結論
杉村倉庫は、大阪港を拠点に倉庫・港湾運送・陸上輸送を手がけ、大阪市港区と神奈川県厚木市で賃貸ビルや賃貸倉庫も持つ老舗だ。2026/03 期は売上 112 億円、営業利益 14 億円。物流が売上の 85%、不動産が利益の 4 割を稼ぐ。
筆者の結論は、10 年先の価値で測ると今の値段は割高、というものだ。財務の堅さと含み益は認める。それでも、事業が稼ぐ力の伸びが物価をなぞる程度に限られる。
自己資本比率は 78%、現金 57 億円に対して借入は 23 億円で、純現金がある。賃貸等不動産の時価は帳簿を 54 億円上回る(2023/03 期の開示)。この含み益の税後と余った現金を、株主に戻る額の半分として足した。
2027/03 期は大規模修繕と人件費・燃料費の上昇で、営業利益が 12.6 億円に減る会社予想だ。新社長が就いて新しい中期計画を練る途上で、大阪港の古い倉庫の建て替えや本社周辺の土地の活用が焦点になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたい会社かを問う。答えは、財務と資産は申し分ないが、事業の稼ぐ力は物足りない。
事業の質は、倉庫と賃貸という手堅い事業だ。10 年先も大阪港に倉庫と賃貸ビルはあり続けるだろう。ただ、荷主との力関係は弱く、料金を自分で決められない。
資本の使い方は、持っている資産の割に、稼ぎが小さい。ROE は 5.5% で、資本コストの 8% に届かない。現金と含み益は大きいが、株主に戻るかは経営次第だ。
払う値段に安全域があるかを見ると、悲観の場合でも売れる資産から負債を引くと約 90 億円は残る。これは時価総額の 6 割ほどにあたる。下値の守りは固いが、上値は物価の転嫁を超えて伸びる理由が薄い。
経営者の配分を見る限り、現金を貯める型で、株主の利益より会社の安定を優先している。新社長の方針が変わるまで、見方は変えない。
何で稼ぐ会社か
杉村倉庫は、大阪市に本社を置く倉庫業者だ。2026/03 期の売上は 112 億円で、報告セグメントは物流・不動産・その他の 3 つ。
物流が売上の 85% にあたる 96 億円。大阪港で、荷物を預かる保管、船との間の荷役・港湾運送、トラックでの輸送、国際物流を一貫して請け負う。営業利益は 10.8 億円で、利益率は 11% と倉庫業としては高い。
不動産は売上 13.4 億円、営業利益 8.8 億円で、利益率は 65%。大阪市港区と神奈川県厚木市に、オフィスビルや賃貸倉庫を持ち、長く貸している。物流を支える土地の一部が、そのまま稼ぎの柱になっている。
その他は売上 3 億円の小さな事業。セグメントの利益の合計は約 20.6 億円だが、全社の営業利益は 14.1 億円と、差の約 6 億円は本社費用などの調整額にあたる。
従業員は物流の現場が中心で、人件費と燃料費、修繕費が費用の大半を占める。減価償却は年 9 億円ほど。設備投資は 2026/03 期が 6 億円で、10 年前の 2017 年は 47 億円と、投資の波が大きい。
財務は堅く、自己資本は 178 億円、自己資本比率は 78%。投資有価証券は 12 億円ある。
優良さと弱いところ
強みは、大阪港の土地と倉庫を昔から持っていることだ。物流と不動産が同じ立地を共有し、賃貸の高い利益率が物流の低い利益率を補っている。賃貸等不動産の時価は簿価の 2.9 倍ある。新しく同じ場所を確保するのは難しく、荷主に対する立地の強みになる。
ただ堀は強くない。倉庫・港湾運送は荷主が変えようと思えば他社に移せる。料金は荷主との交渉で決まり、価格を自分で決められない。国内の貨物量は増えず、成長の余地が小さい。
資本効率は低い。ROE は 5.5% で、自己資本比率 78% の財務の堅さが、そのまま低い ROE の理由になっている。現金 57 億円が眠り、事業に使い切れていない。
2027/03 期は大規模修繕と人件費の上昇で減益の予想だ。物価の転嫁が遅れる年は、利益が先に削られる。経営は堅実で、無理な借入や大型の買収は避けてきた。その反面、現金を使う先が見つからず、ROE を高める動きは鈍い。新社長の方針が、この評価を変えうる唯一の材料になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
倉庫・港湾運送は、国内の貨物量が増えない成熟産業だ。人口が減り、生産の海外移転が進めば、荷動きは細る方向にある。一方、物価の上昇は荷役・保管料にゆっくり転嫁される。荷主との契約は年単位の改定が多く、転嫁には時間差がある。
人手不足は深刻で、運転手と荷役の人件費が上がり続ける。2024 年問題で、長距離輸送の運転手の残業に上限が付き、輸送の費用が上がった。これも費用を押し上げる。
大阪港は国際貨物のハブとして、横浜・神戸と競う。杉村倉庫は大阪港の中堅で、大手の三菱倉庫や住友倉庫のような規模は無い。
倉庫の建物は老朽化が早く、建て替えと大規模修繕の費用が定期的にかかる。賃貸ビルの市況は、大阪の都心では底堅いが、郊外の倉庫は空室のリスクがある。
業界全体に、含み益の大きい不動産を持つ会社が多く、株主からの還元の要求が強まっている。
同業の大手が賃貸の含み益を自社株買いや増配に回し始めた流れもあり、杉村倉庫のような中堅も、同じ圧力を受ける。東京証券取引所が資本コストを意識した経営を求めていることも、現金と土地を抱える会社への圧力になる。
資本政策と M&A
資本政策は、守りに寄っている。配当は無理のない水準で、配当性向は 25〜30% ほど。自社株買いは目立たない。利益の大半は内部に残り、現金が積み上がる。
財務は堅い。現金 57 億円に対して借入は 23 億円で、純現金は約 33 億円。自己資本比率は 78%。大阪港の古い倉庫の建て替えや、本社周辺の土地の活用の検討に、この現金を使う可能性がある。
大株主には、野村不動産グループや、アクティビスト色のある投資家が名を連ねる。2025 年 6 月に新しい社長が就いた。新しい中期計画でどう資本を配分するかが、株主の最大の関心になる。
余った現金と含み益は、株主に戻るかが分からない。ここでは半分を戻る額として数えた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
杉村倉庫は、資産に比べて安い会社だ。大阪港の土地に賃貸等不動産の時価が簿価の 2.9 倍あり、含み益は税後で約 38 億円。時価総額の 4 分の 1 にあたる。現金 57 億円と合わせれば、純資産以上の価値がある。
新社長の下で、大阪港の古い倉庫の建て替えと、本社周辺の土地の活用が検討されている。これが当たれば、遊んでいる資産が稼ぐ資産に変わり、利益が大きく伸びる。大株主にはアクティビストも名を連ね、還元への圧力は強まる。配当性向の引き上げや、自社株買いの可能性が高まる。
不動産は営業利益率 65% と高く、賃貸ビルは大阪の都心にあり、物価と共に賃料を上げられる。物流も、大阪港の立地と、荷主との長い関係に守られている。自己資本比率 78% で、不況でも潰れる心配が無い。
さらに今期の減益予想は、大規模修繕と制度変更によるもので、一時的な色合いが濃い。来期以降に利益が戻れば、値段の見直しが入る。
慎重な見方
杉村倉庫は、資産が眠っている会社だ。ROE は 5.5% で資本コストを下回り、現金と土地が稼ぎに結びついていない。新社長の下で新しい計画が検討されているが、具体的な数字は示されていない。
含み益は帳簿の外にあり、売らなければ株主には届かない。経営が売る意思を示していない以上、時価総額に全額を足すのは甘い。現金を積み増しても、配当性向が 3 割なら、株主に戻るのは一部だ。
物流は成熟産業で、国内の貨物量は増えない。人件費と燃料費、修繕費の上昇は、料金への転嫁が遅れる。今期は営業利益が 14 億円から 12.6 億円に減る会社予想で、減益が続けば ROE はさらに下がる。
資本コストを下回る ROE で現金を溜め続けるなら、時間がたつほど価値は目減りする。配当を増やすと決めない限り、株主に残る利益は増えない。
倉庫は老朽化が進み、建て替えに大きな投資がいる。投資しても、物流の利益率が上がる保証は無い。アクティビストの存在は、株価を一時的に動かしても、事業の稼ぐ力は変えない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。資産の裏付けは本物だが、稼ぐ力が伸びず、含み益も現金も株主に戻る保証が無い。強気の見方の含み益と還元の可能性は、余り資産に戻り方 0.5 を掛けて数字に入れた。確率は、中立に 38% を置き、強気側に 3 割、慎重側に 3 割とした。悲観は、荷主の離脱という具体的な前例が少なく、財務も堅いので、1 割にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,428 円234 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 208 円34 億円)。 今の値に割り戻すと 874 円143 億円、今との差 −5.0%、 期待の年率 +5.9%(資本コスト 7.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,103 円344 億円 | 336 円55 億円 | +165.1% | +10.2% | 195 円32 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,837 円301 億円 | 269 円44 億円 | +128.9% | +8.6% | 463 円76 億円 |
| 中立 | 38% | 1,661 円272 億円 | 214 円35 億円 | +103.8% | +7.4% | 713 円117 億円 |
| やや悲観 | 22% | 770 円126 億円 | 153 円25 億円 | +0.3% | +0.0% | 203 円33 億円 |
| 悲観 | 10% | 551 円90 億円 | 67 円11 億円 | −32.8% | −3.9% | 62 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,428 円234 億円 | 208 円34 億円 | +77.8% | +5.9% | 1,636 円268 億円 |
今の株価時価総額 920 円150 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 大阪港の再開発が当たり、物流も不動産も伸びる 利益 18 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 2,103 円344 億円
大阪港の古い倉庫を建て替え、保管の量が 1 割近く増える。物価の上昇を荷役・保管料に 4 割ほど転嫁でき、物流の利益率は 12.5% まで上がる。
本社周辺の土地の活用で賃貸の収入が伸び、不動産の利益率は 66% を保つ。売上は 167 億円、営業利益は 23 億円になる。
現金は使わずに積み上がる。それでも事業は大きく変わらず、倍率は上限に近い 16.01 倍に置いた。物流の数量が増えれば荷役と保管の稼働率が上がり、固定費の重い倉庫は利益が増えやすい。その増え方が、強気の筋書きを支える。ただ、ROE が k を超えない限り、成長株の値は付かない。
- 物流(倉庫・港湾運送・陸上輸送):数量 108(取扱量の指数(直近 1 年 =100))× 価格 1.34(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 145 億円・営業利益 18 億円。数量 1.08 倍・価格 1.40 倍(名目)・営業利益率 12.5%
- 不動産(賃貸ビル・賃貸倉庫):数量 100(賃貸面積の指数(直近 1 年 =100))× 価格 0.18(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 18 億円・営業利益 12 億円。数量 1.00 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 66.0%
- その他(保険代理など):数量 100(売上の数量指数(直近 1 年 =100))× 価格 0.04(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 30.0%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)82 億円。全体の PER 16.01 倍、時価総額 344 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:大阪港の古い倉庫の建て替えと本社周辺の土地の活用が、そろって成功する必要がある。新社長の下で新しい中期計画が打ち出されるが、実行の不確かさが大きく 8% にとどめた。
やや楽観 22% 物流が小幅に伸び、賃貸が堅調を保つ 利益 16 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 1,837 円301 億円
大阪港の倉庫の改修が進み、保管と荷役の量が少し増える。物流の利益率は 11.8% に上がる。
賃貸は物価に合わせて賃料を上げ、貸し先は埋まったまま。売上は 159 億円、営業利益は 20 億円になる。
配当性向は 35% 前後まで上がり、10 年の還元は 44 億円。残りの利益は現金と設備に回る。賃料の改定は契約更新ごとに進み、都心の空室が少なければ、物価を超える改定もありうる。物流の数量は大きくは伸びず、利益の増え方は物価に沿う。賃料の改定は契約更新ごとに進み、都心の空室が少なければ、物価を超える改定もありうる。物流の数量は大きくは伸びず、利益の増え方は物価に沿う。
- 物流(倉庫・港湾運送・陸上輸送):数量 104(取扱量の指数(直近 1 年 =100))× 価格 1.31(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 137 億円・営業利益 16 億円。数量 1.04 倍・価格 1.37 倍(名目)・営業利益率 11.8%
- 不動産(賃貸ビル・賃貸倉庫):数量 100(賃貸面積の指数(直近 1 年 =100))× 価格 0.18(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 18 億円・営業利益 12 億円。数量 1.00 倍・価格 1.33 倍(名目)・営業利益率 64.5%
- その他(保険代理など):数量 100(売上の数量指数(直近 1 年 =100))× 価格 0.04(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 30.0%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 7.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)85 億円。全体の PER 15.28 倍、時価総額 300 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の増収ペースは年 1〜2% で、物価の転嫁が進めば数量の小さな伸びで届く。強気の中では最も起こりやすい。
中立 38% 数量は横ばい、物価を転嫁して利益は緩やかに増える 利益 14 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 1,661 円272 億円
数量は今と同じ。物価の上昇は荷役・保管料に 3 割強の上昇として転嫁でき、売上は 150 億円になる。ただ人件費と燃料費、修繕費の上昇が重く、物流の利益率は 11.0% と今の水準より少し下がる。
賃貸の収入は賃料の改定で 3 割増。減価償却は新しい設備の分だけ増える。全社の費用が売上に連動して増え、営業利益は 17.8 億円と今の 14.1 億円から 26% 増にとどまる。
配当性向は 30% 前後で、10 年の還元は 35 億円。残りの利益は現金に積み上がる。現金を事業に使う計画は示されていない。
- 物流(倉庫・港湾運送・陸上輸送):数量 100(取扱量の指数(直近 1 年 =100))× 価格 1.28(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 128 億円・営業利益 14 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 11.0%
- 不動産(賃貸ビル・賃貸倉庫):数量 100(賃貸面積の指数(直近 1 年 =100))× 価格 0.17(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 17 億円・営業利益 11 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 63.0%
- その他(保険代理など):数量 100(売上の数量指数(直近 1 年 =100))× 価格 0.04(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 30.0%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 7.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)88 億円。全体の PER 15.51 倍、時価総額 272 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:倉庫・港湾運送は国内の貨物量が増えない成熟産業だが、荷主との契約で物価を転嫁できる。最も無理のない落としどころで確率が最大になる。
やや悲観 22% 荷動きが細り、修繕費と人件費が利益を削る 利益 7 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 770 円126 億円
荷主の生産移管や統合で、保管と荷役の量が 8% 減る。物価の転嫁も遅れ、利益率は 7.5% に下がる。
賃貸も、貸し先の退去で面積が 5% 減り、賃料の上昇が物価に届かない。売上は 132 億円、営業利益は 9 億円になる。
老朽化した倉庫の大規模修繕で、費用は先に出ていく。配当は維持しても、還元は 10 年で 25 億円にとどまる。ROE は 3% 台に落ちる。現金は積み上がるが、修繕と建て替えで使う場面が増え、株主に戻る額は小さい。会社は財務の堅さで耐えるが、成長の余地は狭まる。現金は積み上がるが、修繕と建て替えで使う場面が増え、株主に戻る額は小さい。会社は財務の堅さで耐えるが、成長の余地は狭まる。
- 物流(倉庫・港湾運送・陸上輸送):数量 92.0(取扱量の指数(直近 1 年 =100))× 価格 1.23(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 113 億円・営業利益 8 億円。数量 0.92 倍・価格 1.28 倍(名目)・営業利益率 7.5%
- 不動産(賃貸ビル・賃貸倉庫):数量 95.0(賃貸面積の指数(直近 1 年 =100))× 価格 0.16(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 9 億円。数量 0.95 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 58.0%
- その他(保険代理など):数量 90.0(売上の数量指数(直近 1 年 =100))× 価格 0.04(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。数量 0.90 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 20.0%
倍率:ROE が 3% 台で k を大きく下回り、式の上限は 1÷k。稼ぐ力が弱まるため、その 6 割の 8 倍に置いた。
確率:国内の貨物量の減少、荷主の統合、倉庫の老朽化に伴う修繕費の増加が重なる。地味な産業だが、利益が 4 割落ちる谷は起こりうる。
悲観 10% 主要な荷主を失い、倉庫の稼働が落ちる谷 利益 −1 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 551 円90 億円
主要な荷主が荷物を他社へ移し、物流の数量が 2 割強減る。固定費が重く、営業利益は赤字になる。賃貸も空室が出て、収入が落ちる。
借入は少なく、自己資本比率は 78% ある。倒産する形ではないが、利益で測れば会社の値打ちはほとんど無い。
売れる資産から負債を引くと、約 90 億円が残る。賃貸の土地や建物に、帳簿よりずっと高い時価があるためだ。買い手がつかない場合は、これよりさらに低くなる。物流を畳む費用や、荷主への補償も先に出ていく。それでも自己資本比率が高く、倒産の形にはならない。物流を畳む費用や、荷主への補償も先に出ていく。それでも自己資本比率が高く、倒産の形にはならない。
- 物流(倉庫・港湾運送・陸上輸送):数量 78.0(取扱量の指数(直近 1 年 =100))× 価格 1.13(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 88 億円・営業利益 2 億円。数量 0.78 倍・価格 1.18 倍(名目)・営業利益率 2.0%
- 不動産(賃貸ビル・賃貸倉庫):数量 88.0(賃貸面積の指数(直近 1 年 =100))× 価格 0.14(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 6 億円。数量 0.88 倍・価格 1.05 倍(名目)・営業利益率 45.0%
- その他(保険代理など):数量 80.0(売上の数量指数(直近 1 年 =100))× 価格 0.04(指数 1 あたりの売上(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量 0.80 倍・価格 1.10 倍(名目)・営業利益率 0.0%
倍率:赤字で稼ぐ力は無い。値の下支えは売れる資産から負債を引いた約 90 億円。今の自己資本 178 億円に対して 0.506 倍として置いた。
確率:主要な荷主が離れ、大阪港の倉庫の稼働が大きく落ちる谷。借入が少なく自己資本比率が 78% あるため、10% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
物流(倉庫・港湾運送・陸上輸送)
大阪港を中心に、倉庫での保管、荷役・港湾運送、トラック輸送、国際物流を一貫して請け負う。
| 数量取扱量の指数(直近 1 年 =100) | 価格指数 1 あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.96 | 96 | 11 |
| 10 年後 中立 | 100 | 1.28 | 128 | 14 |
取り方:2026/03 期のセグメント売上 95.8 億・営業利益 10.83 億(決算短信)。数量はトン数の開示が無く売上の実質指数で置く。
不動産(賃貸ビル・賃貸倉庫)
大阪市港区と神奈川県厚木市で、オフィスビルや賃貸倉庫を貸す。
| 数量賃貸面積の指数(直近 1 年 =100) | 価格指数 1 あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.13 | 13 | 9 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.17 | 17 | 11 |
取り方:2026/03 期のセグメント売上 13.4 億・営業利益 8.76 億(決算短信)。賃貸料収入が中心。
その他(保険代理など)
物流と不動産に付随する保険代理、車両整備などの小さな事業。
| 数量売上の数量指数(直近 1 年 =100) | 価格指数 1 あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.03 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.04 | 4 | 1 |
取り方:2026/03 期のセグメント売上 3.18 億・営業利益 0.98 億(決算短信)。
リスクと懸念
物価の転嫁の遅れ
人件費・燃料費・修繕費が先に上がり、荷主への料金転嫁が遅れる年は、利益率が下がる。2027/03 期は減益予想。
主要荷主の離脱
荷主が荷物を他社へ移せば、固定費の重い倉庫の稼働が落ちる。大阪港は競争が激しい。
倉庫の老朽化
古い倉庫の建て替えと大規模修繕に大きな投資が要る。投資に見合う利益率が出る保証は無い。
含み益が届かない
賃貸等不動産の含み益 54 億円は、売らなければ株主に届かない。経営が売る意思を示していない。
現金が眠る
現金 57 億円が事業に使われず、ROE を押し下げる。新しい中期計画の資本配分が焦点。
人手不足
運転手と荷役の人手が足りず、賃金が上がり続ける。2024 年問題で輸送の費用も上がった。
今後の分かれ目
- 新しい中期計画で配当性向が 40% を超える、または自社株買いを始める
- 余った現金の戻り方を 0.75 以上に上げ、強気側の確率を上げる。
- 大阪港の古い倉庫の建て替えが決まり、投資額と利回りが開示される
- 物流の利益率の前提を見直す。利回りが資本コストを超えるかを見る。
- 営業利益が 2 期続けて 12 億円を下回る
- やや悲観の確率を上げる。
- 賃貸不動産の売却や再開発が決まる
- 含み益が現金になる。戻り方を見直す。
- 主要荷主の取扱量が大きく落ちる
- 悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 新しい中期計画の資本配分
- 配当性向と自社株買い
- 物流の営業利益率(11% の維持)
- 賃貸等不動産の時価(最新の有報)
- 大阪港の倉庫の建て替え計画
- 純現金の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コストを下回る事業の式(1÷k)の 6〜8 割から置いた。今の株価や PER は見ていない。今の PBR が 1 倍に近いことは根拠にしていない。賃貸の含み益は 2023/03 期の有報を使い、最新の時価は未確認の点に注意。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→16.01 倍・やや楽観 PER 11→15.28 倍・中立 PER 10→15.51 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。