結論
SLB(シュルンベルジェ)は、世界 100 か国超で石油・ガス会社の井戸掘り・評価・仕上げ・生産設備・データ解析を請け負う世界最大の油田サービス会社である。2025 年は売上 357 億ドル、営業利益 49 億ドル(減損などを含む)、純利益 34 億ドル。売上の約 8 割弱が北米以外の国際で、その半分近くがオフショア(海上)という点が、北米のシェールに寄ったハリバートン(Halliburton)との最大の違いである。2025 年 7 月に全株式交換でチャンピオンX(ChampionX)を取得し、人工採油・化学薬品の生産事業が加わった。
2026 年は中東の戦争で湾岸の操業が止まり、4〜6 月期の中東売上は前年比 13% 減、チャンピオンXを除く全体も前年比 5% 減と苦しい。一方で、デジタルは売上が前年比 18% 増・利益率 28% と好調で、データセンター向けの冷却・電力機器は年率 10 億ドルに乗せる目標である。会社は 2026 年の売上 369〜377 億ドル、設備投資 約 25 億ドル、還元 40 億ドル超(うち自社株買い 24 億ドル)を掲げ、フリーキャッシュフローは 3 年連続で 41 億ドル以上を保っている。
10 年先を、E&P(石油・ガス会社)の設備投資が実質でほぼ横ばい〜微増という業界の中立で積み上げ、資本コスト 9.0%(基本 8.0% に E&P の予算の循環 1.0%)・長期の成長 4%・利益ベースの正当化 PER(RONIC 14.5%)で倍率を出すと(10 年の中立は PER 12.1 倍)、悲観を厚く置いた確率加重は今の時価総額を 1 割半ほど下回る。総合はやや割高(差は −16% 前後)である。堀は広いが、売上の大半は E&P の予算で決まり、価格を決められない循環の事業である。バリュー投資の観点では、良い会社だが、今の値段は本質価値をやや上回り、割高の幅は E&P の予算の循環に左右される。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10 年後もこの事業は存在し、今より強いか、と問えば、存在はする(石油・ガスの探鉱・生産はなくならない)が、「今より強い」とは言い切れない。国際・オフショアとデジタルは強くなるが、稼ぎは顧客の設備投資で決まり、価格を決められない。堀は「技術の幅と長期契約」で広いが、E&P の景気を超える力ではない。
オーナー利益は、設備投資(年 約 25 億ドル、売上の 7%)と株式報酬を引くと、純利益よりやや小さい。フリーキャッシュフローは 3 年連続で 41 億ドル以上、2025 年の純利益 34 億ドルより大きいが、これは減損後の純利益が小さいためで、ならした純利益は 2025 年で 40 億ドル前後と見る。中立で 2028 年に約 47 億ドル、2035 年に約 71 億ドル(名目で年 +4.4%)である。
今の時価総額 738 億ドルは、ならした利益の 18 倍前後で、戦争で稼働が減っている今の景気としては安くも高くもない。資本コスト 9.0% は循環の分を 1.0% 乗せた水準で、価格の受容者という性質は筋書きと確率にも入れた。経営は資本配分が堅実で、自社株買いも利益の範囲内である。ただし大型 M&A(キャメロン)の評価損が過去にあるため、確信度は中程度とした。わかりやすい事業だが、予測の難しさは E&P の予算に依存する。
何で稼ぐ会社か
売上は E&P 各社の設備投資と生産維持の支出から生まれる。このメモでは 4 つの事業に分け、それぞれを「対象市場の大きさ × SLB のシェア(数量、2025 年のドル価値)× 価格指数(名目)」で置いた。数値は推定で、会社は 4 事業の売上を開示するが、市場規模は公表されていないため、業界団体と他社の開示から組み立てた。
坑井構築(Well Construction、約 110 億ドル)は、掘削の請負・ドリルビット・掘削液・坑井の設計を指し、オフショアと国際の大型案件が主力で、利益率は 17% 前後。貯留層性能(Reservoir Performance、約 74 億ドル)は、坑井の評価・仕上げ・介入・刺激で、既存の井戸から生産を増やす仕事。生産システム(Production Systems、約 135 億ドル)は、井戸元の機器・人工採油・海底設備・化学薬品で、チャンピオンX(2025 年 7 月取得)が加わり、売上の最大の塊になった。デジタルと統合(Digital & Integration、約 38 億ドル)は、地下データの解析ソフト・自動掘削・データセンター向けの新事業で、利益率は 27% と最も高い。
地域は、中東・アジア、ラテンアメリカ、欧州・アフリカ、北米の 4 つ。国際の大型契約(サウジの大型ガス田、ブラジルとガイアナのオフショア、ノルウェー)は数年にわたる収益になり、北米のシェールより景気の振れが小さい。2026 年は湾岸の戦争で中東の稼働が止まっているが、会社は 2026 年後半に中東の稼働が戻ると見ている。
優良さと弱いところ
堀は「技術の幅」「規模」「顧客との長期契約」の 3 つである。世界の大手 3 社(SLB・ハリバートン・ベーカー・ヒューズ(Baker Hughes))で世界の約半分を占める寡占で、掘削から評価・仕上げ・生産設備・解析ソフトまで 1 社で束ねられるのは SLB だけである。国営石油会社(サウジアラムコ、ADNOC、ペトロブラス、ペメックスなど)との長期の統合契約が多く、乗り換えにくい。デジタルの地下データは長年の掘削記録が元で、他社に真似しにくい。
資本効率は、ROE が 2022〜2024 年に 20% 前後、2025 年は減損とチャンピオンXで 13% に下がった。営業利益率は 2023〜2024 年に 16〜18% で、ハリバートン(14〜17%)より高く、国際の比重と利益率の高いデジタルが支えている。財務は純負債 83 億ドル(時価総額比 11%)、自己資本比率 48% と保守的で、2020 年のコロナ期にも配当を削るにとどめて耐えた。
弱い所は 3 つ。第 1 に、価格の決定権が弱く、E&P が設備投資を絞ればサービスの単価は遅れて下がる(2015〜2020 年は営業利益率が 5〜9% まで落ちた)。第 2 に、中東の比重が高く、2026 年の戦争のような政治の出来事で売上が一気に減る。第 3 に、のれんと無形資産が大きく(チャンピオンX分を含め約 150 億ドル規模、推定)、谷で評価損が出やすい。2016〜2020 年は 3 度の大きな純損失があり、利益の質は一定ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
油田サービスは E&P の設備投資で需要が決まる二次の循環産業である。原油が上がると 6〜12 か月遅れて稼働が増え、下がると同じく遅れて減る。2026 年は中東の戦争で Brent が年平均 96 ドルまで上がったが、E&P は資本規律と先行きの不安から設備投資を増やしていない。業界ノートでは、2026 年の北米の E&P 投資は −3%、国際は +1%(ロシアを除くと +2%)で、ベーカー・ヒューズは「世界の生産者の支出は小幅に減る」と見る。戦争の高値でも、サービス会社の売上は増えにくいことが分かる。
業界ノートの中立は、数量(活動量)が北米で年 −1%(10 年で見て 0%)、国際は年 +2%。サービスの単価は北米で年 +1%(物価に届かない)、国際は +3% である。SLB は国際が約 8 割で、この国際の伸びを最も受ける立場にある。オフショアは FID(最終投資決定)が 2025〜2027 年に増えており、ブラジル・ガイアナ・西アフリカ・ノルウェーの案件が数年の売上を作る。中東は戦争で一時止まったが、サウジの増産能力の維持が長期の稼働を支える。
競合は、ハリバートン(北米の水圧破砕に最も強く、北米の景気に敏感)、ベーカー・ヒューズ(機器・LNG 設備・電力。景気に連動しにくい産業・エネルギー技術が利益の中心)、ウェザーフォード、NOV、テクニップ・エナジーズ(海底設備)である。3 社の中で SLB は国際・オフショア・デジタルに寄り、データセンター向けの冷却・電力でベーカー・ヒューズとも近づく。構造の変化としては、電動の水圧破砕・自動掘削で単価が下がる方向(北米)と、AI・データセンターの電力需要が天然ガスの探鉱を促す方向がせめぎ合う。
資本政策と M&A
資本配分は「営業 CF の約 5 割を還元、残りを設備投資と M&A」である。2026 年の還元は配当と自社株買いを合わせて 40 億ドル超(自社株買い 24 億ドル)の方針で、2025 年の自社株買い 24 億ドル・配当 16 億ドルと同じ規模である。株式報酬は年 4〜5 億ドル(推定)で、正味の還元は総額から差し引く。
M&A は、2025 年 7 月に完了したチャンピオンX(全株式交換)が最大。人工採油・化学薬品は、新規の坑井よりも既存の井戸の生産維持に使われるので、景気に対して安定しており、事業の振れを小さくする狙いがある。ただし全株式交換なので、株主の取り分は増えた株の分で薄まった(株数の増減は 2025 年は実質 0%、すでに自社株買いで打ち消された)。過去には 2010 年のスミス(Smith)、2016 年のキャメロン(Cameron、約 140 億ドル)の大型買収があり、後者は 2016〜2020 年の評価損の一因になった。
今後は大型買収は一服し、デジタル・データセンター事業の小型買収が中心になるとみる。借金は純負債 83 億ドルで、借り換えの利払い増は年 1 億ドル程度(推定、brief の値)と小さい。自社株買いを割高な時に行わないかが資本配分の質を決める。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 11.0 億ドル(10-Q・2026 年 1〜6 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国際・オフショアは長い上昇の入口にいる。FID は 2025〜2027 年に増え、ブラジル・ガイアナ・ノルウェー・西アフリカの案件が 5〜10 年の収益になる。ホルムズの封鎖が収まれば、サウジ・クウェート・UAE が稼働を戻し、湾岸の復旧と増産に向けた契約が一斉に出る。SLB は国際の比重が約 8 割で、これを最も受ける。
デジタルは 2026 年 4〜6 月期に前年比 +18%・利益率 28%、データセンター向けは前年比 +80%・年率 10 億ドルを 2026 年末に目標。AI の電力需要で天然ガスの探鉱が増えれば、地下データと自動掘削の価値が上がる。チャンピオンXで生産事業が加わり、景気に左右されにくい生産・保守の比重が増えた。利益率は 2022〜2024 年に 18% 近くまで上がり、価格の決定力は回復している。
ROE は 20% 前後、フリーキャッシュフローは年 40 億ドル超で、還元の方針(40 億ドル超)も維持できる。原油が実質 90 ドル(名目で 127 ドル)に長く留まれば、E&P の設備投資が増え、10 年の純利益は 2025 年の 3 倍になる。これが強気の見方で、楽観の筋書きの下敷きである。
慎重な見方
今の利益は高値の年の利益ではなく、むしろ戦争で減った売上である。2026 年はチャンピオンXを除くと売上は前年比 −5%、高値でも E&P は設備投資を増やさない。資本規律で、原油が 100 ドルでも北米の稼働は −2.5% の見通しである。サービスの単価は E&P の交渉力が強く、設備投資が絞られた時に最初に値下げされる。
中東への依存は大きく、2026 年は操業停止で中東売上は 13% 減った。戦争が収まっても、湾岸の再開は数年かかり、OPEC+ の余剰能力が価格を抑える側に戻る。営業利益率は 2016〜2020 年に 5〜9% まで落ち、のれんと無形資産(チャンピオンXを含め約 150 億ドル規模)の評価損は 2019〜2020 年に純損失 100 億ドル超を出した。
電動の水圧破砕・自動掘削で単価が下がり、石油需要は 2030 年代に頭打ちになる可能性がある。顧客の E&P は合併で集約され(エクソン・パイオニア、コノコ・マラソン、デボン・コテラ)、買い手の交渉力が上がっている。ハリバートンとの価格競争、中堅(ウェザーフォード・NOV)の巻き返しも続く。今の PER は 2025 年の純利益の 22 倍で、過去の期末 PER の中央値 21 倍と同じ。成熟した循環の会社として高い。これが慎重な見方である。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は国際・オフショアとデジタルの足し算で説得力がある。慎重な見方は価格の弱さと E&P の資本規律で強い。10 年の価格は物価並みに上がり(中立 1.4 倍)、サービスの単価は物価をやや下回ると置いた。確率は楽観 8%・やや楽観 20%・中立 36%・やや悲観 24%・悲観 12% と、悲観側を厚くした。倍率は利益ベースの正当化 PER(価格の弱さは利益と確率に入れ、倍率では割り引かない)。確率加重は 10 年で今の時価総額を 1 割半ほど下回り、総合はやや割高。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 53.06 ドル791 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 29.15 ドル434 億ドル)。 今の値に割り戻すと 41.36 ドル616 億ドル、今との差 −16.5%、 期待の年率 +5.2%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 100.85 ドル1,503 億ドル | 42.21 ドル629 億ドル | +188.7% | +11.2% | 11.44 ドル171 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 80.46 ドル1,199 億ドル | 36.85 ドル549 億ドル | +136.7% | +9.0% | 23.46 ドル350 億ドル |
| 中立 | 36% | 57.42 ドル856 億ドル | 31.48 ドル469 億ドル | +79.4% | +6.0% | 32.00 ドル477 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 30.50 ドル455 億ドル | 24.09 ドル359 億ドル | +10.2% | +1.0% | 13.10 ドル195 億ドル |
| 悲観 | 12% | 7.60 ドル113 億ドル | 10.74 ドル160 億ドル | −63.0% | −9.5% | 2.20 ドル33 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 53.06 ドル791 億ドル | 29.15 ドル434 億ドル | +65.9% | +5.2% | 82.21 ドル1,225 億ドル |
今の株価時価総額 49.55 ドル738 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:実質 90 ドルが続き、国際・オフショアとデジタル・データセンターが 10 年伸び続ける 利益 110 億ドル · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 100.85 ドル1,503 億ドル
2035 年、実質 90 ドルが続き、E&P の設備投資は実質で年 +3.5% 伸びる。SLB は国際・オフショアで年 +3%、デジタルで年 +6% の数量成長を取り、データセンター向けの冷却・電力機器が売上 30 億ドル規模になる。価格指数は物価を超え 1.45 倍、営業利益率は 20% に乗る。純利益は 2025 年の約 3.2 倍の 110 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER で 13.66 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。還元は 10 年で 629 億ドルで、自社株買いが厚くなる。高価格でも、石油需要の天井・電動化のリスクは残る。
- 坑井構築(Well Construction):数量 538(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 39.9%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 215 億ドル・営業利益 43 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
- 貯留層性能(Reservoir Performance):数量 351(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 41.3%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 145 億ドル・営業利益 33 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
- 生産システム(Production Systems):数量 844(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 32.9%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 277 億ドル・営業利益 53 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
- デジタルと統合(Digital & Integration):数量 295(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 32.8%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 97 億ドル・営業利益 30 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)。k = 8.0% + quality +1.0% = 9.0%。事業の帳簿 ROE 26.2% から RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)= 17.6%(moat normal)、g 4.0%(市場の伸びと価格から。k − g ≥ 3.5%)。式の値 15.5 倍。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) を乗せた上限 16.1 倍に対し、国際・オフショアが伸びる最良の筋書きだが、E&P の予算の循環を受けるので、上限の 8.5 割(13.66 倍)に置いた。
確率:原油が実質 90 ドル(名目で 127 ドル)で E&P の設備投資が増え続け、SLB がデジタルでシェアを取る必要がある。業界ノートの楽観に近い。
やや楽観 20% やや楽観:国際が年 +2.5%、デジタルが年 +5% で利益率が 18% に上がる 利益 92 億ドル · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 80.46 ドル1,199 億ドル
2035 年、実質 80 ドル前後で、E&P の設備投資は実質で年 +2.5%。SLB は国際で年 +2.5%、デジタルで年 +5.7% 伸び、データセンター・生産事業(チャンピオンX)が利益の中心になる。価格指数は 1.43 倍、営業利益率は 18%、純利益は 92 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER で 13.03 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。北米は電動の水圧破砕で単価が下がるが、SLB は北米の比重が小さく影響は限られる。中東は戦争の後に稼働が戻り、オフショアの案件が 2030 年代前半まで売上を支える。サービスの単価は国際で物価並みに戻るが、北米では物価を下回る。配当と自社株買いは営業キャッシュフローの約 5 割を保ち、株数は緩やかに減る。
- 坑井構築(Well Construction):数量 491(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 39.3%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 193 億ドル・営業利益 36 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
- 貯留層性能(Reservoir Performance):数量 323(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 40.7%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 132 億ドル・営業利益 28 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
- 生産システム(Production Systems):数量 782(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 32.4%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 253 億ドル・営業利益 46 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
- デジタルと統合(Digital & Integration):数量 278(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 32.3%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 90 億ドル・営業利益 27 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)。k = 8.0% + quality +1.0% = 9.0%。事業の帳簿 ROE 23.6% から RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)= 16.3%(moat normal)、g 4.0%(市場の伸びと価格から。k − g ≥ 3.5%)。式の値 15.1 倍。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) を乗せた上限 15.7 倍に対し、同じく循環を受けるので、上限の 8.3 割(13.03 倍)に置いた。
確率:強気の見方に近いが、顧客の資本規律と電動化を考え 2 割。
中立 36% 中立:実質 72 ドルで国際が年 +1%、デジタルが年 +5% 伸びる 利益 71 億ドル · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 57.42 ドル856 億ドル
2035 年、実質 WTI 72 ドルで、E&P の設備投資は実質でほぼ横ばい。SLB の国際の数量は年 +1%、デジタルは年 +5%(売上 62 億ドル相当)、生産システムは年 +2% で、全体は年 +1.5%。サービスの単価は物価をやや下回り、価格指数は 1.38 倍(物価 1.41 倍)、デジタルは 1.33 倍と技術の進歩で下がる。営業利益率は 16.4%、営業利益 96 億ドル、純利益 71 億ドル(2028 年から年 +6% 弱)。倍率は利益ベースの正当化 PER で 12.05 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。
- 坑井構築(Well Construction):数量 429(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 38.0%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 163 億ドル・営業利益 28 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
- 貯留層性能(Reservoir Performance):数量 281(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 39.3%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 110 億ドル・営業利益 21 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
- 生産システム(Production Systems):数量 733(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 31.5%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 231 億ドル・営業利益 38 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
- デジタルと統合(Digital & Integration):数量 261(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 31.6%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 82 億ドル・営業利益 23 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)。k = 8.0% + quality +1.0% = 9.0%。事業の帳簿 ROE 20.0% から RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)= 14.5%(moat normal)、g 4.0%(市場の伸びと価格から。k − g ≥ 3.5%)。式の値 14.5 倍。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) を乗せた上限 15.1 倍に対し、E&P の予算の循環を受ける事業なので上限の 8 割、上限の 8.0 割(12.05 倍)に置いた。
確率:業界ノートの中立(E&P の名目設備投資は 10 年で年 +3%、実質ほぼ横ばい)に、SLB の国際比重とデジタルの伸びを足した。議論の落としどころ。
やや悲観 24% やや悲観:E&P の資本規律が続き、サービス単価が物価を大きく下回る 利益 44 億ドル · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 30.50 ドル455 億ドル
2035 年、実質 WTI 60 ドルで、E&P の設備投資は実質で縮み、数量は国際で年 −0.5%、北米で年 −2%。サービスの単価は競争・電動の水圧破砕・自動掘削で下がり続け、価格指数は 1.28 倍(物価 1.41 倍より 1 割低い)。営業利益率は 13% に落ち、純利益は 44 億ドル。のれんの一部(約 30 億ドル)を減損し、自己資本は 300 億ドルにとどまる。国際のオフショアの案件は細り、中東の稼働も戦争前に戻りきらない。ハリバートンや中堅との値下げ競争が続き、デジタルの単価も下がる。還元は営業キャッシュフローの範囲で、自社株買いは縮む。倍率は利益ベースの正当化 PER で 10.33 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。
- 坑井構築(Well Construction):数量 382(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 35.2%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 134 億ドル・営業利益 19 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
- 貯留層性能(Reservoir Performance):数量 246(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 36.4%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 90 億ドル・営業利益 15 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
- 生産システム(Production Systems):数量 644(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 29.7%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 191 億ドル・営業利益 28 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
- デジタルと統合(Digital & Integration):数量 219(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 28.5%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 62 億ドル・営業利益 15 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)。k = 8.0% + quality +1.0% = 9.0%。事業の帳簿 ROE 14.7% から RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)= 11.8%(moat normal)、g 4.0%(市場の伸びと価格から。k − g ≥ 3.5%)。式の値 13.2 倍。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) を乗せた上限 13.8 倍に対し、値下げ競争とデジタルの単価下落が続く構造なので質を落として、上限の 7.5 割(10.33 倍)に置いた。
確率:2015〜2020 年の大半が実質で単価の低い局面だった。10 年の慎重な見方は強いので 2 割強。
悲観 12% 悲観:構造的に負け、E&P の設備投資が実質で縮み、もう優良ではなくなる 利益 12 億ドル · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 7.60 ドル113 億ドル
2035 年、電動化と OPEC+ の増産で Brent は名目で 70 ドル止まり(実質 50 ドル)。E&P は設備投資を半減し、SLB の数量は 2025 年の 8 割まで落ち、価格指数は 1.15 倍と物価の 8 割にとどまる。営業利益率は 6.6%、純利益は 12 億ドル。のれん・無形資産を約 80 億ドル減損し、自己資本は 230 億ドルまで下がる。倍率は利益ベースの正当化 PER で 9.44 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。配当を半分に削って自社株買いを止め、還元は 10 年で 160 億ドル(純利益の合計を上回る分は、手元の現金と資産売却で払う)。チャンピオンXの評価損、中東の国有化が重なる、10 年の構造負けを想定した筋書き。
- 坑井構築(Well Construction):数量 327(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 31.6%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 103 億ドル・営業利益 8 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
- 貯留層性能(Reservoir Performance):数量 211(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 32.7%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 69 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
- 生産システム(Production Systems):数量 533(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 27.0%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 144 億ドル・営業利益 14 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
- デジタルと統合(Digital & Integration):数量 189(対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値))× 価格 24.9%(SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00))→ 売上 47 億ドル・営業利益 8 億ドル。市場(2025 年ドル)× シェアと価格指数
倍率:k = 8.0% + quality +1.0% = 9.0%。この筋書きの事業の帳簿 ROE 5.1% は k 以下なので、ためた利益は額面を下回る価値で PER は 1÷k = 11.1 倍が上限。電動化と減損で構造的に負けた筋書きなので上限の 8.5 割(9.44 倍)。
確率:電動化・石油需要の天井・競争・M&A 失敗の構造的な悲観は 10 年で 1 割強。リーマン級の不況とは別の話。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
坑井構築(Well Construction)
掘削の請負・ドリルビット・掘削液・坑井の設計。オフショアと国際の大型案件が主力。
| 数量対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値) | 価格SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 400 | 27.5% | 110 | 18 |
| 10 年後 中立 | 429 | 38.0% | 163 | 28 |
取り方:市場 約 400 億ドル × シェア 27.5%(推定)。利益率 16.5%。売上=市場×(シェア×価格指数)。2025 年は価格指数 1.00。
貯留層性能(Reservoir Performance)
坑井の評価・仕上げ・介入・刺激。既存の井戸から生産を増やす仕事。
| 数量対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値) | 価格SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 260 | 28.5% | 74 | 14 |
| 10 年後 中立 | 281 | 39.3% | 110 | 21 |
取り方:市場 約 260 億ドル × シェア 28.5%(推定)。利益率 18.5%。
生産システム(Production Systems)
井戸元の機器・人工採油・海底設備・化学薬品。2025 年 7 月に取得したチャンピオンXを含む。データセンター向け冷却もここに入る(推定)。
| 数量対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値) | 価格SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 600 | 22.5% | 135 | 22 |
| 10 年後 中立 | 733 | 31.5% | 231 | 38 |
取り方:市場 約 600 億ドル × シェア 22.5%(推定)。2025 年はチャンピオンXが半年分のみで、2026 年は通年で約 +15 億ドル。利益率 16%。
デジタルと統合(Digital & Integration)
地下データの解析・自動掘削・データセンター向け新事業。
| 数量対象市場の大きさ(億ドル、2025 年のドル価値) | 価格SLB のシェア × 名目の価格指数(2025 年は指数 1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 160 | 23.8% | 38 | 10 |
| 10 年後 中立 | 261 | 31.6% | 82 | 23 |
取り方:市場 約 160 億ドル × シェア 24%(推定)。利益率 27%。
リスクと懸念
E&P の設備投資(循環)
売上の大半は石油・ガス会社の設備投資で決まる。2026 年は原油が高くても北米は −3%、国際は +1% の見通しで、資本規律が続く。景気が悪化すると稼働とサービスの単価が同時に下がり、2020 年は売上 −28%・営業利益率 5.1%(SLB)。
中東への依存と戦争
2026 年 4〜6 月期の中東売上は前年比 −13%。湾岸(クウェート・サウジなど)の操業停止は、現地の設備と契約に直接響く。戦争が収まっても再開に数年かかる可能性があり、国有化・契約変更・制裁のリスクもある。中東は SLB の国際売上の中でも利益率が高い地域で、この減少は全体の利益率に響く。
のれんと無形資産の評価損
チャンピオンXやキャメロンなど買収で、のれんと無形資産は約 150 億ドル規模(推定)。2016〜2020 年は 3 度の大きな純損失(2020 年 −105 億ドル)を出した。谷では自己資本を大きく削る。
サービス単価の弱さ
E&P は合併で集約され(エクソン・パイオニア、コノコ・マラソン、デボン・コテラ)、買い手の交渉力が強い。電動の水圧破砕・自動掘削で単価が下がり、ハリバートンとの競争も続く。中立でも単価は物価をやや下回ると置いた。
チャンピオンXの統合と株の薄まり
全株式交換で取得したため、株数が増えて持ち分が薄まった。人工採油・化学薬品は景気に強いが、統合の費用と相乗効果が想定どおりでないと ROE が上がらない。2026 年は通年で売上の約 1 割を占め、うまく統合できたかが生産事業の利益率に出る。
電動化と石油需要の天井
10 年で石油需要が頭打ちになれば、E&P の設備投資が構造的に縮み、サービス全体の数量が減る。天然ガスと LNG、データセンターの電力需要が支えるが、石油の減少の速さは読めない。2030 年代に実質価格が採算の線を割れば、探鉱の稼働が戻りにくくなる。
関税と費用の上昇
機器の鋼材・部品が関税で上がると生産システムの利益率が下がる。人手不足で人件費も物価より速く上がることがある。単価の値上げが遅れる局面では、費用の上昇が先に利益率を押し下げる。2026 年は戦争でも運賃・保険料が上がっている。
今後の分かれ目
- 湾岸(サウジ・クウェート・UAE)の稼働が 2027 年までに戻り、増産契約が出る
- 国際の数量が増え、やや楽観・楽観の確率を上げる。中東の売上は 2026 年の落ち込みから回復し、利益率も上がる。
- 原油が 2027 年に 70 ドル前後へ下がり、E&P が設備投資を削る
- サービスの単価と稼働が同時に落ち、やや悲観・悲観の確率を上げる。自社株買いを止める可能性がある。
- データセンター向けの売上が 2026 年末に年率 10 億ドルに届き、2027 年も倍増に近い
- デジタルと生産システムの利益率が上がる信号で、やや楽観の確率を上げる。倍率の上限も見直す。
- のれん・無形資産で大きな評価損(10 億ドル超)を出す
- チャンピオンXなどの買収の価値が毀損した信号。中立の ROE と倍率を下げ、悲観の確率を上げる。
- E&P の 2027 年の設備投資が、原油の高値にも関わらず増えない
- 資本規律が構造化した信号で、国際の数量を中立から下方に直し、10 年のやや悲観を厚くする。
- SLB が高値の年に大型買収(機器・海底設備)を行う
- 過去のキャメロンの前例があり、評価損のリスクが上がる。対象と価格で、中立から悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- E&P の 2027 年の設備投資の発表と国際・北米の稼働
- 中東(サウジ・クウェート・UAE)の稼働の回復
- オフショアの FID と受注残
- デジタル・データセンター向けの売上(年率 10 億ドルの達成)
- 生産システム(チャンピオンX)の利益率と相乗効果
- 自社株買い・還元(40 億ドル超)の実行
- のれん・無形資産の評価損
倍率と資本コストの決め方
倍率は式だけで置いた。PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)、k は 9.0%(8.0% + quality 1.0%)、RONIC は k + 1/2 ×(事業の ROE − k)、g は 4%。中立は式の上限(×(1+g))の 8 割、E&P の予算の循環を受けるので上限いっぱいには置かない。悲観側は 7〜8 割台、悲観は ROE が k を割るので 1÷k の 85%。今の PER・過去の倍率・同業の倍率は根拠にしていない。結果の差とやや割高の 5 段階はそのまま受け入れた。利益(数量 × 価格)と確率は変えていない。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality 1.0% = 9.0%(決まり v2。β は使わない)。E&P の予算の循環は cycle で見た。中東の政治・買収後の評価損は k に足さず、筋書きと確率で表した。