結論
北海道電力は、北海道全域に電気を届ける地域独占の電力会社だ。送配電を握り、発電と小売も手がける。主力の泊原発が止まったままの今は、稼ぐ力の土台が細い。
筆者が決め手とみるのは2つある。1つは泊3号機の再稼働、もう1つは半導体工場とデータセンターによる電力需要の反転だ。どちらも他のエリアにはない追い風だが、時期は読み切れない。再稼働は早くても2027年の夏以降で、社長は同年中を目指している。
重荷は借金だ。純有利子負債は1.4兆円で、自己資本比率は18%台にとどまる。借り換えのたびに金利が上がり、利払いは10年で年300億円超ふくらむ。再稼働で燃料費が浮いても、その分は料金の値下げと利払いに消える。
結論は、今の値段は割高(本質価値は3割ほど下)という見立てだ。償却を取得原価のまま置き、更新投資の借入の利払いを入れると、株主に残る利益は薄い。需要の追い風と再稼働の価値は本物だが、株主に残る利益は借金に削られる。再稼働が遅れる、需要の計画が空振りに終わる、という負け方もあるため、割安どころか、値段に安全域がない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見たいのは、この会社が10年かけて株主のために何円残すか、その1点だ。
筆者は、事業そのものには尊敬の気持ちがある。道内の送電線は誰にも複製できず、需要が反転すれば投資の回収も進む。再稼働の価値も大きい。
それでも、投資のお金は止まらない。送配電網、泊の安全対策、火力の脱炭素と、稼いだ利益の多くは設備に消え、借金で足りない分を補う。自己資本比率は18%台で、利払いは金利の上昇とともに増える。株主の取り分になるオーナー利益は、営業利益の見かけよりずっと小さい。
経営は財務の立て直しを優先しており、姿勢は堅実だ。ただし、財務の傷んだ会社が再稼働の遅れに耐える余裕はない。予測しやすい事業の側に入る一方、時期が読めない泊の再稼働が価値の大きな部分を握る。この不確かさを、確率で厚く見た。
安全域は、中立の筋書きでも薄い。払う値段が今の値段なら、買い手に報いるのは楽観の半分だけだ。
何で稼ぐ会社か
北海道電力は、北海道の電気をほぼ一手に担う。連結売上のうち電気事業が9割を超え、残りは設備工事・不動産・情報通信などの関連事業だ。
電気事業は3つの顔を持つ。1つ目は発電で、石炭・LNG・水力・風力が主力。泊原発の3基は2012年から止まったままだ。2つ目は小売で、家庭から工場まで道内の大半の需要家に売る。3つ目は送配電で、送電線と変電所を地域独占で運用し、国が認めた範囲で収益を得る。この送配電が、業績の底を支える。
電気の値段は燃料費調整制度で燃料価格に連動する。石炭や原油が上がれば数か月遅れで料金に乗るが、規制料金には上限があり、遅れの間は利益がぶれる。足元の2027年3月期は、この期ずれと託送料金の改定が混ざり、会社予想は経常利益460億円(2026年9月の上方修正)だ。
北海道は需要が増えにくい土地だった。人口が減り、冬の暖房は灯油とガスが強い。ここに千歳のラピダス工場と苫小牧・厚真のデータセンター群が加わり、減り続けた電力需要が反転しかけている。会社は小売の販売電力量を2025年度の221億kWhから、2035年度に330億kWh以上へ増やす計画を掲げる。
優良さと弱いところ
堀は送配電の独占と、道内の需要家との長い関係だ。ただし堀の中身は規制に与えられたもので、自分で値段を決める力ではない。
発電の強みは薄い。泊が止まっている間、北海道電力は他エリアより石炭と輸入燃料への依存が高く、燃料の市況に利益が振れやすい。2023年3月期は純損益が赤字に沈んだ。九州電力や関西電力のように、原発の稼働で費用を下げた会社との差はここにある。
資本効率は、足元の決算だけを見ると良く見える。2024〜2025年3月期のROEは16〜20%台だが、燃料費調整の期ずれによる一時の利益が混ざっている。2026年3月期は9.6%に落ち、今期の会社予想は6%台だ。
財務は弱い。自己資本比率は18.5%、EBITDAに対する有利子負債は10倍を超える。会社も、再稼働までは財務基盤の回復を念頭に置くと説明している。
ガバナンスには傷がある。送配電子会社の非公開情報を発電・小売側が持っていた問題で、電力・ガス取引監視等委員会から業務改善勧告を受け、社長を含む役員が処分された。2024年12月には景品表示法に基づく課徴金納付命令も受けている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
北海道は日本の電力のなかで、最も大きく需要の見通しが変わった土地だ。
電力広域的運営推進機関は、北海道の2035年度の需要を2025年度より12.5%増と見ている。全国10地域のなかで最も高い。会社は同じ年度の道内需要を約380億kWhとみる。押し上げるのは、ラピダスの工場(稼働すれば約60万kW)と、ソフトバンクが苫東で整えるデータセンター(30万kW級、将来は100万kW構想)だ。ただしデータセンターの建設は全国で先送りが目立ち、立ち上がりは数年遅れる見通しもある。
もう一つの軸が泊原発だ。3号機は2025年7月に設置変更許可を受け、審査は終わった。残るのは防潮堤の完成(2027年8月中旬)と、消火ガスの放出方法をめぐる追加審査だ。地元の同意は、北海道知事が2025年12月に再稼働を容認している。再稼働後は家庭向けで11%程度、企業向けで7%程度の値下げを会社が示している。費用の低減が年600億円ほどあり、そのうち500億円を料金に返す計算だ。
競争では、小売の新電力が全国で販売電力量の約2割を占める。北海道電力は寒冷地で、冬の暖房需要と調整力を持つ強みがあるが、燃料価格が上がる年は新電力が引き、下がる年は戻ってくる。
最後に脱炭素だ。石炭火力の比率を下げ、LNG火力・風力・水素やアンモニアへ投資を重ねる。この投資が利払いと償却費を重くし、利益が資本コストに届きにくい最大の理由になっている。
資本政策と M&A
資本政策は、株主に戻す前に財務を立て直す段階にある。配当はDOE(株主資本配当率)2%を目安とするが、泊3号機の再稼働までは財務の回復を優先して総合判断する。2025年度の配当は増配が続き、2026年度も増やす予定で、DOEは1.8%にあたる。
買収で成長するタイプの会社ではない。投資の中心は、泊の安全対策、送配電網の増強、再エネ、苫小牧・厚真の次世代エネルギー構想だ。2030年までの6年で約1.6兆円を投じる計画で、会社は外部からの資金調達が難しい課題だと認めている。社債や借入に加え、資本性の資金も選択肢に入れる。希薄化を伴う調達の前例もあり、既存の株主には増資の影を残す。
TOBによる再編は、規制事業で地域の公的な色も濃く、起きにくい。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の475億円が10年後に約 656億円。更新投資は建築費の上昇で膨らみ、足りない分は借入になって利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。送配電などの規制事業の償却と利払いは託送料金で売上に戻るので、この数字は規制外の分だけだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
泊3号機が2027年末までに動き、泊1・2号機の審査も前に進む。原子力の稼働で燃料費が下がり、再稼働後の値下げ(年500億円)を払っても、費用の低減分が利益に残る。
需要は計画どおりに積み上がる。ラピダスの工場は稼働すれば60万kW、ソフトバンクの苫東のデータセンターは将来100万kW構想だ。道内の需要は2035年度に380億kWhへ向かい、小売の販売電力量は2025年度の221億kWhから330億kWh以上になる。この増加分は、送電線と発電設備がすでにある土地に載るので、1kWhあたりの増分利益は大きい。
経営計画の目標は、2030年度の経常利益700億円以上、2035年度に900億円以上だ。目標どおり進めば、ROEは8%の目標に届き、自己資本比率も25%へ向かう。配当はDOE2%から上げる余地も出る。
再エネの開発は、2035年に持分ベースで300万kW以上が目標だ。計画どおり進めば、新しい事業の利益が上乗せされる。
この見方が正しければ、10年後の会社は今の何倍もの利益を稼ぐ。
慎重な見方
再稼働の時期は、すでに何度も後ろへずれた。防潮堤は2027年8月中旬の完成で、4か月以上遅れる。消火ガスの放出方法をめぐる追加審査もある。北海道新聞は再稼働を早くて27年末とみる。1年遅れるごとに、燃料費の削減分600億円が失われる。
需要の追い風も確かではない。データセンターの建設は全国で先送りされ、広域機関が示した増加も数年遅れで進むとみられている。ラピダスやデータセンターの電力は、系統接続の順番と送電網の増強が済まなければ売れない。
もっと重いのは借金だ。純有利子負債は1.4兆円あり、借り換えで金利が上がると、利払いは10年で年300億円以上ふくらむ。会社自身がEBITDAに対する有利子負債の倍率を2030年に11倍程度と置いており、自己資本比率の目標(2030年に20%)も、利益が計画に届かなければ達成できない。
燃料価格の急騰も怖い。2022年度の赤字は、燃料調整の上限と期ずれで起きた。同じことが起きれば、自己資本が薄い分だけ傷が深い。
稼ぐ力が資本コストに届かないなら、成長しても価値は増えない。
どちらに重みを置いたか
再稼働と需要の反転という上向きの材料は本物で、強気の見方に分がある部分も多い。ただ、時期の遅れ、借金の重さ、利払いの増加が積み重なり、利益のうち株主に残る分は小さい。
10年の確率は、中立を最も厚く置きつつ、悲観の側(やや悲観・悲観)を38%、楽観の側(楽観・やや楽観)を29%とした。泊の再稼働が遅れる可能性と、需要の計画が空振りになる可能性の両方を見ている。中立の筋書きだけなら今の値段をやや下回るが、上の筋書きが差を埋め、総合では適正圏に収まる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,241 円2,547 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 429 円882 億円)。 今の値に割り戻すと 867 円1,780 億円、今との差 −20.5%、 期待の年率 +4.4%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 3,482 円7,150 億円 | 788 円1,619 億円 | +291.6% | +14.6% | 384 円789 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,173 円4,463 億円 | 570 円1,171 億円 | +151.6% | +9.7% | 549 円1,127 億円 |
| 中立 | 33% | 980 円2,013 億円 | 439 円901 億円 | +30.1% | +2.7% | 468 円961 億円 |
| やや悲観 | 25% | 445 円914 億円 | 284 円584 億円 | −33.1% | −3.9% | 182 円375 億円 |
| 悲観 | 13% | 445 円914 億円 | 219 円450 億円 | −39.1% | −4.8% | 86 円177 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,241 円2,547 億円 | 429 円882 億円 | +53.1% | +4.4% | 1,670 円3,429 億円 |
今の株価時価総額 1,091 円2,239 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 9% 再稼働と需要の両方が計画どおりに進む 利益 572 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,482 円7,150 億円
泊3号機が2027年末までに動き、泊1・2号機の審査も前へ進む。燃料費は大きく下がり、値下げ(年500億円)を払ってもなお利益が残る。
需要は計画どおり積み上がる。ラピダスの工場が全面稼働し、苫東のデータセンターが100万kW規模へ向かう。道内の電力需要は2035年度に380億kWhへ達し、小売と卸を合わせた販売量は今より4割ほど多い。増えた分は、すでにある送電線と発電設備に載るので、利益への効きが強い。
送配電は増強投資の回収が進み、規制収益が積み上がる。会社が掲げる2035年度の経常利益900億円以上に近づき、自己資本比率も25%へ向かう。
借金は増えるが、利益の伸びが利払いを上回る。ROEは8〜9%と資本コストを上回り、配当はDOE2%から引き上げられる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の475億円が10年後に約 656億円(物価で一律に増やすと約 706億円)。営業利益は −50億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 114億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約34%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 電気事業:数量 497(販売電力量(億kWh、小売と他社販売の合計。推定))× 価格 29(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 14,428 億円・営業利益 1,393 億円。販売量1.40倍(データセンター・半導体・泊)・単価1.27倍(再稼働後の値下げ分を引く)・利益率9.7%・償却は物価で増やさず按分(10年後 656億円)
- その他事業:数量 1,648(グループ会社の人員(人。推定))× 価格 47(1人あたり売上(百万円))→ 売上 773 億円・営業利益 108 億円。人員1.30倍・1人あたり売上1.34倍・利益率14%
倍率:事業の純利益 572 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 7,150 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:泊の再稼働の遅れが続くなか、需要の計画も順調に進み、泊1・2号機の審査まで前へ進む展開は条件が重なる必要がある。実現すれば大きいが、確率は1割を切る水準に抑えた。
やや楽観 20% 需要が計画の7〜8割で積み上がる 利益 357 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,173 円4,463 億円
泊3号機は2028年までに動き、需要の追い風も計画の7〜8割ほどが実現する。ラピダスの工場は稼働するが、データセンターは立ち上がりが数年遅れ、道内の需要は2035年度に350億kWh台へ届く。
小売と卸を合わせた販売量は今より3割ほど増える。再稼働の費用低減は料金の値下げでほぼ返し、利益率は8%台まで戻る。
送配電は規制収益で安定し、その他事業も北海道の産業振興で少しずつ育つ。借金の借り換えで利払いはふくらむが、利益の伸びがおおむね吸収する。
自己資本比率は20%を超え、配当はDOE2%の水準を維持する。ただし資本効率の目標(ROE8%)には届かない。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の475億円が10年後に約 656億円(物価で一律に増やすと約 706億円)。営業利益は −50億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 127億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約34%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 電気事業:数量 462(販売電力量(億kWh、小売と他社販売の合計。推定))× 価格 29(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 13,397 億円・営業利益 1,102 億円。販売量1.30倍・単価1.27倍(再稼働後の値下げ分を引く)・利益率8.2%・償却は物価で増やさず按分(10年後 656億円)
- その他事業:数量 1,522(グループ会社の人員(人。推定))× 価格 47(1人あたり売上(百万円))→ 売上 714 億円・営業利益 93 億円。人員1.20倍・1人あたり売上1.34倍・利益率13%
倍率:事業の純利益 357 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 4,462 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:泊の再稼働が2028年までに実現し、需要も着実に増える展開。強気ほどの条件の重なりは要らないので、中立に次ぐ確率を置いた。
中立 33% 成長しても資本効率が上がらない規制インフラ 利益 161 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 980 円2,013 億円
泊3号機は2028年ごろまでに動き、再稼働後は料金を値下げする。費用の低減はその値下げと、物価・金利の上昇による費用増に吸い取られ、利益への上乗せは限られる。
需要は半導体工場とデータセンターで増えるが、人口減と省エネの減少が相殺し、販売量は今より2割ほどの増加にとどまる。単価は物価に遅れて追いつくものの、再稼働後の値下げで物価並みには上がらない。
送配電は規制収益で堅調だが、増強投資の償却費と利払いが重い。営業利益は1,000億円弱へ伸びても、借り換えで金利が上がるため、純利益は今の水準を超えられない。
自己資本比率は20%前後で、配当はDOE2%の水準。成長しても資本効率が上がらない、成熟した規制インフラとして評価される10年になる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の475億円が10年後に約 656億円(物価で一律に増やすと約 706億円)。営業利益は −50億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 143億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約34%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 電気事業:数量 426(販売電力量(億kWh、小売と他社販売の合計。推定))× 価格 29(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 12,367 億円・営業利益 840 億円。販売量1.20倍(人口減−5%とデータセンター・半導体+25%の差し引き)・単価1.27倍・利益率6.8%・償却は物価で増やさず按分(10年後 656億円)
- その他事業:数量 1,395(グループ会社の人員(人。推定))× 価格 47(1人あたり売上(百万円))→ 売上 654 億円・営業利益 78 億円。人員1.10倍・1人あたり売上1.34倍・利益率12%
倍率:事業の純利益 161 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 2,012 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:泊の再稼働が2028年ごろに実現し、需要は計画の半分ほど積み上がる展開が最も自然なため、最大の確率を置いた。
やや悲観 25% 再稼働の遅れと需要の空振りが重なる 利益 −30 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 445 円914 億円
泊3号機は動くが、再稼働は2029年以降にずれ込み、後ろ倒しの間は火力に頼る。データセンターは計画の多くが他の地域に流れ、道内の需要は伸びても1割に届かない。
再稼働後の値下げの約束だけが先に重くのしかかる。費用の低減は思ったほど利益に残らず、営業利益率は6%台にとどまる。
借金の借り換えで金利が上がり、利払いが利益を大きく削る。純利益は今の3割程度へ落ち、自己資本比率の目標(2030年に20%)は未達に終わる。配当は維持されるが、増配の余地はない。
事業の稼ぐ力は、借金を返す力に回り、株主の取り分はほとんど残らない。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の475億円が10年後に約 656億円(物価で一律に増やすと約 721億円)。営業利益は −65億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 156億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約34%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 電気事業:数量 383(販売電力量(億kWh、小売と他社販売の合計。推定))× 価格 28(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 10,869 億円・営業利益 587 億円。販売量1.08倍・単価1.24倍(競争と値下げ)・利益率5.4%・償却は物価で増やさず按分(10年後 656億円)
- その他事業:数量 1,268(グループ会社の人員(人。推定))× 価格 45(1人あたり売上(百万円))→ 売上 568 億円・営業利益 57 億円。人員据え置き・1人あたり売上1.28倍・利益率10%
倍率:稼ぐ力(事業の純利益 -30 ÷ k 8% = -364 億円)より資産の床のほうが大きいので、売れる資産の税後 920 億円(floor_assets_oku)を時価総額にそのまま置いた。今の自己資本 4,570 億円に対する PBR は 0.2 倍。償却を計算どおりに置き直して利益が細り、悲観と同じ床で値が付く。
確率:泊の再稼働はすでに後ろへずれ続け、データセンターの建設も全国で先送りされている。この遅れの延長は十分ありうるので、4分の1を置いた。
悲観 13% 泊が動かず、借金に押しつぶされる 利益 −443 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 445 円914 億円
泊3号機の再稼働が審査や地元の事情でさらに大きくずれ、2030年代に入っても動かない。数千億円を投じた安全対策の資産は、減損を迫られる。
ラピダスやデータセンターの計画も縮み、道内の電力需要は横ばいにとどまる。新電力や自家消費の太陽光に押され、小売の販売量は減る。燃料価格や円安の急変が重なれば、2022年度のような赤字も再び起きる。
借金は返せず、借り換えのたびに金利が上がる。純利益は赤字に沈み、配当は大きく削られる。自己資本比率は1割台前半まで下がり、資本性の資金の調達や、水力など資産の売却が現実味を帯びる。
この筋書きでは、会社は優良さを失い、借金を抱えた規制インフラとして扱われる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の475億円が10年後に約 656億円(物価で一律に増やすと約 743億円)。営業利益は −87億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 216億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約34%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 電気事業:数量 344(販売電力量(億kWh、小売と他社販売の合計。推定))× 価格 27(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 9,444 億円・営業利益 102 億円。販売量0.97倍・単価1.20倍・利益率1.1%(燃料費が下がらず)・償却は物価で増やさず按分(10年後 656億円)
- その他事業:数量 1,141(グループ会社の人員(人。推定))× 価格 40(1人あたり売上(百万円))→ 売上 459 億円・営業利益 18 億円。人員0.90倍・1人あたり売上1.15倍・利益率4%
倍率:純利益が赤字で稼ぐ力では測れない。床は売れる資産の税後(floor_assets_oku)で見て、今の自己資本4,570億円の 0.20 倍に置いた。純有利子負債を足した EV÷営業利益は約70倍と大きく出るが、利益が極端に薄い年で測るためで、この筋書きの値は資産の価値で見ている。
確率:泊の再稼働の大幅な遅れ、需要計画の縮小、燃料価格の急変が重なる複合の負け筋。頻度は低いが、自己資本が薄く10年では無視できないため1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電気事業
北海道全域に電気を売る小売・卸と、発電、送配電を合わせた中核事業。送配電は地域独占で、国が認める範囲の収益を得る。
| 数量販売電力量(億kWh、小売と他社販売の合計。推定) | 価格平均単価(円/kWh、燃料費調整後) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 355 | 23 | 8,116 | 677 |
| 10 年後 中立 | 426 | 29 | 12,367 | 840 |
取り方:2026年3月期の電気事業の売上8,116億円を、総販売電力量355億kWhで割った単価。小売は221億kWh、他社販売は約130億kWhとみた推定で、開示の数字ではない。数量は実質で、人口減と省エネの減少を、ラピダスやデータセンターの新しい需要が埋める差し引きで置く。単価は燃料費調整で燃料の値段に数か月遅れて連動する。営業利益は連結営業利益732億円から、その他事業の55億円(推定)を引いた。
その他事業
設備工事・不動産・情報通信などの関連事業。北海道の産業振興も担う。
| 数量グループ会社の人員(人。推定) | 価格1人あたり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,268 | 35 | 444 | 55 |
| 10 年後 中立 | 1,395 | 47 | 654 | 78 |
取り方:その他事業の売上444億円を、1人あたり3,500万円の売上と仮定して人員1,268人に直した推定。開示された人員ではない。賃金は物価で上がるので、1人あたり売上は物価並みに伸びる。利益はセグメント開示が営業利益ではないため推定(利益率12%台)。
リスクと懸念
泊3号機の再稼働の遅れ
防潮堤は2027年8月中旬の完成見込みで、4か月以上遅れた。消火ガスの放出方法をめぐる追加審査も続く。再稼働が1年ずれるごとに、年600億円規模の費用低減が失われ、借金の返済も遅れる。
借金の重さと金利の上昇
純有利子負債は1.4兆円、自己資本比率は18%台で、借り換えのたびに金利が上がる。10年で利払いは年300億円超増える見通しだ。利益が計画に届かないと、自己資本比率の目標(2030年に20%)が崩れ、資金調達の条件も悪くなる。
燃料価格の急変と調整の遅れ
燃料費調整は数か月遅れで効き、規制料金には上限がある。2022年度のように燃料と為替が一度に動くと、遅れの間に大きな赤字が出る。泊が動かない間は石炭・LNGへの依存が高く、傷が深い。
需要の追い風の空振り
ラピダスやデータセンターの電力需要は、系統接続の順番と送電網の増強に左右される。データセンターの建設は全国で先送りが目立ち、立ち上がりが数年ずれたり、他の地域へ流れたりする恐れがある。
再稼働後の値下げの重さ
再稼働後は、家庭向け11%程度・企業向け7%程度の値下げを会社が示している。再稼働の時期が遅れて物価と金利が上がると、値下げの前提が崩れ、利益が思ったほど残らない。
ガバナンスの傷
送配電子会社の非公開情報の取り扱いで業務改善勧告を受け、社長ら役員が処分された。原発を再稼働する会社にとって、情報管理と安全文化への信頼は欠かせない。
資金調達と希薄化
2030年までの約1.6兆円の投資は、外部調達が難しい課題だと会社も認めている。資本性の資金を選ぶなら、既存の株主の取り分は薄まる。過去にも希薄化を伴う調達の前例がある。
今後の分かれ目
- 泊3号機の再稼働の時期が2027年内に確定する
- 燃料費の低減が前倒しで効き、中立の筋書きの利益が上向く。強気の確率を上げる材料になる。
- 泊3号機の審査や工事がさらに遅れ、2028年以降にずれ込む
- 費用の低減が先送りされ、借金の返済も遅れる。やや悲観の確率を厚くする。
- ラピダス・苫東のデータセンターに大口の電力契約が相次ぐ
- 送配電と発電の稼働が上がり、需要の見通しが上方に修正される。
- データセンターの建設が他の地域へ流れ、道内の需要計画が縮む
- 数量の見通しが下がり、増強投資の回収が遅れる。やや悲観・悲観に寄せる。
- 燃料価格と為替の急騰が再び起きる
- 燃料費調整の遅れの間に赤字となり、薄い自己資本が削られる。
- 資本性の資金や増資による調達が発表される
- 既存の株主の取り分が薄まる一方、自己資本比率の目標への道筋は見えやすくなる。
見ておくもの
- 泊3号機の防潮堤工事の進み具合と追加審査の結果
- ラピダス・苫東のデータセンターの電力契約と系統接続
- 小売販売電力量(2030年度に290億kWh以上の計画)の推移
- 自己資本比率(2030年度に20%以上の目標)と純有利子負債
- 燃料費調整額、原油価格、ドル円
- 資本性資金の調達の有無と配当(DOE2%)
倍率と資本コストの決め方
電気事業は販売電力量と平均単価、その他事業は人員と1人あたり売上で積み、名目の単価を物価並みに置いた。電気は再稼働後の値下げ分を引いて1.27倍にした。k は基本7.5%に、循環+0.25%・送配電の規制−0.5%・借金+1.0%を入れた8.25%。中立は ROE が k を下回るため上限は 1÷k=12.1倍で、その 7 割(約8.5倍)に置き、やや楽観は8割、楽観は式の9割とした。利益の多くが利払いと償却に消えるので利益の質は低めと見た。利払いは10年で年345億円増える推定に、借金の増加を加えた。ガバナンスや再稼働の遅れは k に足さず、確率(やや悲観・悲観を38%)で表した。悲観側は稼ぐ力と売れる資産の床から置き、過去や同業の倍率には寄せていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.2→12.5 倍・やや楽観 PER 9.7→12.5 倍・中立 PER 8.48→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。