結論
ケイヒンは、京浜港を地盤にした中堅の物流会社だ。横浜の倉庫業から出発し、今は倉庫・通販物流・トラック輸送の「国内物流」と、荷主に代わって船や飛行機を手配する「国際物流」の二本立てである。売上は約 500 億円、営業利益は約 34 億円。筆者の結論は「やや割安」だ。通常の稼ぐ力が、今の時価総額 206 億円の 10 年先の価値を支えているからである。
稼ぎの柱は国内物流だ。営業利益率は 12% 台で、国際物流の 7% を大きく上回る。港に近い倉庫と通販向けの流通加工が土台になっている。国際物流は運賃で売上が振れるが、船も飛行機も持たないので、資産は軽い。
気になるのは資本の使い方だ。会社は 2026 年 3 月期に、港区東新橋の本社用ビルを約 118 億円で買った。時価総額の半分を超える額である。純現金から純負債 65 億円に変わったが、このビルが利益を押し上げる証拠は、今のところ見えない。今期予想の純利益 34 億円にも注意がいる。山下埠頭の移転補償金などの特別利益が約 10 億円入っており、通常の稼ぎは 25 億円前後だ。
10 年の中立は、取扱量が 1 割弱増え、料金は物価並みに上がる姿に置いた。営業利益率は 6% 台半ばで、過去の最高 6.8% を超えない。それでも ROE は資本コストに届かず、倍率は式の上限の 9 割にとどめた。だが、純資産の 6 割という今の値段は低い。会社は配当性向を段階的に引き上げる方針で、現金は余っていく。筆者は、この資本政策の改善が進むかを、いちばんの分かれ目と考えている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業は分かりやすい。港に近い倉庫と運送、荷主の物流の請負。10 年後も続く商売だ。ただし重い設備を持ち続ける割に、稼ぎは薄い。営業利益率は 7% に届かず、ROE も資本コストを下回る。
オーナー利益、つまり株主が自由にできる利益は、通常の純利益 25 億円から更新の投資を引いた額に近い。今期予想の 34 億円は特別利益を含むので、そのままは使えない。時価総額 206 億円は、その 8 倍で、純資産の 0.6 倍だ。安い。ただ、純資産の中身には、118 億円の本社ビルと 106 億円の投資有価証券が入る。前者は稼ぎを生みにくく、後者は配当だけを生む。
資本の配分が試金石になる。ビルの買収は、収益でなく安全性や社員の利便を理由に語られた。ここで資本を無駄にした経営が、配当性向の引き上げを本当に守るか。守れば、現金は余り、価値は自己資本に近づく。守れなければ、安い理由は消えない。筆者は、安全域は十分にあるが、確信は中くらいだと考える。
何で稼ぐ会社か
国内物流事業は売上 289 億円(セグメント間の内部売上を除くと約 279 億円)、営業利益 35 億円。内訳は、倉庫業が約 95 億円、流通加工業が約 69 億円、陸上運送業が約 113 億円だ。倉庫は東京・横浜・名古屋・大阪・神戸の港の近くにあり、保管と入出庫を請け負う。流通加工は、通販や衣料の荷物を検品し、値札を付け、箱詰めして出す仕事である。陸上運送は、トラックと海上コンテナの輸送、宅配が中心だ。
国際物流事業は売上 224 億円、営業利益 16 億円。国際運送取扱(荷主の代わりに船や飛行機を手配する仕事)が約 203 億円、港湾作業が約 20 億円である。運賃の差と通関などの手数料で稼ぎ、複合一貫輸送、輸出車両の海上輸送、大型機械などのプロジェクト貨物を扱う。2026 年 3 月期は海上運賃の下落と、北米向け危険物の航空貨物の減少で減収になった。
拠点は、2024 年 9 月に稼働した本牧埠頭流通センター、2025 年 5 月に開いた神戸西流通センター、川崎・東扇島の賃借倉庫などだ。横浜の山下埠頭流通センターは、横浜市の山下ふ頭再開発のため、2026 年 4 月末に移転を終えた。厚木に新しい拠点を開く予定である。
全社の費用(本社など)は約 17 億円で、2 つのセグメントの利益 51 億円から差し引かれ、営業利益は 34 億円になる。従業員は連結で 917 人。小さな会社だ。
取引先は製造業、アパレル、通販事業者、自動車関連の荷主など幅広い。物流業務を相互に委託し合うフィード・ワンは、大株主であり社外取締役の出身元でもある。長い取引関係が、倉庫と運送の稼働を支えている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、普通の水準だと筆者は見る。港に近い倉庫の立地と、港湾の許認可、通販やアパレルの荷主との長い付き合いが、強みの中身だ。一度預けた荷主は簡単には動かない。ただ、売上で数倍の三菱倉庫・住友倉庫・三井倉庫、同規模の日本トランスシティや安田倉庫と、同じ荷主を奪い合う。値段を自分で決められる立場ではない。
数字には改善の跡がある。営業利益率は 2016 年 3 月期の 3% 台から、2026 年 3 月期の 6.8% へ上がった。国内物流は、倉庫の取扱いが増えたうえ、2024 年問題を受けた運賃の見直しも進んだ。国際物流は市況に左右され、利益は薄い。
弱みは三つある。第一に、規模が小さい。取引額の大きい荷主を失えば、売上と利益に響くと、会社自身が有価証券報告書で認めている。第二に、借りた土地や建物への依存だ。解約できない賃借料の約束が 79 億円あり、本社の旧社屋も運河の護岸敷が使えなくなって退去を決めた。第三に、資本効率だ。ROE は過去 10 年の中央値で 7.4%、資本コストの 8.0% に届かない。
経営は、配当性向を段階的に引き上げる方針を示し、資本コストを意識した経営を掲げている。ただ、数値目標のある中期経営計画は確かめられなかった。それだけに、新本社へ約 118 億円を投じた判断が、どんな稼ぎにつながるかを見ていく必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の物流は、荷物の量が増えない成熟市場だ。2024 年の国内港湾のコンテナ取扱量は 2,198 万 TEU で、前年比 0.9% 増にとどまる。人口が減り、輸出入の量も大きくは伸びない。一方で、通販の拡大が倉庫の需要を支える。日本の物販のEC化率は 10% 弱で、世界平均の約 2 割とは差がある。建設費の高騰と用地の不足で、新しい倉庫は増えにくく、既存の倉庫の稼働率と料金には追い風になる。
トラック運転手の残業が規制された 2024 年問題で、運賃は引き上げの方向にある。標準的な運賃は 2024 年 3 月に約 8% 上がった。ただ、人件費も同じ速さで上がるので、転嫁できた分は利益でなく、コストの穴埋めになりやすい。
競合は、財閥系の三菱倉庫・住友倉庫・三井倉庫、陸運の大手、同規模の日本トランスシティなどだ。国際物流では、日本郵船系や近鉄系などの大手フォワーダーと、中堅専業が争う。ケイヒンの取扱量は開示がなく、売上の規模から、京浜港の国際貨物の取り扱いで 1 桁台前半の割合だと、筆者は推定する。同業の売上は数倍あり、ケイヒンは京浜の専門性で小さな領域を守る立場だ。
循環の位置は、国内が安定、国際が運賃の下落局面にある。中東情勢は、会社の予想に織り込まれていない。これが荷動きと運賃の両方を揺らす。再編では、大手がトラック業界の再編を先に進めており、倉庫と港湾の中堅にも波及しうる。
人手の不足は、国内の物流全体の制約だ。会社も、トラック運転手を中心とした慢性的な労働不足が業績に響くおそれを挙げる。自動化とAI・ロボットの導入は、人手の制約を和らげる一方、設備の投資を重くする。
資本政策と M&A
配当の方針は、配当性向を段階的に引き上げることだ。2026 年 3 月期の配当性向は 25.7%、2027 年 3 月期は普通配当に特別配当を加え、総額で約 9 億円を予定する。自社株買いは実施しておらず、自己株式は 8 千株にとどまる。10 年の還元は、この方針の延長で、性向が段階的に上がると見て置いた。
政策保有株は、上場 20 銘柄で約 93 億円。東洋水産・横浜フィナンシャルグループ・フィード・ワンなどだ。うち含み益は自己資本に入っており、配当は利益に入っているので、価値には二重に足していない。売却の方針は数字で開示されていない。大株主は京友(9.4%)、インタラクティブ・ブローカーズ(8.3%)、朝日生命、東京海上日動、フィード・ワン(相互保有)で、支配株主はいない。
最大の資本の使い道が新本社だ。2026 年 3 月期の設備投資 133 億円のうち 118 億円が、東京の不動産の取得だった。手元現金は 95 億円から 49 億円に減り、借入とリース債務は約 39 億円増えた。会社は将来の本社移転を見据えた取得と説明している。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の 20.2 億円が、10 年後に約 26 億円。物価で一律に増やすと約 29 億円になる。更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、借入になれば利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内物流は、利益率 12% 台の安定した稼ぎ頭だ。通販向けの流通加工、港に近い倉庫、医療医薬と食品の専用拠点という、荷主が動かしにくい仕事に寄せている。本牧埠頭流通センターと神戸西流通センターが稼働し、厚木にも拠点が加わる。建設費の高騰と用地不足で、競合が新しい倉庫を増やしにくい今は、既存の倉庫を持つ側の追い風だ。
国際物流は、船も飛行機も持たない身軽な事業だ。投じるお金が少ないので、運賃が戻れば利益は大きく動く。アジアで拠点を増やし、提携も視野に入れると会社は言う。
財務は堅い。自己資本比率は 56% で、純資産の 0.6 倍という値段は低い。会社は配当性向を段階的に引き上げると決めており、含み益のある有価証券と合わせて、株主に戻る額は増える。山下ふ頭の移転では補償金を受け取り、拠点の入れ替えも負担を抑えて終えた。新本社に集約すれば、旧本社の老朽化と護岸の問題も片づく。
事業の中身も、資産の重さで見ると悪くない。国内物流の営業利益は 35 億円で、全社の営業利益とほぼ同じ額だ。国際物流と全社費用を足し引きしても、国内の稼ぐ力が会社を支えている。10 年で物価が 1.3 倍になれば、港の近くに土地と建物を持つ会社の稼ぎも、名目で同じだけ伸びる。
慎重な見方
利益の質は強くない。営業利益率は 2016 年 3 月期の 3% 台から 6.8% へ上がったが、最高値のあたりだ。人手不足で人件費は物価より速く上がり、料金に転嫁しきれなければ、この利益率は保てない。国際物流は運賃の市況で決まり、国内の安定を打ち消す年がある。
資本の使い方が悪い。2026 年 3 月期に 118 億円で本社ビルを買い、現金が減って借入が増えた。時価総額の半分を超える額を、稼ぎを生まない資産に回した。これで ROE はさらに下がる。解約できない賃借料も 79 億円あり、売上が落ちても固定費が残る。
取引額の大きい荷主への依存は、会社自身が認めるリスクだ。大手の倉庫会社は売上が数倍あり、荷主の値下げ要請に耐える体力が違う。相互保有のフィード・ワンや、政策保有株の評価額は、株価の下落で自己資本を削る。数値目標のある中期計画もなく、配当性向の引き上げは約束でなく方針にとどまる。
新しい拠点も、稼ぎが保証されない。本牧と神戸西は稼働したばかりで、厚木はこれからだ。山下ふ頭の移転では補償金が出たが、これは一度きりの特別利益で、毎期の稼ぎではない。今期予想の純利益 34 億円を、そのまま稼ぐ力と見るのは誤りだ。
どちらに重みを置いたか
国内の稼ぐ力と財務の堅さ、純資産に対する値段の低さは、強気の見方が正しい。ただし、資本の使い方と荷主の集中、そして中期計画の数値目標がない点は、慎重な見方が重い。中立は、営業利益率が 6% 台半ばで定着し、ROE が資本コストに届かない筋書きに置いた。確率は中立を最も厚くし、悲観側を楽観側より少し重く寄せた。また、純資産の 0.6 倍という値段は、118 億円のビルと有価証券を含む。この資産が稼ぎを生む形に変わるかどうかで、割安の中身が変わる。中立の確率は 38% とし、慎重な見方の重さを悲観側の 25% と 12% に反映した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,076 円397 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,760 円115 億円)。 今の値に割り戻すと 4,092 円267 億円、今との差 +29.7%、 期待の年率 +9.5%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 10,944 円715 億円 | 2,726 円178 億円 | +333.3% | +15.8% | 820 円54 億円 |
| やや楽観 | 19% | 8,595 円561 億円 | 2,298 円150 億円 | +245.2% | +13.2% | 2,070 円135 億円 |
| 中立 | 38% | 7,113 円464 億円 | 1,961 円128 億円 | +187.6% | +11.1% | 3,448 円225 億円 |
| やや悲観 | 25% | 3,376 円220 億円 | 1,363 円89 億円 | +50.2% | +4.2% | 1,185 円77 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,993 円130 億円 | 613 円40 億円 | −17.4% | −1.9% | 313 円20 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,076 円397 億円 | 1,760 円115 億円 | +148.3% | +9.5% | 7,835 円512 億円 |
今の株価時価総額 3,155 円206 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 高機能物流とアジア展開が当たる 利益 51 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 10,944 円715 億円
国内の収益力が一段上がり、国際物流も伸びる筋書きだ。医療医薬・食品・アパレルの高機能物流が荷主に受け入れられ、保管料に付加価値の上乗せが乗る。厚木などの新しい拠点が早く埋まり、通販向けの流通加工は件数が増える。国際物流は、アジアの拠点づくりと代理店網の連携が当たり、複合一貫輸送とプロジェクト貨物で取扱量が3割増える。新本社に投じた資金も、集約の効果とコスト削減で早く報われる。会社は配当性向を段階的に引き上げ、10 年後には利益の半分を超えて還元する。
(名目の前提)保管料・運送料・運賃は人件費に連れて物価並みに上がる。取扱量は実質(物の動きの数)で置いた。山下ふ頭の移転で失う拠点と、本牧・神戸西・厚木の新しい拠点の増減を合わせて見た。
(自己資本の流れ)前期の純利益 25 億円から流した。2027 年 3 月期は山下埠頭の移転補償金などの特別利益(税引き後で約 10 億円)が自己資本に入る。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で 20 年に按分した。償却は今の 20.2 億円が 10 年後に約 31 億円(物価で一律に増やすと約 29 億円)。成長のための投資が大きく、10 年後の償却は物価の一律増を上回る。投資は内部資金で賄えるが、一部は借入で、利払いは年 1 億円ほど増える。
- 国内物流(倉庫・流通加工・陸上運送):数量 125(取扱量の指数(倉庫保管・流通加工・陸運を合わせた実質の物の動き。2026/03 期=100))× 価格 3.85(億円/指数 1(売上を取扱量の指数で割った実効単価))→ 売上 482 億円・営業利益 64 億円。取扱量1.25倍・価格1.38倍・利益率13.3%・償却は物価で増やさず按分(全社の10年後 31億円)
- 国際物流(国際運送取扱・航空・港湾作業):数量 130(取扱量の指数(海上・航空の貨物量。2026/03 期=100))× 価格 3.09(億円/指数 1(運賃と手数料を合わせた実効単価))→ 売上 402 億円・営業利益 30 億円。取扱量1.30倍・価格1.38倍・利益率7.5%
倍率:事業の純利益 51 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 14.01 倍、時価総額 714 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:拠点づくりが全部当たり、運賃も追い風になる必要がある。過去の営業利益率は 12 年で 6.8% が最高で、そこを大きく超える筋書きなので 6% にとどめた。
やや楽観 19% 高機能物流が緩やかに根づく 利益 43 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 8,595 円561 億円
高機能物流とアジア展開が、緩やかに成果を出す筋書きだ。国内の取扱量は 16% 増え、料金は物価に少し上乗せして上がる。医療医薬と食品の専用拠点が育ち、国内物流の営業利益率は 12% 台後半を保つ。国際物流は取扱量が 18% 増える。ただし運賃の市況で売上は大きく振れ、利益率は 7% 前後にとどまる。新本社への投資は、利益を押し上げはしないが重荷にもならない。配当性向の引き上げは進み、10 年後に 5 割を超える。
(名目の前提)保管料・運送料・運賃は人件費に連れて物価並みに上がる。取扱量は実質(物の動きの数)で置いた。山下ふ頭の移転で失う拠点と、本牧・神戸西・厚木の新しい拠点の増減を合わせて見た。
(自己資本の流れ)前期の純利益 25 億円から流した。2027 年 3 月期は山下埠頭の移転補償金などの特別利益(税引き後で約 10 億円)が自己資本に入る。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で 20 年に按分した。償却は今の 20.2 億円が 10 年後に約 28 億円(物価で一律に増やすと約 29 億円)。成長投資は内部資金でほぼ賄い、借入は減る。
- 国内物流(倉庫・流通加工・陸上運送):数量 116(取扱量の指数(倉庫保管・流通加工・陸運を合わせた実質の物の動き。2026/03 期=100))× 価格 3.80(億円/指数 1(売上を取扱量の指数で割った実効単価))→ 売上 440 億円・営業利益 56 億円。取扱量1.16倍・価格1.36倍・利益率12.7%・償却は物価で増やさず按分(全社の10年後 28億円)
- 国際物流(国際運送取扱・航空・港湾作業):数量 118(取扱量の指数(海上・航空の貨物量。2026/03 期=100))× 価格 3.05(億円/指数 1(運賃と手数料を合わせた実効単価))→ 売上 359 億円・営業利益 25 億円。取扱量1.18倍・価格1.36倍・利益率7.0%
倍率:事業の純利益 43 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.05 倍、時価総額 561 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:医療・食品などの専用拠点とアジア展開が、計画の線で進む筋書き。会社に数値目標の中計が無く、成果の証拠が薄いので 2 割弱に抑えた。
中立 38% 中立:国内は堅く、国際は薄利のまま定着 利益 36 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 7,113 円464 億円
国内は堅く、国際は薄利のまま、会社全体の営業利益率が 6% 台半ばで定着する筋書きだ。国内物流の取扱量は 8% 増える。通販と医療・食品の専用拠点が育つ一方、山下ふ頭など港の再開発で拠点を動かす負担が残る。料金は物価並みに上がり、人件費の上昇と相殺される。国際物流は取扱量が 8% 増え、利益率は 6.6% だ。全社費用は物価並みに増える。会社は配当性向を段階的に引き上げ、10 年後に 5 割に近づく。それでも内部資金が余り、借入を返して 10 年後は純現金になる。
(名目の前提)保管料・運送料・運賃は人件費に連れて物価並みに上がる。取扱量は実質(物の動きの数)で置いた。山下ふ頭の移転で失う拠点と、本牧・神戸西・厚木の新しい拠点の増減を合わせて見た。
(自己資本の流れ)前期の純利益 25 億円から流した。2027 年 3 月期は山下埠頭の移転補償金などの特別利益(税引き後で約 10 億円)が自己資本に入る。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で 20 年に按分した。償却は今の 20.2 億円が 10 年後に約 26 億円(物価で一律に増やすと約 29 億円)。営業利益は +14 億円。投資は内部の資金で賄え、借入は返せる。物価で一律に増やすより償却が少ないぶん、会計の利益は見かけ上ふくらむが、更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、現金は細る。
- 国内物流(倉庫・流通加工・陸上運送):数量 108(取扱量の指数(倉庫保管・流通加工・陸運を合わせた実質の物の動き。2026/03 期=100))× 価格 3.74(億円/指数 1(売上を取扱量の指数で割った実効単価))→ 売上 404 億円・営業利益 49 億円。取扱量1.08倍・価格1.34倍・利益率12.1%・償却は物価で増やさず按分(全社の10年後 26億円)
- 国際物流(国際運送取扱・航空・港湾作業):数量 108(取扱量の指数(海上・航空の貨物量。2026/03 期=100))× 価格 3.00(億円/指数 1(運賃と手数料を合わせた実効単価))→ 売上 324 億円・営業利益 21 億円。取扱量1.08倍・価格1.34倍・利益率6.6%
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 464 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの中心値(保管需要は年 1〜2%、価格は物価並み)に、国内の収益力が保たれ国際が薄利のまま続く形を重ねた中心の筋書き。最も厚くした。
やや悲観 25% 荷主の合理化と人手不足で利益率が削られる 利益 22 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 3,376 円220 億円
荷主の合理化と人手不足で、国内の利益率が削られる筋書きだ。国内の取扱量は 2% 減り、料金は荷主の値下げ要請で物価に届かない。大口荷主の一部が物流を自社に戻すか、大手の倉庫会社に移る。国際物流は取扱量が 5% 減り、運賃の下落と競争で利益率は 5% 台に落ちる。全社費用は物価並みに増えるので、営業利益は今より 2 割ほど少ない。新本社に投じた 118 億円は、収益を生まない重荷として残る。配当性向の引き上げは続くが、利益が減るので還元の額は伸びない。
(名目の前提)保管料・運送料・運賃は人件費に連れて物価並みに上がる。取扱量は実質(物の動きの数)で置いた。山下ふ頭の移転で失う拠点と、本牧・神戸西・厚木の新しい拠点の増減を合わせて見た。
(自己資本の流れ)前期の純利益 25 億円から流した。2027 年 3 月期は山下埠頭の移転補償金などの特別利益(税引き後で約 10 億円)が自己資本に入る。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で 20 年に按分した。償却は今の 20.2 億円が 10 年後に約 24 億円(物価で一律に増やすと約 29 億円)。投資を絞り、借入は返済に回る。
- 国内物流(倉庫・流通加工・陸上運送):数量 98.0(取扱量の指数(倉庫保管・流通加工・陸運を合わせた実質の物の動き。2026/03 期=100))× 価格 3.63(億円/指数 1(売上を取扱量の指数で割った実効単価))→ 売上 356 億円・営業利益 36 億円。取扱量0.98倍・価格1.30倍・利益率10.0%・償却は物価で増やさず按分(全社の10年後 24億円)
- 国際物流(国際運送取扱・航空・港湾作業):数量 95.0(取扱量の指数(海上・航空の貨物量。2026/03 期=100))× 価格 2.87(億円/指数 1(運賃と手数料を合わせた実効単価))→ 売上 272 億円・営業利益 14 億円。取扱量0.95倍・価格1.28倍・利益率5.3%
倍率:事業の ROE 4.5% は資本コスト 7.75% 以下。新しく投じるお金が価値を増やさないので、PER の上限は 1÷k=12.5 倍。利益が減り投資の稼ぎも細る筋書きなので、上限の約 7 割の 9.0 倍に置いた。余り資産は立てていない(政策保有株の配当は純利益に入っている)。
確率:大口荷主への依存、人手不足、新本社に投じた資金の稼ぎの無さ、という慎重な見方が強い。強気の見方より少し厚く、4 分の 1 に置いた。
悲観 12% 大口荷主の撤退と港の再編で拠点が空く 利益 7 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,993 円130 億円
構造的な負けの筋書きだ。大口荷主の撤退と港の再編で、京浜の拠点の稼働が落ち、国内の取扱量は15%減る。料金は荷主の値下げ要請で、物価に大きく届かない。倉庫の賃料や借り入れた土地の使用料、新本社の費用は売上が落ちても減らず、利益率は国内で 7%、国際で 3% 台に沈む。国際物流は、運賃の下落と大手フォワーダーへの荷の集約で、取扱量が2割減る。新本社の 118 億円と一部の拠点は収益を生まず、減損も出る。配当は最低限まで絞られる。
(名目の前提)保管料・運送料・運賃は人件費に連れて物価並みに上がる。取扱量は実質(物の動きの数)で置いた。山下ふ頭の移転で失う拠点と、本牧・神戸西・厚木の新しい拠点の増減を合わせて見た。
(自己資本の流れ)前期の純利益 25 億円から流した。2027 年 3 月期は山下埠頭の移転補償金などの特別利益(税引き後で約 10 億円)が自己資本に入る。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で 20 年に按分した。償却は今の 20.2 億円が 10 年後に約 21 億円(物価で一律に増やすと約 29 億円)。借入を返して投資を絞るが、減損で自己資本は下に外れる。
- 国内物流(倉庫・流通加工・陸上運送):数量 85.0(取扱量の指数(倉庫保管・流通加工・陸運を合わせた実質の物の動き。2026/03 期=100))× 価格 3.41(億円/指数 1(売上を取扱量の指数で割った実効単価))→ 売上 290 億円・営業利益 20 億円。取扱量0.85倍・価格1.22倍・利益率7.0%・償却は物価で増やさず按分(全社の10年後 21億円)
- 国際物流(国際運送取扱・航空・港湾作業):数量 80.0(取扱量の指数(海上・航空の貨物量。2026/03 期=100))× 価格 2.57(億円/指数 1(運賃と手数料を合わせた実効単価))→ 売上 206 億円・営業利益 7 億円。取扱量0.80倍・価格1.15倍・利益率3.6%
倍率:床は今の自己資本に 0.385 を掛けた。稼ぐ力(純利益 7 億円 ÷ k 7.75%)は約 88 億円と低く、EV(時価総額+純有利子負債)÷ 営業利益も今の値で 39 倍と高く見えるが、これは営業利益が谷まで落ちた筋書きに、今の純負債 65 億円をそのまま足したためだ。10 年後は借入を返して純現金に近く、EV で見ても割高にはならない。そもそも、売れる資産の税後の 135 億円(floor_assets_oku)が下を支える。清算されない限り少数株主には現金の使い方を決められないので、床の 0.96 倍に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.385 倍・時価総額 130 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:港の再編や大口荷主の撤退が重なり、固定費だけが残る筋書き。1 割強に置いた。純資産と有価証券の厚みがあるので、倒産に近い形までは置かない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内物流(倉庫・流通加工・陸上運送)
東京・横浜・名古屋・大阪・神戸の港の近くの倉庫での保管と入出庫、通販・衣料の流通加工、トラックと海上コンテナの輸送、宅配。
| 数量取扱量の指数(倉庫保管・流通加工・陸運を合わせた実質の物の動き。2026/03 期=100) | 価格億円/指数 1(売上を取扱量の指数で割った実効単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 2.79 | 279 | 35 |
| 10 年後 中立 | 108 | 3.74 | 404 | 49 |
取り方:国内物流の売上 289.46 億円からセグメント間の内部売上 10.28 億円を引いた 279.18 億円を、取扱量の指数 100 で割った実効単価(取扱量は開示がなく、筆者の推定で指数にした)。営業利益 34.88 億円は有報のセグメント利益。取扱量は新拠点の分だけ増え、山下ふ頭など動かす拠点の分で減る。価格は人件費に連れて物価並み。
国際物流(国際運送取扱・航空・港湾作業)
荷主に代わって船や飛行機を手配する国際運送取扱、航空貨物、通関、港湾作業、船舶代理店。
| 数量取扱量の指数(海上・航空の貨物量。2026/03 期=100) | 価格億円/指数 1(運賃と手数料を合わせた実効単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 2.24 | 224 | 16 |
| 10 年後 中立 | 108 | 3.00 | 324 | 21 |
取り方:国際物流の売上 223.91 億円を、取扱量の指数 100 で割った実効単価(取扱量は開示がなく、筆者の推定)。営業利益 16.00 億円は有報のセグメント利益。海上運賃を含むので、価格は市況で振れる。2026 年 3 月期は運賃の下落で減収だった。
リスクと懸念
取引額の大きい荷主の撤退
会社自身が、取引額の大きい荷主との取引が止まるか大きく縮めば、売上と利益に響くと認めている。荷主の物流の合理化や、大手倉庫会社への切り替えが重なれば、倉庫と運送の稼働が同時に落ちる。規模が小さい分、1 社の影響が大きい。大手との価格競争や、荷主の物流の合理化も同じ方向に作用する。この会社は規模が小さく、1 社の影響を吸収する余地が小さい。
新本社に投じた資本の稼ぎ
2026 年 3 月期に東京の不動産を約 118 億円で取得した。時価総額の半分を超える額だ。利益を生む使い方でなければ、ROE がさらに下がる。賃貸等不動産の時価は簿価をわずかに上回るだけで、含み益の下支えは薄い。投資の稼ぎは、集約によるコスト削減の実績で確かめるしかない。旧本社の費用がどれだけ減るかも、まだ開示されていない。
国際物流の運賃と荷動き
国際物流は売上の 44% を占め、運賃と荷動きで利益が振れる。2026 年 3 月期は海上運賃の下落と北米向け危険物の航空貨物の減少で減収減益だった。中東情勢は会社の予想に織り込まれていない。運賃が戻らない年は、国際物流の 7% 前後の利益率がさらに薄くなる。国内の安定を打ち消す年がありうる。
人手不足と人件費の上昇
運転手と倉庫作業員が足りず、賃金は物価を上回って上がりうる。料金の転嫁が荷主に受け入れられなければ、国内物流の営業利益率 12% は保てない。全社費用も物価で増える。対応は、荷主との契約更新で料金に乗せるか、自動化で作業を減らすかの二つしかない。後者は設備投資を重くする。
固定の約束と新リース会計
解約できない賃借料の約束は 79 億円で、売上が落ちても減らない。2028 年 3 月期からの新リース会計で、貸借対照表の形が変わり、純有利子負債と自己資本比率は見かけほど強いとは考えられない。10 年国債 3% の世界では、借り換えのたびに利払いが増える。固定費の重さは、悲観の筋書きで利益率をさらに押し下げる。
港の再開発と拠点の移転
山下ふ頭の再開発で、拠点の移転と解体の費用が出た。2027 年 3 月期は補償金などの特別利益 19 億円と、解体の特別損失 4 億円が入る。今後も港の再編で拠点の移転を迫られうる。会社は拠点の最適化を進めるが、移転のたびに立ち上げの費用と稼働の空白が生じうる。補償金は一度きりで、毎期の稼ぎではない。
政策保有株と相互保有
上場株式は約 93 億円で、自己資本の 3 割近い。株価が下がれば自己資本が削られる。相互保有のフィード・ワンは社外取締役の出身元でもあり、ガバナンスの見方が分かれうる。含み益は自己資本に入っており、配当は利益に入っているので、価値には二重に足していない。ただし下落は、悲観の床を直接削る。
今後の分かれ目
- 新本社の移転が終わり、旧本社の費用が減り、ビルの稼ぎの説明が出たら
- 資本の使い方への不安が和らぐ。楽観側へ確率を移してよい。
- 配当性向の引き上げが、数値目標つきで示されたら
- 余った現金が株主に戻る確かさが上がる。中立の還元を厚くして考える。
- 国内物流の営業利益率が 13% を超えて定着したら
- 料金の転嫁が人件費を上回った証拠になる。中立の利益率を上げて考える。
- 大口荷主が取引を縮めると公表したら
- 悲観側の筋書きに重みを移す。倉庫と運送が同時に落ちる兆しとして扱う。
- 海上運賃と航空貨物が回復しないまま、国際物流の利益が 10 億円を割ったら
- やや悲観側へ確率を移す。国際の利益率の置き方を見直す。
- 他社が公開買付けを持ちかけたら
- 支配株主はいないので、決めるのは大株主の保険会社や銀行だ。買付けの値段を利益ベースの価値と比べる。
見ておくもの
- 国内物流の営業利益率(12% 台を保てるか)と全社費用の伸び
- 新本社の移転と、旧本社・賃貸等不動産の収益の説明
- 配当性向の引き上げの進み方と、数値目標のある中期経営計画の公表
- 海上運賃・航空貨物の取扱いと、国際物流の営業利益
- 取引額の大きい荷主の動向と、厚木・本牧・神戸西の稼働
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から筋書きを作らず、国内物流と国際物流の取扱量の指数(筆者の推定)と名目の単価から営業利益を積んだ。資本コストは 7.75%(基本 7.5% に循環と値決め力の+0.5%)。中立は ROE が約 7% で k を下回るので、正当化 PER の上限は 1÷k=12.5 倍とし、その 9 割弱の 11.0 倍に置いた。今期予想の純利益 34 億円は特別利益の約 10 億円を含むので使わず、通常の 25 億円から流した。新リース会計基準(2028 年 3 月期)で貸借対照表の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(賃借料を営業費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.8→14.01 倍・やや楽観 PER 11.5→13.05 倍・中立 PER 11→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.5% を足した 8.0%。事業は傾いていないので上乗せは置かない。同じ領域の三井倉庫ホールディングス・住友倉庫・日本トランスシティと同水準で、借金が軽く値決め力が弱い分、三菱倉庫より少し高い。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.75%。