結論
ダイワボウホールディングスは、法人向けパソコン卸で国内最大手の会社だ。傘下のダイワボウ情報システム(DIS)が、約 1,500 社のメーカーの製品を、約 19,000 社の販売店へ流す。2026 年 3 月期の PC 取扱台数は 654 万台で、国内シェアは 36.5% に達した。
筆者の結論は「やや割高」だ。10 年後の値打ちを 5 つの筋書きで重ねると、今の時価総額を 1 割ほど下回る。直近の利益が、Windows 10 の更新と学校端末の入れ替えという、一度きりの山の上にあるからだ。
事業そのものは堅い。粗利は 7% 前後と薄いが、全国 112 の拠点と物流、24 時間受けられる受発注の仕組みが、他社のまねしにくい土台になっている。借金は軽く、現金も厚い。ただ、薄利多売の卸は台数が減ると利益が目に見えて減る。会社自身が、2027 年 3 月期の営業利益を 365 億円と見ている。今期の 441 億円から 2 割近い減益だ。
先の伸びを担うのは、クラウドやソフトの継続課金、サーバーとネットワークの取り込みだ。PC の台数は人口とともに細る。中立の筋書きでは、10 年後の営業利益は 500 億円ほど。悪くない水準だが、今の値段が前提にしている「山の利益が続く」世界には届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「分かりやすいが、割安とは限らない」事業だ。PC やサーバーを卸す仕組みは単純で、10 年先も仕組み自体は残る。物流と信用管理を担う代わりに、薄い取り分をもらう。堀は普通で、強くはない。
大切なのは、オーナーの手元に残る利益だ。卸は大きな工場を持たず、設備投資は軽い。運転資金が膨らむ時期だけ、現金が出ていく。利益のうち半分を返しても、ROE は 15% 前後を保ってきた。資本を食わない点は魅力になる。
一方で、利益の質には注意がいる。直近の純利益 320 億円は、Windows 10 と学校端末の特需で押し上げられている。会社の予想では、翌期の純利益は 253 億円まで下がる。バリュー投資家は、山の利益に高い倍率を掛けない。平均的な年の利益を見て、そこに払える値段を考える。
筆者は、中立の利益を 10 年後に 360 億円ほどと置いた。これに、資本コスト 7.8% と ROE から式で出した倍率を掛けると、今の時価総額を 1 割ほど下回る価値になる。悲観の筋書きでも事業は残るので、損失は限られる。ただし、安全域と呼べるほどの余裕はない。待つ価値のある値段は、今より低い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は「仕入れて、全国の販売店に流す」ことだ。DIS は約 1,500 社のメーカーの製品を持ち、約 19,000 社の販売店に卸す。販売店はそれを企業・官公庁・学校・病院に納める。
売上の大半は PC だ。内訳は開示されていないが、筆者は 5〜6 割と見ている。サーバーは売上の 5〜6% で、残りがネットワーク機器、周辺機器、ソフトとクラウドの使用権になる。最近は、クラウドの月額・年額の契約をまとめて管理する「iKAZUCHI(雷)」の取扱高が伸びている。2026 年 3 月期は 545 億円で、前の年より 35% 増えた。
薄利の事業である。粗利率は 7% 前後、営業利益率は 3% 台前半だ。それでも利益が出るのは、物流と受発注を自動化し、1 件あたりの手間を減らしているからだ。この速さと品ぞろえが、卸としての価値になる。
もう一つの柱が産業機械だ。子会社のオーエム製作所が、立旋盤や車輪旋盤などの工作機械、自動包装機、鋳物を作って売る。売上は 144 億円、営業利益は 11 億円で、全社の 3% 弱にすぎない。2025 年 2 月にランサムウェア被害を受けたが、2026 年 3 月期には復旧した。
祖業の繊維(大和紡績)は、2024 年 3 月に投資ファンドへ売却した。IT 卸一本の会社に生まれ変わったと言ってよい。2027 年 4 月には社名を MUSUBITE 株式会社に改め、DIS も DIS 株式会社になる予定だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは「網」にある。全国 112 の拠点、1,500 社の取扱メーカー、19,000 社の販売店、そして受発注と物流の仕組みだ。これを新しく作るには、年月もお金もかかる。法人向け PC 市場で、DIS が 5 割近いシェアを持つのは偶然ではない。
ただし、値決めの力は弱い。PC の仕入れ値はメーカーが決め、販売店も他の卸から買える。DIS の取り分は、粗利で 7% 前後に押さえられる。筆者は堀の強さを「普通」と見る。使い続けてもらえる理由はあるが、値段で動く客も多い。
資本の使い方は、近年うまくなった。祖業の繊維を売り、IT 卸に絞った。利益の半分以上を、配当と自社株買いで返している。2025 年 11 月には、発行済み株の約 8% を消却した。ROE は 2026 年 3 月期に 19% 前後で、会社が掲げる 14% 以上を上回る。ただし、これは特需の年の数字だ。過去 10 年の中央値は 15% 台にとどまる。
弱みは三つある。一つ目は、利益が PC の更新の波に左右されること。二つ目は、メーカーの直販やクラウド事業者の直接販売が、卸を飛ばす恐れがあること。三つ目は、子会社でランサムウェア被害が起きたことだ。IT 流通の会社として、管理の甘さは評判に響く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社の業績は、国内の PC 出荷でほぼ決まる。MM 総研によると、2025 年度の出荷は 1,806 万台で、統計を取り始めてから最も多かった。Windows 10 のサポート終了と、学校の端末(GIGA スクール)の入れ替えが重なったためだ。学校向けだけで 400 万台ほどあった。
その反動が来る。MM 総研は 2026 年度を 1,123 万台と見ており、4 割近い減少だ。会社の予想も、法人の Windows 更新が約 90 万台、学校向けが前年の半分以下になるとして、売上で約 2,000 億円の反動を織り込んでいる。
もう一つの変数がメモリの値上がりだ。AI 向けサーバーが DRAM を大量に使い、PC 用が割高になった。PC の値段は 2026 年 4 月から 2〜3 割上がると会社は見ている。値上げは売上を押し上げるが、買い替えを先送りさせて台数を削る。
長い目で見れば、国内の PC 需要は人口とともに細る。更新の波は 5〜6 年に一度やって来るが、毎回の山は低くなる可能性がある。一方、クラウドやサブスクリプション、サーバーとネットワークは、企業のデジタル化で伸びる。DIS が PC に偏った構成を変えられるかが、10 年の分かれ目だ。
競合は、ソフトバンク傘下の SB C&S(売上 1 兆円規模)、大塚商会のような SI 系、そしてメーカーの直販だ。DIS はこのうち、法人向けの卸で最大手の位置にいる。ただ、シェアは特需の年に上振れた。会社自身も、2027 年 3 月期は 30% 台前半に戻ると見ている。
資本政策と M&A
還元に熱心な会社だ。2026 年 3 月期の総還元性向は 53.8%、配当性向は 29% だった。2027 年 3 月期は増配と、約 60 億円の自社株買いを予定している。2025 年 11 月には、自社株約 787 万株を消却した。
純現金は 255 億円で、時価総額の 8% ほどだ。卸は在庫と売掛金を抱えるので、手元の現金は仕入れ代金の支払いと運転資金を兼ねている。余剰とは分けていない。
M&A は小さく、慎重だ。2025 年 11 月に、IT 営業の人材派遣を手がける BCC に約 21% 出資し、筆頭株主になった。IT 業界の人手不足を背景に、人材とノウハウを交換する狙いだ。このほか、運用・保守から回収・再資源化までの領域も検討している。
次の中期経営計画は 2027 年 5 月に出る。重点は「非連続な成長の物語」「攻めの資本配分」「資本コストを上回る収益基盤」の三つだ。現行計画は DIS の売上 1 兆円が目標だったが、すでに超えた。2030 年度に営業利益 500 億円という長期目標もある。
買収に大きく踏み出せば、価値を壊す危険もある。薄利の卸が高い値段で他社を買うと、資本効率は一気に落ちる。今のところ、会社は返すことを優先している。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
特需を引いても、利益の土台は切り上がった。営業利益は 2022 年 3 月期の 241 億円から、2025 年 3 月期には 349 億円まで伸びた。会社が見る 2027 年 3 月期の 365 億円も、特需の反動を織り込んだうえで、3 年前の山を超えている。
シェアも一段上がった。法人向け PC のシェアは 37.6% から 46.8% へ広がった。一度 DIS に切り替えた販売店は、品ぞろえと物流の便利さから、簡単には離れない。上がったシェアの全部は残らなくても、半分残れば利益は十分に伸びる。
PC の値上がりも追い風だ。メモリ高騰で PC の値段は 2〜3 割上がり、粗利率は 7.0% から 7.4% へ改善する見通しだ。台数が減っても、単価が上がれば売上は守れる。
成長の中身も変わりつつある。継続課金の iKAZUCHI は取扱高が 545 億円で、年 35% ずつ増えている。サーバー・ネットワークにも広げる。次の更新の波は、Windows の次の世代と学校端末の 3 回目で、5 年後にまたやって来る。会社は 2030 年度に営業利益 500 億円を掲げ、次の中期計画で「攻めの資本配分」を打ち出す。資本を返しつつ、新しい領域を買い足せば、10 年後の利益は今の山の水準を上回る。
慎重な見方
今の利益は特需で膨らんだ山だ。2026 年度の国内 PC 出荷は、MM 総研の予測で 4 割近く減る。2026 年 3 月期の PC 取扱台数は 654 万台だが、同じ水準が続くとは誰も考えていない。会社自身が、営業利益を 2 割近く減らす計画を出している。第 1 四半期は前年から 22% 減だった。
シェアの上振れは長続きしにくい。36.5% は、特需の年に価格で動く客を取り込んだ結果だ。前の年は 28% 前後で、会社も 30% 台前半に戻ると見ている。取ったものは、取り返される。
利益率の薄さも弱点だ。営業利益率は 3% 台で、売上が 1 割落ちれば、人件費や物流の固定費が重くのしかかる。販売店は他の卸からも仕入れられ、値段で動く。
構造の変化も無視できない。メーカーは大口顧客への直販を広げ、クラウド事業者は卸を通さず直接売る。SB C&S のような大手との競争もある。メモリの値上がりは、企業に買い替えを先送りさせる。人口が減る国で、PC の台数が 10 年後に今の水準に戻る理由は見当たらない。
さらに、成長の手段が弱い。子会社のランサムウェア被害は管理の課題を示し、BCC への出資は、本業との関係がまだ見えにくい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が少し強い。強気の見方が言う「利益の土台が上がった」は事実だが、PC の台数は人口とともに細り、山の利益には高い倍率を掛けられないからだ。
そこで確率は、中立を 34% に置いたうえで、やや悲観と悲観を合わせて 34%、楽観とやや楽観を合わせて 32% にした。強気の見方が当たるには、継続課金とサーバーが PC の穴を埋める必要がある。その兆しはあるが、まだ利益の主役ではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 7,088 円6,063 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,956 円1,673 億円)。 今の値に割り戻すと 4,688 円4,010 億円、今との差 +25.7%、 期待の年率 +9.3%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 11,745 円1.00 兆円 | 2,310 円1,976 億円 | +276.7% | +14.2% | 1,405 円1,202 億円 |
| やや楽観 | 22% | 9,746 円8,337 億円 | 2,219 円1,898 億円 | +220.7% | +12.4% | 2,632 円2,252 億円 |
| 中立 | 34% | 8,532 円7,299 億円 | 1,993 円1,705 億円 | +182.1% | +10.9% | 3,579 円3,061 億円 |
| やや悲観 | 22% | 3,356 円2,871 億円 | 1,754 円1,500 億円 | +36.9% | +3.2% | 1,124 円962 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,086 円929 億円 | 1,444 円1,235 億円 | −32.2% | −3.8% | 304 円260 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,088 円6,063 億円 | 1,956 円1,673 億円 | +142.4% | +9.3% | 9,044 円7,736 億円 |
今の株価時価総額 3,731 円3,192 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 次の更新の波も取り切り、継続課金が柱になる 利益 500 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 11,745 円1.00 兆円
2036 年 3 月期までに、国内の PC 出荷は年 1,300 万台あたりで推移する。Windows の次の世代と、学校端末の 3 回目の入れ替えが、波をもう一度つくる。AI を載せた PC への買い替えも重なる。
DIS は法人向けのシェアを守り、全体で 36% を保つ。メーカーの直販が広がっても、中小企業と自治体は卸に頼り続ける。PC の営業利益率は 3.3% まで上がる。
稼ぎの主役は PC 以外に移る。クラウドの継続課金、サーバー、ネットワーク、セキュリティが毎年伸び、取扱額は実質で今の 1.5 倍になる。継続課金の比率が上がり、営業利益率は 3.5% に届く。
営業利益は 700 億円に迫る。次の中期計画で打ち出した攻めの資本配分が当たり、IT 人材やサービスの小さな買収が積み上がった結果だ。資本を返しながら成長する、優れた卸になる。
- PC(パソコン)の流通:数量 468(PC 取扱台数(万台)=国内 PC 出荷台数 × DIS のシェア)× 価格 16(1 台あたり売上(万円・名目))→ 売上 7,535 億円・営業利益 249 億円。市場 1300 万台 × シェア 36.0%、営業利益率 3.3%
- サーバー・ネットワーク・ソフト・クラウドなど:数量 0.9(国内の流通経由IT市場(実質・兆円)× DIS の取扱シェア=DIS の実質取扱額(兆円))× 価格 1.38(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 12,097 億円・営業利益 423 億円。実質取扱額 1.50 倍、値段 1.38 倍、営業利益率 3.5%
- 産業機械(オーエム製作所):数量 1.9(納入額の実質(百億円・今の値段))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 251 億円・営業利益 23 億円。実質 1.30 倍、値段 1.34 倍、営業利益率 9%
倍率:事業の純利益 500 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.4% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍。全体の PER 18.58 倍、時価総額 9,290 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:次の更新の波でもシェアを守り、継続課金とサーバーが PC の穴を埋める。実現すれば強いが、台数が人口で細る中で全部がそろう確度は高くない。
やや楽観 22% シェアを守り、PC 以外が着実に伸びる 利益 415 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 9,746 円8,337 億円
国内の PC 出荷は年 1,200 万台ほどで、特需の山を除いた通常の年より少し高い水準を保つ。更新の波が 5〜6 年ごとに来て、台数を支える。
DIS のシェアは 33.5% まで戻り、特需で取った顧客の一部が残る。メモリ高騰で上がった PC の値段は、AI 搭載機の普及で高めに保たれる。営業利益率は 3.1% になる。
PC 以外は実質で 4 割近く伸びる。中小企業のクラウド導入が進み、継続課金が着実に積み上がる。サーバーとネットワークでも、全国の販売店網を生かして地位を固める。営業利益率は 3.3% になる。
営業利益は 580 億円ほどになる。会社の 2030 年度の目標に近い道筋だが、PC の台数が人口とともに少しずつ細るため、それ以上の伸びは見込まない。
- PC(パソコン)の流通:数量 402(PC 取扱台数(万台)=国内 PC 出荷台数 × DIS のシェア)× 価格 16(1 台あたり売上(万円・名目))→ 売上 6,336 億円・営業利益 196 億円。市場 1200 万台 × シェア 33.5%、営業利益率 3.1%
- サーバー・ネットワーク・ソフト・クラウドなど:数量 0.8(国内の流通経由IT市場(実質・兆円)× DIS の取扱シェア=DIS の実質取扱額(兆円))× 価格 1.36(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 10,968 億円・営業利益 362 億円。実質取扱額 1.38 倍、値段 1.36 倍、営業利益率 3.3%
- 産業機械(オーエム製作所):数量 1.7(納入額の実質(百億円・今の値段))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 222 億円・営業利益 18 億円。実質 1.15 倍、値段 1.34 倍、営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 415 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.2% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍。全体の PER 18.21 倍、時価総額 7,557 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:特需で取った顧客の一部が残り、PC 以外が毎年伸びる筋書き。会社の長期目標(2030 年度の営業利益 500 億円)に近く、ありうる範囲の上側。
中立 34% 台数は平準化し、利益は物価なみに伸びる 利益 360 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 8,532 円7,299 億円
国内の PC 出荷は年 1,100 万台あまりで落ち着く。人口は減るが、AI 搭載機への買い替えと学校・官公庁の更新が、台数を下支えする。
DIS のシェアは 32% に戻る。特需で取った顧客のうち、値段で動く層は他の卸に戻る。法人向けの強さは保つ。PC の値段は物価なみに上がり、営業利益率は 3.0% で安定する。
PC 以外は実質で 3 割ほど伸びる。クラウドの継続課金とサーバーが主役で、営業利益率は 3.2% になる。産業機械は、鉄道や工場の更新に支えられて小さく伸びる。
営業利益は 500 億円ほどになる。今の 441 億円から見ると、物価の分と少しの成長を足した水準だ。会社は還元を続け、小さな提携を積む。突出した成長も、大きな崩れもない。普通に強い国内最大手として、10 年が過ぎる。
- PC(パソコン)の流通:数量 358(PC 取扱台数(万台)=国内 PC 出荷台数 × DIS のシェア)× 価格 15(1 台あたり売上(万円・名目))→ 売上 5,523 億円・営業利益 166 億円。市場 1120 万台 × シェア 32.0%、営業利益率 3.0%
- サーバー・ネットワーク・ソフト・クラウドなど:数量 0.7(国内の流通経由IT市場(実質・兆円)× DIS の取扱シェア=DIS の実質取扱額(兆円))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 10,024 億円・営業利益 321 億円。実質取扱額 1.28 倍、値段 1.34 倍、営業利益率 3.2%
- 産業機械(オーエム製作所):数量 1.5(納入額の実質(百億円・今の値段))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 203 億円・営業利益 14 億円。実質 1.05 倍、値段 1.34 倍、営業利益率 7%
倍率:事業の純利益 360 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.4% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍。全体の PER 17.96 倍、時価総額 6,466 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の PC 台数が平準化し、DIS が最大手の位置を保つ中心の見立て。強気と慎重の両方の言い分の落としどころ。
やや悲観 22% 直販とメーカー再編で、卸の取り分が削られる 利益 260 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 3,356 円2,871 億円
メーカーが大口顧客への直販を広げ、クラウド事業者も卸を通さない販売を強める。国内の PC 出荷は年 1,000 万台を割り込む。メモリの値上がりが続き、買い替えの先送りが常態になる。
DIS のシェアは 30% まで下がる。価格で動く販売店は他の卸に流れ、PC の値段も物価に追いつかない。営業利益率は 2.6% に落ちる。
PC 以外は実質で 1 割ほどしか伸びない。クラウドの継続課金は、メーカーが直接売る比率を高め、卸の取り分は細る。営業利益率は 2.9% にとどまる。
営業利益は 360 億円で、10 年前から名目で横ばいだ。事業は崩れないが、物価で目減りする。還元は続けるものの、成長に回せる余力は小さい。
- PC(パソコン)の流通:数量 294(PC 取扱台数(万台)=国内 PC 出荷台数 × DIS のシェア)× 価格 14(1 台あたり売上(万円・名目))→ 売上 4,228 億円・営業利益 110 億円。市場 980 万台 × シェア 30.0%、営業利益率 2.6%
- サーバー・ネットワーク・ソフト・クラウドなど:数量 0.6(国内の流通経由IT市場(実質・兆円)× DIS の取扱シェア=DIS の実質取扱額(兆円))× 価格 1.30(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 8,357 億円・営業利益 242 億円。実質取扱額 1.10 倍、値段 1.30 倍、営業利益率 2.9%
- 産業機械(オーエム製作所):数量 1.4(納入額の実質(百億円・今の値段))× 価格 1.30(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 178 億円・営業利益 9 億円。実質 0.95 倍、値段 1.30 倍、営業利益率 5%
倍率:事業の純利益 260 億円・事業 ROE 9.6% は k 7.8% をわずかに上回るだけで、RONIC は 9.2%、g 4% なら正当化 PER は 11.8 倍。ただしこの筋書きは取扱量が実質で減り、g を 4% に置けない。新しく投じるお金が k 並みしか稼がず、利益も谷へ向かう流れなので、上限の約 7 割の 8.5 倍に置いた。
確率:メーカーの直販が広がり、価格で動く販売店が離れる。薄利の卸の構造では、少し押されるだけで利益が目に見えて減る。慎重な見方が強いので確率を厚くした。
悲観 12% 卸を飛ばす流れが強まり、役割が細る 利益 129 億円 · PER 7.2 倍 · 株価時価総額 1,086 円929 億円
メーカーの直販とクラウドの直接販売が重なり、卸を飛ばす流れが加速する。国内の PC 出荷は年 850 万台に細る。人口の減少と、企業の買い替え間隔の長期化が重なった結果だ。
DIS のシェアは 25% まで下がる。大口顧客は直販に移り、残るのは手間のかかる中小の販売店だ。PC の値段は物価を下回り、営業利益率は 1.8% まで落ちる。112 の拠点と物流の固定費が重くのしかかる。
PC 以外も縮む。継続課金の管理はメーカーに奪われ、実質で 15% 減る。営業利益率は 2.2% になる。
営業利益は 180 億円ほどで、今の 4 割だ。事業は残るが、もう優れた卸ではない。それでも、純現金と回収できる運転資金のおかげで、会社が崩れる心配はない。
- PC(パソコン)の流通:数量 213(PC 取扱台数(万台)=国内 PC 出荷台数 × DIS のシェア)× 価格 13(1 台あたり売上(万円・名目))→ 売上 2,688 億円・営業利益 48 億円。市場 850 万台 × シェア 25.0%、営業利益率 1.8%
- サーバー・ネットワーク・ソフト・クラウドなど:数量 0.5(国内の流通経由IT市場(実質・兆円)× DIS の取扱シェア=DIS の実質取扱額(兆円))× 価格 1.20(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 5,961 億円・営業利益 131 億円。実質取扱額 0.85 倍、値段 1.20 倍、営業利益率 2.2%
- 産業機械(オーエム製作所):数量 1.2(納入額の実質(百億円・今の値段))× 価格 1.20(値段の指数(今を 1.00))→ 売上 147 億円・営業利益 4 億円。実質 0.85 倍、値段 1.20 倍、営業利益率 3%
倍率:事業の純利益 129 億円・事業 ROE 5.5% は k 7.8% 以下なので、PER の上限は 1÷k=11.4 倍。卸としての優位を失い、ためた利益は額面どおりの値打ちにならない。純有利子負債は小さく、現金による床の上乗せはしていない。上限の約 6 割の 7.2 倍に置いた。
確率:直販とクラウド直売が同時に進み、台数も細る複合の筋書き。卸の役割が細ると戻りにくいので、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
PC(パソコン)の流通
法人・官公庁・学校向けにパソコンを仕入れ、全国の販売店に卸す。事業の中心で、台数がそのまま利益の大きさを決める。
| 数量PC 取扱台数(万台)=国内 PC 出荷台数 × DIS のシェア | 価格1 台あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 654 | 12 | 7,521 | 231 |
| 10 年後 中立 | 358 | 15 | 5,523 | 166 |
取り方:取扱台数 654 万台は会社の開示。国内出荷 1,806 万台(MM 総研)に対するシェアは約 36%。1 台あたり売上は非開示なので、法人機と GIGA 端末(低単価)の混ざりを 11.5 万円と仮置きした推定。営業利益の PC と非 PC の分けも非開示で、全社のITインフラ流通 430 億円を売上比で配った推定。
サーバー・ネットワーク・ソフト・クラウドなど
PC 以外のIT機器と、ソフト・クラウドの使用権(サブスクリプション)を扱う。PC より粗利が厚く、景気の波も小さい。
| 数量国内の流通経由IT市場(実質・兆円)× DIS の取扱シェア=DIS の実質取扱額(兆円) | 価格値段の指数(今を 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.6 | 1.00 | 5,844 | 199 |
| 10 年後 中立 | 0.7 | 1.34 | 10,024 | 321 |
取り方:売上 5,844 億円は ITインフラ流通の売上 13,365 億円から PC 推定分を引いた残り。国内の流通経由ハード・ソフト市場を約 9 兆円と仮置きし、DIS の取扱シェアを約 6.5% と推定した(市場規模は非開示・推定)。サーバーは売上の 5〜6%、iKAZUCHI(サブスク管理)の取扱高は 545 億円(開示)。
産業機械(オーエム製作所)
立旋盤・車輪旋盤などの工作機械、自動包装機、鋳物を作って売る。利益率は高いが小さく、全社の 3% ほど。
| 数量納入額の実質(百億円・今の値段) | 価格値段の指数(今を 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.4 | 1.00 | 144 | 11 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 1.34 | 203 | 14 |
取り方:台数や受注の件数は非開示のため、売上 144 億円(開示)を今の値段で測った実質の納入額として数量に置き、値段の指数と分けた。営業利益 11 億円も開示。
リスクと懸念
特需の反動で、利益が山から落ちる
Windows 10 の更新と学校端末の入れ替えが、2026 年 3 月期の利益を押し上げた。会社は 2027 年 3 月期の営業利益を 365 億円と見ており、第 1 四半期はすでに前年から 22% 減った。反動が想定より深ければ、予想を下回る。
PC の値段をメーカーに握られている
卸の取り分は粗利で 7% 前後と薄く、仕入れ値はメーカーが決める。メモリの値上がりで PC は 2〜3 割値上がりするが、買い替えが先送りされれば台数が減る。値上げが粗利を守るとは限らない。
メーカー・クラウド事業者の直販が広がる
メーカーが大口顧客への直販を増やし、クラウド事業者が卸を通さず売る流れがある。DIS が強い中小企業や自治体でも、デジタル化で直接取引が増えれば、卸の役割が細る。
シェアの上振れが戻る
2026 年 3 月期の国内シェア 36.5% は、特需で価格に敏感な客を取り込んだ結果だ。会社は 30% 台前半へ戻ると見る。シェアが 28% 前後まで下がれば、台数の減りが利益に直結する。
人口が減る国で、PC の台数が細る
国内の PC 需要は人口とともに減る。更新の波は 5〜6 年ごとに来るが、波の高さは低くなりやすい。PC 以外でその穴を埋められなければ、10 年後の利益は物価の分すら伸びない。
IT の会社としての管理の弱さ
子会社のオーエム製作所が 2025 年 2 月にランサムウェア被害を受けた。IT の流通を担う会社が、自社の管理で信頼を落とせば、取引先の見る目は厳しくなる。
資本配分が攻めに転じて失敗する
次の中期計画で「攻めの資本配分」を掲げる。BCC への出資のような小さな提携は問題ないが、薄利の卸が高い値段で他社を買えば、資本効率は一気に落ちる。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の営業利益が、会社予想の 365 億円を上回って着地したら
- 特需の反動が浅く、シェアも保てているとみて、強気の筋書きの確率を上げてよい。ただし、10 年の価値は台数の人口減を織り込んでおり、すぐに割安とは言えない。
- 国内の PC 出荷が、予測の 1,100 万台あまりを下回って推移したら
- 台数の平準化が想定より低い水準になる。慎重な筋書きの確率を上げ、中立の営業利益 500 億円を下げて見る。
- 継続課金(iKAZUCHI)の取扱高が、年 3 割の伸びを数年続けたら
- 利益の質が上がる。PC 以外の営業利益率が 3.5% に近づけば、楽観側の筋書きの確率を上げる。
- メーカーの直販が、中小企業や自治体向けにも広がったら
- 卸の取り分と台数が同時に削られる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 次の中期計画で、数百億円規模の買収を発表したら
- 資本配分の質が試される。薄利の卸が高く買えば価値を壊すので、買収の中身と値段を見て判断する。
- メモリ価格が急落し、PC の値段が下がったら
- 買い替えが戻り、台数は増えるが、単価と粗利は下がる。台数と粗利率のどちらが勝つかを見る。
見ておくもの
- ITインフラ流通の営業利益と粗利率(7.4% の改善が実現するか)
- 国内の PC 出荷台数(MM 総研・JEITA)と DIS のシェア
- iKAZUCHI の取扱高と、PC 以外の売上比率
- メモリ価格と PC の店頭価格
- 2027 年 5 月に出る次の中期経営計画の資本配分
- BCC など出資先の事業との関係
倍率と資本コストの決め方
10 年後の PC 台数(市場 × シェア)と値段、PC 以外の取扱額、産業機械を別々に積み、営業利益の合計から純利益を出した。倍率は k 7.8% と事業 ROE から正当化 PER を求め、上限の 6〜9 割で置いた。今の株価・PER・過去の倍率は倍率の根拠にしていない。今は特需の山の利益なので、今の利益の延長でなく、平準化した台数から組み立てた。新リース会計基準で BS の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→18.58 倍・やや楽観 PER 11.5→18.21 倍・中立 PER 11.5→17.96 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.3% を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.80% → 7.80%。