結論
九州電力は川内1・2号機・玄海3・4号機の原子力4基を含む発電・送配電・小売を担う九州地域の旧一般電気事業者で、2026年10月には持株会社「キューデンホールディングス」体制へ移行する大手電力9社で最初の事例となる。2023年3月期は燃料高騰で純利益564億円の赤字に沈み、資本増強のためB種優先株式2,000億円を発行したが、2024年3月期以降は原子力4基の高い稼働率により火力の燃料費が下がり、純利益は1,500億円前後まで回復した。送配電事業は国が認可する規制収益で底を支えるが、2026年3月期は需給調整市場の調整交付金単価の低下で経常利益が7割近く落ち込み、収益のぶれは発電・販売部門だけでなく送配電にも及ぶことを示した。最大の追い風はTSMCの熊本工場(JASM)本格稼働に伴う半導体産業の新規電力需要で、変電所増強など系統投資が進んでいる。一方で自己資本比率は19.9%と大手電力9社の中でも低く、純有利子負債は時価総額の3.6倍に達し、金利上昇局面での利払い増が利益を削る。中期経営ビジョン2035では2030年度の連結経常利益目標を現在より低い1,800億円に置くなど、会社自身も収益の正常化を保守的に見ている。原子力の稼働継続と半導体需要の取り込みを軸に10年の本質価値を測ると、利益は名目でほぼ横ばいにとどまり、利払い増も重い。中立のROEは6%と資本コスト8%を下回り、本質価値は今の時価総額を4%ほど下回り、適正と見る。送配電の営業利益率は、直近の特殊な低さから戻すものの、2025年3月期の3.6%前後を大きく超えない5.5%に置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、送配電の地域独占と、60年運転の認可を得た川内1・2号機を含む原子力4基という既存資産は、今すぐには再現できない堀であり、再稼働が続くほど株主に残るオーナー利益は厚くなる構造にある。送配電事業は国が収益を認可する規制事業であり、10年先まで見通しやすい収益という点は予測できる事業を好む立場から評価できるが、2026年3月期に経常利益が7割近く落ち込んだように、規制の範囲内でも収益は動く。発電・小売部分は燃料費調整の範囲でしか価格を決められず、卸電力市場や国際燃料市況という予測できない変数に業績が揺らされる事業でもある。資本配分については、2023年の優先株式発行による資本増強からの回復途上にあり、自己資本比率19.9%という財務の薄さは安全域を取るうえで確信度を下げる要因である。TSMC熊本工場の需要取り込みという10年の成長機会は大きいが、系統投資の回収は資本集約的で、稼いだ利益のすべてが株主のものになるわけではない。資本コスト8%を上回るROEが続けば別だが、中立のROEは6%にとどまり、今の時価総額は本質価値とほぼ並ぶ。財務の脆さという安全域の薄さを考えると、割安とまでは言えない。
何で稼ぐ会社か
九州電力グループは発電・小売を担う「発電・販売事業」、送配電網を独占的に運用する「送配電事業」、情報通信子会社QTnetなどが展開する「ICTサービス事業」、不動産開発・賃貸等の「都市開発事業」の4つの事業セグメントで構成される。発電・販売事業は売上の8割強を占める中核で、川内1・2号機・玄海3・4号機という原子力4基(玄海1・2号機は廃止済み)を軸に、火力(LNG・石炭)・水力を組み合わせて発電する。原子力は一度動けば燃料費が火力より大幅に安く、川内1・2号機は運転40年を超えて60年運転の認可を既に得ており、稼働率が上がるほど火力の焚き減らしが進んで利益が上振れする構造が最大の特徴である。送配電事業は国が認可するレートベースに基づく公正収益を得る規制事業で、発電・販売事業の振れを吸収する安定の土台だが、2026年3月期は需給調整市場の調整交付金単価が下がり経常利益が前年から7割近く落ち込むなど、規制の仕組みの中でも収益は動く。ICTサービス事業はQTnetなどが展開する光ブロードバンド・データ通信・データセンター事業で、データセンター需要の追い風を受けやすい利益率の高い事業に育っている。都市開発事業は不動産開発・賃貸などを担い、受取配当金の増加などで利益率が高い年もある非電力の成長領域である。2026年10月1日には純粋持株会社「キューデンホールディングス」を設立し、2027年4月1日に事業を各事業会社へ移管する大手電力9社で初めての持株会社体制に移行する予定で、グループ経営の全体最適と各事業会社の迅速な意思決定を狙う。
優良さと弱いところ
堀の核は、送配電の地域独占と、九州エリアで約8割のシェアを維持する旧一電としての顧客基盤にある。原子力4基は川内1・2号機が60年運転の認可を得て長期の稼働が見込め、稼働率が上がるほど燃料費が下がる構造は、関西電力の原発7基ほどの規模ではないが同様に機能する。一方で価格を決める力は燃料費調整の範囲に限られ、卸電力市場や国際燃料市況には影響力を持たない。資本効率はROE13.0%(2026年3月期)まで改善したが、これは2023年の優先株式発行による資本増強と原子力の高稼働が重なった良い年の数字で、自己資本比率は19.9%(優先株を除くと16.6%)と大手電力9社の中でも低く、純有利子負債は時価総額の3.6倍に達する財務の脆さが最大の弱点である。2023年3月期の純利益564億円の赤字を受けてみずほ銀行・日本政策投資銀行・三菱UFJ銀行を引受先とするB種優先株式2,000億円を第三者割当発行した経緯は、自力での資本増強力の限界を示している。経営面では、2026年10月に大手電力9社で初めて持株会社体制へ移行する決定は、グループ経営の規律を強める試みと評価できるが、実際の効果が表れるのは2027年4月の事業移管後である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界は燃料費調整という自動調整の仕組みを持つため、短期の燃料高・円安は数カ月遅れで価格に反映されるのが通常だが、2022年度は調整の上限と発電コストの急騰が重なり、四国電力を除く8社が経常赤字に陥った。九州電力も2023年3月期に純利益564億円の赤字となった一社である。循環的には、原子力4基の再稼働が一巡し、2026年3月期は定期検査の重なりで稼働日数が前期比44日増え、設備利用率は約84%の見通しにとどまる段階にあり、検査スケジュールが業績を左右する。構造的な変化としては、TSMCの熊本工場(JASM)が本格稼働し、熊本県内総電力需要の約2割を半導体産業が占める見通しになるなど、生成AI・半導体の拡大による新規需要が最大の追い風で、弓削変電所など変電所の増強工事(計80億円超)が2027年6月までに順次稼働する予定である。一方で、九州は太陽光など変動性再エネの導入量が全国トップで、出力制御の実施でも先行しており、2026年度の出力制御率は再エネ全体で6.9%程度の見込みと、再エネの導入拡大が送配電の運用コストと収益構造に影響を与え続ける。人口減少による家庭用需要の縮小、新電力との低圧シェア争い(新電力シェアは全国平均に近い水準)、脱炭素投資(再エネ・次世代革新炉の検討)の負担が中長期の逆風として併存する。次世代革新炉(革新軽水炉・SMR・高温ガス炉)の開発・設置は検討段階にあり、玄海1・2号機の建て替えについて「現時点で決まったものはない」としている。
資本政策と M&A
株主還元は2026年3月期に増配し、配当性向は15.9%から2027年3月期には19.0%へ上昇する見込みで、自己株式取得よりもまず配当性向の正常化を優先する方針がうかがえる。2025年5月公表の「九電グループ経営ビジョン2035」では2025〜35年度で総額約2.5兆円(脱炭素1.5兆円、成長投資・M&A・DX1兆円)を投じる計画を掲げるが、2030年度の連結経常利益目標は1,800億円程度と、2025年度実績の2,070億円より低い保守的な数字にとどめており、原発4基が既に全て再稼働済みで新たな上振れ材料が乏しいことの裏返しでもある。2023年8月には最終赤字を受けてB種優先株式2,000億円を第三者割当発行し、自己資本比率20%以上の目標に向けた資本増強を行った経緯があり、今後も自己資本比率の改善ペースが還元の余力を左右する。M&Aは次世代革新炉の検討やデータセンター関連の系統投資が中心で、他社を買う・買われるという再編の当事者になる動きは今のところ乏しいが、2026年10月の持株会社体制への移行は、将来の事業再編やM&Aの受け皿を整える布石とも読める。
還元の点検(P3 2026-10-19):開示は配当性向15.9%→19.0%と正常化の途上で、自社株買いは優先せず、2.5兆円の投資計画がある。10年の還元が純利益の53%は厚すぎるので、同業の関西・東北電力(32%前後)に合わせて35%に下げ、留保は自己資本に残した。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の1,402億円が10年後に約 1,520億円。更新投資は建築費の上昇で膨らみ、足りない分は借入になって利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。送配電などの規制事業の償却と利払いは託送料金で売上に戻るので、この数字は規制外の分だけだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
原子力4基の稼働がこのまま続けば、火力の燃料費がさらに浮き、燃料費調整のラグに悩まされる場面も減っていく。川内1・2号機は60年運転の認可を既に得ており、2054年度の廃炉完了目標まで長期の稼働が見込める。TSMC熊本工場(JASM)の本格稼働で半導体産業が熊本県内総電力需要の約2割を占める見通しとなり、変電所増強工事も27年6月までに順次稼働する予定で、データセンター・半導体の新規需要は人口減少で頭打ちの家庭用需要を補って余りある成長ドライバーになりうる。ICTサービス事業(QTnet等)はデータセンター事業を含み、データセンター需要の拡大がこの事業にも追い風になる。都市開発事業も受取配当金の増加などで利益率が高い年があり、非電力の多角化が育てば規制料金や燃料費調整に縛られない収益源が広がる。2026年10月の持株会社体制への移行は大手電力9社で初めての試みで、グループ経営の全体最適と各事業会社の迅速な意思決定が実現すれば、資本効率の改善につながる。配当は2026年3月期に増配し、配当性向は2027年3月期に19.0%へ上昇する見込みで、株主還元の正常化も進んでいる。市場がなお自己資本比率の低さや送配電の利幅低下を警戒してPBR0.79倍にとどめているのは行き過ぎで、原子力の安定稼働とTSMC需要が定着すれば評価は上に見直される余地がある。
慎重な見方
自己資本比率19.9%(優先株を除くと16.6%)という財務の薄さは大手電力9社の中でも低く、純有利子負債は時価総額の3.6倍に達する。2023年3月期の赤字で資本増強のためにB種優先株式2,000億円を発行した経緯があり、同程度の燃料高騰や原子力の長期停止が再び起きれば、同じ資本増強が繰り返されるリスクがある。送配電事業は規制事業で安定しているはずだが、2026年3月期は需給調整市場の調整交付金単価低下で経常利益が前年から7割近く落ち込んだように、規制の範囲内でも収益のぶれは無視できない。原子力4基は川内1・2号機が運転40年を超え60年運転に入っており、老朽化した原子炉の長期運転には安全対策工事や追加の規制対応のコストが積み重なるリスクが残る。TSMC熊本工場の需要も九州電力だけのものではなく、競合エリアや自家発電にシェアを奪われる可能性があり、系統接続の順番待ちや再エネ賦課金・環境規制の強化で期待したほどの上積みにならないリスクもある。九州は太陽光など変動性再エネの導入量が全国トップで出力制御の実施でも先行しており、2026年度の出力制御率は再エネ全体で6.9%程度の見込みと、再エネ関連のコストと収益構造への影響が今後も続く。金利上昇で借金の借り換えコストが増える分、純利益は10年で年842億円ほど押し下げられる計算になり、財務の脆さと合わせて株主に残る価値を削る要因になる。
どちらに重みを置いたか
原子力4基の稼働とTSMC熊本の需要取り込みは九州電力だけの強みだが、自己資本比率の低さ、送配電の利幅低下、金利上昇による借り換えコスト増は楽観を強く主張しすぎない理由になる。TSMC需要の定着を重く見つつ、財務の脆さをk(資本コスト)でなく確率で表し、やや悲観・悲観を10年で37%に厚くした。送配電の利益率を2025年3月期の実績(3.6%前後)の延長で置くと、中立の利益は今とほぼ同じ名目額にとどまり、ROEは6%と資本コストを下回る。正当化PERは1÷kの12.9倍の7.8割(10.1倍)に置き、結果は今の時価総額を7%ほど上回る適正の水準になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,513 円1.66 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,014 円4,796 億円)。 今の値に割り戻すと 2,318 円1.10 兆円、今との差 +16.6%、 期待の年率 +8.6%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 7,830 円3.70 兆円 | 1,545 円7,305 億円 | +371.7% | +16.8% | 937 円4,432 億円 |
| やや楽観 | 21% | 5,228 円2.47 兆円 | 1,289 円6,094 億円 | +227.9% | +12.6% | 1,369 円6,470 億円 |
| 中立 | 32% | 3,424 円1.62 兆円 | 1,051 円4,971 億円 | +125.2% | +8.5% | 1,432 円6,771 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,639 円7,747 億円 | 796 円3,761 億円 | +22.5% | +2.0% | 609 円2,877 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,060 円5,010 億円 | 449 円2,124 億円 | −24.1% | −2.7% | 181 円856 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,513 円1.66 兆円 | 1,014 円4,796 億円 | +127.8% | +8.6% | 4,528 円2.14 兆円 |
今の株価時価総額 1,988 円9,396 億円(2026-10-09)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% TSMC熊本需要が定着し原子力4基が長期安定運転を続ける 利益 2,629 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 7,830 円3.70 兆円
原子力4基が大きなトラブルなく10年間運転を続け、川内1・2号機は60年運転の認可の範囲で安定的に稼働し続ける。TSMC熊本工場を核とした半導体産業の電力需要が九州エリアに定着し、弓削変電所に続く系統増強投資が各地で進み、新規の大口契約が相次ぐ。送配電事業は調整交付金単価の問題が解消して営業利益率が8%まで戻り、ICTサービス事業(QTnet等)はデータセンター需要を取り込みながら利益率2割超を維持する。都市開発事業も不動産・法人サービスで収益源として育つ。2027年4月の持株会社体制への移行後、グループ経営の効率化が資本効率の改善として表れ、自己資本比率は20%台まで改善し、株主還元も拡大する10年になる。
(名目の前提)販売電力量は実質(人口減とTSMC熊本の新しい需要の差し引き)、電気の単価は燃料費調整と規制料金の仕組みで物価に遅れて追いつく。借金の借り換えで利払いが10年後に年842億円ほど増える分を純利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,402億円が10年後に約 1,520億円(物価で一律に増やすと約 1,149億円)。営業利益は +371億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。送配電などの規制事業(償却の約38%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 発電・販売事業:数量 1,062(販売電力量等(億kWh、推定))× 価格 28(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 29,580 億円・営業利益 3,625 億円。数量+18%(TSMC・半導体の集積)・単価1.36倍・利益率12.3%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,520億円)
- 送配電事業:数量 1,093(送配電量(億kWh、推定))× 価格 10(託送料金単価(円/kWh、推定))→ 売上 11,014 億円・営業利益 881 億円。数量1.15倍・価格1.33倍(名目)・営業利益率8.0%
- ICTサービス事業:数量 116(契約・需要の指数(2026年3月期=100))× 価格 20(単価の指数(2026年3月期=100))→ 売上 2,292 億円・営業利益 229 億円。数量1.16倍・価格1.30倍(名目)・営業利益率10.0%
- 都市開発事業:数量 125(事業規模の指数(2026年3月期=100))× 価格 3.69(単価の指数(2026年3月期=100))→ 売上 461 億円・営業利益 92 億円。数量1.25倍・価格1.36倍(名目)・営業利益率20.0%
倍率:事業の純利益 2,629 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.08 倍、時価総額 37,016 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:原子力4基の長期安定運転とTSMC熊本需要の大幅な上振れが10年間続く必要があり、実現すれば大きいが連続した好条件を要するため確率は抑えた。
やや楽観 21% 原子力とTSMC需要が着実に収益を支える 利益 1,937 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 5,228 円2.47 兆円
原子力4基の運転が10年間おおむね安定して続き、川内1・2号機の60年運転が計画通り進む。TSMC熊本工場に続く半導体・データセンターの新規需要が九州エリアで着実に積み上がり、送配電事業の投資回収も計画どおりに進む。ICTサービス事業は競争の中でも利益率を維持し、都市開発事業も緩やかに成長する。持株会社体制への移行後の効果は限定的だが、自己資本比率の改善は続き、市場の評価が一気に上振れるには至らない10年になる。
(名目の前提)販売電力量は実質(人口減とTSMC熊本の新しい需要の差し引き)、電気の単価は燃料費調整と規制料金の仕組みで物価に遅れて追いつく。借金の借り換えで利払いが10年後に年842億円ほど増える分を純利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,402億円が10年後に約 1,520億円(物価で一律に増やすと約 1,194億円)。営業利益は +326億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。送配電などの規制事業(償却の約38%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 発電・販売事業:数量 1,008(販売電力量等(億kWh、推定))× 価格 27(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 27,456 億円・営業利益 2,797 億円。数量+12%・単価1.33倍・利益率10.2%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,520億円)
- 送配電事業:数量 1,055(送配電量(億kWh、推定))× 価格 9.85(託送料金単価(円/kWh、推定))→ 売上 10,391 億円・営業利益 727 億円。数量1.11倍・価格1.30倍(名目)・営業利益率7.0%
- ICTサービス事業:数量 113(契約・需要の指数(2026年3月期=100))× 価格 19(単価の指数(2026年3月期=100))→ 売上 2,113 億円・営業利益 190 億円。数量1.13倍・価格1.23倍(名目)・営業利益率9.0%
- 都市開発事業:数量 120(事業規模の指数(2026年3月期=100))× 価格 3.60(単価の指数(2026年3月期=100))→ 売上 433 億円・営業利益 78 億円。数量1.20倍・価格1.33倍(名目)・営業利益率18.0%
倍率:事業の純利益 1,937 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.76 倍、時価総額 24,716 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:原子力4基の運転継続とTSMC熊本需要の着実な取り込みが大きな波乱なく進む展開で、bullほどの上振れを要しないためbaseに次ぐ確率を置いた。
中立 32% 規制事業の安定と原子力稼働で成熟インフラとして評価される 利益 1,295 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,424 円1.62 兆円
原子力4基の運転が10年間大きなトラブルなく続くが、新たな増設や60年を超える運転の議論は進まない。TSMC熊本工場の新規需要が家庭用需要の緩やかな減少を上回り、販売電力量は10年で緩やかな増加にとどまる。送配電事業は規制収益で安定するが調整交付金単価の低下の影響が完全には消えず、営業利益率は5.5%と、直近の特殊な低さ(1%)や2025年3月期の3.6%前後からは戻すが、規制収益の枠を大きく超えない。ICTサービス事業・都市開発事業も緩やかに成長する。2027年4月の持株会社体制への移行は実務的な再編にとどまり、自己資本比率は20%前後まで緩やかに改善する。九州電力は成長株としてではなく、原子力と送配電を抱える成熟した規制事業として評価される10年になる。
(名目の前提)販売電力量は実質(人口減とTSMC熊本の新しい需要の差し引き)、電気の単価は燃料費調整と規制料金の仕組みで物価に遅れて追いつくが、ICTサービス事業の通信料金は競争で物価ほど上がらない。借金の借り換えで利払いが10年後に年842億円ほど増える分を純利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,402億円が10年後に約 1,520億円(物価で一律に増やすと約 1,235億円)。営業利益は +285億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。送配電などの規制事業(償却の約38%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 発電・販売事業:数量 954(販売電力量等(億kWh、推定))× 価格 27(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 25,399 億円・営業利益 2,063 億円。数量+6%(人口減とTSMC需要の差し引き)・単価1.30倍・利益率8.1%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,520億円)
- 送配電事業:数量 1,026(送配電量(億kWh、推定))× 価格 9.70(託送料金単価(円/kWh、推定))→ 売上 9,955 億円・営業利益 548 億円。数量1.08倍・価格1.28倍(名目)・営業利益率5.5%
- ICTサービス事業:数量 110(契約・需要の指数(2026年3月期=100))× 価格 18(単価の指数(2026年3月期=100))→ 売上 1,956 億円・営業利益 156 億円。数量1.10倍・価格1.17倍(通信競争で物価よりやや低い)・営業利益率8.0%
- 都市開発事業:数量 115(事業規模の指数(2026年3月期=100))× 価格 3.52(単価の指数(2026年3月期=100))→ 売上 405 億円・営業利益 65 億円。数量1.15倍・価格1.30倍(名目)・営業利益率16.0%
倍率:事業の純利益 1,295 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 16,188 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:原子力4基の運転継続とTSMC熊本需要の緩やかな取り込みが、大きな上振れも下振れもなく進むのが最も自然な道筋であるため、5つの筋書きで最も高い確率を置いた。
やや悲観 25% TSMC需要が期待ほど伸びず送配電の利幅低下も続く 利益 604 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 1,639 円7,747 億円
TSMC熊本工場に続く半導体・データセンターの新規需要が期待したほど九州エリアに向かわず、系統接続の順番待ちや再エネ賦課金・環境規制の強化もあって新規大口契約の積み上がりが鈍る。新電力・自家発電へのシェア流出が続き、低圧分野のシェアはさらに低下する。送配電事業の調整交付金単価の低下が長期化し、規制事業としての利幅も下がったまま続く。原子力4基のいずれかで長期の安全対策工事が発生し、燃料費の低下が一部剥落する。自己資本比率の改善ペースは鈍る10年になる。
(名目の前提)販売電力量は実質(人口減とTSMC熊本の新しい需要の差し引き)、電気の単価は燃料費調整と規制料金の仕組みで物価に遅れて追いつく。借金の借り換えで利払いが10年後に年842億円ほど増える分を純利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,402億円が10年後に約 1,520億円(物価で一律に増やすと約 1,348億円)。営業利益は +172億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。送配電などの規制事業(償却の約38%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 発電・販売事業:数量 882(販売電力量等(億kWh、推定))× 価格 25(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 22,037 億円・営業利益 1,274 億円。数量-2%・単価1.22倍・利益率5.8%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,520億円)
- 送配電事業:数量 950(送配電量(億kWh、推定))× 価格 9.10(託送料金単価(円/kWh、推定))→ 売上 8,641 億円・営業利益 389 億円。数量1.00倍・価格1.20倍(名目)・営業利益率4.5%
- ICTサービス事業:数量 102(契約・需要の指数(2026年3月期=100))× 価格 16(単価の指数(2026年3月期=100))→ 売上 1,674 億円・営業利益 100 億円。数量1.02倍・価格1.08倍(名目)・営業利益率6.0%
- 都市開発事業:数量 105(事業規模の指数(2026年3月期=100))× 価格 3.25(単価の指数(2026年3月期=100))→ 売上 342 億円・営業利益 41 億円。数量1.05倍・価格1.20倍(名目)・営業利益率12.0%
倍率:ROE2.6%がkを下回り正当化PBRは0.3倍台まで下がるが、送配電の規制資産の価値を床に、今の自己資本11928億円の0.55倍に置いた。稼ぐ力(純利益485÷k8%=約6,300億円)に近い水準。純有利子負債を足したEV÷営業利益は約20倍と20倍並みだが、利益が沈んだ年で測ったためで、この筋書きの値は資産の価値で見ている。(還元を方針に合わせて再計算:還元 4394→3553 億円、自己資本 18476→19317 億円、事業の ROE 2.6%→2.5%、正当化 PER の上限 12.9→12.9 倍。上限に対する置き方の割合は変えず 0.55 倍)
確率:TSMC熊本需要の上振れが他エリアに流れる、あるいは新電力・自家発電にシェアを奪われ続ける展開は、10年という期間では相応の確率で起こりうるため2割超を置いた。
悲観 12% 原子力の長期停止とシェア流出で優良さを失う 利益 −281 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,060 円5,010 億円
国内のどこかで原子力事故や重大なトラブルが起き、安全審査が全国的に厳格化され、川内1・2号機を含む複数基が長期間停止する。火力への依存が再び強まり、燃料費調整の恩恵も薄れる。TSMC熊本工場に続く半導体・データセンターの新規需要は競合エリアに奪われ、九州エリアでの立ち上がりが期待したほど進まない。新電力・自家発電へのシェア流出も止まらず、送配電事業の規制収益だけでは資本コストを満たせなくなる。2023年の優先株式発行のような追加の資本増強が再び必要になり、政策保有株式や非中核資産の売却で配当の原資を確保する展開になる。この10年で九州電力は「原子力を持つ地域電力」という評価を失い、資本の重い成熟企業として扱われるようになる。
(名目の前提)販売電力量は実質(人口減とTSMC熊本の新しい需要の差し引き)、電気の単価は燃料費調整と規制料金の仕組みで物価に遅れて追いつく。借金の借り換えで利払いが10年後に年842億円ほど増える分を純利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の1,402億円が10年後に約 1,520億円(物価で一律に増やすと約 1,440億円)。営業利益は +80億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 17億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約38%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 発電・販売事業:数量 765(販売電力量等(億kWh、推定))× 価格 24(平均単価(円/kWh、燃料費調整後))→ 売上 18,017 億円・営業利益 260 億円。数量-15%・原子力の長期停止で利益率1.4%・償却は物価で増やさず按分(10年後 1,520億円)
- 送配電事業:数量 855(送配電量(億kWh、推定))× 価格 8.72(託送料金単価(円/kWh、推定))→ 売上 7,453 億円・営業利益 224 億円。数量0.90倍・価格1.15倍(名目)・営業利益率3.0%
- ICTサービス事業:数量 90.0(契約・需要の指数(2026年3月期=100))× 価格 15(単価の指数(2026年3月期=100))→ 売上 1,368 億円・営業利益 55 億円。数量0.90倍・価格1.00倍(名目)・営業利益率4.0%
- 都市開発事業:数量 90.0(事業規模の指数(2026年3月期=100))× 価格 2.98(単価の指数(2026年3月期=100))→ 売上 268 億円・営業利益 13 億円。数量0.90倍・価格1.10倍(名目)・営業利益率5.0%
倍率:ほぼ無利益のため資産で測る。原子力の長期停止でこの会社の優良さを失う筋書きで、送配電という規制資産の清算価値を見て、今の自己資本11928億円の0.42倍に置いた。純有利子負債を足したEV÷営業利益は約50倍と高くなるが、利益が極小の年で測ったためで、この筋書きの値は資産の価値で見ている。
確率:原子力の長期停止(新たな安全規制・事故後の全国的な審査厳格化など)とTSMC熊本需要の他エリアへの流出、資本増強の再発が重なる複合的な展開で、頻度は低いが10年という期間では無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
発電・販売事業
家庭・企業向けに電気を販売する中核事業。原子力4基(川内1・2号機、玄海3・4号機)と火力・水力を組み合わせて発電する。
| 数量販売電力量等(億kWh、推定) | 価格平均単価(円/kWh、燃料費調整後) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 900 | 20 | 18,432 | 1,228 |
| 10 年後 中立 | 954 | 27 | 25,399 | 2,063 |
取り方:2026年3月期の発電・販売事業売上18,429億円を、販売電力量の推定900億kWh(小売+他社向けの概算)で割った平均単価。経常利益1,364億円の9割を営業利益の近似値とした(金融収支等の差を考慮)。数量は実質(人口減とTSMC熊本の新しい需要の差し引き)、単価は燃料費調整で燃料価格に数か月遅れて連動する。
送配電事業
九州エリアの送配電網を独占的に運用し、国が認可するレートベースに基づく公正収益を得る規制事業。
| 数量送配電量(億kWh、推定) | 価格託送料金単価(円/kWh、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 950 | 7.58 | 7,201 | 74 |
| 10 年後 中立 | 1,026 | 9.70 | 9,955 | 548 |
取り方:送配電事業売上7,205億円を、送配電量の推定950億kWh(流通量含む概算)で割った託送料金単価。経常利益82億円(前年比-68.8%、需給調整市場の調整交付金単価低下等で急減した特殊に低い年)の9割を営業利益の近似値とした。託送料金はレベニューキャップ制度で5年ごとに国が収入の上限を決め、物価や設備投資の反映には数年遅れる。
ICTサービス事業
QTnet等が展開する光ブロードバンド・データ通信・データセンター事業。データセンター需要の追い風を受けやすい。
| 数量契約・需要の指数(2026年3月期=100) | 価格単価の指数(2026年3月期=100) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 15 | 1,520 | 95 |
| 10 年後 中立 | 110 | 18 | 1,956 | 156 |
取り方:ICTサービス事業売上1,520億円・経常利益106億円(9割を営業利益の近似値)。契約・需要の増加を指数100として置き、データセンター需要の追い風を受けやすい。通信料金は競争で物価ほど上がらない。
都市開発事業
不動産開発・賃貸等を担う非電力の事業。受取配当金などを含む。
| 数量事業規模の指数(2026年3月期=100) | 価格単価の指数(2026年3月期=100) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 2.71 | 271 | 46 |
| 10 年後 中立 | 115 | 3.52 | 405 | 65 |
取り方:都市開発事業売上271億円・経常利益51億円(前年比+50%、受取配当金増。9割を営業利益の近似値)。事業規模を指数100として置いた。
リスクと懸念
財務の脆さと資本増強の繰り返し
自己資本比率は19.9%(優先株を除くと16.6%)と大手電力9社の中でも低く、純有利子負債は時価総額の3.6倍に達する。2023年3月期の赤字では資本増強のためB種優先株式2,000億円を第三者割当発行した経緯があり、同程度の燃料高騰や原子力の長期停止が重なれば、同じような資本増強が繰り返されるリスクがある。金利上昇局面では利払い増が利益を一段と圧迫する。
原子力の稼働率と検査スケジュール
川内1・2号機・玄海3・4号機の原子力4基は既に全て再稼働済みで新たな上振れ材料が乏しく、2026年3月期は定期検査の重なりで稼働日数が前期比44日増え、設備利用率は約84%の見通しにとどまる。川内1・2号機は運転40年を超えて60年運転に入っており、老朽化した原子炉の長期運転には追加の安全対策工事や規制対応のコストが積み重なるリスクが残る。
燃料費調整のラグと規制料金の上限
輸入燃料価格・円安が急騰すると、低圧の規制料金に残る調整上限のために費用の増加が価格に追いつかず、2022年度のように一時的な赤字に陥る。2023年3月期には実際に純利益564億円の赤字となった。ラグの期間と深さが業績の振れを決める最大の変数で、ドル円が150円の前提から大きく崩れればさらに影響が長引く。
送配電事業の利幅の不確実性
送配電事業は国が認可する規制収益で安定しているはずだが、2026年3月期は需給調整市場の調整交付金単価の低下などで経常利益が前年から68.8%落ち込んだ。レベニューキャップ制度の運用や調整交付金の仕組みが変わるたびに、規制事業であっても利幅が振れるリスクが残り、送配電投資の回収計画に影響する。
TSMC熊本需要の取り込み競争
TSMCの熊本工場(JASM)本格稼働に伴う半導体産業の新規電力需要は大きな追い風だが、競合エリアや企業の自家発電にシェアを奪われる可能性があり、系統接続の順番待ちや再エネ賦課金・環境規制の強化で期待したほどの上積みにならないリスクがある。需要が他エリアに流れれば弓削変電所などの系統増強投資の回収も遅れる。
再エネ出力制御と脱炭素投資の負担
九州は太陽光など変動性再エネの導入量が全国トップで、出力制御の実施でも先行しており、2026年度の出力制御率は再エネ全体で6.9%程度の見込みである。再エネ拡大・次世代革新炉の検討など脱炭素関連の投資がかさみ、系統増強投資とも重なることで、資本配分の規律が問われる局面が10年のどこかで来る。
持株会社体制移行の実効性
2026年10月に大手電力9社で初めて純粋持株会社「キューデンホールディングス」体制へ移行するが、事業移管は2027年4月1日からで、グループ経営の全体最適や各事業会社の迅速な意思決定という狙いが実際に資本効率や収益力の改善につながるかは、移行後の運用を見るまで分からない。
今後の分かれ目
- TSMC熊本工場に続く半導体・データセンターの新規大口契約が相次ぐ
- 送配電事業の投資回収が前倒しで進み、10年の数量見通しが上方に修正される。
- 原子力4基のいずれかで想定外の長期停止や追加の安全対策工事が発生する
- 火力への依存が強まり燃料費が膨らみ、10年の筋書きも下方に見直す必要が出る。
- 2022年度級の燃料・卸電力価格の急騰と円安が再来する
- 燃料費調整のラグの間、一時的な赤字に陥る可能性があり、悲観の筋書きに現実味が増す。
- 自己資本比率が20%以上の目標に向けて改善が進む
- 財務の脆さが和らぎ、金利上昇局面での利払い増の影響が相対的に小さくなる。
- 送配電事業の調整交付金単価や需給調整市場の仕組みが変わり利幅が戻る
- 規制事業の安定収益としての評価が回復し、本質価値の見方が上向く。
- 持株会社体制への移行(2027年4月の事業移管)後にグループ経営の効率化が明確に表れる
- 資本効率の改善が進み、評価の見直しにつながる。
- 新電力・自家発電への低圧シェアの流出が加速する
- 発電・販売事業の数量見通しが下方修正され、10年の中立・悲観の確率が入れ替わる可能性がある。
見ておくもの
- 原子力4基の稼働率・定期検査スケジュール
- TSMC熊本工場向けの新規大口契約と変電所増強工事の進捗(2027年6月目標)
- 送配電事業の経常利益・調整交付金単価の推移
- 自己資本比率の改善ペースと優先株式の扱い
- 持株会社体制への移行(2027年4月事業移管)の進捗と効果
- 燃料費調整額とLNG・石炭・原油価格、ドル円の推移
倍率と資本コストの決め方
発電・販売事業・送配電事業・ICTサービス事業・都市開発事業の数量に名目の単価を掛けて利益を積み、倍率は利益ベースの正当化PER(=(1−g÷RONIC)÷(k−g))を上限にした。kは基本7.5%に、循環−0.25%・送配電の規制−0.5%・借金+1%を入れた7.75%。中立はROEが6%でk以下なので上限は1÷k=12.9倍で、その7.8割(10.1倍)、やや楽観8.2割、楽観8.5割に置いた。関西電力・東北電力が7.5〜8割なので、自己資本比率の低い九州電力だけ高く置く理由はない。送配電の営業利益率は、直近の特殊な低さ(1%)でも2025年3月期の3.6%前後でもなく、中立5.5%(中部電力の5.5%・東北電力の6.5%と同じ範囲)に置いた。直す前は中立12%(直近の16倍)で、同業から大きく外れていた。純有利子負債3.4兆円を足したEV÷営業利益は中立で20倍前後と20倍を下回る。悲観は今の自己資本に0.42〜0.55倍を掛けて資産の価値から出した。今のPERやPBR、過去・同業の倍率には寄せていない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。