結論
大王製紙は、エリエールのティッシュやトイレットペーパー、紙おむつを持つ家庭用品メーカーだ。売上の半分は板紙・洋紙の製紙が占める。筆者の結論は「割高」。事業は生活に根づいているが、借金が重く、稼ぐ力が資本コストに届かないからだ。
稼ぎの土台は国内の家庭用品にある。2026年は原燃料高を受けて値上げを通し、8月納品分からも15%以上の値上げを打ち出した。ただ営業利益率は3〜4%。過去25年の最高でも1割強で、薄利の会社だ。
重いのは借金である。純有利子負債は3,300億円超で、時価総額の2倍を超える。これから10年、借り換えのたびに金利が上がる。利益が伸びても、利払いが大きく食っていく。
中立の筋書きでは、値上げの定着と海外の赤字解消で営業利益は370億円前後まで伸びる。それでも純利益は190億円ほどで、自己資本利益率は5〜6%。資本コスト9%強を下回る。利益は出ても、株主にとっての価値は額面ほど増えない。
北越コーポレーションとの持ち合いの解消は前向きな動きだ。ただ自社株の取得や北越株の買い付けは、財布から出ていく話でもある。強気の筋書きが全部そろえば今の値段を超えるが、確率で重みを付けると10年の価値は今の値段を大きく割る。バリュー投資家が払ってよい値段ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家が最初に聞くのは、「この会社を丸ごと持って、毎年いくら自由に使える利益が残るか」だ。大王製紙の営業利益は年に200億円台。そこから利払いと税を引き、設備の更新費を差し引くと、株主が自由に使える金はごくわずかだ。設備投資に毎年250億円ほどかかる装置産業の宿命である。
次に見るのは、堀の幅と持続性だ。エリエールの足場は本物だが、プライベートブランドと輸入品に絶えず削られる。紙・板紙は縮む市場で、価格を自分で決められない。国内の首位級でも、堀は浅い。
資本の使い方も問われる。海外で利益が出せず、いまは整理に追われている。持ち合いの解消は前進だが、同じ金で借金を減らすほうが株主のためになる場面も多い。
最後に安全域。稼ぐ力が資本コストを下回る会社の帳簿の純資産は、額面ほどの価値がない。今の時価総額は、強気の筋書きがかなり実現することを前提にしている。10年かけて値上げと海外再建が両方うまくいって、ようやく割に合う値段だ。わかりにくい事業でもあり、確信を持って「安い」と言える材料は見当たらない。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく3本ある。1つめが紙・板紙で、売上の約半分を占める。段ボール原紙などの板紙と洋紙を、愛媛の三島・川之江などの工場で作る。三島は海に面した世界最大級の工場で、原料の調達からリサイクルまで一貫している点が強みだ。
2つめが国内の家庭用品で、エリエールのティッシュ・トイレットペーパー、大人用紙おむつのアテント、ベビー用品や生理用品が並ぶ。トイレットペーパーとティッシュは日本製紙クレシア、王子ネピアとの3社で市場を分け合う。大人用紙おむつは高齢化で伸びる数少ない領域だ。
3つめが海外の家庭用品。中国・東南アジア・ブラジルなどで紙おむつや生理用品を売る。ここ数年は構造改革の最中で、2025年にトルコの子会社を譲渡し、収益性を重視する形へ作り替えている。中期計画の最終年度に、海外全体の営業損益をゼロまで戻す計画だ。
このほかに、セルロースナノファイバー(木の繊維を細かくほぐした素材)を混ぜた樹脂の工場が2025年に動き出した。ただ規模はまだ小さく、収益への寄与は先の話になる。
稼ぎ方の違いが大切だ。家庭用品は商品名で選ばれ、値上げの余地がある。一方、板紙・洋紙は原料と燃料の価格に利益が左右される装置産業で、国内の需要は縮んでいく。会社の将来は、この2つの重さの違いで決まる。
優良さと弱いところ
最大の強みは、エリエールというブランドと、国内3社体制の中の首位級の位置だ。消費者は値段だけで選ばず、店頭の棚も押さえやすい。2026年の値上げが通ったのは、この足場があるからだ。三島工場の規模も、同業が簡単にまねできない。
しかし、堀(他社がまねできない強み)と呼べるほど深くはない。トイレットペーパーとティッシュはプライベートブランド(小売りの自社商品)と輸入品が安さで迫り、ティッシュの輸入比率は2割を超える。値上げで客が離れる局面は、これからも来る。
資本効率はさえない。自己資本利益率は過去10年の中央値で3%台。2023年3月期は特別損失と原燃料高で大きな赤字、2025年3月期も純損失を出した。利益の振れが大きく、稼ぐ力が安定しているとは言えない。
経営は海外で痛い目を見た。海外事業は黒字化に手間取り、いま縮小と整理を進めている。後始末に動いた点は評価できるが、本来は避けられた損失だ。筆者がいちばん気にしているのは、薄い利益率と重い借金が同居している点で、原燃料が少し動くだけで利益が消えかねない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の紙・板紙の需要は縮み続けている。2026年の見通しは2,000万トンを割り込み、ピークの約6割だ。新聞用紙や印刷用紙は特に落ち込みが速い。大王製紙の紙・板紙は段ボール原紙など板紙が中心で、洋紙ほど深刻ではないが、人口が減る国では長期の追い風はない。
家庭用品は需要が最も安定している。トイレットペーパーやティッシュは景気が悪くても買われる。人口は減るが、1人あたりの使用量が大きく動く商品ではない。大人用紙おむつは高齢化で伸び、ベビー用は出生数の減少が逆風になる。国内の家庭用品の数量は、10年で少し減る程度とみるのが自然だ。
2026年は値上げの年になった。パルプと古紙、電力・燃料が上がり、大王製紙のほか日本製紙クレシア、王子ネピアも値上げに動いた。3社がほぼ同時に動く協調的な値付けは、利益率を支える材料だ。ただ値上げは需要を冷やし、安い輸入品と小売りの自社商品へ客を逃がす。
紙の工場は設備の統廃合が続く。生産能力が減れば、残る会社の値決めは楽になる。北越コーポレーションとの提携も、板紙の集約に向けた布石とみられる。
最大の不安は海外だ。中国・東南アジアの紙おむつは現地メーカーとの価格競争が激しく、日本の会社が利益を出すのは難しい。海外の再建が成功するかどうかが、会社全体の利益率を左右する。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当は純資産の1%ほどで、利益の3割弱を払う。中期計画では純資産配当率を2%まで引き上げる意向も示すが、借金の重さを考えれば急いで厚くできる状況ではない。
資本政策で目を引くのは、北越コーポレーションとの関係だ。北越は一時、大王製紙株の約4分の1を持つ大株主だった。2026年3月に両社は、持ち合いを相互に20%未満へ下げ、中期的には5〜10%まで下げると発表した。北越は市場外で保有株の一部を売り、保有割合は18%台になった。
大王製紙側は、自社株の取得や北越株の買い付け、資産の譲渡を予定する。持ち合いは資本効率を悪くする、という株主の指摘に応えた動きで、筆者は方向としては正しいと見る。ただ、自社株の取得も北越株の買い付けもお金が出ていく話だ。借金の返済を後回しにしてまでやる価値があるのかは、金額が明らかになるまで判断できない。
ほかに、大王海運が6.6%を持つ。政策保有株は毎年検証して減らす方針だ。買収される側に回る可能性は、親子関係や持ち合いが入り組んでいて読みにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
値上げが定着し、利益率が底上げされる。2026年は3社がそろって値上げに動き、家庭用品の値上げは通った。原燃料が落ち着けば、上げた値段がそのまま利益に残る。エリエールの国内首位級の足場と、アテントなど高齢化で伸びる大人用紙おむつの拡大が加われば、国内の家庭用品の利益率は中期計画の6%台を超え、10%近くまで見える。
海外は底を打った。トルコの売却とブラジルの連結で事業を絞り、全子会社の黒字化が最終年度の目標だ。赤字が消えるだけで、全社の利益は大きく動く。2035年に海外の家庭用品を3,500億円規模へ育てる長期構想も、収益性を重視する形へ切り替わった今なら、規模だけを追った過去と同じ道は繰り返さない。
北越コーポレーションとの提携で、紙・板紙の集約が進む。抄紙機の統廃合が進めば、供給が絞られて板紙の値決めが楽になる。提携による営業利益の押し上げは20億円で、一過性ではない。持ち合いの解消で資本効率も改善する。
借金の返済も進む。設備投資を抑えて工場の償却を回収すれば、10年で純有利子負債は大きく減り、利払いの重さは和らぐ。利益が伸び、借金が減り、自己資本利益率が資本コストを超える局面に入れば、倍率は大きく切り上がる。いまの時価総額は、その入口に立つ会社の値段だ。
慎重な見方
利益率が薄すぎる。営業利益率は3〜4%で、過去25年の最高でも1割強だ。原燃料の価格が少し動けば、すぐ数十億円の利益が消える。2026年も中東情勢で、値上げの効果が打ち消されるという。値上げは利益を守る手段で、利益を増やす手段にはなりにくい。
借金の重さが決定的だ。純有利子負債は営業利益の14倍にのぼり、時価総額の2倍にのぼる。10年国債が3%で、借り換えのたびに利払いが増える。営業利益が現状と同じでも、純利益は大きく目減りする。北越との持ち合いの見直しで自社株を取得し、北越株も買えば、借金はむしろ増えかねない。
海外は何度も失敗している。大きく広げた事業を畳む作業は、2023年3月期の大赤字の一因にもなった。黒字化は目標どまりで、中期計画の海外の営業利益は当初の約40億円から0億円へ引き下げられた。長期構想の3,500億円は絵空事に近い。
国内の家庭用品も安泰ではない。小売りの自社商品と輸入品が、値上げで割高になった分を食う。紙・板紙は人口減で縮み、設備を減らしても需要減に追いつかない。
自己資本利益率は10年の平均で3%台だ。資本コストを下回る会社の純資産は、帳簿の額面で評価できない。純資産に比べて時価総額が低く見えても、それは割安の根拠にならない。
どちらに重みを置いたか
家庭用品の足場と値上げの実績は強気の言い分が正しい。だが、10年の価値を決めるのは稼ぐ力と借金の重さで、そこでは慎重な見方が勝つ。利益率が薄く、利払いが重く、海外再建の実績に乏しい。強気が全部そろう楽観の確率は小さく置き、やや悲観と悲観を合わせた確率を、楽観とやや楽観の合計より厚くした。中立でも今の時価総額と同じ程度の値段にしかならず、10年の価値は今を大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,377 円2,124 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 285 円440 億円)。 今の値に割り戻すと 752 円1,159 億円、今との差 −23.2%、 期待の年率 +5.4%(資本コスト 9.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,518 円5,425 億円 | 519 円800 億円 | +312.3% | +15.2% | 242 円374 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,485 円3,833 億円 | 402 円620 億円 | +194.9% | +11.4% | 520 円802 億円 |
| 中立 | 38% | 1,503 円2,318 億円 | 324 円500 億円 | +86.7% | +6.4% | 694 円1,071 億円 |
| やや悲観 | 26% | 455 円702 億円 | 195 円300 億円 | −33.7% | −4.0% | 169 円260 億円 |
| 悲観 | 12% | 243 円374 億円 | 65 円100 億円 | −68.6% | −10.9% | 37 円57 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,377 円2,124 億円 | 285 円440 億円 | +69.8% | +5.4% | 1,662 円2,563 億円 |
今の株価時価総額 979 円1,510 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 6% 値上げが定着し、海外も黒字化する 利益 409 億円 · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 3,518 円5,425 億円
2026年の値上げが定着し、原燃料が落ち着いても値段が戻らない10年になる。エリエールの国内首位級の足場が崩れず、大人用紙おむつのアテントなど高齢化向けの商品が伸びて、国内の家庭用品の利益率は1割近くまで上がる。海外は構造改革が実り、中国・東南アジア・ブラジルの子会社が小さいながら黒字になる。北越コーポレーションとの提携で板紙の抄紙機の統廃合が進み、供給が絞られて値決めが楽になる。借金は工場の償却と利益で着実に減り、利払いの重さも和らぐ。10年後の営業利益は700億円近くまで届き、自己資本利益率は資本コストを超える。長期構想の利益率10%には届かないが、過去最高の利益水準を更新する。
- 紙・板紙:数量 166(紙・板紙の販売量(万t・推定))× 価格 27(1万tあたり平均売上(億円・名目、加工品・輸出込み))→ 売上 4,512 億円・営業利益 248 億円。販売量 165.6万t(今の92%)× 1万tあたり 27.2億円(今の1.40倍)、営業利益率 5.5%
- 国内の家庭用品(H&PC国内):数量 12,000(国内の家庭用品の市場規模(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 24.8%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 2,975 億円・営業利益 297 億円。国内市場(実質)12000億円 × シェア 18.5% × 物価1.34倍、営業利益率 10.0%
- 海外の家庭用品(H&PC海外):数量 36.0(紙おむつ・生理用品の販売数量(億個・推定))× 価格 45(1 億個あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,618 億円・営業利益 97 億円。36.0億個 × 1億個あたり 44.9億円(今の1.34倍)、営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 409 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.7 倍。全体の PER 11.7 倍、時価総額 4,785 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:家庭用品の値上げ定着・海外黒字化・板紙の集約・借金の減少が全部そろうことが条件で、連続して成功する確度は低い。
やや楽観 18% 国内の家庭用品が伸び、海外は小さな黒字 利益 306 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 2,485 円3,833 億円
国内の家庭用品が堅調で、値上げの一部が利益に残る10年になる。トイレットペーパーとティッシュはプライベートブランドに押されつつも、エリエールの棚が守られ、アテントなど大人用の商品が高付加価値化して全体の利益率を支える。海外は赤字が消え、小さな黒字を維持する。板紙は北越コーポレーションとの連携で効率が上がるが、洋紙の縮小は続き、紙・板紙の数量は10年で1割ほど減る。借金は少しずつ減るものの、金利の上昇が利払いを押し上げ、純利益の伸びは営業利益より緩やかだ。会社は過去より稼げる体質になるが、資本コストを超えるほどの利益率には届かない。
- 紙・板紙:数量 162(紙・板紙の販売量(万t・推定))× 価格 26(1万tあたり平均売上(億円・名目、加工品・輸出込み))→ 売上 4,288 億円・営業利益 197 億円。販売量 162.0万t(今の90%)× 1万tあたり 26.5億円(今の1.36倍)、営業利益率 4.6%
- 国内の家庭用品(H&PC国内):数量 11,820(国内の家庭用品の市場規模(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 24.1%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 2,851 億円・営業利益 242 億円。国内市場(実質)11820億円 × シェア 18.0% × 物価1.34倍、営業利益率 8.5%
- 海外の家庭用品(H&PC海外):数量 33.5(紙おむつ・生理用品の販売数量(億個・推定))× 価格 45(1 億個あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,505 億円・営業利益 68 億円。33.5億個 × 1億個あたり 44.9億円(今の1.34倍)、営業利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 306 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 3,308 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の家庭用品の値上げが残り、海外の赤字が消える筋書き。2026年の値上げの実績と中期計画の方向に沿うが、中期計画は当初目標を下方修正してきた実績もあり、厚くは置かない。
中立 38% 値上げは残るが、利益率は薄いまま 利益 187 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 1,503 円2,318 億円
値上げの効果は残るが、利益率は低いまま10年が過ぎる。国内の家庭用品は人口減で数量がわずかに減る一方、大人用紙おむつの高付加価値化と値上げの定着で利益率は6〜7%まで上がる。海外は構造改革でようやく黒字に戻るが、現地メーカーとの競争で2〜3%の薄利にとどまる。紙・板紙は国内需要の縮小に合わせて数量を落とし、設備の統廃合と北越コーポレーションとの連携でかろうじて利益を保つ。営業利益は今の1.5倍の370億円ほどになる。しかし借り換えで利払いが増え、純利益は190億円ほど。自己資本は少しずつ積み上がるものの、利益率の低さは変わらず、自己資本利益率は5〜6%と資本コストを下回る会社として評価される。
- 紙・板紙:数量 158(紙・板紙の販売量(万t・推定))× 価格 26(1万tあたり平均売上(億円・名目、加工品・輸出込み))→ 売上 4,131 億円・営業利益 145 億円。販売量 158.4万t(今の88%)× 1万tあたり 26.1億円(今の1.34倍)、営業利益率 3.5%
- 国内の家庭用品(H&PC国内):数量 11,640(国内の家庭用品の市場規模(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 23.5%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 2,730 億円・営業利益 177 億円。国内市場(実質)11640億円 × シェア 17.5% × 物価1.34倍、営業利益率 6.5%
- 海外の家庭用品(H&PC海外):数量 31.0(紙おむつ・生理用品の販売数量(億個・推定))× 価格 45(1 億個あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,393 億円・営業利益 35 億円。31.0億個 × 1億個あたり 44.9億円(今の1.34倍)、営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 187 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 2,022 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げは残るが薄い利益率のまま、という最も起こりやすい姿。ただし利払いの増加と海外再建の遅れを考えると、確率は4割を超えない。
やや悲観 26% 原燃料高と安売り圧力で利益が痩せる 利益 65 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 455 円702 億円
原燃料の高止まりと、小売りの自社商品・輸入品への客離れが重なる10年になる。値上げの一部が元に戻り、国内の家庭用品の利益率は4%台にとどまる。紙・板紙は需要の縮小が速く、統廃合のコストをこなしても利益率は2%台まで落ちる。海外は撤退と縮小を繰り返し、損益はゼロ前後で、全社の利益に貢献しない。営業利益は今を少し下回る水準で、借り換えで増えた利払いと合わせると、純利益は60億円台まで細る。還元は配当を維持するのが精一杯で、自社株の取得や北越株の買い付けに使った資金の回収も進まない。事業は残るが、資本を食う側の会社になる。
- 紙・板紙:数量 148(紙・板紙の販売量(万t・推定))× 価格 25(1万tあたり平均売上(億円・名目、加工品・輸出込み))→ 売上 3,734 億円・営業利益 93 億円。販売量 147.6万t(今の82%)× 1万tあたり 25.3億円(今の1.30倍)、営業利益率 2.5%
- 国内の家庭用品(H&PC国内):数量 11,400(国内の家庭用品の市場規模(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 22.5%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 2,566 億円・営業利益 115 億円。国内市場(実質)11400億円 × シェア 16.8% × 物価1.34倍、営業利益率 4.5%
- 海外の家庭用品(H&PC海外):数量 28.0(紙おむつ・生理用品の販売数量(億個・推定))× 価格 45(1 億個あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,258 億円・営業利益 0 億円。28.0億個 × 1億個あたり 44.9億円(今の1.34倍)、営業利益率 0.0%
倍率:ROE 2.3% が k 9.25% 以下なので、新しく投じるお金は資本コストに届かず、伸びても価値は増えない(ためた利益は額面未満)。RONIC=k+残る割合 1/2×(ROE−k)=5.8%、正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=5.8 倍(g 4%)で、PER の上限は 1÷k=10.8 倍。やや悲観は伸びも堀の持ちも低く見て、稼ぐ力(純利益÷k)は約 700 億円だが、事業の資産の返りも薄く、上限の 6.5 割の 7.0 倍に置いた。 純有利子負債が重いので EV÷営業利益も見る:時価総額に純有利子負債約 3000 億円を足して営業利益 213 億円で割ると 16.2 倍で、20 倍を超えない。
確率:原燃料高と安売り圧力で利益が痩せる筋書き。過去の利益率の低さと借金の重さを考えると、起こる確率は中立より少し低いだけで、実質的な可能性として強く見る。
悲観 12% 値決め力を失い、借金だけが残る 利益 −125 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 243 円374 億円
値決め力を失い、借金だけが残る10年になる。3社の協調値上げは続かず、小売りの自社商品と安い輸入品がティッシュとトイレットペーパーの棚を取る。値上げを戻さざるを得なくなる一方、電力・燃料・パルプの高騰は続き、紙・板紙は赤字に沈む。海外は撤退を重ねるが、減損と退職の費用がかさみ、赤字が止まらない。営業損益は小幅の赤字となり、増えた利払いで純損益は大きな赤字になる。借り換えの金利が上がる中、財務に余裕がなくなり、資産の売却と減損で自己資本が1,000億円規模で減る。北越コーポレーションとの提携も、救済ではなく負担になる。事業は続くが、優良企業とは呼べなくなる。
- 紙・板紙:数量 130(紙・板紙の販売量(万t・推定))× 価格 23(1万tあたり平均売上(億円・名目、加工品・輸出込み))→ 売上 3,027 億円・営業利益 −30 億円。販売量 129.6万t(今の72%)× 1万tあたり 23.4億円(今の1.20倍)、営業利益率 -1.0%
- 国内の家庭用品(H&PC国内):数量 11,160(国内の家庭用品の市場規模(億円・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 20.1%(市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 2,243 億円・営業利益 56 億円。国内市場(実質)11160億円 × シェア 15.0% × 物価1.34倍、営業利益率 2.5%
- 海外の家庭用品(H&PC海外):数量 25.0(紙おむつ・生理用品の販売数量(億個・推定))× 価格 40(1 億個あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,006 億円・営業利益 −30 億円。25.0億個 × 1億個あたり 40.2億円(今の1.20倍)、営業利益率 -3.0%
倍率:ROE は赤字で k 9.25% を大きく下回り、稼ぐ力から価値は出せない。値打ちは売れる資産で決まるとみる。減損と赤字の穴埋めで自己資本は今の 2,269 億円から 1,700 億円へ減ると置き、その 0.22 倍(PBR)に置いた。底の倍率に頼らず、稼ぐ力の欠如と、土地・投資有価証券など売れる資産の割引から出した。純有利子負債が重く、EV÷営業利益は赤字のため意味を持たない。
確率:値決め力の喪失と海外の失敗が重なる構造的な負け。純有利子負債がEBITDAの約5倍で金利上昇に弱く、一度崩れると立て直しに時間がかかるため、1割を超えて置く。quality の借金・寿命と同じ理由で上げ下げしすぎない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
紙・板紙
段ボール原紙などの板紙と洋紙を、三島・川之江などの工場で作って売る。原料と燃料の価格に利益が左右される装置産業。
| 数量紙・板紙の販売量(万t・推定) | 価格1万tあたり平均売上(億円・名目、加工品・輸出込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 180 | 19 | 3,503 | 141 |
| 10 年後 中立 | 158 | 26 | 4,131 | 145 |
取り方:紙・板紙の売上 3,503 億円、営業利益 141 億円(決算の開示値)。販売量は開示がないため、国内の紙・板紙の内需約 2,000 万t のうち大王製紙の生産規模(約 190 万t の能力・稼働と加工品を含む)から約 180 万tと推定し、平均売上を 1万tあたり約 19.5 億円とした。数量は実質(需要は人口減と脱紙で年 1〜2% 縮む)、物価 3% と値上げは価格に入れる。
国内の家庭用品(H&PC国内)
ティッシュ・トイレットペーパー、大人用紙おむつ、ベビー・生理用品など。エリエールとアテントのブランドで売る。
| 数量国内の家庭用品の市場規模(億円・今の値段で測った実質)× シェア | 価格市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12,000 | 17.1% | 2,050 | 100 |
| 10 年後 中立 | 11,640 | 23.5% | 2,730 | 177 |
取り方:家庭用品(H&PC)全体の売上 2,989 億円・営業利益 81 億円(開示値)を、国内約 2,050 億円・利益約 100 億円、海外約 940 億円・赤字約 19 億円に分けた(国内・海外の内訳は中期計画の見通しと開示から推定)。国内の家庭紙・紙おむつ・生理用品の市場を実質で約 1.2 兆円と置き、シェアは約 17%。数量(市場の実質)は人口減と高齢化で 10 年ほぼ横ばい〜微減、物価の分は価格(シェア × 物価)に入れる。
海外の家庭用品(H&PC海外)
中国・東南アジア・ブラジルなどで売る紙おむつ・生理用品。構造改革の最中。
| 数量紙おむつ・生理用品の販売数量(億個・推定) | 価格1 億個あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 28.0 | 34 | 939 | −19 |
| 10 年後 中立 | 31.0 | 45 | 1,393 | 35 |
取り方:海外の売上約 940 億円、営業損益約マイナス 19 億円は推定(2026 年度の見通しが売上 950 億円・利益 0 億円で、前年は赤字)。販売数量は開示がないため、1 億個あたり約 33.5 億円(紙おむつと生理用品の混合)で割り戻して約 28 億個とした。数量は実質、物価は価格に入れる。
リスクと懸念
借り換えによる利払いの増加
純有利子負債は3,300億円超で、営業利益の14倍にのぼる。借り換えのたびに金利が上がり、10年で利払いは年に80億円ほど増える。営業利益が今のままなら、純利益は今の水準から大きく目減りする。
原燃料の高止まり
パルプ・古紙・電力・燃料の価格が上がる局面では、値上げが追いつかない。2026年も中東情勢で、値上げの効果が打ち消されるとの見通しが出ている。
値上げによる客離れ
ティッシュとトイレットペーパーは、小売りの自社商品と輸入品が安さで迫る。値上げを重ねるほど、客が離れる速さが増す。ティッシュの輸入比率はすでに2割を超えている。
海外再建の失敗
中国・東南アジアの紙おむつは現地メーカーとの価格競争が激しい。中期計画の海外の利益は当初の約40億円から0億円へ引き下げられ、黒字化は目標どまりだ。再び減損が出れば自己資本が削られる。
北越コーポレーションとの資本整理の費用
持ち合いの解消に伴い、自社株の取得や北越株の買い付けを予定する。規模と時期は開示を待つ必要があるが、借金の返済に回すべきお金が出ていく可能性がある。
国内需要の縮小
国内の紙・板紙の需要は集計開始以来、初めて2,000万トンを割る見通しだ。人口減が続く限り数量は戻らず、設備の統廃合が遅れれば固定費の重さが利益を圧迫する。
今後の分かれ目
- 値上げ後も家庭用品の販売数量が前年を大きく割り込まなかったら
- 国内の家庭用品の利益率が上がる筋書き(やや楽観以上)の確率を上げてよい。
- 原燃料が下がっても値上げ後の価格が戻らなければ
- 利益率が構造的に上がった証拠になる。中立の利益率の前提を引き上げる。
- 海外の子会社が2期続けて黒字になったら
- 海外の損益をゼロ前後とする前提を見直し、やや楽観の確率を上げる。
- 自社株の取得や北越株の買い付けで純有利子負債が大きく増えたら
- 利払いの負担が増すので、やや悲観・悲観側に確率を移す。
- 小売りの自社商品と輸入品のシェアがトイレットペーパー・ティッシュで急に上がったら
- ブランドの値決め力が崩れ始めたとみて、悲観の確率を上げる。
- 板紙の統廃合が進み、国内の抄紙機が数台まとまって止まったら
- 供給が絞られて値決めが楽になるので、紙・板紙の利益率の前提を上げてよい。
見ておくもの
- 家庭用品の四半期ごとの営業利益率と、値上げ後の販売数量
- 海外H&PCの営業損益(黒字化の時期)
- 純有利子負債と、自社株取得・北越株買い付けの開示
- 北越コーポレーションの持ち株比率の推移
- パルプ・古紙・電力燃料の価格
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去・同業の倍率に寄せず、資本コスト 9.25%(基本 7.5% に quality +1.75%)と、10 年後の自己資本利益率から出した。中立の自己資本利益率は 5〜6% で k を下回るので、正当化 PER の上限は 1÷k=10.8 倍、式(RONIC と g 3%)と上限の 9 割前後から 9.5〜9.7 倍に置いた(借金・循環は k で見ているので重ねて引かない)。数量は実質、物価 3% は価格の側に入れ、二重に掛けていない。純利益は営業利益から、借り換えの利払い増(推定 10 年で年 60〜90 億円)と税・少数株主の取り分を引いて出した。悲観は稼ぐ力ではなく売れる資産と今の自己資本から置いた。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。なお新リース会計基準(2028/03 期から)で営業利益と純有利子負債の形が変わるが、数字は今と同じ形(家賃を費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→11.7 倍・やや楽観 PER 9.7→10.81 倍・中立 PER 9.5→10.81 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。