結論
丸八倉庫は、東京と埼玉・千葉に倉庫を持ち、保管と運送、文書の保管、それに賃貸マンションとオフィスで稼ぐ小さな倉庫会社だ。筆者の結論は「割高」で、いちばんの理由は、130 億円近い自己資本に対して年の純利益が 3〜5 億円しかないことだ。
株価は帳簿の半分ほどで、一見すると安い。倉庫と土地は首都圏の良い場所にあり、建てた時の値段で帳簿に載っている。だが少数株主がその値打ちを受け取れるのは、会社が売るか清算する時だけだ。そうでない限り、価値は毎年の稼ぎで決まる。
稼ぎは底堅い。倉庫は満杯に近く、料金の見直しも進んでいる。新しい倉庫の効果で、2026 年の利益は 3 割増える見込みだ。ただ新しい倉庫と賃貸マンションは借入で買っており、金利が上がれば利払いが稼ぎを削る。筆者は、自己資本に対する稼ぎが 10 年で大きく上がるとは見ていない。帳簿の安さは、資本の効率の低さを映している。
値打ちが動くのは、資産を売って配る時か、会社ごと買われる時だ。どちらも今は兆しが無い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い場所の倉庫を持つが、その資産を株主のために働かせていない」と筆者は見る。
オーナーの目で見ると、倉庫と賃貸の家賃は 10 年先も確かに入る。事業が消える心配は小さい。ここは評価できる。
だが稼ぎの大きさが問題だ。130 億円近い自己資本で、純利益は年 3〜5 億円にとどまる。新しい倉庫と賃貸マンションを借入で買い足しても、稼ぎは資産ほど増えない。ためた利益は、額面未満の価値しか生まない構造だ。
株価は帳簿の半分だが、それだけでは安全域にならない。少数株主は土地を売ることを決められず、受け取れるのは配当と自社株買いだけだからだ。稼ぎから測ると、今の値段でも高い。資産の値打ちが株主に届く道は、会社の方針の変化か買収で、それは筋書きの外にある。持ち続けたい事業ではあるが、払う値段に見合う稼ぎではない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの 9 割近くは物流事業だ。倉庫に荷物を預かって保管料を取り、出し入れの荷役料と、トラックの運送料を受け取る。倉庫は東京と埼玉・千葉にあり、2024 年に埼玉県所沢市で新しい倉庫を動かした。
文書保管は物流事業の一部だ。企業の書類の箱を長く預かり、必要な時に取り出して届ける。千葉県八街市に新しい文書保管センターを作った。箱は何年も預けたままになることが多く、売上は安定している。
不動産事業は、賃貸マンションと賃貸オフィスビルの家賃だ。売上は 7 億円弱だが、利益は 3 億円を超え、全社の利益の 3 分の 1 を稼ぐ。2025 年に東京 23 区で賃貸マンションを 2 棟買い足した。
利益の形は単純だ。倉庫と建物を持ち、その上で回る保管料と家賃が稼ぎになる。費用の大きな部分は建物の減価償却と人手で、償却は年 5.8 億円ある。2025/11 期の営業利益は 5 億円で、本社の費用が 5 億円強かかっている。
2026/11 期は新しい倉庫と賃貸マンションが通年で効き、取得の費用も無くなるので、会社は営業利益 6.5 億円を見込む。過去の最高は 2020/11 期の 8 億円弱だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、場所にある。首都圏の倉庫用地は高く、建築費も上がったので、新しく倉庫を建てて同じ料金で貸すのは難しい。古くからの倉庫を持つ会社は、その分だけ料金を上げやすい。
文書保管も客が離れにくい。一度預けた書類の箱を別の会社に移すには手間と費用がかかる。ただ書類の電子化で、新しく預かる箱は伸びにくい。
弱いのは資本の効率だ。過去 10 年の ROE の中央値は 4.7% で、資本コストを大きく下回る。倉庫と賃貸の建物を借入で増やしてきたが、稼ぎは資産の増え方ほどには増えていない。
財務は自己資本比率 63% と厚いが、借入は 55 億円ある。新しい倉庫と賃貸マンションを借入で買ったためで、金利が上がると利払いがじわじわ利益を削る。経営は手堅いが、資本を効率よく使う会社ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
首都圏の倉庫は、ネット通販と在庫を厚く持つ動きで需要が底堅い。一方で、大手の物流会社と不動産の会社が郊外に巨大な倉庫を次々に建て、荷主はそこへ荷物を集めている。中小の倉庫会社は、古くても都心に近い場所と、きめ細かな対応で残る形だ。
建築費の上昇は、倉庫会社にとって両刃の剣だ。新しく建てる会社の費用が上がるので、既にある倉庫は料金を上げやすい。だが自社の古い倉庫を建て替える時は、その高い建築費を自分で払う。減価償却は建てた時の値段のままなので、会計の利益は物価で見かけ上ふくらむが、更新の投資で現金は細る。
文書保管は、企業の書類の電子化で長い目では縮む市場だ。ただ法律で保存が決まった書類は残り、預ける期間も長いので、急には減らない。
人手の不足で、荷役と運送の人件費は上がり続ける。料金に転嫁できるかが利益率を決める。業界全体では、保管料はおおむね物価並みに上がり、量は首都圏の人口とともに横ばいに近いと筆者は見る。
金利の上昇も業界に効く。倉庫は借入で建てることが多く、借り換えのたびに利払いが増える。現金を厚く持つ会社と借入の多い会社で、10 年後の稼ぎに差がつく。
資本政策と M&A
配当は増配を続けており、今期も 1 割強の増配を予想する。性向はおおむね 3〜4 割で、2026 年 7 月には発行済の 3% ほどの自社株を買った。期末後に買った分は自己資本の起点から外し、10 年の還元には入れていない。10 年の還元は、配当と自社株買いを合わせて利益の半分とみる。
手元の現金は 7 億円ほどで、借入は 55 億円ある。新しい倉庫と賃貸マンションの取得に借入を使った。純負債は利益の 4.5 年分で、金利の上昇には弱い。
大きな買収はしていないが、賃貸の建物を買い足している。倉庫と賃貸の両方で資産を積む形だ。
帳簿の半値の株価と、首都圏の土地という組み合わせは、ファンドや同業から買われやすい。kabufu の参考の確率でも、10 年で買収される見込みは 2 割ほどある。ただし本質価値の計算には入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
帳簿の半値で、首都圏の倉庫と土地が手に入る。倉庫と土地は昔の値段で帳簿に載っており、今の時価はかなり高いはずだ。実際の資産の値打ちは株価の 2 倍を超えるかもしれない。
稼ぎも上向いている。所沢の新しい倉庫と八街の文書保管センターが順調に動き、料金の見直しも浸透してきた。会社は 2026 年の営業利益を 3 割増と見込み、配当も増やす。既にある倉庫の減価償却は増えないので、料金が物価で上がれば利益は自然に厚くなる。
建築費の上昇は、古い倉庫を持つ会社に有利だ。新しく建てる会社の費用が上がるほど、既存の倉庫の料金は上げやすい。
資本政策も動き出した。2026 年に自社株を買い、配当も増やした。帳簿の半値という状態は、買収の的にもなる。資産の値打ちが外から見直される日は来る。
金利の上昇も、借入の利払いより保管料と家賃の上がり方の方が大きければ吸収できる。倉庫と賃貸は物価に強い資産で、10 年の物価 3% の世界ではむしろ有利だ。
慎重な見方
資産の値打ちと株主の取り分は別だ。この会社は 130 億円近い自己資本で、年 3〜5 億円しか稼がない。過去 10 年の ROE の中央値は 4.7% で、一度も資本コストに届いていない。
成長も借入頼みだ。新しい倉庫と賃貸マンションは借入で買い、借入は 55 億円に膨らんだ。金利は 3.5% に上がっていき、利払いは年 2 億円近くになる。料金を上げても、利払いと人件費で消える。
建築費の上昇は、自分にも跳ね返る。古い倉庫の修繕と建て替えは避けられず、直近期も大規模な修繕の費用で利益が落ちた。会計の利益は償却が増えない分だけ見かけ上ふくらむが、現金は更新の投資で細る。
文書保管は電子化で長い目では縮む。荷主は大手の巨大な倉庫に荷物を集める。帳簿の安さは、資本の効率の低さを映しているだけだ。
資産を売って配る方針は示されていない。少数株主が受け取れるのは、年に数億円の配当と、ときどきの自社株買いだけだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強いと筆者は判断した。資産の厚さは事実だが、少数株主が受け取れるのは稼ぎと還元だけで、その稼ぎは自己資本の 3% 前後だ。借入と金利の上昇が重なり、稼ぎが大きく上がる道は細い。確率は中立を真ん中に、楽観側(32%)と悲観側(33%)をほぼ同じにした。資産を売って配る方針が出たら、見方を改める。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した株価時価総額 933 円53 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 275 円16 億円)。 今の値に割り戻すと 644 円37 億円、今との差 −38.8%、 期待の年率 +1.4%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 1,631 円93 億円 | 442 円25 億円 | +96.9% | +7.0% | 249 円14 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,281 円73 億円 | 376 円22 億円 | +57.4% | +4.6% | 331 円19 億円 |
| 中立 | 35% | 909 円52 億円 | 306 円18 億円 | +15.4% | +1.4% | 425 円24 億円 |
| やや悲観 | 20% | 528 円30 億円 | 140 円8 億円 | −36.6% | −4.5% | 134 円8 億円 |
| 悲観 | 13% | 440 円25 億円 | 87 円5 億円 | −49.9% | −6.7% | 69 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 933 円53 億円 | 275 円16 億円 | +14.7% | +1.4% | 1,208 円69 億円 |
今の株価時価総額 1,053 円60 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 12% 八街に倉庫を足し、料金も上げ切る 利益 7 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,631 円93 億円
所沢の新しい倉庫と八街の文書保管センターが埋まり、会社は八街に次の倉庫を建てる。保管の面積は 10 年で 15% 増える。首都圏の倉庫は建築費の上昇で新しく建てにくくなり、古くからの倉庫を持つ会社が値上げを通しやすくなる。保管料と荷役料は物価を少し上回って上がる。
既にある倉庫の減価償却は建てた時の値段のままなので、料金が上がるほど利益は厚くなる。新しい倉庫の償却は今の高い建築費で乗るが、年に 1 億円ほどの増え方にとどまる。賃貸マンションは 23 区の家賃の上昇に乗る。
営業利益は 12 億円近くになる。ただ借入の金利は 3.5% に上がり、利払いが利益の一部を削る。事業の稼ぐ力は自己資本の 5% 前後で、資本コストにはまだ届かない。
- 物流(倉庫・運送・文書保管):数量 138(保管の面積(千㎡・推定))× 価格 0.48(1 千㎡あたりの年の売上(億円))→ 売上 67 億円・営業利益 13 億円。保管 138 千㎡ × 1 千㎡あたり売上(今の 1.36 倍)、償却 5.2 億込みで 19%
- 不動産(賃貸):数量 26.3(賃貸の床(千㎡・推定))× 価格 0.36(1 千㎡あたりの年の賃料(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 5 億円。賃貸 26 千㎡ × 賃料(今の 1.34 倍)、償却 2.0 億込みで 54%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.6% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 93 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:八街の新しい倉庫の計画と料金の適正化は会社が掲げており、実行すれば利益は今の 2 倍になる。ただ借入を増やして建てる筋書きなので 12% にとどめた。
やや楽観 20% 新しい倉庫が埋まり、料金も物価並みに 利益 6 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,281 円73 億円
所沢の新しい倉庫と八街の文書保管センターが埋まり、保管の面積は 1 割増える。料金の適正化は浸透し、保管料はおおむね物価並みに上がる。文書保管は電子化で新しい箱の量は伸びないが、預かった箱は長く残るので、売上は崩れない。
賃貸マンションとオフィスは空室が少なく、家賃は物価に近く上がる。既にある建物の償却は増えないので、利益率は少しずつ厚くなる。更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、借入で賄う分の利払いが増える。
営業利益は 9 億円台で、過去の最高を少し上回る。それでも自己資本に対する稼ぎは 4% ほどにとどまる。
- 物流(倉庫・運送・文書保管):数量 132(保管の面積(千㎡・推定))× 価格 0.47(1 千㎡あたりの年の売上(億円))→ 売上 62 億円・営業利益 11 億円。保管 132 千㎡ × 単価(今の 1.33 倍)、償却 4.9 億込みで 17.3%
- 不動産(賃貸):数量 25.8(賃貸の床(千㎡・推定))× 価格 0.35(1 千㎡あたりの年の賃料(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 5 億円。賃貸 26 千㎡ × 賃料(今の 1.30 倍)、償却 1.95 億込みで 53%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.7% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 73 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:所沢と八街の稼働は既に順調で、2026 年の利益は会社の予想で 3 割増える。今の流れが続けば届く筋書きとして 2 割。
中立 35% 倉庫は満杯、稼ぎは低いまま 利益 4 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 909 円52 億円
倉庫はほぼ満杯で回り、保管の面積は所沢と八街の分だけ 5% 増える。保管料は料金の適正化で物価に近く上がるが、大手の物流会社の新しい倉庫と競うので、物価を少し下回る。文書保管は電子化で新しい箱が減るが、預かる期間が長いので急には縮まない。
費用は人手と電気代が物価で上がる。減価償却は既にある倉庫の分が増えず、更新の分だけ年 6.5 億円まで増える。物流の利益率は今とほぼ同じ 15% 台にとどまる。賃貸は家賃を物価に近く上げ、利益率は 5 割を保つ。
借入の金利は 3.5% に上がり、利払いが年 2 億円近くになる。純利益は 4 億円ほどで、自己資本の 3% に届かない。配当と自社株買いで利益の半分を戻す。
- 物流(倉庫・運送・文書保管):数量 126(保管の面積(千㎡・推定))× 価格 0.46(1 千㎡あたりの年の売上(億円))→ 売上 58 億円・営業利益 9 億円。保管 126 千㎡ × 単価(今の 1.30 倍)、償却 4.6 億込みで 15.5%
- 不動産(賃貸):数量 25.0(賃貸の床(千㎡・推定))× 価格 0.34(1 千㎡あたりの年の賃料(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 4 億円。賃貸 25 千㎡ × 賃料(今の 1.25 倍)、償却 1.9 億込みで 51%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.7% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 52 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:保管料は景気に強く、倉庫は長く使える。一方で自己資本に対する稼ぎは 10 年で一度も 8% に届いていない。今の形が続く筋書きを真ん中に 35% を置いた。
やや悲観 20% 荷主が離れ、修繕の費用が重なる 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 528 円30 億円
大口の荷主が大手の物流会社の大型の倉庫に荷物を集め、保管の面積の 1 割近くが空く。文書保管は電子化で新しい箱が入らず、古い箱の廃棄が進む。料金は空きを埋めるために物価ほどは上げられない。
古い倉庫は築年が進み、大規模な修繕の費用が毎年のように出る。建築費の上昇で更新の投資は膨らみ、借入が増えて利払いが重くなる。営業利益は 1 億円ほどに落ち、利払いを引くと純利益はほぼゼロになる。
賃貸の家賃が下支えになるが、本社の費用と利払いを埋めきれない。価値は今の自己資本の 4 分の 1 ほどで付く。土地の含み益は残るが、会社が持ち続ける限り株主には届かない。
- 物流(倉庫・運送・文書保管):数量 110(保管の面積(千㎡・推定))× 価格 0.43(1 千㎡あたりの年の売上(億円))→ 売上 48 億円・営業利益 4 億円。保管 110 千㎡ × 単価(今の 1.22 倍)、8.8%
- 不動産(賃貸):数量 24.3(賃貸の床(千㎡・推定))× 価格 0.31(1 千㎡あたりの年の賃料(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 4 億円。賃貸 24 千㎡ × 賃料(今の 1.15 倍)、46%
倍率:EV÷営業利益は 60 倍に跳ねるが、営業利益が 1 億円まで縮むためで、利益の倍率だけでは測れない。利益がほぼゼロなので、今の自己資本 126 億円に PBR 0.24 倍を掛けた。賃貸の利益 3.4 億円の税後を k で割った約 30 億円が残る稼ぐ力で、倉庫の部分は本社費と利払いで消えるとみた。ためた利益には掛けていない。
確率:直近期は保管料と運送料が減り、修繕の費用で利益が落ちた。荷主の集約と古い倉庫の修繕が重なる道は現実的なので 2 割。
悲観 13% 倉庫が古び、借入だけが残る 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 440 円25 億円
荷主の集約と文書の電子化が同時に進み、保管の面積は 2 割減る。古い倉庫は荷主が求める大型の設備に合わず、料金を下げて客をつなぎとめる。修繕と建て替えの費用は建築費の上昇で膨らみ、借入は 70 億円を超える。
金利は 3.5% に上がり、利払いが年 2.5 億円になる。賃貸の家賃も伸びず、全社で毎年小さな赤字が出る。配当は減り、自社株買いは止まる。
土地は都内と首都圏の良い場所にあるが、少数株主はそれを売ることを決められない。会社が持ち続ける限り、価値は今の自己資本の 2 割ほどまで落ちる。借入の返済が先に立ち、株主への還元は細る。
- 物流(倉庫・運送・文書保管):数量 96.0(保管の面積(千㎡・推定))× 価格 0.41(1 千㎡あたりの年の売上(億円))→ 売上 39 億円・営業利益 2 億円。保管 96 千㎡ × 単価(今の 1.15 倍)、4.3%
- 不動産(賃貸):数量 23.8(賃貸の床(千㎡・推定))× 価格 0.29(1 千㎡あたりの年の賃料(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。賃貸 24 千㎡ × 賃料(今の 1.10 倍)、43%
倍率:赤字なので今の自己資本 126 億円に PBR 0.2 倍を掛けた。賃貸の稼ぎの残りの値打ちで、借入の増えた分を引いた。清算の価値は少数株主に届かないので使っていない。
確率:首都圏の倉庫の需要は底堅く、倉庫そのものが空になる道は細い。借入の重さと修繕で赤字が続く筋書きとして 13% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
物流(倉庫・運送・文書保管)
首都圏の倉庫での保管・荷役、トラックの運送、企業の書類の箱の保管。
| 数量保管の面積(千㎡・推定) | 価格1 千㎡あたりの年の売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 120 | 0.36 | 43 | 7 |
| 10 年後 中立 | 126 | 0.46 | 58 | 9 |
取り方:売上 42.60 億・利益 6.98 億・償却 3.99 億(決算短信 2025/11)。保管の面積は開示が無く、1 千㎡あたり年 3,550 万円(保管・荷役・運送込み)として約 120 千㎡と推定。10 年の利益は、償却以外の費用(31.6 億)を数量×物価で増やし、償却は既存の取得原価のまま更新・新設分だけ足して中立 4.6 億とした(穴 10)。
不動産(賃貸)
賃貸マンションと賃貸オフィスビルの家賃。2025 年に 23 区で 2 棟を取得。
| 数量賃貸の床(千㎡・推定) | 価格1 千㎡あたりの年の賃料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 25.0 | 0.27 | 7 | 3 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 0.34 | 8 | 4 |
取り方:売上 6.70 億・利益 3.32 億・償却 1.74 億。床の面積は開示が無く、1 千㎡あたり年 2,680 万円として約 25 千㎡と推定。償却は中立 10 年で 1.9 億(取得原価のまま、更新分だけ足す)。
リスクと懸念
借入と金利の上昇
新しい倉庫と賃貸マンションを借入で取得し、借入は 55 億円ある。純負債は EBITDA の 4.5 倍で、借り換えの金利が 3.5% に上がると利払いが年 1 億円以上増え、純利益の 3 割近くを削る。
建て替えと修繕の費用
倉庫は築年が進み、大規模な修繕が続く。建築費の上昇で更新の投資は膨らむ。減価償却は昔の値段のままなので会計の利益は保たれて見えるが、現金は投資で細る。
荷主の集約
大手の物流会社が郊外に巨大な倉庫を建て、荷主はそこへ荷物を集めている。大口の荷主が一つ移るだけで、小さな倉庫会社の稼働は大きく下がる。
文書の電子化
企業の書類の電子化で、新しく預かる箱は伸びにくい。法定の保存の書類は残るが、長い目では文書保管の量は縮む。八街の新しいセンターの採算に響く。
資本の効率の低さ
自己資本 130 億円近くに対して純利益は年 3〜5 億円で、ROE は資本コストを大きく下回る。資産を積むほど効率は下がり、帳簿の安さが続く。
今後の分かれ目
- 2026/11 期の営業利益が予想の 6.5 億円に届き、その後も 7 億円台が続いたら
- 新しい倉庫と料金の見直しが利益に定着したと見て、やや楽観の確率を上げる。
- 借入をさらに増やして倉庫や賃貸の建物を買い足したら
- 稼ぎが金利を上回るかを見る。上回らなければ悲観側に寄せる。
- 賃貸不動産や遊休の土地を売って、配当や自社株買いに回したら
- 資産の値打ちが株主に戻る道が開く。本質価値の見方を上に改める。
- 大口の荷主の解約や、倉庫の稼働の低下が開示されたら
- やや悲観の筋書きが近いと見て、確率を移す。
- ファンドや同業から買収の提案が出たら
- 本質価値の見方は変えず、提案の値段と資産の値打ちを比べる。
見ておくもの
- 物流事業の利益率と倉庫の稼働
- 保管料・荷役料の改定
- 借入の残高と支払利息
- 賃貸の家賃と空室
- 配当と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
倍率は今や過去の株価、PBR から置いていない。k 7.5%(基本 7.5% に借金 +0.5%)で、10 年の事業の ROE が 3% 前後と k を下回るので PER の上限は 1÷k の 12.5 倍とし、その 8〜9.5 割に置いた。償却は既存の取得原価のままで、更新・新設分だけ新しい値段で足した(中立 10 年で年 6.5 億円)。利払いは借り換えの 3.5% で純利益から引いた。倉庫・賃貸の土地の含み益は、賃料と保管料を利益に入れたので足していない(二重を避けた)。悲観側は利益がほぼゼロのため今の自己資本に低い PBR を掛けた。新リース会計の影響は小さい(自社保有の倉庫が中心)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.88→13.33 倍・やや楽観 PER 11.25→13.33 倍・中立 PER 10→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。