円、ROE を約 5.5% とし、資本コスト 7.75% に届かないので正当化 PER の上限は 1÷k の 12.5 倍。堀の弱さと紙の縮小は残る割合と k で見ているので重ねて引かず、上限の 9 割の 11.2 倍にした。市場の PER や今の株価からは逆算していない。今の株価が倍になっても半分になっても、この計算は動かない。結果は、今の時価総額を大きく下回る本質価値になった。純有利子負債は時価総額の 2 割強なので、EV÷営業利益でも確かめ、中立で 10 倍前後に収まる。リースは、新リース会計基準で 2028/03 期から BS に載るが、店舗を借りて営む会社ではなく影響は小さい。10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。社有林と土地の含み益は、金額を確かめられなかったので価値に入れていない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5% を足した。借金が軽く、事業が傾いてはいないので上乗せ(distress)は付けない。買収の失敗や日本製紙との関係など個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.75%。