株譜
AI 銘柄分析 · 倉庫・運輸関連業 · 試作

東京汽船 9193

東京湾の大型船を押し引きする曳船の老舗。手元の現金が時価総額に迫るが、本業はほぼ稼がず、値段はおおむね妥当

適正
  1. 割安
  2. やや割安
  3. 適正
  4. やや割高
  5. 割高
本質価値(今の値)811 円81 億円10 年の 5 つの筋書きから
今の株価今の時価総額(2026-10-22)852 円85 億円差 −4.8%
10 年後から見ると 適正 価値 811 円81 億円 · 差 −4.8% · 期待の年率 +6.7%
期待の年率リターン(10 年)+6.7%資本コスト比 −1.5 pt
推定の資本コスト8.3%期待の年率と比べる目安

期待の年率=今の値段で買い、5 つの筋書きを確率で加重した株価と配当を受け取った時の年率(配当込み)。資本コストより上なら緑、下なら赤。

投資の助言ではありません。AI(Claude)が公開情報から書いた推定で、誤りを含むことがあります。 前提は全社共通(物価 年 3%・10 年国債 3%・ドル円 150 円が 10 年続く)。「本質価値」は 5 つの筋書きの株価と配当を確率で加重し、資本コスト 8.3% で今の値に割り戻したものです。

時価総額で見ると株式分割に関係なく比べられます

結論

東京汽船は、東京湾に入る大型船を岸壁に押し付けたり引き出したりする曳船、つまりタグボートの最大手だ。筆者の結論は、今の値段はおおむね妥当というものだ。現金はたっぷりあるが、本業の稼ぎは細く、その現金が株主に戻る保証もない。

2026 年 3 月期は土地と船の売却で 80 億円の利益が出た。手元の純現金は 80 億円前後あり、今の時価総額にほぼ並ぶ。数字だけ見れば、本業をただで買えるように見える。

だが本業は苦しい。東京湾に入る船の数は伸びず、会社自身が大きく増える要因は無いと書く。2025 年に料金を上げてようやく黒字に戻ったが、2027 年 3 月期は中東の混乱で原油タンカーが来なくなり、営業赤字の予想だ。

曳船は港に欠かせない仕事で、なくなることはない。それでも、船を造り替える値段は上がり続け、その分を料金に乗せられなければ利益は残らない。現金の使い道を会社が示すまで、筆者は現金を割り引いて数える。

バリュー投資の観点から

バリュー投資の観点では、この会社は「欠かせない仕事をしているが、稼ぎを株主に残さない会社」だ。

東京湾の曳船は、港がある限り要る。その意味で事業は長く続く。だが、船を造り替える値段は上がり続け、その分を料金に乗せきれなければ、オーナーの取り分は残らない。過去 10 年、この会社の稼ぎは資本コストに届かなかった。

現金の厚さは安全域に見える。だが、その現金を自社株買いや特別配当で返すか、事業再編や新しい船に使うかは経営陣が決める。資本コストを下回る事業に再投資されれば、現金の価値は目減りする。筆者は、帳簿の現金を額面のままでは数えない。

今の値段は、本業の弱さと現金の厚さをおおむね釣り合わせている。料金の見直しが定着し、現金の使い道が株主に向けば、評価は上がる。逆に、現金が筋の悪い買収に消えれば、今の値段でも高い。

何で稼ぐ会社か

稼ぎの柱は曳船だ。大型のコンテナ船やタンカーは、狭い港の中では自分で向きを変えられない。曳船が数隻がかりで押し引きして、岸壁に着けたり離したりする。東京、横浜・川崎、横須賀、千葉の各港で、子会社と合わせて 35 隻ほどを動かす。売上 95 億円のほとんどは、船が 1 回入出港するごとに受け取る作業料だ。危険物を積んだタンカーには、湾内を護衛するエスコート作業も付く。

二つ目は海事関連の事業で、洋上風力発電所に作業員を運ぶ交通船、いわゆる CTV が中心だ。富山県の入善沖や北九州の響灘で船を出す。2026 年 3 月期は響灘の建設工事で売上が倍になったが、工事が終わり、今は保守の仕事だけになった。

三つ目は旅客船だ。久里浜と金谷を結ぶ東京湾フェリーを運航する。横浜港の観光船は 2025 年に持分法の関連会社へ移した。

このほか、持分法の関連会社 8 社からの利益と、持ち合いの株の配当が営業外に入る。本業の営業利益が細い年も、この営業外の収入が経常利益を支えてきた。本業と営業外が半々で稼ぐ、珍しい形の会社だ。

優良さと弱いところ

堀、つまり他社がまねできない強みは、東京湾という場所にある。曳船は船と乗組員をそろえ、港の事情を知り抜いた者でなければ務まらない。東京湾で長く仕事をしてきた会社に、新しく入る会社はまず無い。

ただ、その堀は利益の厚さにつながっていない。船の数が増えない港で、作業料は長く据え置かれてきた。2020 年から 2 年続けて営業赤字を出し、2025 年 5 月にようやく料金を上げた。値段を決める力はあるが、使うのが遅かった。

費用の多くは船と乗組員で、動いても止まっても出ていく。入港する船が 1 割減れば、利益はすぐに消える。運航の定員を減らす交渉を海員組合と進めているのは、この固定費を軽くするためだ。

資本効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は 2.9% で、資本コストに遠く届かない。現金と持ち合いの株、関連会社の株に資本の半分近くが眠っている。

業界はいまどこにいて、どこへ向かうか

曳船の需要は、港に入る大型船の数で決まる。日本の貿易量はほぼ横ばいで、東京湾の入出港数も近年は低迷している。コンテナ船は大型化して隻数が減り、1 隻あたりの作業は重くなるが、回数は増えない。

10 年でいちばん効くのは、脱炭素とエネルギーの構造の変化だ。原油や石炭を運ぶ船は減っていく。千葉や横浜の製油所、発電所に向かうタンカーが減れば、エスコート作業も減る。一方で、LNG やアンモニア、水素を運ぶ船は増える。危険物を運ぶ船ほど、曳船と護衛の作業が手厚くなる。

洋上風力は伸びしろだ。政府は 2040 年に向けて発電所の大量の建設を掲げており、作業員を運ぶ船の需要も育つ。ただ、2025 年には大手の商社が秋田と千葉の沖の計画から撤退し、案件の進み方は読みにくい。

費用の側では、船の建造費と燃料費、乗組員の人件費が上がる。曳船の会社は少なく、港ごとにすみ分けが進んでいる。値上げは通りやすいが、荷主と船会社の目は厳しい。業界の再編も、港の中の小さな会社を束ねる形で進むだろう。東京湾では、東京汽船がその束ね役になれる位置にいる。

資本政策と M&A

還元は配当だけで、年 1 回払う。配当の総額は 2026 年 3 月期が 5 億円、2027 年 3 月期は本業の赤字で 3 億円に減らす予想だ。自社株買いはしていない。

大きいのは現金の扱いだ。土地と船の売却で手元の現金は 100 億円を超え、税を払った後の純現金は 80 億円前後ある。会社はこの資金を成長投資とグループの事業再編に充てると書き、株主に返すとは言っていない。

大株主は個人の齊藤宏之氏が 17%、商船三井が 11% で、京急、共栄火災、東海汽船、地銀などの取引先が並ぶ。親会社は無く、持ち合いの色が濃い。外からの買収は起きにくいが、現金の厚さに目を付けた株主が還元を求める余地はある。

強気の見方と慎重な見方

強気の見方

今の時価総額は、純現金と持ち合いの株を足した額とほぼ同じだ。東京湾の曳船の事業を、ほぼただで手に入れられる。

曳船は代わりのいない仕事だ。2025 年の料金の値上げは、すべての地区で売上を押し上げた。運航の定員を減らす交渉が進めば、固定費も軽くなる。中東の混乱で原油タンカーが止まったのは一時の出来事で、いずれ戻る。

脱炭素は脅威だけではない。LNG やアンモニアを運ぶ船は、危険物の護衛の作業を必要とする。洋上風力の作業船も、全国で発電所が建てば需要が増える。東京汽船は入善と響灘で実績を積んでおり、先に場所を取れる。

売却益で得た現金は、新しい船と事業の再編に回る。古い船を高く売り、新しい船に入れ替える流れは、資産を若返らせる。現金に目を付けた株主が還元を求めれば、株価の見直しも起きる。

持分法の関連会社と持ち合いの株も、毎年 2 億円前後の稼ぎを生む。本業が細い年も、会社全体が赤字に沈むことは少ない。

慎重な見方

現金は厚いが、株主のものになるとは限らない。会社は売却益を成長投資と事業再編に使うと言い、自社株買いには触れていない。資本コストを下回る事業に回れば、現金は目減りする。

本業は弱い。過去 10 年の ROE の中央値は 2.9% で、2020 年からの 2 年は営業赤字だった。2027 年 3 月期も営業赤字の予想だ。東京湾の入出港数は伸びず、会社自身が大きく増える要因は無いと書く。

費用は上がる一方だ。新しい曳船の建造費は昔の船の倍近い。古い船を造り替えるたびに減価償却が増え、料金を上げ続けないと利益は残らない。燃料費と人件費も上がる。

洋上風力は当てにしにくい。響灘の建設が終わって CTV の売上は半減し、大手の撤退で全国の案件の進み方も読めない。フェリーも赤字が続く。

現金と株の厚さは、裏を返せば資本の使い方の下手さだ。稼がない資産を長く抱えてきた会社が、急に株主の方を向くとは考えにくい。

どちらに重みを置いたか

現金の厚さは本物だが、株主に戻る道筋が見えない。本業は代わりのいない仕事でも、稼ぎは資本コストに届かない。料金の見直しで曳船が持ち直す筋を中立に置き、現金は戻り方を割り引いて数えた。楽観と悲観の言い分はほぼ拮抗しており、確率は真ん中を厚くした。2027 年 3 月期の赤字の予想は中東の混乱による一時の要因が大きく、10 年の姿の中心には置いていない。

10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)

確率で加重した株価時価総額 1,297 円129 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 334 円33 億円)。 今の値に割り戻すと 811 円81 億円、今との差 −4.8%、 期待の年率 +6.7%(資本コスト 8.3%)→ 適正

筋書き確率10 年後の株価時価総額配当の合計還元の合計配当+自社株買い トータルリターン10 年・配当込み年率確率 × (株価+配当時価総額+還元)
楽観 10% 2,250 円224 億円 502 円50 億円 +223.0% +12.4% 275 円27 億円
やや楽観 22% 1,786 円178 億円 402 円40 億円 +156.8% +9.9% 481 円48 億円
中立 36% 1,372 円137 億円 352 円35 億円 +102.4% +7.3% 621 円62 億円
やや悲観 20% 623 円62 億円 251 円25 億円 +2.6% +0.3% 175 円17 億円
悲観 12% 501 円50 億円 151 円15 億円 −23.5% −2.6% 78 円8 億円
加重平均100% 1,297 円129 億円334 円33 億円 +91.4% +6.7% 1,630 円162 億円

今の株価時価総額 852 円85 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。

楽観 10% 楽観:料金の見直しが定着し、洋上風力の船も育つ 利益 16 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,250 円224 億円

曳船の料金は物価を上回って上がり続け、運航の定員の削減も進む。中東の混乱は収まり、LNG やアンモニアの船が増えて、危険物の護衛の作業が厚くなる。曳船の利益率は 8% に上がる。

洋上風力は全国で発電所の建設が進み、CTV は 10 隻に増える。保守の仕事は長い契約で安定し、利益率は 7% に届く。フェリーも値上げが定着して黒字に戻る。

本業の営業利益は 15 億円台になり、持分法の関連会社と現金の利息が上乗せされる。配当は増え、現金の一部は新しい船に回る。それでも事業の ROE は資本コストに届かず、現金の使い道が株主の取り分を左右する。

  • 曳船:数量 36.0(運航する曳船の隻数(隻))× 価格 3.86(1 隻あたりの売上(億円))→ 売上 139 億円・営業利益 11 億円。隻数 1.03 倍、1 隻あたり 1.42 倍
  • 海事関連(洋上風力の交通船ほか):数量 10.0(運航する CTV の隻数(隻、推定))× 価格 5.41(1 隻あたりの売上(億円))→ 売上 54 億円・営業利益 4 億円。隻数 2 倍、1 隻あたり 1.38 倍
  • 旅客船(東京湾フェリー):数量 2.0(運航するフェリーの隻数(隻))× 価格 12(1 隻あたりの売上(億円))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。値上げで黒字

倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 224 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:料金の見直しと定員の削減が進み、洋上風力の案件も全国で動く筋書き。2025 年の値上げはすべての地区で通った実績があるが、洋上風力は大手の撤退もあり 1 割に置いた。

やや楽観 22% やや楽観:曳船が持ち直し、洋上風力も少しずつ伸びる 利益 12 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,786 円178 億円

東京湾の入出港数はほぼ横ばいで、中東の混乱が収まると原油タンカーも戻る。料金は物価に合わせて見直され、定員の削減も一部で進む。曳船の利益率は 6.5% に上がる。

洋上風力は案件が少しずつ動き、CTV は 8 隻に増える。保守の仕事で利益率は 5% を保つ。フェリーは損益ゼロにとどまる。

本業の営業利益は 10 億円台になる。持分法の関連会社の利益と現金の利息を合わせ、純利益は 12 億円前後だ。配当は少しずつ増えるが、現金の大半は新しい船と事業の再編に回る。事業の ROE は 4% 台で、資本コストには届かない。

  • 曳船:数量 35.0(運航する曳船の隻数(隻))× 価格 3.75(1 隻あたりの売上(億円))→ 売上 131 億円・営業利益 9 億円。隻数そのまま、1 隻あたり 1.38 倍
  • 海事関連(洋上風力の交通船ほか):数量 8.0(運航する CTV の隻数(隻、推定))× 価格 5.33(1 隻あたりの売上(億円))→ 売上 43 億円・営業利益 2 億円。隻数 1.6 倍、1 隻あたり 1.36 倍
  • 旅客船(東京湾フェリー):数量 2.0(運航するフェリーの隻数(隻))× 価格 11(1 隻あたりの売上(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。損益ゼロ

倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 178 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:料金の見直しが定着し、入港数が横ばいを保つ筋書き。2025 年の値上げの効果が 2026 年 3 月期に出た実績があり、2 割強に置いた。

中立 36% 中立:曳船は値上げで踏みとどまり、現金は眠る 利益 8 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,372 円137 億円

東京湾の入出港数は 10 年でわずかに減り、曳船は 33 隻に絞られる。原油タンカーの減少を、LNG などの新しい燃料の船が一部埋める。料金は物価並みに見直され、船の造り替えで増える償却を吸収して、利益率は 5% を保つ。

洋上風力の案件はゆっくり進み、CTV は 6 隻になる。利益率は 3% にとどまる。フェリーは赤字が続く。

本業の営業利益は 6 億円台で、持分法の利益と現金の利息を合わせて純利益は 8 億円台になる。配当は年 3〜4 億円を続ける。現金は事業の再編と新しい船に少しずつ使われ、株主には大きく戻らない。

  • 曳船:数量 33.0(運航する曳船の隻数(隻))× 価格 3.64(1 隻あたりの売上(億円))→ 売上 120 億円・営業利益 6 億円。隻数 0.94 倍、1 隻あたり 1.34 倍
  • 海事関連(洋上風力の交通船ほか):数量 6.0(運航する CTV の隻数(隻、推定))× 価格 5.25(1 隻あたりの売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。隻数 1.2 倍、1 隻あたり 1.34 倍
  • 旅客船(東京湾フェリー):数量 2.0(運航するフェリーの隻数(隻))× 価格 11(1 隻あたりの売上(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。赤字が続く

倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.3% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 137 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。

確率:入港数が少しずつ減り、値上げで利益をなんとか保つ姿。どちらの見方にも決め手が無く、業界の向きに沿った姿として一番厚くした。

やや悲観 20% やや悲観:タンカーが減り、本業はほぼ稼がない 利益 3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 623 円62 億円

脱炭素で原油と石炭の船が減り、東京湾の入出港数は 1 割以上落ちる。曳船は 30 隻に減らすが、新しい船の償却は重く、料金の見直しも物価に届かない。利益率は 2% に下がる。

洋上風力は案件が遅れ、CTV は 4 隻に減って赤字になる。フェリーも赤字が広がる。

本業はほぼ稼がず、持分法の利益と現金の利息で純利益は 3 億円台にとどまる。配当は年 2〜3 億円に細る。現金は赤字の穴埋めと船の更新で少しずつ減り、事業の再編に使った分も実を結ばない。

会社は港に欠かせない仕事を続けるが、株主の取り分は、今の現金の一部と細い配当だけになる。

  • 曳船:数量 30.0(運航する曳船の隻数(隻))× 価格 3.40(1 隻あたりの売上(億円))→ 売上 102 億円・営業利益 2 億円。隻数 0.86 倍、1 隻あたり 1.25 倍
  • 海事関連(洋上風力の交通船ほか):数量 4.0(運航する CTV の隻数(隻、推定))× 価格 4.70(1 隻あたりの売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 −1 億円。赤字
  • 旅客船(東京湾フェリー):数量 2.0(運航するフェリーの隻数(隻))× 価格 10(1 隻あたりの売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 −1 億円。赤字が広がる

倍率:PBR 0.22 倍を今の自己資本 282 億円に掛けた。ROE は k を大きく下回り、稼ぐ力(3.4 億円 ÷ k ≒ 44 億円から現金の利息を除いた分)に、谷で 0.75 倍に減る余った現金 × 戻り方 0.75 を足した約 62 億円で測る。

確率:原油の船の減少が速く、料金の見直しが追いつかない筋書き。2020 年から 2 年続けて営業赤字を出し、2027 年 3 月期も赤字の予想なので 2 割に置いた。

悲観 12% 悲観:曳船の需要が崩れ、現金が事業に食われる 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 501 円50 億円

東京湾の製油所と石炭の発電所が相次いで止まり、タンカーとバルカーの入港が大きく減る。曳船は 26 隻に減るが、固定費は残り、赤字になる。

洋上風力からは撤退し、フェリーの赤字も続く。船の減損で自己資本が削られる。

売却益で得た現金は、赤字の穴埋めと実を結ばない事業の再編に使われ、半分ほどに減る。配当は年 1〜2 億円に細り、株主に残るのは減った現金と持ち合いの株の値打ちだけだ。持ち合いの取引先の多い株主の顔ぶれでは、還元を迫る声も上がりにくい。

それでも曳船は港から消えない。最後に残るのは、東京湾の作業の権益と、目減りした現金だ。

  • 曳船:数量 26.0(運航する曳船の隻数(隻))× 価格 3.13(1 隻あたりの売上(億円))→ 売上 81 億円・営業利益 −2 億円。隻数 0.74 倍、赤字
  • 海事関連(洋上風力の交通船ほか):数量 2.0(運航する CTV の隻数(隻、推定))× 価格 4.31(1 隻あたりの売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。縮小
  • 旅客船(東京湾フェリー):数量 2.0(運航するフェリーの隻数(隻))× 価格 9.60(1 隻あたりの売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 −1 億円。赤字

倍率:PBR 0.177 倍を今の自己資本 282 億円に掛けた。純利益は赤字で、価値は売れる資産の床 50 億円で測る。積み上げた自己資本には掛けていない。

確率:入港数が大きく落ち、料金も上げられず、現金が赤字と失敗した事業の再編に消える筋書き。曳船は港に欠かせない仕事で消えないので 1 割強に置いた。

セグメント:数量 × 価格

いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。

曳船

東京湾の各港で大型船の離着岸を助ける曳船、危険物船の護衛、東京湾口の水先艇。

数量運航する曳船の隻数(隻)価格1 隻あたりの売上(億円)売上営業利益
今 2026/03 35.0 2.72 95 3
10 年後 中立 33.0 3.64 120 6

取り方:売上 95.2 億円・営業利益 3.19 億円は有報。隻数は有報の主要な設備の所有 22・共有 3・用船 6・子会社 4 の計 35 隻。作業の回数は開示が無いので隻数で数える。

海事関連(洋上風力の交通船ほか)

洋上風力発電所に作業員を運ぶ交通船(CTV)と、その他の海事の仕事。

数量運航する CTV の隻数(隻、推定)価格1 隻あたりの売上(億円)売上営業利益
今 2026/03 5.0 3.92 20 −2
10 年後 中立 6.0 5.25 32 1

取り方:売上 19.6 億円・営業損失 1.92 億円は有報。隻数は開示が無く、入善と響灘での運航から 5 隻と推定。2026/03 期は響灘の建設の特需を含む。

旅客船(東京湾フェリー)

久里浜と金谷を結ぶカーフェリー。横浜港の観光船は 2025 年に持分法会社へ移した。

数量運航するフェリーの隻数(隻)価格1 隻あたりの売上(億円)売上営業利益
今 2026/03 2.0 8.35 17 −1
10 年後 中立 2.0 11 22 0

取り方:売上 16.7 億円・営業損失 0.58 億円は有報(観光船の移管前の 1 か月分を含む)。フェリーは 2 隻で運航。

リスクと懸念

東京湾の入港数

曳船の売上は大型船が港に入るたびに入る。日本の貿易量は横ばいで、コンテナ船の大型化で隻数は減る。会社自身が、入出港数が大きく増える要因は無いと書く。

脱炭素とタンカー

原油と石炭を運ぶ船は、護衛の作業を伴う大口の客だ。製油所や石炭の発電所が止まれば、作業がまとまって消える。新しい燃料の船がどこまで埋めるかは読めない。

船の造り替えの費用

新しい曳船の建造費は昔の船の倍近い。造り替えるたびに償却が増え、料金を上げ続けなければ利益が消える。燃料費と乗組員の人件費も上がる。

現金の使い道

売却益で得た現金を、会社は成長投資と事業の再編に充てるとしている。資本コストを下回る事業に使われれば、株主の価値は目減りする。

中東の混乱

2026 年にはホルムズ海峡の封鎖で中東発の原油タンカーの東京湾への入港が止まった。長引けば、曳船の稼ぎの柱が細る。

今後の分かれ目

自社株買いや特別配当で現金を株主に返す
余った現金の戻り方を 0.75 から 1.0 に上げる。
曳船の営業利益率が 2 期続けて 6% を超える
中立の曳船の利益率を 6% に上げる。
売却益の資金で大きな買収をする
買収先の稼ぎで判断し、資本コストを下回るなら戻り方を 0.5 に下げる。
東京湾の製油所の閉鎖が決まる
中立の曳船の隻数を下げ、やや悲観の確率を上げる。
洋上風力の大型案件で CTV の長期契約を取る
中立の CTV を 6 隻から 8 隻に上げる。

見ておくもの

  • 曳船セグメントの営業利益率(2026/03 期 3.4%)
  • 東京湾の大型船の入出港数
  • 現金の使い道(自社株買い・買収)
  • CTV の契約と隻数
  • 新しい曳船の建造費

倍率と資本コストの決め方

倍率は ROE と k の式だけで決め、今の PBR 0.3 倍や現金に近い時価総額は見ていない。事業の ROE が k を下回るので中立の PER は上限 1÷k の約 8 割。余った現金は 1Q の純現金 81 億円から船の更新の 20 億円を残した 60 億円に戻り方 0.75。投資有価証券と関連会社株は稼ぎが利益に残るので足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.6→12.12 倍・やや楽観 PER 11→12.12 倍・中立 PER 10.5→12.12 倍)。

資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 0.25% = 7.75%。同じ領域の済んだ会社は無い。港湾運送の会社と同じく許認可に近い地盤を持つが、需要の柱のタンカーが細る分を足した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 8.25%。

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割安 ファイズホールディングス9325 アマゾンの物流現場を人手で支える会社。成長は本物だが、顧客の一極集中と親会社の存在が重い 本質価値との差 +54.9% · 10 年 割安(年 +12.1%) やや割安 ケイヒン9312 京浜港に根を張る小さな物流会社。国内の稼ぐ力は堅いが、新本社に投じた 118 億円の稼ぎが焦点。利益で測ると今の値段はやや割安 本質価値との差 +29.7% · 10 年 やや割安(年 +9.5%) やや割安 大運9363 大阪の小さな港運会社。本業は堅実で資産も厚いが、株主に戻る道筋が弱く、今の値段はほぼ妥当だ 本質価値との差 +27.0% · 10 年 やや割安(年 +9.9%) やや割安 キムラユニティー9368 トヨタの部品を包み運ぶ手堅い会社。赤字知らずだが伸びは物価止まりで、利益で測ると今の値段はほぼ妥当 本質価値との差 +23.5% · 10 年 やや割安(年 +8.9%) やや割安 上組9364 東京港・神戸港の自社単独ターミナルという免許制の堀と実質無借金が強みだが、成長は鈍く、稼ぐ力で測ると今の値段はほぼ適正 本質価値との差 +15.9% · 10 年 やや割安(年 +6.8%) やや割安 伊勢湾海運9359 名古屋港の港湾運送の中堅。現金は時価総額の 9 割と厚いが、稼ぐ力は資本コストに届かない 本質価値との差 +14.6% · 10 年 やや割安(年 +8.3%) やや割安 エーアイテイー9381 日中の輸入物流を握る身軽な仲介業。現金は厚いが、利益の質は運賃次第で、今の値段はやや割高 本質価値との差 +11.4% · 10 年 やや割安(年 +7.6%) やや割安 日本トランスシティ9310 四日市港に根を張る堅実な物流会社。利益率が薄く、稼ぐ力は資本コストにわずかに届かないが、今の値段は 10 年の価値とほぼ釣り合う 本質価値との差 +10.7% · 10 年 やや割安(年 +7.6%) 適正 サンリツ9366 精密機器の輸出梱包の老舗。新倉庫で伸びるが、借入が重く稼ぐ力は資本コストに届かない 本質価値との差 +4.9% · 10 年 適正(年 +7.7%) 適正 伏木海陸運送9361 富山の港を一手に担う港湾の会社。地元では代わりがいないが、石炭とチップの先細りと設備の更新が重く、やや割高 本質価値との差 +3.8% · 10 年 適正(年 +7.4%) 適正 東陽倉庫9306 名古屋地盤の倉庫・運送の中堅。賃貸不動産に含み益があるが、ROE が資本コストに届かず、10 年の価値は今の値段を下回る 本質価値との差 +0.8% · 10 年 適正(年 +6.3%) 適正 三菱倉庫9301 丸の内などの含み益は悲観の下値を支えるが、利益で測ると物流の利益率の回復は遅く、今の値段は割高 本質価値との差 −3.6% · 10 年 適正(年 +5.8%) 適正 杉村倉庫9307 大阪港の倉庫と賃貸ビルを持つ老舗。財務は堅いが成長が遅く、含み益を足しても今の値段は高め。 本質価値との差 −5.0% · 10 年 適正(年 +5.9%) やや割高 名港海運9357 名古屋港に根を張る港湾運送の老舗。資産は厚いが稼ぐ力が資本に見合わず、本質価値は今の時価総額を3割強下回る 本質価値との差 −10.1% · 10 年 やや割高(年 +5.0%) やや割高 トレーディア9365 中国向けが半分の国際物流の仲介会社。利益は薄いが保有株と倉庫が支えるが、本質価値は今の時価総額をやや下回る。 本質価値との差 −10.5% · 10 年 やや割高(年 +7.1%) やや割高 東洋埠頭9351 港の倉庫と荷役の老舗。含み益のある株は多いが、本業の稼ぎは資本コストに届かず、10年では割高と見る 本質価値との差 −16.1% · 10 年 やや割高(年 +4.8%) やや割高 住友倉庫9303 持ち株と賃貸ビルの含み資産は厚いが、本業の利益で測ると 10 年の伸びは小さく、今の値段は割高 本質価値との差 −18.9% · 10 年 やや割高(年 +3.8%) やや割高 三井倉庫ホールディングス9302 稼ぎの質は改善したが、利益の伸びは物価並み。賃貸の含み益を足さず賃料を残して測ると、10年の価値は今の値段の5割ほどにとどまる 本質価値との差 −26.4% · 10 年 やや割高(年 +3.6%) やや割高 安田倉庫9324 上場株が時価総額に並ぶ会社。本業の稼ぎは薄く、10 年で測ると今の値段は割高に出る 本質価値との差 −27.2% · 10 年 やや割高(年 +2.9%) 割高 中央倉庫9319 京都の倉庫・運送に持ち合い株が時価総額の半分あるが稼ぐ力は細く、酒類物流の買収も重く、今の値段は割高 本質価値との差 −30.9% · 10 年 割高(年 +2.2%) 割高 兵機海運9362 姫路の鉄鋼の船と港を担う小さな物流会社。大株主 2 社が株を取り合うが、ROE は資本コストに届かず、価値は今の値段を 4 割近く下回る 本質価値との差 −31.3% · 10 年 割高(年 +3.2%) 割高 丸八倉庫9313 倉庫と土地は良いが、稼ぎは自己資本の 3% 前後。帳簿の半値でも、稼ぐ力から見れば割高だ 本質価値との差 −38.8% · 10 年 割高(年 +1.4%) 割高 澁澤倉庫9304 利益は薄く、値段は資産の価値に近い。含み益を現金に変える速さが、割高か否かを分ける 本質価値との差 −40.7% · 10 年 割高(年 +0.8%) 割高 東海運9380 セメント輸送と港湾物流で 100 年を超えた老舗。稼ぐ力に比べて資産が重く、今の値段は割高とみる 本質価値との差 −44.3% · 10 年 割高(年 +0.8%) 割高 櫻島埠頭9353 大阪港で石炭と油・化学品を預かる港湾の会社。本業は薄く、利益の半分近くは持ち合い株の配当。脱炭素で石炭が細り、今の値段は割高 本質価値との差 −44.5% · 10 年 割高(年 +0.7%) 割高 大東港運9367 東京港の食品輸入に強い港湾運送の中堅。堅実だが利益率は頂で、今の時価総額は重い 本質価値との差 −46.9% · 10 年 割高(年 −0.3%) 割高 川西倉庫9322 特別配当で目を引くが、稼ぐ力は資本コストの半分。10 年の利益で測ると今の値段は割高 本質価値との差 −49.8% · 10 年 割高(年 −1.1%) 割高 リンコーコーポレーション9355 新潟港の荷役を一手に担う老舗。港とホテルの資産は重く、稼ぐ力は資本コストに遠い 本質価値との差 −50.1% · 10 年 割高(年 +0.5%) 割高 キユーソー流通システム9369 食品物流の堅実さは本物だが、利益率が薄く資本コストに届かない。10年で見ても今の値段は大幅に割高 本質価値との差 −64.7% · 10 年 割高(年 −3.6%)

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読んだ資料

  1. 東京汽船 有価証券報告書(2026 年 3 月期)
  2. 東京汽船 2027 年 3 月期 第 1 四半期決算短信

分析日 2026-10-20