結論
大村紙業は、東北から関西に13の工場を持つ段ボールの専業だ。小ロットと短納期を売りに、地域の中小の客を押さえる。売上は60億円、営業利益は3.5億円。借入は見当たらず、現金が21億円ある。
筆者の結論は、やや割高だ。現金の厚みは本物で、時価総額27億円に対し、現金の厚みは7割を超える。ただ、事業そのものの稼ぐ力は並みで、この現金は戻り方に不確かさが残る。
理由は3つある。段ボールは値上げが通りにくい業界で、会社自身も原材料費の転嫁は難しいと認めている。2026年3月期の純利益3.65億円も、繰延税金資産の追加計上で膨らんだ。ならした稼ぎは2億円台前半だ。
さらに、親会社が議決権の3割を握る。配当は下限を決めているが、現金が積み上がっても大きく戻る保証はない。10年の中立でも、時価総額は今をわずかに下回る。ただし、現金のおかげで下値は固い。小さな会社ゆえの身軽さも強みだ。現金の戻り方次第で、評価は大きく変わりうる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、現金が半分を占める小さな製造業は、悪くない見つけものだ。借入が見当たらず、現金が時価総額の7割近い。倒れにくいという意味で、安全域はある。
ただし、条件が2つ付く。1つ目は、事業そのものの稼ぐ力だ。値上げが通りにくく、ROEは資本コストに届かない。持ち続けても、利益がたまるほど価値が増える会社ではない。2つ目は、現金の行き先だ。親会社が3割を握り、配当の下限は控えめだ。余った現金が株主へ戻る確かな約束はない。
経営は、これまで投資を絞り、借入を持たなかった。堅実だが、現金を資産として遊ばせる面もある。
筆者は、事業の評価は低め、現金の評価は6〜7割とみる。この2つを足すと、今の値段は妥当か、やや高めになる。現金の戻り方が見えれば、評価は変わる。それまでは、安く買えない限り、積極的に持つ理由は薄い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、段ボールの板(シート)を作り、箱(ケース)に仕立てて売ることだ。2026年3月期の売上60億円のうち、ケースが約3分の2の39億円、シートが10億円。ラベルや段ボールの版・型、デザインの請負などが10億円ある。
数量は、シートが50百万平方メートル、ケースが36百万平方メートル。どちらも前の期とほぼ同じで、伸びていない。
強みは小ロットと短納期だ。千葉、静岡、三重、茨城、福島、埼玉、栃木、仙台、京都、大阪、湘南に事業部を置く。客の近くで作り、すぐ届ける。包装設計デザイン研究所も持ち、箱の形の提案までできる。
従業員は235人。工場の帳簿価額は約20億円と軽い。設備投資は年2億円ほどで、機械の入れ替えが中心だ。一部の工場は賃借で、年約1億円の賃料がかかる。この賃料は、売上が落ちても減らない固定の支払いだ。原紙は外から買う。仕入れ価格の変動が、利益に直結する。小ロット・多品種の注文が中心で、1件あたりの注文は小さい。大手の箱メーカーが採算を合わせにくい注文を、近い工場で受ける形だ。ラベルの製造は栃木と埼玉の拠点が担う。
優良さと弱いところ
強みは、地域密着の小回りだ。大手が採算を取りにくい小ロットの注文を引き受け、デザインまで提案する。借入が見当たらず、現金も厚いので、不況でも倒れにくい。
弱みは3つある。1つ目は、値決めの弱さだ。会社自身が、原材料費の販売価格への転嫁は難しい業界構造だと書いている。2つ目は、規模の小ささだ。大手の原紙メーカーとは、仕入れの条件で交渉力に差が出る。3つ目は、利益の波だ。営業利益率は過去10年で3.9%から5.9%の間にあり、純利益は赤字の年もあった。
資本効率は低い。ROEは3%前後で、2026年3月期の7%も、繰延税金資産の追加計上で上振れた数字だ。
経営には、特定の取締役への依存や、関連当事者との取引という指摘がある。筆者は、堀、つまり他社がまねできない強みを弱いと見る。小回りは強みだが、他社がまねできないほどではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
段ボール需要は、国内で緩やかに縮んでいる。軽量化の進展で、段ボール原紙の内需は2026年に前年比0.8%減の見通しだ。矢野経済研究所によると、2024年に伸びた通販・宅配向けも減に転じ、2025年も生産量の減少が続いた。物価高による買い控えが背景にある。
一方で、原紙の値上げは続く。2025年10月納入分から、大手が1割前後の値上げを打ち出した。2026年にも、原燃料の高騰を受けた追加の値上げが相次いだとの情報がある。
加工メーカーは、原紙の値上げを箱の価格に転嫁できるかが勝負になる。レンゴー、王子、トーモクのような大手は、規模と原紙の自給で踏ん張る。大村紙業のような中小は、小ロットと短納期で付加価値を稼ぎ、値上げを通す交渉力に頼る。
今後の鍵は2つ。原紙の値上げを箱の値段に載せ続けられるか。そして、人手不足の中で、配送と製造の効率を上げられるか。国内の段ボールの数量は、10年で1割弱縮むと筆者は見る。人口の減少に、軽量化と簡易包装が重なる。通販向けの伸びも一巡したため、数量を押し上げる力は弱い。
資本政策と M&A
資本政策は、安定配当を基本とする。配当は下限を定めており、2026年3月期の総額は1.06億円で、純利益の3割ほどだ。前の期は多めに出し、支払いは1.8億円だった。
借入は見当たらず、リース債務が2.6億円ある。現金は21億円で、総資産の3割を占める。設備投資は年2億円ほどで、現金の積み上がりは遅い。この3年は、配当と投資で現金が少しずつ減った。
親会社のサンオオムラ株式会社が議決権の30.5%を持つ。損害保険の代理店を営む会社で、創業家とのつながりがある。自社株買いの記載はない。
投資有価証券は上場11銘柄で1.9億円。みずほ銀行の株が中心で、保有目的は取引の強化だ。会社は、本業以外の株を新たに買う考えはないと書く。M&Aの動きは見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
現金の価値が、値段にまだ映っていない。借入は見当たらず、現金は21億円で、時価総額27億円の7割を超える。運転資金とリースを引いても、余る現金は10億円を超える。事業の稼ぐ力の分は、実質で10億円台で買えるということだ。
事業も底を打った。2026年3月期は営業利益が28%増え、2027年3月期の第1四半期は86%増になった。原紙の値上げを箱の価格に転嫁できる時期が来ている。経常利益率5%以上という目標も、6%で達成した。
配当には下限があり、利回りは4%に近い。現金が積み上がれば、増配の余地もある。親会社が3割を持つことは、むしろ経営の安定につながる。工場は軽く、設備投資は年2億円で足りる。この資産の軽さが、不況でも現金を守る。小さな会社が地域の客を握る強みも、簡単には崩れない。事業の利益が少しでも戻れば、時価総額は大きく見直される。借入がないため、金利が上がっても利払いは増えず、むしろ現金の利息が利益を支える。
慎重な見方
事業の稼ぐ力は薄い。営業利益率は5%前後で、過去10年の純利益は平均2億円に届かない。ROEは3%前後と、資本コストを大きく下回る。持っている現金が、事業の収益性の低さを覆い隠しているだけだ。
値上げは通りにくい。会社自身が、原材料費の転嫁は難しいと書く。原紙は大手が値上げを続けるが、小さな加工メーカーは、客への価格交渉で後手に回りやすい。2026年3月期の純利益は、繰延税金資産の追加計上で膨らんだ。ならした稼ぎは2億円台前半だ。
現金の戻り方にも疑問がある。親会社が3割を握り、配当は下限に近い。この3年で現金は減ったが、増配ではなく設備と配当に消えた。事業に使わない現金が10億円超あっても、株主に戻る道筋は見えない。
需要は国内で縮み、通販向けも減に転じた。10年で数量が1割縮めば、固定費の重さが利益を削る。小さな事業部は、仕事が減れば採算が合わなくなる。大手の箱メーカーが同じ地域で攻勢をかければ、客を奪われるおそれもある。
どちらに重みを置いたか
強い方は慎重な見方だ。事業の稼ぐ力は薄く、現金の戻り方も不確かだ。ただ、借入が見当たらず、現金の厚みは実在する。中立は、営業利益が3.7億円ほどの姿に置き、確率の中心とした。
強気の指摘のうち、現金の安全域と2026年の増益は認める。上の筋書きには2割台を割いた。一方、悲観側には3割台半ばを置いた。事業が薄利で、値上げの転嫁力が弱いと考えるためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,072 円38 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 304 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 717 円26 億円、今との差 −3.7%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,693 円60 億円 | 421 円15 億円 | +183.8% | +11.0% | 127 円5 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,454 円52 億円 | 365 円13 億円 | +144.2% | +9.3% | 364 円13 億円 |
| 中立 | 38% | 1,260 円45 億円 | 337 円12 億円 | +114.3% | +7.9% | 607 円22 億円 |
| やや悲観 | 24% | 642 円23 億円 | 281 円10 億円 | +23.9% | +2.2% | 221 円8 億円 |
| 悲観 | 12% | 393 円14 億円 | 84 円3 億円 | −35.9% | −4.4% | 57 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,072 円38 億円 | 304 円11 億円 | +84.7% | +6.3% | 1,376 円49 億円 |
今の株価時価総額 745 円27 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 値上げが通り、小ロットの強みで利益率が6%台に上がる 利益 4 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,693 円60 億円
原紙の値上げを、小ロットと短納期の付加価値で箱の値段に載せ続ける。箱の価格は物価を上回る1.36倍まで上がり、数量は横ばいを保つ。
デザインの請負やラベルも伸び、営業利益率は6%台半ばに届く。営業利益は5億円を超える。現金は積み上がり、親会社も配当を増やす。
ROEは資本コストに近づくが、届くのは一部にとどまる。設備の償却は取得した値段のままで増えず、機械の入れ替えだけが新しい高い値段で足される。更新の投資は膨らむので、現金の積み上がりは利益ほど速くない。大手が値上げに動くたびに、箱の価格を見直せる体制が整う。
- 段ボールシート:数量 51.0(数量(百万平方メートル)。1百万平方メートルあたり売上0.2065億円)× 価格 0.28(1百万平方メートルあたり売上(億円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。数量+2%・価格1.36倍
- 段ボールケース(箱):数量 36.0(数量(百万平方メートル)。1百万平方メートルあたり売上1.0875億円)× 価格 1.48(1百万平方メートルあたり売上(億円、名目))→ 売上 53 億円・営業利益 4 億円。数量横ばい・価格1.36倍
- ラベル・版型・デザイン請負ほか:数量 22.1(受注件数換算(万件)。1万件あたり売上0.5億円と置いた推定)× 価格 0.68(1万件あたり売上(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。件数+10%・価格1.36倍
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 59 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:原紙の値上げを箱の値段に転嫁でき、利益率が上がる姿。会社自身が転嫁は難しいと認めており、1割を割る確率とした。
やや楽観 20% 値上げが物価並みに通り、利益率が5%台後半を保つ 利益 3 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,454 円52 億円
原紙の値上げは、物価並みに箱の値段へ載る。数量は2%ほど減るが、小ロットの客は離れにくい。
営業利益率は5%台後半を保ち、営業利益は4.5億円ほどになる。借入は持たず、現金は少しずつ積み上がる。配当は下限を保ちつつ、純利益が増えた分だけ上がる。
現金の戻り方は、増配が中心だ。親会社の方針は大きく変わらない。人件費と電気代の上昇は、値上げで受け止められる。デザインの請負が増え、箱の付加価値も上がる。ラベルの受注も、少しずつ積み上がる。工場の賃借の約束は固定で残るが、売上の伸びで吸収される。値上げの交渉は年に1〜2回のペースで進み、半年遅れで利益に表れる。
- 段ボールシート:数量 50.0(数量(百万平方メートル)。1百万平方メートルあたり売上0.2065億円)× 価格 0.27(1百万平方メートルあたり売上(億円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。数量横ばい・価格1.33倍
- 段ボールケース(箱):数量 35.3(数量(百万平方メートル)。1百万平方メートルあたり売上1.0875億円)× 価格 1.45(1百万平方メートルあたり売上(億円、名目))→ 売上 51 億円・営業利益 3 億円。数量-2%・価格1.33倍
- ラベル・版型・デザイン請負ほか:数量 21.1(受注件数換算(万件)。1万件あたり売上0.5億円と置いた推定)× 価格 0.67(1万件あたり売上(億円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。件数+5%・価格1.33倍
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 50 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げが物価並みに通り、現在の利益率が保たれる姿。強気の見方が当たる部分として2割に置いた。
中立 38% 値上げは通るが、数量の縮みと人件費で利益率は5%どまり 利益 3 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,260 円45 億円
数量は、箱で6%減り、シートで5%減る。軽量化と人口の減少が効く。価格は、原紙の値上げと物価を受けて1.3倍まで上がるが、転嫁が遅れる年もある。
営業利益率は5%前後で、営業利益は3.7億円ほどだ。過去10年の幅の中ほどである。
借入は持たず、現金は設備投資と配当を引いても少しずつ積み上がる。配当は下限を超えて、純利益の4割ほどを出す。人件費と配送費は物価で上がり、利益率は伸びない。工場の賃借の約束は固定費として残り、機械の更新は建築費と機械の値上がりで膨らむ。会計の利益は見かけ増えるが、現金の余裕は細る。
- 段ボールシート:数量 47.5(数量(百万平方メートル)。1百万平方メートルあたり売上0.2065億円)× 価格 0.27(1百万平方メートルあたり売上(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。数量-5%・価格1.30倍
- 段ボールケース(箱):数量 33.8(数量(百万平方メートル)。1百万平方メートルあたり売上1.0875億円)× 価格 1.41(1百万平方メートルあたり売上(億円、名目))→ 売上 48 億円・営業利益 3 億円。数量-6%・価格1.30倍
- ラベル・版型・デザイン請負ほか:数量 20.1(受注件数換算(万件)。1万件あたり売上0.5億円と置いた推定)× 価格 0.65(1万件あたり売上(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。件数横ばい・価格1.30倍
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 42 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げと数量の縮みが釣り合う姿。2つの見方の落としどころで、最も厚く置いた。
やや悲観 24% 原紙の値上げを転嫁しきれず、利益率が4%を割る 利益 2 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 642 円23 億円
原紙の値上げに対して、箱の値段は物価に届かず1.22倍にとどまる。通販向けの数量は減り、箱は14%減る。
営業利益率は4%を割り、営業利益は2.4億円ほどだ。小ロットの強みを生かしても、大手の価格攻勢に押される。
現金は積み上がるが、配当は下限に近い。親会社の方針で、余った現金は使い道がないまま残る。事業の収益性が下がると、現金の評価も下がる。減損が出れば、自己資本も減る。値上げの交渉が後手に回り、半年から1年は利益が圧迫される年も出る。工場の統合も検討されるが、効果は限られる。人手を確保できない拠点では、納期を守れず客を失う。
- 段ボールシート:数量 44.0(数量(百万平方メートル)。1百万平方メートルあたり売上0.2065億円)× 価格 0.25(1百万平方メートルあたり売上(億円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。数量-12%・価格1.22倍
- 段ボールケース(箱):数量 31.0(数量(百万平方メートル)。1百万平方メートルあたり売上1.0875億円)× 価格 1.33(1百万平方メートルあたり売上(億円、名目))→ 売上 41 億円・営業利益 2 億円。数量-14%・価格1.22倍
- ラベル・版型・デザイン請負ほか:数量 18.1(受注件数換算(万件)。1万件あたり売上0.5億円と置いた推定)× 価格 0.60(1万件あたり売上(億円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。件数-10%・価格1.20倍
倍率:稼ぐ力は細く、ROE は約3%で k 7.75%を大きく下回る。上限の約62%の8倍に置いた。事業は黒字で残る前提。
確率:原紙の値上げを転嫁しきれず、利益率が4%を割る姿。会社自身が転嫁は難しいと書くため、慎重な見方の本流として2割台半ばに置いた。
悲観 12% 値引き競争で赤字になり、現金で食いつなぐ 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 393 円14 億円
通販・宅配の需要が縮み、数量は3割減る。大手の価格攻勢で、箱の値段は物価に届かず1.1倍にとどまる。
営業損益は赤字になり、工場の統合と減損が続く。小さな事業部を閉じ、人員も減らす。借入はないので、現金で赤字を埋める。
株主に残る価値は、現金と売掛金の一部、土地や設備の売却益から負債と閉鎖の費用を引いた分で、戻り方も半分にとどまる。親会社が3割を握るため、清算には進まず、縮んだ会社が続く姿である。ブランドを持たない加工メーカーは、客に値下げを迫られると断りにくい。親会社の下で、会社は縮みながら続く。
- 段ボールシート:数量 37.5(数量(百万平方メートル)。1百万平方メートルあたり売上0.2065億円)× 価格 0.23(1百万平方メートルあたり売上(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。数量-25%・価格1.10倍
- 段ボールケース(箱):数量 25.2(数量(百万平方メートル)。1百万平方メートルあたり売上1.0875億円)× 価格 1.20(1百万平方メートルあたり売上(億円、名目))→ 売上 30 億円・営業利益 0 億円。数量-30%・価格1.10倍
- ラベル・版型・デザイン請負ほか:数量 14.1(受注件数換算(万件)。1万件あたり売上0.5億円と置いた推定)× 価格 0.55(1万件あたり売上(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。件数-30%・価格1.10倍
倍率:赤字で稼ぐ力はなく、現金と売れる資産の税後から負債と閉鎖の費用を引いた分に、戻り方0.5を掛けた額を置いた。今の自己資本51億円の約27%。
確率:需要の縮みと値引き競争で赤字に陥る姿。10年で起きる確率は1割強とみた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
段ボールシート
原紙から貼り合わせた段ボールの板。外部の加工メーカーなどへ売る。
| 数量数量(百万平方メートル)。1百万平方メートルあたり売上0.2065億円 | 価格1百万平方メートルあたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 50.0 | 0.21 | 10 | 0 |
| 10 年後 中立 | 47.5 | 0.27 | 13 | 0 |
取り方:数量50百万平方メートルと売上10.33億円は有価証券報告書の開示。利益は単一セグメントで内訳がなく、全社の営業利益3.51億円を、板の販売は薄利で箱は厚い、という性格から配分した推定。
段ボールケース(箱)
段ボールを箱に仕立てて客に売る。小ロット・多品種・短納期が売り。
| 数量数量(百万平方メートル)。1百万平方メートルあたり売上1.0875億円 | 価格1百万平方メートルあたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 36.0 | 1.09 | 39 | 3 |
| 10 年後 中立 | 33.8 | 1.41 | 48 | 3 |
取り方:数量36百万平方メートルと売上39.15億円は有価証券報告書の開示。利益は全社の営業利益の配分の推定。
ラベル・版型・デザイン請負ほか
ラベルの製造、段ボールの版・型、包装のデザイン・ディスプレイの請負。
| 数量受注件数換算(万件)。1万件あたり売上0.5億円と置いた推定 | 価格1万件あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.1 | 0.50 | 10 | 0 |
| 10 年後 中立 | 20.1 | 0.65 | 13 | 1 |
取り方:ラベル2.02億円とその他8.04億円の合計10.06億円は開示。件数は開示がなく推定。利益は配分の推定。
リスクと懸念
原紙の値上げの転嫁難
原紙は大手が値上げを続ける。会社自身が、原材料費の販売価格への転嫁は難しいと書く。転嫁が遅れる年は、営業利益率が4%を割る。
国内の段ボール需要の縮み
軽量化と人口の減少で、国内の段ボール原紙の内需は緩やかに縮む。通販・宅配向けも2025年に減へ転じた。数量が減れば、工場の固定費が重くなる。
現金の戻り方
親会社が議決権の30.5%を握る。配当は下限が低く、現金が積み上がっても増配の約束はない。現金を株主価値として評価しすぎるリスクがある。
特定の取締役への依存
有価証券報告書は、専門知識を持つ特定の取締役への依存をリスクに挙げる。この人物が欠けると、経営の継続性が損なわれる。関連当事者との取引も記載されている。
人手不足と物流費
工場の作業と配送に人手が要る。人件費と運賃の上昇は、小ロット・短納期のサービスを直撃する。値上げが通らなければ、利益率が下がる。
利益の質
2026年3月期の純利益3.65億円は、繰延税金資産の追加計上で膨らんだ。前の期は純損失で、利益の波が大きい。ならした稼ぎは2億円台前半とみる。
今後の分かれ目
- 原紙の値上げを箱の値段へ転嫁できた、と決算で確かめられる
- 値決めの弱さの見方を改める。中立の利益率を上げ、やや楽観の重みが増す。
- 営業利益率が半期で4%を割る
- 転嫁難が現実になったと分かる。やや悲観の重みが増す。
- 増配や自社株買いなど、現金を戻す方針が示される
- 余った現金の戻り方を0.75から1.0へ上げる余地が出る。
- 親会社が持株を増やす、または非公開化の動きが出る
- 現金の価値が株主に届く別の道になりうる。ただし価格は今の値段次第。
- 通販・宅配向けの数量が大きく減る
- 数量の縮みが想定より速いと分かる。悲観の筋書きに近づく。
見ておくもの
- 半期ごとの営業利益率と原紙の値上げの転嫁
- 段ボールシート・ケースの数量(平方メートル)
- 配当方針の変更(下限の水準)と自己株式の取得
- 現金同等物と設備投資の推移
- 親会社サンオオムラの持株比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業のROE(約3〜6%)、k 7.75%、g 4%の式から出した上限を土台にした。今のPERやPBR、同業の倍率は見ていない。現金は、運転資金と借入同等のリース債務を引いた約12億円だけを余り資産とし、親会社の持株があるので戻り方0.75を掛けた。純利益の起点は、繰延税金資産の追加計上を除いた2.4億円にした。賃借の工場の賃料は営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.9 倍・やや楽観 PER 10.5→12.9 倍・中立 PER 9.5→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+0.25%を足して7.75%。個別の懸念は筋書きと確率で表した。