結論
岡山製紙は、岡山市の1つの工場で段ボールの中芯原紙を作る小さな製紙会社だ。議決権の約49%を王子ホールディングスが持ち、製品の多くは王子グループの会社を通じて売れていく。
筆者の結論は「やや割高」寄りだ。いちばんの理由は、帳簿の厚さが株主の価値になりにくいことにある。時価総額77億円に対し、手元の現金は53億円、投資有価証券は50億円もある。だが配当は利益の3割弱で、現金は10年で倍に積み上がった。使い道を決めるのは大株主だ。
事業そのものは堅い。借金はなく、24時間の連続運転で費用を抑え、値上げの波にも乗れている。ただ中芯原紙は品質で差がつきにくい汎用品で、段ボールの薄肉化で量は少しずつ減る。自己資本利益率は5%台と、資本コストの8.5%に届かない。
10年後も工場は動いているだろう。ただ利益は物価の分しか伸びず、厚い現金に見合う価値は付けにくい。値段が安く見えるのは、市場がこの「戻らない現金」を割り引いているからで、筆者はその割引を妥当と見る。王子が残りの株を買い取る日が来れば話は変わるが、それは今の価値には入れられない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「堅いが育たない事業に、使われない現金が付いている」形だ。工場は10年後も動いている見込みが高く、借金もない。ただ汎用の中芯原紙に堀、つまり他社がまねできない強みはない。値段は市況と大手が決める。
株主のものになる利益で見ると、純利益は年7〜8億円ある。そこから抄紙機の更新に、償却を上回る現金が出ていく。建設費が上がる中で、古い設備を延命するほど現金は細る。
安全域は現金と投資有価証券にあるように見える。ただ、その使い道を決めるのは少数株主ではない。資本を上手に配分しているかと問えば、答えは「ためている」だ。利益の7割以上を手元に残し、その利益が5%程度しか稼がないなら、ためた利益はその額の価値を持たない。
オーナーとして持ち続けたいかと問われれば、王子が株を買い取るか、還元を大きく変えない限り、値段に十分な割引が要る会社だ。堅実さは本物だが、それだけでは安全域にならない。
何で稼ぐ会社か
売上112億円の9割弱が板紙だ。古紙を溶かして抄紙機ですき、段ボールの波形の芯になる中芯原紙と、紙管の原紙を作る。買い手は段ボール会社で、王子ホールディングスの100%子会社である森紙販売、佐賀板紙、王子コンテナーなどに製品を売る。
残りの1割強が美粧段ボールだ。製紙工場の隣に加工工場を置き、家電や青果物、医薬品、飲料、贈答品の印刷した個装箱を作る。段ボールの板に直接刷れる6色のインクジェット機を国内で初めて入れ、多品種の小ロットに対応する。
生産の拠点は岡山の本社工場1か所で、従業員は約200人。中国地方を中心に、地元の荷主と段ボール会社に根を張る。上場は2013年のジャスダックからで、いまは東証スタンダードにある。
板紙のセグメント利益は9.4億円で、全社の利益のほぼすべてを稼ぐ。美粧段ボールは長く赤字か収支とんとんだ。
稼ぎの仕組みは単純だ。古紙を安く集め、電気と蒸気で紙にし、トンあたりの値段で売る。利益を左右するのは、古紙と燃料の値段と、製品の値上げが通る時期のずれだ。2024年5月期は値上げが先に効いて利益率が14.6%まで上がり、翌期は費用が追いついて9%に戻った。
優良さと弱いところ
強みは、工場が1か所にまとまった身軽さと、借金のない財務だ。各工程に自動制御を入れて24時間で回し、少ない人数で抄紙機を動かす。古紙と燃料が上がった2022年以降も、値上げで利益率を8〜15%に保った。
弱みは三つある。一つ目は、製品が汎用品で値段を自分で決められないことだ。中芯原紙は品質で差がつきにくく、値段は業界の市況と大手の動きで決まる。二つ目は、王子グループへの依存だ。販売の多くがグループを通るため、グループの能力の集約しだいで工場の役割が変わる。三つ目は、資本の効率の低さだ。自己資本は145億円に膨らみ、その7割が現金と投資有価証券で、自己資本利益率は5%台にとどまる。
経営は手堅いが、資本を株主に返す意志は弱い。配当方針は自己資本配当率2%以上で、2026年5月期に増やしたが、配当性向は3割に届かない。社外の目で資本の使い方を問う声も、今のところ表には出ていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の段ボール原紙は、量が年1%弱ずつ減る成熟した市場だ。通販と食品の箱は堅いが、箱を薄く軽くする流れが量を削る。紙と板紙を合わせた国内需要は、2026年に初めて2,000万トンを割る見通しだ。
中芯原紙の値段は、古紙と電気・燃料の値段に引っ張られる。2022年以降は原料高を受けて業界で値上げが続き、量が減っても売上は保たれた。今は値上げが一巡し、会社も次の期は減益を見込む。
競争の軸は、大手の能力調整だ。王子ホールディングス、レンゴー、日本製紙系が国内の板紙を握り、古い抄紙機を止めて大きな工場に生産を寄せている。残った工場の稼働が上がれば値段は締まる。岡山製紙はその寡占の中で、王子グループの西日本の供給を担う位置にいる。
10年で見れば、量は1割弱減り、値段は物価並みに上がるのが業界の普通の姿だ。紙への包装の切り替えは追い風だが、中芯の量を大きく押し上げるほどではない。
美粧段ボールの市場は、大手の段ボール会社の加工部門と地場の加工会社がひしめく。印刷の質と小ロットへの対応で選ばれるが、値段の競争は厳しい。
資本政策と M&A
論点は、積み上がった現金の行き先だ。純現金は53億円と、時価総額の7割近い。2016年の25億円から倍に増えた。投資有価証券も50億円あり、株価の上昇で1年に13億円増えた。
還元は自己資本配当率2%以上を目安にした配当だけで、自社株買いはしていない。配当性向は約28%にとどまる。
約49%を持つ王子ホールディングスの存在が、すべてを決める。親子上場の解消を求める流れの中で、王子が残りの株を買い取る可能性はある。逆に、今の形が続けば現金は会社に眠ったままだ。筆者は、手元の現金のうち株主に届くのは半分程度と見る。投資有価証券は配当を生み、その分は利益に入っているので、別の価値としては数えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
帳簿の中身が厚すぎる。現金53億円と投資有価証券50億円を足すと、時価総額77億円を3割上回る。事業の利益はほぼタダで手に入る計算になる。
事業も弱くない。原料高の2022年以降も値上げを通し、利益率は8〜15%を保った。工場が1か所で人員が少なく、借金もないので、谷でも赤字になりにくい。過去12年で赤字の期は一度もない。
王子ホールディングスとの関係は、むしろ安心材料だ。販売の出口が確保され、グループが古い工場を止めるほど、残った岡山の工場の稼働は上がる。
親子上場の解消の圧力も強まっている。王子が残りの株を買い取るなら、現金の価値は一気に株主の手に戻る。配当も2026年5月期に増え、方針は少しずつ株主に向いてきた。
10年の価値で見ても、量が少し減るだけなら利益は物価とともに伸びる。現金の半分しか戻らないと見ても、悲観に寄せすぎだ。
古い抄紙機を止める業界の流れも、生き残る側の工場には値段を締める追い風になる。
慎重な見方
現金が厚いことと、株主のものであることは違う。配当性向は3割弱で、自社株買いはない。現金は10年で倍に増え、使われないまま積み上がった。約49%を持つ大株主が還元を求めない限り、この形は変わらない。
事業は汎用品だ。中芯原紙は品質で差がつかず、値段は大手と市況が決める。会社自身が次の期は営業利益8億円と、減益を見込む。2015〜2018年には利益率が1%を割った年が並んだ。
王子への依存は逆にも働く。グループが能力を大きな工場へ集めれば、1か所の小さな工場は止められる側に回りうる。
抄紙機は古く、更新には建設費の上がった値段で現金が要る。自己資本利益率5%台の会社が利益の7割をためても、価値は増えない。
帳簿の数字だけで割安を語るのは危うい。株主に戻らない資産は、価値の上では半分か、それ以下と見るべきだ。
美粧段ボールも長く赤字か収支とんとんで、事業を広げる手は見えない。成長の筋道がないまま現金だけが増えていく会社に、高い値は付けられない。
どちらに重みを置いたか
現金の厚さを価値に数える見方には一理あるが、その使い道を決められない点で慎重な見方が勝る。事業の利益と現金をそれぞれ測り、現金は株主に戻る分を半分と見た。確率は中立に厚く置き、悲観側を少しだけ厚くした。王子による買い取りは起こりうるが、計画も報道もない今は価値に入れない。事業の見通しは業界の普通の姿とし、楽観と悲観をほぼ同じ厚さで置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 2,456 円114 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 679 円32 億円)。 今の値に割り戻すと 1,508 円70 億円、今との差 −8.8%、 期待の年率 +6.6%(資本コスト 8.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,423 円159 億円 | 861 円40 億円 | +159.0% | +10.0% | 343 円16 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,013 円140 億円 | 775 円36 億円 | +129.0% | +8.6% | 758 円35 億円 |
| 中立 | 40% | 2,712 円126 億円 | 710 円33 億円 | +106.9% | +7.5% | 1,369 円64 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,747 円81 億円 | 603 円28 億円 | +42.0% | +3.6% | 517 円24 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,107 円51 億円 | 388 円18 億円 | −9.7% | −1.0% | 149 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,456 円114 億円 | 679 円32 億円 | +89.6% | +6.6% | 3,136 円146 億円 |
今の株価時価総額 1,654 円77 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 値上げが定着し、王子グループの中で中芯の供給を担い続ける 利益 11 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 3,423 円159 億円
国内の段ボールの量は、通販と食品の箱に支えられて横ばいを保つ。王子グループが自前の古い抄紙機を止める中で、岡山の工場は中国地方の中芯原紙の供給を引き受け、稼働を高く保つ。
値上げは物価を少し上回って定着し、板紙の利益率は9%台半ばに乗る。2024年5月期の14.6%には届かないが、原紙の市況が締まった年の利益を、ならしても守れる形になる。
美粧段ボールはインクジェットの小ロット印刷が地元の青果物や贈答品で根づき、ようやく黒字が定着する。配当は自己資本の2%を下限に増え続ける。
親子上場の解消を求める流れの中で、王子ホールディングスが残りの株を買い取る話が出てもおかしくない。ただ価値は、事業の利益と手元の現金から測る。
- 板紙(中芯原紙・紙管原紙):数量 14.0(板紙の生産・販売量(万トン、推定))× 価格 9.82(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 138 億円・営業利益 13 億円。14.0 × 9.82(今の 1.40 倍)、利益率 9.5%
- 美粧段ボール:数量 47.3(美粧段ボールの従事者数(人))× 価格 4,350(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。47.25 × 4349.8(今の 1.40 倍)、利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 159 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:王子グループの中で工場の役割が増すことと、値上げが物価を上回って定着することの両方が要る。過去 12 年で利益率 9% 超は 2 期だけなので低く置いた。
やや楽観 20% 中芯の値上げが通り、量の減りは小さく済む 利益 9 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 3,013 円140 億円
段ボールの薄肉化で中芯原紙の量は少しずつ減るが、10年で3%ほどにとどまる。工場が1か所にまとまり、24時間の連続運転で費用を抑えているため、業界の値上げにきちんと乗れる。
板紙の利益率は8%台に戻り、ここ10年の真ん中あたりで落ち着く。美粧段ボールは小さな黒字を続ける。
手元の現金は配当で少しずつ戻るが、王子ホールディングスとの関係が変わらない限り、大きな自社株買いは出ない。現金は積み上がり、資本の効率は上がらない。
抄紙機の更新には建設費の上がった分だけ現金が要るが、借入なしで賄える。
利益率8%台は、2019年5月期以降の8期のうち半分ほどで実際に出た水準だ。値上げと費用のずれがならされれば、無理のない姿になる。
- 板紙(中芯原紙・紙管原紙):数量 13.6(板紙の生産・販売量(万トン、推定))× 価格 9.61(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 131 億円・営業利益 11 億円。13.58 × 9.609(今の 1.37 倍)、利益率 8.3%
- 美粧段ボール:数量 45.0(美粧段ボールの従事者数(人))× 価格 4,257(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。45.0 × 4256.59(今の 1.37 倍)、利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 138 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近 3 期は利益率 8〜15% で、値上げを通す力は数字に出ている。ただ会社の次の期の予想は 6% 台なので、厚くはしない。
中立 40% 中芯の量は1割弱減り、利益率は7%で落ち着く 利益 7 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,712 円126 億円
国内の段ボール原紙の量は、箱の薄肉化と人口減で年1%弱ずつ減る。同社の中芯原紙も10年で7%ほど減るが、値段は物価並みに上がり、売上は名目で2割強伸びる。
板紙の利益率は7%だ。古紙と電気・燃料の値上がりを、半年ほど遅れて製品に転嫁する形が続く。今の設備の償却は取得した時の値段のまま増えないため、会計の利益は少し助かる。一方で抄紙機の部分更新は建設費の上がった値段で行うので、償却を超える現金が毎年出ていく。
美粧段ボールは売上の1割強のまま、利益はほぼ出ない。配当は自己資本の2%を目安に少しずつ増えるが、現金と投資有価証券は積み上がり、自己資本利益率は4%前後に沈む。
- 板紙(中芯原紙・紙管原紙):数量 13.0(板紙の生産・販売量(万トン、推定))× 価格 9.40(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 122 億円・営業利益 9 億円。13.02 × 9.399(今の 1.34 倍)、利益率 7.0%
- 美粧段ボール:数量 42.8(美粧段ボールの従事者数(人))× 価格 4,163(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。42.75 × 4163.38(今の 1.34 倍)、利益率 1.0%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 119 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:段ボールの薄肉化で量は少しずつ減り、値段は物価並みという業界の見方どおりの筋書きに最も厚く置いた。
やや悲観 22% 中芯の量が15%減り、利益率は4%台に落ちる 利益 4 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,747 円81 億円
通販の箱の簡易化と、段ボールそのものを使わない包装への切り替えが進み、中芯原紙の量は10年で15%減る。古紙の値上がりを製品に回しきれない年が増え、板紙の利益率は4%台に落ちる。
美粧段ボールは大手の加工会社との値段の競争で赤字が続く。工場の稼働が落ちると、1か所の工場の固定費が重くのしかかる。
配当は自己資本の2%の下限で保つが、増配は止まる。手元の現金は抄紙機の延命と赤字の穴埋めに少しずつ使われる。王子ホールディングスとの関係は変わらず、株主に現金が戻る道は細いままだ。
自己資本利益率は2%台に落ち、ためた利益はほとんど何も稼がない。事業の価値は、稼ぐ力を資本コストで割った程度まで縮む。
- 板紙(中芯原紙・紙管原紙):数量 11.9(板紙の生産・販売量(万トン、推定))× 価格 8.77(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 104 億円・営業利益 5 億円。11.9 × 8.768(今の 1.25 倍)、利益率 4.5%
- 美粧段ボール:数量 38.3(美粧段ボールの従事者数(人))× 価格 3,884(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。38.25 × 3883.75(今の 1.25 倍)、利益率 -1.0%
倍率:ROE 2.4% で k を大きく下回る。稼ぐ力の筋書きとして PER 8.5 倍(1÷k の 72%)に置き、余った現金は 0.75 倍の 30 億円に戻り方 0.5 を掛けて足した。
確率:古紙と燃料の値上がりを転嫁しきれず利益率 1% 未満に落ちた期が 2015〜2018 年に 4 期あり、起こりうる。
悲観 10% 王子グループの再編で、岡山の抄紙機が役割を失う 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,107 円51 億円
王子ホールディングスが国内の板紙の能力を大きな工場に集め、グループの販売会社経由の注文が細る。中芯原紙の量は3割減り、値段も物価に届かない。板紙の利益はほぼ消える。
美粧段ボールも赤字が広がり、人員の整理と設備の減損で自己資本の一部を失う。配当は下限まで減る。
それでも会社には、借金のない帳簿に厚い現金と投資有価証券が残る。ただ使い道を決めるのは約49%を持つ王子ホールディングスで、少数株主にどれだけ戻るかはわからない。価値は売れる資産の税後に、戻り方の半分を掛けたところまで沈む。
清算されるなら現金は戻るが、清算は少数株主には決められない。だから悲観では、帳簿の現金を下回る値段もありうる。
- 板紙(中芯原紙・紙管原紙):数量 9.8(板紙の生産・販売量(万トン、推定))× 価格 8.07(1 トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 79 億円・営業利益 0 億円。9.8 × 8.066(今の 1.15 倍)、利益率 0.5%
- 美粧段ボール:数量 31.5(美粧段ボールの従事者数(人))× 価格 3,573(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。31.5 × 3573.05(今の 1.15 倍)、利益率 -3.0%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロで、純利益÷k では値が付かない。売れる資産の床(floor_assets)84 億円に戻り方 0.5 を掛けた約 51 億円を、今の自己資本 145 億円に対する PBR 0.355 倍として置いた。
確率:王子グループが能力を集約する再編は業界の流れとして現実にある。ただ借金がなく現金が厚いため、1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
板紙(中芯原紙・紙管原紙)
岡山の本社工場の抄紙機で、古紙から段ボールの中芯原紙と紙管原紙を作る。多くは王子グループの販売会社と段ボール会社に売る。
| 数量板紙の生産・販売量(万トン、推定) | 価格1 トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 14.0 | 7.01 | 98 | 9 |
| 10 年後 中立 | 13.0 | 9.40 | 122 | 9 |
取り方:板紙の売上 98.2 億円を、中芯原紙の 1 トンあたり単価を約 7 万円と見て割り、年 14 万トンと推定した(トン数の開示は無い)。数量は実質、物価の分は単価に入れる。セグメント利益 9.4 億円は有報の値。
美粧段ボール
本社に併設した加工工場で、家電・青果物・医薬品・飲料・贈答品の印刷した個装箱を作る。
| 数量美粧段ボールの従事者数(人) | 価格1 人あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 45.0 | 3,107 | 14 | 0 |
| 10 年後 中立 | 42.8 | 4,163 | 18 | 0 |
取り方:美粧段ボールの売上 14.0 億円を、有報の従事者 45 人で割った。人数を実質の数量、単価と賃金の上昇は 1 人あたり売上に入れる。セグメント利益はほぼ 0(前期は赤字)。
リスクと懸念
王子グループの能力の集約
製品の多くは王子グループの会社を通じて売れる。王子が国内の板紙を大きな工場に寄せれば、1か所の小さな工場は止める側に回りうる。取引額の開示がなく、依存の深さを外から測りにくい。
古紙・燃料の値上がりと転嫁の遅れ
中芯原紙の費用の多くは古紙と電気・燃料だ。値上がりを製品に回すまでに半年ほどの遅れが出る。2015〜2018年には利益率が1%を割った年が続いた。
段ボールの薄肉化と量の減少
箱を薄く軽くする流れと人口減で、中芯原紙の量は年1%弱ずつ減る。通販の簡易包装が進めば、減り方は速まる。
現金が株主に戻らない
純現金53億円と投資有価証券50億円は時価総額を上回るが、還元は配当だけで配当性向は3割弱だ。大株主が方針を変えない限り、帳簿の厚さは株価に届きにくい。
抄紙機の更新と建設費
抄紙機は大きな装置で、更新には建設費の上がった値段で多額の現金が要る。償却は取得時の値段のままなので、会計の利益より手元の現金の方が細る。
今後の分かれ目
- 王子ホールディングスが残りの株の買い取りや、親子関係の見直しを打ち出したら
- 手元の現金と投資有価証券が株主に届く見込みが高まる。戻り方を 0.5 から引き上げる。
- 自社株買いを始めるか、配当性向を 5 割以上に上げたら
- 現金の戻り方を引き上げ、やや楽観の確率を厚くする。
- 王子グループが西日本の板紙の抄紙機を止めると発表したら
- 岡山の工場の稼働が上がるか、逆に止められるかで、楽観か悲観へ大きく確率を動かす。
- 営業利益率が 2 期続けて 5% を割ったら
- 値上げが剥がれたと見て、やや悲観の確率を上げる。
- 抄紙機の大型の更新投資を決めたら
- 金額と償却の年数を見て、10 年の手元の現金の減り方を見直す。
見ておくもの
- 板紙のセグメント利益率と会社予想との差
- 古紙・燃料の値段と製品の値上げの時期
- 王子グループの国内板紙の能力の再編
- 配当性向と自社株買いの有無
- 現金と投資有価証券の残高
倍率と資本コストの決め方
板紙はトン数(推定)× 1 トンあたり単価、美粧段ボールは従事者数 × 1 人あたり売上で積み、数量は実質、単価は物価込みの名目(中立 10 年 1.34 倍)。k は 7.5% + quality 1.0% の 8.5%。ROE は 4% 前後で k に届かず、PER は上限 1÷k の 7〜9 割に置いた。余った現金 40 億円は事業の PER に混ぜず、戻り方 0.5 で足した。投資有価証券は配当を利益に残すので価値に足さず、悲観の床にだけ入れた。今の株価・PBR は倍率の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→11.43 倍・やや楽観 PER 10.5→11.43 倍・中立 PER 9.5→11.43 倍・悲観 PBR 0.29→0.355 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% で 8.5%。同じ板紙のレンゴー・トーモク(8.0%)より、工場 1 か所・王子グループへの販売依存の分だけ寿命を +0.5% 重くした。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.75%。