結論
エフオンは、間伐材などの木を燃やして発電する発電所を5か所持ち、その電気を国の固定価格買取制度(FIT)で売る会社だ。筆者の結論は「割高」である。FITの単価は20年間名目で変わらないのに、燃料と人件費は物価とともに上がる。10年かけて利幅が削られ、借金の重さが残る。
利益の細りはもう数字に出ている。営業利益率は2018年6月期の28%から、ここ数年は2〜8%に落ちた。日田と白河の2か所は2027年ごろにFITが切れ、そこからは市場の値段で売るしかない。
会社は電力の小売を伸ばし、卒FITの電気を自社で売る道を作っている。筋は通るが、小売は卸市場の振れに弱く、2026年6月期は赤字だった。
帳簿の純資産は時価総額の2.7倍ある。だが発電所はFITが切れれば稼ぎが落ち、帳簿の値はそのまま株主の価値にならない。借金の重さも効く。純負債は158億円あり、営業のキャッシュフローの多くは返済に回る。返し終える頃には、FITの残りの年数も短くなっている。
筆者は、今の値段は本質価値を大きく上回ると見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「帳簿は厚いが、稼ぐ力が年ごとに目減りする」型である。純資産は時価総額の2.7倍あるが、その大半は発電所だ。発電所の価値はFITの残りの年数で決まり、帳簿の値ではない。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は小さい。営業のキャッシュフローは年30億円近いが、その多くは借入の返済に消える。借金を返し終える頃には、FITも切れている。
値段を自分で決められない事業は、物価の上がる世界で不利だ。FITの単価は固定で、燃料は相手が値段を決める。この両方から挟まれる。
筆者は、この会社を長く持ちたいとは思いにくい。安く見えるのは帳簿の上だけで、稼ぐ力から見た安全域は無い。償却が終わって会計の利益が上がる年が来ても、それは発電所の寿命が近いという意味でもある。
見るべきは帳簿ではなく、卒FITの電気を燃料代より高く売れるかどうかだ。そこに答えが出るまで、筆者は慎重でいたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は木質バイオマス発電だ。日田(大分)、白河(福島)、豊後大野(大分)、壬生(栃木)、新宮(和歌山)の5か所で、山の間伐材や製材の端材をチップにして燃やす。電気はFITかFIPで電力会社に売る。2026年6月期の発電の売上は、グループ内の取引を含めて169億円、利益は7億円だった。
燃料の確保が事業の要だ。チップの会社から買うほか、自社で山林を持ち、木を切り出す。新宮は燃料が集まらず、稼働率は約78%にとどまる。中計では燃料を運ぶ距離を縮め、陸送の割合を8割に上げる。
二つめの柱が電力の小売で、売上は74億円ある。卸の市場で電気を買い、企業に売る。値段の振れは電力の先物で固定する。2026年4〜6月は市場の値が跳ね、小売は3億円近い赤字になった。先物の利益は営業の外に出るので、営業利益は振れやすい。
三つめが工場の省エネを請け負う事業で、売上は10億円弱と小さい。全社の売上は207億円、営業利益は4億円だった。
営業の外の数字にも注意が要る。経常利益は17億円と営業利益の4倍あったが、その多くは先物の評価益だ。小売の仕入れが高くなる分と打ち消し合うので、筆者はならした純利益を7億円前後と見る。
優良さと弱いところ
強みは、地域の山から燃料を集める仕組みと、20年の買取の約束だ。FITの間は売る量と値段が決まっているので、稼ぎは読みやすい。山林を自社で持ち、木を切る人を抱える会社は多くない。
だが、これは堀、つまり他社がまねできない強みとしては弱い。値段は国が決めたもので、自社で上げられない。燃料の木は建材や他の発電所と取り合いになり、値段は相手が決める。物価が年3%で上がる世界では、固定の単価は年ごとに目減りする。
資本効率も低い。自己資本利益率は過去10年の中央値で8%だが、ここ5年は2〜6%だ。発電所は借金で建て、純負債は158億円ある。営業利益に対する利払いの余裕は薄い。
経営は小売で卒FIT後の道を作ろうとしている。筋は良いが、小売は卸市場の高騰で損を出しやすく、まだ利益の柱になっていない。筆頭株主の日本テクノも電力の会社で、小売の顧客づくりで協力の余地はある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
木質バイオマス発電は、FITが作った市場だ。2012年に制度が始まり、未利用の間伐材には高い買取単価が付いた。各地に発電所が建ち、燃料の木の取り合いが起きた。今は新しい案件の単価が下がり、入札とFIPへの移行が進む。
業界の課題は燃料と卒FITだ。チップの値段は、運ぶ人手と燃料費の上昇で上がってきた。輸入のヤシ殻を使う会社は為替にも振られる。エフオンは国内の木が中心で為替の影響は小さいが、木の取り合いは避けられない。
2030年代には、多くの発電所のFITが順に切れる。切れた後は卸の市場で売るか、企業と直接契約する。天気に左右されない再エネとして価値を認める買い手もいるが、燃料代を払っても残る値で売れるかはわからない。
業界の見通しでは、新しい案件は採算が下がり、金利と建設費の上昇で開発は鈍る。筆者は、エフオンの10年は新しい発電所よりも、今の5か所の利幅をどう守るかで決まると見る。
金利も逆風だ。発電所は借金で建てる事業なので、10年国債が3%の世界では新しい案件の採算はさらに厳しい。既存の発電所の借入も、借り換えのたびに利払いが増える。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当は年1.7億円ほどで、配当性向は14〜24%にとどまる。会社は安定した配当を続け、残りは財務の強化と次の事業に回すとしている。自社株買いの実績はほとんど無い。
借金は発電所ごとの融資が中心で、豊後大野、壬生、新宮の借入が2031〜2041年にかけて返される。財務制限条項が付いているので、赤字が続けば返済の条件を見直すことになる。
筆頭株主は日本テクノで、32.6%を持つ。光通信も大量に保有する。筆頭株主の意向が強く、外からの買収は起きにくい。逆に、筆頭株主が残りを買い取る可能性はある。その時の値段は、本質価値とは別に決まる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
帳簿の純資産は197億円で、時価総額の2.7倍ある。発電所は借金で建てたが、借入は約定どおり返っている。返すほど株主の取り分は増える。
会社の今期の予想は営業利益18億円で、前期の4倍だ。2026年6月期の不振は、卸市場の一時的な高騰と新宮の燃料難によるもので、どちらも直せる。新宮の稼働率は前期より10ポイント上がった。
卒FITは脅威だけではない。木を燃やす発電は天気に左右されず、夜も動く。データセンターや工場は、昼も夜も使える再エネの電気を求めている。卒FITの電気を自社の小売で売れば、環境の価値を上乗せできる。
豊後大野と壬生の機械の償却は2030年代に終わり、会計の利益は上がる。九州で7基目の構想もある。
筆頭株主の日本テクノは電力の会社で、小売の販路づくりで力を借りられる。光通信も大量に株を持つ。いずれ資本の再編が起きれば、帳簿の資産に近い値が付く可能性もある。今の値段は帳簿の4割に満たず、悪い話はかなり織り込んでいる。
慎重な見方
FITの単価は名目で固定され、物価の上がる世界では毎年目減りする。燃料のチップ、人件費、修繕の費用は物価で上がる。営業利益率は8年で28%から一桁に落ちた。この流れは止まらない。
日田と白河のFITは2027年ごろに切れる。切れた後は市場の値段で売るしかないが、燃料代を賄える値で売れる保証は無い。豊後大野、壬生、新宮も2036〜2038年に順に切れる。10年後の時点で、残るFITの年数はわずかだ。
純負債は158億円あり、営業利益に対する利払いの余裕は薄い。財務制限条項もある。小売は卸市場の高騰で赤字を出した。先物の利益で穴を埋めても、営業の外に出る利益は質が低い。
帳簿の資産は、FITが切れれば値を失う。
筆頭株主が32.6%を持ち、還元は配当性向で2割前後にとどまる。資産の値を株主に戻す仕組みは無い。買収の思惑だけで値段を支えるのは、バリュー投資の考え方ではない。償却が終わって利益が増えて見えても、それは発電所の寿命が近い印だ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。FITの固定単価と物価の上昇という構造は、会社の努力で変えられない。償却が終わる分と小売の伸びは下支えになるが、費用の上昇を埋めきれない。確率は中立を40%とし、悲観側に37%を置いた。楽観は、卒FITの電気が企業に高く売れる姿だけだ。帳簿の資産の厚さは、稼ぐ力が戻らない限り株主の価値にならないと判断した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 263 円56 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 67 円14 億円)。 今の値に割り戻すと 161 円34 億円、今との差 −53.3%、 期待の年率 −0.4%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 718 円152 億円 | 118 円25 億円 | +143.1% | +9.3% | 50 円11 億円 |
| やや楽観 | 17% | 438 円93 億円 | 95 円20 億円 | +54.9% | +4.5% | 91 円19 億円 |
| 中立 | 40% | 283 円60 億円 | 80 円17 億円 | +5.5% | +0.5% | 145 円31 億円 |
| やや悲観 | 24% | 103 円22 億円 | 38 円8 億円 | −58.9% | −8.5% | 34 円7 億円 |
| 悲観 | 13% | 56 円12 億円 | 19 円4 億円 | −78.3% | −14.2% | 10 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 263 円56 億円 | 67 円14 億円 | −4.2% | −0.4% | 330 円70 億円 |
今の株価時価総額 344 円73 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 九州の新設と卒FIT電気の高値で、利益が倍に 利益 13 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 718 円152 億円
データセンターや工場が、昼も夜も使える再エネの電気を求める。木を燃やす発電は天気に左右されないので、この電気に高い値が付く。エフオンは日田と白河の卒FITの電気を自社の小売で企業に売り、環境の価値を上乗せして稼ぐ。
九州で7基目の発電所が動き、送電量は今の1.15倍になる。自社の山林と陸送で燃料の値上がりも抑える。発電の利益率は7%、小売は5%に上がる。全社の営業利益は23億円、純利益は13億円になる。借金は新しい発電所の分だけ増えるが、古い借入は返し終える。
筆頭株主との協力で小売の顧客も増え、配当は少しずつ増える。それでも自己資本利益率は5%に届かず、資本コストは超えない。
- 木質バイオマス発電(グリーンエナジー):数量 520(送電量(GWh・推定))× 価格 36(1kWhあたりの平均の売値(円))→ 売上 187 億円・営業利益 13 億円。送電量1.16倍・単価0.96倍(卒FITの電気も高値)・利益率7%
- 電力小売:数量 480(販売電力量(GWh・推定))× 価格 39(1kWhあたりの売値(円))→ 売上 187 億円・営業利益 9 億円。販売量1.81倍・単価1.39倍・利益率5%
- 省エネルギー支援サービス:数量 25.0(契約の件数(件・推定))× 価格 0.68(1件あたりの年間の売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。件数1.25倍・単価1.43倍・利益率10%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 152 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新しい発電所と、卒FITの電気を高く売る仕組みの両方が要る。燃料の値上がりを抑える実績もまだ無いので6%とした。
やや楽観 17% 小売が育ち、卒FITの穴を埋める 利益 8 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 438 円93 億円
日田と白河のFITは2027年ごろに切れるが、発電所は止めずに自社の小売で売る。卸の市場の値段は物価とともに上がり、卒FITの電気もそれなりの値で売れる。
小売の販売量は今の1.5倍になり、先物で仕入れを固定して利益率4.5%を保つ。発電は燃料と人件費の上昇に押されるが、豊後大野と壬生の機械の償却が終わり、利益率5%を守る。営業利益は15億円前後、純利益は8億円になる。借入は順に返り、利払いは今並みにとどまる。
配当は少し増えるが、自己資本利益率は3%台にとどまる。帳簿の資産は厚いままで、稼ぐ力が資本に追いつかない。
- 木質バイオマス発電(グリーンエナジー):数量 450(送電量(GWh・推定))× 価格 35(1kWhあたりの平均の売値(円))→ 売上 155 億円・営業利益 8 億円。送電量1.00倍・単価0.92倍(FITは名目で固定・卒FITは市場の値)・利益率5%
- 電力小売:数量 400(販売電力量(GWh・推定))× 価格 38(1kWhあたりの売値(円))→ 売上 152 億円・営業利益 7 億円。販売量1.51倍・単価1.36倍・利益率4.5%
- 省エネルギー支援サービス:数量 22.0(契約の件数(件・推定))× 価格 0.66(1件あたりの年間の売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。件数1.1倍・単価1.38倍・利益率9%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 93 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の今期予想は営業利益18億円で、中計も小売の拡大を掲げる。その延長が続く姿として17%とした。
中立 40% FITの固定単価に物価が追いつき、利益は細る 利益 4 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 283 円60 億円
FITの単価は20年間、名目で変わらない。一方で燃料のチップ、人件費、修繕の費用は物価とともに上がる。発電の利益率は今の4%から3%弱に細る。償却が終わる分が下支えになるが、費用の上昇を埋めきれない。
日田と白河は卒FIT後も動かし、自社の小売を通して市場並みの値で売る。小売は販売量を4割近く増やし、利益率4.4%で6億円を稼ぐ。全社の営業利益は10億円前後、利払い3.5億円を引いた純利益は4億円台にとどまる。配当は今の額を続け、借入は約定どおり返す。
10年後の時点で、豊後大野、壬生、新宮のFITは残り0〜2年しかない。その先の稼ぎはさらに細るので、帳簿の自己資本に見合う値は付かない。
- 木質バイオマス発電(グリーンエナジー):数量 420(送電量(GWh・推定))× 価格 33(1kWhあたりの平均の売値(円))→ 売上 139 億円・営業利益 4 億円。送電量0.93倍・単価0.88倍(FITは名目で固定、日田・白河は卒FITで市場の値)・利益率2.9%
- 電力小売:数量 360(販売電力量(GWh・推定))× 価格 38(1kWhあたりの売値(円))→ 売上 135 億円・営業利益 6 億円。販売量1.36倍・単価1.34倍・利益率4.4%
- 省エネルギー支援サービス:数量 20.0(契約の件数(件・推定))× 価格 0.64(1件あたりの年間の売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。件数1.0倍・単価1.34倍・利益率7.8%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 1.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 52 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:FITの単価は名目で固定され、燃料と人件費は物価で上がる。過去8年で利益率が27%台から一桁に落ちた流れの延長として、最も起こりやすい姿の40%とした。
やや悲観 24% 燃料高と卒FITで、営業赤字に 利益 −5 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 103 円22 億円
木材の需要が建設とバイオマス発電の取り合いで強まり、チップの値段が物価より速く上がる。新宮の燃料難も解けない。発電の利益は赤字に沈む。
日田と白河は卒FIT後に市場の値でしか売れず、燃料代を賄えない。小売も卸市場の振れで利益率2%にとどまる。全社は小さな営業赤字になり、利払いを引くと純損失が続く。配当は途中で止まり、借入の財務制限条項に近づく。自己資本は横ばいだが、発電所が稼がないので価値は帳簿を大きく下回る。
残るFITの発電所も、切れる時期が近づくほど売り値が下がる。筆頭株主が支えるので倒れはしないが、少数株主の取り分は細る。
- 木質バイオマス発電(グリーンエナジー):数量 380(送電量(GWh・推定))× 価格 31(1kWhあたりの平均の売値(円))→ 売上 118 億円・営業利益 −2 億円。送電量0.84倍・単価0.82倍・利益率−2%
- 電力小売:数量 280(販売電力量(GWh・推定))× 価格 35(1kWhあたりの売値(円))→ 売上 98 億円・営業利益 2 億円。販売量1.06倍・単価1.25倍・利益率2%
- 省エネルギー支援サービス:数量 18.0(契約の件数(件・推定))× 価格 0.60(1件あたりの年間の売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。件数0.9倍・単価1.26倍・利益率5%
倍率:純損失で稼ぐ力の床は無い。純負債の会社で純現金の床も無い。発電所はFITの残りの年数ぶんしか値が付かないので、今の自己資本に0.10倍を掛けた。
確率:2024/06期と2026/06期に利益率が2〜3%まで落ちた実績があり、新宮は燃料難が続く。卒FITの2か所が採算割れになる姿は十分ありうるので24%とした。
悲観 13% 発電所が採算割れ、減損と借入の条件に追われる 利益 −15 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 56 円12 億円
燃料の値段が上がり続け、FITの残る発電所も赤字になる。卒FITの2か所は止める。送電量は3分の2に減る。小売も卸市場の高騰を先物で防ぎきれず、損を出す年がある。
全社は年10億円前後の営業赤字になり、発電所の減損で自己資本は100億円近くまで減る。借入の財務制限条項にかかり、銀行と返済の条件を見直す。配当は早くに止まる。筆頭株主の日本テクノが支えるかどうかが、会社の行方を決める。
少数株主に残るのは、借入を返した後の山林と、細った小売の事業だけになる。借入を返すために発電所を手放せば、その売り値も銀行に回る。
- 木質バイオマス発電(グリーンエナジー):数量 300(送電量(GWh・推定))× 価格 29(1kWhあたりの平均の売値(円))→ 売上 87 億円・営業利益 −9 億円。送電量0.67倍・単価0.77倍・利益率−10%
- 電力小売:数量 150(販売電力量(GWh・推定))× 価格 33(1kWhあたりの売値(円))→ 売上 50 億円・営業利益 −1 億円。販売量0.57倍・単価1.18倍・利益率−2%
- 省エネルギー支援サービス:数量 15.0(契約の件数(件・推定))× 価格 0.55(1件あたりの年間の売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。件数0.75倍・単価1.15倍・利益率0%
倍率:赤字が続き、発電所の減損で自己資本は減る。純現金も売れる資産の床も無い(山林と発電所の売り値は借入の返済に回る)ので、今の自己資本に0.06倍を掛けた。
確率:FITの単価が固定のまま燃料と金利が上がり続けると、全部の発電所が赤字になりうる。過去にも赤字が4期続いた。構造的に負ける姿として13%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
木質バイオマス発電(グリーンエナジー)
日田・白河・豊後大野・壬生・新宮の5か所で間伐材などの木を燃やして発電し、FIT・FIPで売る。燃料の山林・素材生産も含む。
| 数量送電量(GWh・推定) | 価格1kWhあたりの平均の売値(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 450 | 38 | 169 | 7 |
| 10 年後 中立 | 420 | 33 | 139 | 4 |
取り方:送電量の開示は無い。5発電所の出力の合計を約7万kW、稼働率を約75%と見た推定の450GWhに、FIT単価(円/kWh、未利用材は32〜40)の平均として約37.6を掛けた。売上はセグメント間の取引を含む169.1億円、利益7.22億円(2026/06期の有報)。GWh×円×0.01で億円。
電力小売
自社の発電所の電気と市場から買った電気を、企業などに売る。電力先物で仕入れ値を固定する。
| 数量販売電力量(GWh・推定) | 価格1kWhあたりの売値(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 265 | 28 | 74 | −3 |
| 10 年後 中立 | 360 | 38 | 135 | 6 |
取り方:販売量の開示は無い(前期の倍とだけある)。高圧・特別高圧の単価(円/kWh)を約28と見て、売上74.1億円から264.5GWhと推定。損失2.89億円は2026年4〜6月の卸市場の高騰による。先物の実現益3.97億円は営業外にある。
省エネルギー支援サービス
工場などの省エネ設備を入れて、減った光熱費の中から料金を受け取るESCO事業。
| 数量契約の件数(件・推定) | 価格1件あたりの年間の売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 20.0 | 0.48 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 0.64 | 13 | 1 |
取り方:件数の開示は無い。セグメント売上9.54億円(内部取引込み)を約20件と見た推定。利益0.69億円。
リスクと懸念
FITの単価が名目で固定
FITの買取単価は20年間変わらない。燃料、人件費、修繕の費用が物価で上がると、利幅は年ごとに削られる。営業利益率が8年で28%から一桁に落ちたのは、この構造の表れだ。
卒FITの採算
日田と白河は2027年ごろ、豊後大野と壬生は2036年前後、新宮は2038年ごろにFITが切れる。切れた後は市場の値で売るしかなく、燃料代を払って利益が残るかはわからない。
燃料の確保と値段
木材は建材や他の発電所と取り合いになる。新宮は燃料が集まらず稼働率が約78%にとどまる。チップの値上がりは利益を直接削る。
電力小売と卸市場の振れ
小売は卸の市場で電気を買う。2026年4〜6月の高騰で小売は約3億円の赤字になった。先物で固定しても、利益が営業の外に出て数字が読みにくい。
借金と財務制限条項
純負債は158億円で、発電所ごとの借入に財務制限条項が付く。赤字が続けば返済の条件を見直すことになり、金利の上昇も利益を削る。
筆頭株主の影響
日本テクノが32.6%を持つ。経営の方針や還元は筆頭株主の意向に左右され、少数株主の取り分が後回しになるおそれがある。
今後の分かれ目
- 2027年6月期に会社予想どおり営業利益18億円を出した
- 新宮の燃料難と小売の損が一時的だったとみて、やや楽観の確率を上げる。
- 日田と白河の卒FIT後の電気を、企業との長期契約で高く売れた
- 卒FITの単価を引き上げ、楽観側の利益を厚くする。
- チップの値段が物価より速く上がり、発電の利益が赤字になった
- やや悲観と悲観の確率を厚くする。
- 九州の7基目の発電所が採算の取れる条件で決まった
- 送電量を上げ、楽観の筋書きに近づける。
- 筆頭株主や事業会社が株式を買い取る提案を出した
- 買付けの値段で評価が決まる。本質価値の計算は止め、分析の対象から外す。
見ておくもの
- 発電の利益率と新宮の稼働率
- 日田・白河の卒FIT後の売り方と単価
- 電力小売の販売量と利益
- チップの調達の値段と陸送の割合
- 純負債と財務制限条項
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。10年後の事業のROEは中立で約2%とk 8.5%に届かないので、PERの上限は1÷k≒11.1倍。2036年以降もFITが順に切れるので、中立は7.5倍に置いた。悲観側は純損失で稼ぐ力の床が無く、純負債の会社で現金の床も無いので、今の自己資本に低いPBRを掛けた(PBRが0.2倍を下回る注意は、この理由で残す)。過去のPBRは使っていない。純負債が重いので、EVでも見た。償却は物価で増やさず取得原価のままとし、豊後大野・壬生の機械の償却が終わって中立の10年後は約12億円(今は約25億円の推定)。その分の費用減は発電の利益率に入れた。FIT単価は名目で固定なので、発電の単価は物価で上げていない(中立0.88倍の注意はこの理由)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.76 倍・やや楽観 PER 8.5→11.76 倍・中立 PER 7.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+1.5%を足した(決まりv2)。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.50%。