結論
アースインフィニティは、大阪の新電力だ。自前の発電所は持たず、卸電力の市場で電気を買い、小さな工場や店、飲食店、家庭に売る。筆者の結論は「割高」である。伸びは速いが、利益の源泉がまねされやすく、市場の電気の値段が跳ねれば一気に赤字になる。
2026 年 7 月期は売上 77 億円、営業利益 8.2 億円だった。営業利益率は 10%を超え、新電力としては高い。代理店を使って契約を増やし、市場の仕入れ値を料金に映す独自の仕組みで、値段の振れを客に回している。会社は来期の売上を 37%増と見込む。
ただ、この高い利益率が 10 年続くとは考えにくい。同じ仕組みは他の新電力もまねでき、大手電力も小さな客を取り返しに来る。2022 年 7 月期には市場の高騰で営業赤字に落ちた。売掛金の回収の遅れも増えている。
時価総額 82 億円は、今の純利益の 14 倍だ。筆者は、伸びが続く間の値打ちは認めるが、利益率の縮みと市場の急騰の危うさを考えると、今の値段に安全域はないと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「わかりやすいが、長く持ちたい事業ではない」。電気を市場で仕入れて、代理店を通じて小さな客に売る。仕組みは単純で、資本はほとんど要らない。今は高い利益率で稼いでいる。
だが、10 年後に今より強くなっている姿は描けない。電気は値段で選ばれる商品だ。今の利幅は、他社がまだ取りに来ていない隙間で稼いでいるにすぎない。隙間はいずれ埋まる。
もう一つの危うさは、市場の急騰だ。料金に仕入れ値を映す仕組みがあっても、高騰が長引けば客は離れ、払えない客も増える。2022 年 7 月期の赤字は、その小さな予告だった。
筆者は、伸びが続く数年は利益が増えると見る。それでも、10 年の利益の平均と、急騰の年の損を合わせて考えると、今の値段は高い。安全域のない値段で、堀のない事業を買う理由は乏しい。
何で稼ぐ会社か
事業はほぼ電気の小売だけだ。売上の 98.5%がエネルギー事業で、残りは電子ブレーカーの販売である。
電気の売り先は、低圧の小規模な工場、商店、飲食店、一般家庭と、高圧の中小規模の工場やビルだ。都市ガスも売る。契約は 2024 年 9 月に 5 万件を超え、売上の伸びから見て今は 6 万件前後とみられる。1 件あたりの売上は年 13 万円ほどになる。
仕入れは日本卸電力取引所(JEPX)の市場からだ。発電所を持たない分、設備の投資はほとんど要らない。その代わり、市場の値段が跳ねると仕入れ値がそのまま上がる。会社は独自の燃料費等調整額で、市場の仕入れ値を料金に映す仕組みを入れた。値段の振れを客に回し、自社の損を抑える狙いだ。
売り方は代理店が中心だ。自社の営業の人手を増やさずに契約を広げられるが、代理店に払う手数料がかかり、客の質も代理店に左右される。電子ブレーカーは、店や工場の契約の電気の容量を下げて基本料金を減らす機器で、電気の契約を取る入り口にもなる。本社は大阪で、社員は少なく、固定費の軽さが利益率の高さを支えている。
優良さと弱いところ
強みは、小さな客に絞った販売の仕組みだ。大手電力が手間をかけにくい小さな店や工場に、代理店を通じて安い料金を示し、契約を積み上げてきた。営業利益率は 10%を超え、自己資本利益率は 40%台と高い。設備をほとんど持たないので、少ない資本で稼げる。
しかし堀、つまり他社がまねできない強みはない。電気は誰から買っても同じで、客は値段で選ぶ。市場の仕入れ値を料金に映す仕組みも、他の新電力がすでに使っている。大手電力や都市ガス会社、通信会社も小さな客を取りに来る。
利益の質も危うい。2022 年 7 月期は市場の高騰で 4 億円の営業赤字だった。売掛金はこの 1 年で 5 億円増え、回収の遅れた長期滞留債権も 1.6 億円に膨らんだ。小さな客に売る商売は、景気が悪くなると払えない客が増える。筆者は、今の高い利益率は伸びの途中の一時的なものと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電力の小売は 2016 年に全面自由化された。新電力の販売量のシェアは 2 割強、家庭や小さな店の低圧では 26%ほどだ。2022 年度に燃料と市場の電気が高騰し、多くの新電力が撤退や倒産に追い込まれた。大手の旧一般電気事業者は今も 8 割前後を握る。
生き残った新電力は、市場の仕入れ値を料金に映す形に変わった。客に値段の振れを負わせるので、新電力の損は減る。ただ、客から見れば料金が読めない。市場が落ち着いている間は安いが、高騰すれば大手の規制料金より高くなる。その時、客は大手に戻る。
国内の電力の量は、データセンターと半導体の工場で増える見込みだ。しかしアースインフィニティの客の小さな店や工場は、人口減で数が細る。値段は燃料と市場で決まり、物価並みに上がるとみるのが自然だ。
競争は激しい。大手電力、都市ガス、通信、石油元売りの子会社が、ポイントやセット割で客を囲う。代理店で契約を取る新電力は数多く、手数料の競争で利幅は削られていく。発電所を持つ大手は、市場が高い時ほど有利になる。自前の電源がない新電力は、その時に最も弱い立場に立たされる。
資本政策と M&A
株主への還元は配当が中心だ。配当性向は 5 割前後を保ち、2026 年 7 月期は総額 2.9 億円を払った。2027 年 7 月期も増配を見込む。自社株買いの実績はほとんどない。
財務は軽い。借入と社債は 11 億円、現金は 5 億円で、純負債は 6 億円ほどだ。設備投資は年に数百万円しか要らない。ただ、売上が増えるほど売掛金がふくらみ、運転資金を短期の借入で賄う形になっている。この 1 年で短期借入は 2 億円増えた。
買収の計画はない。上場は 2020 年と新しく、創業者の濵田幸一社長が経営を率いる。小さな新電力どうしの再編や、大手への身売りが起きる可能性はあるが、発表はない。株主優待はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
伸びは本物だ。売上は 2025 年 7 月期に 34%、2026 年 7 月期に 15%伸び、会社は来期にさらに 37%増を見込む。営業利益は 10 億円を超える計画だ。代理店を使えば、自社の人手を増やさずに契約を積み増せる。
利益の仕組みも改善した。市場の仕入れ値を料金に映す独自の調整額を入れ、2022 年のような高騰でも損を客に回せる。設備を持たないので、売上が増えた分はほとんど利益になる。自己資本利益率は 40%台で、配当は利益の半分を払う。
市場は広い。低圧の小さな店や工場は全国に数百万件あり、6 万件はそのごく一部だ。大手電力は小さな客に手間をかけない。電子ブレーカーで基本料金を下げる提案は、客の入り口として効く。契約が 15 万件に届けば、利益は今の 3 倍になる。それでも全国の小さな客の数パーセントにすぎない。
都市ガスとの組み合わせや、再生可能エネルギーの電気の調達でも、客を広げる余地がある。2022 年の高騰を乗り越えたこと自体が、仕組みの強さの証拠だ。多くの新電力が消えた中で生き残り、残った客を取り込める立場にある。
慎重な見方
堀がない。電気はどこから買っても同じで、客は値段で選ぶ。市場の仕入れ値を料金に映す仕組みは他の新電力も使い、大手電力やガス、通信の会社もセット割で小さな客を囲う。今の 10%を超える利益率は、競争が追いつくまでの一時的なものだ。
市場の急騰は必ずまた来る。2022 年 7 月期には 4 億円の営業赤字に落ちた。料金に仕入れ値を映しても、高騰が長引けば客は大手の規制料金に戻る。その時、新電力は客を失い、残った客は払えなくなる。
回収の遅れはすでに出ている。売掛金はこの 1 年で 5 億円増え、長期滞留債権は 9 倍の 1.6 億円になった。営業の現金の出入りは赤字だった。売上を増やすほど運転資金が要り、短期の借入で賄っている。
代理店頼みの販売は、客の質を代理店に委ねる。手数料の競争で利幅は削られ、無理な契約の解約も増える。今の値段は、この伸びが 10 年続く前提に近い。上場から 6 年で、利益が安定して続いた実績はまだ短い。赤字の年を含めて見れば、利益の平均は今よりかなり低い。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方にやや分がある。伸びは本物で、数年は利益が増える見込みが強い。しかし堀がなく、市場の急騰と回収の遅れという、利益を一気に消す危うさを抱える。確率は中立に 4 割弱を置き、やや悲観と悲観に合わせて 4 割弱を置いた。会社の伸びの計画には、やや楽観に 2 割弱で重みを残した。楽観は利幅を保ったまま件数が 2.5 倍になる形で、新電力に例がないため 1 割未満にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 80 円89 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 26 円29 億円)。 今の値に割り戻すと 51 円56 億円、今との差 −29.1%、 期待の年率 +4.0%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 231 円254 億円 | 54 円60 億円 | +296.3% | +14.8% | 20 円22 億円 |
| やや楽観 | 18% | 156 円171 億円 | 40 円44 億円 | +171.7% | +10.5% | 35 円39 億円 |
| 中立 | 37% | 89 円98 億円 | 29 円32 億円 | +63.5% | +5.0% | 44 円48 億円 |
| やや悲観 | 24% | 12 円14 億円 | 15 円16 億円 | −62.6% | −9.4% | 6 円7 億円 |
| 悲観 | 14% | 3 円4 億円 | 7 円8 億円 | −85.4% | −17.5% | 1 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 80 円89 億円 | 26 円29 億円 | +48.2% | +4.0% | 107 円117 億円 |
今の株価時価総額 72 円79 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 契約が 15 万件に伸び、利幅も保つ 利益 18 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 231 円254 億円
代理店の網が全国に広がり、契約は 15 万件に届く。大手電力が手間をかけない小さな店や工場で、確かな地盤を築く。都市ガスや電子ブレーカーとの組み合わせで、客は離れにくくなる。
市場の仕入れ値を料金に映す仕組みが定着し、高騰の年も大きな損を出さない。値段は物価並みに上がる。セグメントの利益率は 13%を保ち、営業利益は 27 億円になる。
配当は性向 5 割で増え続ける。小さな新電力どうしの再編で、客を買い取る側に回ることもある。長期滞留債権も回収の仕組みで減り、利益の質も上がる。自己資本は 70 億円を超え、運転資金の借入も要らなくなる。
- エネルギー(電気・都市ガスの小売):数量 150(契約件数(千件))× 価格 1.34(1 件あたり年間売上の指数(2026/07 = 1.00))→ 売上 255 億円・営業利益 33 億円。数量 150、単価 1.34 倍、利益率 13.0%
- 電子機器(電子ブレーカー):数量 150(出荷量の指数(2026/07 = 100))× 価格 1.34(単価の指数(2026/07 = 1.00))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。数量 150、単価 1.34 倍、利益率 25.0%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.6% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 14.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.37 倍、時価総額 253 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の来期の計画は売上 37%増で、伸びの勢いはある。ただ、利幅を保ったまま件数を 2.5 倍にするのは新電力では例がなく、1 割を切る。
やや楽観 18% 伸びは続くが、競争で利幅が少し縮む 利益 12 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 156 円171 億円
代理店の網は広がり続け、契約は 11.5 万件になる。値段は物価並みよりわずかに弱い。大手電力やガス会社との競争で、セグメントの利益率は 12.5%に縮む。
営業利益は 18 億円になり、今の 2 倍強だ。市場の高騰の年は利益が落ちるが、赤字にはならない。売掛金の回収の仕組みも整い、貸し倒れは抑えられる。
配当は性向 5 割を保つ。運転資金は利益で賄え、借入は増えない。新電力の中では、生き残った側の一社になる。それでも発電所を持たない以上、市場の高い年の利益の落ち込みは避けられない。利益は年ごとに上下しながら伸びる。
- エネルギー(電気・都市ガスの小売):数量 115(契約件数(千件))× 価格 1.32(1 件あたり年間売上の指数(2026/07 = 1.00))→ 売上 193 億円・営業利益 24 億円。数量 115、単価 1.32 倍、利益率 12.5%
- 電子機器(電子ブレーカー):数量 130(出荷量の指数(2026/07 = 100))× 価格 1.32(単価の指数(2026/07 = 1.00))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。数量 130、単価 1.32 倍、利益率 25.0%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.0% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 13.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.14 倍、時価総額 165 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の来期の計画と、この数年の売上の伸びの実績が根拠。競争で利幅は縮むが、件数の伸びがそれを補う形で 2 割弱。
中立 37% 件数は 9 万件で頭打ち、利幅は普通の新電力へ 利益 7 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 89 円98 億円
代理店による契約の積み増しは数年続き、その後は解約と新規が釣り合う。契約は 9 万件で頭打ちになる。値段は燃料と市場で決まり、1 件あたりの売上は 10 年で 1.3 倍だ。
競争で利幅は削られ、セグメントの利益率は今の 17%から 11%に下がる。本社と代理店の費用は物価で増える。営業利益は 10 億円、売上の 7%だ。
市場の高騰の年は利益が大きく落ちるが、料金に映す仕組みで赤字は避ける。配当は性向 5 割を保ち、自己資本はゆっくり厚くなる。目立たない中堅の新電力として残る。大手に客を取り返される年もあれば、他社の撤退で客が増える年もある。
- エネルギー(電気・都市ガスの小売):数量 90.0(契約件数(千件))× 価格 1.30(1 件あたり年間売上の指数(2026/07 = 1.00))→ 売上 149 億円・営業利益 16 億円。数量 90、単価 1.30 倍、利益率 11.0%
- 電子機器(電子ブレーカー):数量 120(出荷量の指数(2026/07 = 100))× 価格 1.30(単価の指数(2026/07 = 1.00))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。数量 120、単価 1.30 倍、利益率 25.0%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.2% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.37 倍、時価総額 91 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:伸びの勢いはあるが、堀がなく利幅は競争で縮むとみるのが自然。会社の計画の数年先で伸びが止まる形が最も起きやすい。
やや悲観 24% 大手の取り返しと回収の遅れで、利益がほぼ消える 利益 0 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 12 円14 億円
大手電力とガス、通信の会社がセット割で小さな客を囲い、代理店の手数料の競争も激しくなる。契約は 6 万件のまま増えない。
料金に仕入れ値を映す仕組みは客に嫌われ、市場の高い年に解約が増える。払えない客も増え、貸し倒れが利益を削る。セグメントの利益率は 7%に落ち、本社の費用を引くと営業利益はほぼゼロだ。
配当は細り、自己資本は伸びない。代理店の網を保つのも難しくなる。売上はあっても、株主に残るものはほとんどない新電力になる。身売りの話が出ても、客の質の悪さが値段を下げる。残るのは回収の遅れた売掛金と、代理店に払い続ける手数料だ。
- エネルギー(電気・都市ガスの小売):数量 60.0(契約件数(千件))× 価格 1.25(1 件あたり年間売上の指数(2026/07 = 1.00))→ 売上 95 億円・営業利益 7 億円。数量 60、単価 1.25 倍、利益率 7.0%
- 電子機器(電子ブレーカー):数量 100(出荷量の指数(2026/07 = 100))× 価格 1.25(単価の指数(2026/07 = 1.00))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量 100、単価 1.25 倍、利益率 20.0%
倍率:利益は薄く、稼ぐ力(純利益 ÷ k)は 4 億円ほどしかない。それより高い売れる資産の床(floor_assets、約 7 億円)で見て、facts の今の自己資本 12 億円への PBR 0.58 倍にあたる。PBR は中立より低い。
確率:売掛金の増加と長期滞留債権の 9 倍増はすでに起きている。大手の囲い込みも進んでおり、4 分の 1 近くを置く。
悲観 14% 市場の高騰が長引き、赤字と貸し倒れで縮む 利益 −6 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 3 円4 億円
燃料と卸電力の市場の高騰が長引く。料金に映すと客は大手の規制料金に戻り、映しきれない分は損になる。契約は 3 万件に半減する。
小さな客の倒産で貸し倒れが増え、売掛金の回収が止まる。営業赤字が続き、配当は止まる。運転資金の借入の返済に追われ、事業の縮小を迫られる。
値打ちは事業の稼ぎでは測れない。残るのは回収できる売掛金と、わずかな現金だけだ。他の新電力か大手に客ごと売られるとしても、高い値段は付かない。2022 年度に撤退した多くの新電力と同じ道をたどる。創業から築いた代理店の網も、ほとんど値打ちを持たない。
- エネルギー(電気・都市ガスの小売):数量 30.0(契約件数(千件))× 価格 1.20(1 件あたり年間売上の指数(2026/07 = 1.00))→ 売上 46 億円・営業利益 −1 億円。数量 30、単価 1.20 倍、利益率 -3.0%
- 電子機器(電子ブレーカー):数量 80.0(出荷量の指数(2026/07 = 100))× 価格 1.20(単価の指数(2026/07 = 1.00))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量 80、単価 1.20 倍、利益率 10.0%
倍率:赤字で稼ぐ力はない。売れる資産の床(floor_assets、約 3.6 億円)で見て、facts の今の自己資本 12 億円への PBR 0.3 倍にあたる。売掛金は貸し倒れで目減りし、借入を返すと残る資産は小さい。
確率:2022 年度の高騰では多くの新電力が撤退・倒産し、同社も営業赤字になった。発電所を持たない会社に同じ形が長引けば起きうるので 1 割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エネルギー(電気・都市ガスの小売)
卸電力の市場で電気を買い、代理店を通じて小さな工場・店・家庭に売る。都市ガスも売る。
| 数量契約件数(千件) | 価格1 件あたり年間売上の指数(2026/07 = 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 60.0 | 1.00 | 76 | 13 |
| 10 年後 中立 | 90.0 | 1.30 | 149 | 16 |
取り方:件数の最新の開示はなく推定。2024 年 9 月に 5 万件を超えたとの発表と、その後の売上の伸びから 6 万件とし、決算短信のエネルギー事業の売上 76.17 億円を割って 1 件あたり年 12.7 万円を rev_factor とした。セグメント利益 12.76 億円。
電子機器(電子ブレーカー)
店や工場の契約容量を下げる電子ブレーカーを売る。
| 数量出荷量の指数(2026/07 = 100) | 価格単価の指数(2026/07 = 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 100 | 1.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 120 | 1.30 | 2 | 1 |
取り方:量の開示がないので、決算短信の売上 1.16 億円を指数 100 とした。セグメント利益 0.33 億円。
リスクと懸念
卸電力の市場の高騰
電気は全量を JEPX の市場から買う。2022 年度のように燃料と市場の値段が跳ねれば、仕入れ値が料金を上回る。2022 年 7 月期は 4 億円の営業赤字だった。料金に仕入れ値を映す仕組みはあるが、長引けば客が離れる。
回収の遅れと貸し倒れ
売掛金はこの 1 年で 5 億円増え、長期滞留債権は 0.2 億円から 1.6 億円に膨らんだ。小さな店や工場は景気に弱く、払えない客が増えれば利益が削られる。営業の現金の出入りは 2026 年 7 月期に赤字だった。
大手と異業種の囲い込み
大手電力、都市ガス、通信、石油の会社が、ポイントやセット割で小さな客を取りに来る。電気は値段で選ばれ、乗り換えの手間も小さい。今の高い利益率は競争で薄れやすい。
代理店頼みの販売
契約の多くは代理店が取る。手数料の競争で利幅が削られ、無理な契約や説明不足の苦情が増えれば、解約や行政の指導につながる恐れがある。
制度の変更
容量市場の負担金、再生可能エネルギーの賦課金、託送料金など、制度で決まる費用が多い。制度の変更で新電力の負担が増えれば、料金に映しきれない分が利益を削る。
今後の分かれ目
- 2027 年 7 月期に売上 105 億円・営業利益 10 億円の計画を達成したら
- 件数の伸びが本物で、やや楽観の確率を上げる。
- 卸電力の市場の値段が高騰し、四半期で営業赤字になったら
- 危うさが表に出た形で、やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 長期滞留債権と貸倒引当金がさらに増えたら
- 客の質が落ちている証拠で、利益率の見方を下げる。
- 大手電力や他の新電力が買収を提案したら
- 株主の顔ぶれが変わり、TOB の可能性が出る。分析の前提を見直す。
- 契約件数の開示を始め、解約率も示したら
- 数量の推定を開示の数に置き換え、確率を見直す。
見ておくもの
- 契約件数と解約の動き
- エネルギー事業のセグメント利益率
- JEPX のスポット価格
- 売掛金と長期滞留債権・貸倒引当金
- 営業キャッシュ・フロー
倍率と資本コストの決め方
今の株価からは置かず、契約件数 × 1 件あたり売上で積んだ。件数は 2024 年 9 月の 5 万件の発表から推定した。facts は 2025/07 期までなので、2026/07 期の決算短信の売上・利益・自己資本を起点にした。倍率は ROE と k から正当化 PER を出し、堀が弱いので残る割合を 1/3 にした。中立は ROE が k を上回るので下限の 1÷k。リースはほとんどなく、新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.1→14.37 倍・やや楽観 PER 10.7→14.14 倍・中立 PER 10.5→13.37 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。