結論
EQT(EQT Corporation)は、米国最大級の天然ガス生産会社で、アパラチア(マーセラス・ユティカ)のガス田と、2024 年に買収したエクイトランス(Equitrans)の集荷・輸送設備を一体で持つ。2025 年は販売量 2,382 Bcfe(日量 約 6.5 Bcfe)、売上 86 億ドル、調整後 EBITDA 59 億ドル、純利益(EQT 帰属)20 億ドル。2026 年 4〜6 月期は Henry Hub が平均 2.89 ドル/MMBtu と低いのに FCF 3.3 億ドルを出し、純負債は 55 億ドルまで減って、会社の長期目標(50 億ドル)の手前に来た。
価値の源は 3 つある。第 1 に、1 Mcfe 当たり約 1.05 ドルの営業費で、アンレバレッジの損益分岐は約 2 ドル/MMBtu という低コスト。第 2 に、集荷・輸送・MVP(持ち分 約 53%)を自前で持つため、アパラチア特有の価格割引(2025 年 −0.49 ドル/Mcf)を縮める手段を持つこと。第 3 に、電力会社(CPV と 10 年・PJM 価格連動)と LNG(5 年・年 50 万トン)という新しい買い手との長期契約で、需要の裏付けが増えていること。
一方で、ガスは価格を決められない事業で、2019〜21 年は 3 年連続の赤字、PBR は 0.28 倍まで落ちた。業界ノートの中立(Henry Hub は実質 3.5 ドルで物価並みに上がる)で積み、資本コストは 9.5%(ガス価格の振れと価格受容者の分で 1.5%)。倍率は埋蔵量の寿命 11.8 年の年金(長期の g は 1%)で頭を押さえ、10 年の中立は PER 6.2 倍になる。悲観を 14% と厚めに置いたうえで、確率加重の価値は今の時価総額を 2 割弱下回った。総合は 2 割弱の割高である。ただし倍率は寿命 11.8 年の年金で頭を押さえた値で、埋蔵量が増えれば上がる。バリュー投資の観点では、安全域の源は低コストと財務の改善にあるが、価格を決められない事業なので、割高の幅は埋蔵量の寿命の置き方に左右される。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10 年後もこの事業は存在し、今より強いかと問えば、存在はする(ガスは電力・暖房・化学・LNG で使われ続ける)。強くなるかは、低コストと自前のインフラに懸かる。堀は広くはないが、ガス田の質と輸送という『コストの堀』は、他の生産者より実在する。価格を決められない点は変わらない。
オーナー利益(株主に残る利益)は、減耗を補う維持の設備投資(2026 年 20〜22 億ドル)を引いた後の FCF で見る。2026 年の FCF は 30 億ドル前後(会社は当初 35 億ドルと説明)で、これは Henry Hub が 3.5 ドル前後の年のもので、2.9 ドルの 2026 年 4〜6 月期でも FCF は出ている。中立の Henry Hub(実質 3.5 ドル)で置くと、10 年後の純利益は 40 億ドル強で、今の時価総額に対する利益利回りは 12% 台になる。
資本配分は、負債の返済を優先する点は評価できる。一方、株を使った買収の歴史は割り引く。わかりやすい事業だが、価格が外から決まるので、確信度は中程度。安全域は、ガスが 2.5〜3 ドルでも FCF を出す費用の低さにある。ただしガスは、需要(LNG・データセンター)の見通しが外れた時の下振れが深く、負け筋を厚く置いた。
何で稼ぐ会社か
売上は、天然ガスと、ガスに付いてくる NGL(プロパン・ブタンなど)・少量の原油の販売が大半で、2025 年の上流売上は 80 億ドル。残りは、エクイトランス由来の第三者向けの集荷・輸送・貯蔵の料金収入で、2026 年は 6〜7 億ドルの見込み。このメモでは 2 つに分けた。
ガス生産(アパラチア)は、ペンシルベニア・ウェストバージニア・オハイオに広がる自社の鉱区から、日量 約 6.5 Bcfe を出す。数量は Bcfe(10 億立方フィートのガス換算)、価格は Mcfe 当たりの実現価格(Henry Hub + 地域の割引 + NGL の上乗せ + ヘッジ)で置く。2025 年は 3.19 ドル/Mcfe(NYMEX 平均 3.40)。営業費の内訳は、輸送 0.42・SG&A 0.16・LOE 0.09 ドルなど(2025 年)。2026 年のガイダンスは販売量 2,375〜2,450 Bcfe(7 月に 90 Bcfe 引き上げ)、維持の設備投資 20.4〜21.9 億ドル、成長の設備投資 5.8〜6.4 億ドル。
第三者向け中流は、集荷と州間パイプライン(エクイトランス)と MVP(マウンテン・バレー・パイプライン。EQT の持ち分は 53% 前後へ増やす過程)で、EQT 自身のガスの輸送費は社内の取引として消える。第三者の取扱量を日量 5 Bcf、料金を 1 Mcf 当たり 0.35 ドル前後と推定し、売上 6.3 億ドル、営業利益率 50% と置いた。2026 年には MVP Southgate(FERC が着工を認可・2026 年末完成予定)、MVP Boost(需要が想定を上回り 20% 拡大)と、出荷先が広がる。プロパンの基地(Blackline・貯蔵 4,600 万ガロン)も 2026 年 7 月に 0.77 億ドルで買った。
優良さと弱いところ
堀は『ガス田の質』と『自前のインフラ』と『財務の立て直し』の 3 つ。マーセラスの核心部は井戸 1 本当たりの出る量が多く、2.9 万フィート超の水平井まで掘れる(2026 年 4〜6 月期に実績)ため、新規井戸の採算は Henry Hub 2〜2.5 ドルでも成り立つと会社は説明する。営業費 1.05 ドル/Mcfe は 2024 年の 1.23 から下がっており、規模と輸送・集荷の自前化が効いている。
自前の輸送・集荷を持つ点は、他の生産者にはあまり無い。アパラチアは 2020 年から生産が日量 340〜360 億立方フィート(34〜36 Bcf/d)で横ばいで、パイプラインの空きが価格を決めてきた。EQT は MVP(2024 年 6 月に稼働)の持ち分を増やし、Southgate・Boost で出荷先を増やしている。会社は『アパラチアの基準価格差は 2020 年代の終わりまで構造的に縮む』と説明するが、これは会社の見方で、外から確かめにくい。
弱い所は、価格を決められないこと(ROE は 2022 年 16%・2024 年 1%・2025 年 8.6%)と、買収と株の発行を繰り返してきた歴史。2024 年のエクイトランス(全株式)、2025 年のオリンパス(現金 4.75 億ドル+新株約 2,520 万株)で、株数は 2024 年に +33.8%、2025 年に +20.0% 増えた。買収で規模は伸びたが、価値を足したかは価格と費用の見通しで決まる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
天然ガスの生産は、価格を決められない循環産業で、米国のガス価格(Henry Hub)は在庫と天候と LNG の輸出で動く。EIA の 2026 年 10 月の見通しは、Henry Hub が 2026 年 3.48 → 2027 年 3.16 ドル/MMBtu、米国のガス生産は 2025 年 107 Bcf/d、LNG の輸出は 2026 年 17.0 → 2027 年 18.6 Bcf/d。EQT の 2026 年 4〜6 月期の Henry Hub は平均 2.89 ドルと低く、在庫は平年を上回っている。
業界ノートの前提は、Henry Hub が 10 年後 4.9 ドル(今のドル価値で 3.5 ドル)。LNG が 17 → 約 30 Bcf/d に増え、データセンターの電力向けに最大 17 Bcf/d が加わる(ウッドマッケンジーの楽観)のに対し、米国の生産(ハイネスビル・パーミアンの随伴ガス・アパラチア)が応えるため、実質では上がりすぎない。2026 年第 1 四半期には約 20 件の LNG 計画が中止された(業界ノート)ので、需要の上振れは確実ではない。
競合は、エクスパンド(EXE。7.48 Bcfe/d・ハイネスビル主体・LNG 基地に近い)、アンテロ(HG Energy を取得して約 4.1 Bcfe/d の 2 位)、CNX(1.65〜1.70 Bcfe/d)。生産者は分散していて価格受容者で、差は費用と財務とインフラで出る。アパラチアの強みは需要の近さで、EQT は Homer City の発電所(4.4 GW)や Shippingport の発電所(3.6 GW)にガスを約束している。弱みは、パイプラインの許認可の遅れの歴史と、ガス価格が 3 ドルを割るとすぐ利益が薄くなる点。
資本政策と M&A
資本配分は、まず純負債を 50 億ドルまで減らし(2025 年末 77 億ドル → 2026 年 6 月 55 億ドル)、そのうえで配当(年 約 4 億ドル)と自社株買いに回す方針。2025 年の自社株買いはゼロで、配当だけだった。成長の設備投資 6 億ドル前後は『配当を払った後の FCF の最初の部分』と位置づけ、インフラ(MVP・圧縮機)に使う。2026 年 4〜6 月期の発言では、数十億ドルの現金を積んで、株価が下がった時に自社株を買う余地も残すとした。
M&A は歴史的に株を使う。2024 年のエクイトランスは全株式(株数 +33.8%)、2025 年のオリンパスは現金 4.75 億ドル+新株約 2,520 万株。バリュー投資の観点では、割高な時に自社の株で買うと既存の株主の持ち分を薄めるので、今後の買収は『現金で・FCF の範囲で』が条件になる。目下は MVP の持ち分の追加(調整後 EBITDA の 約 9 倍・IRR 12%)や Blackline のような小型が中心。大型の合併(他のアパラチアの会社との統合)の可能性は消えていない。株式報酬は小さい。
このモデルは会社全体の時価総額で置くので、将来の増資は払い込みを payout から引く形で扱う。基本の筋書きでは、新株を発行せず、FCF の範囲で配当と自社株買いを行う前提にした。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
価格は、需要の構造が変わったことで実質 3.5 ドルを超える。LNG の輸出は 2026 年 17 Bcf/d から 2027 年 18.6 Bcf/d、建設中は 13.5 Bcf/d(2030 年まで)で、データセンターの電力向けのガスが加わる。EQT は CPV(10 年・PJM の電力価格連動・年 約 1 億ドルの FCF 増)と LNG の 5 年契約(2028 年の FCF に約 4,500 万ドル)を結んだ。ガスの価格の決まり方が、Henry Hub 一本から、電力価格・海外の LNG 価格に連動する形へ変わりつつある。
アパラチアの基準価格差は、MVP Boost(20% 拡大)・Southgate・Blackline で縮み、実現価格は Henry Hub に近づく。2026 年は差額ガイダンスが −0.55〜−0.35 ドルで、2025 年の −0.49 より小さい。維持の設備投資は 2026 年 20.4〜21.9 億ドルに下がり、生産は 2,375〜2,450 Bcfe に上がった(圧縮機の投資で減退率を下げる)。これは『同じお金でより多く出せる』ことの実証である。
純負債は 50 億ドルの目標に着き、そこから FCF はすべて自社株買いか、割安な持ち分の買い増しに回る。10 年で実質 5 ドル近く(ウッドマッケンジー)が続けば、純利益は今の 4 倍超になる。これが強気の見方で、楽観・やや楽観の筋書きの下敷きである。
慎重な見方
今の利益は、2026 年第 1 四半期の寒波による高値の『山』を含む。4〜6 月期は Henry Hub 2.89 ドルで、実現価格は 2.65 ドル/Mcfe、純利益は 2.1 億ドルまで落ちた。EIA は 2027 年を 3.16 ドルと見ており、在庫は平年を上回る。アパラチアの生産は 2020 年から横ばいだが、ハイネスビルとパーミアンの随伴ガスは、価格が上がればすぐ増える。実質 3.5 ドルを超えて価格が続く根拠は薄い。
EQT は 2019〜21 年に 3 年連続の赤字(−12・−10・−11 億ドル)を出し、PBR は 2019 年に 0.28 倍まで落ちた。ガスは谷が深い。LNG は 2026 年第 1 四半期だけで約 20 件の計画が中止され、需要の増加は想定より遅れる恐れがある。データセンターの電力需要も、効率の改善や計画の延期で下振れする。CPV の契約は価格が PJM 連動で、電力価格が下がれば利益も下がる。
買収は株を使ってきた(2024 年 +33.8%、2025 年 +20.0%)。配当と自社株買いを増やす前に、また株を出す買収が来れば、既存の株主の取り分が薄まる。PER は今 16 倍と、同社の過去の中央値(15.6 倍)に近いが、これは山の利益に対しての倍率で、ならした利益では高い。これが慎重な見方である。
どちらに重みを置いたか
需要の構造変化(LNG・電力)と低コストの両方が実在するので、強気の見方も弱くはない。ただし価格の置き方は業界ノートの前提(実質 3.5 ドル)が上限で、その上は楽観に置いた。ガスは谷が深く、EQT は赤字の履歴があるので、慎重な見方を強く取り、悲観を 14%、やや悲観を 22% と厚くした。確率は楽観 8%・やや楽観 20%・中立 36%・やや悲観 22%・悲観 14%。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 42.85 ドル264 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 43.55 ドル268 億ドル)。 今の値に割り戻すと 44.95 ドル277 億ドル、今との差 −17.8%、 期待の年率 +4.7%(資本コスト 9.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 99.23 ドル611 億ドル | 71.46 ドル440 億ドル | +212.2% | +12.1% | 13.66 ドル84 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 67.35 ドル415 億ドル | 56.19 ドル346 億ドル | +126.0% | +8.5% | 24.71 ドル152 億ドル |
| 中立 | 36% | 42.26 ドル260 億ドル | 42.23 ドル260 億ドル | +54.5% | +4.4% | 30.42 ドル187 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 22.28 ドル137 億ドル | 34.11 ドル210 億ドル | +3.1% | +0.3% | 12.41 ドル76 億ドル |
| 悲観 | 14% | 9.45 ドル58 億ドル | 27.77 ドル171 億ドル | −31.9% | −3.8% | 5.21 ドル32 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 42.85 ドル264 億ドル | 43.55 ドル268 億ドル | +58.0% | +4.7% | 86.40 ドル532 億ドル |
今の株価時価総額 54.67 ドル337 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:実質 5 ドルのガスが続き、LNG と電力で生産が年 +3.2% 伸びる 利益 93 億ドル · PER 6.6 倍 · 株価時価総額 99.23 ドル611 億ドル
2035 年、LNG の輸出が 30 Bcf/d を超え、電力向けも 10 Bcf/d 以上増えて、Henry Hub は名目 7.1 ドル(実質 5 ドル)。EQT の実現価格は 6.90 ドル/Mcfe(2025 年の 2.2 倍)。販売量は年 +3.2% で 3,250 Bcfe(日量 8.9 Bcfe)、営業費は物価で 1.50 ドル、減価償却も 1.50 ドルへ上がる。営業利益率は 57%、営業利益は 134 億ドル、純利益は 93 億ドル。純負債は 50 億ドルのまま、FCF の大半(10 年で約 440 億ドルの還元)を自社株買いと配当に回す。倍率は利益ベースの正当化 PER で 6.57 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。MVP・Southgate の拡張で中流の取扱量も日量 7 Bcf まで伸びる。
- ガス生産(アパラチア):数量 3,250(販売量(Bcfe/年))× 価格 6.90(実現価格(ドル/Mcfe。Henry Hub + 地域の割引 + NGL の上乗せ + ヘッジ))→ 売上 224 億ドル・営業利益 127 億ドル。販売量・実現価格・営業利益率
- 第三者向け中流(集荷・輸送・貯蔵・MVP):数量 7.0(第三者の取扱量(Bcf/日))× 価格 0.55(料金(ドル/Mcf))→ 売上 14 億ドル・営業利益 7 億ドル。取扱量・料金・営業利益率
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)。k = 8.0% + quality +1.5% = 9.5%。事業の帳簿 ROE 21.1% から RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)= 15.3%(moat normal)、g 1.0%(市場の伸びと価格から。k − g ≥ 3.5%)。式の値 11.0 倍。先細りの資源なので寿命 11.8 年の年金(g 1%)が頭を押さえ、7.2 倍。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) を乗せた上限 7.3 倍に対し、低コストと財務の改善で利益が最も厚く出る筋書きだが価格受容者なので、上限の 9.0 割(6.57 倍)に置いた。
確率:業界ノートの楽観(実質 5 ドル・名目 7.1 ドル)が 10 年続き、需要の構造変化が供給を上回る必要がある。ウッドマッケンジーの見方に近いが 1 割弱とした。
やや楽観 20% やや楽観:実質 4.2 ドルで、LNG・電力向けの契約が増え生産は年 +2.5% 利益 65 億ドル · PER 6.4 倍 · 株価時価総額 67.35 ドル415 億ドル
2035 年、Henry Hub は名目 5.9 ドル(実質 4.2 ドル)。LNG の輸出が 25 Bcf/d 前後、電力向けのガスが 5〜8 Bcf/d 増える。EQT は CPV のような価格連動の契約を増やし、実現価格は 5.75 ドル/Mcfe(2025 年の 1.8 倍)。販売量は年 +2.5% で 3,050 Bcfe、営業費 1.47 ドル・減価償却 1.47 ドル。営業利益率は 49%、営業利益は 92 億ドル、純利益は 65 億ドル。中流は MVP の拡張で取扱量が日量 6.7 Bcf、売上 13 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER で 6.43 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。自社株買いで株は減り続ける(還元は 10 年で 約 350 億ドル)。
- ガス生産(アパラチア):数量 3,050(販売量(Bcfe/年))× 価格 5.75(実現価格(ドル/Mcfe。Henry Hub + 地域の割引 + NGL の上乗せ + ヘッジ))→ 売上 175 億ドル・営業利益 86 億ドル。販売量・実現価格・営業利益率
- 第三者向け中流(集荷・輸送・貯蔵・MVP):数量 6.7(第三者の取扱量(Bcf/日))× 価格 0.53(料金(ドル/Mcf))→ 売上 13 億ドル・営業利益 7 億ドル。取扱量・料金・営業利益率
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)。k = 8.0% + quality +1.5% = 9.5%。事業の帳簿 ROE 17.7% から RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)= 13.6%(moat normal)、g 1.0%(市場の伸びと価格から。k − g ≥ 3.5%)。式の値 10.9 倍。先細りの資源なので寿命 11.8 年の年金(g 1%)が頭を押さえ、7.2 倍。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) を乗せた上限 7.3 倍に対し、同じく価格受容者なので、上限の 8.8 割(6.43 倍)に置いた。
確率:業界ノートの中立(実質 3.5 ドル)より 0.7 ドル高い姿。LNG と電力の契約が増え、アパラチアの基準価格差が縮む。強気の見方の中間で 2 割。
中立 36% 中立:実質 3.5 ドルで、生産は年 +2%、利益率は 36% 前後を保つ 利益 42 億ドル · PER 6.2 倍 · 株価時価総額 42.26 ドル260 億ドル
2035 年、Henry Hub は名目 4.9 ドル(実質 3.5 ドル)。LNG の稼働が約 30 Bcf/d に増え、電力向けも伸びるが、ハイネスビルとパーミアンの随伴ガスが応えて、実質では上がりすぎない。EQT の実現価格は 4.75 ドル/Mcfe(2025 年の 1.49 倍、物価並みの 1.41 倍より高いのは基準価格差の縮小と NGL による)。販売量は年 +2% で 2,880 Bcfe(日量 7.9 Bcfe)、営業費 1.45 ドル・減価償却 1.45 ドルは物価で上がるが、規模で一部相殺される。営業利益率は 39%、営業利益は 59 億ドル、純利益は 42 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER で 6.21 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。10 年の還元は約 260 億ドル。
- ガス生産(アパラチア):数量 2,880(販売量(Bcfe/年))× 価格 4.75(実現価格(ドル/Mcfe。Henry Hub + 地域の割引 + NGL の上乗せ + ヘッジ))→ 売上 137 億ドル・営業利益 53 億ドル。販売量・実現価格・営業利益率
- 第三者向け中流(集荷・輸送・貯蔵・MVP):数量 6.3(第三者の取扱量(Bcf/日))× 価格 0.52(料金(ドル/Mcf))→ 売上 12 億ドル・営業利益 6 億ドル。取扱量・料金・営業利益率
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)。k = 8.0% + quality +1.5% = 9.5%。事業の帳簿 ROE 13.3% から RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)= 11.4%(moat normal)、g 1.0%(市場の伸びと価格から。k − g ≥ 3.5%)。式の値 10.7 倍。先細りの資源なので寿命 11.8 年の年金(g 1%)が頭を押さえ、7.2 倍。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) を乗せた上限 7.3 倍に対し、ガスは価格を決められない事業なので、上限の 8.5 割(6.21 倍)に置いた。
確率:業界ノートの中立(10 年後 4.9 ドル・実質 3.5 ドル)に、会社固有の低コスト・MVP・長期契約を足した。議論の落としどころで最も確からしい姿。
やや悲観 22% やや悲観:実質 2.9 ドルへ下がり、成長を止めて利益率は 25% に 利益 24 億ドル · PER 5.8 倍 · 株価時価総額 22.28 ドル137 億ドル
2035 年、Henry Hub は名目 4.1 ドル(実質 2.9 ドル)。LNG の計画が半分しか進まず、データセンターの電力向けのガスも効率改善で伸びない。EQT の実現価格は 3.95 ドル/Mcfe(2025 年の 1.24 倍)で、物価並みの 1.41 倍に届かない。営業費・減価償却は 1.5・1.45 ドルへ物価で上がるので、営業利益率は 25% まで下がる。販売量は年 +1.3% の 2,700 Bcfe にとどめ、成長の設備投資を絞る。営業利益は 33 億ドル、純利益は 24 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER で 5.84 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。配当は守り、自社株買いは中立より小さい(10 年の還元 約 210 億ドル)。
- ガス生産(アパラチア):数量 2,700(販売量(Bcfe/年))× 価格 3.95(実現価格(ドル/Mcfe。Henry Hub + 地域の割引 + NGL の上乗せ + ヘッジ))→ 売上 107 億ドル・営業利益 27 億ドル。販売量・実現価格・営業利益率
- 第三者向け中流(集荷・輸送・貯蔵・MVP):数量 5.9(第三者の取扱量(Bcf/日))× 価格 0.51(料金(ドル/Mcf))→ 売上 11 億ドル・営業利益 6 億ドル。取扱量・料金・営業利益率
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)。k = 8.0% + quality +1.5% = 9.5%。事業の帳簿 ROE 10.0% から RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)= 9.8%(moat normal)、g 1.0%(市場の伸びと価格から。k − g ≥ 3.5%)。式の値 10.6 倍。先細りの資源なので寿命 11.8 年の年金(g 1%)が頭を押さえ、7.2 倍。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) を乗せた上限 7.3 倍に対し、価格が実質で下がり利益率が落ちる構造なので質を落として、上限の 8.0 割(5.84 倍)に置いた。
確率:実質 3.5 ドルを下回る姿。LNG の拡大が遅れ、ハイネスビルの増産が供給を満たす。2023〜24 年の実質 2.2〜2.5 ドルの履歴があり、慎重な見方は強い。
悲観 14% 悲観:構造的に負け、実質 2.3 ドルで減産し、優良なガス生産者ではなくなる 利益 10 億ドル · PER 5.9 倍 · 株価時価総額 9.45 ドル58 億ドル
2035 年、LNG の輸出計画の 3 分の 2 が止まり、ハイネスビルが需要を満たすため、Henry Hub は名目 3.5 ドル前後(実質 2.5 ドル)で張り付く。EQT の実現価格は 3.30 ドル/Mcfe(2025 年の 1.03 倍)で、物価の 1.41 倍に届かず、実質では 3 割下がる。営業費・減価償却は物価で上がるので、営業利益率は 11% まで下がる。成長を止めて減産し、販売量は 2,350 Bcfe。営業利益は 13 億ドル、純利益は 10 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER で 5.88 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。配当は維持するが増やせず、買収の失敗が重なる。10 年の還元 171 億ドルは、純利益が 26 億ドルから 10 億ドルへ下がっていく期間の合計(約 166 億ドル)とほぼ同じで、後半は減価償却が設備投資を上回る分の現金と、中流の持ち分の一部売却で払う。10 年の構造の悲観。
- ガス生産(アパラチア):数量 2,350(販売量(Bcfe/年))× 価格 3.30(実現価格(ドル/Mcfe。Henry Hub + 地域の割引 + NGL の上乗せ + ヘッジ))→ 売上 78 億ドル・営業利益 8 億ドル。販売量・実現価格・営業利益率
- 第三者向け中流(集荷・輸送・貯蔵・MVP):数量 5.0(第三者の取扱量(Bcf/日))× 価格 0.49(料金(ドル/Mcf))→ 売上 9 億ドル・営業利益 5 億ドル。取扱量・料金・営業利益率
倍率:k = 8.0% + quality +1.5% = 9.5%。この筋書きの事業の帳簿 ROE 5.9% は k 以下なので、ためた利益は額面を下回る価値で PER は 1÷k = 10.5 倍が上限。構造的に負けた生産者の稼ぎの質を見て上限の 8.5 割(5.88 倍)。
確率:LNG の計画が止まり、ハイネスビルの増産で需給が緩み、実質 2.5 ドルに戻る構造の負け。EQT の前身は 2019〜21 年に 3 年連続の赤字、PBR 0.28 倍の履歴がある。10 年の構造の悲観として 14% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
ガス生産(アパラチア)
マーセラス・ユティカのガスと NGL・少量の原油の生産と販売。売上の約 9 割。
| 数量販売量(Bcfe/年) | 価格実現価格(ドル/Mcfe。Henry Hub + 地域の割引 + NGL の上乗せ + ヘッジ) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,382 | 3.19 | 76 | 28 |
| 10 年後 中立 | 2,880 | 4.75 | 137 | 53 |
取り方:2025 年の販売量 2,382 Bcfe、実現価格 3.19 ドル/Mcfe(差額 −0.49 ドル/Mcf 込み)。売上=数量×価格×0.01(億ドル)。営業費 1.05・上流の減価償却 約 0.95 ドル/Mcfe を引いて営業利益 約 28 億ドル(推定)。報告の売上 86 億ドルとの差はデリバティブ益・中流・消去。
第三者向け中流(集荷・輸送・貯蔵・MVP)
エクイトランス由来の集荷・州間パイプライン・貯蔵と、MVP の持ち分。EQT 自身のガスの輸送は社内の取引。
| 数量第三者の取扱量(Bcf/日) | 価格料金(ドル/Mcf) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5.0 | 0.35 | 6 | 3 |
| 10 年後 中立 | 6.3 | 0.52 | 12 | 6 |
取り方:会社の 2026 年ガイダンス(第三者向け中流の売上 6〜7 億ドル)から、取扱量を日量 5 Bcf、料金を 1 Mcf 当たり 0.345 ドルと推定。rev_factor は 365 日 × 100 万 Mcf ÷ 1 億(億ドル換算)。営業利益率は 50%(推定)。
リスクと懸念
ガス価格(循環)
利益の大半は Henry Hub で動く。Henry Hub 0.5 ドル/MMBtu の変化で EQT の営業利益はおよそ 12 億ドル動く(業界ノートの推定)。2026 年 4〜6 月期は 2.89 ドルで FCF は 3.3 億ドルまで低下。2019〜21 年の 3 年連続の赤字、PBR 0.28 倍の前例がある。ヘッジ(2027 年の短期スワップ 3.16 ドル)は 1〜2 年しか守らない。
LNG・データセンターの需要が遅れる
LNG は 2026 年第 1 四半期に約 20 件の計画が中止された。EIA は 2027 年の Henry Hub を 3.16 ドルへ下げた。需要の増加を織り込んだ価格(実質 3.5 ドル)が外れると、中立の利益が 2〜3 割下がる。
アパラチアの許認可とパイプライン
MVP Southgate(2026 年末完成予定)などは環境許認可の訴訟と遅れの歴史がある。完成が遅れれば、基準価格差の縮小が先送りされ、実現価格が Henry Hub より 0.4〜0.6 ドル低いまま残る。
株を使った買収
2024 年に +33.8%、2025 年に +20.0% と株数を増やしてきた。割高な時に株で買うと、会社全体の時価総額は増えても既存の株主の取り分が薄まる。大型合併の可能性は残る。会社は今後の買収を FCF の範囲で行うと説明するが、拘束力はない。
競合の増産
エクスパンド(7.48 Bcfe/d)・アンテロ・CNX は設備投資を抑えているが、価格が上がれば増産できる。ハイネスビルの増産は LNG 向けの供給を増やし、価格の上がり方を抑える。EQT は価格受容者で、同業が増産すれば自社の努力では価格を守れない。
連結の複雑さ
MVP の持ち分が約 53% に増え、非支配の持ち分(2025 年に純利益の約 12%)が出る。EQT 帰属の利益と全体の利益の差、配当の負担、MVP 側の借入が見えにくい。買収を重ねてきたため、1 つの数字だけで収益力を読むと間違えやすい。
今後の分かれ目
- Henry Hub の 2027 年のストリップが 3.5 ドルを上回り、在庫が平年を下回る
- LNG と電力の需要が供給を上回り始めた信号で、楽観・やや楽観の確率を上げる。中立の価格(実質 3.5 ドル)を上方に見直す。
- Henry Hub が 2.5 ドルを割る状態が 2 年続く
- ガス田の増産が止まらず、需要が遅れた信号で、やや悲観・悲観の確率を上げる。EQT は成長の設備投資を止め、自社株買いを止めて負債返済を優先する。
- MVP Southgate が 2026 年末に稼働し、Boost が予定どおり進む
- アパラチアの基準価格差が縮み、実現価格と Henry Hub の差が 0.1 ドル縮む。10 年の中立の利益が約 5% 上がる。
- EQT が株を主体にした大型買収を発表する
- 会社全体の時価総額は増えるが、買収価格が高ければ既存の株主の取り分が薄まる。payout から増資の払い込みを引いて見直す。
- 純負債が 50 億ドルを下回り、自社株買いが再開される
- 還元が配当だけから増える信号で、中立・やや楽観の確率を上げる。
- CPV・LNG のような価格連動の長期契約が、さらに 2〜3 件増える
- 価格の決まり方が Henry Hub 以外にも広がる信号で、悲観の確率を下げ、利益の谷を浅くする。
見ておくもの
- Henry Hub の先物(2027 年・2028 年)と在庫の平年比
- LNG の原料ガス使用量(EIA の見通し 2026 年 17.0 → 2027 年 18.6 Bcf/d)
- アパラチアの基準価格差(会社の差額ガイダンス −0.55〜−0.35 ドル/Mcf)
- MVP Southgate の完成と Boost の進み具合
- EQT の純負債(50 億ドル)と自社株買いの再開
- 維持の設備投資(20.4〜21.9 億ドル)と販売量(2,375〜2,450 Bcfe)
- CPV・LNG など価格連動契約の件数と価格式
- 株を使う買収の発表
倍率と資本コストの決め方
倍率は式だけで置いた。先細りの資源なので、PER は式((1 − g/RONIC)/(k − g)、g は 1%)と、埋蔵量の寿命 11.8 年の年金の小さい方で頭を押さえる。k は 9.5%(8.0% + quality 1.5%)で、年金が効く。中立は上限(×(1+g))の 85%、悲観側は 8 割台。ガスは価格を決められないので上限いっぱいには置かない。今の PER・過去の倍率・同業の倍率は根拠にしていない。結果の差とやや割高の 5 段階はそのまま受け入れた。利益(数量 × 価格)と確率は変えていない。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality 1.5% = 9.5%(決まり v2。β は使わない)。ガス価格の振れは cycle・pricing で見た。アパラチアの許認可・買収・株の発行は k に足さず、筋書き(価格・数量)と悲観の確率で表した。