結論
櫻島埠頭は、大阪港の北の端、特殊物資港区で船の荷を揚げ、預かる会社だ。扱うのは石炭やコークスなどのばら積みの貨物と、重油や化学品などの液体だ。コンテナは扱わない。筆者の結論は、今の値段は割高である。
理由は、本業の稼ぐ力の薄さにある。2026年3月期の営業利益は2.5億円で、売上の6%にすぎない。過去12年で見れば、これでも最も高い水準だ。純利益が営業利益を上回るのは、銀行や取引先の株から受け取る配当が大きいからだ。
しかも、いちばん大きな荷は石炭で、最大の顧客は電源開発だ。脱炭素の流れの中で、石炭の荷役は10年で細っていく。タンクと倉庫は値上げが通り、新しい倉庫も建つが、石炭の減りを埋めるには小さい。
帳簿には時価57億円の持ち合い株がある。だが筆者は、その配当を利益に数える以上、株の価値を別に足さない。売る方針も示されていない。本業と配当を合わせた利益で測ると、今の値段は本質価値を大きく上回る。持ち合い株の売却が数字で約束されれば、結論は変わりうる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、帳簿は厚いが、稼ぐ力が薄い会社だ。
良い点は、代わりの利かない岸壁とタンクを持つことだ。タンクの賃料は値上げが通り、液体貨物は3割を超える利益率で稼ぐ。これは小さいながら本物の堀だ。
問題は、会社全体で見た時の稼ぐ力だ。売上の半分を占めるばら貨物はほとんど利益を残さず、最大の荷の石炭は細っていく。設備の更新は値上がりし、借地の期限も来る。
持ち合い株の57億円は、時価総額を上回る。帳簿だけを見れば安い会社に見えるだろう。だが、株を売る方針はなく、配当は利益として入ってくる。利益として数える以上、その価値を別に足せば二重に数えることになる。株主に戻るかどうかも、経営しだいだ。筆者は、帳簿の厚さでなく、10年後に残る利益で値段を考える。株の売却が数字で約束されれば、話は変わる。それまでは、オーナーとして長く持ちたいとは思えない。
何で稼ぐ会社か
事業は三つある。2026年3月期の売上42.6億円のうち、ばら貨物が23億円、液体貨物が14億円、物流倉庫が5億円だ。
ばら貨物は、船で運ばれてきた石炭やコークス、イルメナイト、塩、ソーダ灰を、大型のアンローダーで揚げ、野積場や倉庫に置き、はしけやトラックで客先に運ぶ仕事だ。年に約240万トンを揚げる。最大の顧客は電源開発で、売上の17%を占める。売上は大きいが、人と機械を多く使うので、利益はほとんど残らない。
液体貨物は、45基、約13万klのタンクで、重油や白油、アスファルト、化学品を預かる。商社や卸がタンクを物流の拠点として借りる形で、売上は小さいが、営業利益の大半を稼ぐ。
物流倉庫は、危険物を扱う化学品センターと、冷蔵・低温の倉庫だ。食材の加工も請け負う。
事業の用地の多くは、大阪市からの借地で、期限は2044年だ。社員は89人と少なく、構内の作業の多くは、議決権の2割強を持つ埠頭ジャスタックに任せている。子会社の浪花建設運輸が、ばら貨物の陸の運送を受け持つ。小さな所帯で、大きな設備を回す会社だ。人件費より、設備の償却と修繕が費用の中心になる。
優良さと弱いところ
強みは、場所と設備だ。特殊物資港区の岸壁と、大型のアンローダー、13万klのタンクは、新しく作るのが難しい。危険物や液体を扱う許可と設備は、参入の壁になる。タンクを借りる客は長い契約を結び、値上げも通りやすい。液体貨物の営業利益率が3割を超えるのは、その証拠だ。
弱みは、本業の利益の薄さだ。全社の営業利益率は過去12年で0〜6%にとどまり、2011年3月期には赤字だった。ばら貨物は売上の半分を占めながら、利益はほぼゼロだ。
もう一つの弱みは、荷の先行きだ。最大の荷の石炭は、脱炭素で細る。用地は借地で、2044年の期限の後は大阪市との交渉しだいになる。
資本の効率も低い。自己資本81億円のうち、持ち合い株の含み益が大きな部分を占め、ROE は3%台にとどまる。本業の利益だけで見れば、ROE は2%に届かない。厚い帳簿は、稼ぐ力の弱さを隠している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
港湾の仕事は、国の貿易の量に沿って動く。コンテナの取扱量は全国でほぼ横ばいだ。櫻島埠頭はコンテナでなく、発電所や工場の原料を扱うので、日本の産業の形の変化をより直接に受ける。
いちばん大きな変化は、石炭だ。政府は効率の低い石炭火力を2030年までに減らす方針を掲げ、電力会社はアンモニアやバイオマスとの混焼を進める。石炭の輸入は長い目で見れば減っていく。櫻島埠頭のばら貨物の荷役量は2026年3月期に14%増えたが、これは一時の動きと見るべきだ。
液体の側も、重油は細る。一方で、化学品や食品の原料の預かりは、工場の在庫を外に置く流れで底堅い。危険物を扱える倉庫やタンクは、都市の近くでは新しく作りにくく、値上げが通る。
物流の業界全体では、人手不足とトラックの残業規制で運賃と保管料が上がった。港湾の作業も人が集まりにくく、作業を任せる協力会社の費用も上がる。設備の更新は、建築費と機械の値上がりで、昔より高くつく。港の会社にとって、10年は設備を入れ替える期間でもある。償却は取得した時の値段のまま据え置かれるので、会計の利益は膨らんで見えるが、更新の現金は今の値段で出ていく。
資本政策と M&A
還元は、配当だけだ。中期計画で累進配当、つまり減らさずに増やし続ける配当を導入し、2025年度の配当は前の年より35%増やした。目標は、本業の税引後の利益の3割以上だ。配当の総額は年0.8億円ほどで、自社株買いはない。
資本の大きな使い道は設備だ。中期計画の3年で30億円以上を投じ、ばら貨物の倉庫を新しく建てる。純有利子負債の増加は10億円以内に抑えるという。
持ち合い株は時価57億円あり、取得原価の9倍に膨らんでいる。会社は保有の意義が薄れたものは売ると言うが、売る額の目標は示していない。株主の2割強を埠頭ジャスタックが持ち、買収の対象にはなりにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
帳簿を見れば、この会社は安い。時価57億円の持ち合い株だけで、時価総額を上回る。自己資本は81億円で、PBR は0.5倍台だ。
本業も変わり始めている。中期計画の EBITDA 9億円は1年前倒しで届き、2026年3月期の営業利益は過去12年で最も高かった。液体タンクは化学品の預かりを広げ、ステンレスのタンクも検討する。2027年1月には新しいばら貨物倉庫が完成する。
石炭も、すぐには消えない。電源開発の発電所はアンモニアとの混焼で生き残りを図り、塩やソーダ灰などの化学原料はなくならない。特殊物資港区の岸壁と大型の荷役機械は、ほかでは代わりが利かない。
還元も変わった。累進配当を入れ、配当は1年で35%増えた。持ち合い株の売却が進めば、資本の効率は一気に上がる。会社も保有の意義が薄れた株は売ると言っている。帳簿の厚さが、いずれ株主の価値になる日は来る。本業と資産の両方が少しずつ動き出した今、悲観に偏る理由はない。
慎重な見方
本業の稼ぐ力は薄い。全社の営業利益率は過去12年で0〜6%で、2026年3月期の5.9%が最高だ。売上の半分を占めるばら貨物は、営業利益がほぼゼロだった。純利益の4割近くは、持ち合い株の配当だ。
最大の荷は石炭で、最大の顧客は電源開発だ。政府は効率の低い石炭火力を減らす方針で、10年で荷役量は大きく減る。人と機械は残るので、減った分はそのまま赤字になる。
用地は大阪市からの借地で、期限は2044年だ。賃料の増額をめぐる訴訟もあった。設備の更新は値上がりし、中期計画だけで30億円を投じる。償却は取得した時の値段のままでも、更新の現金は今の値段で出ていく。
持ち合い株は、売る方針がない限り株主の価値にならない。埠頭ジャスタックが2割強を持ち、自社株買いもない。帳簿の安さは、見かけにすぎない。本業だけの利益で測れば、今の値段は決して安くない。新しい倉庫も、石炭の穴を埋めるには小さすぎる。10年後に残る本業の利益は、今とあまり変わらないと見るのが自然だ。
どちらに重みを置いたか
岸壁とタンクの堀、累進配当への転換は確かだが、本業の薄さと石炭の先細りも同じくらい確かだ。確率は中立を中心に、悲観側を35%、強気側を27%と、同じ領域の名港海運に近い形にした。持ち合い株の売却の方針が数字で示されれば、評価は大きく変わる。今の決まりでは配当を利益に残すので、株の価値は足していない。分かれ目は、石炭の荷役量と株の売却の二つだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,551 円39 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 620 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 1,636 円25 億円、今との差 −44.5%、 期待の年率 +0.7%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,601 円70 億円 | 851 円13 億円 | +84.8% | +6.3% | 382 円6 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,430 円52 億円 | 720 円11 億円 | +40.7% | +3.5% | 830 円13 億円 |
| 中立 | 38% | 2,644 円40 億円 | 655 円10 億円 | +11.8% | +1.1% | 1,253 円19 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,817 円28 億円 | 524 円8 億円 | −20.7% | −2.3% | 538 円8 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,001 円15 億円 | 393 円6 億円 | −52.7% | −7.2% | 167 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,551 円39 億円 | 620 円9 億円 | +7.5% | +0.7% | 3,171 円48 億円 |
今の株価時価総額 2,950 円45 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 石炭が細らず、新しい倉庫と化学品のタンクが埋まる 利益 5 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 4,601 円70 億円
電源開発の石炭火力は、アンモニアの混焼に切り替えながら2030年代も動き続ける。櫻島埠頭のばら貨物の荷役量は1割減で済み、保管料の値上げで売上は保たれる。
新しいばら貨物倉庫は完成後すぐに埋まり、冷蔵倉庫と危険物の倉庫も需要が強い。液体タンクはステンレスのタンクを新設し、化学品の預かりが増える。
売上は約57億円、営業利益は約6億円と今の2倍強になる。償却は取得した時の値段で据え置かれ、賃料と荷役料の値上げがそのまま利益に効く。配当も累進で増え、自己資本の効率は少しずつ上がる。それでも ROE は5%前後で、資本コストには届かない。
- ばら貨物:数量 2,151(荷役量(千トン))× 価格 0.01(1千トンあたり売上(億円))→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。数量 0.90倍・単価 1.38倍・営業利益率 4.5%
- 液体貨物(タンク):数量 139(タンク容量(千kl))× 価格 0.14(1千klあたり年間売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 7 億円。数量 1.05倍・単価 1.38倍・営業利益率 33.0%
- 物流倉庫・その他:数量 60.2(倉庫の延床(千㎡・推定))× 価格 0.18(1千㎡あたり年間売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 4 億円。数量 1.40倍・単価 1.38倍・営業利益率 40.0%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 70 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電源開発向けの石炭は、火力発電所が動く限り続く。新しいばら貨物倉庫とタンクの更新で、化学品の取り扱いも増える。ただ脱炭素の流れに逆らう筋書きで、同じ領域の強気(7〜8%)に合わせた。
やや楽観 20% タンクと倉庫が育ち、石炭の減りを埋める 利益 4 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,430 円52 億円
ばら貨物は石炭の減りで荷役量が15%減るが、塩やソーダ灰などの化学原料は残る。保管料の値上げで1トンあたりの売上は名目1.34倍になる。
液体タンクは化学品の預かりを広げ、稼働を保つ。新しいばら貨物倉庫と冷蔵倉庫で、倉庫の売上は1.25倍の広さ分だけ伸びる。
売上は約52億円、営業利益は約4.5億円になる。全社の費用も物価並みに増えるが、タンクと倉庫の賃料の値上げが上回る。配当は累進で増えるが、配当性向は3割台にとどまる。利益の半分近くは、なお持ち合い株の配当が占める。石炭の減りを倉庫とタンクが埋め、本業は細らずに済む。
- ばら貨物:数量 2,032(荷役量(千トン))× 価格 0.01(1千トンあたり売上(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。数量 0.85倍・単価 1.34倍・営業利益率 3.0%
- 液体貨物(タンク):数量 132(タンク容量(千kl))× 価格 0.14(1千klあたり年間売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 6 億円。数量 1.00倍・単価 1.34倍・営業利益率 31.0%
- 物流倉庫・その他:数量 53.8(倉庫の延床(千㎡・推定))× 価格 0.17(1千㎡あたり年間売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 4 億円。数量 1.25倍・単価 1.34倍・営業利益率 39.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.9% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 52 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の EBITDA 9億円は1年前倒しで届き、新しい倉庫も2027年1月に完成する。累進配当も導入した。石炭の減りを倉庫とタンクが埋める形を、強気側の中心に置いた。
中立 38% 石炭が4分の1減り、タンクと倉庫の値上げで利益はわずかに増える 利益 3 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,644 円40 億円
石炭火力は少しずつ減り、ばら貨物の荷役量は10年で4分の1減る。1トンあたりの売上は名目1.32倍に上がるが、売上は今とほぼ同じにとどまる。ばら貨物の利益率は2%と薄い。
液体タンクは重油が減り、化学品が補う。容量の稼働はわずかに落ちるが、賃料は物価並みに上がる。倉庫は新設の分だけ広さが15%増える。
売上は約49億円、営業利益は約3億円になる。償却は今の約6.7億円から約8億円へ緩やかに増えるだけで、会計の利益は物価で少し膨らむ。一方で、クレーンやタンクの更新の費用は建築費の上昇で膨らみ、借入が増える。純利益は約3億円、ROE は3%前後と低いままだ。
- ばら貨物:数量 1,793(荷役量(千トン))× 価格 0.01(1千トンあたり売上(億円))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。数量 0.75倍・単価 1.32倍・営業利益率 2.0%
- 液体貨物(タンク):数量 125(タンク容量(千kl))× 価格 0.14(1千klあたり年間売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 5 億円。数量 0.95倍・単価 1.30倍・営業利益率 30.0%
- 物流倉庫・その他:数量 49.5(倉庫の延床(千㎡・推定))× 価格 0.17(1千㎡あたり年間売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 3 億円。数量 1.15倍・単価 1.32倍・営業利益率 38.0%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.1% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 40 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:脱炭素で石炭の荷役は減るが、タンクと倉庫は値上げが通る。過去12年の営業利益率は0〜6%で、直近が最も高い。減る石炭と、伸びる倉庫が釣り合う所を中心にした。同じ領域の名港海運とそろえた。
やや悲観 23% 石炭の荷役が半分になり、本業が赤字に近づく 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,817 円28 億円
石炭火力の休止が進み、ばら貨物の荷役量は10年で45%減る。設備と人は残るので、ばら貨物は赤字になる。
液体タンクも重油の需要が細り、稼働が1割落ちる。倉庫は少し伸びるが、全体を支えるには小さい。
売上は約39億円、営業利益はほぼゼロになる。会社の利益は持ち合い株の配当頼みになる。累進配当は続けるが、更新の投資が借入で膨らみ、自己資本の効率はさらに下がる。値段は、稼ぐ力より持ち合い株の売れる値段の側で決まる。その株も、株主に戻る見込みは小さい。新しい倉庫の借入も重くなる。岸壁と野積場の一部は、使い道を探すことになる。
- ばら貨物:数量 1,315(荷役量(千トン))× 価格 0.01(1千トンあたり売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。数量 0.55倍・単価 1.25倍・営業利益率 -2.0%
- 液体貨物(タンク):数量 119(タンク容量(千kl))× 価格 0.13(1千klあたり年間売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 4 億円。数量 0.90倍・単価 1.25倍・営業利益率 27.0%
- 物流倉庫・その他:数量 45.2(倉庫の延床(千㎡・推定))× 価格 0.16(1千㎡あたり年間売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。数量 1.05倍・単価 1.25倍・営業利益率 35.0%
倍率:稼ぐ力は持ち合い株の配当が中心で細い。売れる資産の床(floor_assets_oku)を時価総額に置き、今の自己資本81億円に対する PBR は約0.24倍。営業利益がほぼゼロのため EV÷営業利益は大きく出るが、利益の倍率では測らず床の資産で測った。10年後の減価償却費は約8億円(今の約6.7億円は取得した時の値段のまま、更新するクレーンと新しい倉庫の分だけ新しい値段で足す)。
確率:政府は効率の低い石炭火力を2030年までに減らす方針だ。最大の顧客の電源開発が石炭を絞れば、ばら貨物は半分になる。2011年3月期には営業利益率がマイナス7%まで落ちた。悲観側の中心に置いた。
悲観 12% 石炭が消え、借地の期限も迫って事業が縮む 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,001 円15 億円
石炭火力が止まり、ばら貨物の荷役量は今の3割に縮む。野積場とクレーンは使い道がなく、減損が出る。液体タンクも重油の終わりで稼働が4分の3に落ちる。
本業は赤字に沈み、利益は持ち合い株の配当だけになる。大阪市からの借地は2044年に期限を迎え、更新の条件も厳しくなる。
売上は約30億円、営業利益は赤字だ。配当は細り、値段は持ち合い株と残る設備の売れる値段まで下がる。持ち合い株は売り急げば値が崩れ、株主に戻る分はさらに少ない。配当の累進も守れなくなる。借地の上の設備は、売ろうにも買い手が限られる。最後に残るのは、持ち合い株と細い賃料だけだ。
- ばら貨物:数量 717(荷役量(千トン))× 価格 0.01(1千トンあたり売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.30倍・単価 1.10倍・営業利益率 -10.0%
- 液体貨物(タンク):数量 99.0(タンク容量(千kl))× 価格 0.12(1千klあたり年間売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 3 億円。数量 0.75倍・単価 1.15倍・営業利益率 22.0%
- 物流倉庫・その他:数量 38.7(倉庫の延床(千㎡・推定))× 価格 0.15(1千㎡あたり年間売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。数量 0.90倍・単価 1.15倍・営業利益率 30.0%
倍率:本業の稼ぐ力は無い。売れる資産の床(floor_assets_oku)をそのまま時価総額に置き、今の自己資本81億円に対する PBR は約0.19倍。持ち合い株の評価差額は帳簿に入っているが、株主に戻る分は少ない。
確率:石炭の荷役が消え、2044年の借地の期限の後も見えない展開。過去に赤字の期が2回あり、1社への依存も重い。財務の存続に疑いはないが、本業の価値がほぼ消える筋として、同じ領域の悲観(12%)に合わせた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ばら貨物
石炭・コークス・イルメナイト・塩・ソーダ灰などを船から揚げ、野積場と倉庫で保管し、はしけとトラックで運ぶ。電源開発が最大の顧客。
| 数量荷役量(千トン) | 価格1千トンあたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,390 | 0.01 | 23 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,793 | 0.01 | 23 | 0 |
取り方:売上23.12億円を、2026年3月期のばら貨物の荷役量239万トンで割った。保管料と海上運送の売上も含めた1トンあたりの平均。
液体貨物(タンク)
重油・白油・アスファルト・化学品を、45基・約13.2万klのタンクで預かり、出し入れする。
| 数量タンク容量(千kl) | 価格1千klあたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 132 | 0.11 | 14 | 4 |
| 10 年後 中立 | 125 | 0.14 | 17 | 5 |
取り方:売上13.86億円を、タンク45基の容量約13.2万klで割った。タンクの賃貸と荷役の売上を含む。
物流倉庫・その他
危険物の化学品センター、冷蔵・低温倉庫、食材の流通加工。太陽光の売電を含む。
| 数量倉庫の延床(千㎡・推定) | 価格1千㎡あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 43.0 | 0.13 | 6 | 2 |
| 10 年後 中立 | 49.5 | 0.17 | 9 | 3 |
取り方:物流倉庫5.41億円と売電0.20億円の計5.61億円を、冷蔵・低温倉庫66,238m³を約2.2万㎡、ばら貨物倉庫と化学品センターを約2.1万㎡と見た延床約4.3万㎡で割った推定。
リスクと懸念
石炭の先細り
最大の荷は石炭で、最大の顧客は電源開発だ。効率の低い石炭火力が減れば、ばら貨物の荷役量は大きく減る。人と機械は残るので、減った分はほぼそのまま赤字になる。
借地の期限
事業の用地の多くは大阪市からの借地で、期限は2044年だ。賃料の増額をめぐる訴訟もあった。更新の条件しだいで、利益と設備の価値が大きく変わる。
設備の更新費用
クレーンやタンク、倉庫の更新は、建築費と機械の値上がりで昔より高くつく。中期計画の3年で30億円を投じ、借入も増える。償却は取得した時の値段のままでも、現金は今の値段で出ていく。
台風・地震
岸壁と野積場は海に面する。2018年の台風では約2.8億円の被害が出た。大型のクレーンが壊れれば、荷役が止まる。
持ち合い株の値下がり
時価57億円の持ち合い株は、銀行や化学の会社の株が中心だ。株価が下がれば自己資本が減り、配当が減れば利益も減る。会社の利益の4割近くが、この配当に頼っている。
今後の分かれ目
- 持ち合い株の売却の額や期限を数字で示す
- 眠っていた資産が株主に戻り始める合図だ。価値に足せる分が増え、評価は大きく上がる。
- 電源開発が近くの石炭火力の休止を決める
- ばら貨物の荷が細る合図で、やや悲観の筋書きに寄る。
- 新しいばら貨物倉庫とタンクが埋まる
- 石炭の減りを補う力の表れで、やや強気の筋書きに寄る。
- 大阪市との借地の更新が早めに決まる
- 2044年以降の不安が晴れ、倍率の割引が小さくなる。
- 自社株買いを始める
- 還元の姿勢がもう一段変わった合図だ。
見ておくもの
- ばら貨物の荷役量(石炭)
- 液体タンクの稼働と賃料
- 新しい倉庫の稼働
- 持ち合い株の売却額
- 設備投資と借入の残高
- 大阪市との借地の条件
倍率と資本コストの決め方
荷役量・タンク容量・倉庫の広さと単価から利益を積み、倍率は式で置いた。ROE が k を大きく下回るので PER は1÷kの7割前後にした。今の PBR 0.5倍・PER 15倍前後には寄せていない。持ち合い株57億円は、配当を利益に残すので価値に足さず、悲観の床にだけ税後と戻り方0.5を掛けて入れた。償却は取得した時の値段のまま、更新の分だけ新しい値段で足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→12.9 倍・やや楽観 PER 10→12.9 倍・中立 PER 8.8→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本7.5% + quality 0.5% = 8.0%。名港海運(7.8%)より、石炭の先細りと借地の期限の分を少し重くした。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.75%。