結論
リンナイは、ガス給湯器と家庭用コンロを世界に売る名古屋の機器メーカーだ。筆者の結論は「割安」。実質無借金で利益を積み上げているのに、市場はその価値を低めに見ている。
売上は4,700億円、営業利益率は10%を超える。国内の給湯器は約4割のシェアを持ち、国内の営業利益率は13%に達した。海外は売上の半分強を占め、米国・豪州・中国・インドネシアが柱になる。
利益の伸びは派手ではない。10年で純利益は4割ほど増える程度と見る。国内の住宅は細り、中国は競争が厳しい。それでも取り替え需要が国内を支え、米国の電化と新興国が上乗せになる。
手元の純現金は約1,200億円で、時価総額の4分の1にあたる。この現金を別に数えても、中立の筋書きは10年後に今の時価総額を上回る。
弱点は、米国の利益率が2.6%と低いことと、銅など原材料の高騰だ。国内の利益率が過去最高で、山に近い点も見逃せない。ここが崩れる筋書きの確率は、厚めに置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、リンナイは「持ち続けたい会社だが、期待の置き方に注意がいる」と映る。
事業は単純だ。壊れたら替える機器を、工事店と修理網で売る。10年後もガス機器は残るが、電化で形は変わる。ハイブリッドやヒートポンプで先に動けるかが、堀(他社がまねできない強み)の寿命を決める。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は大きい。設備投資は減価償却の1.3倍ほどで、利益の大半を還元に回せる。借金は事実上ない。
資本の配分は、配当と自社株買いが中心だ。買収で価値を壊した形跡は見当たらない。ただし手元現金が時価総額の4分の1あり、ROEを押し下げている。使い道が見えなければ、株主は還元を求めてよい。
安全域は、純現金と利益の両方にある。純現金を除くと、事業そのものは利益の10倍台前半で買われている。ROEが資本コストを上回る会社としては低い。ただし、米国が薄利のまま、国内の利益率が10%台前半へ戻る筋書きもあり、その確率は軽くない。
何で稼ぐ会社か
リンナイは1920年の創業で、ガスを使う機器をつくる。主力は給湯器、ガスコンロ、暖房機器、ガス衣類乾燥機だ。住宅に最初から付く機器が多く、10〜15年で壊れて取り替える需要が積み上がる。
国内は売上2,072億円、営業利益271億円。販売は住宅会社、ガス会社、設備工事店を通す。工事店との関係と修理の体制が、新規参入を阻んでいる。近年は、ガスとヒートポンプを組み合わせたハイブリッド給湯器と、ガス衣類乾燥機が伸びた。
海外は売上の半分強だ。米国は721億円で、主力はコンデンシング給湯器(排熱まで使う高効率の給湯器)。利益率は2.6%と低く、関税で約27億円の負担が出た。中国は607億円で利益率が14〜15%と高いが、売上は減っている。豪州は440億円。ヒートポンプ給湯器の販売が前期の2.5倍に伸び、買収の効果も出た。韓国は薄利だ。
インドネシアは売上176億円で、利益率が2割を超える。テーブルコンロで7〜8割のシェアを持つ。
稼ぎの中心は国内と中国で、米国は伸びしろの側にある。国内は取り替え、海外は電化と新興国の成長が、成長の源だ。
優良さと弱いところ
筆者の見るリンナイは「地味だが、資本の使い方がまっとうな会社」だ。
強みは、取り替え需要と販売・修理の網にある。国内のガス給湯器は、ノーリツと2社で大半を握る。リンナイ1社で約4割のシェアだ。給湯器は壊れると数日で替えたい商品で、工事店と修理網を持つ側が選ばれやすい。値上げも通っている。
財務は硬い。自己資本比率は67%、純有利子負債はマイナスで、営業利益は支払利息の300倍を超える。公開データの範囲に赤字の期はない。営業利益率は10年間、9〜12%の狭い幅で動いた。
弱みは、利益率の上限が低いことだ。過去最良でも11.8%にとどまる。ROE(株主のお金に対する稼ぎ)は7〜8%台で、資本コストをやや上回る程度だ。現金を積みすぎている面もある。
海外は差が大きい。中国とインドネシアは稼ぎ、米国と韓国は薄利だ。米国は5年前に6%近かった利益率が、2〜3%に下がった。ここが経営の宿題になる。
品質面の傷もある。浴室暖房乾燥機の無償点検では、2025年3月期に約25億円の費用を出した。受付は約22万件にのぼる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内は、新築が細り、取り替えが支える市場だ。
新設住宅着工は、人口減で長く減る見通しだ。一方、給湯器は10〜15年で寿命が来る。住宅ストックが積み上がるほど、取り替えの台数は安定する。数量は10年で0.9〜1.0倍とみるのが妥当だ。
競争は寡占に近い。ガス給湯器はリンナイとノーリツで約8割を握る。値上げは2026年も続き、リンナイは9月に平均6.8%を上げた。原材料と人件費の上昇を転嫁する構図だ。
変化の芽は電化にある。国は家庭の給湯の省エネを進め、ヒートポンプ給湯器(空気の熱で湯をつくる機器)に補助金を出している。電気式のエコキュートは、家電・空調メーカーが強い。ガスだけで売る会社には逆風だ。リンナイはハイブリッド給湯器で対応し、実績も出ている。
海外では、電化の流れがさらに速い。米国では2029年に給湯器の効率規制が強まる見通しで、年500万台規模の電気貯湯式がヒートポンプへ移るとリンナイは見る。豪州では電化でヒートポンプが2.5倍に伸びた。中国は住宅不況で売上が落ち、地場の大手との値下げ競争が続く。
循環のどこにいるか。国内は過去最高の利益率で、山に近い。米国は関税で谷にある。海外の電化は、上り坂の入口だ。
資本政策と M&A
資本政策は「配当は厚く、現金は積みすぎ」だ。
配当性向は約4割で、新しい中計の5年間もこの水準を保つ。5年間の還元は合計で1,400億円超とする方針だ。自社株買いは「機動的に」行う。前の中計では毎年買っていて、総還元性向は5年平均で約7割だった。
手元の流動性資金は約2,200億円。会社は必要な水準を1,300億円と見ており、残りは投資か還元に回る。銀行借入を使って、投資と還元を両立させる姿勢も示した。筆者は、この現金の使い道が今後の評価を決めると見る。
M&Aは小粒が中心だ。2025年10月にペルーのMTインダストリアルを買収し、中南米の足場にした。豪州でも買収が利益に効いた。新しい分野として、水素燃焼機器やサブスクリプション型の収益も探る。
政策保有株(持ち合い株)は、縮減を加速する方針だ。売却代金は、還元に回りうる。
買収される側になる確率は、kabufuの推定で10年で15%台にとどまる。実質無借金で、割安でも手を出しにくい。
点検済み(2026-10-19):起点 362 億円が過去最高でも計画が横ばいであること、中立の営業利益 701 億円が会社の 2030 年度目標並みであること、還元 約 70%(実績どおり)、余った現金 800 億円の二重が無いことを確かめた。
還元の点検(P3 2026-10-19):5年で1,400億円超の方針(前期は総還元性向5年平均約7割)。中立約70%は実績どおり。直さず。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方はこうなる。リンナイは取り替え需要という堅い土台の上に、電化という成長の波が乗る。
国内は価格を決める力が戻った。給湯器は9月に平均6.8%の値上げを実施し、ハイブリッド給湯器とガス衣類乾燥機は前の期に2桁で伸びた。営業利益率はすでに13%だ。補助金が続けば、高い機器への買い替えは進む。
米国は利益の伸びしろが大きい。売上721億円に対して営業利益は19億円、利益率は2.6%しかない。関税の約27億円が消えるだけで、米国の利益は2倍以上になる。さらに2029年の効率規制で、年500万台規模の電気貯湯式がヒートポンプへ移る。リンナイは戦略商品を投入する。
豪州はヒートポンプが2.5倍に伸び、買収も効いた。インドネシアは利益率が2割を超え、中南米はペルーの買収で足場ができた。
財務の余力も大きい。純現金は約1,200億円で、配当性向は4割、自社株買いも続く。
10年後に、国内が数量横ばい・利益率14%、米国が売上2倍・利益率8%になれば、純利益は今の1.9倍になる。時価総額は今の2.7倍が見える。
慎重な見方
慎重な見方は、利益の質と天井から入る。
国内の営業利益率13%は過去最高で、山に近い。住宅の新築は細り、値上げで売上を保つ局面が続いている。値上げが数量を削り始めれば、利益率は10%台前半に戻りうる。
米国は成長しても稼げていない。売上は5年で2倍近くに増えたのに、営業利益は5年前と同じ20億円前後に戻っただけだ。途中には赤字の年もあった。関税は27億円の負担になった。ヒートポンプは電気式の機器で、ガスで築いた強みがそのまま使えるとは限らない。
中国は売上が1割減り、住宅不況と地場メーカーの値下げが続く。豪州は電化で、ガス機器そのものが縮む。
原材料も重い。2026年度は銅などで約90億円の負担増を見込み、営業利益は横ばいの505億円と会社は見る。中東情勢は予想に入っていない。
中計の売上6,200億円・営業利益700億円は、米国の電化が当たることが前提だ。外れれば、現金が積み上がるだけの低ROEの会社に戻る。ROEは8%台で、資本コストに近い。
どちらに重みを置いたか
強気の言う米国と電化の上振れは、まだ数字に出ていない。慎重な見方の言う国内の利益率の天井と関税は、すでに数字に出ている。そこで確率は中立に厚く置き、強気の2筋書きの合計を3割弱、慎重の2筋書きを3割強とした。事業の足場と財務が堅いので、悲観は1割にとどめた。結局、中立でも今の時価総額を上回る。差を生むのは、事業の外にある現金を安全域として数えられる点だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,277 円8,668 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,196 円3,033 億円)。 今の値に割り戻すと 4,947 円6,831 億円、今との差 +42.4%、 期待の年率 +9.3%(資本コスト 6.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 10,377 円1.43 兆円 | 2,752 円3,800 億円 | +277.9% | +14.2% | 919 円1,269 億円 |
| やや楽観 | 20% | 8,743 円1.21 兆円 | 2,462 円3,400 億円 | +222.5% | +12.4% | 2,241 円3,094 億円 |
| 中立 | 40% | 7,180 円9,915 億円 | 2,209 円3,050 億円 | +170.3% | +10.5% | 3,756 円5,186 億円 |
| やや悲観 | 23% | 3,306 円4,565 億円 | 2,100 円2,900 億円 | +55.6% | +4.5% | 1,243 円1,717 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,696 円2,342 億円 | 1,448 円2,000 億円 | −9.5% | −1.0% | 314 円434 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,277 円8,668 億円 | 2,196 円3,033 億円 | +143.9% | +9.3% | 8,473 円1.17 兆円 |
今の株価時価総額 3,474 円4,797 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 米国が第2の柱になり、利益率が上がる 利益 688 億円 · PER 20.0 倍 · 株価時価総額 10,377 円1.43 兆円
電化の波に乗り、米国が第2の柱になる。米国では2029年の効率規制をきっかけに、電気貯湯式からヒートポンプへの切り替えが一気に進む。リンナイは戦略商品を早く投入し、売上は今の2倍を超える。関税を価格に転嫁でき、利益率は8%まで上がる。
国内は住宅が細っても、補助金に支えられたハイブリッド給湯器の買い替えが続く。値上げも通り、営業利益率は14%に乗る。豪州と中南米・東南アジアも伸び、海外の売上は国内の2倍近くになる。
売上は8,500億円台、純利益は690億円で、今の1.9倍だ。ROEは11〜12%に上がる。配当と自社株買いも増やせる。
この筋書きに必要なのは、ヒートポンプで先行企業と戦えること、関税が長引かないことの2つだ。
- 日本:数量 550(機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 5.27(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 2,901 億円・営業利益 406 億円
- 米国:数量 110(給湯器などの出荷台数相当(万台。推定))× 価格 20(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 2,221 億円・営業利益 178 億円
- 中国:数量 190(機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 3.79(1台あたり売上(万円。名目・円換算))→ 売上 721 億円・営業利益 101 億円
- 豪州:数量 48.0(給湯器などの出荷台数相当(万台。推定))× 価格 21(1台あたり売上(万円。名目・円換算))→ 売上 986 億円・営業利益 79 億円
- 韓国・インドネシア・その他と調整:数量 432(機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 3.96(1台あたり売上(万円。名目・円換算))→ 売上 1,711 億円・営業利益 205 億円
倍率:事業の純利益 677 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.5% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)800 億円。全体の PER 19.99 倍、時価総額 14,329 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:米国の電化が当たり、関税も長引かない。そのうえ国内の利益率が14%まで上がる必要がある。条件が多く、1割未満に抑えた。
やや楽観 20% 海外の伸びが国内の細りを上回る 利益 598 億円 · PER 19.2 倍 · 株価時価総額 8,743 円1.21 兆円
海外の伸びが、国内の細りを上回る。米国はヒートポンプの立ち上げが遅れながらも、売上は1.8倍になる。利益率は6〜7%まで戻る。
豪州・中南米・東南アジアは、数量が4割台で伸びる。国内は数量が2%減る程度にとどまり、利益率は13.5%を保つ。中国は縮むが、利益率は13%台を守る。
売上は7,700億円、純利益は600億円だ。ROEは10%台に届き、会社の目標に近い。ただし、米国の利益率は会社が狙う水準には届かない。
強気の筋書きとの差は、米国の電化が来るのが遅いか、早いかにある。国内は取り替えが底堅く、値上げもおおむね通る。
関税は残るが、価格への転嫁が少しずつ進み、米国の利益率の悪化に歯止めがかかる。配当と自社株買いは、10年で3,400億円ほどになる。
- 日本:数量 539(機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 5.16(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 2,782 億円・営業利益 376 億円
- 米国:数量 90.0(給湯器などの出荷台数相当(万台。推定))× 価格 20(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 1,778 億円・営業利益 116 億円
- 中国:数量 180(機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 3.64(1台あたり売上(万円。名目・円換算))→ 売上 656 億円・営業利益 89 億円
- 豪州:数量 43.5(給湯器などの出荷台数相当(万台。推定))× 価格 20(1台あたり売上(万円。名目・円換算))→ 売上 874 億円・営業利益 66 億円
- 韓国・インドネシア・その他と調整:数量 403(機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 3.93(1台あたり売上(万円。名目・円換算))→ 売上 1,585 億円・営業利益 187 億円
倍率:事業の純利益 587 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)800 億円。全体の PER 19.21 倍、時価総額 12,072 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:豪州・インドネシアの実績があり、米国の電化は会社も戦略の柱に置く。強気ほど条件はそろわなくても、2割は見込める。
中立 40% 国内は横ばい、海外がゆっくり伸びる 利益 509 億円 · PER 18.3 倍 · 株価時価総額 7,180 円9,915 億円
国内は横ばい、海外はゆっくり伸びる。国内の数量は10年で5%減る。値上げで売上は伸び、営業利益率は12.5%を保つ。今の13%より少し低い。
米国は数量が1.5倍になる。ヒートポンプへの移行が追い風だが、先行企業との競争で利益率は5%どまりだ。豪州は1.3倍。中国は縮み、数量は15%減る。値段も競争で物価並みには上がらず、10年で1.15倍にとどまる。
売上は6,900億円、営業利益は700億円で、会社が2030年度に掲げる目標に、6年遅れで着く形だ。純利益は510億円で、今の4割増にとどまる。ROEは9%で、資本コストをやや上回る。
数字は地味だが、堅い。
- 日本:数量 523(機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 5.05(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 2,638 億円・営業利益 330 億円
- 米国:数量 75.0(給湯器などの出荷台数相当(万台。推定))× 価格 19(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 1,449 億円・営業利益 72 億円
- 中国:数量 170(機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 3.49(1台あたり売上(万円。名目・円換算))→ 売上 593 億円・営業利益 77 億円。競争で物価並みには値上げできない
- 豪州:数量 39.0(給湯器などの出荷台数相当(万台。推定))× 価格 20(1台あたり売上(万円。名目・円換算))→ 売上 766 億円・営業利益 54 億円
- 韓国・インドネシア・その他と調整:数量 374(機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 3.90(1台あたり売上(万円。名目・円換算))→ 売上 1,460 億円・営業利益 168 億円
倍率:事業の純利益 498 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)800 億円。全体の PER 18.31 倍、時価総額 9,915 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の取り替えと海外の電化が、おだやかに利益を押し上げる姿。会社の計画より遅い進み方で、いちばん確率が高い。
やや悲観 23% 国内の利益率が戻り、成長が止まる 利益 379 億円 · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 3,306 円4,565 億円
国内の利益率が元に戻り、米国と中国が足を引っ張る。国内は数量が12%減り、値上げの余地も小さい。営業利益率は11.5%に下がる。
米国は関税とヒートポンプの競争で、利益率が3.5%どまりだ。中国は住宅不況と値下げで数量が3割減り、利益率も11%に落ちる。豪州は電化でガス機器が減り、売上が伸びない。
売上は5,600億円、営業利益は510億円、純利益は380億円で、今とほぼ同じだ。10年かけて利益が増えない。現金は積み上がり、ROEは7%台に落ちる。
会社は悪くない。ただ、成長の物語が切れた会社として扱われる。
- 日本:数量 484(機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 4.90(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 2,370 億円・営業利益 273 億円
- 米国:数量 55.0(給湯器などの出荷台数相当(万台。推定))× 価格 18(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 1,015 億円・営業利益 36 億円
- 中国:数量 140(機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 3.19(1台あたり売上(万円。名目・円換算))→ 売上 446 億円・営業利益 49 億円
- 豪州:数量 30.0(給湯器などの出荷台数相当(万台。推定))× 価格 19(1台あたり売上(万円。名目・円換算))→ 売上 563 億円・営業利益 28 億円
- 韓国・インドネシア・その他と調整:数量 331(機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 3.66(1台あたり売上(万円。名目・円換算))→ 売上 1,212 億円・営業利益 121 億円
倍率:資本コスト6.5%・堀は普通で残る割合1/2。ROE8.1%を薄めたRONIC7.5%、g3.5%で正当化PER15.3倍。上限の約7割の10.7倍に置く。電化の遅れと原材料高で利益率が落ちる筋書き。余った現金は今の75%の600億円で、戻り方0.5。
確率:国内の利益率は過去最高で山に近く、米国は関税と競争で稼げていない。利益が10年増えない姿は、実績に照らして十分ありうるので、厚めに置いた。
悲観 10% 電化に取り残され、普通の会社に落ちる 利益 210 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,696 円2,342 億円
構造的に負ける。国内で電化が進み、ガス給湯器の数量が3割近く減る。ハイブリッドでも埋まらない。値上げも通らず、営業利益率は9%に下がる。
米国では関税が続き、ヒートポンプで勝てず、営業利益は1%にとどまる。中国は数量が半分以下に落ち、豪州もガス機器の縮小が進む。海外の売上は、今より減る。
売上は4,000億円、営業利益は260億円、純利益は210億円。配当を保つために現金を取り崩し、ROEは4%台に落ちる。工場の減損も出る。
純現金は残る。現金は半分ほどが株主に戻らないと見ても、一部は下支えになる。優良だった会社が、普通の会社に落ちる姿だ。
- 日本:数量 396(機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 4.52(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 1,790 億円・営業利益 161 億円
- 米国:数量 40.0(給湯器などの出荷台数相当(万台。推定))× 価格 17(1台あたり売上(万円。名目・150円換算))→ 売上 663 億円・営業利益 7 億円
- 中国:数量 90.0(機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 2.88(1台あたり売上(万円。名目・円換算))→ 売上 259 億円・営業利益 16 億円
- 豪州:数量 24.0(給湯器などの出荷台数相当(万台。推定))× 価格 17(1台あたり売上(万円。名目・円換算))→ 売上 405 億円・営業利益 12 億円
- 韓国・インドネシア・その他と調整:数量 259(機器の出荷台数相当(万台。推定))× 価格 3.30(1台あたり売上(万円。名目・円換算))→ 売上 855 億円・営業利益 60 億円
倍率:資本コスト6.5%。事業のROE4.8%がk以下なので上限は1÷k=14.3倍。構造的に負けた筋書きで、価格競争と電化の遅れが続き利益の質も落ちるので、やや悲観(10.7倍)より低い、上限の約6.6割の9.5倍に置く。配当を保つために取り崩した余った現金(今の半分の400億円)を戻り方0.5で足す。
確率:10年では、ガス機器の電化が想定より速く進み、米国と中国で負ける構造的な筋書きがありうる。事業と財務の厚みを踏まえ、1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本
国内の給湯器・コンロ・暖房機器・ガス衣類乾燥機。利益率は国内でいちばん高い。
| 数量機器の出荷台数相当(万台。推定) | 価格1台あたり売上(万円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 550 | 3.77 | 2,072 | 271 |
| 10 年後 中立 | 523 | 5.05 | 2,638 | 330 |
取り方:日本セグメントの売上は 2,072 億円、営業利益は 271 億円(13.1%)。出荷台数は開示がないので、給湯器・コンロ・暖房機器・乾燥機などを合わせた台数を、1 台平均約 3.8 万円で割り戻した推定として 550 万台とした。給湯器だけで国内シェアは約 4 割。
米国
コンデンシング給湯器が主力。関税の負担が重く、利益率は低い。
| 数量給湯器などの出荷台数相当(万台。推定) | 価格1台あたり売上(万円。名目・150円換算) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 50.0 | 14 | 721 | 19 |
| 10 年後 中立 | 75.0 | 19 | 1,449 | 72 |
取り方:米国の売上は 721 億円、営業利益は 18.6 億円(2.6%、前期比 −12.8%)。関税の負担は約 27 億円。台数は開示がなく、1 台平均約 14 万円(約 960 ドル)と置いて 50 万台と推定した。ドル円は 150 円で動かない前提。 数量は実物(出荷台数)で、名目の市場の伸びではない。伸びの理由はヒートポンプ給湯への移行。
中国
上海林内。ガスコンロ・給湯器など。利益率は高いが、売上は減っている。
| 数量機器の出荷台数相当(万台。推定) | 価格1台あたり売上(万円。名目・円換算) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 200 | 3.04 | 607 | 94 |
| 10 年後 中立 | 170 | 3.49 | 593 | 77 |
取り方:中国の売上は 607 億円(前期比 −11.5%)、営業利益は 94 億円(15.5%)。台数は開示がなく、1 台平均約 3 万円で 200 万台と推定した。住宅不況と地場メーカーとの値下げ競争が続く。
豪州
ガス・ヒートポンプの給湯器。電化で需要の形が変わり、買収も効いた。
| 数量給湯器などの出荷台数相当(万台。推定) | 価格1台あたり売上(万円。名目・円換算) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 15 | 440 | 21 |
| 10 年後 中立 | 39.0 | 20 | 766 | 54 |
取り方:豪州の売上は 440 億円(前期比 +20.3%)、営業利益は 21 億円(4.8%、前期比 +88.6%)。台数は開示がなく、1 台平均約 14.7 万円で 30 万台と推定した。ヒートポンプ給湯器の販売は前期の約 2.5 倍。
韓国・インドネシア・その他と調整
韓国の暖房ボイラー、インドネシアのテーブルコンロ、中南米・欧州などと、セグメント間の調整。
| 数量機器の出荷台数相当(万台。推定) | 価格1台あたり売上(万円。名目・円換算) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 288 | 3.00 | 864 | 100 |
| 10 年後 中立 | 374 | 3.90 | 1,460 | 168 |
取り方:韓国 343 億円(利益 11 億円)、インドネシア 176 億円(利益 38 億円、利益率 21% 超)に、その他の地域と調整額(売上 345 億円、営業利益 51 億円。内訳は確認できず)を足した。合計は売上 864 億円、営業利益 100 億円。台数は開示がなく、平均約 3 万円で 288 万台と推定した。本社費などの調整額はここに含まれるため、全社の adjust は 0 とする。
リスクと懸念
米国の関税と低い利益率
米国は売上721億円に対して営業利益が19億円しかなく、関税の負担は2026年3月期だけで約27億円に上った。日本から輸出するコンデンシング給湯器が主力で、関税が長引くか、価格に転嫁できなければ、米国は稼げないまま残る。中計の成長の中心が米国の電化なので、ここが崩れると全体の筋書きが変わる。
国内の利益率が山に近い
国内の営業利益率は13%で、過去の水準より高い。値上げで売上を保つ局面が続くが、上げ続ければ数量を削る。新設住宅の減少も続く。利益率が10%台前半に戻れば、全社の営業利益は100億円近く減る。給湯器は壊れてから替える商品なので値上げが通りやすいが、補助金の終了で買い替えが遅れる可能性もある。
電化でガス機器が縮む
国は家庭の給湯の省エネを進め、ヒートポンプ給湯器を支援している。電気式の給湯器は家電・空調メーカーが強く、ガスで築いた販路や修理網が、そのまま生きるとは限らない。豪州ではすでにガス機器から電化へ移っている。ハイブリッド給湯器で対応しているが、先行できるかが10年の分かれ目だ。
原材料の高騰
2026年度は銅などの値上がりで約90億円の負担増を見込み、会社は原価低減で吸収する計画だ。中東情勢による溶剤などの調達の不安は、予想に織り込んでいない。転嫁が遅れる期は、利益率がすぐ下がる。会社の営業利益予想が横ばいなのは、この負担が重いからだ。
中国の減速
中国は売上が前の期より1割減った。住宅不況と、地場メーカーとの値下げ競争が続いている。利益率は14〜15%と高く、全社の利益の2割近くを稼ぐ。ここが崩れると、米国の改善では埋めきれない。為替が円高に動けば、円換算の利益はさらに目減りする。
品質問題と費用
浴室暖房乾燥機の無償点検では、受付が約22万件にのぼり、対象台数ベースの完了率は約6割にとどまる。2025年3月期には約25億円の費用を計上した。完了が遅れるほど、費用と評判への影響が長引く。安全に関わる製品なので、新たな不具合が出れば追加の費用もありうる。
現金の使い道
流動性資金は約2,200億円あり、会社が必要とする1,300億円を大きく上回る。使い道が買収に傾き、価値の低い案件を高く買えば、現金の価値が目減りする。還元に回せば株主には追い風だが、会社は借入も使うと説明しており、方針の読みにくさが残る。
今後の分かれ目
- 米国で関税が下がるか、価格転嫁が定着した場合
- 米国の利益率が5%を超え、10年の利益は強気の筋書きに近づく。関税の約27億円が消えるだけで、米国の営業利益は2倍以上になる。
- 2029年の米国の効率規制で、ヒートポンプへの移行が一気に進んだ場合
- 米国の数量が2倍に近づき、中計の売上6,200億円が現実味を帯びる。反対に、先行企業にシェアを取られれば、規制は追い風にならない。
- 国内で値上げが数量を削り始めた場合
- 国内の利益率が13%から10%台前半へ戻り、全社の利益は2割近く減る。中立の筋書きの前提が崩れる。
- 自社株買いが大きく実施された場合
- 手元の現金が減り、ROEが9%台に上がる。事業の評価は変わらないが、現金を安全域に数える割合が下がる。
- 電化でガス給湯器の数量が国内で急に減った場合
- ハイブリッドやヒートポンプで穴を埋められるかが問われる。埋められなければ、10年の悲観の筋書きに近づく。
- 中国で住宅不況が長引いた場合
- 売上の減少が続き、利益の2割近くを占める中国の稼ぎが細る。国内と米国で補う必要がある。
見ておくもの
- 米国の関税の動きと、米国セグメントの営業利益率(2026年3月期は2.6%)
- 国内の営業利益率が13%を保てるか(値上げで数量が減っていないか)
- ヒートポンプ給湯器の販売台数(豪州・米国・国内のハイブリッド)
- 銅などの原材料価格と、会社予想への織り込み方
- 自社株買いの実施と、手元の流動性資金の水準
- 中国セグメントの売上と、浴室暖房乾燥機の点検の完了率
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から逆算せず、地域ごとの数量と価格、利益率を積み上げて純利益を出し、その利益に倍率を掛けた。ROE が資本コストを上回る筋書きの PER は、正当化 PER の上限の 7〜8 割の範囲に置いた。純現金(1,217 億円)は事業に要らない分 800 億円を分けて足し、現金を捨てず、PER にも混ぜていない。悲観は稼ぐ力(純利益÷k)と余った現金から測った。海外の台数は開示がなく推定で、国内の給湯器シェア 41% を業界ノートから借りている。会計は日本基準で、新リース会計基準(2028 年 3 月期から)で営業利益と負債の形が少し変わるが、リースは小さく、10 年の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→19.99 倍・やや楽観 PER 14→19.21 倍・中立 PER 12.9→18.31 倍)。
資本コスト 6.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本7.5%に quality -0.5% を足した 7.0%(β・規模は使わない)。国内は取り替え需要で景気に左右されにくいが海外は住宅市況を受けるので循環0、国内2社寡占と給湯器のブランドで値決め力−0.5、無借金で借金0、電化でガス機器の形が変わるリスクが寿命の下げを打ち消して0。合計−0.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.00% → 6.50%。