結論
兵機海運は、姫路と神戸を地盤に、鋼材を運ぶ内航の船と、港の荷役・通関・倉庫を営む小さな物流会社だ。筆者の結論は割高である。資本コストを下回る ROE が 10 年続くと見るので、価値は今の時価総額を 4 割近く下回る。
売上は 130〜180 億円の間を 10 年行き来し、営業利益率は 1〜4% と薄い。2026 年 3 月期は鉄鋼の需要が弱く、内航の船の効率が落ちて営業利益は 4.4 億円に減った。港運は輸入食品と輸出の通関が伸び、黒字に戻した。
株主の顔ぶれが特徴だ。最大の顧客の大和工業が議決権の 20.5% を持ち、その他の関係会社にあたる。2024 年に部分的な買い付けを仕掛けた富洋海運グループの堂島汽船も、市場で買い増して 16% 台まで持つ。
10 年の中立では、港運と倉庫が伸び、営業利益は 6〜7 億円に増える。だが借入 48 億円の利払いが増え、純利益は 4 億円台半ばにとどまる。ROE は 5% 台で、資本コスト 8.25% を下回る。大株主どうしの綱引きは値段の支えになりうるが、筆者は価値の計算には入れていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、兵機海運は「事業は地味で必要だが、資本に見合う利益を出せていない」会社だ。
事業は 10 年後も残る。姫路に製鉄所と港がある限り、鋼材を運び、荷を揚げ、保管する仕事は要る。船員と運転手の不足で、運ぶ力そのものの値打ちは上がる。寿命の心配は小さい。
だが、株主のものになる利益は少ない。営業利益は 4〜6 億円で、その多くは船と倉庫の更新に回る。減価償却は年 3.5 億円で、新しい船と倉庫は昔より高い。
資本の使い方も迷いが見える。借入 48 億円を抱えながら、大和工業の株を 14 億円持つ。持ち合いは取引を守るが、ROE を下げる。
安全域は大きくない。PBR は 0.8 倍台で、資本コストを下回る ROE が続く限り、帳簿の 1 億円は 1 億円の価値を持たない。大株主の綱引きが続く間は値段が支えられるが、それは事業の価値ではない。
何で稼ぐ会社か
兵機海運は 1949 年に神戸で生まれた海運会社で、今は姫路に重心がある。事業は海運と、港運・倉庫の 2 つに分かれる。
海運のうち大きいのは内航だ。姫路の大和工業やヤマトスチール、JFE の水島などの製鉄所の鋼材を、自社船と傭船で国内の港へ運ぶ。艀(はしけ)を使った港内の輸送や、プラントや鉄道車両のような大きな荷物も引き受ける。2026 年 3 月期の内航の売上は 67.6 億円、営業利益は 1.7 億円だった。
外航は小さい。中国、韓国、台湾向けの鋼材や、モンゴルなど中央アジア向けの鉱山用の建機を運ぶ。売上は 8.4 億円で、年による振れが大きい。
港運・倉庫は、神戸と姫路の港で、輸入の食品や輸出の機械を船から降ろし、通関し、倉庫に置き、トラックで運ぶ。売上は 57.9 億円で、港運が 40.9 億円を占める。姫路の倉庫は満床が続き、神戸に新しいコンテナターミナルを設けた。
顧客は鉄に偏る。大和工業グループが売上の 27.5%、JFE 物流グループが 8.9% だ。従業員は 236 人で、平均年齢は 45 歳である。
優良さと弱いところ
兵機海運の強みは、姫路の製鉄所とのつながりの長さと、港の荷役と船と倉庫を一つの会社でこなせることだ。鋼材は重く形もさまざまで、積み方や港の段取りに慣れが要る。大和工業が株を 20% 持つほど、取引は深い。
だが堀と呼ぶほど強くはない。内航の運賃は荷主との交渉で決まり、燃料や船員の費用の上昇をすぐには伝えられない。2026 年 3 月期は燃料費と船の維持費が増え、内航の利益は半分になった。最大の顧客が 3 割近くを占めるので、値決めの力は荷主の側にある。
資本の効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は 10.4% だが、それは自己資本が 20〜40 億円と薄かった時の値だ。今は自己資本が 56 億円に増え、ROE は 7% に下がった。投資有価証券 28 億円の多くは大和工業の株などの持ち合いで、配当は年 0.9 億円にとどまる。
経営は手堅い一方で、堂島汽船からは「10 年で売上が横ばい、ROIC は 3% 台」と批判された。中期経営計画の 2027 年度の営業利益 6.8 億円が、改善の試金石になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
内航の鋼材輸送の量は、国内の粗鋼と鋼材の生産に沿って動く。日本の粗鋼生産は 8 千万トン台前半まで減り、建設と自動車の国内需要の弱さ、中国の安い鋼材の流入で、さらに細る見込みだ。高炉の休止も進み、運ぶ鋼材の総量は 10 年で 1 割前後減ると筆者は見る。
一方で、運ぶ側も減っている。内航の船員は高齢化が進み、小さな船の会社は廃業が続く。船の数が減れば、残る会社の運賃は上がりやすい。量は減っても値段は物価並みかやや上を見込める、というのが業界の構図だ。
港運と倉庫は別の動きをする。日本の港のコンテナの取扱量は年 2,200 万 TEU 前後で横ばいだが、食品の輸入と機械の輸出の通関は伸びている。トラックの運転手の残業規制で、港の近くで保管し運ぶ仕事は増える。倉庫は建設費の高騰で新しく建ちにくく、既存の倉庫の稼働と料金は上がりやすい。
競争相手は、内航では鉄鋼会社系の物流会社や中小の船主、港運では神戸港の上組や地場の港運会社だ。兵機海運の規模は小さく、地場の顧客の深さで勝負する。電炉の大和工業は高炉より需要が安定し、その近さは支えになる。
資本政策と M&A
配当の方針は、1 株利益が一定を超えれば配当性向 30% 以上を基準とする。2026 年 3 月期は配当総額 1.3 億円、性向は 33% だった。株主優待は無い。
2026 年 7 月には自社株買いを決め、上限 2.5 万株・1.1 億円のうち 9 月までに 4,700 株を買った。発行済株式は 122 万株と少なく、流通する株は細い。
大和工業の株を 12 万株、約 14 億円持ち、大和工業も兵機の議決権の 20.5% を持つ持ち合いだ。ほかに銀行や取引先の株を持ち、上場株は 15 銘柄・25 億円ある。有報は意義の薄い株は売ると書き、2026 年 3 月期に一部を売った。
借入は 48 億円で、純有利子負債は 31 億円だ。溜まる現金の戻り方は 0.75 とした。性向 30% の方針と自社株買いがあり、大株主 2 社の目もあるが、持ち合いは残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
兵機海運は、運ぶ力が足りなくなる時代の勝ち組になりうる。内航の船員は高齢化し、小さな船の会社は消えていく。船と船員を持ち、港の荷役と倉庫まで一つでこなせる会社は少ない。運賃は量の減りを上回って上がる。
港運と倉庫は伸びている。輸入食品の取扱いと輸出の通関は 1 割以上増え、港運は赤字から黒字に戻った。姫路の倉庫は満床で、外の倉庫を借りるほどだ。神戸の新しいコンテナターミナルが軌道に乗れば、利益は一段上がる。
会社は 2035 年度に売上 200 億円・営業利益 10 億円を掲げる。そこに近づけば、純利益は 7 億円に届き、今の時価総額 47 億円は安い。
株主の構図も追い風だ。大和工業が 20.5%、堂島汽船の側が 16% 台を持ち、買い増しが続く。どちらかが会社の全部を欲しくなれば、帳簿に近い値段が付きうる。
持ち合いの株を売り、借入を返し、配当を増やせば、ROE はすぐに上がる。自社株買いも始まった。
慎重な見方
鉄の量は減り続ける。国内の粗鋼生産は細り、高炉は止まっていく。兵機海運の内航は鋼材に頼り、2026 年 3 月期は需要の弱さで荷主から傭船を解約され、利益は半分になった。燃料と船の維持費は上がり続ける。
顧客は偏っている。大和工業グループが売上の 27.5% を占め、その大和工業が株の 20% を持つ。値段の交渉で兵機が強く出られる相手ではない。大和工業が物流を見直せば、売上の柱が揺らぐ。
借入は重い。有利子負債は 48 億円で、金利が 3.5% に上がれば利払いは年 1.7 億円になる。営業利益の 3 割近くが金利に消える。新しい船と倉庫の投資も続く。
大株主 2 社の綱引きは、少数株主のためとは限らない。どちらも事業の相手としての兵機が欲しく、少数株主に高い値段を払う義理は無い。2024 年の買い付けも上限つきの部分的なものだった。
10 年で売上は横ばい、ROE は 5% 台に下がった。資本コストを下回る会社の帳簿は、割安の根拠にならない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。港運と倉庫の伸びは本物だが、内航の鋼材の量は構造的に減り、借入の利払いが利益の伸びを食う。中期経営計画の営業利益 6.8 億円は、10 年かけて届く姿を中立とした。確率は中立を 38% に置き、やや楽観と楽観で 28%、やや悲観と悲観で 34% とした。大株主の買い増しは値段の支えだが、価値には入れていない。その分を除けば、今の値段は割高だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,251 円51 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,197 円14 億円)。 今の値に割り戻すと 2,729 円33 億円、今との差 −31.3%、 期待の年率 +3.2%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 7,171 円86 億円 | 1,673 円20 億円 | +122.5% | +8.3% | 708 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,974 円71 億円 | 1,422 円17 億円 | +86.1% | +6.4% | 1,479 円18 億円 |
| 中立 | 38% | 4,610 円55 億円 | 1,255 円15 億円 | +47.6% | +4.0% | 2,229 円27 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,600 円31 億円 | 1,004 円12 億円 | −9.3% | −1.0% | 793 円9 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,325 円16 億円 | 669 円8 億円 | −49.8% | −6.7% | 239 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,251 円51 億円 | 1,197 円14 億円 | +37.1% | +3.2% | 5,448 円65 億円 |
今の株価時価総額 3,975 円48 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 港運と倉庫が伸び、2035 年のビジョンに届く 利益 7 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 7,171 円86 億円
内航の船員と船が業界で減り、残った兵機の運賃は物価を上回って上がる。鋼材の量は減るが、大型の特殊な荷物や艀の仕事で埋め、海運の利益率は 4.5% に上がる。
港運と倉庫は 10 年で量が 25% 増える。神戸の新しいターミナルが軌道に乗り、姫路の倉庫も増設する。輸入食品と輸出の通関が伸び、利益率は 5.5% に上がる。
営業利益は 10 億円に届き、会社の 2035 年のビジョンを達する。持ち合いの株を一部売って借入を減らし、配当も増やす。
それでも自己資本が厚くなるので ROE は 7% 台で、資本コストにはわずかに届かない。
- 海運(内航・外航):数量 250(輸送量(万トン・推定))× 価格 0.41(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 103 億円・営業利益 5 億円。250 万トン(横ばい)× 単価 1.36 倍(船の不足で物価をやや上回る)、利益率 4.5%
- 港運・倉庫:数量 134(取扱量(万トン・推定))× 価格 0.75(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 5 億円。134 万トン(1.25 倍)× 単価 1.38 倍、利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 86 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が掲げる 2035 年度の営業利益 10 億円に届く姿。過去 10 年の最高は 6 億円で、2 倍近い伸びが要るので 8%。
やや楽観 20% 港運と倉庫の伸びが内航の減りを上回る 利益 6 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 5,974 円71 億円
内航の鋼材の量は横ばいを保ち、運賃は物価並みに上がる。燃料と船員の費用は運賃に伝えられ、海運の利益率は 4% に戻る。
港運と倉庫は 10 年で量が 2 割近く増える。輸入食品と輸出の通関、トラックの規制で港の近くに置く荷物が増え、利益率は 4.8% に上がる。
営業利益は 8 億円台半ばに増える。借入の利払いは増えるが、受取配当が補う。配当性向は 3 割台を保ち、自社株買いもときどき行う。
ROE は 6% 台にとどまり、資本コストには届かない。
大株主 2 社の目があるので還元は少しずつ厚くなるが、船と倉庫の更新の投資が続き、現金は溜まりにくい。
- 海運(内航・外航):数量 250(輸送量(万トン・推定))× 価格 0.41(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 102 億円・営業利益 4 億円。250 万トン(横ばい)× 単価 1.34 倍、利益率 4%
- 港運・倉庫:数量 126(取扱量(万トン・推定))× 価格 0.74(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 93 億円・営業利益 4 億円。126 万トン(1.18 倍)× 単価 1.36 倍、利益率 4.8%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 71 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:港運が 2026 年 3 月期に黒字に戻り、輸入食品と通関が 1 割伸びた流れが続く姿。中期経営計画の 2027 年度の目標に少し遅れて届くので 20%。
中立 38% 鋼材の量は少し減り、港運が補って利益は 1 割強増える 利益 5 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 4,610 円55 億円
国内の粗鋼生産は細り、内航の鋼材の量は 10 年で 5% 減る。船員の不足で運賃は物価並みにやや届かない 3 割の上昇となり、海運の利益率は 3.5% に落ち着く。
港運と倉庫は 10 年で量が 1 割増え、料金は物価並みに上がる。利益率は 4% に上がる。
営業利益は 6.7 億円で、中期経営計画の目標に 10 年かけて届く。借入の金利が 3.5% に上がり利払いは年 1.6 億円になるが、受取配当が一部を補う。
純利益は 4 億円台半ばで、今を 1 割強上回る。配当性向は 3 割台のままで、自己資本は 84 億円に増え、ROE は 5% 台に下がる。
- 海運(内航・外航):数量 238(輸送量(万トン・推定))× 価格 0.40(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 94 億円・営業利益 3 億円。238 万トン(0.95 倍)× 単価 1.30 倍(物価にやや届かない)、利益率 3.5%
- 港運・倉庫:数量 118(取扱量(万トン・推定))× 価格 0.72(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 85 億円・営業利益 3 億円。118 万トン(1.10 倍)× 単価 1.34 倍、利益率 4%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 55 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:内航の量は粗鋼生産に沿って 5% 減り、港運と倉庫が 1 割伸びる姿。中期経営計画の営業利益 6.8 億円に 10 年かけて届くので 38%。
やや悲観 22% 鋼材の量が 15% 減り、利益率が 2〜3% に戻る 利益 3 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 2,600 円31 億円
高炉の休止と中国の安い鋼材で、内航の鋼材の量は 10 年で 15% 減る。荷主の傭船の解約が続き、運賃は物価に届かない 2 割の上昇にとどまる。海運の利益率は 2.5% に落ちる。
港運と倉庫の量は横ばいで、料金は物価にやや届かない。人手不足で費用がかさみ、利益率は 3% にとどまる。
営業利益は 4 億円台で今と変わらず、借入の利払いが増えて純利益は 2 億円台半ばに減る。配当は性向 3 割で細る。
10 年の平らな地は利益率 3% 前後だったことになる。
持ち合いの株と借入はそのまま残り、少数株主に戻るのはわずかな配当だけだ。大株主 2 社の綱引きも、値段の支えにはならなくなる。
- 海運(内航・外航):数量 213(輸送量(万トン・推定))× 価格 0.36(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 78 億円・営業利益 2 億円。213 万トン(0.85 倍)× 単価 1.20 倍、利益率 2.5%
- 港運・倉庫:数量 107(取扱量(万トン・推定))× 価格 0.68(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 72 億円・営業利益 2 億円。107 万トン(横ばい)× 単価 1.25 倍、利益率 3%
倍率:ROE 3.3% は k 8.25% を大きく下回るので PBR。今の自己資本 56.5 億円の 0.45 倍で、稼ぐ力(純利益÷k)の 30 億円を下回る。
確率:過去 10 年の利益率の中央値(2〜3%)に戻り、鋼材の量も減る姿。2026 年 3 月期の内航の減益が続けば起こりうるので 22%。
悲観 12% 鉄の物流の柱が細り、利益がほぼ消える 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,325 円16 億円
国内の高炉の多くが止まり、内航の鋼材の量は 10 年で 35% 減る。最大の顧客の大和工業も物流の委託先を見直し、運賃は 10 年でほとんど上がらない。海運の利益率は 0.5% に落ちる。
港運と倉庫の量も 1 割減り、人手不足で費用が上がって利益率は 1.5% にとどまる。
営業利益は 1 億円台に落ち、借入の利払いでほぼ消える。配当は細り、新しい船と倉庫の投資もできなくなる。
残る価値は、持ち合いの株と土地・建物を売って借入を返した残りだ。だが持ち合いを解くかは大和工業との関係で決まり、少数株主には全部は戻らない。
- 海運(内航・外航):数量 163(輸送量(万トン・推定))× 価格 0.32(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 0 億円。163 万トン(0.65 倍)× 単価 1.05 倍、利益率 0.5%
- 港運・倉庫:数量 96.3(取扱量(万トン・推定))× 価格 0.62(1 万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 60 億円・営業利益 1 億円。96 万トン(0.9 倍)× 単価 1.15 倍、利益率 1.5%
倍率:利益がほぼ消えるので PBR。今の自己資本 56.5 億円の 0.28 倍で、株と土地・建物を売って借入を返した残りに戻り方を掛けた床にあたる。EV÷営業利益は 40 倍を超えるが、営業利益がほぼ消えるためで、価値は資産の床で決めた。
確率:鋼材の量が 3 分の 1 減り、大和工業の物流の見直しも重なる構造的な負けの姿。2009 年と 2014 年の赤字の実例から 12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
海運(内航・外航)
製鉄所の鋼材を自社船と傭船で国内の港へ運ぶ内航と、中国・韓国・台湾向けの鋼材やモンゴル向けの建機を運ぶ外航。
| 数量輸送量(万トン・推定) | 価格1 万トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 250 | 0.30 | 76 | 2 |
| 10 年後 中立 | 238 | 0.40 | 94 | 3 |
取り方:2026/03 期の海運セグメントの売上 75.99 億円・営業利益 2.48 億円(短信のセグメント情報)。全社の取扱輸送量 357 万トンのうち、海運を約 250 万トンと推定した(推定。セグメント別の開示は無い)。
港運・倉庫
神戸港と姫路港での荷役・通関・陸送と、姫路・大阪・神戸の倉庫での保管。
| 数量取扱量(万トン・推定) | 価格1 万トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 107 | 0.54 | 58 | 2 |
| 10 年後 中立 | 118 | 0.72 | 85 | 3 |
取り方:2026/03 期の港運・倉庫セグメントの売上 57.89 億円・営業利益 1.88 億円(短信)。取扱量は全社 357 万トンから海運の推定を引いた約 107 万トン(推定)。通関や保管の料金を含むので 1 万トンあたりの売上は海運より高い。
リスクと懸念
鋼材の量の構造的な減少
国内の粗鋼生産は細り、高炉の休止も進む。兵機海運の内航は鋼材に頼り、荷主の傭船の解約で 2026 年 3 月期の内航の利益は半分になった。
最大の顧客への偏り
大和工業グループが売上の 27.5% を占め、その大和工業が議決権の 20.5% を持つ。物流の見直しや値下げの求めがあれば、売上と利益の柱が揺らぐ。
金利と借入
有利子負債は 48 億円。金利が 3.5% に上がると利払いは今の年 0.5 億円から 1.7 億円に増え、営業利益の 3 割近くが金利に消える。
燃料と船員と船の値段
燃料費の高止まり、船員の不足と高齢化、新しい船の値上がりが続く。運賃に転嫁できなければ、内航の利益率は 1〜2% に落ちる。
大株主どうしの綱引き
大和工業と堂島汽船の側が合わせて 3 割台後半を持つ。経営の方針が揺れ、少数株主の利益が後回しになるおそれがある。
人手不足と技術の継承
港の荷役や倉庫の作業は熟練が要る。従業員の平均年齢は 45 歳で、人が集まらなければ新しいターミナルも生かせない。
今後の分かれ目
- 中期経営計画の 2027 年度の営業利益 6.8 億円に届く
- 港運と倉庫の伸びが本物になる。やや楽観の確率を上げる。
- 内航の営業利益が 2 年続けて 1 億円を割る
- 鋼材の量の減りが速い。やや悲観の確率を上げる。
- 大和工業か堂島汽船が全部の株を買い取る提案をする
- 帳簿に近い値段が付く可能性がある。少数株主の取り分が公正かを確かめる。
- 持ち合いの株を売って借入を返す
- 利払いが減り ROE が上がる。倍率を一段上げてよい。
- 大和工業が物流の委託先を変える
- 売上の 3 割近くが揺らぐ。悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 内航の営業利益と傭船の解約
- 港運・倉庫の売上と姫路の倉庫の稼働
- 支払利息と有利子負債
- 大和工業と堂島汽船の持株比率
- 配当性向と自社株買い
- 国内の粗鋼生産
倍率と資本コストの決め方
倍率は資本コスト 8.25% と ROE から式で出した。どの筋書きも ROE が k を下回るので PER の上限は 1÷k の 11.8 倍で、楽観〜中立はその 8〜9 割に置いた。今の PBR 0.8 倍台や、2024 年の買い付けの値段、大株主の買い増しは見ていない。持ち合いの株の配当を利益に入れたので、株の価値は別に足していない。悲観側は今の自己資本に PBR を掛け、資産を売って借入を返した残りの床で確かめた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→12.12 倍・やや楽観 PER 10→12.12 倍・中立 PER 9.4→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足して 8.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.25%。