結論
北陸瓦斯は、新潟県の新潟・長岡・柏崎で都市ガスを売る地域の会社だ。顧客は約44万件、県内の都市ガス利用者の6割に届く。福井の会社ではない。筆者の結論は「やや割高」。守りは固いが、稼ぐ力が資本コストに届かず、直近の高い利益は続かないとみる。
2026年3月期の営業利益は38億円と前の期の2.7倍に増えた。2024年10月のガス料金改定と、LNG(液化天然ガス)の値下がりが重なった。第4四半期だけで28億円を稼ぎ、利益が期末に偏った。会社自身が今期の営業利益を19億円と見ている。筆者はこの38億円を実力と読まない。
財務は強い。自己資本比率は75%で、現預金は借入を52億円上回る。時価総額は197億円と、純資産の4割にとどまる。だが、これは割安の証拠ではない。自己資本利益率(ROE)は過去10年の中央値が2.6%で、資本コストの7.75%に遠く届かない。ためた利益は、額面より低くしか評価できない。
10年後の中立は、営業利益が31億円前後だ。ガスの数量は人口減で7%ほど減るが、値段は物価に連れて上がる。償却は物価で増やさず、取得時の値段のまま据えるので、会計上の利益は押し上げられる。ただ投資は年80億円規模で、現金はほぼ使い切る。
上振れの芽は株主構成にある。創業家系の敦井産業グループが2026年に買い増し、議決権の24%に達した。光通信も12%を持つ。再編があれば評価は上がる。それでも、10年の価値は今の時価総額をやや下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を「堅いが、持ち主に報いない会社」と見る。
オーナーとして持ち続けたいかと問えば、答えは慎重になる。導管の寡占は10年後も残り、倒産の心配はない。ただ、事業は人口減で細り、稼ぎは資本コストに届かない。資本を積んでも、価値が増えない。
値段を決めるのは、株主に残る利益だ。年に設備へ80億円近くを投じ、償却を差し引いた分は、現金が細る。利益は会計上はふくらんでも、手元に残る額は小さい。10年の中立で、株主に帰属する利益は年27億円前後。これに、資本コストに見合う倍率をかけると、今の時価総額197億円と同じ水準になる。
安全域は、純資産の4割という数字でなく、稼ぐ力から測る。純資産535億円のうち、現預金と政策保有株は約100億円ある。だが、現預金は投資に使い切り、株の配当はすでに利益に入っている。二重には数えない。
確信度は高くない。第4四半期に利益が偏り、期ずれの解け方で年の損益が読みにくい。創業家の買い増しが何を意味するのか、まだ見えない。わからない部分があるぶん、確率は慎重な側へ寄せた。
何で稼ぐ会社か
北陸瓦斯は、新潟県で都市ガスを売る会社だ。供給区域は新潟、長岡、柏崎の3地区で、顧客は2026年3月末で43.7万件。普及率は94%に達する。2026年3月期の売上は644億円、利益の9割はガス事業から出る。
稼ぎの源は、導管を通して売るガスの量と、1立方メートルあたりの値段である。販売量は年4.2億立方メートル。原料は日本海LNGが運ぶインドネシア産LNGと、県内で採れる天然ガスだ。原料の値動きは原料費調整制度で数か月遅れて料金に乗る。この遅れが、利益を年ごとに大きく振らせる。2024年3月期は9億円の営業赤字、2026年3月期は38億円の黒字だった。
ガス以外は小さい。LPG(プロパン)は売上22億円、利益は1億円に届かない。ガス設備の保全・設計施工、住宅設備の販売、土木・管工事は、あわせて売上58億円で利益は3億円ほど。太陽光発電は売上1億円足らずである。家庭向けには「北陸ガス+でんき」という電気とのセット販売も始めた。
この会社の特色は、事業の買い増しにある。県内の市町村が営むガス事業を、次々と譲り受けてきた。柏崎市、見附市、長岡市の川口地区に続き、2025年4月には小千谷市と、長岡市の越路・三島与板・栃尾の各地区を引き継いだ。小千谷は32億円で買い、需要家1.1万件、ガス売上17億円を得た。市営のガス事業は赤字や設備の老朽化に悩むところが多く、売り手は絶えない。
従業員は連結で652人。事業の裾野は広いが、利益の柱はひとつだ。導管で運ぶ都市ガスの数量と単価、そして料金改定のタイミングが、この会社の損益をほぼ決める。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、導管網と地域の独占にある。新潟市と長岡市の街の下に張った管は、他社が敷き直せない。普及率94%の区域で、顧客は簡単には離れない。ここから出る利益は堅い。
ただ、堀は浅い。ガスの値段は原料費調整で決まり、利益率は薄い。強みが値決めの力にならない場面もある。2022年度から2024年3月期にかけてLNGが急騰した時、料金に転嫁するのが遅れ、営業赤字に落ちた。値上げの申請から実施まで時間がかかる。最近の増益も、2024年10月の料金改定でようやく取り戻した利益である。
資本の使い方に不満が残る。自己資本535億円のうち、上場株など政策保有株が51億円、現預金が52億円ある。利益を生まない資産が、自己資本の2割を占める。ROEは過去10年で0.9%から4.6%の間を動き、中央値は2.6%。資本コストを上回った年は一度もない。
経営の質を示す事実は二つある。一つは、市営ガスの譲受けで顧客を増やす手堅い拡大策だ。2025年4月の譲受けで販売量は2.7%増えた。もう一つは配当で、年3.8億円(純利益の1割強)を5期連続で同額に据えている。内部に積むことを優先し、株主へ返す姿勢は薄い。
筆者が気にするのは、この積み上げが報われるかだ。小千谷の買収は32億円で、1件あたりの利益は小さい。投資の見返りが資本コストを上回る保証はない。不祥事の類は検索の範囲で見当たらなかった。財務に倒産の心配はなく、弱いのは守りでなく、資本を働かせる力である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方の都市ガスは、数量が細る産業だ。県の人口は全国より速く減り、家庭向けの需要は10年で1割以上縮むとみる。戸建ては電気への切り替え(オール電化)が進み、新築のガス契約も伸びにくい。工場など業務用は景気で動くが、長い目で見れば横ばいが精いっぱいだ。
値段は逆に、物価に連れて上がる。ガス料金は原料費調整制度で、仕入れ値の変化が数か月遅れで乗る。人件費や工事費の上昇は、料金改定で回収する。改定は準備と手続きに時間がかかり、その間は費用が先に膨らむ。遅れが損益を振らす。この遅れの方向が、近年の増益と過去の赤字を分けた。
競争相手は、東北電力などの電気、LPG、重油だ。大口の顧客は、燃料転換で電気やLPGと比べて選ぶ。都市ガスの強みは、高い安全性と、冬の暖房や給湯での使いやすさにある。弱みは、人口が減る地域に固定の導管網を抱え続けることだ。1件あたりの管の長さは増え、保守の費用は減らない。
地方のガス事業に特有の動きが、市営事業の譲渡である。小さな市は赤字と老朽化で事業を手放し、近隣の民営ガスがこれを買う。託送料金の格差を均すことも目的で、小千谷の譲渡では託送単価が5%上がった。北陸瓦斯は、この再編の受け皿として動いてきた。
脱炭素は長い逆風だ。2050年のカーボンニュートラルに向け、LNGから水素やe-メタンへ切り替える投資が見込まれる。費用の負担は、いまの料金に乗るのか、会社の利益を削るのか、決着していない。10年という期間では、需要が細る速さと、料金改定が間に合うかが、利益を決める。
資本政策と M&A
資本政策は、守りが厚く、還元は薄い。配当総額は年3.8億円、純利益の1割強で、5期連続で同額だ。自己株式は発行済みの約3%を持つが、継続して買い戻す方針は見当たらない。経営の基本方針は「内部留保の充実」で、配当を増やす意志は見えない。
ためた資金は、設備に回る。2026年3月期の設備投資は96億円、うち供給設備が54億円、小千谷の譲受けが32億円、事業用地が11億円。今期の計画も94億円と、営業キャッシュフローの90億円を上回る。現預金52億円は、この投資でほぼ使い切る。余った現金と呼べる額はなく、分けて数えない。
政策保有株は24銘柄で51億円。最大は第四北越フィナンシャルグループで、21億円。この株の配当は営業外収益に入っており、利益に数えている。売る方針は開示されていないので、価値は別に足さない。
いちばん大事な動きは、株主構成にある。敦井産業が2026年5月に買い増し、共同保有者を含めた保有割合は24.3%になった。奨学会などの財団を合わせると、創業家の影響力はさらに厚い。光通信のグループも9月に12.05%まで買い増した。目的は純投資である。創業家グループは、取得資金の一部を借入でまかなった。
この構図は、再編の可能性を高める。創業家による完全子会社化や、光通信を交えた還元の要求は、あり得る筋書きだ。ただ、買い増しの理由は開示されていない。筆者は、確かめられない話を価値に入れず、確率の裏づけにとどめる。
減価償却は物価では増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、年59億円。更新と新規の投資だけが新しい値段で足され、10年後は約52億円に収まる(物価で一律に増やすと約79億円)。会計上の利益は押し上げられるが、更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、現金は細る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社は、料金改定の力を取り戻したところだ。2024年10月の改定で、ガス事業の利益は前の期の3.4倍に増えた。LNGの値下がりも追い風で、第4四半期の営業利益は28億円に達した。人件費が上がっても、改定で回収できる仕組みが動いている。
数量の底も固い。2025年4月の譲受けで、顧客は43.7万件に増えた。県内には、まだ手放したい市営ガスが残る。1件買うたびに、導管の固定費を広い顧客数で割れる。工場の燃料転換で都市ガスが選ばれれば、販売量は人口減を上回って横ばいを保てる。
資本政策にも期待が持てる。敦井産業グループが24%を握り、光通信が12%を持つ。内部に積んだ535億円の自己資本は、時価総額の2.7倍だ。大株主二者が還元を求めれば、配当は増え、自社株買いも出る。創業家が非公開化に動けば、純資産に近い値段がつく。
償却も味方だ。いまある設備の償却は取得時の値段のままで、年59億円は10年で減っていく。更新の投資だけが新しい値段で足される。物価で料金は上がるのに、償却は据え置きなので、営業利益率は5%台に乗る。ガスを売る量と値段が思惑どおりに進めば、営業利益は50億円を超える。
慎重な見方
稼ぐ力が資本コストに届かない。この点が最大の弱みだ。過去10年のROEの中央値は2.6%で、7.75%の資本コストをただの一度も超えていない。一時の増益で、この構造は変わらない。
38億円の営業利益は、料金改定の効果とLNGの値下がりが重なった山だ。会社も今期は19億円と読む。原料費が上がれば、転嫁の遅れでまた赤字がありうる。2024年3月期は9億円の営業赤字だった。
数量は細る。県の人口減と電化で、家庭向けは年に1%以上のペースで縮む。固定の導管網を抱えたまま売る量が減れば、1立方メートルあたりの固定費は膨らむ。値上げは顧客を電気やLPGへ追いやる。
投資は重い。今期の設備投資は94億円で、営業キャッシュフローの90億円を超える。現金は10年で使い切り、更新投資は建築費の上昇で膨らむ。償却を据え置いて会計の利益が上がっても、手元の現金は増えない。
株主構成は期待に変えにくい。創業家グループと光通信の買い増しの理由は開示されていない。非公開化の話は、確かめられない仮定にすぎない。配当は5期同額で、還元は薄いままかもしれない。安全な会社であることと、株主に報いる会社であることは別だ。
どちらに重みを置いたか
導管の寡占と料金改定の力は本物だが、稼ぎが資本コストに届かないという慎重な見方のほうが、数字の裏づけが強い。確率は中立に厚く置き、強気の見方の根拠である直近の高い利益は、山とみて評価しなかった。創業家グループと光通信の買い増しは、上振れの筋書きに確率で反映した。ただ、10年の価値は今の時価総額をやや下回り、判定は「やや割高」となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,651 円310 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,243 円58 億円)。 今の値に割り戻すと 3,927 円183 億円、今との差 −6.8%、 期待の年率 +6.5%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 12,133 円566 億円 | 2,786 円130 億円 | +253.9% | +13.5% | 1,193 円56 億円 |
| やや楽観 | 20% | 9,698 円453 億円 | 1,714 円80 億円 | +170.7% | +10.5% | 2,282 円107 億円 |
| 中立 | 38% | 8,027 円375 億円 | 1,071 円50 億円 | +115.8% | +8.0% | 3,457 円161 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,435 円114 億円 | 857 円40 億円 | −21.9% | −2.4% | 790 円37 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,067 円50 億円 | 643 円30 億円 | −59.4% | −8.6% | 171 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,651 円310 億円 | 1,243 円58 億円 | +87.3% | +6.5% | 7,894 円368 億円 |
今の株価時価総額 4,215 円197 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 料金改定が定着し、譲受けと還元が上振れる 利益 45 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 12,133 円566 億円
ガスの数量は10年でほぼ横ばいを保ち、料金改定の力が定着する。小さな市営ガスの譲受けは、新潟県内でさらに数件続く。工場の燃料転換と、電気とのセット販売が、人口減を埋める。
値段は物価並みに上がり、費用の伸びを抑えて営業利益率は5.7%に乗る。会社が見る今期の19億円は通過点にすぎず、10年後は営業利益が50億円台になる。
創業家グループと光通信の存在が、還元を押し上げる。配当は着実に増え、自社株買いも入る。10年の還元は130億円に達する。
それでも自己資本利益率は6%台で、資本コストを下回る。評価は上限の9割に置いた。
減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得時の値段のまま。更新と新規の投資だけ新しい値段で20年に按分した。償却は今の59億円が10年後に約58億円(物価で一律に増やすと約79億円)。営業利益は +21億円。ただ更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、年80億円超の投資は営業キャッシュフローとほぼ釣り合う。借入に頼る分は利払い3.5%で利益を削る。
- 都市ガス:数量 417(都市ガス販売量(百万立方メートル、45MJ換算))× 価格 1.97(1百万立方メートルあたり売上(億円、名目))→ 売上 819 億円・営業利益 47 億円。数量 1.00 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 5.8%・償却は物価で増やさず按分
- LPG:数量 100(LPG販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.29(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 3.5%
- 設備工事・住宅設備・土木・太陽光:数量 120(事業量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.78(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 94 億円・営業利益 6 億円。数量 1.20 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 45 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 566 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:料金改定の定着、譲受けの継続、株主の還元要求が全部そろう筋書きで、10年では起こりうるが重なる必要がある。8%を置いた。
やや楽観 20% 数量の減りが小さく、利益率が4%台に乗る 利益 35 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 9,698 円453 億円
ガスの数量は10年で3%ほど減るにとどまり、譲受けが数件加わる。料金改定は物価の上昇をおおむね回収し、営業利益率は4.5%まで上がる。
電気とのセット販売と、住宅設備・管工事が少しずつ伸びる。ガス以外の事業は売上が15%ほど増え、利益の厚みが出る。
配当は少しずつ増える。創業家グループが買い増しを続け、経営は還元に前向きになる。10年の還元は80億円。ただ投資は重く、自己資本の積み上がりは続く。
ROEは4%台で、資本コストには届かない。評価は上限の8.5割に置いた。
減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得時の値段のまま。更新と新規の投資だけ新しい値段で20年に按分した。償却は今の59億円が10年後に約57億円(物価で一律に増やすと約79億円)。営業利益は +22億円。更新の投資が膨らむぶん、現金は細り、借入が増えた場合の利払いは年に数億円の重しになる。
- 都市ガス:数量 404(都市ガス販売量(百万立方メートル、45MJ換算))× 価格 1.95(1百万立方メートルあたり売上(億円、名目))→ 売上 788 億円・営業利益 35 億円。数量 0.97 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 4.4%・償却は物価で増やさず按分
- LPG:数量 97.0(LPG販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.29(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。数量 0.97 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 3.3%
- 設備工事・住宅設備・土木・太陽光:数量 115(事業量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.78(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 90 億円・営業利益 5 億円。数量 1.15 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 5.7%
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 436 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改定の力と譲受けが一部そろい、利益率が平常より上がる筋書き。直近の高い利益が一部残る形で、2割を置いた。
中立 38% 数量は7%減り、値段は物価並み。直近の山は戻る 利益 28 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 8,027 円375 億円
ガスの数量は人口減と電化で、10年で7%ほど減る。値段は物価並みの1.34倍に上がる。2024年10月の料金改定の効果は続くが、今期の19億円という会社の見立てを踏まえると、直近の38億円は山だった。
営業利益は31億円。利益率は3.6%で、過去12年の山である6.4%の6割にとどまる。人件費は人手不足で物価をやや上回って上がり、料金改定がそれを追う形になる。
小千谷などの譲受けは、すでに数量に入っている。これ以上の大型の譲受けは見込まない。LPGと住宅設備・管工事は、小さな利益を積む。
配当は少しずつ増えるが、純利益の2割に届かない。10年の還元は50億円。自己資本は730億円前後に積み上がり、ROEは3.7%。創業家グループの動きは、確率の上振れに回した。
減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得時の値段のまま。更新と新規の投資だけ新しい値段で20年に按分した。償却は今の59億円が10年後に約52億円(物価で一律に増やすと約79億円)。営業利益は +27億円。一方、更新の投資は建築費の上昇で年80億円規模に膨らみ、償却より多い分は現金が出ていく。10年で現預金は使い切り、借入が数十億円増える。借入の利払いは3.5%で、純利益から年1億円弱を差し引く。
- 都市ガス:数量 387(都市ガス販売量(百万立方メートル、45MJ換算))× 価格 1.95(1百万立方メートルあたり売上(億円、名目))→ 売上 756 億円・営業利益 26 億円。数量 0.93 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 3.4%・償却は物価で増やさず按分
- LPG:数量 95.0(LPG販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.29(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。数量 0.95 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 3.0%
- 設備工事・住宅設備・土木・太陽光:数量 110(事業量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.78(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 86 億円・営業利益 5 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 344 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は細り、値段は物価並み。料金改定の効果は続くが、直近の山は戻る。最も自然な筋書きと考え、最大の確率を置いた。
やや悲観 24% 電化が速く、料金が費用に追いつかない 利益 11 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 2,435 円114 億円
ガスの数量は10年で12%減る。若い世帯のオール電化が進み、県内の人口減が重なる。値段は物価に1.32倍まで追いつくが、人件費と工事費の上昇を完全には回収できない。
営業利益は10億円前後に落ち、利益率は1.3%。料金改定の効果が薄れ、原料費の変動で損益が振れる。今期の19億円は、この筋書きでは再現できない。
小さな事業の稼ぎも、数量の減りで細る。小千谷のような譲受けの投資は、思ったほど報われない。
配当は据え置きで、10年の還元は40億円。ROEは1.5%まで落ち、評価は低い倍率に置く。導管と顧客基盤は残り、買収の対象にはなりうるが、確率に入れるほどの材料ではない。
減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得時の値段のまま。更新と新規の投資だけ新しい値段で20年に按分した。償却は今の59億円が10年後に約51億円(物価で一律に増やすと約79億円)。営業利益は +28億円。それでも利益が薄いのは、数量の減りが固定費を重くするためだ。更新の投資は建築費で膨らみ、借入が増える。利払いは3.5%で、純利益を年2億円前後削る。
- 都市ガス:数量 367(都市ガス販売量(百万立方メートル、45MJ換算))× 価格 1.92(1百万立方メートルあたり売上(億円、名目))→ 売上 704 億円・営業利益 7 億円。数量 0.88 倍・価格 1.32 倍(名目)・営業利益率 1.0%・償却は物価で増やさず按分
- LPG:数量 90.0(LPG販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.29(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。数量 0.90 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 2.0%
- 設備工事・住宅設備・土木・太陽光:数量 100(事業量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.78(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 78 億円・営業利益 3 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 4.0%
倍率:ROE1.5%でkに大きく届かない。ROEがk以下なので上限は1÷kの12.9倍。利益が薄く、料金改定の遅れで年ごとの損益が振れるうえ、数量が細る。利益の質が低いので上限の7割弱の8.8倍に置いた。
確率:電化が想定より速く、料金改定が費用の上昇に追いつかない形。小さな地方ガスでは十分起こるので、慎重な見方を強く映し、中立にほぼ並ぶ確率を置いた。
悲観 10% 数量の急減と転嫁の遅れで、事業が赤字に沈む 利益 −7 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 1,067 円50 億円
電化と人口減が想定より速く、ガスの数量は10年で2割減る。導管の保守費は減らず、1立方メートルあたりの固定費が膨らむ。値上げは顧客を電気やLPGへ追いやる。
料金は物価に追いつかず、営業利益は10億円ほどの赤字に沈む。LNG価格が急騰した時の転嫁の遅れも、損益を傷める。
脱炭素の投資が料金に乗らず、会社の負担になる。譲受けで増やした顧客は、収益を生まない固定費の塊になる。
創業家グループは買い増しを止め、光通信は持ち分を売る。還元は据え置きがやっとで、10年の還元は30億円にとどまる。
減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得時の値段のまま。更新と新規の投資だけ新しい値段で20年に按分した。償却は今の59億円が10年後に約50億円(物価で一律に増やすと約79億円)。営業利益は +29億円の押し上げになる計算だが、それでも赤字から抜けない。更新の投資は建築費で膨らみ、借入が増え、利払い3.5%が重なる。
会社は事業の縮小と減損を進める。株主に残る価値は、稼ぐ力でなく、売れる資産である上場株と事業用地の税引き後が床になる。
- 都市ガス:数量 333(都市ガス販売量(百万立方メートル、45MJ換算))× 価格 1.92(1百万立方メートルあたり売上(億円、名目))→ 売上 640 億円・営業利益 −12 億円。数量 0.80 倍・価格 1.32 倍(名目)・営業利益率 -1.8%・償却は物価で増やさず按分
- LPG:数量 82.0(LPG販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.29(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。数量 0.82 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 1.0%
- 設備工事・住宅設備・土木・太陽光:数量 90.0(事業量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.78(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 71 億円・営業利益 2 億円。数量 0.90 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 3.0%
倍率:利益が赤字で、事業の稼ぐ力はほぼ消える。稼ぐ力(純利益÷k)でなく、売れる資産の税引き後が床になる。今の自己資本536億円に0.093倍を掛け、上場株と事業用地の売却額(税引き後)に合わせた。
確率:数量の急減、転嫁の失敗、投資の不振が重なる複合の悪化で、頻度は低い。10年ではゼロにできないので、1割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
都市ガス
新潟・長岡・柏崎の地区で、家庭・業務・工業向けに導管で都市ガスを売る。原料は日本海LNGと県産天然ガス。
| 数量都市ガス販売量(百万立方メートル、45MJ換算) | 価格1百万立方メートルあたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 417 | 1.46 | 607 | 34 |
| 10 年後 中立 | 387 | 1.95 | 756 | 26 |
取り方:2026年3月期の有価証券報告書のセグメント値(売上606.45億円、利益34.28億円)。販売量は416,639千立方メートル。単価は売上÷数量。利益には料金改定とLNG値下がりの山が入っており、会社の来期予想(営業利益19億円)から見て実力はこれより低い。
LPG
導管の届かない地域の家庭・業務にLPG(プロパン)を届ける。
| 数量LPG販売量の指数(2026/03 を100) | 価格指数1あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.22 | 22 | 1 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 0.29 | 28 | 1 |
取り方:セグメントの売上21.76億円、利益0.65億円。販売量の開示がなく、指数100と単価で表した。単価は原料費調整で動く。
設備工事・住宅設備・土木・太陽光
ガス設備の保全・設計施工、住宅設備の販売施工、土木・管工事、太陽光発電の小さな事業群。
| 数量事業量の指数(2026/03 を100) | 価格指数1あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.59 | 59 | 3 |
| 10 年後 中立 | 110 | 0.78 | 86 | 5 |
取り方:設計施工13.6億円・住宅設備20.9億円・土木管工事23.3億円・太陽光0.7億円の合計売上58.5億円と、利益3.35億円。グループ内取引の消去(連結売上との差42億円)は売上のみで利益には影響しない。
リスクと懸念
直近の高い利益が戻る
2026年3月期の営業利益38億円は、料金改定とLNG値下がりが重なった山で、会社は今期19億円を見る。第4四半期に28億円が集中しており、原料費が上がれば転嫁の遅れでまた赤字になりうる。2024年3月期は9億円の営業赤字だった。
数量が細る速さ
県の人口は全国より速く減り、新築の電化も進む。家庭向けが年に1%以上縮むと、導管の保守費は減らず、1立方メートルあたりの固定費が膨らむ。値上げは顧客を電気やLPGに追いやる。
投資が稼ぎを上回る
今期の設備投資は94億円で、営業キャッシュフロー90億円を超える。更新の投資は建築費の上昇で膨らむ。償却は据え置きで会計の利益はふくらんでも、現金は細り、借入が増えると利払い3.5%が利益を削る。
市営ガスの譲受けが報われるか
小千谷の譲受けは32億円で、顧客1.1万件、ガス売上17億円。市営事業は老朽化した設備を抱え、更新の費用が後からかかる。託送単価は5%上がったが、投資の見返りが資本コストを上回る保証はない。
株主構成の読めなさ
敦井産業グループが24%、光通信が12%を持つ。買い増しの理由は開示されておらず、再編にも還元の強化にも、動かないことにもなりうる。一方で、流通株が薄く、株価は大株主の動きに振られる。
原料費調整の遅れ
LNGの価格や為替が急に動くと、料金に乗るまで数か月の遅れが出る。この期ずれで、近年の損益は黒字と赤字を行き来した。LNG調達に限りがある小さな会社は、大手より影響を受けやすい。
脱炭素の費用負担
2050年のカーボンニュートラルに向け、水素やe-メタンへの切り替え投資が見込まれる。費用が料金に乗らなければ、会社の利益を直接削る。方針は開示されたが、金額と時期は未定だ。
今後の分かれ目
- 会社が中期の経営計画を出し、ROEの目標を資本コスト並みに置く
- 資本の使い方が変わるシグナル。上振れの確率を上げる。
- 敦井産業グループが保有割合を3分の1以上に引き上げ、または公開買付けを発表する
- 非公開化の価格が評価の下限になる。ただし買付価格は純資産を下回りうる。
- 光通信が還元の強化や取締役の選任を要求する
- 配当の増額や自社株買いが出て、10年の還元が増える。
- ガスの販売量が年に2%以上のペースで減る
- 想定より速い縮み。慎重な筋書きの確率を上げる。
- LNG価格が急騰し、料金改定が数期遅れる
- 2024年3月期のような営業赤字に戻る。利益率の見方を下げる。
- 市営ガスの譲受けがさらに数件進む
- 顧客が増え数量の減りを緩める。投資の見返りを確かめる。
見ておくもの
- 営業利益(今期19億円、来期25億円の会社予想)と、料金改定の効果
- 都市ガスの販売量と顧客数(43.7万件)
- 設備投資と営業キャッシュフロー(94億円と90億円)
- 敦井産業グループ・光通信の保有割合の変化
- 配当と自社株買いの方針(配当総額3.8億円、5期同額)
- 市営ガスの譲受けの有無と託送単価
倍率と資本コストの決め方
倍率はROEから置いた。事業のROEは4%前後で、資本コスト8%に届かない。上限は1÷k=12.9倍で、利益の質(料金改定の遅れで年ごとに振れる、数量が細る)から上限の8.3割の10.7倍に置いた。今の株価・過去の倍率・同業の倍率は使っていない。純資産の4割という水準は、割安の根拠にしなかった。
現預金(純52億円)は設備投資で使い切る前提で、余った現金として足していない。政策保有株の配当は営業外収益に入っているので、価値を別に足さない(二重を避ける)。悲観の床にだけ、上場株の税引き後と事業用地を入れた。
同じ領域の静岡ガス(中立PER10.5倍、k7.5%)に近い倍率で、差はkの0.25%と、料金改定の遅れで利益が振れる点で説明できる。
減価償却は物価で増やさず、既存設備は取得原価のまま。10年後の償却を約52億円(物価で一律に増やすと約79億円)と置いて、更新の投資が増える分は現金が出ていく側に書いた。リースの新会計基準の影響は、ガス導管の会社には小さい。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。