結論
東邦瓦斯は、愛知・岐阜・三重の都市ガスを握る地域大手だ。ガスの顧客は約176万件、電気とLPガスを合わせたグループの顧客は312万件に上る。導管網という参入障壁は厚く、事業の土台は堅い。
筆者の結論は、今の値段は本質価値を3割ほど上回る割高、というものだ。足元の利益が実力より良く見えるからだ。
2026年3月期の純利益は314億円だが、原料価格と料金改定のずれによる差益が乗っている。会社自身が実力を経常利益250億円と見ており、今期はそのずれが差損に転じる。
利益率は営業利益ベースで5%を切る。原料費調整で料金に転嫁できる半面、もうけは薄い。電気は2期連続の赤字からようやく黒字になったが、まだ20億円にすぎない。
国内のガス需要は人口と省エネで細る。業務用等が8割を占めるので、トヨタ自動車を中心とする中部の製造業が頼りになる。この顧客は景気とともに動く。
一方で資本の使い方は変わってきた。政策保有株を3分の1売り、自社株買いを年300億円ずつ続けている。ただし利益を超える還元は、売却代金と借金で支える形だ。
10年後は物価で価格が上がるぶん利益は持ち直すが、ROEは資本コスト7.25%に届かず、倍率は1÷kの13.3倍が上限になる。政策保有株の含み益600億円ほどは、利益の倍率に入らない余り資産として足した。それでも総合は3割ほどの割高と見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「長く持てるが、安く買える価格が限られる」企業だ。10年後もガスの導管は残る。需要は減っても、ゼロにはならない。
ただ、持ち主として得られる利益は多くない。営業利益率は5%に届かず、投資は設備や電源に回るので、株主が自由に使える利益は純利益より小さい。ROEは自己資本の厚さのせいで資本コストと同じ水準にとどまる。これは「資本を増やしても、稼ぎがついてこない」形だ。
評価できる点は、経営が資本の重さを認め始めたことだ。自己資本を薄くし、自社株買いと増配を続ける。政策保有株の売却は、眠っていた資産を株主に戻す動きだ。
懸念は、還元が利益を上回っている点だ。売却代金と借金が続く間は成り立つが、売る株は有限だ。実力利益250億円の会社が、年300億円の自社株買いを続けられるのは、あと数年だろう。
安全域で言えば、悲観の筋書き(需要の構造的な縮小、電力との価格競争)でも、導管網と自己資本が値段を下から支える。一方、楽観でも倍率の上限が低いので、値上がりの余地は限られる。いま払う値段に、特別な安全域はない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は都市ガスだ。名古屋を中心とする東海3県に導管網を張り、家庭、飲食・病院などの業務用、工場の工業用に売る。2026年3月期の販売量は約33億m3で、家庭用は2割弱にすぎない。工業用を含む業務用等が8割を超える。ガスの売上は約4,270億円、セグメント利益は約190億円だ。
価格は原料費調整制度で決まる。LNGの輸入価格と為替が数か月遅れで料金に乗る。このずれが利益を大きく動かす。値上がりが続く局面では差益が出て、下がる局面では差損になる。2023年3月期と2026年3月期の好業績は、この差益で説明がつく部分が大きい。
電気は小売の自由化後に始め、顧客は71.6万件まで増えた。販売量は29億kWhで、売上は約990億円だ。2023年・2024年の3月期は燃料高と市場価格の高騰で合計170億円近い赤字を出した。2026年3月期にようやく20億円の黒字になった。
LPガスは64.6万件の顧客を持ち、利益は30億円規模で安定している。そのほか、エンジニアリング、不動産(名古屋港の「みなとアクルス」など)、情報サービス、農業・食品などの地域向け事業がある。2026年3月期の利益は約58億円で、利益率は9%台と高い。
海外は東南アジアなどへの出資が中心で、まだ小さい。会社は2027年度にコア事業(ガス・LPG)で経常利益180億円、電気・海外などの戦略事業で100億円を稼ぐ計画だ。戦略事業をコア事業に並ぶ規模に育てるのが、2030年代半ばの目標になっている。
優良さと弱いところ
事業の質は、規制に守られた安定と、薄い利益の組み合わせだ。ガスの導管網は事実上の地域独占で、需要は景気に左右されにくい。これは堀、つまり他社がまねできない強みと呼べる。財務も堅く、自己資本比率は59%ある。
ただ、堀が利益に変わる力は弱い。ガス小売は2017年に自由化され、価格を自由に決められる場面は限られる。営業利益率は5%に届かない。同じ領域の東京瓦斯や大阪瓦斯に比べ、海外の稼ぎや不動産の含み益といった「第二の柱」が小さい。
競争の相手は電力会社だ。中部電力は電気とガスのセット提案で攻め、東京電力系のTOKAIグループも2019年に東邦ガスのエリアで都市ガス小売を始めた。大口の都市ガスでは、東邦ガスと中部電力ミライズが受注を調整していたとして、2024年7月に経済産業大臣から業務改善命令を受けた。
この件で筆者が重く見るのは、競争の質ではなく統治だ。独占に近い会社が、競争相手と営業の方針を探り合っていたことになる。改善計画は進んでいるが、顧客の信頼と今後の大口契約の取り合いに影を残す。
資本効率は低い。自己資本利益率(ROE)は2026年3月期で6.6%だが、期ずれを除けば5%に届かない。会社は株主資本コストを5%程度と自ら認めており、中期計画の最終年度に「6%+α」を目指す。自己資本の中身に政策保有株が厚いことも、数字を低く見せる一因だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の都市ガスは、量が減り、単価が物価で動く産業だ。全国の販売量は1兆6千億MJ弱で、工業用が6割近く、家庭用は4分の1にとどまる。家庭用は人口減とオール電化で毎年1〜2%ずつ縮み、工業用は化学や金属の生産次第で横ばいに近い。業界の想定では、10年で販売量はおおむね1割減る。
東邦ガスのエリアは、全国の都市ガス販売の約1割を占める。名古屋圏は自動車と部品の工場が多く、工業用の需要が厚い。人口は減るが、製造業の底堅さが量を支える。
料金は、LNGの輸入価格と為替に連動する。2021〜2022年の価格急騰では、転嫁が遅れて各社が一時的に苦しんだ。今期(2027年3月期)も、原油100ドル・大幅な円安という前提で、期ずれが差損に傾く見通しだ。方向は逆でも、期ずれが利益を動かす構図は変わらない。
構造の変化は三つある。第一に脱炭素だ。e-メタン(合成メタン)や水素の実用化が進めば、導管網の使い道は残る。ただ、それは量の増加ではなく、設備投資の増加を意味する。第二に電力との垣根の消滅だ。電気・ガスのセット販売が競争の主戦場になる。第三に、LNGの調達先だ。東邦ガスは2025年からカナダ産を加え、調達先を分散している。
10年の景気の波は、製造業の生産次第だ。10年は人口減による量の縮小と、物価による価格の上昇の綱引きになる。
資本政策と M&A
資本政策の軸は、自己資本の圧縮と政策保有株の売却だ。2025〜2027年度の中期経営計画は、自己資本の目安を3,500〜4,000億円に置く。現在の約4,800億円からは、1割以上減らす前提だ。
実際に、自社株買いは2025年3月期と2026年3月期にそれぞれ300億円を実施した。2026年3月期の総還元は381億円で、純利益の1.2倍にあたる。配当も12期連続で増やしている。
政策保有株は、2023年度末の残高の3分の1を2027年度末までに売る方針だ。売却額は計画期間で約300億円。これは自己資本の約6%に当たる。残りの保有株の自己資本比は2割未満になる見通しだ。
投資は、3年で戦略事業に約1,300億円、コア事業に1,100億円を見込む。借金は、自己資本に対する比率(D/E)の上限を0.8倍まで認める。利益を超える還元と投資を同時に進めるため、純有利子負債は今の1,240億円から増える。
買収の面では、金沢市のガス事業・発電事業を企業連合で継承した実績がある。TOB(株式公開買付け)で買われる可能性は、市場の目安で10年以内に15%程度だ。ただ、地域のインフラ会社で、買収の動機は乏しい。筆者は、現実味は低いと見ている。
10年の還元は、自己資本を3,500〜4,000億円へ圧縮する中計と、2026年3月期の総還元が純利益の1.2倍だった実績の範囲に置いた。中立は純利益の合計の約88%で、利益の範囲に収まる。政策保有株の売却代金は還元の原資だが、中立の還元は利益より小さいので、余った現金とは重ねていない。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の230億円が10年後に約 281億円。更新投資は建築費の上昇で膨らみ、足りない分は借入になって利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。送配電などの規制事業の償却と利払いは託送料金で売上に戻るので、この数字は規制外の分だけだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社の価値は、利益の水準よりも、これからの動きにある。まず、期ずれの差損は一時的だ。LNG価格が落ち着けば、実力利益250億円がそのまま出る。会社は2027年度に300億円を目標にしている。
第二に、電気だ。顧客は71.6万件に達し、赤字から黒字に転じた。中部は工場と企業の需要が厚く、データセンターや半導体の電力需要が加われば、電気の利益は計画の4%超を上回りうる。再エネも50万kW(2030年度)を目指す。
第三に、資本政策だ。政策保有株の売却と自社株買いが続けば、株数は減り、ROEは6%を超える。配当も累進で、増配が続く。
第四に、導管網そのものの希少性だ。e-メタンや水素で都市ガスの導管が活きる未来が来れば、10年後も欠かせない設備になる。守りの堅さに、成長の余地が乗る。
この見方に立てば、利益が300億円を超え、倍率も上がる。楽観は、今の値段を大きく上回る。加えて、同じ領域の東京瓦斯・大阪瓦斯がそろって高い倍率で評価されていることも、この見方の裏付けになる。東邦ガスはROEが低いぶん割り引かれているが、還元と効率化でその差は縮まる。
慎重な見方
利益の質が悪い。2026年3月期の純利益には、原料価格と料金改定のずれによる差益が乗っている。繰り返せない利益だ。会社自身が実力を経常250億円と言っており、今期の予想はそれを下回る。
電力・ガスの競争も厳しい。2024年の業務改善命令は、独占に近い立場で競争相手と情報をやりとりしていた事実を示す。中部電力や、東京電力系のTOKAIとの価格競争が本格化すれば、薄い利益率はさらに削られる。
電気は2期連続の赤字から黒字に戻ったが、20億円にすぎない。投資を増やしても、会社が掲げる収益率4%台では、資本コストを稼げない。
また、還元の持続性にも疑問がある。利益を超える自社株買いは、売却代金と借金に頼る。純有利子負債が増え、金利が上がる世界では、利払いが年30億円ほど利益を削る。
長期では、家庭用のガス離れが続く。導管網は固定費の塊だ。顧客が減るほど、残った顧客に費用を乗せる構図になる。構造的な負けを想定する場合、ガスの採算は一気に悪化する。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが少し強い。足元の利益が実力より高く、還元も実力以上に出ているからだ。一方、導管網の堅さと自己資本の厚さが下を支えるので、悲観を厚くしすぎることはしない。確率は、中立に最も寄せ、やや悲観をやや楽観より厚くした。結果として、10年は物価による価格上昇で利益は戻るが、ROEが資本コストに届かず、総合は3割ほどの割高になった(政策保有株の含み益は余り資産として足した)。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 978 円3,457 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 606 円2,140 億円)。 今の値に割り戻すと 913 円3,225 億円、今との差 −24.6%、 期待の年率 +2.7%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,586 円5,607 億円 | 873 円3,084 億円 | +103.1% | +7.3% | 246 円869 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,334 円4,715 億円 | 761 円2,691 億円 | +73.1% | +5.6% | 461 円1,629 億円 |
| 中立 | 34% | 1,135 円4,012 億円 | 672 円2,375 億円 | +49.3% | +4.1% | 614 円2,172 億円 |
| やや悲観 | 24% | 532 円1,879 億円 | 436 円1,540 億円 | −20.1% | −2.2% | 232 円820 億円 |
| 悲観 | 10% | 125 円442 億円 | 178 円628 億円 | −75.0% | −12.9% | 30 円107 億円 |
| 加重平均 | 100% | 978 円3,457 億円 | 606 円2,140 億円 | +30.8% | +2.7% | 1,584 円5,598 億円 |
今の株価時価総額 1,211 円4,278 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 10% 電気・地域ビジネスが育ち、第二の柱になる 利益 337 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 1,586 円5,607 億円
電気が家庭と法人の両方で拡大し、顧客数は150万件規模へ増える。再エネとデータセンター向けの電力が地域で育ち、電気の利益は100億円近くになる。LPG・不動産・エンジニアリングなど地域ビジネスも伸び、ガスの縮小を補う。e-メタンが都市ガスの数%に達し、導管網が脱炭素のインフラとして生き残る。利益は物価を大きく上回って伸び、経営の資本配分も効く10年になる。筆者は、この筋書きは電気の利益が育つ前提に大きく依存するとみる。電力需要の伸びを取り込む投資が当たらなければ、成り立たない。当たれば、ガス会社から総合エネルギー会社へ性格が変わる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の230億円が10年後に約 281億円(物価で一律に増やすと約 251億円)。営業利益は +30億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 59億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約40%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- ガス事業(都市ガス):数量 3,201(都市ガス販売量(百万m3))× 価格 173(1m3あたりのガス事業売上(円/m3。託送収入を含む混合の単価))→ 売上 5,546 億円・営業利益 219 億円。数量 0.97 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率3.9%・償却は物価で増やさず按分(10年後 281億円)
- 電気事業:数量 4,925(電気販売量(百万kWh))× 価格 46(1kWhあたりの売上(円/kWh))→ 売上 2,286 億円・営業利益 96 億円。数量 1.70 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 4.2%
- LPG・地域価値創造ほか:数量 135(事業量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 22(指数1点あたりの売上(億円、名目))→ 売上 2,942 億円・営業利益 206 億円。数量 1.35 倍・価格 1.38 倍(名目)・営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 328 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)617 億円。全体の PER 14.91 倍、時価総額 5,513 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 14.01 倍・時価総額 4,721 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:電気・地域ビジネスの伸びと需要の縮小の小ささが重なる展開は、1割程度とみた。
やや楽観 22% 需要の縮小が小さく、電気が着実に伸びる 利益 277 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,334 円4,715 億円
電気は顧客を増やし、赤字の年はなくなって利益は60億円台に乗る。ガスは家庭用が縮むが、工業用が堅く、10年で販売量は7%減にとどまる。地域価値創造の利益も50億円から着実に伸びる。e-メタンの導入は都市ガスの1%程度にとどまり、収益への寄与は限られる。政策保有株の売却と自社株買いで、ROEは6%台に乗る。ガスの減り方が緩いのは、中部の製造業が国内に残り続けるからだ。この前提が崩れなければ、利益は物価を上回るペースで伸び、倍率もやや高くなる。会社が掲げる戦略事業の100億円を超える道筋でもある。数量はゆるやかに減るが、価格の上昇と電気の黒字で、利益は物価の伸びを上回る。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の230億円が10年後に約 281億円(物価で一律に増やすと約 252億円)。営業利益は +29億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 59億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約40%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- ガス事業(都市ガス):数量 3,069(都市ガス販売量(百万m3))× 価格 173(1m3あたりのガス事業売上(円/m3。託送収入を含む混合の単価))→ 売上 5,317 億円・営業利益 189 億円。数量 0.93 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率3.6%・償却は物価で増やさず按分(10年後 281億円)
- 電気事業:数量 4,490(電気販売量(百万kWh))× 価格 46(1kWhあたりの売上(円/kWh))→ 売上 2,069 億円・営業利益 77 億円。数量 1.55 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 3.7%
- LPG・地域価値創造ほか:数量 130(事業量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 21(指数1点あたりの売上(億円、名目))→ 売上 2,792 億円・営業利益 173 億円。数量 1.30 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 6.2%
倍率:事業の純利益 268 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)617 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 4,318 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電気の拡大が着実に進み、ガスの縮小が緩い道筋は、中立に次ぐ確率とした。
中立 34% ガスは縮み、価格上昇で補い、利益は物価並みに伸びる 利益 226 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,135 円4,012 億円
ガスの販売量は人口減と省エネで10年に1割減る。価格は物価並みの1.34倍まで上がり、売上の減りを補う。電気は顧客を増やすが、競争で利益率は3%台にとどまる。地域価値創造事業と合わせて利益は物価並みに伸びる。ROEは5%台で資本コストとほぼ同じになる。e-メタンや水素の事業化は進むが、収益の主役にはならない。導管網は残り、配当は累進で増える。筆者の見立てでは、これが最も自然な10年だ。大きな成長も崩壊もなく、導管という堅い資産が、名目の利益を物価並みに保つ。株主は、配当と自社株買いで報われる。投資は減価償却の範囲にとどめ、借金は増やしすぎない。株主の取り分は安定する。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の230億円が10年後に約 281億円(物価で一律に増やすと約 254億円)。営業利益は +27億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 58億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約40%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- ガス事業(都市ガス):数量 2,970(都市ガス販売量(百万m3))× 価格 173(1m3あたりのガス事業売上(円/m3。託送収入を含む混合の単価))→ 売上 5,146 億円・営業利益 161 億円。数量 0.90 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率3.1%・償却は物価で増やさず按分(10年後 281億円)
- 電気事業:数量 4,201(電気販売量(百万kWh))× 価格 46(1kWhあたりの売上(円/kWh))→ 売上 1,921 億円・営業利益 63 億円。数量 1.45 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 3.3%
- LPG・地域価値創造ほか:数量 125(事業量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 21(指数1点あたりの売上(億円、名目))→ 売上 2,645 億円・営業利益 143 億円。数量 1.25 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 5.4%
倍率:事業の純利益 217 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)617 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 3,614 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ガスが縮み、価格上昇で補い、利益が物価並みに伸びるのが最も自然な道筋として最も高い確率を置いた。
やや悲観 24% ガス離れと価格競争で利益が細る 利益 112 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 532 円1,879 億円
家庭用のガス離れが想定より速く、販売量は2割近く減る。電気も中部電力との価格競争で薄利にとどまる。電力・ガスの両方で、顧客が値下げ提案に動きやすく、規制の変更で託送料金の水準も抑えられる。投資は続くが、投資の収益率は資本コストを下回る。還元は純利益を上回り続けられず、増配が止まる。優良さは薄れ、利益率は2%を割る。この筋書きでは、会社は自己資本を厚く抱えたまま稼げない状態に陥る。経営が還元と効率化に舵を切っても、需要の縮みと競争が追い越す。株主の取り分は、配当に頼る形に近づく。会社は還元を保とうとして、政策保有株の売却代金と借金に頼る場面が増える。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の230億円が10年後に約 281億円(物価で一律に増やすと約 264億円)。営業利益は +17億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 57億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約40%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- ガス事業(都市ガス):数量 2,706(都市ガス販売量(百万m3))× 価格 168(1m3あたりのガス事業売上(円/m3。託送収入を含む混合の単価))→ 売上 4,549 億円・営業利益 90 億円。数量 0.82 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率2%・償却は物価で増やさず按分(10年後 281億円)
- 電気事業:数量 3,476(電気販売量(百万kWh))× 価格 44(1kWhあたりの売上(円/kWh))→ 売上 1,542 億円・営業利益 28 億円。数量 1.20 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 1.8%
- LPG・地域価値創造ほか:数量 110(事業量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 20(指数1点あたりの売上(億円、名目))→ 売上 2,223 億円・営業利益 89 億円。数量 1.10 倍・価格 1.28 倍(名目)・営業利益率 4.0%
倍率:ガス離れと価格競争が重なる構造的な負けの入口。ROE3%前後で正当化PBRは低く、床は稼ぐ力(純利益139÷k7.25%=約1850億円)で、今の自己資本4775億円の0.40倍にあたる。導管網と厚い自己資本が下を支える。純有利子負債1,240億円を足したEV÷営業利益は約22倍と20倍を超えるが、利益が低い年で測ったためで、この筋書きの値は稼ぐ力と自己資本の価値で見ている。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.41 倍・時価総額 1,879 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:家庭用のガス離れと電力との価格競争が重なる展開は、薄利の会社には現実味が高く、やや厚くした。
悲観 10% 導管網の固定費が重荷になり、優良さを失う 利益 −33 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 125 円442 億円
電化と水素への代替が加速し、ガスの販売量は3割近く減る。導管網は固定費の塊で、顧客が減るほど維持費の重みが増す。電力・ガスの競争で値下げが続き、利益率はほぼゼロになる。投資した電気・海外の事業も資本コストに届かず、減損が出る。自己資本が削られ、配当は減配に追い込まれる。10年後の会社は、もう優良な公益企業とは見られていない。その結果、配当の水準が下がり、自己資本の減損で株価は帳簿価額を大きく割り込む。導管網の固定資産が、価値の源泉から重荷に転じる姿だ。地域のインフラとして残っても、投資の対象としては魅力を失う。還元は純利益を超えるが、政策保有株の売却代金と資産の入れ替えで賄う。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の230億円が10年後に約 281億円(物価で一律に増やすと約 277億円)。営業利益は +4億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 103億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約40%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- ガス事業(都市ガス):数量 2,376(都市ガス販売量(百万m3))× 価格 162(1m3あたりのガス事業売上(円/m3。託送収入を含む混合の単価))→ 売上 3,840 億円・営業利益 16 億円。数量 0.72 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率0.4%・償却は物価で増やさず按分(10年後 281億円)
- 電気事業:数量 2,897(電気販売量(百万kWh))× 価格 43(1kWhあたりの売上(円/kWh))→ 売上 1,236 億円・営業利益 6 億円。数量 1.00 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 0.5%
- LPG・地域価値創造ほか:数量 95.0(事業量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 19(指数1点あたりの売上(億円、名目))→ 売上 1,800 億円・営業利益 45 億円。数量 0.95 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 2.5%
倍率:構造的な負けで優良さを失う。償却を取得原価のまま置き、更新投資の借入の利払いを入れると純利益は赤字(-33億円)になるため、利益には倍率を当てず、自己資本の0.2倍で置く(従来の478億円と同水準)。導管網の固定費と利払いが重荷で、純有利子負債1,240億円を足したEVでも割安とは言えない。床は売れる導管・不動産と余り資産の価値。
確率:導管網の固定費が重荷になる構造的な負けは、10年では1割とみた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ガス事業(都市ガス)
愛知・岐阜・三重の都市ガスを家庭・業務・工業向けに供給し、導管網(託送)も担う中核事業。原料費調整制度でLNG価格を料金に反映する。
| 数量都市ガス販売量(百万m3) | 価格1m3あたりのガス事業売上(円/m3。託送収入を含む混合の単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,300 | 129 | 4,266 | 192 |
| 10 年後 中立 | 2,970 | 173 | 5,146 | 161 |
取り方:2026年3月期の都市ガス販売量約33億m3(家庭用約5.6億・業務用等約27.4億)と、ガスセグメントの売上4,266億円から逆算した単価。数量は実質で、家庭用の減少を工業用の横ばいが支える形で置く。単価は原料費調整でLNGの値段に数か月遅れて連動し、規制料金・託送料金は認可で1〜2年遅れて物価に追いつくので、中立は物価並みに上がるとする。セグメント利益192億円(利益率4.5%)には期ずれ差益が入っており、会社が言う実力利益よりかさ上げされている。
電気事業
家庭・法人向けの電力小売と、自社の発電・再エネ電源。顧客は71.6万件まで増えたが、利益はまだ薄い。
| 数量電気販売量(百万kWh) | 価格1kWhあたりの売上(円/kWh) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,897 | 34 | 989 | 20 |
| 10 年後 中立 | 4,201 | 46 | 1,921 | 63 |
取り方:2026年3月期の電気販売量28.97億kWhと、電気セグメントの売上989億円から逆算した単価。数量は顧客数の増加(前期末比2.5万件増)と法人向けの伸びで増える前提。単価は燃料費・市場価格に連動して物価並みに上がる。利益は2024年3月期まで2期連続で赤字だったが、2026年3月期に20億円の黒字になった。会社の目標は投資の収益率(ROIC)4%超。
LPG・地域価値創造ほか
LPガス(顧客64.6万件)、エンジニアリング、不動産、情報サービス、海外のエネルギー事業への出資などを束ねた領域。
| 数量事業量の指数(2026年3月期=100、実質) | 価格指数1点あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 16 | 1,579 | 89 |
| 10 年後 中立 | 125 | 21 | 2,645 | 143 |
取り方:LPG・その他エネルギー(売上968億円・利益31億円)と、その他(売上611億円・利益58億円)を合わせた売上1,579億円を、実質の事業量の指数(今=100)と名目の単価に分けた。LPGは量が横ばい、エンジニアリング・不動産・情報サービスは新規案件の分だけ量が増え、単価は物価で上がる。連結営業利益318億円との差17億円は調整額として別に置く。
リスクと懸念
期ずれ(原料費調整のラグ)
LNGの価格と為替の変動が料金に反映されるまでに数か月かかり、そのずれが利益を大きく動かす。2023年3月期と2026年3月期の好業績は差益が効いており、今期は差損に転じる見通しだ。会社の実力利益250億円より高い数字を基準にすると、倍率を誤る。決算ごとに市場の評価も動く。
電力会社との競争とガバナンス
中部電力や東京電力系のTOKAIとの競争で、電気・ガスの価格が下がりうる。2024年7月には、大口の都市ガスで中電ミライズと受注を調整していたとして業務改善命令を受けた。再発すれば信用を損ない、大口契約を失うおそれもある。電気・ガスの小売は、顧客が価格だけで乗り換えやすい。
家庭用ガス需要の構造的な減少
人口減少、オール電化、省エネ機器の普及で、家庭用のガスは年1〜2%ずつ縮む。導管網は固定費が重く、顧客が減るほど1件あたりの負担が増える。水素やe-メタンに置き換わる速度次第では、導管の価値そのものが揺らぐ。補助金や規制の動きも重なり、見通しが立てにくい。
還元が利益を超えている
2026年3月期の総還元は381億円で純利益の1.2倍だ。政策保有株の売却と借金で支えているが、売る株は有限で、金利が上がれば利払いも増える。計画どおり続けると、純有利子負債は今の1,240億円から大きく増える。売却益は一度きりで、続きはない。
電気・海外の投資が資本コストに届かない
戦略事業に3年で1,300億円を投じるが、会社が掲げる収益率は電気4%台、海外7%台だ。電気は2年前まで赤字だった。収益率が資本コストを下回ると、成長するほど価値が減る。投資の判断を誤ると、利益は伸びても価値は増えない。大型投資の失敗は、数年遅れて減損として出る。
工業用需要の景気連動
ガス販売量の8割超を業務用等が占め、中部の自動車・部品・素材の生産に左右される。トヨタ自動車などの生産が落ちると、販売量も数%単位で減る。景気後退と原料高が同時に来ると、利益が一気に消える。生産の落ち込みは、ガスの料金よりも数量に直接効く。
今後の分かれ目
- 期ずれが差益に戻り、LNG価格が下がる
- 今期の差損は一過性になり、利益は実力の250億円から300億円へ戻る。本質価値の評価は上向く。
- 電気事業の利益が50億円を超えて安定する
- 戦略事業が計画どおりコア事業に並ぶ軌道に乗り、中立から楽観側へ確率が動く。
- 大口都市ガスで、競争当局から再び処分を受ける
- 信用と大口契約を失い、悲観側の確率が上がる。
- 政策保有株の売却が計画より早く進み、自社株買いに回る
- 株数が減り、ROEが6%台に上がる。倍率の上限が上がり、価値は上向く。
- e-メタン・水素の事業化が早まり、導管網の用途が広がる
- 10年後の利益が安定し、構造的な負けの確率が下がる。
- 家庭用のガス販売量が年2%を超えて減り続ける
- 導管の固定費の重みが増し、やや悲観・悲観の確率が上がる。
見ておくもの
- 期ずれ差損益の推移と、通期の経常利益(実力250億円との比較)
- 電気の顧客数(71.6万件)と電気事業の利益(20億円)
- ガス販売量(家庭用・業務用等)と、工業用の需要(自動車・素材の生産)
- 自社株買いの規模と政策保有株の売却進捗(2027年度末に3分の1)
- 純有利子負債と自己資本(目安4,000億円)、D/Eレシオ(上限0.8倍)
- 中部電力・TOKAIとの価格競争、公取委・経産省の動き
- e-メタン(2030年度に1%以上)と再エネ50万kWの進捗
倍率と資本コストの決め方
ガス・電気・LPG等の数量に名目の価格指数を掛けて利益を積み、倍率は利益ベースの正当化PER((1−g÷RONIC)÷(k−g))の上限の8〜8.5割に置いた。kは基本7.5%に、循環+0.25%・導管の規制−0.5%・寿命+0.25%を入れた7.5%。ROEは5%前後でkを下回るので上限は1÷k=13.3倍で、その8割(10.7倍)、楽観のみ8.5割。営業利益率が4%台と薄く、期ずれで利益が振れ、ROEが資本コスト並みという事業の実力による。今のPER13倍・PBR0.88倍は期ずれ差益などで押し上げられた純利益314億円で測っており、実力利益に直すと約18倍で、この点を割り引いて見た。悲観は稼ぐ力(純利益÷k)から出した。今の株価や過去・同業の倍率に寄せる操作はしていない。新リース会計基準で営業利益や純有利子負債の形が変わるが、数字は今と同じ形で置いた。
(2026-10-19 見直し)政策保有株・不動産の含み益(税後)617億円を余り資産として足した(戻り方1.0)。利益で測る倍率には入らない価値を漏らさないため。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。