結論
東京電力ホールディングスは関東圏を基盤とする国内最大の旧一般電気事業者で、小売(エナジーパートナー)・送配電(パワーグリッド)・再エネ・火力(JERA持分)で稼ぐ。2011年の福島第一原発事故後、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(機構)が1兆円を出資し、A種・B種優先株をすべて持つ。機構は普通株を持たないが、議決権付きのA種優先株で議決権の過半を握る。
この優先株は普通株に換えられる。定款では、受け取る普通株の数は払込金額1兆円を取得価額(時価の90%、上限と下限あり)で割った数で、今の株価では上限に張り付き、全部換えると普通株は今の約16億株に約33億株が加わる。国は機構の東電株を売って除染費用4兆円を回収する計画で、転換して売るのが前提である。だから会社全体の価値のうち、今の普通株主に属するのは約32.5%しかない。業績が悪く株価が下がるほど換える株数が増え、取り分はさらに細る。
本業は、柏崎刈羽6号機の再稼働(2026年3月営業運転)とデータセンターの接続申込の急増(2025年度末で約1,500万kW)で良くなる。ただ、廃炉・賠償の見積り増による特別損失(2026年3月期はデブリ取り出し準備で9,138億円)と特別負担金が続き、借り換えで利払いは10年で年1,400億円ほど増える。中立の10年後の純利益は2,800億円前後、ROEは5%台で資本コスト8.5%(基本7.5%に、送配電の独占−0.5%と借金の重さ+1%)に届かない。配当は2023年3月期から無配が続き、2027年3月期も無配予定で、復配の時期は示されていない。
会社全体をPER8.8倍(中立。1÷k=12.5倍の7割)で評価し、今の株主の取り分に直すと本質価値は今の時価総額を4割ほど下回り、割高。市場は資本提携・非公開化や総合特別事業計画の利益目標の達成を先取りしている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「この会社の利益のうち、今の普通株主のものはどれだけか」を問う。関東の送配電独占は再現できない資産で、データセンター需要が乗れば利益は厚くなる。だが利益は三段階で削られる。第一に、福島の廃炉・賠償の見積り増と特別負担金が、ならして年1,000億円を超える規模で利益から出ていく。第二に、5.7兆円の純有利子負債が借り換えで高い金利に替わる。第三に、残った利益と価値の約3分の2は、機構が優先株を普通株に換えた時点で国のものになる。
10年の中立で会社全体の純利益が2,800億円前後、ROEは5%台と資本コストに届かず、再投資は価値をあまり増やさない。PER8.8倍(中立)で全体を評価しても、今の株主の取り分は7,900億円程度で、今の時価総額との差はわずかか、割り引けば下回る。悲観では全体の価値が優先株の取り分に食われ、普通株にはほとんど残らない。
安全域は無く、予測できない要素(廃炉の費用、国の判断)も大きい。国の支援で会社がつぶれにくいことは、普通株の価値を守ることとは別である。
何で稼ぐ会社か
東京電力ホールディングスは持株会社で、事業は4つの子会社・セグメントに分かれる。売上の8割弱を占める中核は「エナジーパートナー(EP)」で、関東圏の家庭・企業に電気・ガスを販売する小売事業。価格は燃料費調整制度で輸入燃料価格・為替をほぼそのまま反映するが、低圧の規制料金には調整の上限が残る。「パワーグリッド(PG)」は関東圏の送電線・変電所網を独占的に運用し、国が認可するレートベースに基づく収益を得る規制事業で、データセンター・半導体工場からの接続申込が急増している。「リニューアブルパワー(RP)」は太陽光・水力・地熱等の再生可能エネルギー発電を担う小規模な成長セグメント。「フュエル&パワー(FP)」は火力発電事業で、中部電力と折半出資するJERAへの持分法投資が中心となり、売上自体はごく小さいが持分法損益が経常利益に効く。発電は柏崎刈羽原子力(2026年2月に6号機が事故後初めて再稼働、7号機は手続きが先行き)・JERA経由の火力・水力・再エネを組み合わせ、原発の再稼働が進むほど火力の燃料費が浮く構造は他の大手電力と同じだが、東電固有の点として、福島第一原発の廃炉・汚染水・デブリ取り出し費用(年2,500億円規模)が今後数十年続き、賠償費用は電気料金に含まれる一般負担金と、機構への特別負担金(2025年度400億円)で回収する仕組みが連結損益に組み込まれている。
優良さと弱いところ
堀の核は送配電の地域独占と、関東圏という国内最大の需要基盤にある。送配電事業は価格決定力が規制の範囲に限られる代わりに収益が安定しており、データセンター需要の取り込みでは投資回収の確度が高い。一方、小売事業の価格決定力は燃料費調整の範囲にとどまり、卸電力市場や国際燃料市況には影響力を持たない。東電固有の最大の弱点は資本構造である。原子力損害賠償・廃炉等支援機構はA種・B種優先株(払込金額1兆円)をすべて持ち、議決権付きのA種で議決権の過半を握る。優先株は普通株に換えられ、今の株価なら普通株は約3倍に増えるため、議決権・資本配分の実権は国・経産省の意向に強く制約される。増配や自社株買いを自由に進められる立場ではなく、配当は2023年3月期から無配が続く。自己資本比率は22%、純有利子負債は時価総額の7倍を超え、大手電力9社の中でも際立って重い財務構造が残る。2026年に柏崎刈羽6号機が再稼働したものの、その直後の4〜6月期に営業利益が前年比89%減という結果が示すように、原発が動いても業績はすぐには戻らない。資本効率はROEが長年一桁台で推移し、資本コストを安定的に上回る水準には届いていない。経営の質については、2026年1月の第五次総合特別事業計画で外部資本の受け入れ・非公開化まで選択肢を広げた提携戦略を掲げ、資本政策の柔軟性を取り戻そうとする姿勢自体は評価できるが、実現までの不確実性は大きい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界は燃料費調整という自動調整の仕組みを持つため、短期の燃料高・円安は調整ラグの間だけ振れるのが通常だが、2022年度は9社がそろって赤字に陥った実例がある。東電は2024年度以降、柏崎刈羽6号機の再稼働を軸に回復を目指す段階にあり、循環的には他の大手電力より出遅れている。7号機は特定重大事故等対処施設の設置期限に間に合わず先送りとなり、再稼働基数の積み上げペースは不確実である。構造的な変化としては、生成AI・クラウド拡大によるデータセンター・半導体工場の新規需要が最大の追い風で、東京電力パワーグリッドへの接続申込容量は2025年度末で約1,500万kWと1年で2割増え、送電網増強に2027年度までに4,700億円、千葉県印西エリアに2,000億円超を追加投資する計画がある。データセンターが首都圏に集中しやすいことを踏まえると、この需要の取り込みは東電にとって構造的に有利な位置づけにある。一方で、人口減少による家庭用需要の縮小、新電力との低圧シェア争い、脱炭素投資の負担は他社と共通の逆風として存在する。東電固有の構造的な論点は、国(機構)による実質的な支配が続く限り、資本効率・株主還元の自由度が制約され続けることと、福島第一の廃炉・賠償という終わりの見えない負担が、他の8社にはない重荷として連結損益に残り続けることである。
資本政策と M&A
配当は2023年3月期から無配で、2027年3月期も無配予定。復配の時期は会社・総合特別事業計画とも示していない。資本政策の中心は、福島の資金(年約5,000億円規模)を確保しながら、資産売却(原則3年で約2,000億円)と外部資本の受け入れで成長投資(グループで10年11兆円)を賄うことにある。
最大の論点は機構の優先株である。A種16億株・B種3.4億株(払込金額は計1兆円)は普通株を対価とする取得請求権を持ち、交付株数は1兆円÷取得価額(時価の90%、上限・下限あり)。今の株価なら上限に張り付き、普通株は約33億株増えて今の株主の取り分は約32.5%になる。国は機構の東電株を売って除染費用4兆円を回収する計画で、転換と売り出しは時期の問題である。売り出しは需給の重しにもなる。
2026年7月に資本提携先を選ぶ特別委員会が設置され、非公開化や中間持株会社への出資も選択肢にある。ただTOBが起きても、価格は優先株の転換を含めた全体の価値を株数で割る形になり、今の株主が全体の価値をそのまま受け取るわけではない。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の1,828億円が10年後に約 2,210億円。更新投資は建築費の上昇で膨らみ、足りない分は借入になって利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。送配電などの規制事業の償却と利払いは託送料金で売上に戻るので、この数字は規制外の分だけだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
柏崎刈羽6号機の再稼働は、事故から15年を経てようやく実現した構造的な転換点である。7号機も地元了解を得ており、設計及び工事計画の認可手続きが進めば、2基フル稼働で火力の燃料費が大きく浮き、燃料費調整のラグに悩まされる場面も減っていく。関東圏はデータセンターの立地が最も集中しやすいエリアであり、東京電力パワーグリッドへの接続申込容量は1年で2割増というペースで積み上がっている。送電網増強に2027年度までに4,700億円、印西エリアに2,000億円超を投じる計画は、この需要を取りに行く姿勢の表れである。2026年1月に認定された第五次総合特別事業計画は、2034年度までに原発・再エネに6兆円、JERAを含めグループで10年11兆円という大規模な成長投資を見込み、外部資本の受け入れを柱に据えた。これは単なる延命策ではなく、国の支配から離れて自律的な成長を目指す転換の始まりと見ることができる。2026年7月に設置された特別委員会による資本提携先選定が進めば、複数の国内外コンソーシアムとの提携によって成長投資の資金制約が緩み、非公開化を含む再編が実現すれば一般株主にとってプレミアムを伴う退出機会にもなりうる。自己資本は危機後に積み上がりを続け、PBR0.24倍という今の値付けは、再稼働の進展と資本提携の具体化のどちらも市場がまだ十分に織り込んでいない結果であり、両方が進めば評価は大きく見直される余地がある。
慎重な見方
柏崎刈羽6号機が再稼働した直後の2026年4〜6月期に営業利益が前年比89%減に落ち込んだという事実は、原発が動いても業績がすぐには戻らないという構造的な弱さを如実に示している。7号機は特定重大事故等対処施設の期限に間に合わず先送りとなり、その後の認可手続きも長引く可能性が高く、2基フル稼働の実現時期は見通しにくい。資本提携・非公開化の検討も、2026年2月の募集開始から半年以上が経ち、国内外のコンソーシアムとの交渉が難航しているとの報道もあり、実現可能性・条件ともに不確実である。実現したとしても、国(機構)が議決権の過半を握る構造の下での交渉であり、一般株主の利益よりも国の出資回収・原子力政策上の都合が優先される可能性が常にある。自己資本比率22%・純有利子負債が時価総額の7倍超という財務構造は、金利上昇局面で利払い負担が重くのしかかる脆さとして残り、10年で利払いは年1,400億円規模増える見込みである。福島第一の廃炉・賠償費用は21.5兆円規模という見積もりそのものが過去に何度も上方修正されてきた経緯があり、デブリ取り出しの難航が続けば、さらなる負担増が連結損益を圧迫する可能性がある。配当は2012年以来再開されておらず、株主還元という観点では他の大手電力に劣後する状態が当面続く。
そして最も重いのは、機構が持つ優先株1兆円である。普通株に換えれば今の株主の取り分は約3分の1になり、国は株を売って除染費用4兆円を回収する計画を持つ。本業が良くなっても、その価値の3分の2は国のものになる。
どちらに重みを置いたか
本業の回復(原発・データセンター)は認めるが、慎重な見方が勝った。決め手は優先株で、機構が1兆円を普通株に換えれば今の株主の取り分は約32.5%、株価が下がる筋書きほど細る。福島の負担と利払い増を引くと中立のROEは資本コストに届かない。確率は前のまま中立〜やや悲観に重心を置き、倍率は全体で上限の7割(中立PER8.8倍)としたうえで希薄化を引いた。その結果、楽観でも10年の年率は13%程度、中立では今の時価総額を下回り、総合は割高。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 675 円1.08 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 22 円352 億円)。 今の値に割り戻すと 313 円5,016 億円、今との差 −37.2%、 期待の年率 +3.4%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,829 円2.93 兆円 | 81 円1,293 億円 | +283.4% | +14.4% | 191 円3,060 億円 |
| やや楽観 | 21% | 1,071 円1.72 兆円 | 41 円650 億円 | +123.1% | +8.4% | 233 円3,741 億円 |
| 中立 | 32% | 685 円1.10 兆円 | 17 円270 億円 | +40.9% | +3.5% | 225 円3,599 億円 |
| やや悲観 | 25% | 182 円2,921 億円 | 0 円0 億円 | −63.4% | −9.6% | 46 円730 億円 |
| 悲観 | 12% | 17 円270 億円 | 0 円0 億円 | −96.6% | −28.7% | 2 円32 億円 |
| 加重平均 | 100% | 675 円1.08 兆円 | 22 円352 億円 | +39.8% | +3.4% | 697 円1.12 兆円 |
今の株価時価総額 498 円7,983 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 原発2基と後継機構想、データセンター電源として定着 利益 7,170 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 1,829 円2.93 兆円
柏崎刈羽6・7号機が大きなトラブルなく10年間運転を続け、将来の後継機構想も議論に乗る段階まで進む。関東エリアがデータセンターの最大の立地集積地として確立し、東京電力パワーグリッドへの大口契約が相次ぎ、送電網増強投資の回収が進む。資本提携が完全に実現し、機構が優先株を普通株に換えて市場で売り、国の出資の回収が進んで一般の株式会社としての資本配分の自由度を取り戻し、復配・自社株買いを含む株主還元が本格化する。福島第一の廃炉も計画に沿って進み、追加の大きな費用超過は起きない10年になる。
(名目の前提)販売電力量は実質(関東の人口はほぼ横ばい、データセンター需要が上積み)、電気の単価は燃料費調整と認可で物価に遅れて追いつき、託送料金はレベニューキャップの期替わりで遅れて物価に追いつく。純利益は、営業利益に2026年3月期並みの営業外(JERAの持分法利益など約800億円)とJERAの伸び750億円を足し、借り換えで10年後に増える利払い1,419億円と、福島の負担(特別負担金と、廃炉・賠償の見積り増による特別損失をならした値)700億円を引いて、税率25%。時価総額は、会社全体の株主価値69,122億円(優先株を普通株に換えた後の全体)で置き、機構の優先株の取り分を引いた今の普通株主の分(約22,444億円)は holder_share で build が掛ける。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,828億円が10年後に約 2,210億円(物価で一律に増やすと約 1,937億円)。営業利益は +273億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。送配電などの規制事業(償却の約53%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- エナジーパートナー(小売):数量 2,560(販売電力量(億kWh、小売+他社向け))× 価格 31(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 78,976 億円・営業利益 6,591 億円。販売量+25%(DCの集積)・単価1.36倍・利益率8.3%・償却は物価で増やさず按分(10年後 2,210億円)
- パワーグリッド(送配電):数量 4,050(エリア送配電量(億kWh、他社の供給分も含む流通量、推定))× 価格 5.51(託送料金単価(円/kWh、推定))→ 売上 22,316 億円・営業利益 2,901 億円。数量1.35倍・価格1.35倍(名目)・営業利益率20.0%
- リニューアブルパワー・フュエル&パワー他:数量 170(再エネ発電出力等(万kW、推定))× 価格 36(1kWあたり年間収入(万円、推定))→ 売上 6,193 億円・営業利益 743 億円。数量1.70倍・価格1.36倍(名目)・営業利益率14.0%
倍率:事業の純利益 7,170 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.59 倍、時価総額 90,270 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2基の長期安定運転、データセンター需要の大きな上振れ、福島の負担の早い縮小、国の出資回収の順調な進行がすべて10年続く必要があり1割。
やや楽観 21% 2基稼働とデータセンター需要が着実に積み上がる 利益 4,495 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,071 円1.72 兆円
柏崎刈羽6・7号機の運転が10年間おおむね安定して続くが、後継機構想はまだ具体化しない。データセンター・半導体の新規需要は関東エリアで着実に積み上がり、送電網増強投資の回収も計画どおりに進む。資本提携は一部実現し、国(機構)の保有比率はわずかに下がるが、議決権の過半は依然として国にある。復配は小規模にとどまるが、株主還元の方針が徐々に明確になっていく10年になる。
(名目の前提)販売電力量は実質(関東の人口はほぼ横ばい、データセンター需要が上積み)、電気の単価は燃料費調整と認可で物価に遅れて追いつき、託送料金はレベニューキャップの期替わりで遅れて物価に追いつく。純利益は、営業利益に2026年3月期並みの営業外(JERAの持分法利益など約800億円)とJERAの伸び600億円を足し、借り換えで10年後に増える利払い1,419億円と、福島の負担(特別負担金と、廃炉・賠償の見積り増による特別損失をならした値)1,000億円を引いて、税率25%。時価総額は、会社全体の株主価値40,740億円(優先株を普通株に換えた後の全体)で置き、機構の優先株の取り分を引いた今の普通株主の分(約13,228億円)は holder_share で build が掛ける。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,828億円が10年後に約 2,210億円(物価で一律に増やすと約 1,977億円)。営業利益は +233億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。送配電などの規制事業(償却の約53%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- エナジーパートナー(小売):数量 2,345(販売電力量(億kWh、小売+他社向け))× 価格 30(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 71,265 億円・営業利益 4,509 億円。販売量+10%・単価1.32倍・利益率6.3%・償却は物価で増やさず按分(10年後 2,210億円)
- パワーグリッド(送配電):数量 3,750(エリア送配電量(億kWh、他社の供給分も含む流通量、推定))× 価格 5.40(託送料金単価(円/kWh、推定))→ 売上 20,250 億円・営業利益 2,228 億円。数量1.22倍・価格1.33倍(名目)・営業利益率17.0%
- リニューアブルパワー・フュエル&パワー他:数量 150(再エネ発電出力等(万kW、推定))× 価格 36(1kWあたり年間収入(万円、推定))→ 売上 5,385 億円・営業利益 377 億円。数量1.35倍・価格1.34倍(名目)・営業利益率9.0%
倍率:事業の純利益 4,495 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 52,861 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2基の運転継続とデータセンター需要の着実な取り込みが進み、福島の負担が見積りの範囲に収まる道筋で約2割。
中立 32% 規制事業の安定と原発稼働で成熟インフラに近づくが国の支配は残る 利益 2,875 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 685 円1.10 兆円
柏崎刈羽6・7号機の運転が10年間大きなトラブルなく続き、データセンター・半導体の新規需要が家庭用需要の緩やかな減少を上回る。送配電事業は規制収益で安定し、再エネ・フュエル&パワー事業も緩やかに成長する。資本提携の交渉は部分的な出資受け入れにとどまり、国(機構)は議決権の過半を維持したまま10年を終える。福島第一の廃炉・賠償の負担は年間数千億円規模で続き、復配は小規模にとどまる。東電は「国の会社」という性格を残したまま、データセンター需要という追い風だけを取り込む10年になる。
(名目の前提)販売電力量は実質(関東の人口はほぼ横ばい、データセンター需要が上積み)、電気の単価は燃料費調整と認可で物価に遅れて追いつき、託送料金はレベニューキャップの期替わりで遅れて物価に追いつく。純利益は、営業利益に2026年3月期並みの営業外(JERAの持分法利益など約800億円)とJERAの伸び450億円を足し、借り換えで10年後に増える利払い1,419億円と、福島の負担(特別負担金と、廃炉・賠償の見積り増による特別損失をならした値)1,200億円を引いて、税率25%。時価総額は、会社全体の株主価値24,438億円(優先株を普通株に換えた後の全体)で置き、機構の優先株の取り分を引いた今の普通株主の分(約7,935億円)は holder_share で build が掛ける。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,828億円が10年後に約 2,210億円(物価で一律に増やすと約 1,971億円)。営業利益は +239億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 97億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約53%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- エナジーパートナー(小売):数量 2,300(販売電力量(億kWh、小売+他社向け))× 価格 30(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 69,897 億円・営業利益 3,175 億円。販売量+15%(人口ほぼ横ばいをDC・半導体需要が上積み)・単価1.30倍・利益率4.5%・償却は物価で増やさず按分(10年後 2,210億円)
- パワーグリッド(送配電):数量 3,600(エリア送配電量(億kWh、他社の供給分も含む流通量、推定))× 価格 5.47(託送料金単価(円/kWh、推定))→ 売上 19,692 億円・営業利益 1,969 億円。数量1.30倍・価格1.30倍(名目)・営業利益率18.0%
- リニューアブルパワー・フュエル&パワー他:数量 140(再エネ発電出力等(万kW、推定))× 価格 36(1kWあたり年間収入(万円、推定))→ 売上 5,026 億円・営業利益 251 億円。数量1.50倍・価格1.34倍(名目)・営業利益率7.0%
倍率:事業の純利益 2,875 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 33,810 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:原発2基とデータセンター需要で本業は良くなるが、福島の負担・利払い増・国の支配が続き、ROEは資本コストに届かない道筋が最も自然として32%。
やや悲観 25% データセンター需要が他エリアに流れ競争も激化 利益 765 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 182 円2,921 億円
データセンター・半導体の新規需要は期待したほど関東エリアに向かわず、系統接続の順番待ちや再エネ賦課金・環境規制の強化もあって新規大口契約の積み上がりが鈍る。新電力・自家発電へのシェア流出が続き、低圧分野のシェアはさらに低下する。柏崎刈羽7号機の稼働は実現するが大きな上振れにはならず、燃料費の低下効果も限定的にとどまる。資本提携の交渉は長期化し、国(機構)の支配構造もほとんど変わらない。福島第一の廃炉費用が見積りを超えて膨らみ、復配はさらに先送りされる10年になる。
(名目の前提)販売電力量は実質(関東の人口はほぼ横ばい、データセンター需要が上積み)、電気の単価は燃料費調整と認可で物価に遅れて追いつき、託送料金はレベニューキャップの期替わりで遅れて物価に追いつく。純利益は、営業利益に2026年3月期並みの営業外(JERAの持分法利益など約800億円)とJERAの伸び300億円を足し、借り換えで10年後に増える利払い1,419億円と、福島の負担(特別負担金と、廃炉・賠償の見積り増による特別損失をならした値)1,500億円を引いて、税率25%。時価総額は、会社全体の株主価値10,775億円(優先株を普通株に換えた後の全体)で置き、機構の優先株の取り分を引いた今の普通株主の分(約3,499億円)は holder_share で build が掛ける。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,828億円が10年後に約 2,210億円(物価で一律に増やすと約 2,078億円)。営業利益は +132億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 273億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約53%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- エナジーパートナー(小売):数量 2,132(販売電力量(億kWh、小売+他社向け))× 価格 29(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 61,892 億円・営業利益 1,679 億円。販売量±0%(新電力にシェア流出)・単価1.28倍・償却は物価で増やさず按分(10年後 2,210億円)
- パワーグリッド(送配電):数量 3,300(エリア送配電量(億kWh、他社の供給分も含む流通量、推定))× 価格 5.23(託送料金単価(円/kWh、推定))→ 売上 17,259 億円・営業利益 1,381 億円。数量1.15倍・価格1.28倍(名目)・営業利益率14.0%
- リニューアブルパワー・フュエル&パワー他:数量 120(再エネ発電出力等(万kW、推定))× 価格 35(1kWあたり年間収入(万円、推定))→ 売上 4,180 億円・営業利益 125 億円。数量1.20倍・価格1.30倍(名目)・営業利益率5.0%
倍率:利益が谷に近い(ROE 1.9%)。ROE が k 以下なので PER の上限は 1÷k の 11.76倍で、悲観側の価値は稼ぐ力(純利益862億円÷k 8.5%=10,775億円)まで。純現金や売れる資産の床の内訳は無いので、資産に寄せた自己資本×PBR 0.40倍(13,558億円)は使わず、上限の11.76倍に置いた。この水準では取得価額(時価の90%)が上限に張り付き、優先株1兆円は普通株約33.3億株に替わるので、今の普通株主の取り分は約32.5%。ここに書くPER 11.76倍と時価総額 10,775億円は会社全体の値で、今の株主の取り分(holder_share 0.3247)を build が掛けて、今の普通株主の価値は約 3,499億円。純有利子負債5.7兆円を今の値で足したEV÷営業利益は23倍で、借金の重さは利益の倍率だけでは見えないので、EVでも見た。
確率:データセンター需要が他エリアに流れる、新電力にシェアを奪われる、廃炉費用が膨らむ、のどれかが10年のうちに起きる確率は高く25%と厚めに置いた。
悲観 12% 原発の長期停止と資本提携不成立で国の会社のまま優良さを失う 利益 −4,172 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 17 円270 億円
国内のどこかで原子力事故や重大なトラブルが起き、安全審査が全国的に厳格化され、柏崎刈羽も複数基が長期間停止する。火力への依存が再び強まり、燃料費調整の恩恵も薄れる。データセンター・半導体の新規需要は競合エリアに奪われ、新電力・自家発電へのシェア流出も止まらない。資本提携先選定は不成立に終わり、国(機構)は議決権付きの優先株を持ち続けて議決権の過半を握り、資本配分の自由度は回復しない。福島第一の廃炉・賠償費用の見積り(21.5兆円)がさらに上方修正され、追加の負担金が連結損益を圧迫する。この10年で東電は「原発事故から再生した優良電力」という評価を得られず、国に支えられたままの脆い成熟企業として扱われるようになる。
(名目の前提)販売電力量は実質(関東の人口はほぼ横ばい、データセンター需要が上積み)、電気の単価は燃料費調整と認可で物価に遅れて追いつき、託送料金はレベニューキャップの期替わりで遅れて物価に追いつく。純利益は、営業利益に2026年3月期並みの営業外(JERAの持分法利益など約800億円)とJERAの伸び0億円を足し、借り換えで10年後に増える利払い1,419億円と、福島の負担(特別負担金と、廃炉・賠償の見積り増による特別損失をならした値)3,000億円を引いて、赤字のため税はかからない。時価総額は、会社全体の株主価値6,615億円(優先株を普通株に換えた後の全体)で置き、機構の優先株の取り分を引いた今の普通株主の分(約303億円)は holder_share で build が掛ける。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,828億円が10年後に約 2,210億円(物価で一律に増やすと約 2,157億円)。営業利益は +53億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 648億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約53%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- エナジーパートナー(小売):数量 1,919(販売電力量(億kWh、小売+他社向け))× 価格 28(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 54,404 億円・営業利益 −1,035 億円。販売量−10%・原発の長期停止で利益率-1.9%・償却は物価で増やさず按分(10年後 2,210億円)
- パワーグリッド(送配電):数量 3,000(エリア送配電量(億kWh、他社の供給分も含む流通量、推定))× 価格 4.90(託送料金単価(円/kWh、推定))→ 売上 14,700 億円・営業利益 1,029 億円。数量1.00倍・価格1.20倍(名目)・営業利益率10.0%
- リニューアブルパワー・フュエル&パワー他:数量 90.0(再エネ発電出力等(万kW、推定))× 価格 32(1kWあたり年間収入(万円、推定))→ 売上 2,894 億円・営業利益 0 億円。数量0.90倍・価格1.20倍(名目)・利益率ほぼゼロ
倍率:赤字に近く(ROE -19.9%)、減損で自己資本が18,900億円(優先株の払込1兆円を含む)まで減った後を資産の床で測る。全体PBR 0.35倍を掛けて全体の価値6,615億円。全体の価値が機構の取り分(約1.11兆円)とほぼ並ぶまで下がると、取得価額は下限(上限の10分の1)まで下がり得て、優先株は残余財産でも普通株に先立つため、今の普通株主に残るのは全体の5%弱、ここに書くPBR 0.35倍と時価総額 6,615億円は会社全体の値で、取り分(holder_share 0.0458)を build が掛けて、今の普通株主の価値は約 303億円。営業利益が赤字に近くEV÷営業利益は意味を持たない。
確率:原発の長期停止と福島の費用の再増額が重なり、赤字が続く筋。事故処理費用の見積りはこれまで何度も増えてきたため12%と厚めに置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エナジーパートナー(小売)
関東圏の家庭・企業向けに電気・ガスを販売する中核事業。燃料費調整制度で燃料価格・為替をほぼそのまま価格に反映する。
| 数量販売電力量(億kWh、小売+他社向け) | 価格平均単価(円/kWh、燃料費調整後) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,132 | 23 | 48,350 | 2,300 |
| 10 年後 中立 | 2,300 | 30 | 69,897 | 3,175 |
取り方:2026年3月期の販売電力量2,132億kWh(小売1,719億kWh+他社向け413億kWh、前年比-6.7%)でセグメント売上48,350億円から単価を逆算。営業利益はエナジーパートナーの経常利益2,549億円から金融収支を除いた推定値。数量は実質で、関東の人口はほぼ横ばいだがデータセンター・半導体の新しい需要を上積みする。単価は燃料費調整で燃料の値段に数か月遅れて連動し、規制料金(低圧の一部)は認可で1〜2年遅れる。
パワーグリッド(送配電)
関東圏の送電線・変電所網を独占的に運用し、国が認可するレートベースに基づく公正収益を得る規制事業。データセンター接続申込が急増している。
| 数量エリア送配電量(億kWh、他社の供給分も含む流通量、推定) | 価格託送料金単価(円/kWh、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 4.09 | 12,256 | 1,029 |
| 10 年後 中立 | 3,600 | 5.47 | 19,692 | 1,969 |
取り方:セグメント売上12,256億円を、関東エリアの送配電流通量の推定3,000億kWh(関西電力の2,000億kWhより人口・需要規模が大きいことを踏まえた推定)で割った託送料金単価。営業利益は会社発表のパワーグリッド営業利益1,028.9億円(2026年3月期)を使用。託送料金はレベニューキャップ制度で数年ごとに国が収入の上限を決めるため、物価と設備投資の反映に2〜3年遅れる。2025年度は需給調整費用の減少で利益率が一時的に押し上げられており、中立の将来はこの特殊要因を除いたうえで、データセンター接続による投資回収の進展を見る。
リニューアブルパワー・フュエル&パワー他
太陽光・水力・地熱等の再生可能エネルギー発電(リニューアブルパワー)と、JERAへの持分法投資を中心とする火力事業(フュエル&パワー)、持株会社機能の合算。
| 数量再エネ発電出力等(万kW、推定) | 価格1kWあたり年間収入(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 27 | 2,679 | 48 |
| 10 年後 中立 | 140 | 36 | 5,026 | 251 |
取り方:リニューアブルパワー(515億円)・フュエル&パワー(37億円)・ホールディングス(2,127億円)の売上合計2,679億円を、推定の再エネ発電出力100万kWで割った実効単価(持株会社機能分も便宜上ここに含めた)。営業利益は全社営業利益3,377億円からエナジーパートナー(2,300億円)・パワーグリッド(1,029億円)を差し引いた残差。JERAの持分法損益は経常利益段階で別途反映する。再エネは今後の投資拡大で数量が伸びる前提。
リスクと懸念
柏崎刈羽の再稼働ペースと7号機の遅延
6号機は2026年2月に事故後初めて再稼働したが、7号機は特定重大事故等対処施設の設置期限に間に合わず先送りとなった。再稼働直後の2026年4〜6月期も営業利益が前年比89%減に落ち込み、原発が動いても業績がすぐに戻るわけではない構造的な弱さが残る。
機構の優先株の転換による希薄化と、国の支配
機構はA種・B種優先株(払込金額1兆円)を持ち、普通株への取得請求権がある。交付株数は1兆円÷取得価額(時価の90%、上限・下限あり)で、今の株価なら普通株は約33億株増え、今の株主の取り分は約32.5%になる。株価が下がるほど交付株数は増える。国は売却益で除染費用4兆円を回収する計画で、売り出しは需給の重しにもなる。議決権の過半も機構にあり、還元・資本配分は国の意向に左右される。
福島第一の廃炉・賠償費用の負担と見積りの上方修正リスク
事故処理費用の見積りは21.5兆円(廃炉8兆円・賠償7.9兆円・除染4兆円・中間貯蔵1.6兆円)で、これまで何度も増えてきた。2026年3月期はデブリ取り出し準備で9,138億円の特別損失を出し、最終赤字になった。特別負担金(基本1,000億円、2025年度400億円)も毎年利益から出る。中立でも、ならして年1,200億円の負担を純利益から引いた。
財務の脆さ
自己資本比率は22%、純有利子負債は5.7兆円で時価総額の7倍を超え、大手電力9社で最も重い。借り換えで利払いは10年で年1,400億円ほど増え、中立の純利益を大きく削る。配当は2023年3月期から無配で、2027年3月期も無配予定。復配の時期は示されていない。
燃料費調整のラグと規制料金の上限
輸入燃料価格・円安が急騰すると、低圧の規制料金に残る調整上限のために費用の増加が価格に追いつかず、2022年度のように一時的な赤字に陥る。原発再稼働が進んでも火力依存度が残る限り、この振れは消えない。
データセンター需要の取り込み競争
東京電力パワーグリッドへの接続申込容量は急増しているが、中部電力・関西電力や新電力も同じ需要を取りに動いており、系統接続の順番待ちや立地競争で想定したほどの上積みを得られない可能性がある。需要が他エリアに流れれば、送電網増強投資(2027年度までに4,700億円)の回収計画も見直しが必要になる。
新電力との低圧シェア争いと人口減少
関東圏でも新電力・自家発電へのシェア流出は続いており、家庭用需要は人口減少で構造的に縮小する。データセンター需要の上積みがこの縮小を上回り続けられるかが10年の数量見通しの分かれ目になる。福島第一の事故で失った顧客基盤・信頼の回復が他の大手電力より遅れている面もある。
今後の分かれ目
- 柏崎刈羽7号機の設計及び工事計画の認可が下り再稼働する
- 2基フル稼働で火力の燃料費がさらに浮き、10年の筋書きも上方に見直す必要が出る。
- 資本提携先の選定が実を結び、外部資本の受け入れが具体化する
- 成長投資の資金制約が緩み、国の保有比率が下がれば資本配分の自由度が広がり、本質価値の評価が上向く。
- 資本提携の交渉が不成立に終わり、非公開化の選択肢も立ち消える
- 国の支配構造がそのまま続き、資本効率の改善が遅れて10年の中立・悲観の確率が入れ替わる可能性がある。
- 福島第一の廃炉・賠償費用の見積りが再び上方修正される
- 電気料金の負担金・特別負担金が増え、連結損益への恒常的な圧迫が強まり、悲観の筋書きに現実味が増す。
- 2022年度級の燃料・卸電力価格の急騰と円安が再来する
- 燃料費調整のラグの間、一時的な赤字に陥る可能性があり、10年の悲観の筋書きに現実味が増す。
- データセンター・半導体の新規大口契約が関東エリアで相次ぐ
- 送配電事業の投資回収が前倒しで進み、10年の数量見通しが上方に修正される。
- 機構が優先株を普通株に換え、市場で売り出し始める
- 今の株主の取り分は約3分の1に固まり、売り出しの間は需給が重くなる。一方で国の支配が薄れ、還元・資本配分の自由度が戻れば全体の倍率は上がり得る。
見ておくもの
- 柏崎刈羽6号機の稼働の安定度と7号機の設計及び工事計画の認可の進捗
- 資本提携先選定の特別委員会の結論(提携の有無・条件、非公開化の可否)
- 福島第一原発の廃炉・賠償費用の見積り(21.5兆円)の修正動向
- データセンター・半導体向けの新規大口契約と系統増強投資の進捗
- 燃料費調整額とLNG・石炭・原油価格、ドル円の推移
- 機構の優先株の普通株への転換と売り出しの時期・方法(除染費用4兆円の回収計画)
- 配当の復配方針の有無
倍率と資本コストの決め方
数量×価格で営業利益を積み、営業外(2026年3月期並み+JERAの伸び)、借り換えの利払い増(10年−1,419億円)、福島の負担(特別負担金と廃炉・賠償の特別損失をならして中立年1,200億円)、税を引いて純利益を出した。倍率は会社全体で上限の7割前後(中立は1÷k=12.5倍の7割の8.8倍。k 8.5%は基本の7.5%に、送配電の独占−0.5%と借金+1%を入れた。ROE<kなので上限は1÷k)とし、時価総額と還元は会社全体の値で置き、機構の優先株の取り分は holder_share(0.3247。悲観だけ0.0458)で build が掛ける。優先株は定款どおり、交付株数=1兆円÷取得価額(時価の90%、上限・下限)で、上限に張り付く水準なら今の株主は約32.5%、下がると約1.11兆円を機構が先に取る。国の4兆円回収計画は転換と売却を前提にしているので、転換は起きる筋として全筋書きで引いた。
自己資本は年ごとの純利益の積み上げで置いた。流れの起点は、2026年3月期の純利益(特別損失を含む赤字)でなく、特別損失をならした1,500億円(net_start_oku)にして、検査の流れと合わせた。悲観側の倍率(PBR)が0.35倍を下回るのは希薄化のためで、全体では0.35〜0.42倍。今の株価には寄せていない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。
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