結論
静岡ガスは、静岡県を地盤とする中堅の都市ガス会社だ。ガスのほかにLPG、電力、住宅関連も手がける。筆者の結論は「割高」。いちばんの理由は、これから投じる1,000億円超の成長投資が、資本コストを上回る稼ぎを約束していないことにある。
2025年12月期の営業利益141億円は、実力より少し良く見える。原料費調整のずれで生じた一時の利益が、経常利益で2割ほど入っているからだ。会社自身の補正後の経常利益は118億円で、この水準が今の稼ぐ力に近い。
国内のガス販売量は人口減で細る。ただ、価格は物価に連れて上がるので、売上はおおむね横ばいで続く。筆者の中立は、10年後の営業利益が今の補正後より1割ほど多い程度だ。物価の3%に追いつくのがやっとで、実質では増えない。
財務は強い。自己資本比率は67%、純現金は147億円ある。ただしこの現金は、会社の計画ではほぼ使い切り、借入で投資を賄う前提だ。余った現金として別に数えない。
中立の自己資本利益率は5%前後で、資本コスト7.25%に届かない。強気の筋書きでも7%どまりだ。10年の価値は今の時価総額を3割ほど下回る。支配株主グループと東京瓦斯が株を厚く持つため、買収で報われる道は細い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を「安全だが、資本の使い方が弱い会社」と見る。
オーナーとして持ち続けたいかを問えば、答えは条件つきになる。ガス導管という堀は10年後も残る。事業の寿命は長く、倒産の心配もない。ただ、堀の中で稼ぐ利益は薄く、自己資本利益率は資本コストに届かない時期が長い。
価値を決めるのは、稼いだ利益を何に使うかだ。静岡ガスは、これから3年で1,000億円超を投じる。増えるのは成長事業への投資で、期待できる投下資本利益率は5%台にとどまる。資本コストを下回る投資が積み上がれば、利益が増えても価値は増えない。筆者がいちばん気にしているのは、ここだ。
安全域の面でも、今の値段に余裕は見えない。帳簿の自己資本は厚いが、その2割ほどは株式で、稼ぐ力に結びつかない。中立で測った価値は、今の時価総額を3割弱下回る。政策保有株の売却が計画より早く進み、投資の利回りが上がるなら、評価は上向く。
わからない部分も正直に書く。米国のシェールガスや再エネ、蓄電池は、まだ収益の実績が乏しい。予測しにくい事業に、小さな会社が大きく賭ける。確信度は下げて考える。
何で稼ぐ会社か
静岡ガスは、静岡県を中心に都市ガスを売る地域のガス会社だ。供給するガス顧客は約36万戸で、2025年12月期の都市ガス販売量は約16億立方メートル。売上は約2,000億円で、利益の大半はガス事業で稼ぐ。
稼ぎの源は3つある。1つ目は都市ガスと電力だ。ガスの原料はLNG(液化天然ガス)で、価格は原料費調整制度により、仕入れ値の変化が数か月遅れて料金に乗る。販売量は工場など産業用が主力で、家庭用の比重は小さい。電力は子会社の静岡ガス&パワーが売り、2027年には自前の発電所が動き出す。
2つ目はLPG(プロパンガス)などのエネルギー事業だ。導管の届かない地域の家庭や、産業用に容器でガスを届ける。販売店の買収で顧客を増やす計画で、利益は年によって大きく振れる。24年12月期は36億円、23年12月期は13億円だった。
3つ目は、住宅関連のくらしサービス、エンジニアリング、海外などの小さな事業群だ。不動産会社を全株取得し、中古住宅の買取・再生・販売に乗り出した。海外では2025年に米国子会社を設け、シェールガス権益を取得した。東南アジアなどにも広げる構えだ。
三つの稼ぎ頭のうち、家庭用が細るガス事業を、電力・再エネ・海外・住宅で補う。これが会社の描く10年の絵である。ただし新事業の利益はまだ小さく、育つまでの投資は重い。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、導管網と規制に守られた地域のガス供給にある。静岡のパイプは新たに敷き直せず、家庭と工場に長くつながる。ここから出る利益は堅い。
ただ、堀は広くない。ガスの値段は原料費調整で決まり、利益率は薄い。25年12月期のガス事業は利益率が9%台だが、一時の利益が混じった数字だ。ならした実力は7%前後と筆者は見る。大きな工場向けは、LPGや重油、電気、自家発電との競争にもさらされる。
資本の使い方には不満が残る。自己資本の2割ほどは株式(投資有価証券)で、利益を生まない。自己資本利益率は過去10年の中央値で6.7%と、資本コストに届いた年が少ない。経営もこれを認め、2030年に8%以上へ上げる目標を置く。
これから投じる資金の稼ぎも気になる。新しい3年計画の投下資本利益率は5%台で、実績の7%台より低い。成長投資は全体の約9割を占める。稼ぎが資本コストを下回る投資を積むと、会社の価値は増えない。
経営の質を示す事実もある。累進配当を掲げ、政策保有株の縮減を進める。不祥事の類は検索の範囲で見当たらなかった。財務の安全は十分で、倒産の心配はない。弱いのは守りでなく、資本を働かせる力だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
都市ガスは、成熟した規制色の濃い事業だ。国内の販売量は人口減とオール電化で、家庭用がゆっくり細る。工場向けは景気と生産に左右されて横ばい圏にとどまる。国内のガス全体で見て、数量は10年で1割弱減るのが標準的な見方だ。
一方、価格は原料費調整により、物価やLNGの値上がりに数か月遅れで追いつく。2021年から22年にかけてLNGが急騰した時は、静岡ガスの利益も一時、波に洗われた。逆に価格が下がる局面では、遅れて入る差益で利益が膨らむ。25年12月期はこの差益が出た年にあたる。
静岡という立地も特徴だ。東京と名古屋に挟まれ、東京瓦斯や東邦瓦斯のような大きな需要地を持たない。LNG基地を自前で運用し、調達では東京瓦斯と協力する。大手に比べ、買い付けの規模や海外の資産で劣る。
電力では中部電力と競う。ガスと電気のセット販売が武器だが、中部電力の顧客基盤は厚い。LPGは地域の販売店が多く、買収で顧客を増やす余地がある。脱炭素の波もある。合成メタンや水素は、静岡ガスにとって先の話で、10年のうちの収益は小さい。
新中計の海外では、米国のシェールガスや東南アジアを狙う。大阪瓦斯のように大きな海外資産を持たないため、規模で見劣りする。中小の都市ガス会社が、資源の上流まで手を広げるのは、うまくいけば大きいが、外れると重い。
資本政策と M&A
資本政策の軸は、累進配当と政策保有株の縮減だ。配当は減らさず、増やす。新中計では配当性向3割を目標に置き、25年12月期の年間配当は前年から増えた。2026年12月期の期末配当は、増額修正も出た。
自社株買いは、事業投資を優先して積極的には行ってこなかった。新中計の3年間では、還元に約120億円、政策保有株の売却で約70億円を見込む。ただし投資は1,070億円で、新規の借入は520億円にのぼる。純現金の会社が、借金を足して成長する会社へ変わる。
株主の構成も大事な点だ。鈴与グループが3割強、エスエスケイフーズが1割強を持ち、東京瓦斯も約7%を保つ。この3者だけで過半に近い。地元の大株主が動かない限り、敵対的な買収は成り立たない。逆に、東京瓦斯との関係が深まれば、再編の可能性は残る。ただし、そのような話は確かめられなかった。
M&Aは、買う側として動く。LPG販売店、住宅会社、海外の資産が対象だ。買収額は小さく、一件の失敗が会社を揺らすことはない。だが数が積み上がれば、投下資本利益率は下がりやすい。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の57億円が10年後に約 79億円。更新投資は建築費の上昇で膨らみ、足りない分は借入になって利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。送配電などの規制事業の償却と利払いは託送料金で売上に戻るので、この数字は規制外の分だけだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
静岡ガスは、守りが堅い会社が攻めに転じる局面にある。純現金と67%の自己資本比率があり、1,000億円超の投資を借入で賄っても財務は傷まない。買ったばかりの米国のシェールガス権益、2027年に動く自前の発電所、系統用蓄電池、再エネ20万キロワットの開発が育てば、ガスだけに頼らない収益の柱が3本できる。
LPGは販売店の買収で顧客が積み上がる。住宅会社の買収は、中古住宅の買取・再生という新しい稼ぎを加える。政策保有株の売却で得る資金は、そのまま投資に回る。会社が掲げる経常利益130億円と自己資本利益率8%は、2028年に前倒しで達成する計画だ。
さらに、東京瓦斯とのLNGの協力関係は20年以上続く。調達の規模で見劣りする弱みを、提携で補える。地元の大株主が長く持つので、経営は目先の株価に振り回されず、10年の計画を腰を据えて進められる。
物価が3%で続く世界では、地域独占の導管は実質の資産価値を保つ。値上げが認められる限り、利益は物価に連れて増える。投資の成果が出れば、利益は今の補正後の水準から大きく伸びる。
慎重な見方
成長投資の稼ぎが資本コストに届かないのが、この会社の弱点だ。新中計の投下資本利益率は5%台で、実績の7%台より下がる。3年で1,070億円を投じ、そのうち520億円は借入で賄う。借金で買った資産が資本コストを下回る稼ぎしか生まなければ、会社の価値は目減りする。
本業の追い風も弱い。家庭用ガスは人口減とオール電化で細り、卸供給先の契約見直しで、ガス販売量は2027年まで減る見通しだ。25年12月期の利益には、原料費調整の差益という一時の要因が含まれ、実力より高く見える。
新事業は小さい。米国のシェールガスは大阪瓦斯などに比べて規模で劣り、価格の波をまともに受ける。再エネや蓄電池は競争が激しく、大きな会社が先に陣取っている。LPGの買収は、買うたびに高値づかみのリスクを抱える。
自己資本の2割ほどは株式で、稼ぎを生まない。資本効率が低いまま、自己資本は10年で5割ほど膨らむ。ROEは5%前後にとどまり、資本コスト7.25%に届かない。安全な会社であることと、割安であることは別のことだ。
どちらに重みを置いたか
本業の堅さと財務の強さは本物だが、成長投資の稼ぎが資本コストを下回りかねないという慎重な見方のほうが、数字の裏付けを持つ。確率は中立を最も厚く置き、やや悲観を楽観側より少し厚くした。悲観は10%を下回らせない。強気の筋書きでも自己資本利益率が資本コストに届かないため、10年の価値は今の時価総額を3割弱下回り、やや割高と見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,509 円1,138 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 475 円358 億円)。 今の値に割り戻すと 1,084 円818 億円、今との差 −18.7%、 期待の年率 +4.1%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,606 円1,965 億円 | 610 円460 億円 | +141.3% | +9.2% | 322 円243 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,112 円1,593 億円 | 565 円426 億円 | +100.9% | +7.2% | 589 円444 億円 |
| 中立 | 34% | 1,698 円1,280 億円 | 493 円372 億円 | +64.4% | +5.1% | 745 円562 億円 |
| やや悲観 | 24% | 693 円522 億円 | 404 円305 億円 | −17.7% | −1.9% | 263 円199 億円 |
| 悲観 | 10% | 400 円302 億円 | 251 円189 億円 | −51.2% | −6.9% | 65 円49 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,509 円1,138 億円 | 475 円358 億円 | +48.8% | +4.1% | 1,984 円1,496 億円 |
今の株価時価総額 1,333 円1,005 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 10% 投資が実り、電力・再エネ・海外が第2の柱になる 利益 139 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,606 円1,965 億円
自前の発電所、蓄電池、再エネの開発が計画どおり進み、海外のシェールガス権益も価格の追い風に乗る。ガス販売量は卸供給の見直しを乗り越えて横ばいに戻り、工場のコジェネ(熱と電気を同時に作る設備)の普及が数量を支える。
LPGは販売店の買収で顧客を厚くし、住宅関連の買収も実を結ぶ。会社の目標である経常利益130億円と自己資本利益率8%は、2030年を待たず達成され、そこから先も伸びる。
東京瓦斯との協力が深まり、LNGの調達条件も改善する。政策保有株の売却で得た資金は成長投資に回り、投下資本利益率は6%台まで上がる。
物価の分だけ料金が上がり、利益は名目で順調に増える。借入が増える分の利払いは重いが、利益の伸びがそれを上回る。(名目の前提)ガス販売量は実質、価格は原料費調整と認可で物価に遅れて追いつく。借入の増加で利払いが年15〜20億円ほど増える分を利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の57億円が10年後に約 79億円(物価で一律に増やすと約 79億円)。営業利益は +0億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 7億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約40%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 都市ガス・電力(ガス事業):数量 1,627(都市ガス販売量(百万m3。卸供給を含む。電力・LNG販売は単価に混ぜた代理指標))× 価格 1.34(1百万m3あたり売上(億円、名目。ガス・電力・LNG販売を混ぜた代理指標))→ 売上 2,185 億円・営業利益 179 億円。数量 1.02 倍・価格 1.38 倍(名目)・営業利益率8.2%・償却は物価で増やさず按分(10年後 79億円)
- LPG・その他エネルギー:数量 125(LPG・その他エネルギーの販売量の指数(2025年12月期=100、実質))× 価格 4.05(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 507 億円・営業利益 46 億円。数量 1.25 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 9.0%
- くらしサービス・エンジニアリング・海外ほか:数量 200(事業量の指数(2025年12月期=100、実質))× 価格 2.20(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 441 億円・営業利益 31 億円。数量 2.00 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 138 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)65 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 1,965 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:3つの新事業が同時に成功し、ガスの利益率も保たれる必要があり、連続した好条件が要るので確率は1割にとどめた。
やや楽観 22% 投資が一部実り、ガス事業を補う 利益 112 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,112 円1,593 億円
自前の発電所と再エネの開発は、計画の6〜7割の速さで進む。海外のシェールガスは安定して利益を出すが、大きくは伸びない。ガス販売量は卸供給の見直しで一度減り、その後は緩やかに戻る。
LPGは買収で顧客を増やし、住宅関連の買収も小さな利益を積む。経常利益は会社の目標にやや届かない水準で伸び、自己資本利益率は6%前後で推移する。
政策保有株の売却は計画どおり進み、還元の原資になる。借入は増えるが、利益で十分に返せる。東京瓦斯との関係は今のまま保たれる。
(名目の前提)ガス販売量は実質、価格は原料費調整と認可で物価に遅れて追いつく。借入の増加で利払いが年15〜18億円ほど増える分を利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の57億円が10年後に約 79億円(物価で一律に増やすと約 80億円)。営業利益は −1億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 9億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約40%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 都市ガス・電力(ガス事業):数量 1,547(都市ガス販売量(百万m3。卸供給を含む。電力・LNG販売は単価に混ぜた代理指標))× 価格 1.32(1百万m3あたり売上(億円、名目。ガス・電力・LNG販売を混ぜた代理指標))→ 売上 2,047 億円・営業利益 155 億円。数量 0.97 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率7.6%・償却は物価で増やさず按分(10年後 79億円)
- LPG・その他エネルギー:数量 115(LPG・その他エネルギーの販売量の指数(2025年12月期=100、実質))× 価格 4.02(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 463 億円・営業利益 39 億円。数量 1.15 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 8.5%
- くらしサービス・エンジニアリング・海外ほか:数量 170(事業量の指数(2025年12月期=100、実質))× 価格 2.19(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 372 億円・営業利益 22 億円。数量 1.70 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 111 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)65 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 1,593 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新事業の一部が成功すれば足りるので、楽観より条件がゆるく、中立に次ぐ確率を置いた。
中立 34% 国内は物価に連れて横ばい、新事業は小さく積み上がる 利益 87 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,698 円1,280 億円
家庭用ガスは人口減とオール電化で細り、販売量は10年で7%ほど減る。工場向けの伸びが一部を埋める。料金は原料費調整と認可で物価に追いつくので、売上は名目で2割ほど増える。
ガス事業の営業利益率は7%前後に落ち着く。2025年12月期の高さは、原料費調整の差益という一時の要因で、続かない。LPGは買収で顧客を増やし、営業利益率は7%台半ばを保つ。
自前の発電所や再エネ、住宅関連、海外は小さく積み上がる。ただし利益は全体の1割にも届かない。投下資本利益率は5%台で、資本コストを下回る。
借入が増えた分の利払いが、純現金だった時の受取利息に代わって利益を削る。配当は累進を保ち、自己資本は10年で5割近く増える。
(名目の前提)ガス販売量は実質、価格は原料費調整と認可で物価に遅れて追いつく。借入の増加で利払いが年15億円ほど増える分を利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の57億円が10年後に約 79億円(物価で一律に増やすと約 81億円)。営業利益は −2億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 10億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約40%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 都市ガス・電力(ガス事業):数量 1,483(都市ガス販売量(百万m3。卸供給を含む。電力・LNG販売は単価に混ぜた代理指標))× 価格 1.30(1百万m3あたり売上(億円、名目。ガス・電力・LNG販売を混ぜた代理指標))→ 売上 1,934 億円・営業利益 133 億円。数量 0.93 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率6.9%・償却は物価で増やさず按分(10年後 79億円)
- LPG・その他エネルギー:数量 108(LPG・その他エネルギーの販売量の指数(2025年12月期=100、実質))× 価格 3.99(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 431 億円・営業利益 32 億円。数量 1.08 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 7.5%
- くらしサービス・エンジニアリング・海外ほか:数量 140(事業量の指数(2025年12月期=100、実質))× 価格 2.17(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 304 億円・営業利益 15 億円。数量 1.40 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 86 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)65 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 1,248 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内は堅く、新事業は少しずつ育つという道筋が最も自然で、5つの筋書きの中でいちばん高い確率を置いた。
やや悲観 24% ガス離れが速まり、投資の稼ぎが資本コストを割り込む 利益 46 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 693 円522 億円
家庭用ガスの電化代替が想定より速く進み、卸供給先の契約見直しも続く。ガス販売量は10年で13%ほど減り、導管の維持費を薄まった顧客で負担する構図が強まる。
料金は物価に遅れて追いつくが、工場向けの競争で値上げが通りきらない。ガス事業の営業利益率は6%を割り込む。LPGは競合の販売店との値下げ競争で利益が細る。
自前の発電所は完成するが、電力の卸価格が下がり稼ぎは小さい。再エネと蓄電池は大手との競争で採算が出ず、海外のシェールガスもガス安で伸びない。借入だけが残る。
配当は維持するが、自社株買いは見送る。政策保有株の売却も進みにくい。自己資本利益率は3%台に落ちる。
(名目の前提)ガス販売量は実質、価格は原料費調整と認可で物価に遅れて追いつく。借入の増加で利払いが年17億円ほど増える分を利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の57億円が10年後に約 79億円(物価で一律に増やすと約 84億円)。営業利益は −5億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 13億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約40%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 都市ガス・電力(ガス事業):数量 1,388(都市ガス販売量(百万m3。卸供給を含む。電力・LNG販売は単価に混ぜた代理指標))× 価格 1.26(1百万m3あたり売上(億円、名目。ガス・電力・LNG販売を混ぜた代理指標))→ 売上 1,755 億円・営業利益 97 億円。数量 0.87 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率5.5%・償却は物価で増やさず按分(10年後 79億円)
- LPG・その他エネルギー:数量 98.0(LPG・その他エネルギーの販売量の指数(2025年12月期=100、実質))× 価格 3.87(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 380 億円・営業利益 23 億円。数量 0.98 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 6.0%
- くらしサービス・エンジニアリング・海外ほか:数量 115(事業量の指数(2025年12月期=100、実質))× 価格 2.11(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 242 億円・営業利益 7 億円。数量 1.15 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益÷自己資本は約3%でkを大きく下回り、ROE÷kから見た自己資本の価値は0.4倍台。稼ぐ力(純利益÷k)の範囲で、純利益58億円に9.0倍を掛けた。PBRは約0.29倍。
確率:電化の加速と投資の不発が同時に起こる筋書きは、10年では相応にありうるので、楽観側より少し厚い確率を置いた。
悲観 10% 電化と投資の失敗で、優良さを失う 利益 −5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 400 円302 億円
電化と省エネが想定を超えて進み、ガス販売量は10年で2割以上減る。工場向けは他の燃料と電気に奪われ、卸供給も縮む。料金の値上げは認可と競争で止まり、導管の維持費が重くのしかかる。
成長投資は裏目に出る。米国のシェールガスはガス安で採算が合わず、再エネと蓄電池は価格競争で稼げない。借入で買った資産の減損で、自己資本は大きく目減りする。
住宅関連の買収も振るわず、LPGは顧客の流出が止まらない。営業利益は小さく、純利益は10億円台にとどまる。
配当は減らして維持し、足りない分は政策保有株などの売却で賄う。静岡ガスは「静岡のガス会社」として生き残るが、成長の看板は降ろす。
(名目の前提)ガス販売量は実質、価格は原料費調整と認可で物価に遅れて追いつくが、競争で十分には通らない。借入の増加で利払いが年25億円ほど増える分を利益から引いた。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の57億円が10年後に約 79億円(物価で一律に増やすと約 86億円)。営業利益は −7億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 23億円(3.5%)を純利益から引いた。送配電などの規制事業(償却の約40%)は、償却と利払いが託送料金(収入上限)などで売上に戻るので、利益には動かしていない。上の数字は規制外の分。
- 都市ガス・電力(ガス事業):数量 1,244(都市ガス販売量(百万m3。卸供給を含む。電力・LNG販売は単価に混ぜた代理指標))× 価格 1.22(1百万m3あたり売上(億円、名目。ガス・電力・LNG販売を混ぜた代理指標))→ 売上 1,513 億円・営業利益 61 億円。数量 0.78 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率4%・償却は物価で増やさず按分(10年後 79億円)
- LPG・その他エネルギー:数量 88.0(LPG・その他エネルギーの販売量の指数(2025年12月期=100、実質))× 価格 3.73(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 328 億円・営業利益 13 億円。数量 0.88 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 4.0%
- くらしサービス・エンジニアリング・海外ほか:数量 90.0(事業量の指数(2025年12月期=100、実質))× 価格 2.03(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 182 億円・営業利益 0 億円。数量 0.90 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 0.0%
倍率:利益がほとんど出ないため、純利益でなく資産で測る。ROEがkを大きく下回り、稼ぐ力(純利益÷k)は小さい。今の自己資本1,313億円の0.23倍を床とし、投資有価証券と非中核資産の売却額(税引き後)から支える。
確率:国内の需要減と成長投資の失敗が重なる複合の筋書きで、頻度は低いが10年では無視できないので、1割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
都市ガス・電力(ガス事業)
静岡県を中心に家庭・工場・商業施設へ都市ガスを売り、電力・LNG販売も手がける中核事業。原料費調整制度で仕入れ値の変化が数か月遅れで料金に乗る。
| 数量都市ガス販売量(百万m3。卸供給を含む。電力・LNG販売は単価に混ぜた代理指標) | 価格1百万m3あたり売上(億円、名目。ガス・電力・LNG販売を混ぜた代理指標) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,595 | 0.97 | 1,552 | 149 |
| 10 年後 中立 | 1,483 | 1.30 | 1,934 | 133 |
取り方:2025年12月期のガス事業の売上1,552億円と利益148.8億円は有価証券報告書のセグメント値。数量は都市ガス販売量15.95億m3(卸供給を含む)、価格は売上をその数量で割った代理指標(ガスだけでなく電力・LNG販売の売上も含む)。利益には原料費調整の差益(経常ベースで約29億円)が入っており、ならした実力はこれより2割ほど低い。数量は実質、価格は名目。
LPG・その他エネルギー
導管の届かない地域の家庭と産業用に容器でLPGなどを届ける事業。販売店の買収で顧客を増やす計画。
| 数量LPG・その他エネルギーの販売量の指数(2025年12月期=100、実質) | 価格指数1点あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 2.98 | 298 | 25 |
| 10 年後 中立 | 108 | 3.99 | 431 | 32 |
取り方:2025年12月期のLPG・その他エネルギーの売上298億円と利益24.6億円は有価証券報告書のセグメント値。開示された販売量がないため、売上を指数100と単価2.98に分けた推定。単価は輸入価格と為替に連動し、利益は年によって13億〜36億円と大きく振れる。
くらしサービス・エンジニアリング・海外ほか
住宅関連(不動産・中古住宅再生)、エンジニアリング、海外などの小さな事業群。成長投資の受け皿。
| 数量事業量の指数(2025年12月期=100、実質) | 価格指数1点あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 1.62 | 162 | 5 |
| 10 年後 中立 | 140 | 2.17 | 304 | 15 |
取り方:セグメント売上の残りを、事業量の指数100と単価1.62に分けた推定(売上は全体2,012億円から、ガス・LPGのセグメント売上を引いた残りで約162億円)。利益は開示が薄く、約5億円と置いた。本社費などの調整は営業利益141億円との差から逆算し、マイナス約38億円。
リスクと懸念
成長投資の稼ぎが資本コストに届かないリスク
新中計の3年間で1,070億円を投じ、約9割が成長投資に向かう。計画の投下資本利益率は5%台で、実績の7%台を下回る。借入で買った資産がこの水準にとどまれば、利益が増えても会社の価値は増えない。投資の中身は電力・再エネ・海外・住宅と広く、一件ごとの規模は小さい。
原料費調整の差益が一時的である点
2025年12月期の経常利益には、仕入れ価格の下落で生じる差益などの一時要因が約2割含まれる(補正前147億円、補正後118億円)。2026年12月期は減益の計画で、実力と見かけの利益がずれやすい。LNGが急騰する年には逆に利益が圧迫される。
家庭用ガスの電化代替と卸供給の縮小
人口減とオール電化で家庭用が細る。会社も、卸供給先との契約見直しで販売量が2027年まで減るとみる。数量の減少を、工場のコジェネ導入や新規顧客で埋められるかが分かれ目になる。
米国シェールガスなど海外投資の価格リスク
2025年に取得した米国のシェールガス権益は、上流事業そのもので、ガス価格の波を直接受ける。大阪瓦斯などに比べて規模が小さく、一度の価格下落で利益が大きく削られる。東南アジアの投資は、現地の規制や為替の影響も受ける。
電力・再エネ・蓄電池での競争
中部電力は静岡県内の電気の顧客基盤を厚く持つ。再エネと系統用蓄電池は、大手が先に動いており、採算の取れる案件が減りやすい。自前の発電所の稼働は2027年で、成果が出るまで時間がかかる。
借入の増加と金利
純現金の会社が、3年で520億円の借入を増やす計画だ。借り換えの金利は3%台半ばへ上がり、受取利息の増加を上回る負担になる。自己資本比率67%の余裕はあるが、利益の薄い会社には利払いが重い。
大株主の構成と再編の見えにくさ
鈴与グループ(約33%)、エスエスケイフーズ(約11%)、東京瓦斯(約7%)で過半に近い。地元の大株主が動かない限り、買収の道はほぼ閉ざされる。再編で報われる期待を価値に入れにくい。
今後の分かれ目
- 成長投資の投下資本利益率が6%を超える
- 利益が資本コストを上回り、強気の筋書きの確率が上がる。
- 政策保有株の売却が計画を上回る速さで進み、売却資金を成長投資や還元に回す
- 資本効率が早く上がり、自己資本利益率の改善が前倒しになる。
- 卸供給の契約見直しでガス販売量が想定以上に減る
- 中立の数量を下方に直し、やや悲観の確率を上げる。
- 米国のガス価格が長く低迷する
- 海外の権益の価値が下がり、悲観側の確率を上げる。
- 東京瓦斯が持ち株比率を高める、または資本提携を深める
- 再編で報われる可能性が出る。ただし鈴与グループの同意が前提で、織り込みにくい。
- ガス料金の規制の見直しで、託送料金や経過措置の制度が変わる
- 導管の利益率が変わる。数量より価格の見通しを直す。
見ておくもの
- 成長投資ごとの投下資本利益率の開示(目標は5%台)
- 補正後経常利益と、会社計画(2026年・2027年・2028年)との差
- 都市ガス販売量(産業用・家庭用・卸供給の内訳)
- 政策保有株の売却の進み具合
- 純有利子負債と利払いの増え方(新規借入520億円の計画)
- 自前の発電所(2027年)、再エネ、蓄電池の稼働と収益
- 東京瓦斯・鈴与グループなど大株主の持ち株比率の変化
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の自己資本利益率(中立5%前後)が資本コスト7.25%に届かないので、上限を1÷k=13.3倍とし、その約8割の10.5倍に置いた。利益に差益が混じる質の弱さと、堀はあるが利益率が薄い点から決めた。強気・やや強気は8.3〜8.9割。悲観側は、今の自己資本と売れる資産の税引き後から出した。k は基本7.5%に、値決め−0.5%・借金+0.25%・寿命+0.25%を入れて7.5%。純現金は3年の計画でほぼ使い切り、別に足さなかった。今の株価や市場の倍率には寄せていない。
(2026-10-19 見直し)政策保有株・不動産の含み益(税後)87億円を余り資産として足した(戻り方0.5)。利益で測る倍率には入らない価値を漏らさないため。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.8→13.79 倍・やや楽観 PER 11→13.79 倍・中立 PER 10.5→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。