結論
EOG リソーシズ(EOG Resources)は、米国本土のシェールだけで生産する独立系の石油・ガス会社で、2025 年の生産は 123 万 boe/日(原油 52 万バレル/日)、売上 226 億ドル、営業利益 72 億ドル、純利益 50 億ドル(WTI 約 65 ドルの年)。2025 年 8 月に 56 億ドルでエンシーノ(ユティカのガス)を買い、2026 年は生産が約 13〜14% 増え 140 万 boe/日になる。2026 年 4〜6 月期は中東の戦争で価格が上がり、純利益 27 億ドル・FCF 28 億ドル。
価値の中心は 3 つある。第 1 に、井戸の採算が WTI 40 ドル台でも目標収益率を満たす「プレミアム」の基準で在庫を選び、費用が業界最下位級であること。第 2 に、純負債 30 億ドル(時価総額の 4%)の財務で、FCF の 7 割以上を配当と自社株買いに戻す約束があること。第 3 に、ドラードとユティカのガスが米国の LNG 輸出と電力需要の拡大を受ける位置にあること。
一方、価格を決められない事業であることは変わらない。10 年先を中立の価格(今のドル価値で WTI 約 72 ドル、名目 98 ドル)で積み上げ、資本コスト 9.5%(価格の振れと価格受容者の分 1.5%)・埋蔵量の寿命 12.2 年の年金(長期の g は 1%)で倍率を出すと、中立の 10 年後の純利益 101 億ドルに対し PER 6.7 倍。悲観を厚くした確率加重は今の値段を 3 割ほど下回り、総合は割高である。ただし倍率は寿命 12.2 年の年金で頭を押さえた値で、埋蔵量の置き換えが続けば上がる。今の値段は戦争の高値の一部を織り込んでいるが、EOG の費用の低さと財務の強さを式で評価した結果が、それを大きく上回る、というのがバリュー投資の観点での見立てである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10 年後もこの事業は存在するか、と聞かれれば、存在する(石油・ガスの需要は 2036 年までなくならない)。今より強いか、には確信が持てる。堀は「低コストの在庫と財務」で、価格を決める力は無いが、安い時に生き残り高い時に伸ばせる位置にある。
オーナー利益(株主のものになる利益)は、営業 CF の約半分が維持の設備投資に消えるため純利益より小さい。ならした利益は、2025 年の調整後 55 億ドルと 2022 年の 78 億ドルの間にあり、中立の価格で 2028 年に約 75 億ドル、2035 年に約 101 億ドル。FCF は 2028 年で約 55 億ドル。
経営は資本を比較的ていねいに配分する。高い価格の時に自社株買いを増やす癖(2025 年は平均約 115 ドル、2026 年 4〜6 月期は約 135 ドル)は価値を壊す側に振れうるが、財務の強さで抑えられている。
2026 年の高騰を含む今の時価総額 830 億ドルは、2025 年の調整後純利益の 15 倍、中立の 2028 年の利益に対しては 11 倍。倍率は寿命 12.2 年の年金(10 年の中立は 6.7 倍)で頭を押さえた値で、価格を決められないので筋書き側でも悲観を厚くした。それでも安全域は厚く、確信度は高めである。わかりやすい事業で、価格が外から決まる点だけが弱い。
何で稼ぐ会社か
売上は原油・NGL・天然ガスの販売で、利益の 8 割前後は WTI と Henry Hub という外から決まる価格で動く。このメモでは生産を 3 つに分けて、数量 × 実現価格で置いた。
原油・コンデンセート(2025 年 52 万バレル/日・65.63 ドル/バレル)が稼ぎの 9 割を占める主力で、デラウェア盆地(2026 年は約 13 リグ・4 つの仕上げ班)が中心、ほかにイーグルフォード・パウダーリバー・ウィンドリバー。NGL(29 万バレル/日)は随伴ガスから取れる副産物で、集荷・処理の費用が重く利益率は薄い。天然ガス(25 億立方フィート/日)は、ドラード(南テキサスのドライガス。損益分岐が 1.25 ドル/千立方フィート未満とされる)・ユティカ・デラウェアの随伴ガス・トリニダードで構成する。
2025 年の売上 226 億ドルには、外から買って売る商品の売上(約 50 億ドルと推定)が含まれ、生産の売上は約 177 億ドル。2026 年は設備投資 65 億ドル・井戸 585 本・生産 140 万 boe/日(エンシーノの 12 か月分で +13〜14%、原油は +5%)の計画で、新しい地域として UAE の探鉱も始めた(試験井 2 本が最初の 30 日で 1 本あたり 2.5 万バレル超)。シェールの井戸は初年度に 6〜7 割落ちるため、生産を保つだけで営業 CF の半分前後の投資が要る。
優良さと弱いところ
EOG の強みは、資源の質を選ぶ基準にある。「プレミアム」(WTI 40 ドル・ガス 2.5 ドルで税引き後 30% 以上の収益)、さらに「ダブルプレミアム」(同 60% 以上)という基準を満たす井戸だけを掘る方針を 10 年以上守ってきた。井戸の設計・データ解析・サプライチェーンを社内に持ち、現金の運営費用(2026 年計画で 1 boe あたり約 10.7 ドル)と井戸の費用の低さは業界でも最下位級にある。
財務は強く、2025 年末の純負債は 45 億ドル(現金 34 億・債務 79 億)、2026 年 6 月末は 30 億ドル。2020 年の WTI 40 ドル前後の年でも黒字に近く、配当を守った。株主還元は FCF の 7 割以上を約束し、2025 年は配当 22 億ドルと自社株買い 26 億ドルを実行した。経営は創業からの文化が続き、買収は自社の井戸で十分な時に控え、買うなら採算を確かめてから(エンシーノの相乗効果 1.5 億ドルは 1 年で達成と報道)。
弱さは 3 つ。価格を決められないこと。デラウェアの最良の在庫は 2030 年代に薄くなること。2025 年第 4 四半期にバーネット・ウッドフォードの資産で 6.5 億ドルの減損を出したように、資産の評価損がありうること。堀は「低コスト」に尽きるので、広く深いとは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国のシェール生産は上位 10 社で原油の約 4 割しか占めない分散した産業で、全社が価格の受容者である。EIA の見通しでは、Brent は 2026 年 96 ドル(ホルムズ海峡の封鎖を伴う戦争による高値)から 2027 年 84 ドルへ戻り、2029 年は約 80 ドル。米国の原油生産は 2025 年 13.7 百万バレル/日と過去最高で、新しい井戸の採算価格は WTI 63〜70 ドル(ダラス連銀)。価格がその線の上にある限り生産は横ばいから微増、下回ると 6〜9 か月で減るのが米国の形である。
業界は再編が進み、コノコフィリップス(ConocoPhillips)のマラソン・オイル買収、オキシデンタル・ペトロリアムのクラウンロック買収、ダイヤモンドバック・エナジーのダブルイーグル買収、デボン・エナジーとコテラの合併(2026 年 5 月)で、シェール会社は大型化し設備投資の規律が強まった。良い在庫は 10 年で枯れるので、買収で在庫を足す動きが続く。
ガスは LNG 輸出(2026 年 17.0 → 2027 年 18.6 Bcf/日)と電力・データセンターが需要を引き、CEO のエズラ・ヤコブ(Ezra Yacob)は米国のガス需要が年 3〜5% 増えると見る。EOG はドラードとユティカでこの需要に近い。脱炭素と電動化による石油需要の天井、OPEC+ の余剰能力(収束後に価格を抑える側へ戻る)、関税による鋼材高が、10 年の分かれ目になる。
資本政策と M&A
資本配分は、まず成長のための設備投資(2026 年 65 億ドル)、次に 1 株あたりの配当の増額(2026 年は四半期ごとの定期配当を維持。増配の実績が長い)、最後に FCF の 7 割以上の還元という順番。自社株買いは 2025 年に 26 億ドル、2026 年 4〜6 月期に 13 億ドル(平均約 135 ドル)で、残りの授権は 117 億ドル。会社はストリップ価格・計画の中央値で 2026 年の FCF を約 80 億ドルと見る(2 月時点は 45 億ドル)。
M&A は買う側で、直近は 2025 年 8 月のエンシーノ(ユティカ。56 億ドル、純負債込み。33 万エーカーのガス窓)。ドラードの前例のとおり、足りない所を自社で掘る前に買うので、買収は在庫の質を見て選ぶ姿勢。買われる側になる可能性は時価総額 830 億ドルでは小さい。
株式報酬は売上の 0.1% 前後と小さく、正味の還元(配当+自社株買い − 株式報酬の分)は還元額とほぼ同じ。借金は 2026 年に約 80 億ドルあり、借り換えで金利が 5.75% に上がっても純利益への影響は年 1 億ドル前後。現金が増えるぶん受取利息もほぼ今のまま回る。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 17.2 億ドル(10-Q・2026 年 1〜6 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
在庫・費用・財務の 3 つが同時に最上位にあるのは EOG だけである。井戸の採算が WTI 40 ドル台でも成り立つので、価格が採算の線(63〜70 ドル)に落ちても利益が残る。2026 年は FCF が約 80 億ドルと見込まれ、純負債は 30 億ドルまで下がった。
さらにエンシーノでユティカのガス窓を手に入れ、ドラードと合わせて LNG 輸出と電力需要の拡大に応じて伸びる。ガスは Henry Hub が実質 3.5 ドルでも利益が残る低コストで、2030 年に LNG 輸出が 30 Bcf/日近くへ増える中で最も有利な位置の 1 つ。
価格は物価(年 3.5%)並みに上がり、費用も同じ速さで上がるので利益率は動かない。10 年の中立で純利益は 101 億ドルと 2025 年の 1.8 倍。年 80% を還元しても純現金が積み上がり、財務の強さがそのまま価値になる。UAE の探鉱(試験井が好調)という新しい成長の芽もある。
慎重な見方
価格を決められない産業で、10 年の価格を実質 72 ドルと置くこと自体が強気ではないか。EIA の長期見通しは「Brent が実質 70 ドル未満なら 2030 年代半ばに生産が減る」で、2026 年の高値は戦争という一時の事情にすぎない。収束すれば湾岸が数百万バレル/日戻り、OPEC+ の余剰能力が価格を抑える。
EOG の最良の在庫(デラウェアのプレミアム)は 2030 年代に薄くなり、新しい層は費用が上がる。足りない在庫は買収で補うが、高い年に買えば価値を壊す。2025 年第 4 四半期には 6.5 億ドルの減損も出た。自社株買いは高い年に増える癖があり、平均 135 ドル(2026 年)は 2025 年の 115 ドルより高い。
倍率は寿命の年金で低く出ており、埋蔵量が伸びなければ上がらない。電動化と脱炭素で石油需要が頭打ちになれば、10 年の悲観(実質 47 ドル)は現実になりうる。2020 年・2015〜16 年には営業利益率がゼロ以下になり、株価は 5〜6 割下がった。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は費用・財務・ガスの足し算で説得力があり、筋書きの中立(実質 72 ドル)は慎重な見方の線(採算の線の少し上)を取り入れている。慎重な見方で強いのは「価格受容者」と「高い年の自社株買い」で、前者は k に 1.5% を乗せて入れ、後者は還元を FCF の 8 割に抑えて純現金として数えることで調整した。確率は楽観 8%・やや楽観 20%・中立 36%・やや悲観 22%・悲観 14% と、XOM・CVX・COP に揃えて悲観側を厚くした。寿命 12.2 年の年金で測ると、確率加重は今の時価総額を 3 割ほど下回り、総合は割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 123.32 ドル649 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 90.42 ドル476 億ドル)。 今の値に割り戻すと 107.20 ドル564 億ドル、今との差 −32.1%、 期待の年率 +3.1%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 273.88 ドル1,441 億ドル | 151.67 ドル798 億ドル | +169.4% | +10.4% | 34.04 ドル179 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 191.58 ドル1,008 億ドル | 119.16 ドル627 億ドル | +96.7% | +7.0% | 62.15 ドル327 億ドル |
| 中立 | 36% | 128.52 ドル676 億ドル | 90.65 ドル477 億ドル | +38.7% | +3.3% | 78.90 ドル415 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 66.33 ドル349 億ドル | 69.92 ドル368 億ドル | −13.7% | −1.5% | 29.98 ドル158 億ドル |
| 悲観 | 14% | 15.95 ドル84 億ドル | 46.01 ドル242 億ドル | −60.8% | −8.9% | 8.67 ドル46 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 123.32 ドル649 億ドル | 90.42 ドル476 億ドル | +35.3% | +3.1% | 213.74 ドル1,124 億ドル |
今の株価時価総額 157.96 ドル831 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:実質 WTI 90 ドル(名目 124 ドル)が続き、生産は年 +2.9% 伸びる 利益 210 億ドル · PER 6.9 倍 · 株価時価総額 273.88 ドル1,441 億ドル
2035 年、実質 WTI 90 ドル(名目 124 ドル)が続き、EOG はデラウェアの井戸の増加とユティカ・ドラードのガス増産で、原油 70 万バレル/日・NGL 44 万・ガス 41 億立方フィート/日(合計 182 万 boe/日)へ伸びる。ガスは LNG 輸出の拡大(17 → 30 Bcf/日)で実質 5 ドル近く(名目 6.1 ドル)。営業利益は 264 億ドル、純利益は 210 億ドル(2025 年の約 3.8 倍)。年 80% の還元でも純現金が約 165 億ドルたまり、これも 1 ドルとして数える。倍率は利益ベースの正当化 PER で 6.85 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。高価格が続くと電動化と OPEC+ の余剰が価格を押し戻すリスクも育つので、確率は 8%。
- 原油・コンデンセート:数量 700(生産量(千バレル/日))× 価格 124(実現価格(ドル/バレル。WTI 連動))→ 売上 317 億ドル・営業利益 203 億ドル。数量・実現価格・利益率
- 天然ガス液(NGL):数量 440(生産量(千バレル/日))× 価格 44(実現価格(ドル/バレル。WTI の約 35%))→ 売上 70 億ドル・営業利益 26 億ドル。数量・実現価格・利益率
- 天然ガス:数量 4,100(生産量(百万立方フィート/日))× 価格 6.10(実現価格(ドル/千立方フィート。Henry Hub・Waha より低い))→ 売上 91 億ドル・営業利益 35 億ドル。数量・実現価格・利益率
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)。k = 8.0% + quality +1.5% = 9.5%。事業の帳簿 ROE 28.8% から RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)= 19.2%(moat normal)、g 1.0%(市場の伸びと価格から。k − g ≥ 3.5%)。式の値 11.2 倍。先細りの資源なので寿命 12.2 年の年金(g 1%)が頭を押さえ、7.4 倍。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) を乗せた上限 7.4 倍に対し、費用の低さと在庫の質で最も厚い筋書きだが価格受容者なので、上限の 9.2 割(6.85 倍)に置いた。
確率:実質 90 ドルが 10 年続く筋書き。需要の天井があるので 1 割未満(XOM・CVX・COP と揃えた)。
やや楽観 20% やや楽観:実質 WTI 80 ドル前後で、ガスと在庫の補充が伸びを支える 利益 150 億ドル · PER 6.7 倍 · 株価時価総額 191.58 ドル1,008 億ドル
2035 年、実質 WTI 80 ドル前後(名目 110 ドル)、Henry Hub は実質 4 ドル台(名目 6 ドル)。EOG は原油 64 万バレル/日・NGL 40.5 万・ガス 37 億立方フィート/日(合計 166 万 boe/日、2026 年より年 +1.9%)。デラウェアの新たな層(ダブルプレミアムの井戸)、ユティカのガス窓、UAE の探鉱の成功がそれぞれ小さく効く。営業利益は 189 億ドル、純利益は 150 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER で 6.7 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。サービス費用の上昇と在庫の質の低下は利益率の伸びを抑える。
- 原油・コンデンセート:数量 640(生産量(千バレル/日))× 価格 110(実現価格(ドル/バレル。WTI 連動))→ 売上 257 億ドル・営業利益 153 億ドル。数量・実現価格・利益率
- 天然ガス液(NGL):数量 405(生産量(千バレル/日))× 価格 39(実現価格(ドル/バレル。WTI の約 35%))→ 売上 57 億ドル・営業利益 17 億ドル。数量・実現価格・利益率
- 天然ガス:数量 3,700(生産量(百万立方フィート/日))× 価格 5.20(実現価格(ドル/千立方フィート。Henry Hub・Waha より低い))→ 売上 70 億ドル・営業利益 20 億ドル。数量・実現価格・利益率
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)。k = 8.0% + quality +1.5% = 9.5%。事業の帳簿 ROE 23.2% から RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)= 16.3%(moat normal)、g 1.0%(市場の伸びと価格から。k − g ≥ 3.5%)。式の値 11.0 倍。先細りの資源なので寿命 12.2 年の年金(g 1%)が頭を押さえ、7.4 倍。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) を乗せた上限 7.4 倍に対し、同じく価格受容者なので、上限の 9.0 割(6.70 倍)に置いた。
確率:シェールの採算の線の上で価格が支えられ、ガスも LNG で伸びる筋書き。2 割。
中立 36% 中立:実質 WTI 72 ドル(名目 98 ドル)、生産は年 +0.7%、利益率は今より高い 利益 101 億ドル · PER 6.7 倍 · 株価時価総額 128.52 ドル676 億ドル
2035 年、実質 WTI 72 ドル(名目 98 ドル)。EOG の井戸の採算(WTI 40 ドル台)は十分下だが、業界全体はシェールの新規採算の線(63〜70 ドル)の少し上で動くので、生産は横ばいから微増。EOG は原油 57.5 万バレル/日・NGL 36.5 万・ガス 33 億立方フィート/日(合計 149 万 boe/日、2026 年より年 +0.7%)。ガスは Henry Hub 実質 3.5 ドル(名目 4.9 ドル)で、ドラードとユティカが LNG 向けを担う。費用は名目 +41%、価格は +49% なので営業利益率は今より約 1 ポイント高い。営業利益は 127 億ドル、純利益は 101 億ドル(2025 年の約 1.8 倍)。倍率は利益ベースの正当化 PER で 6.7 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。
- 原油・コンデンセート:数量 575(生産量(千バレル/日))× 価格 98(実現価格(ドル/バレル。WTI 連動))→ 売上 206 億ドル・営業利益 112 億ドル。数量・実現価格・利益率
- 天然ガス液(NGL):数量 365(生産量(千バレル/日))× 価格 35(実現価格(ドル/バレル。WTI の約 35%))→ 売上 46 億ドル・営業利益 9 億ドル。数量・実現価格・利益率
- 天然ガス:数量 3,300(生産量(百万立方フィート/日))× 価格 4.20(実現価格(ドル/千立方フィート。Henry Hub・Waha より低い))→ 売上 51 億ドル・営業利益 6 億ドル。数量・実現価格・利益率
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)。k = 8.0% + quality +1.5% = 9.5%。事業の帳簿 ROE 17.5% から RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)= 13.5%(moat normal)、g 1.0%(市場の伸びと価格から。k − g ≥ 3.5%)。式の値 10.9 倍。先細りの資源なので寿命 12.2 年の年金(g 1%)が頭を押さえ、7.4 倍。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) を乗せた上限 7.4 倍に対し、費用は低いが価格が外から決まる事業なので、上限の 9.0 割(6.70 倍)に置いた。
確率:実質 72 ドルは採算の線の少し上。最も確からしい落としどころで 36%。
やや悲観 22% やや悲観:実質 WTI 60 ドル(名目 86 ドル)へ下がり、在庫の薄れと費用高で利益率が縮む 利益 57 億ドル · PER 6.1 倍 · 株価時価総額 66.33 ドル349 億ドル
2035 年、実質 WTI 60 ドル(名目 86 ドル)。シェールの採算の線(63〜70 ドル)を下回るので業界全体が設備投資を絞り、EOG の生産も年 −0.4%(原油 52 万バレル/日・NGL 33 万・ガス 30 億立方フィート/日、合計 135 万 boe/日)。ガスは Henry Hub が実質 2.8 ドル(名目 3.9 ドル)に緩む。プレミアムの在庫は 2030 年代に薄くなり、新しい層は費用が上がる(費用 +4%)。営業利益は 72 億ドル、純利益は 57 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER で 6.11 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。強い財務は残り配当は守るが、買収で在庫を足す余地は小さい。
- 原油・コンデンセート:数量 520(生産量(千バレル/日))× 価格 86(実現価格(ドル/バレル。WTI 連動))→ 売上 163 億ドル・営業利益 75 億ドル。数量・実現価格・利益率
- 天然ガス液(NGL):数量 330(生産量(千バレル/日))× 価格 30(実現価格(ドル/バレル。WTI の約 35%))→ 売上 37 億ドル・営業利益 2 億ドル。数量・実現価格・利益率
- 天然ガス:数量 3,000(生産量(百万立方フィート/日))× 価格 3.40(実現価格(ドル/千立方フィート。Henry Hub・Waha より低い))→ 売上 37 億ドル・営業利益 −5 億ドル。数量・実現価格・利益率
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)。k = 8.0% + quality +1.5% = 9.5%。事業の帳簿 ROE 12.0% から RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)= 10.8%(moat normal)、g 1.0%(市場の伸びと価格から。k − g ≥ 3.5%)。式の値 10.7 倍。先細りの資源なので寿命 12.2 年の年金(g 1%)が頭を押さえ、7.4 倍。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) を乗せた上限 7.4 倍に対し、プレミアムの在庫が薄くなり費用が上がる構造なので質を落として、上限の 8.2 割(6.11 倍)に置いた。
確率:採算の線を下回る価格が続き生産が減る筋書き。電動化と OPEC+ の余剰を考えると 2 割強。
悲観 14% 悲観:構造的に負け、実質 WTI 47 ドル(名目 66 ドル)で投資が半減する 利益 14 億ドル · PER 6.0 倍 · 株価時価総額 15.95 ドル84 億ドル
2035 年、電動化による需要の天井と OPEC+ の増産で、WTI は名目 66 ドル(実質 47 ドル)止まり。採算の線を大きく割るので、EOG は設備投資を半減し、生産は年 −3% 超で原油 40 万バレル/日・NGL 25.5 万・ガス 24 億立方フィート/日(合計 105 万 boe/日)。ガスも名目 3 ドル止まり。営業利益率は 12% で、営業利益は 18 億ドル、純利益は 14 億ドル。評価損 40 億ドルで自己資本は 325 億ドル。もはや優良な生産会社ではなく、事業の ROE 4% と、簿価の 4 分の 1 という評価(PBR 0.25 倍)になる。倍率は利益ベースの正当化 PER で 5.99 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。配当は約 3 割削り(年 14 億ドル)、還元の不足は 10 年の間に積んだ純現金と非中核資産の売却で払う。そこへ買収の失敗(高値で買った在庫の減損)が重なる構造的な負けの筋書き。
- 原油・コンデンセート:数量 400(生産量(千バレル/日))× 価格 67(実現価格(ドル/バレル。WTI 連動))→ 売上 97 億ドル・営業利益 30 億ドル。数量・実現価格・利益率
- 天然ガス液(NGL):数量 255(生産量(千バレル/日))× 価格 24(実現価格(ドル/バレル。WTI の約 35%))→ 売上 22 億ドル・営業利益 −4 億ドル。数量・実現価格・利益率
- 天然ガス:数量 2,400(生産量(百万立方フィート/日))× 価格 3.00(実現価格(ドル/千立方フィート。Henry Hub・Waha より低い))→ 売上 26 億ドル・営業利益 −7 億ドル。数量・実現価格・利益率
倍率:k = 8.0% + quality +1.5% = 9.5%。この筋書きの事業の帳簿 ROE 4.2% は k 以下なので、ためた利益は額面を下回る価値で PER は 1÷k = 10.5 倍が上限。電動化と需要の天井で構造的に負けた筋書きなので上限の 8.5 割(5.99 倍)。
確率:構造的に負ける筋書き。悲観側を厚くする決まりで 14%(XOM・CVX・COP と揃えた)。EOG は低コストで最後まで黒字だが、優良な生産会社ではなくなる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
原油・コンデンセート
デラウェア盆地・イーグルフォード・パウダーリバー・ウィンドリバーなどの油。EOG の利益の大半を稼ぐ主力。
| 数量生産量(千バレル/日) | 価格実現価格(ドル/バレル。WTI 連動) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 522 | 66 | 125 | 65 |
| 10 年後 中立 | 575 | 98 | 206 | 112 |
取り方:2025 年の会社実績(原油 521.9 千バレル/日・実現価格 65.63 ドル/バレル)。営業利益はセグメント開示が無いので、全社の営業利益 72 億ドルに合うよう、税・減価償却を含む単位費用を原油 約 31.6 ドル/バレルと推定して置いた。rev_factor は 365 日 ÷ 10 万で、売上=数量×価格×rev_factor(億ドル)。
天然ガス液(NGL)
パーミアンの随伴ガスから分離するエタン・プロパンなど。原油の約 35% の値段で動く。
| 数量生産量(千バレル/日) | 価格実現価格(ドル/バレル。WTI の約 35%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 288 | 23 | 24 | 3 |
| 10 年後 中立 | 365 | 35 | 46 | 9 |
取り方:2025 年の会社実績(NGL 288.2 千バレル/日・実現価格 22.58 ドル/バレル)。集荷・処理・輸送の費用が重く、単位費用は約 19.5 ドル/バレルと推定したので営業利益率は低い(推定)。
天然ガス
ドラード(南テキサスのドライガス)・ユティカ(エンシーノ買収で拡大)・デラウェアの随伴ガス・トリニダード。
| 数量生産量(百万立方フィート/日) | 価格実現価格(ドル/千立方フィート。Henry Hub・Waha より低い) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,533 | 3.02 | 28 | 3 |
| 10 年後 中立 | 3,300 | 4.20 | 51 | 6 |
取り方:2025 年の会社実績(ガス 2,533 百万立方フィート/日・実現価格 3.02 ドル/千立方フィート)。熱量で 6 千立方フィート=1 バレルとして単位費用 約 15.9 ドル/boe を推定(推定)。ガスは原油より利益率が薄い。
リスクと懸念
原油・天然ガスの価格(循環)
利益の 8 割前後は外から決まる価格で動く。WTI が 1 ドル動くと EOG の純利益は約 1.5 億ドル動く(推定)。2026 年の戦争の高値が収束すると、2027 年は 84 ドル、2028 年は 81 ドルへ戻る(EIA)。2015〜16 年と 2020 年には営業利益が赤字になり、株価は 5〜6 割下がった。
在庫の質の低下
デラウェアの最良のプレミアム在庫は 2030 年代に薄くなる。新しい層は費用が上がり、井戸の初年度の減退(6〜7 割)を補う投資が増える。足りない分を買収で補えば、高い年に買うほど価値を壊す。2025 年第 4 四半期にはバーネット・ウッドフォードで 6.5 億ドルの減損を出した。
高い年の自社株買い
価格が高い年は FCF が増え、買い戻しも増える(2026 年 4〜6 月期は平均約 135 ドルで 13 億ドル)。バリュー投資の観点では、割高な時に買い続ければ価値を壊す。還元を FCF の 8 割に抑えた筋書きにしたが、株価の水準を見て買う規律が資本配分の質を決める。
ガスの価格と Waha の割引
ドラードとユティカのガスは Henry Hub より低い価格で売れ、2025 年の実現価格は 3.02 ドル/千立方フィート。LNG 輸出が想定より遅れる、または米国の生産が応えすぎると、ガスの利益が薄いまま続く。デラウェアの随伴ガスの Waha 価格は 2026 年 3 月に月平均でマイナスになった。
電動化と需要の天井
米国のガソリン需要は 10 年で微減し、世界の石油需要も 2030 年代に頭打ちになりうる。OPEC+ は収束後に余剰能力で価格を抑える側に戻る。需要が減る側では価格が下がり、シェールの採算の線(63〜70 ドル)を割って生産が減る。
関税と費用の上昇
鋼材(油井管)・サービスの費用は名目で年 3.5% 前後上がる。関税で鋼材高になると採算の線が上がり、価格が下がった時の利益率の落ち込みが大きくなる。EOG は 2026 年の井戸費用の約 45% を固定したが、長くは続かない。
UAE・海外の探鉱
UAE の試験井は好調だが、海外は政治・契約条件・税の変更で数量が減るリスクがある。EOG の生産のほぼ全部が米国本土という強みが、海外が増えるほど薄れる。成功しても 10 年のスケールでは小さく、失敗すれば探鉱費が利益を削る。
今後の分かれ目
- WTI の 2027 年の水準が 75 ドルを上回ったまま、先物の形が後ろ下がりにならない
- 戦争の高値が構造的に残る信号で、楽観・やや楽観の確率を上げる。中立の WTI(名目 98 ドル)を上方に見直す。
- 湾岸の生産が 2027 年に回復し、OPEC+ が増産する
- Brent が 2025 年並みの 69 ドル前後に戻る信号で、やや悲観・悲観の確率を上げる。費用の低さで EOG は黒字を保つ。
- EOG が高値の年に大型の買収(在庫の補充)を行う
- 買収の対象と価格を見て、高値で買えば将来の ROE が下がるので中立から悲観の確率を上げる。低い価格の年に買えば逆に上げる。
- 米国の LNG 輸出が 2028 年に 25 Bcf/日を超え、Henry Hub が 4 ドルを上回る
- ドラード・ユティカのガスの利益が増え、10 年のやや楽観・楽観の確率を上げる。ガスの利益率の厚みが増す。
- デラウェアの 1 井戸あたりの生産が減り、設備投資を増やさないと生産が保てなくなる
- 在庫の質の低下が始まった信号で、やや悲観の確率を上げ、倍率の ROE を下げる。
- 米国のガソリン需要が想定より速く減る(電動車の販売が 3 割を超える)
- 石油需要の天井が早まり、10 年のやや悲観・悲観の確率を上げる。ガスは減少が緩やか。
見ておくもの
- WTI・Brent の 2027 年の水準と先物の形(後ろ下がりの深さ)
- デラウェアの 1 井戸あたり生産と設備投資(2026 年 65 億ドル)
- FCF の還元割合(7 割以上)と自社株買いの買い付け価格
- ドラード・ユティカのガス生産と Waha・Henry Hub の差
- LNG 輸出能力の稼働(17 → 30 Bcf/日)
- UAE の探鉱の続報
- プレミアム在庫の本数と新しい層の費用
倍率と資本コストの決め方
倍率は式だけで置いた。先細りの資源なので、PER は式((1 − g/RONIC)/(k − g)、g は 1%)と、埋蔵量の寿命 12.2 年の年金の小さい方で頭を押さえる。k は 9.5%(8.0% + quality 1.5%)で、年金が効く。中立は上限(×(1+g))の 9 割(費用が最下位級で無借金に近い質を見た)、悲観側は 8 割台。今の PER・過去の倍率・同業の倍率は根拠にしていない。結果の差と割高の 5 段階はそのまま受け入れた。利益(数量 × 価格)と確率は変えていない。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality 1.5% = 9.5%(決まり v2。β は使わない)。価格の振れと価格受容者は cycle・pricing で見た。中東の政治・在庫の質・UAE の探鉱は k に足さず、筋書き(価格と数量)と悲観の確率で表した。