結論
沖縄電力は、沖縄県だけに電気を送る電力会社だ。本土とも他の電力会社とも送電線がつながらない独立した系統を、発電から送配電、小売まで 1 社で担う。筆者の結論は、今の時価総額は事業の稼ぐ力に見合わず、本質価値を大きく上回るというものだ。
理由は、利益の薄さと借金の重さにある。原子力を持たず、石炭と LNG と石油の燃料費の振れをそのまま受ける。2022 年度は 455 億円の赤字を出し、自己資本が 3 割近く消えた。営業利益は今期で 93 億円、売上の 4% ほどしかない。
借金は純額で 3,000 億円を超え、自己資本の 2 倍以上ある。借り換えのたびに金利が上がり、利払いは 10 年で年 75 億円ほど増える。営業利益が増えても、株主に残る利益は薄いままだ。
規制料金と燃料費調整が下支えするので、事業が消える心配は小さい。会社は 2030 年度に経常利益 100 億円水準と ROE 5% を掲げるが、前の計画の目標は 2 回続けて届いていない。10 年の中立でも ROE は資本コストに届かず、価値は今の時価総額の 6 割ほどだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべき点は 3 つある。堀の中身、資本の使い方、払う値段の安全域だ。
堀はある。独立した系統で代わりがなく、需要は景気に左右されにくい。ただ堀の価値は、堀が稼いだ利益が株主の手元に残って初めて意味を持つ。規制料金は利益の上限を決め、燃料費調整は下振れを守るが、上振れも許さない。
資本の使い方は、守りに偏っている。稼いだ利益の大半は、設備の更新と借金の返済に消える。投下した資本の稼ぎは、資本コストの 8.75% に届いていない。ROE が資本コスト以下なら、ためた利益は額面どおりの価値に届かない。
今の値段は、帳簿の自己資本の約半分だ。一見すると割安に見えるが、資本コストを稼げない会社の帳簿は、額面どおりの価値を持たない。
筆者は、安全域が取れない会社だと見る。燃料の急騰が来た時、財務に余裕が無いことは、2022 年度の実績が示している。事業は残るが、その事業を株主のものとして持ち続けたいとは思わない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、沖縄の家庭と企業に電気を売ることだ。連結売上の約 95% を電気事業が占める。観光客の宿泊や商業施設、米軍基地、水道の需要が電気の使い方を支える。
沖縄電力の特徴は、系統が島の中で閉じていることにある。本土の電力会社と電気を融通できず、予備の発電所も島の中に持たなければならない。大きな発電所が 1 つ止まるだけで、燃料費も供給の余裕も揺れる。
電源は石炭を軸に、LNG の吉の浦火力、石油火力を組み合わせる。原子力は無く、再エネも土地の制約で伸ばしにくい。燃料は全て輸入で、価格と為替に左右される。
売値は燃料費調整制度で燃料の値段に数か月遅れて動く。ただ低圧の規制料金には上限があり、値上げは国の認可が要る。2023 年に認可された値上げは、標準家庭で 33.3%(国の負担軽減を引くと実質 2.1%)だった。高圧部門の規制は 2026 年 4 月に外れる方針が決まっている。
そのほかに、情報通信や建設、リースなどのグループ会社があるが、売上の 5% ほどで、電気を補う存在にとどまる。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、競争相手がいないことだ。独立した系統に代わりの電力会社は入れず、電気の需要は景気に左右されにくい。観光と人口が安定した沖縄で、電気の量は長く落ちていない。
弱みは、強みと同じ孤立にある。他社と融通できず、燃料も全て輸入のため、費用の振れを自力で背負う。原子力の安い電気もない。2022 年度は燃料の急騰で営業損益が 484 億円の赤字に落ち、自己資本が 1,595 億円から 1,126 億円へ減った。
規制料金は値決めの力が弱い。燃料費の調整には上限があり、2023 年の値上げ認可までに 1 年以上かかった。費用が価格に乗るまでの穴を、自分の資本で埋めている。
資本の効率は低い。ROE は過去 10 年の中央値で 3.6%、資本コストを一度も上回っていない。自己資本比率は 25%、純有利子負債は自己資本の 2.3 倍だ。営業利益は支払利息の 3.5 倍しかない。
筆者がいちばん気にするのは、資本の薄さだ。もう一度 2022 年度のような年が来れば、財務の余裕はほとんど残らない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界は、燃料費調整という自動調整の仕組みを持つ。短期の燃料高は、数か月遅れで価格に乗る。ただ 2022 年度は、調整の上限と発電費用の急騰が重なり、大手電力 9 社が赤字に沈んだ。沖縄電力も例外ではなく、原発を持たない分だけ傷が深かった。
構造の変化は 3 つある。1 つ目は規制料金の見直しだ。高圧部門は 2026 年 4 月に規制が外れる。自由化されれば値上げの自由度は増すが、競争と監督も強まる。
2 つ目は脱炭素だ。沖縄電力は石炭火力を軸にしており、段階的な縮小は電気料金の上昇に直結する。会社は LNG の割合を増やし、バイオマス混焼などで効率を高める方針を示している。更新と環境対策の投資は、今後の 10 年で重くなる。
3 つ目は需要だ。観光客の増加と電気自動車の普及は追い風だが、人口は頭打ちで、省エネは続く。2025 年度は夏の高温で販売電力量が 5.4% 増えたが、これは天候の要因が大きい。
本土の電力会社ではデータセンターが需要を押し上げているが、沖縄では具体的な大型案件を確かめられなかった。本土との距離や系統の制約から、沖縄で本土並みの大型需要が来るとは考えにくい。
競合は事実上いない。新電力の参入は限られ、旧一電の他社も島には入れない。収益を左右するのは競争より、燃料の値段と国の制度だ。
資本政策と M&A
資本政策の軸は、財務の立て直しだ。2022 年度の大赤字で自己資本比率が下がったため、会社は 25% 以上を最低線とし、将来は 30% への回復をめざしている。配当は「安定継続」を方針とし、純資産配当率 2.0% 以上を維持するとしている。2026 年 3 月期の配当は純利益の約 26% で、無配だった 2023 年 3 月期から戻した。
自社株買いは重い借金の中では優先度が低く、今後もほとんど期待できない。投資は石炭機の更新、LNG への置き換え、送配電網の維持に回る。政策保有株として、沖縄セルラー電話の株 2% 強を持つが、含み益の大きさは確かめられなかった。
M&A の余地は小さい。島の電力は、本土の他社が買収しても系統がつながらない。買われる側としても、規制と脱炭素の重荷を抱えた会社を買う動機は乏しい。再編は、資本の動きより制度の動きが先になる。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の113億円が10年後に約 130億円。更新投資は建築費の上昇で膨らみ、足りない分は借入になって利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。送配電などの規制事業の償却と利払いは託送料金で売上に戻るので、この数字は規制外の分だけだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
規制と地域独占の下で、この会社の事業は消えない。独立した系統に競合は入れず、電気の需要は観光と人口で安定している。2022 年度の赤字は燃料の急騰という異常な年で、その後の規制料金の値上げと燃料の落ち着きで、利益はすでに戻りつつある。
新しい中期計画は、2030 年度に経常利益 100 億円水準と ROE 5% を掲げる。高圧部門の規制は 2026 年 4 月に外れ、値決めの自由度は増す。借り換えで利払いが増えても、規制料金の次の改定で原価に入る。
需要にも追い風がある。観光客の増加と電気自動車の普及で、販売電力量は伸びる余地がある。2025 年度は 5.4% 増えた。LNG の割合が増えれば燃料費の振れも小さくなり、石炭火力の脱炭素の費用も、国の制度が一部を負担する可能性が高い。
配当は純資産配当率 2% 以上を守る方針で、自己資本比率は 25% を最低線に回復を進めている。いま自己資本の約半分の値段しかつかないのは、2022 年度の記憶に引きずられた過度な悲観で、燃料が落ち着いた年が続けば、見直される余地は大きい。
慎重な見方
利益が薄すぎる。営業利益は売上の 4% ほどで、そこから借り換えの利払いが年 75 億円ほど増える。営業利益が 1 割伸びても、株主に残る利益は増えにくい。
会社の目標は、実績で裏づけられていない。前の計画は 2025 年度に経常利益 120 億円と ROE 5% を掲げたが、実績は ROE 3.6% にとどまった。新しい計画の経常利益 100 億円は、前の計画より低い。しかも今期の予想は、経常利益 50 億円、前期比 4 割減だ。第 1 四半期は純損失を出した。
燃料への耐性が弱い。原子力が無く、石炭と LNG と石油の全てを輸入に頼る。2022 年度は 455 億円の赤字で、自己資本が 3 割近く消えた。調整の上限と規制料金の遅れは今も変わらない。
脱炭素の費用は、これから来る。石炭を軸にした電源の更新と環境対策は、借金の重い会社には大きな負担だ。値上げの認可は毎回遅れ、利払いの増加を価格に移すのも時間がかかる。
資本コストを超える利益を、この会社は過去 10 年一度も出していない。帳簿の約半分という値段は、割安ではなく、稼ぐ力の低さを正しく映している。
どちらに重みを置いたか
規制と独占は、事業を守る強い土台だ。ただ、守られているのは事業の存続であって、株主の利益ではない。ROE が過去 10 年の中央値で 3.6%、10 年の中立でも 4% 台にとどまり、資本コストの 8.75% に届かない。利払いの増加も確実に来る。
確率は、悲観の側を厚めに置いた。やや悲観と悲観を合わせて 38%、楽観とやや楽観は 28% とした。会社の計画の実現を、実績に照らして割り引いた結果だ。
結論は、事業は残るが、今の値段は本質価値を大きく上回る。総合では 4 割前後の割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,598 円868 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 349 円189 億円)。 今の値に割り戻すと 958 円520 億円、今との差 −16.7%、 期待の年率 +5.4%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,276 円1,780 億円 | 696 円378 億円 | +245.7% | +13.2% | 318 円173 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,473 円1,343 億円 | 536 円291 億円 | +161.8% | +10.1% | 602 円327 億円 |
| 中立 | 34% | 1,714 円931 億円 | 385 円209 億円 | +82.7% | +6.2% | 714 円388 億円 |
| やや悲観 | 25% | 720 円391 億円 | 162 円88 億円 | −23.2% | −2.6% | 221 円120 億円 |
| 悲観 | 13% | 600 円326 億円 | 110 円60 億円 | −38.1% | −4.7% | 92 円50 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,598 円868 億円 | 349 円189 億円 | +69.4% | +5.4% | 1,946 円1,057 億円 |
今の株価時価総額 1,149 円624 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 規制の見直しと需要増で、収益が計画を超える 利益 145 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,276 円1,780 億円
規制料金の改定で、借り換えによる利払いの増加がきちんと電気の値段に乗る。燃料も落ち着き、石炭と LNG の使い分けがうまく回って、電気事業の利益率は 7% 台まで戻る。観光客の増加と電気自動車の普及で販売電力量は今より 1 割近く増え、データセンターの立地も一部で実現する。
沖縄セルラーなどの関連事業も堅調で、その他の事業の稼ぎも伸びる。自己資本比率は 30% に戻り、経営は借金の重さから解放される。配当は 4 割程度に引き上げられ、市場もこの会社を「燃料の振れる小さな電力会社」ではなく、安定した島のインフラとして扱い直す。石炭から LNG への置き換えも、規制が費用を認める形で進み、脱炭素の投資が利益を圧迫しない。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の113億円が10年後に約 130億円(物価で一律に増やすと約 104億円)。営業利益は +26億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 9億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約52%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 電気事業(発電・小売・送配電):数量 79.3(販売電力量(億 kWh))× 価格 39(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 3,115 億円・営業利益 260 億円。数量 1.08 倍・価格 1.38 倍・利益率8.3%・償却は物価で増やさず按分(10年後 130億円)
- その他(情報通信・建設・リース・不動産など):数量 1,200(グループ会社の人員(人、推定))× 価格 1,405(1 人あたり売上(万円))→ 売上 169 億円・営業利益 27 億円。人員 1.09 倍・単価 1.38 倍・利益率 16%
倍率:事業の純利益 144 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)28 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 1,780 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:規制料金の見直しで利払いの増加が価格に乗り、燃料も落ち着く条件が 10 年そろう必要がある。2022 年度の赤字を知る会社なので、上振れの確率は 1 割を切る水準に抑えた。
やや楽観 20% 新しい中期計画の目標に近い水準まで戻る 利益 109 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,473 円1,343 億円
新しい中期計画の筋書きに近い展開になる。経常利益は 2030 年度に 100 億円水準へ届き、その後も大きくは崩れない。販売電力量は観光と電化で 4% ほど増え、電気の値段は物価に近い形で上がる。
規制料金の見直しは遅れながらも利払いの増加を拾い、電気事業の利益率は 6% 台に乗る。自己資本比率は 27% 前後まで戻り、配当は DOE の方針を守る。ただし燃料の振れそのものは消えず、市場は半信半疑のまま、評価は慎重なままで推移する。会社の計画が全て実現するわけではなく、2025 年度の目標に届かなかった前の計画と同じく、数字は少し足りない形で着地する。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の113億円が10年後に約 130億円(物価で一律に増やすと約 106億円)。営業利益は +24億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 10億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約52%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 電気事業(発電・小売・送配電):数量 76.4(販売電力量(億 kWh))× 価格 39(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 2,956 億円・営業利益 216 億円。数量 1.04 倍・価格 1.36 倍・利益率7.3%・償却は物価で増やさず按分(10年後 130億円)
- その他(情報通信・建設・リース・不動産など):数量 1,150(グループ会社の人員(人、推定))× 価格 1,385(1 人あたり売上(万円))→ 売上 159 億円・営業利益 24 億円。人員 1.05 倍・単価 1.36 倍・利益率 15%
倍率:事業の純利益 108 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)28 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 1,343 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が掲げる 2030 年度の経常利益 100 億円水準に、遅れながらも近づく展開。計画は過去 2 回続けて未達なので、中立より低い 2 割にとどめた。
中立 34% 燃料の振れは続くが、稼ぐ力は少しずつ戻る 利益 75 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,714 円931 億円
燃料費調整と規制料金が役目を果たし、大きな赤字は出ない。ただし値上げの認可は毎回遅れ、利益はいつも一歩遅れて追いつく。販売電力量は観光と電化の増加を、人口の頭打ちと省エネが打ち消して、ほぼ横ばいに終わる。
電気事業の利益率は 5% 台半ばまで戻る。借り換えで利払いが年 75 億円ほど増えるため、営業利益が増えても株主に残る利益は薄いままだ。自己資本は少しずつ積み上がるが、ROE は資本コストに届かない。配当は 3 割台半ばの水準を保つ。島のインフラとして生き残るが、株主にとっての魅力は乏しい。会社が掲げる 2030 年度の経常利益 100 億円水準には、ほぼ届かないまま、10 年が過ぎていく。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の113億円が10年後に約 130億円(物価で一律に増やすと約 108億円)。営業利益は +22億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 11億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約52%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 電気事業(発電・小売・送配電):数量 73.4(販売電力量(億 kWh))× 価格 38(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 2,801 億円・営業利益 176 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・利益率6.3%・償却は物価で増やさず按分(10年後 130億円)
- その他(情報通信・建設・リース・不動産など):数量 1,100(グループ会社の人員(人、推定))× 価格 1,364(1 人あたり売上(万円))→ 売上 150 億円・営業利益 21 億円。人員 1.00 倍・単価 1.34 倍・利益率 14%
倍率:事業の純利益 74 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)28 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 931 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:燃料費調整と規制料金の仕組みが働き、利益が薄いまま少しずつ戻る展開が最も自然なので、5 つの筋書きで最大の 34% を置いた。
やや悲観 25% 燃料高と脱炭素の負担で、利益が積み上がらない 利益 14 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 720 円391 億円
燃料や為替が荒れる年が何度かあり、そのたびに調整のラグと規制料金の遅れで利益が削られる。石炭火力は温室効果ガス削減の要請を受けて使い方を絞らざるを得ず、高いが量の少ない LNG に置き換える費用が重くなる。
販売電力量は人口の頭打ちと省エネで 5% ほど減る。電気の値段も認可の遅れで物価に追いつかない。電気事業の利益率は 3% 台にとどまり、利払いの増加が営業利益の大半を食う。自己資本は 1,500 億円前後で足踏みし、配当は据え置きがやっとになる。2023 年の値上げ認可のような制度の追い風は来ず、規制の見直しも利益を増やす方向には動かない。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の113億円が10年後に約 130億円(物価で一律に増やすと約 113億円)。営業利益は +17億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 14億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約52%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 電気事業(発電・小売・送配電):数量 69.7(販売電力量(億 kWh))× 価格 37(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 2,581 億円・営業利益 107 億円。数量 0.95 倍・価格 1.30 倍・利益率4.1%・償却は物価で増やさず按分(10年後 130億円)
- その他(情報通信・建設・リース・不動産など):数量 1,050(グループ会社の人員(人、推定))× 価格 1,303(1 人あたり売上(万円))→ 売上 137 億円・営業利益 16 億円。人員 0.95 倍・単価 1.28 倍・利益率 12%
倍率:ROE 0.8% で稼ぐ力は小さい(純利益 12÷k 8.25% =約 133 億円)。発電所と送配電設備を売った時の株主の取り分から、今の自己資本 1,304 億円の 0.30 倍に置いた。稼ぐ力より資産の価値で見ている。純有利子負債を足した EV÷営業利益は 32 倍と 20 倍を超えるが、営業利益が薄い年で測ったためで、この筋書きの値は資産の価値で見ている。
確率:燃料や為替が荒れると、調整のラグと規制料金の遅れで利益が削られる。利払いの増加も重なるため、4 分の 1 の確率を置いた。
悲観 13% 燃料の急騰が再び襲い、資本が削られる 利益 −89 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 600 円326 億円
2022 年度のような燃料と為替の急騰が再び襲う。調整の上限と規制料金の遅れで費用が価格に乗らず、数年にわたり赤字が続く。利払いも 100 億円規模に増えるため、自己資本は減り、自己資本比率は 15% 台まで下がる。
石炭火力には脱炭素の規制が強まり、更新と環境対策の投資も重なる。配当は事実上止まり、借り換えの条件も厳しくなる。独立した系統で代わりの電力会社もない島のため、事業が消えることはない。だが、株主にとっての価値は大きく損なわれる。10 年の純利益の合計は赤字になり、年 6 億円ほどの配当は、手元の資金と資産の売却でかろうじて払うのがやっとになる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の113億円が10年後に約 130億円(物価で一律に増やすと約 119億円)。営業利益は +11億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 22億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約52%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 電気事業(発電・小売・送配電):数量 64.6(販売電力量(億 kWh))× 価格 36(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 2,299 億円・営業利益 22 億円。数量 0.88 倍・価格 1.25 倍・利益率1%・償却は物価で増やさず按分(10年後 130億円)
- その他(情報通信・建設・リース・不動産など):数量 1,000(グループ会社の人員(人、推定))× 価格 1,222(1 人あたり売上(万円))→ 売上 122 億円・営業利益 7 億円。人員 0.91 倍・単価 1.20 倍・利益率 6%
倍率:赤字で稼ぐ力はゼロ以下。島の独立した系統は他社が代わりにならず、設備は売らなくても事業は残るが、株主の取り分は借金を引いた設備の価値に限られる。今の自己資本 1,304 億円の 0.25 倍に置いた。純有利子負債を足した EV÷営業利益は 180 倍を超えるが、利益が消えた年の数字で、この筋書きは資産の価値で見ている。
確率:2022 年度のような燃料の急騰が、借金の重い今の体力で再び来る展開。起きれば自己資本が 3 割近く消える実績があり、10 年では 1 割を超える確率とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電気事業(発電・小売・送配電)
沖縄本島と離島に電気を送る事業。発電から小売、送配電までを 1 社で担い、連結売上の約 95% を占める。
| 数量販売電力量(億 kWh) | 価格平均単価(円/kWh、燃料費調整後) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 73.4 | 28 | 2,090 | 75 |
| 10 年後 中立 | 73.4 | 38 | 2,801 | 176 |
取り方:2026 年 3 月期の販売電力量は 73.41 億 kWh(前年比 +5.4%、夏の高温と水道業の需要増の分を含む)。売上のうち電気事業の外部売上を約 2,090 億円(連結売上 2,202 億円の約 95%)と置き、単価(円/kWh)を逆算した。数量は実質の kWh で、人口の頭打ちと省エネ、観光客・電気自動車の増加の差し引きで置く。単価は燃料費調整で燃料の値段に数か月、規制料金は認可で 1〜2 年遅れて連動する。営業利益は連結 93 億円のうち電気事業を 75 億円と推定した(セグメントの開示が粗いため)。送配電は同じ会社の中の取引なので分けていない。
その他(情報通信・建設・リース・不動産など)
グループ会社が営むその他の事業。電気事業の周辺の請負や通信などで、利益率は電気事業より高い。
| 数量グループ会社の人員(人、推定) | 価格1 人あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,100 | 1,018 | 112 | 18 |
| 10 年後 中立 | 1,100 | 1,364 | 150 | 21 |
取り方:連結売上 2,202 億円から電気事業の外部売上を引いた約 112 億円を、グループ会社の人員 1,100 人(推定)で割って 1 人あたり売上を置いた(rev_factor は人 × 万円から億円への換算)。人員の開示が無いため推定。営業利益は連結 93 億円から電気事業の 75 億円を引いた 18 億円。1 人あたり売上は人件費と同じく物価で上がる。
リスクと懸念
燃料の急騰と調整の上限
輸入燃料の価格や為替が急に動くと、規制料金の上限と調整のラグで、費用が価格に乗るまでの穴が空く。2022 年度は 455 億円の赤字で自己資本が 3 割近く減った。原子力が無い分、他の電力会社より傷が深い。
借り換えによる利払いの増加
純有利子負債は 3,000 億円を超える。借り換えのたびに金利が上がり、利払いは 10 年で年 75 億円ほど増える。営業利益が 100 億円規模の会社には重く、規制料金の改定が遅れれば利益が直接削られる。
石炭火力の脱炭素
石炭を軸にした電源の縮小や更新の費用は、独立した系統で代わりがきかない沖縄では特に重い。LNG への置き換えは燃料費の振れを減らす一方、高い燃料を使う分だけ費用が増える。投資の回収が遅れれば、資本の薄さが響く。
規制料金の改定の遅れ
規制料金の値上げは、国の認可に 1 年以上かかる。2023 年の改定でも、実質の値上げ率は国の負担軽減を引いて 2.1% にとどまった。制度の動きが利益の時期を決め、会社の裁量は小さい。
財務の薄さと目標の未達
自己資本比率は 25% で、2022 年度の赤字から立て直す途上だ。前の計画の目標(ROE 5%、経常利益 120 億円)は実績が届かなかった。新しい計画の達成も、燃料と制度の動き次第になる。
需要の頭打ち
沖縄の人口は頭打ちで、省エネも進む。2025 年度の販売電力量 5.4% 増は夏の高温の影響が大きく、継続する需要とは言えない。観光客の増減や米軍関連の動向も、需要に影響する。
今後の分かれ目
- 規制料金の改定で、利払いと燃料費の増加が速やかに価格へ反映される
- 電気事業の利益率が 6% 台に乗り、10 年の筋書きは上寄りになる。
- 2022 年度級の燃料と為替の急騰が再び来る
- 調整のラグで数年の赤字になり、自己資本比率が 20% を割る。悲観の筋書きが現実になる。
- 石炭火力の縮小や更新の方針が国から示され、費用負担の制度が決まる
- 投資の見通しが立ち、費用負担が公的に分かれば、悲観の確率が下がる。
- 沖縄でデータセンターなど大口の電力需要が具体化する
- 販売電力量が実質で増え、数量の見通しを上げられる。ただし系統の増強費用も要る。
- 新しい中期計画の経常利益 100 億円が、2030 年度より前に達成される
- 会社の目標が実績で裏づけられ、確率を上寄りに直す余地が出る。
- 金利が想定よりも早く下がり、借り換えの費用が減る
- 利払いの増加が小さくなり、中立の純利益が上振れする。
見ておくもの
- 規制料金の改定の申請と認可の時期、高圧部門の自由化後の値決め
- 燃料の輸入価格(石炭・LNG・原油)と為替、燃料費調整の上限
- 石炭火力の更新と LNG への置き換えの計画
- 自己資本比率(25% の最低線と 30% への回復)
- 新しい中期計画の経常利益と ROE の進み具合
- 販売電力量(観光客数・電気自動車・夏の気温の影響を除いた実力)
倍率と資本コストの決め方
販売電力量に名目の単価を掛け、利益率を置いて 10 年後の営業利益を積んだ。倍率は、ROE が資本コスト(k=基本 7.5% に quality +1.25%)の 8.75% に届かないため、上限を 1÷k の 11.4 倍とし、中立は上限の 7.5 割の 8.6 倍に置いた。利益の多くが規制と燃料費調整に左右され、借金も重いので質は低めと見た。悲観側は、稼ぐ力と設備を売った時の株主の取り分から出し、今の自己資本に 0.25〜0.30 倍を掛けた。今の PER や PBR、同業の倍率には寄せていない。同じ領域の北陸電力より k を 0.5% 高くしたのは、燃料への耐性が弱い(循環+0.25%の差)ことと、借金の重さ・認可の遅れのため。新リース会計基準は電気事業の設備に大きく影響せず、10 年後の数字は今と同じ形で置いた。
(2026-10-19 見直し)政策保有株・不動産の含み益(税後)38億円を余り資産として足した(戻り方0.5)。利益で測る倍率には入らない価値を漏らさないため。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。