結論
広島ガスは、広島市を中心に約42万戸へ都市ガスを届ける、中国地方で最も古いガス会社だ。LPG(プロパン)と電力小売も手がける。筆者の結論は「やや割高」。稼ぐ力が資本コストに届かない会社に、今の値段は期待を先取りして払っているからだ。
2026年3月期の営業利益は16億円で、売上の1.8%しかない。装置産業なのに薄い。導管や設備の償却が年に70億円を超え、ガスの仕入れ値は料金に転嫁できても、人件費と設備の更新費は自力で稼ぐしかない。
足元の追い風は半導体だ。最大の顧客マイクロンが広島で1.5兆円の投資を発表し、2028年後半から新棟の装置が入る。売上の1割超を握る大口なので、増設の恩恵は大きい。同時に、一社への依存という弱みでもある。
中立の筋書きは、10年後の営業利益が38億円、純利益が31億円だ。足元の2倍になるが、物価の上昇と半導体の増設で戻る分である。自己資本利益率は3.5%前後で、資本コスト7.75%に遠く及ばない。強気でも会社目標の8%には届かない。
財務は安全圏だが、純有利子負債が233億円ある。10年の価値は今の時価総額を下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、広島ガスは「守りは堅いが、株主に利益が回ってこない会社」だ。地域の導管網は10年後も残る。顧客は増え、配当も続く。ここは安心できる。
問うべきは、積み上げた自己資本715億円がいくらの利益を生むかだ。生む利益は21億円、率にして3%。国債の利回りと同じ水準にすぎない。資本を厚く持つほど、株主の取り分は薄まる。
10年の筋書きでは、利益は物価に連れて戻り、半導体の増設が上乗せになる。それでも自己資本利益率は4%台にとどまる。式で測った価値は、事業の純利益の10倍弱だ。
安全域は薄い。純有利子負債は233億円あり、マイクロン一社の動向で数量が動く。この会社を持ち続けたいと言えるほどの余裕は、今の時価総額に見えない。
導管という堀が守るのは事業の存続であって、株主の利回りではない。堀の内側で稼ぐ力が資本コストに届かない限り、守りの堅さは値段の理由にならない。半導体の追い風が数字に出て、営業利益が会社予想を超えて戻るまでは、慎重に見るのが筋だと筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は三つある。
ひとつ目はガス事業で、売上の4分の3を占める。広島市を中心に都市ガスを導管で届ける。2026年3月期の販売量は4.6億m3。内訳は業務用が6割、家庭用が2割、他社への卸供給が2割弱だ。LNGの仕入れ値の変化は、原料費調整制度によって数か月遅れで料金に乗る。電力小売「このまち電気」と、ガス機器・LNGの外販もこの中に入る。
ふたつ目はLPG事業で、売上の2割。導管の届かない地域の家庭や店に、プロパンを容器で運ぶ。仕入れは輸入価格と為替で動き、利益率は1〜2%と低い。
みっつ目はその他で、住宅設備、リース、不動産の小さな事業群だ。売上は46億円だが、利益率は4.5%と全体でいちばん高い。
顧客の偏りが大きな特徴だ。マイクロンメモリジャパンへの売上は105億円で、連結売上の12%を占める。広島の工場は半導体メモリの主力拠点で、電気とガスを大量に使う。この一社の稼働で、数量が数%動く。
利益の出方も独特だ。セグメント利益の合計は14億円ほどにすぎない。営業利益より経常利益が大きい年が多く、会社予想でも2027年3月期の経常利益は営業利益を8億円上回る。営業外の収益が、利益を下支えしている。
優良さと弱いところ
広島ガスの堀は、導管網そのものだ。広島市の都市部に張り巡らせた配管は、他社が引き直せない。顧客は10年続けて増え、41万9千戸を数える。ただ、堀の深さは利益に現れていない。
利益率が低い。営業利益率は過去12年で1.4%から7.4%の間を行き来し、足元は1.8%だ。ガスの仕入れ分は転嫁できても、導管の維持費と人件費は自力で稼がなければならない。
値決め力は中くらいだ。家庭向けは認可と原料費調整で守られる。工場向けは自由化されていて、電力や重油との競争がある。マイクロンのような大口は、価格を交渉で決める側だ。
資本効率は弱い。過去10年の自己資本利益率の中央値は4.8%、足元は2.9%で、資本コストを超えた年はない。自己資本比率は54%と厚い。厚い資本が、低い稼ぎの上に眠っている形だ。
資本の配り方は堅実に見える。配当性向は41%で、方針の30%以上を上回る。ただ、会社が2030年に掲げる自己資本利益率8%以上、経常利益70億円は、今の2.5倍以上の水準だ。実績の裏づけはまだない。
筆者が気にするのは、一社依存と固定費の重さである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の都市ガス需要は、家庭用が人口減とオール電化で細り、工業用が横ばいという構図だ。広島も人口は減っていく。家庭用の販売量は、前期に1.5%減った。実質で年1〜2%ずつ減る前提が妥当だろう。
広島には、半導体の立地という例外がある。マイクロンの広島工場は、国の支援(最大5,360億円)を受けて1.5兆円規模の増設に動き、2026年7月に新しいクリーンルームが着工した。製造装置が入るのは2028年後半の予定で、ガスと電気の使用量が増える。ただ、業務用の販売量は前期に5%減っている。増設の効果は、まだ数字に出ていない。
競合は三つある。ひとつは電力会社で、電化の提案で工業用のガスを奪いにくる。ふたつ目はLPGの同業だ。筆頭株主の岩谷産業はLPG最大手でもあり、協力と競争の両面がある。みっつ目は、重油や石炭からの燃料転換を狙う他のエネルギー事業者である。
脱炭素は長期の脅威であり、機会でもある。ガスは石炭・重油より排出が少なく、転換の受け皿になる。一方で、2040年代以降は水素や合成メタンへの置き換えが課題になり、導管の上を流れるものが変わる。導管網の価値は残るが、投資の負担は重い。
業界の見通しはこうだ。家庭用は実質で年1〜2%減、業務・工業用は横ばい、単価は名目で物価並みに上がる。広島ではその上に、半導体の増設が乗る。数量は10年で、横ばいからわずかな増加を見込む。
資本政策と M&A
還元は安定している。連結配当性向は41%で、方針の「30%以上」を上回る。配当は減らさず続ける姿勢だ。自社株買いは目立たない。
投資は電力小売と再エネの開発、デジタル化に向かう。2030年ビジョンの目標は、経常利益70億円、EBITDA(償却前の利益)160億円、自己資本利益率8%以上、自己資本比率50%程度だ。EBITDAは足元の91億円から7割以上増やす計画で、新規の事業投資が前提になる。その稼ぎが資本コストを超えるかは、まだ見えない。
政策保有株は上場19銘柄で約67億円、時価総額の2割強にあたる。配当が営業外の収益として利益に入っているので、価値は別に足さない。
大株主は岩谷産業が11%、明治安田生命5.6%、広島銀行4.1%、日本生命3.5%、広島電鉄2.7%と並ぶ。安定株主が厚く、買収を仕掛けにくい構造である。外部の推計では10年以内のTOB(公開買付け)の確率は2割台とされるが、筋書きの確率には織り込まない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
マイクロンの広島増設は、広島ガスにとって10年に一度の追い風だ。1.5兆円の投資は、空調、純水、電力、ガスなど、エネルギーの需要を何倍にも増やす。広島ガスは地元の最大の供給元として、2028年後半の装置搬入から数量を取れる。工場向けは、一度導管をつなげば10年単位で使われる。
会社の利益水準は底にある。営業利益16億円は、過去12年の中央値32億円の半分だ。原料費調整のずれ、LPGの価格競争、電力小売の立ち上げ費用が重なった。これが一巡すれば、利益は2倍近くに戻る。物価が年3%で上がる世界では料金も上がり、同じ数量でも売上は膨らむ。
経営も動いている。2030年ビジョンは経常利益70億円と自己資本利益率8%以上を掲げ、電力小売と再エネを伸ばして、導管事業だけに頼らない形を目指す。政策保有株の売却と資本の見直しが進めば、資本効率は改善する。筆頭株主の岩谷産業を中心に安定株主が多く、経営の継続性もある。
この筋書きなら、10年後の純利益は50億円を超え、倍率も11倍台まで評価される。
慎重な見方
利益が低いのは一時の事情でなく、構造だ。導管の維持費と償却は、売上が減っても減らない。家庭用の販売量は毎年1〜2%ずつ細り、固定費を負担する顧客が減っていく。2026年3月期は営業利益が26%増えたが、それでも売上の1.8%にすぎない。
マイクロンも約束された成長ではない。最大顧客なので、料金交渉の力は先方にある。メモリ半導体は市況の波が大きく、投資が遅れる年もある。半導体工場は、自家発電や電力への切り替えも選べる。実際、業務用の販売量は前期に5%減った。
会社目標の経常利益70億円は、会社予想の2.5倍で、過去12年で一度も届いていない。計画はたびたび下から出てくる。2027年3月期の会社予想も、営業利益20億円にとどまる。
自己資本の715億円は大きいが、3%しか稼がない資本は、株主にとって額面を下回る価値しかない。PBR(株価純資産倍率)が0.4倍でも割安とは言えない。借入は借り換えで金利が上がり、10年で6億円ほど利益を削る。
電化と水素への移行で、10年後の数量が2割減る道も十分ある。
どちらに重みを置いたか
どちらにも一理ある。ただ、強気の最良の形でも、自己資本利益率は5%台で資本コストに届かない。会社目標の8%は前例のない水準だ。増設の効果は本物だが、恩恵は大口一社の需要という細い管を通る。慎重な見方が突く、固定費の重さと利益率の低さは、過去12年の実績に裏づけられている。
中立を厚く置き、確率は慎重な側にやや寄せた。強気側は28%にとどめ、やや弱気と弱気に合わせて34%を置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 523 円359 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 155 円106 億円)。 今の値に割り戻すと 354 円243 億円、今との差 −12.5%、 期待の年率 +5.3%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 976 円671 億円 | 258 円177 億円 | +204.5% | +11.8% | 99 円68 億円 |
| やや楽観 | 20% | 788 円542 億円 | 214 円147 億円 | +147.4% | +9.5% | 200 円138 億円 |
| 中立 | 38% | 582 円400 億円 | 166 円114 億円 | +84.6% | +6.3% | 284 円195 億円 |
| やや悲観 | 23% | 247 円170 億円 | 102 円70 億円 | −13.8% | −1.5% | 80 円55 億円 |
| 悲観 | 11% | 81 円56 億円 | 44 円30 億円 | −69.1% | −11.1% | 14 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 523 円359 億円 | 155 円106 億円 | +67.2% | +5.3% | 677 円466 億円 |
今の株価時価総額 405 円278 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% マイクロン増設とエネルギー事業の拡大で、2030年の目標に届く 利益 52 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 976 円671 億円
マイクロンの増設が計画どおり進み、2028年後半から新棟の装置が動き出す。ガスと電力の使用量は大きく増え、広島ガスは供給の最大手として数量を取る。工場向けの販売量は10年で4割近く増え、全体の都市ガス販売量は実質で2割ほど増える。
家庭用は人口減で細るが、大口の伸びが余りある。導管という固定費は、同じ配管でより多くのガスを流すほど薄まる。営業利益率は4%台に乗り、会社が掲げる経常利益70億円の水準に近づく。
電力小売と再エネが育ち、その他の利益は8億円になる。LPGは顧客を守り、利益は8億円。
減価償却は取得時の値段のまま残るので、売上が物価で膨らんでも、償却費は10年で85億円ほどに増える程度だ。更新投資は建築費の上昇で膨らむが、利益の増加で賄える。配当は利益の4割を保つ。
(名目の前提)数量は実質、価格は原料費調整と認可で物価並みの1.34倍。借入の金利上昇で、利払いは年6億円ほど増える分を利益から引いた。
- ガス事業(都市ガス・LNG・電力小売):数量 558(都市ガス販売量(百万m3。卸供給を含む))× 価格 2.02(1百万m3あたり売上(億円、名目。電力小売・機器販売も含む代理指標))→ 売上 1,126 億円・営業利益 48 億円。数量 1.22 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 4.3%
- LPG事業:数量 100(LPG販売量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 2.43(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 243 億円・営業利益 8 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 3.3%
- その他(住宅設備・不動産・リースほか):数量 160(事業量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 0.62(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 99 億円・営業利益 8 億円。数量 1.60 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 52 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 671 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:マイクロンの増設が計画どおり進み、会社の2030年目標に近づく道は、実績の裏づけがないので8%にとどめた。
やや楽観 20% 半導体向けが伸び、利益は会社計画に近づく 利益 42 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 788 円542 億円
増設の効果は出るが、会社の目標までは届かない。業務用の販売量は10年で1割ほど増え、家庭用の減少と相殺して、全体は実質で1割増える。マイクロンの需要は伸びるが、他の大口の工場は横ばいで、広島ガスが取れるのは供給の一部にとどまる。
営業利益率は3%台後半。過去12年の山(7.4%)には届かず、会社予想(2027年3月期は20億円)の延長線で、物価の分と数量の増加分が乗った水準だ。
電力小売と再エネは小さく黒字化し、その他の利益は6億円。LPGは顧客の流出が続くが、価格転嫁で利益を保つ。
更新投資は建築費の上昇で膨らみ、償却を上回る分は借入で賄う。減価償却は10年で85億円ほどに増える。配当は利益の3割5分から4割を保つ。
(名目の前提)数量は実質、価格は物価並みの1.34倍。利払いは年6億円ほど増える分を利益から引いた。
- ガス事業(都市ガス・LNG・電力小売):数量 503(都市ガス販売量(百万m3。卸供給を含む))× 価格 2.02(1百万m3あたり売上(億円、名目。電力小売・機器販売も含む代理指標))→ 売上 1,015 億円・営業利益 38 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 3.7%
- LPG事業:数量 98.0(LPG販売量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 2.43(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 238 億円・営業利益 7 億円。数量 0.98 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 2.7%
- その他(住宅設備・不動産・リースほか):数量 140(事業量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 0.62(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 86 億円・営業利益 6 億円。数量 1.40 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 542 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:増設の効果が数量に現れ、利益率も戻る形。会社予想より上振れる道として2割を置いた。
中立 38% 家庭用の減りを半導体向けが埋め、利益は物価に連れて戻る 利益 31 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 582 円400 億円
家庭用の減りを、半導体向けと卸供給が埋める。家庭用は実質で1〜2割減る。工場向けは増設で伸びるが、他の工場の減りもあり、都市ガス販売量は10年でほぼ横ばいになる。料金は原料費調整と認可で物価に連れて上がり、売上は名目で3割強増える。
営業利益は38億円。足元の16億円は、過去12年の中央値32億円の半分で、谷にある。そこから物価の分と数量の底入れで戻るが、利益率は3%強にとどまる。会社が掲げる経常利益70億円は、実績の裏づけがないので見込まない。
減価償却は今の75億円前後から、10年で85億円ほどになる。取得時の値段で償却するので、物価ほどは増えない。一方、更新投資は建築費の上昇で膨らみ、償却を上回る分は借入で賄う。借入の金利は3.5%に上がり、利払いは年6億円増える。この分を利益から引いた。
配当は利益の4割を保つ。自己資本は10年で170億円ほど増え、自己資本利益率は3.5%前後。
(名目の前提)数量は実質、価格は物価並みの1.34倍。
- ガス事業(都市ガス・LNG・電力小売):数量 457(都市ガス販売量(百万m3。卸供給を含む))× 価格 2.02(1百万m3あたり売上(億円、名目。電力小売・機器販売も含む代理指標))→ 売上 923 億円・営業利益 28 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 3.0%
- LPG事業:数量 95.0(LPG販売量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 2.43(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 230 億円・営業利益 5 億円。数量 0.95 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 2.1%
- その他(住宅設備・不動産・リースほか):数量 125(事業量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 0.62(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 77 億円・営業利益 4 億円。数量 1.25 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 5.2%
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 400 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:家庭用の減りを半導体向けと物価が埋め、利益は過去の中央値の少し上で落ち着く道が最も自然なので、最大の38%を置いた。
やや悲観 23% 電化と競争で数量が細り、値上げも通しきれない 利益 20 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 247 円170 億円
電化と競争で数量が細り、値上げも通しきれない。家庭用は実質で2割減り、業務用もマイクロンの増設が遅れ、供給の一部を電力に奪われる。全体の都市ガス販売量は10年で1割以上減る。
料金は、原料費調整と認可で物価に追いつこうとするが、大口の値下げ要求と競争で10年1.30倍にとどまる。ガスの仕入れ分は転嫁できても、人件費と更新費は転嫁できず、営業利益率は2%台前半に下がる。営業利益は23億円と、会社予想とほぼ同じ水準で10年が過ぎる。
LPGは顧客の流出が止まらず、利益は3億円。その他は電力小売が伸びきれず、2億円台。
更新投資で借入が増え、利払いは年7億円ほど増える。配当は利益の3割台に絞る。自己資本利益率は2%台で、資本効率はさらに下がる。
(名目の前提)数量は実質、価格は10年1.30倍(物価に遅れる)。
- ガス事業(都市ガス・LNG・電力小売):数量 402(都市ガス販売量(百万m3。卸供給を含む))× 価格 1.96(1百万m3あたり売上(億円、名目。電力小売・機器販売も含む代理指標))→ 売上 788 億円・営業利益 17 億円。数量 0.88 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 2.2%
- LPG事業:数量 88.0(LPG販売量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 2.35(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 207 億円・営業利益 3 億円。数量 0.88 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 1.4%
- その他(住宅設備・不動産・リースほか):数量 110(事業量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 0.62(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 68 億円・営業利益 3 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 3.7%
倍率:自己資本利益率は2%台。上限12.5倍の約68%にあたる8.5倍に置いた。
確率:電化の進行と大口の値下げ圧力で、数量も単価も伸びない道。過去12年の実績に近いので23%を置いた。
悲観 11% 最大顧客が去り電化も進み、固定費を負担しきれなくなる 利益 8 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 81 円56 億円
マイクロンが投資を縮小し、大口の需要が減る。そこに電化と水素への移行が重なり、都市ガス販売量は10年で3割近く減る。固定費の導管は同じ規模で残るため、1m3あたりの負担が重くなる。
料金は値上げが通らず、10年で1.20倍に届かない。営業利益は12億円まで落ち、純利益は8億円にとどまる。導管の一部は減損し、自己資本は大きく目減りする。
LPGも顧客を失い、その他の事業は小さいままだ。配当は減らして維持し、足りない分は政策保有株の売却で賄う。広島ガスは「広島のガス会社」として生き残るが、成長の看板は降ろす。
安定株主が厚いため、買収で報われる道は細い。少数株主には、現金の使い方を決められない。
(名目の前提)数量は実質、価格は10年1.20倍。借入の増加で利払いは年9億円増える分を利益から引いた。
- ガス事業(都市ガス・LNG・電力小売):数量 329(都市ガス販売量(百万m3。卸供給を含む))× 価格 1.81(1百万m3あたり売上(億円、名目。電力小売・機器販売も含む代理指標))→ 売上 595 億円・営業利益 8 億円。数量 0.72 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 1.0%
- LPG事業:数量 75.0(LPG販売量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 2.17(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 163 億円・営業利益 2 億円。数量 0.75 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 1.2%
- その他(住宅設備・不動産・リースほか):数量 100(事業量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 0.55(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 55 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 1.8%
倍率:利益が小さいので、稼ぐ力(純利益8億円÷k=100億円)と売れる資産の大きい方を上限とし、縮小の影響を見て、稼ぐ力の約56%にあたる7倍(56億円)に置いた。EV÷営業利益は、純有利子負債233億円を足すと約24倍になるが、利益が谷の筋書きなので、この筋書きは資産と稼ぐ力で測る。
確率:最大顧客の縮小に電化が重なる複合の筋書き。頻度は低いが10年では無視できないので、5%を超える11%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ガス事業(都市ガス・LNG・電力小売)
広島市を中心に家庭・業務・工場へ都市ガスを導管で売る中核事業。LNGやガス機器の販売と、電力小売「このまち電気」もここに入る。原料費調整制度で仕入れ値が数か月遅れで料金に乗る。
| 数量都市ガス販売量(百万m3。卸供給を含む) | 価格1百万m3あたり売上(億円、名目。電力小売・機器販売も含む代理指標) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 457 | 1.51 | 689 | 10 |
| 10 年後 中立 | 457 | 2.02 | 923 | 28 |
取り方:2026年3月期のガス事業の売上688.8億円・セグメント利益9.6億円は有価証券報告書の値。数量は都市ガス販売量4.57億m3(卸供給を含む)、価格は売上をこの数量で割った代理指標で、電力小売・機器販売の売上も混ざる。数量は実質、価格は名目。連結調整などは全社でプラス1.4億円と置き、営業利益15.8億円に合わせた。
LPG事業
導管の届かない地域の家庭・業務に、容器でLPG(プロパン)を届ける事業。輸入価格と為替に価格が連動する。
| 数量LPG販売量の指数(2026年3月期=100、実質) | 価格指数1点あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.81 | 181 | 3 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 2.43 | 230 | 5 |
取り方:2026年3月期のLPG事業の売上181.0億円・利益2.7億円は有報の値。販売量の開示は使わず、指数100と単価1.81に分けた推定。利益は年によって2〜4億円で振れる。
その他(住宅設備・不動産・リースほか)
住宅設備、リース、不動産などの小さな事業群。電力の再エネ開発もここに近い位置づけで、成長投資の受け皿になる。
| 数量事業量の指数(2026年3月期=100、実質) | 価格指数1点あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.46 | 46 | 2 |
| 10 年後 中立 | 125 | 0.62 | 77 | 4 |
取り方:2026年3月期のその他の売上46.1億円・利益2.1億円は有報の値。事業量は指数100・単価0.461の推定。利益率は4.5%と高いが規模は小さい。
リスクと懸念
マイクロン一社への依存
売上の約12%(105億円)を一社が占める。メモリ半導体は市況の波が大きく、増設の時期がずれたり、自家発電や電力への切り替えが進んだりすれば、数量と利益に直接響く。前期は業務用の販売量が5%減っており、増設の効果はまだ数字に出ていない。
利益率の低さと固定費の重さ
営業利益率は1.8%で、少し売上が減れば赤字に近づく。導管の維持費と償却は売上が減っても減らない。2025年3月期の営業利益は12億円まで落ちた。会社予想の20億円(2027年3月期)も、過去12年の中央値32億円には届かない。
家庭用の需要減
家庭用の販売量は前期に1.5%減った。人口減と電化が続けば、導管の固定費を負担する顧客が減り、料金を上げにくくなる。戸数は10年続けて増えているが、1戸あたりの使用量が減っている。
原料費調整のずれ
LNGの価格が急騰すると、料金への転嫁が数か月遅れ、その間の利益が圧迫される。逆に下落局面では差益が出て、見かけの利益が膨らむ。実力と見かけの利益がずれやすく、年ごとの振れが大きい。
金利上昇による利払いの増加
純有利子負債は233億円ある。借り換えで金利が3.5%前後に上がると、10年で利益が年6億円ほど減る。設備更新の投資が建築費の上昇で膨らむと、借入が増えてさらに利払いが重くなる。
会社目標に実績の裏づけがない
2030年ビジョンの経常利益70億円、自己資本利益率8%以上は、足元の水準の2.5倍と3倍弱にあたる。電力小売と再エネの投資が、資本コストを超える稼ぎを生むかは未確認だ。目標が未達なら、資本は低い稼ぎのまま眠り続ける。
脱炭素への置き換え
2040年代以降、水素や合成メタンへの切り替えが進めば、導管の改修と新しい燃料の調達に多額の投資が要る。地方のガス会社は規模が小さく、費用を薄めにくい。
今後の分かれ目
- マイクロンの新棟が前倒しで稼働し、ガスの供給契約が拡大する
- 業務用の数量が上振れ、強気の筋書きの確率が上がる。
- 業務用の販売量が2年続けて前年を下回る
- 数量横ばいの中立が崩れ、やや弱気の確率が上がる。
- 営業利益が会社予想の20億円を割る
- 利益の戻りが遅れており、中立の利益水準を下げて見直す。
- 政策保有株を売却し、還元か成長投資に回す方針が出る
- 資本効率が上がり、自己資本利益率の見通しが改善する。
- 電力小売や再エネの営業利益が5億円を超える
- 導管以外の稼ぎが育っており、その他事業の筋書きを上方に見直す。
- LNG価格が急騰し、原料費調整の遅れが1年以上続く
- 一時的に利益が圧迫され、やや弱気の確率が上がる。
見ておくもの
- 都市ガス販売量の内訳(業務用・家庭用・卸供給)
- マイクロン向け売上と新棟の稼働時期(2028年後半の装置搬入)
- 営業利益の会社予想(2027年3月期は20億円)への進捗
- 電力小売「このまち電気」と再エネ開発の利益
- 純有利子負債と利払い
- 政策保有株の売却と配当性向
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。事業の自己資本利益率(中立3.5%前後)が資本コスト7.75%に届かないので、PERの上限は1÷k=12.5倍。導管の堀はあるが、利益率が薄く大口一社に偏る質の弱さを見て、中立は上限の約76%の9.5倍に置いた。強気は92%、やや強気は84%、やや弱気は68%。悲観側は事業の稼ぐ力と政策保有株の税引き後から出した。kは基本7.5%に品質+0.5%を足して8.0%。今の株価や市場の倍率には寄せていない。
純有利子負債は時価総額の8割で、今の営業利益16億円ではEV÷営業利益が30倍を超えるが、利益が谷にあるためで、10年後の38億円では約15倍になる。減価償却は取得時の値段のまま、今の75億円前後から10年で85億円ほどに増える程度とみた。更新投資は建築費の上昇で膨らみ、償却を上回る分は借入で賄う。新リース会計基準で2028年3月期から数字の形が変わるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→12.9 倍・やや楽観 PER 10.5→12.9 倍・中立 PER 9.5→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。