結論
朝日印刷は、富山に本社を置く印刷会社だ。医薬品と化粧品の箱、ラベル、添付文書を、種類が多く数の少ない注文で作るのが得意で、国内の医薬品・化粧品のパッケージでは首位とされる。売上は 446 億円、営業利益は 16 億円。利益率は 3.6% と低い。
筆者の結論は、今の値段はやや割高、である。事業の質は悪くない。規制が厳しい医薬品の包材は、顧客が簡単に取引先を替えない。だが、その強みが利益に出ていない。2026 年 3 月期は売上が増えたのに営業利益は 2 割減った。紙などの原材料の上昇を価格に転嫁しきれず、海外の損失と工場再編の償却も重なった。
会社は 2031 年 3 月期に営業利益率 8%、ROE 8% を目標にする。実現すれば楽観の筋書きになる。ただ過去 12 年で利益率が最も高かったのは 2015 年 3 月期の 7.5% で、8% はそれを超える。中立は 4% 台の回復にとどめた。1 年目の予想はすでに 19 億円で、方向は悪くない。
資本コストは 7.5%。10 年後の中立は純利益が 16 億円前後、ROE が 3% 台で、資本コストに届かない。自己資本は 356 億円と厚く、財務は堅い。減価償却は物価で増やさず、今の設備は取得した値段のまま、新しい投資の分だけ上乗せした。計算の総合は約 −25% のやや割高だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、朝日印刷は「堅い顧客と安定した需要を持つが、稼ぐ力を十分に引き出せていない会社」だ。医薬品の包装は、規制と信用が参入の壁になる。化粧品も、顧客との長い付き合いがある。この点は評価できる。
問題は、事業の質が利益率に出ていないことだ。営業利益率は 12 年で半分に近づいた。原材料や人件費の上昇を価格に転嫁する力が弱い。堀があるなら、本来は値上げが通るはずだ。通らないなら、堀は思ったほど深くない。
オーナー利益は、営業利益 16 億円に償却 31 億円を足した約 47 億円が現金の稼ぎだが、設備投資が 48 億円と同額を食う。株主が自由に使える利益はごくわずかだ。
資本配分は堅実で、政策保有株を減らし、累進配当を掲げる姿勢は評価できる。安全域は自己資本の厚さにあるが、ROE が資本コストを下回る間は、帳簿の自己資本は価値の根拠にならない。
バリュー投資家が待つのは、価格転嫁の実績だ。原材料が上がった年に営業利益率を守れるなら、堀は本物と言える。2027 年 3 月期の第 1 四半期は営業利益が前年から 7 割増え、方向は良い。この勢いが通期で続くかを、見極めたい。売上の 9 割を占める印刷包材で利益率を守れるか、それがすべてだ。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つ。印刷包材が売上の 9 割を占める。医薬品の外箱、化粧品の箱、ラベル、取扱説明書、添付文書を作る。顧客は国内の製薬会社と化粧品会社で、売上の 10% を超える顧客はいない。薬の包装は品質管理の規格(GMP)が厳しく、一品ごとに印刷の検査を通す。少量多品種に向く設備と人手が要る。
包装システム販売は、包装の機械や検査装置を顧客の工場に納める事業だ。売上は 41 億円、前期比 31% 増と伸びた。人手不足で省力化の需要が強い。印刷包材とは別に、機械の商いの色が濃い。
その他は人材派遣で、売上は 5 億円と小さい。
従業員は連結で 1,760 人。国内に複数の工場を持つほか、海外はマレーシアの子会社を持ち、2026 年 5 月に新工場を稼働させる予定だ(投資額 30 億円)。2026 年 3 月期の設備投資は 48 億円と、減価償却(31 億円)を大きく上回った。
開示のセグメント利益(印刷包材 89 億円など)は、全社の費用を引く前の数字とみられ、連結営業利益 16 億円との差が大きい。ここでは営業利益ベースに推定で配ったので、セグメント別の利益率は目安だ。
人材派遣を含む連結の従業員は 1,760 人で、提出会社の平均年齢は 37.4 歳、平均年収は 503 万円と若い会社だ。労働組合は結成されていない。2026 年 3 月期の設備投資 48 億円のうち、印刷包材の生産設備は 21 億円。医薬品の包材は、工場ごとに品質の認定を受ける必要があり、生産の移し替えが難しいことが、顧客を縛る力にもなる。
優良さと弱いところ
堀は、医薬品包装の信用にある。薬の箱は誤印刷が許されず、製薬会社は認定済みの取引先を簡単に替えない。化粧品は流行の変化が速く、短納期で小ロットに応える力が競争の軸になる。同社はその二つを一貫して作れ、包装からラベル、添付文書までまとめて引き受ける。
ただし堀は、利益率には出ていない。営業利益率は 2015 年 3 月期の 7.5% から 2026 年 3 月期の 3.6% まで下がった。顧客は製薬・化粧品の大手で、値上げ交渉は強くない。原材料が上がっても、転嫁は遅れる。しかも添付文書は電子化が進み、紙の同梱は原則廃止された(市販薬は例外)。これは 2023 年から続く減収要因だ。
財務は堅い。自己資本比率は 51.5% で、純有利子負債は 100 億円、営業利益は支払利息の約 8 倍。政策保有株(上場 383 銘柄・39 億円)を 2030 年度末までに半分へ減らす方針で、資本効率を意識している。ROE は直近 4.5%、過去 10 年の中央値は 5.3%。
経営は安定しており、配当は累進配当(減らさない)を基本に、純資産配当率 2.4% を目安にした。一方で、設備投資が減価償却を大きく上回る局面が続いている。投資が利益に結びつくかは、これからの 5 年で試される。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
医薬品の包装は、国内の薬の需要が人口の高齢化で底堅い一方、薬価の引き下げが続き、製薬会社の包装費への目も厳しい。後発医薬品の供給不足や、製薬会社の再編もあり、取引先の入れ替わりは少ないが、値段の圧力は強い。添付文書の電子化で、紙の仕事は縮んだ。
化粧品は、国内のインバウンド需要が追い風になった。ただ、化粧品メーカーは新製品の入れ替えが速く、包装の仕様も頻繁に変わる。少量多品種で応えられる印刷会社が選ばれる。
競合は、大手の総合印刷会社の包装部門と、地域の紙器・ラベルの専業の会社だ。同社は医薬品・化粧品の専業という立場で、小回りが利く。包装用の紙は、原材料の値上がりが続いており、各社が値上げを進めている。
分かれ目は 3 つ。原材料の上昇をどこまで価格に転嫁できるか。マレーシアなど海外の新工場が黒字になるか。そして包装システム販売の省力化需要が続くかだ。
業界の需給では、製薬会社が薬価の引き下げを受けて包装費を絞る流れと、規制の厳しさで取引先を簡単に替えられない流れが綱引きをしている。2023 年に医療用医薬品の紙の添付文書の同梱が原則廃止され、印刷の仕事が減った。逆に、医薬品・医療機器の包材は海外でも需要があり、朝日印刷が投資額 30 億円のマレーシア工場を建てた理由はそこにある。包装の現場は人手不足で、省力化の機械を売る包装システム販売が伸びている。紙の価格は上がっており、段ボールや紙器の各社も 2026 年に値上げを進めている。
資本政策と M&A
還元は、2026 年 5 月に方針を変えた。以前は配当性向 40% 以上だったが、これからは累進配当(減らさない)を基本に、純資産配当率(DOE)2.4% を目安にする。2026 年 3 月期の配当は前期と同額で、総額は 8 億円弱、配当性向は 50% 台だった。利益が落ちても配当を減らさない約束なので、配当は自己資本にほぼ比例して増える。自社株買いの実績は小さい。
成長投資は、海外の新工場(マレーシア、30 億円)と国内の工場再編、包装システムの強化。大型の M&A の実績は目立たない。政策保有株の縮減で得る資金は成長投資と株主還元に回す方針で、2024 年度から 2026 年度末までに 3 割(約 13 億円)、さらに 2030 年度末までに 5 割へ進める。保有株の配当は純利益に入っており、売却は特別利益になる。価値には足していない。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備は取得した値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の 31 億円が、中立で 10 年後に約 37 億円。物価で一律に増やすと約 41 億円になる。更新の投資は建築費・機械の値上がりで膨らみ、足りない分は借入で、利払いが増える。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備は取得した値段のままで、新しく作る分だけ今の値段で按分して足す。償却は今の 31 億円が、中立で 10 年後に約 37 億円。物価で一律に増やすと約 41 億円になるので、そのぶん営業利益は厚い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
医薬品・化粧品の包装で首位に立つ強みが、価格に出始める。2026 年 3 月期の減益は一時的な要因が重なった結果だ。原材料の値上がりは各社が転嫁を進めている。海外の損失は、マレーシアの新工場が稼働して縮む。工場再編の償却は 1 年で山を越える。
2027 年 3 月期の営業利益は 19 億円の予想で、第 1 四半期は前年から 7 割以上増えた。会社が掲げる 2031 年 3 月期の営業利益率 8% は、過去の山に近い水準で、無理のない目標だ。
包装システム販売は伸びる。人手不足で省力化の機械が求められ、前期は 31% 増えた。受注は大型案件が続く。化粧品の包材はインバウンドと海外展開で伸び、マレーシアの工場は医薬品・医療機器の包材の需要を取り込む。
財務は堅い。自己資本比率は 51.5% あり、政策保有株の売却で資金を捻出できる。累進配当と DOE 2.4% が、株主還元の下限を支える。純資産配当率を引き上げる余地もある。
過去を見ると、2021 年 3 月期から 2023 年 3 月期にかけて営業利益率は 5% 台に戻った時期もある。会社は利益額でなく、利益率と ROE を重要な指標に据え直した。経営の目線が資本効率に向かっているのは、株主にとって前向きな変化だ。
慎重な見方
利益率の低下は構造的だ。顧客は大手の製薬・化粧品会社で、包装の値段を抑えたい。原材料や人件費が上がっても、転嫁は遅れる。2026 年 3 月期は売上が増えたのに営業利益が 2 割減った。これが常態になる恐れがある。
添付文書の電子化で、紙の仕事は構造的に減った。市販薬は例外だが、これからは外箱やラベルの簡素化・軽量化も進む。製薬会社の再編で、取引先の数が減れば、価格交渉力はさらに弱まる。
設備投資は重い。2026 年 3 月期は 48 億円と、償却の 1.5 倍。マレーシアの新工場は 30 億円を投じるが、海外受注の減少が前期の損失の一因で、回収には時間がかかる。投資が先行し、利益が追いつかなければ、ROE は 3% 台のまま低迷する。
累進配当を約束した以上、利益が減っても配当を減らせない。それは財務の自由度を狭める。包装システム販売は大型案件に依存し、伸びは続かないかもしれない。会社の 8% の目標は、過去の実績を超える水準で、達成の根拠が薄い。
何より、会社が掲げる営業利益率 8% は、過去 12 年のどの年も届かなかった水準だ。目標を掲げただけで利益が増えるわけではない。原材料の転嫁、海外の黒字化、省力化の需要の継続という三つが同時に実現しなければならず、確度は高くない。
どちらに重みを置いたか
医薬品・化粧品の包装で首位に立つ堅さという強気の見方は正しい。ただ、その強みが利益率に出ておらず、価格転嫁の弱さを突く慎重な見方が強い。確率は中立を中心に、楽観・やや楽観を 28%、やや悲観・悲観を 37% に置いた。中立は営業利益率が 4% 台に戻る程度で、ROE は資本コストに届かない。10 年後の中立の時価総額は 150 億円ほどと、今の 8 割ほどだ。総合は約 −25% のやや割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,015 円209 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 427 円88 億円)。 今の値に割り戻すと 790 円162 億円、今との差 −11.7%、 期待の年率 +4.9%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,358 円485 億円 | 632 円130 億円 | +234.4% | +12.8% | 239 円49 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,866 円384 億円 | 535 円110 億円 | +168.5% | +10.4% | 480 円99 億円 |
| 中立 | 35% | 1,056 円217 億円 | 447 円92 億円 | +68.1% | +5.3% | 526 円108 億円 |
| やや悲観 | 24% | 243 円50 億円 | 364 円75 億円 | −32.1% | −3.8% | 146 円30 億円 |
| 悲観 | 13% | 194 円40 億円 | 194 円40 億円 | −56.5% | −8.0% | 51 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,015 円209 億円 | 427 円88 億円 | +61.3% | +4.9% | 1,442 円297 億円 |
今の株価時価総額 894 円184 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 首位の信用が価格に出て、目標の 8% に届く 利益 36 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,358 円485 億円
医薬品・化粧品の包装で首位の力が価格に出る。原材料の転嫁が通り、海外の新工場も黒字になる。包装システム販売は省力化の需要で 5 割増え、印刷包材も出荷点数が 2% 増える。営業利益率は会社の目標に近い 8% に届く。政策保有株の売却と累進配当で、還元が厚くなる。それでも売上は 650 億円止まりで、利益率は過去の山(7.5%)を少し超える程度に抑えた。
(名目の前提)単価は名目、出荷点数と台数は実質で置いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で按分した。償却は今の約 31 億円が 10 年後に約 36 億円(物価で一律に増やすと約 41 億円)。借入の利払いは 10 年後に年 3 億円ほど増える分を営業外に入れた。更新の投資は建築費・機械の上昇で膨らみ、足りない分は借入になる。
- 印刷包材(医薬品・化粧品):数量 2,040(出荷点数(百万点、推定))× 価格 27(1 点あたり売上(円))→ 売上 555 億円・営業利益 45 億円。出荷点数 1.02 倍(実質)・単価 1.36 倍(名目)・償却は物価で増やさず按分
- 包装システム販売:数量 450(納入台数(台、推定))× 価格 1,880(1 台あたり売上(万円))→ 売上 85 億円・営業利益 7 億円。納入台数 1.50 倍・単価 1.36 倍(名目)
- その他(人材派遣):数量 132(派遣人数(人、推定))× 価格 557(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。派遣人数 1.10 倍・単価 1.34 倍(名目)
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 485 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:目標の達成には価格転嫁・海外の黒字化・省力化の需要がすべて要る。過去の山を超える利益率で、揃う確度は高くない。
やや楽観 20% 価格転嫁が通り、利益率が 6〜7% に戻る 利益 29 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,866 円384 億円
価格転嫁がおおむね通り、営業利益率は 6〜7% に戻る。出荷点数は添付文書の減少を化粧品の伸びが相殺して横ばい。海外の新工場は黒字化するが、利益への貢献は限られる。包装システム販売は 3 割増える。DOE 2.4% の累進配当は守られる。
(名目の前提)単価は名目、出荷点数と台数は実質で置いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で按分した。償却は今の約 31 億円が 10 年後に約 36 億円(物価で一律に増やすと約 41 億円)。借入の利払いは 10 年後に年 3 億円ほど増える分を営業外に入れた。更新の投資は建築費・機械の上昇で膨らみ、足りない分は借入になる。
- 印刷包材(医薬品・化粧品):数量 1,980(出荷点数(百万点、推定))× 価格 27(1 点あたり売上(円))→ 売上 539 億円・営業利益 36 億円。出荷点数 0.99 倍(実質)・単価 1.36 倍(名目)・償却は物価で増やさず按分
- 包装システム販売:数量 390(納入台数(台、推定))× 価格 1,880(1 台あたり売上(万円))→ 売上 73 億円・営業利益 6 億円。納入台数 1.30 倍・単価 1.36 倍(名目)
- その他(人材派遣):数量 120(派遣人数(人、推定))× 価格 557(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。派遣人数 1.00 倍・単価 1.34 倍(名目)
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 384 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027 年 3 月期の予想と第 1 四半期の勢いの延長線で、会社の努力が実る現実的な上振れ。
中立 35% 中立:利益率は 4% 台へ戻るが、ROE は届かない 利益 16 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,056 円217 億円
原材料の上昇は遅れて転嫁され、営業利益率は 4% 台に戻る。出荷点数は添付文書の減少と人口減で 4% 減るが、価格は物価並みに上がる。海外の新工場は損益が均衡する程度。包装システム販売は 15% 増。借入は設備投資の先行で少し増え、利払いが増える。累進配当で、配当は自己資本の増加に合わせて増える。ROE は 3% 台で、資本コストに届かない。
(名目の前提)単価は名目、出荷点数と台数は実質で置いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で按分した。償却は今の約 31 億円が 10 年後に約 37 億円(物価で一律に増やすと約 41 億円)。借入の利払いは 10 年後に年 3 億円ほど増える分を営業外に入れた。更新の投資は建築費・機械の上昇で膨らみ、足りない分は借入になる。
- 印刷包材(医薬品・化粧品):数量 1,920(出荷点数(百万点、推定))× 価格 27(1 点あたり売上(円))→ 売上 515 億円・営業利益 19 億円。出荷点数 0.96 倍(実質)・単価 1.34 倍(名目)・償却は物価で増やさず按分
- 包装システム販売:数量 345(納入台数(台、推定))× 価格 1,852(1 台あたり売上(万円))→ 売上 64 億円・営業利益 5 億円。納入台数 1.15 倍・単価 1.34 倍(名目)
- その他(人材派遣):数量 120(派遣人数(人、推定))× 価格 557(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。派遣人数 1.00 倍・単価 1.34 倍(名目)
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.8% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 217 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:事業の質は堅いが、転嫁の弱さが利益率を抑える中心の筋書き。
やや悲観 24% 転嫁が遅れ、利益率が 1% 台に低迷する 利益 6 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 243 円50 億円
価格転嫁が遅れ、利益率は 1% 台に低迷する。出荷点数は 8% 減る。海外の新工場は立ち上げに時間がかかり、黒字化しない。包装システム販売は大型案件が一巡して横ばい。工場の再編で費用を削るが、売上の縮みに追いつかない。配当は累進の約束で減らせず、自己資本が目減りする。値打ちは売れる資産が支える床までになる。
(名目の前提)単価は名目、出荷点数と台数は実質で置いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で按分した。償却は今の約 31 億円が 10 年後に約 38 億円(物価で一律に増やすと約 41 億円)。借入の利払いは 10 年後に年 3 億円ほど増える分を営業外に入れた。更新の投資は建築費・機械の上昇で膨らみ、足りない分は借入になる。
- 印刷包材(医薬品・化粧品):数量 1,840(出荷点数(百万点、推定))× 価格 26(1 点あたり売上(円))→ 売上 482 億円・営業利益 6 億円。出荷点数 0.92 倍(実質)・単価 1.31 倍(名目)・償却は物価で増やさず按分
- 包装システム販売:数量 300(納入台数(台、推定))× 価格 1,797(1 台あたり売上(万円))→ 売上 54 億円・営業利益 3 億円。納入台数 1.00 倍・単価 1.30 倍(名目)
- その他(人材派遣):数量 108(派遣人数(人、推定))× 価格 557(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。派遣人数 0.90 倍・単価 1.34 倍(名目)
倍率:純利益 5.5 億円と薄く、稼ぐ力(事業の純利益÷k)は床とほぼ同じ。売れる資産の税後 50 億円(floor_assets_oku)を時価総額に置いた。今の自己資本 356 億円に対する PBR は 0.14 倍。
確率:原材料と人件費の転嫁が遅れ続け、海外の立ち上げも手間取る想定。過去に利益率が 4.5% まで下がった実績がある。
悲観 13% 価格交渉力を失い、赤字が続く 利益 −10 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 194 円40 億円
価格交渉力を失い、出荷点数は 15% 減る。添付文書とラベルの簡素化が進み、製薬会社の再編で取引先が減る。海外の新工場は損失を出し続け、減損も出る。包装システム販売は大型案件が途切れて縮む。営業赤字が続くが、累進配当の約束は重く、資産の売却で賄う。少数株主の取り分は売れる資産の税後に、戻り方 0.8 を掛けた額まで削られる。
(名目の前提)単価は名目、出荷点数と台数は実質で置いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で按分した。償却は今の約 31 億円が 10 年後に約 38 億円(物価で一律に増やすと約 41 億円)。借入の利払いは 10 年後に年 3 億円ほど増える分を営業外に入れた。更新の投資は建築費・機械の上昇で膨らみ、足りない分は借入になる。
- 印刷包材(医薬品・化粧品):数量 1,700(出荷点数(百万点、推定))× 価格 25(1 点あたり売上(円))→ 売上 432 億円・営業利益 −13 億円。出荷点数 0.85 倍(実質)・単価 1.27 倍(名目)・償却は物価で増やさず按分
- 包装システム販売:数量 240(納入台数(台、推定))× 価格 1,686(1 台あたり売上(万円))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。納入台数 0.80 倍・単価 1.22 倍(名目)
- その他(人材派遣):数量 96.0(派遣人数(人、推定))× 価格 557(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。派遣人数 0.80 倍・単価 1.34 倍(名目)
倍率:営業赤字で稼ぐ力はなく、売れる資産の税後 50 億円に戻り方 0.8 を掛けた 40 億円を置いた(経営陣に近い個人や資産管理会社の株主が上位に並び、少数株主に戻りにくい)。今の自己資本 356 億円に対する PBR は 0.11 倍。自己資本が消えるのでなく、稼ぐ力を失った構造的な負けの下で、売れる資産で見た(SCHEMA §1-3)。
確率:価格交渉力の喪失と添付文書・外箱の簡素化が重なる構造的な負け。顧客が大手に偏る事業で、起きたら戻りにくいため 13% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
印刷包材(医薬品・化粧品)
医薬品・化粧品の外箱、ラベル、取扱説明書、添付文書の印刷と包装資材。
| 数量出荷点数(百万点、推定) | 価格1 点あたり売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 20 | 400 | 13 |
| 10 年後 中立 | 1,920 | 27 | 515 | 19 |
取り方:印刷包材の売上 400 億円を、出荷点数 20 億点(推定、開示なし)で割った 1 点あたり売上。営業利益は連結営業利益 16.2 億円を、セグメント別に推定で配った(開示のセグメント利益は配賦前)。2026 年 3 月期は原材料高・海外の損失で利益率が 3.2% に下がった。
包装システム販売
包装・検査の機械や装置を顧客の工場に納める事業。
| 数量納入台数(台、推定) | 価格1 台あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 1,382 | 41 | 3 |
| 10 年後 中立 | 345 | 1,852 | 64 | 5 |
取り方:売上 41.5 億円を、年間の納入 300 台(推定)で割った単価。前期比 31% 増。人手不足による省力化の需要を取り込む。営業利益率は推定で 6.6%。
その他(人材派遣)
人材派遣。
| 数量派遣人数(人、推定) | 価格1 人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 416 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 120 | 557 | 7 | 1 |
取り方:売上 5.0 億円を、派遣 120 人(推定)で割った単価。営業利益率は推定で 11%。
リスクと懸念
原材料・人件費の転嫁の遅れ
紙・インキ・包材の値上がりと賃金の上昇を、顧客に転嫁しきれていない。2026 年 3 月期は売上が増えたのに営業利益が 21.8% 減った。大手の製薬・化粧品会社が相手で、値上げ交渉は強くない。転嫁が遅れる状態が続けば、利益率は 3% 台に張りつく。
添付文書の電子化と包装の簡素化
医療用医薬品の紙の添付文書は、2023 年 7 月末までに原則廃止となり、紙の仕事が縮んだ。市販薬は例外だが、外箱やラベルの簡素化・軽量化が進めば、出荷点数と単価の両方が下がる。製薬会社の環境配慮の動きも、この流れを強める。。製薬会社の環境配慮の動きも、この流れを強める。
海外事業の立ち上げ
マレーシアの新工場(投資 30 億円)は 2026 年 5 月の稼働予定。海外事業は前期の減益要因の一つで、受注が想定を下回れば、償却と人件費が先に重くなる。医薬品・医療機器の包材は認定に時間がかかり、収益化まで数年を要する恐れがある。
設備投資が償却を上回る
2026 年 3 月期の設備投資は 48 億円と減価償却の 1.5 倍。投資が利益に結びつかなければ、ROE は 3% 台のまま低迷し、借入が増えて利払いも膨らむ。長期借入は 131 億円、社債は 35 億円で、借り換えの金利が上がる局面では負担が重くなる。
顧客の再編と取引の集中
製薬・化粧品会社の再編が進むと、取引先が減り、価格交渉力が弱まる。10% を超える顧客はいないが、上位の大手への依存は高いとみられる。1 社の取引縮小が工場の稼働率を直撃する、小ロット多品種の事業の宿命でもある。。取引先の入れ替えが少ない安定の裏返しでもある。製薬会社の再編の動きを注視したい。
累進配当の約束
2026 年 5 月に配当を累進(減らさない)とし、純資産配当率 2.4% を目安に決めた。利益が落ちても配当を減らせず、財務の自由度を狭める。自己資本が増えるほど、配当の絶対額が膨らむ仕組みでもあり、業績が悪い年の負担になる。
今後の分かれ目
- 原材料の上昇分の価格転嫁が通り、営業利益率が 5% を超えたら
- 印刷包材の利益率の前提を上方修正し、楽観・やや楽観に確率を寄せる。
- マレーシアの新工場が稼働初年度から黒字になったら
- 海外の損失の前提を外し、楽観側に寄せる。
- 営業利益が 2027 年 3 月期の予想(19 億円)を下回ったら
- 回復の前提を下げ、やや悲観に確率を寄せる。
- 包装システム販売の大型案件が途切れて受注が減ったら
- システム販売の数量の前提を下げる。
- 政策保有株の売却が進み、成長投資か自社株買いに回ったら
- 資本配分を評価し、還元の前提を引き上げる。
- 主要な製薬・化粧品の顧客が取引を絞ったら
- 数量と価格の前提を下げ、悲観側に寄せる。
見ておくもの
- 営業利益率(2027 年 3 月期の予想 4.1%、2031 年 3 月期の目標 8%)
- マレーシア新工場の稼働と損益
- 包装システム販売の受注と台数
- 原材料価格の転嫁(価格改定の実績)
- 政策保有株の縮減の進捗
- 設備投資と減価償却の差、借入金残高
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額 184 億円や PBR 0.5 倍には寄せていない。出荷点数と名目の単価から利益を積み、倍率は式で置いた。中立は ROE 3.8% が k 7.5% に届かないので PER の上限 1÷k = 12.9 倍の 7.2 割、やや楽観 8.0 割、楽観 8.5 割。利益率が薄く原材料転嫁が弱いので上限の 10 割は使っていない。やや悲観は売れる資産、悲観はそれに戻り方 0.8 を掛けた。PBR が 0.5 倍でも割安の根拠にはしない。EV ÷ 営業利益は中立で 10 倍。減価償却は物価で増やしていない。純利益÷営業利益は、過去の中央値 0.81 より低く 0.68 とした。過去は特別利益と配当で営業外が厚かったが、政策保有株の縮減で配当が減り、借入の利払いが増えるため。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→13.33 倍・やや楽観 PER 10.3→13.33 倍・中立 PER 9.3→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.25%(循環 −0.25・値決め力 +0.25・借金 0・寿命 +0.25)= 7.75%。医薬品・化粧品の需要は堅く、顧客に値決めの主導権がある分と、添付文書の縮みを相殺した。借金は営業利益の 6 倍程度で普通。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.50%。