結論
コノコフィリップス(ConocoPhillips)は、米国本土のシェール(デラウェア・ミッドランド・イーグルフォード・バッケン)を中心に、アラスカ・カナダ・ノルウェー・リビア・オーストラリアの LNG(APLNG)・カタール LNG まで持つ、世界最大の独立系の石油・ガス生産会社である。2025 年は生産 約 238 万 boe/日、売上 587 億ドル、営業利益 115 億ドル、純利益 80 億ドル(WTI 65 ドル・Brent 69 ドルの年)。2026 年 4〜6 月期は中東の戦争で実現価格が 62 ドル/boe に上がり純利益 39 億ドルと急増したが、生産はカタールの停止と Surmont の royalty 上昇で前年より 4% 減っている。
価値の中心は 3 つの積み上げにある。第 1 に、2024 年のマラソン・オイル買収で厚くなった米国本土の低コスト在庫(会社は 20 年超・WTI 40 ドル前後でも採算と説明)。第 2 に、アラスカのウィロー(2029 年初油・ピーク約 18 万 boe/日)。第 3 に、LNG(引取契約は合計 12 MTPA)。会社は 2029 年までに FCF を約 70 億ドル増やす目標を維持している。
一方で、価格を決められない事業であることは変わらない。10 年先を中立の価格(今のドル価値で WTI 約 72 ドル。名目で 97 ドル)で積み上げ、資本コスト 9.5%(価格の振れと価格受容者の分 1.5%)・埋蔵量の寿命 8.8 年の年金(長期の g は 1%)で倍率を出すと(10 年の中立は PER 5.3 倍)、悲観の厚みを入れた確率加重は今の時価総額を 5 割ほど下回る。総合は割高である。ただし倍率は寿命 8.8 年の年金で頭を押さえた値で、埋蔵量の置き換えが続けば上がる。今の値段は戦争の高値の一部を先取りしており、ウィローと LNG の積み上げを入れても、確認埋蔵量が 8.8 年分という寿命が倍率を押さえる、というのがバリュー投資の観点での見立てである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10 年後もこの事業は存在するか、と聞かれれば、存在する(石油・ガスの需要は 2036 年までなくならない)。ただし「今より強いか」には、在庫の補充を買収に頼る点で確信が持てない。堀は広いとはいえず、価格を決められる産業でもない。
オーナー利益(株主のものになる利益)は、営業 CF の約半分が維持の設備投資に消えるため、純利益より小さく、還元性向は 6〜7 割が妥当と見る。2022 年の純利益 186 億ドルは WTI 95 ドルの年のもので、ならした利益は 2025 年の 80 億ドルと 2022 年の間、中立の価格で 2028 年に約 100 億ドルである。
2026 年の高騰を含む今の時価総額 1,778 億ドルは、2025 年の純利益の 22 倍で、中立の 2028 年の利益に対しては 18 倍にあたる(10 年後の中立の倍率は 5.3 倍)。資本コスト 9.5% は価格受容者と循環の分を 1.5% 乗せた水準で、筋書き側でも価格を動かして悲観を厚くした。結果として確率加重の価値は今の値段とほぼ同じで、安全域は薄い。わかりやすい事業だが、価格が外から決まるので、確信度は中程度である。
何で稼ぐ会社か
売上は、原油・天然ガス・NGL・ビチューメン・LNG の販売で、利益の 7〜9 割は外から決まる商品価格で動く。このメモでは生産を 3 つに分けて数量(千 boe/日)× 実現価格(ドル/boe)で置いた。
米国本土(Lower 48、約 152 万 boe/日)が最大で、2026 年 4〜6 月期は 148 万 boe/日、内訳はデラウェア 72・ミッドランド 20・イーグルフォード 36・バッケン 19 万 boe/日。原油は約 45%、ガスと NGL が残りで、実現価格は WTI より低い。次に、アラスカ(アルパイン・クパルク)・カナダ(Surmont のオイルサンド、TotalEnergies との共同)・ノルウェー(エコフィスク)・リビア・マレーシアなど、ブレント連動の油が約 56 万 boe/日あり、1 boe あたりの利益が最も厚い。最後に、LNG とアジア太平洋(オーストラリアの APLNG、カタールの North Field East・South、マレーシア)が約 30 万 boe/日で、長期契約が価格を支える。
2024 年末にマラソン・オイルを 225 億ドルで買収して在庫と生産を増やした。2026 年の設備投資は 120〜125 億ドル、生産は 229.5〜232.5 万 boe/日の見通し(2 月は 233〜236 万から、カタールと Surmont の royalty で引き下げ)。シェールの井戸は初年度に 6〜7 割落ちるため、生産を保つだけでも営業 CF の半分前後の投資が要る。米国のシェール、LNG、アラスカの大型案件、イラクのキルクーク(合弁 42% の取得合意)と、投資の対象は広がっている。
優良さと弱いところ
堀は「規模」と「在庫の安さ」と「財務」である。確認埋蔵量は 76 億 boe、2025 年の埋蔵量置換率は 80% で、在庫は買収と探鉱で足し続けないと減る。この点は EOG(自力で在庫を増やすのが得意で、無借金に近い)に劣り、ダイヤモンドバック(パーミアン専業で低コスト)と並ぶか少し上の規模である。純負債は 174 億ドル(時価総額比 9%)、自己資本比率 53% と財務は保守的で、リーマン・コロナ・2015〜16 年の谷でも配当を維持してきた。
資本の戻しは営業 CF の約 45% を方針としており、2025 年は配当 40 億ドルと自社株買い 50 億ドルである。ただし、価格を決められない事業で、ROE は 2022 年の 39% から 2025 年の 12% まで大きく動く。優良さは価格ではなく「谷でも耐え、買収で在庫を足す力」にある。
弱い所は 3 つ。カタール・リビア・キルクーク・シリアなど政治リスクのある地域が増えていること、アラスカの許認可(ウィローは環境訴訟の対象になりやすい)、シェール在庫が 2030 年代に薄くなり得ること。ガバナンスは、買収を繰り返す戦略(2019 年のバーリントン・リソーシズの前例の後、2021 年のコンチョ、2024 年のマラソン)が価値を上げたかどうかを見る必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
石油・ガスの探鉱・生産は、価格を決められない循環産業である。2026 年は中東の戦争(ホルムズ海峡の封鎖を伴う)で Brent が年平均 96 ドル、9 月は月平均 114 ドルまで上がった。EIA は 2027 年に 84 ドル、2028 年に 81 ドルまで戻ると見る。業界ノートの中立は、2029 年に WTI 76 ドル、2036 年に 97 ドル(今のドル価値で約 72 ドル。新規のシェール井戸の採算 63〜70 ドルに余裕を足した水準)で、これを全社共通で使う。
需要は、米国の自動車の電動化で 10 年のガソリン需要が微減する一方、石油化学・航空・新興国が支える。供給は、OPEC+ が戦争で湾岸が止まる間は価格を決められないが、収束後は余剰能力で価格を抑える側に戻る。米国のシェールは設備投資の規律が強まり、非上場の事業者の設備投資は 2026 年に 8% 減る(二次情報)。
競合は、同じ領域のオキシデンタル・EOG・ダイヤモンドバック・デボン(コテラと合併)・アパッチと、統合石油のエクソンモービル・シェブロン(ヘス取得)。コノコの特徴は、米国本土の低コスト在庫が 1 割台に厚いのに加え、LNG(カタール・オーストラリア・米国のポート・アーサーなど)に入り込んでいる点で、天然ガスの需要(AI の電力・LNG 輸出)を取れるのは強みである。ただし LNG 契約は、価格が低い時は利益を押し下げる。10 年の価格は物価並みに上がる(中立の WTI は 2025 年比で 1.5 倍)が、費用も 1.41 倍になるため、利益率は物価で勝手に下がらず、わずかに上がる。
資本政策と M&A
資本配分は、営業 CF の約 45% を配当と自社株買いで還元し、残りを設備投資と借金返済に回す。2026 年 4〜6 月期は自社株買い 30 億ドルと配当 21 億ドル、設備投資 30 億ドルで、価格が高い年は株の買い戻しが増える。バリュー投資の観点では、高値の年に自社株を買うのは割高な価格で買う側に働き、価値を壊しうる点に注意が要る。
M&A の歴史が大きい。2019 年にバーリントン、2021 年にコンチョ・リソーシズ(株数 +23%)、2024 年にマラソン・オイル(225 億ドル、株数 +6% が 2025 年の実績に出た)。マラソンの相乗効果は当初の想定より上積みされ、非中核資産の売却も進めた。今後はウィロー(2029 年)と LNG への投資が重く、大型の買収は一服するが、シェール在庫の補充として中型の買収は続く可能性がある。他社が合併する時の対抗(デボン・コテラの統合など)も選択肢になる。
借金は純負債 174 億ドルで、借り換えで利払いが年に 2〜3 億ドル増える(推定)。株式報酬は小さく、還元の差し引きは 10 年で約 60 億ドル(推定)とした。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 30.1 億ドル(10-Q・2026 年 1〜6 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2024 年のマラソン買収で米国本土の在庫は 20 年超になり、WTI 40 ドル前後でも採算が取れる資源が厚い。2026 年から毎年約 10 億ドルずつ FCF が増え、2029 年にウィローの初油で約 40 億ドルが加わり、合計約 70 億ドルの増加が会社の目標である。ウィローは 50% が完成済みで、ピークは約 18 万 boe/日、アラスカの減退を補って生産を 2030 年代に押し上げる。
LNG の引取は合計 12 MTPA まで増え、AI の電力需要と米国の LNG 輸出の拡大(2026 年 17 Bcf/日から 2027 年 18.6 Bcf/日)の恩恵を受ける。ホルムズの封鎖が長引く、あるいは収束しても湾岸の設備の復旧に数年かかるなら、価格は 2027〜28 年も高止まりし、在庫は積み直されにくい。
営業 CF の約 45% を還元する方針で、株数は買収後も減り続ける。財務は純負債が時価総額の 9% と軽く、高値の年にも買収に使える余力がある。10 年後に実質 WTI 90 ドル(名目 123 ドル)が続くなら、純利益は 2025 年の 3 倍超になる。これが強気の見方で、楽観の筋書きの下敷きである。
慎重な見方
今の利益は戦争の高値で押し上げられた「山」の利益である。2025 年は WTI 65 ドルで純利益 80 億ドルだったが、収束すれば Brent は 2027 年 84 ドル、2028 年 81 ドル(EIA)へ戻り、OPEC+ の余剰能力が価格を抑える。2008 年・2014 年・2020 年に Brent は 7 割以上下落した。リーマンでは株価が 59% 下げ、2015〜16 年の営業利益率は -18%、2020 年は -9.8%だった。
生産は 2026 年 4〜6 月期に前年より 4% 減り、カタールの紛争、Surmont の royalty、シェール井戸の減退と、数量の押し下げ要因が積み上がる。ウィローは 2029 年まで利益を生まず、環境訴訟・費用超過のリスクがあり、投資が先行する。リビア・イラク・シリアの政治リスクも新しく足されている。
電動化と脱炭素で、10 年で米国のガソリン需要は微減し、シェール在庫は 2030 年代に薄くなる。買収で足す在庫は高値の年に買うほど割高になり、自社株買いも高値で行うと価値を壊す。時価総額は 2025 年の純利益の 23 倍で、成熟した石油会社の倍率(過去の期末 PER は中央値 12 倍)に対して高い。これが慎重な見方である。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は在庫・ウィロー・LNG の足し算で説得力があるが、10 年の価格を中立の実質 72 ドルで置くと、利益の増え方は物価並みに近い。慎重な見方は価格の循環と倍率で強い。確率は楽観 8%・やや楽観 20%・中立 36%・やや悲観 22%・悲観 14%(XOM・CVX と揃えた)と、悲観側を厚くした。慎重な見方の「成熟した石油会社の倍率は 12 倍」は市場の値付けで、決まりでは採らない。倍率は寿命 8.8 年の年金で出す。寿命の年金で測ると、確率加重は今の時価総額を 5 割ほど下回り、総合は割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 55.44 ドル673 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 72.82 ドル884 億ドル)。 今の値に割り戻すと 68.63 ドル833 億ドル、今との差 −52.9%、 期待の年率 −1.3%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 120.60 ドル1,463 億ドル | 134.32 ドル1,630 億ドル | +75.0% | +5.8% | 20.39 ドル247 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 86.97 ドル1,055 億ドル | 101.52 ドル1,232 億ドル | +29.4% | +2.6% | 37.70 ドル457 億ドル |
| 中立 | 36% | 60.51 ドル734 億ドル | 76.96 ドル934 億ドル | −5.6% | −0.6% | 49.49 ドル601 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 24.66 ドル299 億ドル | 47.13 ドル572 億ドル | −50.7% | −6.8% | 15.79 ドル192 億ドル |
| 悲観 | 14% | 8.51 ドル103 億ドル | 26.37 ドル320 億ドル | −76.0% | −13.3% | 4.88 ドル59 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 55.44 ドル673 億ドル | 72.82 ドル884 億ドル | −11.9% | −1.3% | 128.26 ドル1,556 億ドル |
今の株価時価総額 145.63 ドル1,767 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:実質 WTI 90 ドルが続き、ウィロー・LNG・在庫の補充で生産が年 +2.5% 伸びる 利益 269 億ドル · PER 5.4 倍 · 株価時価総額 120.60 ドル1,463 億ドル
2035 年、実質 WTI 90 ドル(名目 123 ドル)が続き、Brent は 127 ドル(2025 年比 1.84 倍)。生産は年 +2.5% で伸び、Lower 48 が 195 万 boe/日、アラスカはウィローで 74 万 boe/日、LNG はカタールの増強で 40 万 boe/日。営業利益率は 33%、純利益は 2025 年の 3.4 倍の 269 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER で 5.44 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。米国の生産が増える局面で費用も上がるが、価格の上昇が上回る。高価格でも、需要が電動化で減る側のリスクは残る。
- 米国本土(Lower 48):数量 1,950(生産量(千 boe/日))× 価格 74(実現価格(ドル/boe。WTI・Waha・Henry Hub を生産の割合で混ぜた値))→ 売上 525 億ドル・営業利益 220 億ドル。生産量・実現価格・利益率
- アラスカ・カナダ・欧州・リビア等:数量 740(生産量(千 boe/日))× 価格 114(実現価格(ドル/boe。Brent 連動、royalty・生産分与後))→ 売上 308 億ドル・営業利益 151 億ドル。生産量・実現価格・利益率
- LNG・アジア太平洋:数量 400(生産量(千 boe/日))× 価格 70(実現価格(ドル/boe。LNG は油価・Henry Hub 連動の契約))→ 売上 103 億ドル・営業利益 42 億ドル。生産量・実現価格・利益率
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)。k = 8.0% + quality +1.5% = 9.5%。事業の帳簿 ROE 30.0% から RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)= 19.8%(moat normal)、g 1.0%(市場の伸びと価格から。k − g ≥ 3.5%)。式の値 11.2 倍。先細りの資源なので寿命 8.8 年の年金(g 1%)が頭を押さえ、6.0 倍。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) を乗せた上限 6.0 倍に対し、低コストの在庫とウィロー・LNG の積み上げが最も厚い筋書きだが価格受容者なので、上限の 9.0 割(5.44 倍)に置いた。
確率:実質 90 ドル(業界ノートの楽観)が 10 年続き、生産も伸びる必要がある。1 割弱。
やや楽観 20% やや楽観:実質 80 ドル前後で、ウィローと LNG が生産を押し上げる 利益 194 億ドル · PER 5.4 倍 · 株価時価総額 86.97 ドル1,055 億ドル
2035 年、実質 80 ドル前後(名目 112 ドル)。ウィロー(約 18 万 boe/日)と LNG が加わり、生産は年 +1.8%(Lower 48 174 万・アラスカ他 71 万・LNG 38 万 boe/日)。営業利益率は 31%、純利益は 194 億ドルで 2025 年の 2.4 倍。倍率は利益ベースの正当化 PER で 5.44 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。シェールの在庫は 2030 年代に薄くなるが、買収と技術(井戸の間隔・長い水平井)で補う。電動化による需要減は 2035 年にはまだ小さく、価格を押し下げるほどではない。
- 米国本土(Lower 48):数量 1,740(生産量(千 boe/日))× 価格 66(実現価格(ドル/boe。WTI・Waha・Henry Hub を生産の割合で混ぜた値))→ 売上 422 億ドル・営業利益 156 億ドル。生産量・実現価格・利益率
- アラスカ・カナダ・欧州・リビア等:数量 710(生産量(千 boe/日))× 価格 100(実現価格(ドル/boe。Brent 連動、royalty・生産分与後))→ 売上 260 億ドル・営業利益 114 億ドル。生産量・実現価格・利益率
- LNG・アジア太平洋:数量 380(生産量(千 boe/日))× 価格 66(実現価格(ドル/boe。LNG は油価・Henry Hub 連動の契約))→ 売上 92 億ドル・営業利益 35 億ドル。生産量・実現価格・利益率
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)。k = 8.0% + quality +1.5% = 9.5%。事業の帳簿 ROE 22.8% から RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)= 16.1%(moat normal)、g 1.0%(市場の伸びと価格から。k − g ≥ 3.5%)。式の値 11.0 倍。先細りの資源なので寿命 8.8 年の年金(g 1%)が頭を押さえ、6.0 倍。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) を乗せた上限 6.0 倍に対し、同じく価格受容者なので、上限の 9.0 割(5.44 倍)に置いた。
確率:実質 80 ドル前後で、ウィローと LNG が成果を出す姿。強気の見方に近いが、電動化の天井を考え 2 割。
中立 36% 中立:実質 WTI 72 ドルで、ウィローが減退を埋め、生産は年 +1% 利益 138 億ドル · PER 5.3 倍 · 株価時価総額 60.51 ドル734 億ドル
2035 年、実質 WTI 72 ドル(名目 97 ドル)。Lower 48 は在庫の質の低下で年 +0.5% の伸びにとどまり、ウィローが 2029〜30 年に立ち上がってアラスカの減退を埋め、LNG はカタールで増える。生産は 263 万 boe/日(年 +1%)、価格は 1.41〜1.45 倍で、売上(セグメント)は 649 億ドル、営業利益率は 31%。営業利益は 200 億ドル、純利益は 138 億ドル(2025 年の 1.7 倍)。倍率は利益ベースの正当化 PER で 5.32 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。
- 米国本土(Lower 48):数量 1,590(生産量(千 boe/日))× 価格 59(実現価格(ドル/boe。WTI・Waha・Henry Hub を生産の割合で混ぜた値))→ 売上 345 億ドル・営業利益 109 億ドル。生産量・実現価格・利益率
- アラスカ・カナダ・欧州・リビア等:数量 680(生産量(千 boe/日))× 価格 90(実現価格(ドル/boe。Brent 連動、royalty・生産分与後))→ 売上 223 億ドル・営業利益 87 億ドル。生産量・実現価格・利益率
- LNG・アジア太平洋:数量 360(生産量(千 boe/日))× 価格 62(実現価格(ドル/boe。LNG は油価・Henry Hub 連動の契約))→ 売上 81 億ドル・営業利益 29 億ドル。生産量・実現価格・利益率
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)。k = 8.0% + quality +1.5% = 9.5%。事業の帳簿 ROE 16.8% から RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)= 13.2%(moat normal)、g 1.0%(市場の伸びと価格から。k − g ≥ 3.5%)。式の値 10.9 倍。先細りの資源なので寿命 8.8 年の年金(g 1%)が頭を押さえ、6.0 倍。10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) を乗せた上限 6.0 倍に対し、価格が外から決まる事業なので、上限の 8.8 割(5.32 倍)に置いた。
確率:業界ノートの中立(2036 年 WTI 97 ドル・実質 72)に、会社固有のウィロー・LNG を足した。議論の落としどころ。
やや悲観 22% やや悲観:実質 60 ドルへ下がり、在庫の薄れと費用高で利益率が 2 割に落ちる 利益 63 億ドル · PER 4.8 倍 · 株価時価総額 24.66 ドル299 億ドル
2035 年、実質 WTI 60 ドル(名目 85 ドル前後)。新規の井戸の採算(63〜70 ドル)をわずかに下回り、シェールは設備投資を絞って生産は 6 年目から減り、Lower 48 は 145 万 boe/日に落ちる。ウィローは立ち上がるが、アラスカ全体では減退を補う程度。費用は 1.41 倍に上がるので、営業利益率は 20% 台前半に下がり、純利益は 63 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER で 4.75 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。在庫の薄れは利益の落ち込みと低い g に入れ、倍率の外では割り引かない。配当は守るが、買収で在庫を足せなくなり、自社株買いは中立より小さくなる。
- 米国本土(Lower 48):数量 1,450(生産量(千 boe/日))× 価格 50(実現価格(ドル/boe。WTI・Waha・Henry Hub を生産の割合で混ぜた値))→ 売上 267 億ドル・営業利益 53 億ドル。生産量・実現価格・利益率
- アラスカ・カナダ・欧州・リビア等:数量 620(生産量(千 boe/日))× 価格 76(実現価格(ドル/boe。Brent 連動、royalty・生産分与後))→ 売上 173 億ドル・営業利益 50 億ドル。生産量・実現価格・利益率
- LNG・アジア太平洋:数量 340(生産量(千 boe/日))× 価格 53(実現価格(ドル/boe。LNG は油価・Henry Hub 連動の契約))→ 売上 66 億ドル・営業利益 16 億ドル。生産量・実現価格・利益率
倍率:k = 8.0% + quality +1.5% = 9.5%。この筋書きの事業の帳簿 ROE 8.1% は k 以下なので、ためた利益は額面を下回る価値で PER は 1÷k = 10.5 倍が上限。価格が実質で下がり在庫の質が落ちる構造なので質を落として上限の 8.2 割(4.75 倍)。
確率:実質 60 ドルは、新規採算の線の下。過去 10 年でも 2015〜2020 年の大半がこの水準で、慎重な見方は強い。
悲観 14% 悲観:構造的に負け、実質 50 ドルで投資が半減し、優良な生産会社ではなくなる 利益 21 億ドル · PER 4.9 倍 · 株価時価総額 8.51 ドル103 億ドル
2035 年、電動化・需要の天井と OPEC+ の増産で、Brent は名目 70 ドル(実質 50 ドル)止まり。シェールは設備投資を半減し、Lower 48 の生産は年 -2.7% で 117 万 boe/日。営業利益率は 7%、純利益は 21 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER で 4.92 倍(k・g・RONIC は倍率の理由に書いた)。もう優良な生産会社ではなく、埋蔵量が尽きる前に利益が細る評価(PBR 0.2 倍)になる。配当の削減、ウィローの費用超過、買収の失敗(高値で買った在庫の評価損)が重なる。10 年の構造的な負けを想定した筋書き。
- 米国本土(Lower 48):数量 1,170(生産量(千 boe/日))× 価格 41(実現価格(ドル/boe。WTI・Waha・Henry Hub を生産の割合で混ぜた値))→ 売上 175 億ドル・営業利益 18 億ドル。生産量・実現価格・利益率
- アラスカ・カナダ・欧州・リビア等:数量 520(生産量(千 boe/日))× 価格 62(実現価格(ドル/boe。Brent 連動、royalty・生産分与後))→ 売上 118 億ドル・営業利益 26 億ドル。生産量・実現価格・利益率
- LNG・アジア太平洋:数量 300(生産量(千 boe/日))× 価格 44(実現価格(ドル/boe。LNG は油価・Henry Hub 連動の契約))→ 売上 48 億ドル・営業利益 10 億ドル。生産量・実現価格・利益率
倍率:k = 8.0% + quality +1.5% = 9.5%。この筋書きの事業の帳簿 ROE 3.5% は k 以下なので、ためた利益は額面を下回る価値で PER は 1÷k = 10.5 倍が上限。電動化と需要の天井で構造的に負けた筋書きなので上限の 8.5 割(4.92 倍)。
確率:構造的な負け(需要の天井・OPEC+・買収の失敗)は 10 年で 1 割強。リーマン級の不況は別の話で、これは 10 年の構造の悲観。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
米国本土(Lower 48)
デラウェア・ミッドランド・イーグルフォード・バッケンのシェール油・ガス・NGL。生産のおよそ 3 分の 2。
| 数量生産量(千 boe/日) | 価格実現価格(ドル/boe。WTI・Waha・Henry Hub を生産の割合で混ぜた値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,520 | 41 | 227 | 68 |
| 10 年後 中立 | 1,590 | 59 | 345 | 109 |
取り方:2026 年 4〜6 月期の 148 万 boe/日と 2025 年の傾向から約 152 万 boe/日と置いた。実現価格は WTI 65 ドルの年で ガス・NGL が入り約 41 ドル/boe(推定)、営業利益率は約 30%(推定)。rev_factor は 365 日 ÷ 10 万で、売上=数量×価格×rev_factor(億ドル)。
アラスカ・カナダ・欧州・リビア等
アラスカ(アルパイン・クパルク・2029 年からウィロー)、Surmont のオイルサンド、ノルウェー、リビア、マレーシアなどのブレント連動の油。
| 数量生産量(千 boe/日) | 価格実現価格(ドル/boe。Brent 連動、royalty・生産分与後) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 560 | 62 | 127 | 48 |
| 10 年後 中立 | 680 | 90 | 223 | 87 |
取り方:全体 約 238 万 boe/日から Lower 48 と LNG を引いた約 56 万 boe/日(推定)。実現価格は Brent 69 ドルの年で約 62 ドル/boe、営業利益率は 38%(推定)。Surmont は油価が高いと royalty が上がるため、実現価格は Brent の動きより鈍い。
LNG・アジア太平洋
オーストラリアの APLNG(47.5%)、カタール LNG(North Field East・South)、マレーシア。長期契約で売る。
| 数量生産量(千 boe/日) | 価格実現価格(ドル/boe。LNG は油価・Henry Hub 連動の契約) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 300 | 44 | 48 | 17 |
| 10 年後 中立 | 360 | 62 | 81 | 29 |
取り方:約 30 万 boe/日(推定)、実現価格 約 44 ドル/boe、営業利益率 約 36%(推定)。カタールは 2026 年の戦争で一部停止(会社は 2 Q の見通しから除外)。
リスクと懸念
原油と天然ガスの価格(循環)
利益の 7〜9 割は外から決まる価格で動く。WTI が 1 ドル動くと 6 社合計の純利益が約 6 億ドル動く(業界ノートの推定)。2026 年の戦争の高値が収束すると、2027 年は 84 ドル、2028 年は 81 ドルへ戻る(EIA)。リーマンとコロナでは Brent が 7 割以上下がり、営業利益率が赤字になった。
中東・政治リスクの増加
カタールの LNG は 2026 年の紛争で一部が止まり、会社は 2 Q の見通しから除いた。リビア・イラク北部のキルクーク(合弁 42% の取得合意)・シリア再参入と、不安定な地域への投資が増えている。国有化・契約の変更・戦争の再燃で、数量が減る。
ウィロー(アラスカ)の許認可と費用
2029 年初油、約 18 万 boe/日のピーク、50% が完成済み。ただし環境訴訟・天候・輸送の遅れ・費用超過で時期と採算が変わりうる。FCF の増加目標(2029 年に約 40 億ドル)の約半分を占めるため、遅れは目標の遅れに直結する。
シェール在庫の質の低下
シェールの井戸は初年度に 6〜7 割落ちる。マラソン買収で在庫は 20 年超とされるが、良い井戸から使い、2030 年代に質が下がる。買収で足す在庫は高値の年に買うほど割高で、高値で買うと価値を壊す。
高値の年の自社株買い
価格が高い年は営業 CF が増え、買い戻しも増える(2026 年 4〜6 月期は 30 億ドル)。バリュー投資の観点では、高値の利益で割高な株を買うのは価値を壊す。株価が割高な時に買い続けるかどうかが資本配分の質を決める。
電動化と需要の天井
米国のガソリン需要は 10 年で微減し、世界の石油需要も 2030 年代に頭打ちになりうる。需要が減る側では価格が下がり、後に投資した LNG・ウィローの採算が悪化する。OPEC+ は収束後に余剰能力で価格を抑える側へ戻る。
関税と費用の上昇
鋼材・サービスの費用は名目で年 +2.5〜3.5% 上がる。関税で鋼材高になると、新規井戸の採算の線(WTI 63〜70 ドル)が上がり、価格が下がった時の利益率の落ち込みが大きくなる。サービス会社の値上げと現場の人手不足も、費用の上昇を価格より速くする方向に働く。
今後の分かれ目
- WTI の 2027 年の水準が 75 ドルを上回ったまま、先物の形が後ろ下がりにならない
- 戦争の高値が構造的に残る信号で、楽観・やや楽観の確率を上げる。中立の WTI(名目 97 ドル)を上方に見直す。
- 湾岸の生産が 2027 年に回復し、OPEC+ が増産する
- Brent が 2025 年並みの 69 ドル前後に戻る信号で、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- ウィローの初油が 2029 年から 1 年以上遅れる、または費用が 3 割以上増える
- FCF の増加目標(約 40 億ドル)の達成が遅れ、アラスカの減退を埋められない。中立の生産を下方に直し、倍率を下げる。
- コノコが高値の年に大型の買収(在庫の補充)を行う
- 高値で在庫を買えば将来の ROE が下がる。買収の対象と価格によって、中立から悲観の確率を上げる。
- 米国のガソリン需要が想定より速く減る(電動車の販売が 3 割を超える)
- 石油需要の天井が早まり、10 年のやや悲観・悲観の確率を上げる。LNG・ガスが需要を支えるため、減少は油より緩やか。
- カタール・リビアの生産が長期に止まる
- 生産と利益が減る一方、価格は上がりやすい。数量と価格の相殺を見て、LNG・アジア太平洋の筋書きを見直す。
見ておくもの
- WTI・Brent の 2027 年の水準と先物の形(後ろ下がりの深さ)
- ウィローの完成率(50%)・初油の時期と費用
- カタール(North Field East・South)の生産の復旧
- Lower 48 の 1 井戸あたり生産と設備投資(2026 年 120〜125 億ドル)
- 還元(営業 CF の約 45%)と自社株買いの額
- Surmont の royalty と生産、アラスカの減退率
- LNG の引取契約(12 MTPA)の価格方式と新規の供給
倍率と資本コストの決め方
倍率は式だけで置いた。先細りの資源なので、PER は式((1 − g/RONIC)/(k − g)、g は 1%)と、埋蔵量の寿命 8.8 年の年金の小さい方で頭を押さえる。k は 9.5%(8.0% + quality 1.5%)で、年金が効く。中立は上限(×(1+g))の 88%、悲観側は 8 割台。価格受容者なので上限いっぱいには置かない。今の PER・過去の倍率・同業の倍率は根拠にしていない。結果の差と割高の 5 段階はそのまま受け入れた。利益(数量 × 価格)と確率は変えていない。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality 1.5% = 9.5%(決まり v2。β は使わない)。価格の振れと価格受容者は cycle・pricing で見た。中東の政治・ウィローの許認可・在庫の補充は k に足さず、筋書き(価格と数量)と悲観の確率で表した。