結論
伏木海陸運送は、富山県の伏木富山港で荷揚げと積み込みを担う港湾の会社だ。木材のチップ、石炭、コンテナ、アルミ地金などを船から降ろし、倉庫に預かり、トラックに載せる。年の売上は 144 億円で、その 3 分の 2 が港の仕事から生まれる。ほかに賃貸と住宅、自動車の内装に使う織物、旅行の事業も持つ。
筆者の結論は「やや割高」だ。地元の港で代わりのいない地位は本物で、2026 年 6 月期の営業利益は 13 億円近くと過去の高い水準にある。それでも、自己資本利益率(ROE)は 6% 前後で、資本コストの 8% に届かない。荷物の柱である石炭とチップは、脱炭素と紙の需要減でゆっくり細っていく。岸壁のクレーンや倉庫の更新には、物価の上がった値段でお金がかかる。
帳簿の上では資産は厚い。土地は簿価で 87 億円、上場株は 37 億円ある。ただ、それは港を動かすための土地と、取引先との持ち合いの株だ。株主に戻る形にはなりにくい。
筆者は、港の地位は守れても、荷物の中身の入れ替わりに追いつく投資が利益を食うと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、伏木海陸運送は「地元で代わりのいない事業だが、株主の取り分は細い」会社だ。港の荷役は免許と岸壁と土地が要り、新しく参入する会社はまず現れない。富山の港が使われる限り、この会社の仕事は残る。
ただし、守りの堅さと稼ぐ力は別だ。荷物の量は増えず、柱の石炭とチップは先細る。岸壁のクレーンや倉庫は物価の上がった値段で建て替える必要があり、会計の利益は出ても、手元に残るお金は投資に吸われる。
筆者はオーナー利益、つまり株主が受け取れる利益を、更新の投資を差し引いて年 5 億円前後と見る。帳簿の利益より少ない。資本コスト 7.75% で 10 年を割り引くと、今の時価総額に 2 割ほど届かない。安全域は、土地と上場株の厚さにしかない。それも港を動かす限り売れない資産だ。筆者は、この会社を長く持つ理由を荷物の入れ替わりの成否に見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は港運だ。2026 年 6 月期の売上 97 億円、営業利益 14 億円で、会社全体の利益のほとんどを生む。伏木港と富山新港で、船から荷を降ろす荷役、倉庫での保管、陸への運送までを一貫して請け負う。降ろす荷は、製紙に使う木材のチップ、発電所の石炭や木質の燃料、オイルコークス、工業用の塩、アルミの地金、鋼材などだ。積み出す荷はコンテナと自動車が中心で、富山新港からは中国・韓国・東南アジア、ロシアへの航路がある。
不動産は売上 11 億円で、営業利益は 2.5 億円と利益率が高い。港の周りの土地を倉庫や店舗に貸し、住宅の建築も請け負う。
繊維製品は売上 23 億円で、自動車の内装材や衣料向けの織物を作る。利益はほとんど出ていない。旅行の代理店や繊維の卸もあり、こちらも利益は小さい。
港の仕事は、岸壁のクレーン、荷役の機械、倉庫と、重い設備を持って回す商売だ。減価償却は年 9 億円近くあり、更新の投資はそれを上回る。地元の大きな工場や発電所の荷物を長く扱ってきた関係が、商売の土台になっている。
優良さと弱いところ
港での地位は強い。伏木富山港で荷役を担える会社は限られ、岸壁の背後の土地と倉庫、荷役の機械、港の仕事の免許を持つ。荷主の工場や発電所にとって、ほかの会社に切り替える理由は乏しい。
弱さは荷物の中身にある。石炭は火力発電の脱炭素で、チップは紙の需要減で、10 年先に減っている可能性が高い。木質の燃料やコンテナが一部を埋めても、取扱量そのものが伸びる構図ではない。
資本の効率も低い。ROE の中央値は 5% 弱で、資本コストに届いた年は無い。重い設備に加えて、上場株と港の周りの土地を多く抱えているからだ。
財務は落ち着いた。有利子負債は 42 億円あるが、現金 34 億円で大半が賄え、純負債は営業利益の 1 年分に満たない。
経営は堅実だが、資本の使い方に工夫は見えない。使っていない土地や上場株を売って還元に回す動きは、まだ一度きりだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の港の荷物は、全体として増えない。国内の工場は海外へ移り、人口も減る。港の取扱量は、大きなコンテナ港へ集まり、地方の港は特定の荷主の荷物に頼る構図が強まっている。伏木富山港もその一つで、地元の製紙・発電・アルミ・化学の工場が主な荷主だ。
荷物の中身は入れ替わっていく。石炭火力は国の方針で減らす方向にあり、富山の発電所も燃料の転換を迫られる。紙の需要は毎年減り、製紙用のチップも細る。逆に、木質のバイオマス燃料は増え、日本海側の港から中国・韓国・東南アジアへのコンテナも少しずつ伸びている。
港の荷役は人手が要る仕事で、運転手と作業員の不足は年々厳しくなる。人件費は物価より速く上がりやすく、荷役の料金にどこまで移せるかが利益を分ける。
同業の上組や名港海運は大きな港で多くの荷主を持つ。伏木海陸運送は地方の港の一番手として地位は固いが、港そのものの荷物の量に天井がある。
脱炭素の流れは、港にとって逆風と追い風の両方を運ぶ。石炭が減る一方で、洋上風力の部材やバイオマス燃料、水素やアンモニアの受け入れの拠点として、日本海側の港が選ばれる可能性もある。ただ、その投資は国と県が主導し、どの港が選ばれるかはまだ見えない。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当は年 1.6 億円ほどで、配当性向は 2 割弱にとどまる。2027 年 6 月期も同じ水準の予定だ。自社株買いの実績は見当たらない。
資金の多くは港の設備に回る。2026 年 6 月期は荷役の機械に 13 億円近くを投じ、子会社の高岡の土地建物を売って 10 億円を得た。借入は返済が進み、有利子負債は前の年より減った。
上場株を 37 億円持ち、配当で年 1.6 億円を受け取る。売る方針の数字は無い。中期経営計画の数値目標も見当たらない。資本を厚く抱えたまま還元が薄い点は、株主から見て物足りない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
地方の港の一番手という地位は、10 年先も揺るがない。富山の工場や発電所の荷物を扱える会社は限られ、荷主にとって切り替える先は無い。荷役の料金は人件費の上昇とともに上げていける。2026 年 6 月期は港運の利益が 1 割伸び、値上げが通っている。
荷物の入れ替わりは脅威だけではない。石炭が減っても、発電所が木質の燃料やアンモニアへ燃料を替えれば、その荷も同じ港に揚がる。日本海側から中国・韓国・東南アジアへのコンテナも伸びる。工場の国内回帰が進めば、アルミや化学の荷も増える。
資産も手厚い。上場株 37 億円と港の周りの土地は、帳簿の外にも値打ちがある。2026 年 6 月期は子会社の土地を売って 10 億円を得た。使っていない土地を売り、借入を返し、還元を厚くする余地は大きい。
港運の利益率が 15% を保ち、不動産が伸びれば、営業利益は 20 億円を超える。そうなれば今の時価総額は割安に見える。
慎重な見方
港の地位は強くても、荷物の量が減れば利益は減る。石炭火力は国の方針で減り、富山の発電所の燃料も転換を迫られる。紙の需要は毎年減り、製紙用のチップも細る。柱の荷物が 10 年でゆっくり消えていく。
代わりの荷物は小さい。木質の燃料やコンテナは伸びても、石炭とチップの穴を埋めるほどではない。ロシアとの航路は制裁でいつ止まってもおかしくない。
設備の更新は重い。岸壁のクレーンや倉庫は、物価と建築費の上がった値段で建て替える必要がある。償却を上回る投資が続き、借入の金利は 3.5% に上がる。会計の利益は出ても、手元のお金は残らない。
人手の不足も厳しい。荷役の作業員と運転手は集まりにくく、人件費は物価より速く上がる。料金に移しきれなければ、港運の利益率は 10% を割る。繊維は自動車の内装の値下げ圧力で赤字に戻りうる。上場株と土地は売らない限り、株主の価値にはならない。
帳簿の厚さに安心して、資本の使い方を変えない経営も心配の種だ。
どちらに重みを置いたか
港の地位が固いことは強気の見方の言うとおりで、慎重な見方もそれは否定しない。分かれ目は荷物の量と設備の更新で、石炭とチップの先細りは政策と需要の両方から確かな流れだ。筆者は確率を慎重な側にやや寄せ、中立は取扱量が 5% 減り、利益率が 13% に下がる姿とした。港の土地と上場株の厚さは下値を支えるが、還元の薄さがその効きを弱める。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 3,449 円89 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 640 円17 億円)。 今の値に割り戻すと 2,075 円54 億円、今との差 +3.8%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,424 円166 億円 | 1,082 円28 億円 | +275.3% | +14.1% | 525 円14 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,899 円127 億円 | 850 円22 億円 | +187.4% | +11.1% | 1,150 円30 億円 |
| 中立 | 38% | 3,960 円103 億円 | 695 円18 億円 | +132.7% | +8.8% | 1,769 円46 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,793 円46 億円 | 464 円12 億円 | +12.8% | +1.2% | 519 円13 億円 |
| 悲観 | 12% | 850 円22 億円 | 193 円5 億円 | −47.9% | −6.3% | 125 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,449 円89 億円 | 640 円17 億円 | +104.4% | +7.4% | 4,088 円106 億円 |
今の株価時価総額 2,000 円52 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 燃料の転換とコンテナで荷物を守り、利益は 20 億円超 利益 13 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 6,424 円166 億円
富山の発電所は石炭から木質の燃料とアンモニアへ燃料を替え、その荷も伏木海陸運送の岸壁に揚がる。日本海側のコンテナが伸び、工場の国内回帰でアルミと化学の荷も増える。取扱量は 10 年で 5% 増える。
人手の不足を背景に荷役の料金は物価より速く上がり、港運の利益率は 15% 台を保つ。使っていない土地の賃貸が増え、不動産の利益も伸びる。
営業利益は 21 億円、純利益は 12 億円台になる。配当は増え、10 年で 28 億円を戻す。それでも重い設備と厚い資産のせいで、ROE は 6% 台にとどまる。
- 港運:数量 1,050(取扱貨物量(万トン・推定))× 価格 1,366(1 トンあたりの売上(円・名目))→ 売上 143 億円・営業利益 22 億円。数量 1.05 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 15.5%。償却は既存の設備を取得原価のまま、更新した荷役機械と倉庫だけ新しい値段で足す
- 不動産:数量 134(賃貸・住宅の床面積換算(千㎡・推定))× 価格 1.24(1 ㎡あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 4 億円。数量 1.10 倍・価格 1.38 倍・営業利益率 21.0%
- 繊維製品製造:数量 230(織物の生産(万メートル・推定))× 価格 1,340(1 メートルあたりの売上(円・名目))→ 売上 31 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 3.0%
- その他(旅行・繊維卸):数量 2.7(旅行の取扱人数換算(万人・推定))× 価格 6.90(1 人あたりの売上(万円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。数量 1.10 倍・価格 1.38 倍・営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 162 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:荷物の入れ替わりがうまく進み、料金の値上げも通る姿。取扱量が伸びる地方の港は少ないので 7% にとどめた。
やや楽観 20% 取扱量を保ち、値上げで利益を伸ばす 利益 9 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 4,899 円127 億円
石炭とチップは減るが、木質の燃料とコンテナが穴を埋め、取扱量は 10 年で横ばいを保つ。荷役の料金は物価を少し上回って上がる。
港運の利益率は 14% と今の水準を保つ。不動産は港の周りの賃貸が増え、繊維と旅行は小さな黒字を続ける。営業利益は 16 億円台、純利益は 9 億円台になる。
配当は少しずつ増え、10 年で 22 億円を戻す。クレーンと倉庫の更新は続き、借入は横ばいだ。ROE は 5% に届かない。
使っていない土地の一部を売り、その資金で借入を返す。港の地位は保たれ、荷主との関係も変わらない。
- 港運:数量 1,000(取扱貨物量(万トン・推定))× 価格 1,337(1 トンあたりの売上(円・名目))→ 売上 134 億円・営業利益 19 億円。数量 1.00 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 14.0%。償却は既存の設備を取得原価のまま、更新した荷役機械と倉庫だけ新しい値段で足す
- 不動産:数量 128(賃貸・住宅の床面積換算(千㎡・推定))× 価格 1.21(1 ㎡あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。数量 1.05 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 19.0%
- 繊維製品製造:数量 219(織物の生産(万メートル・推定))× 価格 1,300(1 メートルあたりの売上(円・名目))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。数量 0.95 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 2.0%
- その他(旅行・繊維卸):数量 2.5(旅行の取扱人数換算(万人・推定))× 価格 6.70(1 人あたりの売上(万円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 120 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:石炭とチップの減少を新しい荷物で埋める姿。2026 年 6 月期の値上げの実績を見て 2 割に置いた。
中立 38% 中立:取扱量が 5% 減り、利益率は 13% 利益 7 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,960 円103 億円
石炭とチップはゆっくり減り、木質の燃料とコンテナが一部を埋める。取扱量は 10 年で 5% 減る。荷役の料金は物価並みに上がり、港運の売上は 124 億円になる。
人件費の上昇と設備の更新で、港運の利益率は 13% に下がる。既存の岸壁と倉庫の償却は取得した時の値段のままだが、更新したクレーンと倉庫の償却が新しい値段で乗る。全社の営業利益は 13 億円、純利益は 7 億円になる。
更新の投資は償却を上回り、差は借入で賄う。配当は少しずつ増え、10 年で 18 億円を戻す。ROE は 4% 前後だ。
- 港運:数量 950(取扱貨物量(万トン・推定))× 価格 1,308(1 トンあたりの売上(円・名目))→ 売上 124 億円・営業利益 16 億円。数量 0.95 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 13.0%。償却は既存の設備を取得原価のまま、更新した荷役機械と倉庫だけ新しい値段で足す
- 不動産:数量 122(賃貸・住宅の床面積換算(千㎡・推定))× 価格 1.17(1 ㎡あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 3 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 18.0%
- 繊維製品製造:数量 196(織物の生産(万メートル・推定))× 価格 1,250(1 メートルあたりの売上(円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。数量 0.85 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 1.5%
- その他(旅行・繊維卸):数量 2.4(旅行の取扱人数換算(万人・推定))× 価格 6.70(1 人あたりの売上(万円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。数量 0.95 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 92 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:柱の荷物が細り、新しい荷物が一部を埋める、いちばん起こりやすい形として最も厚く置いた。
やや悲観 23% 石炭の荷が大きく減り、利益は半分以下に 利益 3 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,793 円46 億円
富山の発電所が石炭をやめ、燃料を別の港やガスに替える。チップも紙の需要減で細り、取扱量は 10 年で 2 割近く減る。
荷役の料金は物価に届かず、人件費の上昇も重なって港運の利益率は 10% に落ちる。繊維は自動車の内装の値下げ圧力で小さな赤字になる。営業利益は 5 億円台、純利益は 3 億円弱だ。
設備の更新は続けざるを得ず、借入は減らない。配当は保つが、10 年で 12 億円にとどまる。
ロシアとの航路も細り、コンテナの伸びも小さい。使っていない設備の減損が少しずつ出る。株主から見て、厚い資産が眠ったままの 10 年になる。
- 港運:数量 820(取扱貨物量(万トン・推定))× 価格 1,220(1 トンあたりの売上(円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 10 億円。数量 0.82 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 10.0%。償却は既存の設備を取得原価のまま、更新した荷役機械と倉庫だけ新しい値段で足す
- 不動産:数量 116(賃貸・住宅の床面積換算(千㎡・推定))× 価格 1.08(1 ㎡あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。数量 0.95 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 15.0%
- 繊維製品製造:数量 161(織物の生産(万メートル・推定))× 価格 1,150(1 メートルあたりの売上(円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。数量 0.70 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 -1.0%
- その他(旅行・繊維卸):数量 2.1(旅行の取扱人数換算(万人・推定))× 価格 6.00(1 人あたりの売上(万円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。数量 0.85 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 0.0%
倍率:ROE 1.7% と k を大きく下回るので PER は 1÷k=12.5 倍が上限。稼ぐ力(純利益 2.8 億円 ÷ k = 35 億円)を上限に、利益の細りを見て 11.35 倍に置く。PBR は 0.19 倍で中立の 0.27 倍を下回る。
確率:発電所の燃料の転換が港の外で進み、チップも減る姿。政策の流れは確かなので 2 割強に置いた。
悲観 12% 悲観:柱の荷物が消え、港運が赤字すれすれに 利益 −4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 850 円22 億円
石炭火力が止まり、製紙の工場も縮む。柱の荷物が消え、取扱量は 10 年で 4 割減る。ロシアとの航路も止まる。
岸壁と倉庫の固定費は残り、港運の利益率は 4% に落ちる。繊維は撤退に向かい、旅行も赤字だ。全社は営業赤字に沈み、使わなくなった荷役の設備の減損で自己資本は 107 億円まで減る。
配当は細り、10 年で 5 億円しか戻らない。上場株と土地は残るが、港を続ける限り売れず、株主の価値にはならない。
県と国の港の整備も大きな港へ集まり、伏木富山港の存在感は薄れる。港の会社としては残るが、株主の取り分は細る一方だ。
- 港運:数量 600(取扱貨物量(万トン・推定))× 価格 1,122(1 トンあたりの売上(円・名目))→ 売上 67 億円・営業利益 3 億円。数量 0.60 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 4.0%。償却は既存の設備を取得原価のまま、更新した荷役機械と倉庫だけ新しい値段で足す
- 不動産:数量 110(賃貸・住宅の床面積換算(千㎡・推定))× 価格 0.99(1 ㎡あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。数量 0.90 倍・価格 1.10 倍・営業利益率 12.0%
- 繊維製品製造:数量 92.0(織物の生産(万メートル・推定))× 価格 1,100(1 メートルあたりの売上(円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.40 倍・価格 1.10 倍・営業利益率 -5.0%
- その他(旅行・繊維卸):数量 1.7(旅行の取扱人数換算(万人・推定))× 価格 5.50(1 人あたりの売上(万円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。数量 0.70 倍・価格 1.10 倍・営業利益率 -2.0%
倍率:赤字で稼ぐ力は測れないので、売れる資産の床で置いた。今の自己資本 132 億円に PBR 0.167 倍を掛けた 22 億円。
確率:石炭とチップがほぼ消え、代わりの荷物も来ない負け筋。地方の港の荷物は特定の荷主に頼るので 1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
港運
伏木港と富山新港での荷役・保管・陸送。チップ・石炭・木質燃料・コンテナ・アルミ地金・鋼材・自動車を扱う。
| 数量取扱貨物量(万トン・推定) | 価格1 トンあたりの売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1,000 | 976 | 98 | 14 |
| 10 年後 中立 | 950 | 1,308 | 124 | 16 |
取り方:取扱量の開示は無い。港運の売上 97.6 億円を、荷役・保管・陸送を合わせた 1 トンあたり約 980 円と置いて 1,000 万トンと推定した。物価と人件費の転嫁は 1 トンあたりの売上に入れる。営業利益 14.43 億円は開示(減価償却 6.37 億円を含む)。
不動産
港の周りの土地での倉庫・店舗の賃貸と、住宅の建築。
| 数量賃貸・住宅の床面積換算(千㎡・推定) | 価格1 ㎡あたりの年間売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 122 | 0.90 | 11 | 3 |
| 10 年後 中立 | 122 | 1.17 | 14 | 3 |
取り方:床面積の開示は無い。外部への売上 11.0 億円を、1 ㎡あたり年 0.9 万円(賃貸と住宅の建築の平均)の床面積換算 122 千㎡と推定した。営業利益 2.51 億円は開示。
繊維製品製造
自動車の内装材と衣料向けの織物の製造。
| 数量織物の生産(万メートル・推定) | 価格1 メートルあたりの売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 230 | 1,000 | 23 | 0 |
| 10 年後 中立 | 196 | 1,250 | 24 | 0 |
取り方:生産量の開示は無い。売上 23.0 億円を 1 メートルあたり約 1,000 円と置いて 230 万メートルと推定した。営業利益 0.41 億円は開示。
その他(旅行・繊維卸)
旅行の代理店と繊維の卸など。
| 数量旅行の取扱人数換算(万人・推定) | 価格1 人あたりの売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 2.5 | 5.00 | 12 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 6.70 | 16 | 0 |
取り方:外部への売上 12.5 億円を、旅行 1 人あたり約 5 万円の取扱人数換算 2.49 万人と推定した(繊維の卸も含めた換算)。営業利益 0.31 億円は開示。
リスクと懸念
石炭とチップの先細り
石炭火力は国の脱炭素の方針で減り、紙の需要減で製紙用のチップも細る。どちらも港の柱の荷物で、代わりの荷物が同じ量だけ来る保証は無い。
設備の更新の重さ
岸壁のクレーンや荷役の機械、倉庫は物価と建築費の上がった値段で建て替える。更新の投資は償却を上回り、借入の金利も 3.5% へ上がる。会計の利益に比べて手元の現金は細る。
人手の不足
荷役の作業員と運転手は集まりにくく、人件費は物価より速く上がる。料金に移しきれなければ港運の利益率は下がる。
特定の荷主への依存
地方の港の荷物は、地元の発電所・製紙・アルミの工場に頼る。一つの工場の縮小や移転が取扱量を大きく動かす。ロシアとの航路は制裁で止まりうる。
厚い資産と薄い還元
上場株 37 億円と簿価 87 億円の土地を抱え、配当性向は 2 割弱だ。資産が株主に戻らなければ、帳簿の厚さは価値に結びつかない。
今後の分かれ目
- 富山の発電所が燃料を木質やアンモニアに替え、その荷を同じ港で扱うと決まったら
- 石炭の減少の穴が埋まり、やや楽観の筋書きに近づく。
- 上場株や遊休地の売却と還元の数字を示したら
- 売った分の税後を余った現金として足せる。資産の厚さが株主の価値に近づく。
- 港運の利益率が 3 年続けて 12% を割ったら
- 人件費と更新の負担が料金を上回っている証拠で、中立より下の筋書きに近づく。
- 製紙の工場の縮小や石炭火力の停止が発表されたら
- 柱の荷物が消え始め、やや悲観の筋書きに移る。
- 日本海側のコンテナ航路が大きく増えたら
- 新しい荷物の柱になり、取扱量の減少を止められる。
見ておくもの
- 港運のセグメント利益と利益率
- 伏木富山港の石炭・チップ・コンテナの取扱量
- 設備投資と減価償却の差
- 配当性向と上場株の売却
- 富山の発電所の燃料の転換の計画
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE が k 7.75% を下回るので 1÷k を上限に、正当化 PER から置いた。中立 7.0 倍は今の PER(約 6 倍)や PBR 0.4 倍を見て決めていない。償却は取得原価のまま、更新分だけ新しい値段で足し、更新の投資が償却を上回る分は借入と還元の細りに表した。悲観は今の自己資本と上場株の税後から床を出し、過去の PBR の底は使っていない。facts の純負債 13.6 億円は現金同等物だけなので、預金を足した 7.7 億円で見た。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→12.9 倍・やや楽観 PER 8.2→12.9 倍・中立 PER 7→12.9 倍・やや悲観 PER 11→11.35 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。