結論
東洋埠頭は、川崎・鹿島・志布志など全国の港に倉庫と荷役の拠点を持つ物流会社だ。2028 年度に創業 100 周年を迎える。筆者の結論は、10 年では割高である。理由は単純で、稼ぐ力が資本コストに届いていないからだ。
自己資本の 306 億円に対し、純利益は 15 億円前後。ROE は 5% を切る。そこへ新しい倉庫の償却と金利上昇が重なり、経営三カ年計画の 235 億円の投資が回収できても、利益はほとんど増えない。
見かけの割安さには注意がいる。時価総額は自己資本の 4 割台だが、これは本業が資本コストを稼げていないことの裏返しだ。111 億円の政策保有株は、配当が利益に入っているので別に足さない。売却して借入の返済や自社株買いに回す方針が数字で出れば、評価は変わる。今はそれが無い。
筆者が注目するのは、本業の利益率が 12 年間ほぼ動いていない点だ。倉庫と荷役の事業は、値段を自分で決めにくい。物価が上がれば人件費も上がり、利益率は上がらない。この事業構造のままでは、いくら土地や株を持っていても、株主に届く稼ぎは増えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安く見えて、安くない」株の典型だ。
時価総額は自己資本の 4 割台である。しかし買う価値があるかは、会社が資本をいくらで稼がせられるかで決まる。ROE は 5% 前後、資本コストは 7.75% だ。資本コストを稼げない資本は、帳簿の額より安く評価すべきだ。
良い点は、守りの強さにある。111 億円の政策保有株、広い港湾の土地、55% の自己資本比率。事業が傾いても、すぐに行き詰まる形ではない。
悪い点は、投資を重ねて借入を増やす方向にあることだ。稼ぎが細いまま設備を足せば、利払いが利益を食う。筆者は、この資本の使い方に安全域を見いだせない。株主に戻る形(政策保有株の売却、自社株買い、借入の圧縮)が数字で示されない限り、持ち続けたいとは言えない。
逆に言えば、これらが数字で示された日に、評価は大きく変わりうる。株主として見るべきは、決算より経営の意思である。
何で稼ぐ会社か
東洋埠頭は、国内総合物流と国際物流の 2 事業からなる。2026/03 期の営業収益は 381 億円、営業利益は 15 億円だ。
国内総合物流が 329 億円で、利益の大半を稼ぐ。内訳は倉庫業 117 億円、港湾運送 86 億円、自動車運送 57 億円、その他 67 億円。倉庫業は荷主の貨物を預かって保管料と入出庫料を受け取る。港湾運送は船への積み下ろし。その他には工場構内の作業請負、通関、施設の賃貸が入る。利益率が高いのは賃貸と構内作業で、トラックは薄利だ。
国際物流は 56 億円。ロシア、カザフスタン、中国に拠点を持つ。2026/03 期は売上が 33% 伸び、営業利益が 1.6 億円に回復したが、規模はまだ小さい。
拠点は川崎、東京、東扇島、大阪、博多、鹿島、常陸那珂、志布志。川崎の土地は 16 万㎡を超える。従業員は連結で 848 人。設備投資は 2026/03 期に 34 億円で、博多と常陸那珂のクレーン付き倉庫が主な内容だった。荷主は、港に荷が集まる素材・食料・製造業の企業が中心とみられる(荷主の内訳は確かめられていない)。
優良さと弱いところ
優良さは中の下だ。事業の骨格は堅いが、儲けが薄い。
強みは立地である。港の背後に大きな土地と倉庫を持ち、同じ場所に新しく作るのは難しい。大口荷主との取引は長く、収益は読みやすい。自己資本比率は 55% で、財務に急な危うさは無い。
弱みは二つある。第一に、荷主が価格で運び先を選べるため、値決めの力が弱い。営業利益率は 12 年のうち 11 年が 5% 以下で、過去 10 年の ROE の中央値は 4.9%。第二に、設備投資が重い。償却が年 22 億円と営業利益より大きく、投資のたびに借入が増える。純有利子負債は 127 億円で、営業利益に償却を足した稼ぎの約 3.5 倍にあたる。
経営は配当に前向きだ。配当性向を 40% の目安とし、下限を設けている。ただし資本をどこで稼ぎに変えるかの答えは、投資の回収を待つしかない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
倉庫・港湾の業界は、数量が伸びない成熟市場だ。2024 年の国内港湾のコンテナ取扱量は前年比 0.9% 増にとどまる。人口が減る日本では、貿易量も内需も大きくは伸びない。
伸びるのは二つ。通販向けの倉庫と、新しい貨物(脱炭素の関連)だ。ただし通販向けの高機能倉庫は、三菱倉庫や住友倉庫などの大手と、物流不動産のファンドが先行している。東洋埠頭の倉庫は港の背後で貨物を預かる従来型が中心で、通販の波には乗りにくいと筆者は見る。
2024 年問題でトラックの運転手が足りず、運賃の水準は上がった。しかし人件費も同じ速さで上がり、薄利の運送業の利益は増えない。
新しい芽は CCS(二酸化炭素を液化して船で運ぶ事業)の港湾出荷基地だ。同社は準備に入っているが、制度と採算が固まるのは先だ。港の物流会社は、免許と立地の囲いに守られる一方、荷主の工場が海外へ移ると荷そのものが消える。
業界の再編も続いている。大手の倉庫会社は買収で規模を広げており、東洋埠頭のような中堅は、単独で投資を続けるか、提携を探るかの選択を迫られる。
資本政策と M&A
資本政策の中心は、配当性向 40% を目安とする還元と、235 億円規模の設備投資の二つだ。2026/03 期の配当性向は 39.7% で、下限を設ける方針だ。
政策保有株は 161 銘柄で 111 億円、評価益は 86 億円ある。三菱 UFJ、みずほ、豊田通商などが主だ。縮減の方針は数字で示されておらず、2026/03 期の売却は 1 億円にとどまる。
株主では太平洋セメントグループの三井埠頭とデイ・シイが合わせて 8% ほどを持つ。目的は取引関係の維持・強化とされ、公開買付けの発表は無い。TOB の確率は否定しないが、今の材料では織り込まない。
賃貸等不動産の時価は注記を確かめられず、土地の含み益は数えていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額 136 億円に対し、政策保有株が 111 億円、評価益が 86 億円ある。これだけで時価総額の 8 割がカバーされる。港の土地は川崎だけで 16 万㎡を超え、簿価は取得時の安い値段のままだ。本業の倉庫・荷役の事業は、実質ただ同然で買えることになる。
2026/03 期は営業利益が 3 割伸び、国際物流は黒字に戻った。経営三カ年計画の 235 億円の投資で、常陸那珂と博多に高機能の倉庫が立ち上がり、CCS という新しい事業も加わる。配当性向 40% と下限の設定は、株主を向いた経営の表れだ。2026/03 期の配当は前期から増え、経営が株主の目を意識し始めた証拠とも読める。
太平洋セメントグループが 8% ほどを持ち、物流の再編が進めば、買い手が現れても不思議ではない。PBR が 0.4 倍の会社は、資本政策の変化ひとつで評価が跳ね上がる。東京証券取引所が資本効率の改善を求める流れも、政策保有株の縮減と株主還元の上積みを後押しする。
慎重な見方
安く見えるのは稼ぐ力が弱いからだ。過去 10 年の ROE の中央値は 4.9%、資本コストは 7.75%。10 年以上、資本コストを稼げていない会社の帳簿は、額面より安く評価するのが筋だ。
政策保有株は配当が利益に入っており、売る方針は無い。売却実績は 1 億円。含み益は「あるかもしれない」ではなく、「使われていない」資産だ。土地の含みも、賃貸等不動産の注記を確かめられない。
償却が年 22 億円と営業利益より大きく、投資を重ねるたびに借入が増える。金利は 3.5% 前後へ上がり、利払いは利益の 3 分の 1 に達する。国際物流はロシア・カザフスタンの拠点に頼り、情勢ひとつで止まる。
買い手が現れる期待は、価格に織り込まれた噂でしかない。物流の再編が進んでも、買われるのは荷主を握る大手であって、荷主が価格で選ぶ中堅の港湾物流会社ではない。株式市場は 12 年間、この会社に自己資本の 4〜5 割の値段しか付けてこなかった。長く続く評価には、それなりの理由がある。
どちらに重みを置いたか
稼ぐ力が資本コストに届かないという慎重な見方のほうが強い。含み益と買い手への期待は、数字で示された方針が無い限り、価値に算入できない。中立の確率を 4 割とし、やや悲観と悲観を合わせて 3 割強に置いた。強気の見方が当たるのは、政策保有株の売却と借入の圧縮が実際に始まった時だ。それまでは、含み益も買い手への期待も、価値の外に置くのが筋だと筆者は見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,343 円168 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 724 円52 億円)。 今の値に割り戻すと 1,609 円115 億円、今との差 −16.1%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 4,963 円356 億円 | 1,255 円90 億円 | +224.0% | +12.5% | 373 円27 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,542 円254 億円 | 892 円64 億円 | +131.1% | +8.7% | 887 円64 億円 |
| 中立 | 40% | 2,429 円174 億円 | 725 円52 億円 | +64.3% | +5.1% | 1,261 円90 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,117 円80 億円 | 599 円43 億円 | −10.6% | −1.1% | 412 円30 億円 |
| 悲観 | 10% | 976 円70 億円 | 362 円26 億円 | −30.3% | −3.5% | 134 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,343 円168 億円 | 724 円52 億円 | +59.8% | +4.8% | 3,067 円220 億円 |
今の株価時価総額 1,919 円138 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 常陸那珂と博多の新倉庫が埋まり、CCS の出荷基地が動き、政策保有株の売却で借入が減る 利益 28 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 4,963 円356 億円
常陸那珂と博多のクレーン付き倉庫が早く埋まり、倉庫の取扱量が 10 年で 3 割伸びる。大口荷主が長期契約に移り、保管料の値上げも物価並みに通る。CCS 向けの液化 CO2 出荷基地は、公的な支援が付いて収益が出る事業になる。国際物流はカザフスタンや中国向けの案件が積み上がり、取扱量が 3 割増える。
同社は政策保有株の一部を売り、借入の返済に回す。利払いが減り、純利益は今より 4 割ほど増える。配当性向は 45% まで引き上がる。ただし償却は新しい倉庫の分だけ着実に増え、利益率の上がり幅は限られる。
この筋書きで株主にとって効くのは、事業の伸びよりも資本の使い方の変化だ。眠っている株が稼ぐ資本に変わると、同じ営業利益でも株主の取り分が増える。
- 倉庫業:数量 52.0(保管面積換算(万㎡))× 価格 3.99(万円/㎡・年(保管料と荷役料を合わせた単価))→ 売上 208 億円・営業利益 20 億円。数量 1.30 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 9.5%
- 港湾運送業:数量 624(取扱貨物量(万トン))× 価格 1.95(千円/トン)→ 売上 122 億円・営業利益 4 億円。数量 1.04 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 3.6%
- 自動車運送業:数量 450(稼働車両台数(台))× 価格 1,735(万円/台・年)→ 売上 78 億円・営業利益 2 億円。数量 1.00 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 2.2%
- 国内のその他(構内作業・施設賃貸・通関・海上運送):数量 385(請負・賃貸の契約規模(人員換算・人))× 価格 2,615(万円/人・年)→ 売上 101 億円・営業利益 9 億円。数量 1.10 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 8.5%
- 国際物流事業:数量 6.5(取扱コンテナ換算(万 TEU))× 価格 15(万円/TEU)→ 売上 99 億円・営業利益 5 億円。数量 1.30 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 356 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新倉庫の稼働、CCS 事業の受注、国際物流の回復、政策保有株の売却が同時に当たる筋書き。計画のどれかが遅れる例が多く、全部が当たる確率は低いので 6% に置いた。
やや楽観 20% 計画の倉庫と国際物流が順調に育ち、利益率が少し上がる 利益 20 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,542 円254 億円
新倉庫は計画より少し遅れて埋まり、倉庫業の取扱量は 2 割増える。港湾運送は荷主の海外移転で横ばいにとどまる。トラック輸送はドライバー不足で車を増やせず、運賃の転嫁でしのぐ。国際物流は 2026/03 期の急回復が定着し、取扱量が 2 割増える。
投資の償却が重くなるため、利益率は大きく上がらない。借入は投資のために増えるが、利払いは営業利益の範囲に収まる。配当は性向 4 割の方針どおりに続く。
国内の人口減は続くが、荷主の物流の外注化が進み、港の背後で貨物を預かる需要は底堅い。大きく崩れず、大きく伸びもしない中間の姿である。
- 倉庫業:数量 48.0(保管面積換算(万㎡))× 価格 3.96(万円/㎡・年(保管料と荷役料を合わせた単価))→ 売上 190 億円・営業利益 15 億円。数量 1.20 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 7.7%
- 港湾運送業:数量 600(取扱貨物量(万トン))× 価格 1.93(千円/トン)→ 売上 116 億円・営業利益 4 億円。数量 1.00 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 3.1%
- 自動車運送業:数量 432(稼働車両台数(台))× 価格 1,723(万円/台・年)→ 売上 74 億円・営業利益 1 億円。数量 0.96 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 1.7%
- 国内のその他(構内作業・施設賃貸・通関・海上運送):数量 368(請負・賃貸の契約規模(人員換算・人))× 価格 2,596(万円/人・年)→ 売上 95 億円・営業利益 8 億円。数量 1.05 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 7.9%
- 国際物流事業:数量 6.0(取扱コンテナ換算(万 TEU))× 価格 15(万円/TEU)→ 売上 91 億円・営業利益 3 億円。数量 1.20 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 3.6%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 254 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新倉庫の稼働と国際物流の拡大が、中計に近い形で進む筋書き。物流会社の設備投資は稼働が遅れる例が多く、強気の確率は 2 割にとどめた。
中立 40% 物価並みに売上は伸びるが、償却と利払いが利益を食い、資本の効率は低いまま 利益 14 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,429 円174 億円
国内の荷動きは人口減と荷主の海外移転で伸びない。倉庫は新設の分だけ取扱量が増え、港湾運送とトラックは数量が少し減る。価格は物価並みに上がるが、人件費・傭車費・燃料も同じ速さで上がるため、利益率の改善は限られる。
償却は古い設備の分が少しずつ終わる一方、新しい倉庫の分が足され、10 年で 21.6 億円から 27 億円前後になる(物価では増やしていない)。投資は償却を上回るので、借入は 100 億円ほど増え、利払いが営業利益の 3 分の 1 を食う。利益は今と同じ水準で横ばいに近い。
川崎などの港の土地は価値を保つが、賃貸以外は収益に結びつきにくく、含み益は帳簿の外に眠ったままである。経営が資本の使い方を変えない限り、この姿が続くとみる。
- 倉庫業:数量 44.0(保管面積換算(万㎡))× 価格 3.93(万円/㎡・年(保管料と荷役料を合わせた単価))→ 売上 173 億円・営業利益 11 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 6.3%
- 港湾運送業:数量 582(取扱貨物量(万トン))× 価格 1.92(千円/トン)→ 売上 112 億円・営業利益 3 億円。数量 0.97 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 2.6%
- 自動車運送業:数量 414(稼働車両台数(台))× 価格 1,710(万円/台・年)→ 売上 71 億円・営業利益 1 億円。数量 0.92 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 1.2%
- 国内のその他(構内作業・施設賃貸・通関・海上運送):数量 350(請負・賃貸の契約規模(人員換算・人))× 価格 2,577(万円/人・年)→ 売上 90 億円・営業利益 7 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 7.3%
- 国際物流事業:数量 5.5(取扱コンテナ換算(万 TEU))× 価格 15(万円/TEU)→ 売上 83 億円・営業利益 2 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 174 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物価並みの値上げと人件費の上昇が相殺し、利益率が過去の帯(2.8〜5.3%)の中で動く筋書き。投資の償却と利払いが増える分を、倉庫の稼働と賃貸の安定が打ち消すとみて最も重く置いた。
やや悲観 24% 人件費が運賃を上回って上がり、投資の利回りが資本コストに届かない 利益 9 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,117 円80 億円
荷主が価格で運び先を選ぶ港湾運送とトラックで、人件費の上昇を料金に移せない。営業利益率は 2% 台に下がる。新設した倉庫は埋まるのが遅く、償却だけが先に増える。
借入は 130 億円ほど増え、金利が 3.5% に上がって利払いが利益を圧迫する。配当は性向 4 割を守ろうとするが、下限の水準が重くなり、実質的な余裕は小さい。
荷主との料金交渉で転嫁が難しい分、償却費の重さがそのまま利益の薄さになり、投資の回収が遅れる。含み益のある株を売って借入を減らす判断が遅れると、利払いの負担はさらに重くなる。
- 倉庫業:数量 40.8(保管面積換算(万㎡))× 価格 3.87(万円/㎡・年(保管料と荷役料を合わせた単価))→ 売上 158 億円・営業利益 9 億円。数量 1.02 倍・価格 1.32 倍(名目)・営業利益率 5.5%
- 港湾運送業:数量 552(取扱貨物量(万トン))× 価格 1.89(千円/トン)→ 売上 104 億円・営業利益 2 億円。数量 0.92 倍・価格 1.32 倍(名目)・営業利益率 2.1%
- 自動車運送業:数量 383(稼働車両台数(台))× 価格 1,684(万円/台・年)→ 売上 64 億円・営業利益 1 億円。数量 0.85 倍・価格 1.32 倍(名目)・営業利益率 0.7%
- 国内のその他(構内作業・施設賃貸・通関・海上運送):数量 333(請負・賃貸の契約規模(人員換算・人))× 価格 2,538(万円/人・年)→ 売上 84 億円・営業利益 6 億円。数量 0.95 倍・価格 1.32 倍(名目)・営業利益率 6.9%
- 国際物流事業:数量 4.8(取扱コンテナ換算(万 TEU))× 価格 15(万円/TEU)→ 売上 71 億円・営業利益 1 億円。数量 0.95 倍・価格 1.32 倍(名目)・営業利益率 1.6%
倍率:事業の ROE は 2% 台まで下がり、PER の上限は 1÷k=11.8 倍。借入が重く利益の質が低いので、上限の約 7.6 割の 9.0 倍に置いた。
確率:人件費と傭車費の上昇が料金の転嫁を上回り、新倉庫の利回りも資本コストに届かない筋書き。2024/03 期には営業利益率が 2.8% まで下がっており、ここまで下がるのは十分ありうるので、強気側より厚く置いた。
悲観 10% 国際物流が止まり、CCS の投資が回収できず、借入の重さが残る 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 976 円70 億円
ロシア向けの国際物流が止まり、取扱量が半分になる。大口荷主の海外移転も進み、港湾運送は荷が減る。トラックは赤字になる。投資を絞って借入の増加は 60 億円にとどめるが、減った利益で利払いを賄うのがやっとになる。
配当は下限を割り、資産の売却で借入を返す局面になる。政策保有株を売り、倉庫の遊休地を手放して身を軽くする。事業としての値打ちは薄く、売れる資産が値段を決める。
荷主が離れた港の倉庫は、他の物流会社や不動産会社が引き取る価値があるかが分かれ目になり、立地が良い川崎や東京の土地は残るが、地方の施設は大きく割り引かれる。
- 倉庫業:数量 36.8(保管面積換算(万㎡))× 価格 3.76(万円/㎡・年(保管料と荷役料を合わせた単価))→ 売上 138 億円・営業利益 4 億円。数量 0.92 倍・価格 1.28 倍(名目)・営業利益率 2.5%
- 港湾運送業:数量 510(取扱貨物量(万トン))× 価格 1.83(千円/トン)→ 売上 94 億円・営業利益 1 億円。数量 0.85 倍・価格 1.28 倍(名目)・営業利益率 0.5%
- 自動車運送業:数量 338(稼働車両台数(台))× 価格 1,633(万円/台・年)→ 売上 55 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.75 倍・価格 1.28 倍(名目)・営業利益率 -1.0%
- 国内のその他(構内作業・施設賃貸・通関・海上運送):数量 315(請負・賃貸の契約規模(人員換算・人))× 価格 2,461(万円/人・年)→ 売上 78 億円・営業利益 4 億円。数量 0.90 倍・価格 1.28 倍(名目)・営業利益率 4.5%
- 国際物流事業:数量 2.5(取扱コンテナ換算(万 TEU))× 価格 14(万円/TEU)→ 売上 36 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.50 倍・価格 1.28 倍(名目)・営業利益率 -2.0%
倍率:稼ぐ力(純利益 ÷ k)はほぼゼロで値が付かない。売れる資産の税後から 10 年後の純有利子負債を引いた約 70 億円のほうが大きいので、床は売れる資産で置き(EV÷営業利益は 20 倍を超えるが、この筋書きは資産の値段で測る)、今の自己資本 306 億円に約 0.23 倍を掛けた。
確率:国際物流の拠点(ロシア・カザフスタン)が制裁や情勢で止まり、CCS 投資も回収できない複合の筋書き。政策保有株と倉庫・土地が下支えするため、会社が行き詰まる形は考えにくく、1 割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
倉庫業
荷主の貨物を預かり、保管料と入出庫料を受け取る事業。川崎・東京・鹿島・常陸那珂・志布志など港の背後に自社の倉庫と土地を持つ。
| 数量保管面積換算(万㎡) | 価格万円/㎡・年(保管料と荷役料を合わせた単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 2.94 | 117 | 6 |
| 10 年後 中立 | 44.0 | 3.93 | 173 | 11 |
取り方:有報の国内の業務別営業収益 117.4 億円(2026/03)を、保管面積換算 40 万㎡(推定。面積は未開示)で割った単価。営業利益 5.8 億円は国内総合物流の営業利益 13.3 億円を業務別に按分した推定。セグメント間の取引は全社の調整に入れた。
港湾運送業
船に貨物を積み下ろす荷役と、岸壁・上屋での取り扱い。港の岸壁と上屋での取り扱いが中心。
| 数量取扱貨物量(万トン) | 価格千円/トン | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 1.43 | 86 | 2 |
| 10 年後 中立 | 582 | 1.92 | 112 | 3 |
取り方:国内の業務別営業収益 86.0 億円(2026/03)を取扱 600 万トン(推定。トン数は未開示)で割った単価。営業利益 2.0 億円は国内の営業利益の按分推定。
自動車運送業
トラックによる配送。自社車両と傭車を組み合わせる。
| 数量稼働車両台数(台) | 価格万円/台・年 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 450 | 1,276 | 57 | 1 |
| 10 年後 中立 | 414 | 1,710 | 71 | 1 |
取り方:国内の業務別営業収益 57.4 億円(2026/03)を稼働車両 450 台相当(推定)で割った単価。営業利益 0.7 億円は按分推定で、薄利の事業。
国内のその他(構内作業・施設賃貸・通関・海上運送)
工場構内の荷役作業の請負、施設の賃貸、通関、海上運送の取次。利益率が高いのは施設賃貸と構内作業。
| 数量請負・賃貸の契約規模(人員換算・人) | 価格万円/人・年 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 350 | 1,923 | 67 | 5 |
| 10 年後 中立 | 350 | 2,577 | 90 | 7 |
取り方:国内の業務別営業収益 67.3 億円(2026/03)を、作業人員換算 350 人(推定)で割った単価。営業利益 4.8 億円は国内の営業利益の按分推定。賃貸等不動産の注記は確かめられず、賃貸の内訳は分けていない。
国際物流事業
ロシア・カザフスタン・中国などの拠点で行う国際輸送・倉庫・通関。2026/03 期は売上 33% 増、営業利益は 1.6 億円に回復した。
| 数量取扱コンテナ換算(万 TEU) | 価格万円/TEU | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.0 | 11 | 56 | 2 |
| 10 年後 中立 | 5.5 | 15 | 83 | 2 |
取り方:有報のセグメント営業収益 56.2 億円(2026/03)を、取扱 5 万 TEU 相当(推定)で割った単価。営業利益 1.6 億円は開示値。
リスクと懸念
償却と利払いが営業利益を食う
償却は年 22 億円で営業利益 15 億円を上回る。235 億円の投資で償却はさらに増え、借入は金利が 3.5% 前後へ上がる中で膨らむ。利払いは営業利益の 3 分の 1 に達し、稼ぎの薄い事業では利益がほとんど残らなくなる。
荷主の工場の海外移転
港の物流の荷は、荷主の工場の動きに左右される。国内工場が閉まれば荷そのものが消え、倉庫・荷役の稼働が落ちる。固定費が重く、数量の減少が利益を直撃する。
国際物流の地政学リスク
ロシア・カザフスタンの拠点に依存する国際物流は、制裁や決済の制約で突然止まりうる。2026/03 期の急回復はその上に乗っており、売上の 15% にあたる事業がゼロに近づく筋書きも否定できない。
CCS 事業の採算が読めない
液化 CO2 の出荷基地は制度と採算が固まっていない。投資が先行し、回収が遅れる場合は、償却と利払いだけが増える。公的な支援が付くかどうかが分かれ目になる。
政策保有株の評価と売却の遅れ
111 億円の株は市場の下落で簡単に評価益が縮む。売却して資本を稼ぐ事業に回す方針が示されなければ、価値は株主に届かない。企業統治の要請で縮減が進む可能性はあるが、時期は読めない。
今後の分かれ目
- 政策保有株の売却額が年 20 億円を超え、借入の返済か自社株買いに回された
- 含み益が初めて株主に届く形になる。強気の見方の重みを上げ、確率を楽観側に寄せる。
- 常陸那珂と博多の新倉庫が 2 年以内に満床になり、保管料が物価並みに上がった
- 投資の回収に目途が付き、中立の営業利益率が 5% 台に乗る。強気の筋書きに近づく。
- 国際物流の取扱量が半分以下に落ち、2 期連続で赤字になった
- 悲観の筋書きに近づく。売れる資産と借入の水準が値段を決める局面になる。
- 太平洋セメントグループなど特定の株主が持株比率を引き上げた
- 買収の確率を再評価する。ただし公開買付けが発表されるまでは、分析に織り込まない。
- 配当が方針の下限まで下がった
- 稼ぐ力が想定より落ちている兆候で、やや悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 政策保有株の売却額と、その使い道(借入の返済・自社株買い)
- 常陸那珂・博多の新倉庫の稼働率と保管料
- 国際物流の取扱量と営業利益(ロシア・カザフスタン関連)
- 純有利子負債と営業利益+償却の比(3.5 倍を上回るか)
- CCS 事業の制度・補助・受注の発表
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE(5% 前後)が資本コスト 7.75% を下回るため、式の上限 1÷k=11.8 倍の 7.6〜9 割に置いた。今の株価や PBR 0.4 倍は使っていない。PER と PBR の両方で割安に見えるが、これは本業が資本コストを稼げないことの表れで、価値の根拠にならない。政策保有株の含み益は配当が利益に入っているので別に足さず、土地の含みは注記を確かめられなかったので数えていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→12.9 倍・やや楽観 PER 10→12.9 倍・中立 PER 9.5→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.0% を足して 8.5%。事業は傾いていないので extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。