結論
キユーソー流通システムは、キユーピーが生んだ食品物流の会社だ。食品メーカーの商品を預かり、スーパーやコンビニへ共同で届ける。売上は約2,000億円、営業利益は56億円。利益の薄さが最大の特徴である。
筆者の結論は、今の値段は大幅に割高、である。事業が傷んでいるわけではない。稼ぐ力が株主の求める水準に届いていないのだ。自己資本利益率(ROE)は5%台で、資本コストの8%を下回る。
10年後の中立の筋書きでも、営業利益率は3%弱にとどまる。運転手の不足で運賃は上がる。だが人件費も同じ速さで上がり、値上げは利益ではなくコストの穴埋めに消えやすい。売上が増えても、残る利益は大きく増えない。
追い風もある。2024年問題で荷主は運び手を探しており、食品の共同配送の需要は強い。インドの低温物流会社の買収で海外にも足場ができた。三菱倉庫が約5%を持ち、キユーピーとの関係の見直しを巡る思惑も出やすい。
ただ、再編の思惑と事業の価値は別物だ。足元の純利益は26億円で、会社は今期21億円を見込む。借金は自己資本に迫り、金利が上がれば利益はさらに削られる。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額の4分の1ほどだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「持ち続けたい会社」ではなく、「安ければ買ってよい会社」だ。
良い事業の条件は3つある。値段を自分で決められること、少ない資本で稼げること、10年後も強いことだ。この会社は、3つとも満たさない。値段は荷主が決め、設備は重く、人手不足で運賃の上げ幅は人件費に食われる。
利益はいくら残るか。営業利益は56億円でも、利払い・税・少数株主の取り分を引くと、株主に残るのは26億円だ。設備の更新と成長の投資を引くと、自由に使えるお金はさらに少ない。借金は純額で390億円あり、金利が上がれば利益は削られる。
経営の資本の使い方は堅実で、無理な買収はない。それは評価できる。ただ堅実さだけでは、資本コストを超える稼ぎは生まれない。
安全域はどうか。稼ぐ力(純利益÷資本コスト)で測ると、自己資本の約7割にとどまる。含み益のある不動産で下値を支える材料も、確認できる範囲では乏しい。事業が長持ちすることは確かだが、払う値段に見合う利益がない。本質価値は今の値段の4分の1ほど。筆者は、よほど低い値段になるまで待つ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は3つある。
1つ目は共同物流事業で、売上の約3分の2を占める。食品メーカー各社の商品を倉庫で預かり、全国の小売店へ混載して届ける。食用油や食酢をタンクローリーで運ぶ仕事もある。複数の荷主を1台に載せるので、積載率が上がるほど利益が出る。2025年11月期の営業利益は29.6億円だった。
2つ目は専用物流事業だ。コンビニなどの物流センターを丸ごと受託して運営する。1つの顧客に深く入り込む代わりに、その顧客の出店や契約更新に業績が左右される。営業利益は14.5億円で、利益率は3つの中で高い。
3つ目は関連事業。国内では車両や物流機器、燃料を売る。海外は中国とインドネシアで倉庫と輸配送を手がける。2026年9月には、インドの低温物流会社コールドラッシュ・ロジスティクスの51.6%を27.5億円で取得した。先方の売上は約16.6億円、営業利益は約1.4億円と小さい。
顧客は分散している。最大の日本アクセスで売上の約1割、親会社筋のキユーピーが約6%。外部の顧客が9割を超える。キユーピーの物流部門として生まれたが、今は独立した物流会社として稼いでいる。2021年にはキユーピーが持分を一部売り、親子関係を解消した。
優良さと弱いところ
堀は浅い。筆者はそう見ている。
強みは、食品の温度帯別の保管と共同配送を全国で回す運営力と、キユーピーをはじめとする食品メーカーとの長い付き合いだ。センターを切り替える手間があるので、顧客は簡単には動かない。2025年11月期は値上げの受け入れが進み、共同物流の営業利益が16%増えた。
だが値段を決めるのは荷主だ。運賃も保管料も、毎年の交渉で決まる。同じ食品の共同物流には、味の素・ハウス食品・カゴメなどが出資するF-LINEのような、メーカー連合の物流会社もいる。大手は自分で物流を持てる。
資本の効率は低い。営業利益率は過去10年で1.5〜3.2%、ROEの中央値は5.4%だ。倉庫やトラック、仕分けの設備は重く、稼いだ利益の多くが設備の更新に消える。中計は4年で400億円の設備投資を掲げる。利益に対して投資が大きく、株主の取り分は増えにくい。
もう1つの弱みは借金だ。純有利子負債は390億円で、自己資本の0.86倍。営業利益が支払利息の5倍弱しかない。金利が上がる時代には効いてくる。
経営は堅実で、赤字は2023年11月期に一度出ただけだ。守りは固いが、攻めて稼ぐ力は弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
食品物流は、需要が減らず、利益も増えにくい業界だ。
食品の量は人口と同じ向きに動く。日本の人口は年0.5%ほどずつ減るので、国内で運ぶ食品の量は10年でわずかに減る。伸びる所は、冷凍・冷蔵の低温物流だ。矢野経済研究所は2025年度の市場を約1.9兆円と見る。ただし伸びの多くは、人件費・電気代・燃料の値上がりを映した金額の増加である。運ぶ量が増えているわけではない。
2024年問題が、今の追い風と向かい風の両方を作る。運転手の残業が年960時間までに制限され、運べる量が減った。荷主は運び手を確保したい。共同配送の値上げが通りやすくなり、キユーソーも値上げを進めた。一方で運転手の賃金は上がり続ける。運賃の上げ幅と人件費の上げ幅の差が、利益率のすべてだ。
競争は3層ある。1つは食品メーカーが共同で作る物流会社。F-LINEがその例で、「競争は商品で、物流は共同で」を掲げる。2つ目は低温物流の専業大手と、三菱倉庫・三井倉庫のような総合倉庫。3つ目は日本通運などの総合物流会社。どこも人手と車を取り合っており、どこかが突出して高い利益を出す構図ではない。
もう1つの動きが再編だ。小さな物流会社は運転手を確保できず、大手に集まる。共同配送の網を持つ会社には、買う側にも買われる側にもなるチャンスがある。
資本政策と M&A
資本政策は、守りが中心である。
配当性向は2025年11月期で25.8%と低く、増配をめざすと方針に書く。自社株買いの実績は乏しい。利益の多くは設備投資に回る。会社は株主資本コストを5〜6%と見ており、ROE6%以上を目標にする。筆者は8%が妥当と見ており、会社の物差しは甘い。
資本の関係は動きやすい。キユーピーは約4割を持つ筆頭株主だが、2021年に親子関係を解消し、持分法適用の関連会社になった。2025年にはキユーピーがアヲハタを完全子会社化し、キユーソー株にも思惑買いが入った。三菱倉庫は約5%を持ち、低温物流で2022年から提携する。
M&Aは、これまで小さな海外案件が中心だった。インドの買収は27.5億円で、売上の1%強にすぎない。中計は新しい領域を掲げるが、大型の買収は見えない。
借金も論点だ。設備投資が続き、純有利子負債は390億円と自己資本に迫る。賃借の物流センターも多く、固定の家賃が重い。新リース会計基準が2028年11月期から入ると、リースが貸借対照表に載り、見かけの借金と自己資本比率は悪化する。
点検済み(2026-10-19):起点の利益、純有利子負債、倍率と ROEを確かめた。割高に見せる見落としは見つからなかった。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の74億円が10年後に約 86億円。更新投資は建築費の上昇で膨らみ、足りない分は借入になって利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
食品物流は、景気に左右されにくい。人口が減っても人は食べる。しかも2024年問題で運転手が足りず、荷主は運び手に困っている。共同配送の網を全国に持つ会社は、この不足の中で値上げを通しやすい。2025年11月期は共同物流の営業利益が16%増え、専用物流も9%増えた。値上げの受け入れが実際に進んでいる証拠だ。
中計は2028年11月期に営業利益73.5億円、営業利益率3.5%を掲げる。過去10年の最高が3.2%なので、手の届く範囲にある。さらに共同物流の網は、メーカー連合のF-LINEとも競争できる規模がある。
海外も芽が出る。インドの低温物流は、人口が多く冷蔵網がまだ薄い。ここで足場を築けば、国内の伸び悩みを補える。
再編の可能性もある。三菱倉庫は約5%を持ち、低温物流で提携している。キユーピーが持分を整理すれば、三菱倉庫などが買い手に回りうる。その時は事業の実力より高い値段が付くかもしれない。借金が重くても、事業は赤字になりにくく、経営は堅実だ。
慎重な見方
値上げは利益にならない。運転手の賃金、倉庫の人件費、電気代、燃料のどれも物価と同じ速さで上がる。運賃を上げてもコストの穴埋めに消え、営業利益率は2〜3%の薄い帯から出られない。過去10年で3.2%を超えたことはない。中計の3.5%は、人手不足の下では高い目標だ。
ROEは5%台で、株主が求める8%に届かない。稼ぎを設備に再投資しても、価値は増えない。4年で400億円の設備投資は、利益に対して大きすぎる。
借金が重い。純有利子負債は自己資本の0.86倍、営業利益は支払利息の5倍弱だ。金利が3%台に上がれば、10年で利払いが約10億円増え、純利益の3割近くが消える。今期の純利益は21億円の見込みで、すでに2割減る。
顧客が離れる危険もある。大手の食品メーカーは物流を共同の会社に移しており、F-LINEのような連合が広がれば、キユーソーの共同物流は荷主を奪われる。専用物流もコンビニ自身の物流の変更で契約が減りやすい。インドの買収は小さく、成長を支えるには足りない。再編の思惑で株価が上がっても、事業の価値が変わったわけではない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。強気の根拠は値上げの進みと再編の期待だが、どちらも利益率を3%の上へ押し上げる決め手にならない。運賃と人件費は同じ向きに動き、利益率の天井は過去10年で3.2%だった。
確率は、楽観を5%、やや楽観を18%と薄くし、中立に40%、やや悲観に25%、悲観に12%を置いた。悲観を厚めにしたのは、借金が重く、金利の上昇と顧客の離脱が重なると利益が急に細るためだ。中立の ROE は5%台で、資本コストを下回る。この事業の価値は、10年で見ても今の値段を大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した株価時価総額 1,739 円432 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 346 円86 億円)。 今の値に割り戻すと 1,063 円264 億円、今との差 −64.7%、 期待の年率 −3.6%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 3,584 円891 億円 | 652 円162 億円 | +40.5% | +3.5% | 212 円53 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,663 円662 億円 | 479 円119 億円 | +4.2% | +0.4% | 565 円141 億円 |
| 中立 | 40% | 2,092 円520 億円 | 366 円91 億円 | −18.5% | −2.0% | 983 円244 億円 |
| やや悲観 | 25% | 762 円189 億円 | 294 円73 億円 | −65.0% | −10.0% | 264 円66 億円 |
| 悲観 | 12% | 443 円110 億円 | 64 円16 億円 | −83.2% | −16.3% | 61 円15 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,739 円432 億円 | 346 円86 億円 | −30.8% | −3.6% | 2,085 円518 億円 |
今の株価時価総額 3,015 円749 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 5% 運賃の転嫁が進み、中計の営業利益率3.5%を超える 利益 65 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 3,584 円891 億円
2024年問題が長く続き、荷主は物流会社に選ばれる立場になる。キユーソーは共同配送の網と温度帯別の保管を武器に、運賃を人件費の上げ幅より多く通す。共同物流の営業利益率は3%台に乗る。
食品メーカーの物流再編が進み、F-LINEと並ぶ受け皿として、荷主の集約を取り込む。専用物流もコンビニ以外の小売の受託を広げ、取扱量を守る。
海外は、インドの低温物流が全国の網に広がり、インドネシアの倉庫・フォワーディングも伸びる。関連事業の営業利益率は5%に近づく。三菱倉庫との提携が深まり、低温物流の共同事業まで進む。
それでも事業は設備と人手の重い構造のままだ。営業利益は10年で2倍強の120億円。ROEは8%に迫るが、資本コストには届かない。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の74億円が10年後に約 86億円(物価で一律に増やすと約 70億円)。営業利益は +16億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 3億円(3.5%)を純利益から引いた。
- 共同物流事業:数量 486(取扱量(万トン・年、保管と配送をまとめた推定値))× 価格 4.20(万円/トン(保管・荷役・配送を合わせた実効単価))→ 売上 2,043 億円・営業利益 81 億円。数量 1.08 倍・価格 1.38 倍・営業利益率4%・償却は物価で増やさず按分(10年後 86億円)
- 専用物流事業:数量 140(処理量(万トン・年、センターで扱う荷物の推定値))× 価格 3.93(万円/トン(受託運営の実効単価))→ 売上 551 億円・営業利益 25 億円。数量 1.00 倍・価格 1.38 倍・営業利益率 4.5%
- 関連事業:数量 170(取扱量(万トン換算・年、販売量と海外の物流量を合わせた推定値))× 価格 3.53(万円/トン換算(販売と物流を合わせた実効単価))→ 売上 601 億円・営業利益 30 億円。数量 1.70 倍・価格 1.38 倍・営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 65 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 13.75 倍、時価総額 900 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:楽観は、人手不足で値上げが通り続け、海外が育ち、営業利益率が過去10年の最高3.2%を大きく超える筋書きで、同時に3つが揃う必要がある。過去に一度も届いていない水準なので5%に絞った。
やや楽観 18% 値上げが定着し、利益率が緩やかに上がる 利益 51 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,663 円662 億円
運賃の値上げが人件費の上昇をわずかに上回る状態が続く。共同物流の営業利益率は2.8%まで上がり、専用物流は4%、関連事業は4.6%になる。
共同物流の取扱量は、荷主の集約を取り込んでわずかに増える。専用物流はコンビニの店数の頭打ちで減る。海外の量はインドの上乗せで1.45倍になる。
営業利益は約100億円。中計の73.5億円を超えるが、物価の分を引くと実質の伸びは小さい。純利益は金利の上昇で削られ、44億円にとどまる。ROEは6%台で、資本コストの8%には届かない。
利益の質は、運賃交渉の力に頼る点で弱い。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の74億円が10年後に約 86億円(物価で一律に増やすと約 71億円)。営業利益は +15億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 4億円(3.5%)を純利益から引いた。
- 共同物流事業:数量 468(取扱量(万トン・年、保管と配送をまとめた推定値))× 価格 4.14(万円/トン(保管・荷役・配送を合わせた実効単価))→ 売上 1,939 億円・営業利益 69 億円。数量 1.04 倍・価格 1.36 倍・営業利益率3.6%・償却は物価で増やさず按分(10年後 86億円)
- 専用物流事業:数量 137(処理量(万トン・年、センターで扱う荷物の推定値))× 価格 3.88(万円/トン(受託運営の実効単価))→ 売上 532 億円・営業利益 21 億円。数量 0.98 倍・価格 1.36 倍・営業利益率 4.0%
- 関連事業:数量 145(取扱量(万トン換算・年、販売量と海外の物流量を合わせた推定値))× 価格 3.48(万円/トン換算(販売と物流を合わせた実効単価))→ 売上 505 億円・営業利益 23 億円。数量 1.45 倍・価格 1.36 倍・営業利益率 4.6%
倍率:事業の純利益 51 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 665 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の最終年度の営業利益率3.5%に近い水準まで上がり、海外の伸びが国内の減少を補う筋書き。値上げの定着は2025年の実績に表れており、5割に近い確率を置くほどではないが、中立と並ぶ重さを持たせた。
中立 40% 中立:薄い利益率のまま、名目で伸びる 利益 40 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,092 円520 億円
10年後も、キユーソーは食品物流の安定した会社として残る。共同物流の量は人口減と荷主の集約が相殺して横ばい、価格は物価並みに上がる。
営業利益率は、2024年問題の値上げが定着して2.9%に上がる。中計の目標3.5%には届かない。運賃を上げても、運転手と倉庫の人件費がそれに近い速さで上がるからだ。専用物流はコンビニの出店の頭打ちで量が減る。関連事業は海外の伸びで1.25倍になる。
営業利益は約82億円。金利の上昇で純利益は約35億円どまりだ。配当性向は3割まで上げるが、自己資本は648億円に積み上がり、ROEは5%台のまま。資本コストの8%に届かない事業として、安定はするが価値は増えない。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の74億円が10年後に約 86億円(物価で一律に増やすと約 73億円)。営業利益は +13億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 6億円(3.5%)を純利益から引いた。
- 共同物流事業:数量 455(取扱量(万トン・年、保管と配送をまとめた推定値))× 価格 4.08(万円/トン(保管・荷役・配送を合わせた実効単価))→ 売上 1,856 億円・営業利益 58 億円。数量 1.01 倍・価格 1.34 倍・営業利益率3.1%・償却は物価で増やさず按分(10年後 86億円)
- 専用物流事業:数量 134(処理量(万トン・年、センターで扱う荷物の推定値))× 価格 3.82(万円/トン(受託運営の実効単価))→ 売上 513 億円・営業利益 19 億円。数量 0.96 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 3.7%
- 関連事業:数量 125(取扱量(万トン換算・年、販売量と海外の物流量を合わせた推定値))× 価格 3.43(万円/トン換算(販売と物流を合わせた実効単価))→ 売上 429 億円・営業利益 18 億円。数量 1.25 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 4.2%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 523 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人口減の需要と物価並みの価格、わずかな利益率の回復という、業種の中心の置き方に沿う。過去10年のROE中央値5.4%に近い結果になる。もっとも起きやすい筋書きなので4割。
やや悲観 25% 荷主の集約が進み、運賃が人件費に追いつかない 利益 23 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 762 円189 億円
人手不足で人件費が上がり続け、運賃の上げ幅がそれに追いつかない。共同物流の営業利益率は、過去の谷に近い1.9%にとどまる。
食品メーカーの物流の共同化が進み、F-LINEのような連合が受け皿になる。共同物流の量は5%減る。専用物流は大手コンビニの物流の変更で契約が減り、処理量が12%減る。
関連事業は海外が小さく、国内の販売は横ばいだ。営業利益は10年たっても約56億円と、今とほぼ変わらない。物価の分を引くと、実質の利益は4分の3に減る。
金利は上がり、利払いが約10億円増える。純利益は約20億円。ROEは3%台に落ちる。借金の返済と設備更新で配当は伸びない。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の74億円が10年後に約 86億円(物価で一律に増やすと約 76億円)。営業利益は +10億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 8億円(3.5%)を純利益から引いた。
- 共同物流事業:数量 428(取扱量(万トン・年、保管と配送をまとめた推定値))× 価格 3.96(万円/トン(保管・荷役・配送を合わせた実効単価))→ 売上 1,693 億円・営業利益 42 億円。数量 0.95 倍・価格 1.30 倍・営業利益率2.5%・償却は物価で増やさず按分(10年後 86億円)
- 専用物流事業:数量 123(処理量(万トン・年、センターで扱う荷物の推定値))× 価格 3.65(万円/トン(受託運営の実効単価))→ 売上 449 億円・営業利益 13 億円。数量 0.88 倍・価格 1.28 倍・営業利益率 2.8%
- 関連事業:数量 105(取扱量(万トン換算・年、販売量と海外の物流量を合わせた推定値))× 価格 3.33(万円/トン換算(販売と物流を合わせた実効単価))→ 売上 349 億円・営業利益 11 億円。数量 1.05 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 3.2%
倍率:この筋書きは稼ぐ力(純利益÷k)で測る。事業の ROE 3.9% は資本コスト 7.75% より大きく下で、上限は 1÷k=12.5 倍だが、7 割へは引き上げず構造の弱さを映して 8.0 倍に置いた。
確率:借金の重さと人手不足の長期化から、中立より重い確率を置いた。F-LINEのような連合が広がり、共同物流の量と値段が削られる筋書きは、足元でも起きている動きの延長線にある。
悲観 12% 構造的に荷主を失い、設備と借金だけが残る 利益 −4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 443 円110 億円
メーカーの物流の共同化が一気に進み、キユーソーの共同物流は荷主を失う。専用物流も、大手コンビニが物流を自社と他の会社に振り分け、受託が減る。
人手不足は続き、運賃は上がるが、人件費の上昇がそれ以上に速い。営業利益率は1%台まで落ちる。取扱量は共同物流で15%、専用物流で25%減り、固定費の重い設備が余る。
金利は上がり、利払いは約10億円増える。営業利益は約24億円、純利益はほぼ出ず、設備の減損も出る。配当は絞られる。
事業は残るが、稼ぐ力は借金と設備を支えるのに足りない。資産を売っても借金を返して残る額は小さい。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の74億円が10年後に約 86億円(物価で一律に増やすと約 83億円)。営業利益は +3億円。建築費の上昇で膨らむ投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 13億円(3.5%)を純利益から引いた。
- 共同物流事業:数量 383(取扱量(万トン・年、保管と配送をまとめた推定値))× 価格 3.66(万円/トン(保管・荷役・配送を合わせた実効単価))→ 売上 1,398 億円・営業利益 17 億円。数量 0.85 倍・価格 1.20 倍・営業利益率1.2%・償却は物価で増やさず按分(10年後 86億円)
- 専用物流事業:数量 105(処理量(万トン・年、センターで扱う荷物の推定値))× 価格 3.42(万円/トン(受託運営の実効単価))→ 売上 359 億円・営業利益 5 億円。数量 0.75 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 1.5%
- 関連事業:数量 90.0(取扱量(万トン換算・年、販売量と海外の物流量を合わせた推定値))× 価格 3.20(万円/トン換算(販売と物流を合わせた実効単価))→ 売上 288 億円・営業利益 4 億円。数量 0.90 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 1.5%
倍率:この筋書きは純利益 3 億円で、稼ぐ力は 40 億円に届かない。売れる資産で測る:総資産約 1,370 億円のうち、固定資産約 1,040 億円を 7 割、流動資産約 330 億円を 9 割で売ると約 1,020 億円、負債約 920 億円を返して残る約 110 億円を床に置いた(回収率は筆者の推定)。今の自己資本 453 億円に対し約 0.24 倍。EV÷営業利益で見ると(110+390)÷24 ≒ 21 倍と低くはなく、借金の重さを引いた後の床なので甘くない(回収率が低ければさらに下がる)。
確率:荷主離れと人手不足、金利の上昇が同時に起きる筋書き。借金が自己資本に迫るので、一度利益が崩れると立て直しに時間がかかる。10年で見て起こりうる事態として、12%の確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
共同物流事業
食品メーカーの商品を預かり、混載して全国の小売店へ届ける。食用油・食酢のタンクローリー輸送も含む。
| 数量取扱量(万トン・年、保管と配送をまとめた推定値) | 価格万円/トン(保管・荷役・配送を合わせた実効単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 450 | 3.05 | 1,371 | 30 |
| 10 年後 中立 | 455 | 4.08 | 1,856 | 58 |
取り方:2025年11月期の共同物流の外部売上1,371億円、営業利益29.6億円(営業利益率2.2%)。取扱量は開示がないので、保管と配送を合わせた平均の単価を3万円/トン前後と置いて逆算した推定。人口減で量は横ばい、物価の分は価格に入れる。
専用物流事業
コンビニなどの物流センターを受託して運営する。サンファミリー、アクシアロジが担う。
| 数量処理量(万トン・年、センターで扱う荷物の推定値) | 価格万円/トン(受託運営の実効単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 140 | 2.85 | 399 | 15 |
| 10 年後 中立 | 134 | 3.82 | 513 | 19 |
取り方:2025年11月期の専用物流の外部売上399億円、営業利益14.5億円(営業利益率3.6%)。処理量は開示がなく、単価を2.85万円/トン前後と置いた推定。コンビニの店数の頭打ちで量は減る方向、単価は人件費に連れて上がる。
関連事業
国内の車両・物流機器・燃料の販売と、中国・インドネシア・インドの倉庫・輸配送。
| 数量取扱量(万トン換算・年、販売量と海外の物流量を合わせた推定値) | 価格万円/トン換算(販売と物流を合わせた実効単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 100 | 2.56 | 256 | 12 |
| 10 年後 中立 | 125 | 3.43 | 429 | 18 |
取り方:2025年11月期の関連事業の外部売上は全社2,026億円から共同・専用を引いた約256億円、営業利益12.0億円。取扱量は販売と海外の量を合わせたトン換算の推定。インドの子会社は2026年9月に加わったので、今の数字に入らない(先方の売上は約16.6億円)。海外の量は伸びるが国内の販売は横ばい。
リスクと懸念
人件費が運賃の上げ幅を上回る
運転手の残業が年960時間までに制限され、運転手と倉庫の人手の賃金は上がり続ける。運賃の値上げが追いつかなければ、2.8%の営業利益率は簡単に1%台へ戻る。この事業は利益率が薄く、コストが1%ずれると営業利益が3割以上動く。
金利の上昇で純利益が削られる
純有利子負債は390億円で自己資本の0.86倍。借り換えのたびに金利が上がり、10年で利払いが約10億円増える見込みだ。営業利益が変わらなくても、純利益は2割から3割減る。今期の純利益が21億円と2割減る予想も、この影響を含む。
荷主の物流の共同化と自社化
食品メーカーが共同で物流会社を作る動きが広がる。味の素・ハウス食品・カゴメなどが出資するF-LINEが例だ。大手の荷主が物流をまとめて他社へ移せば、共同物流の量と値段が一度に削られる。最大の顧客である日本アクセスの売上は、すでに1年で約32億円減った。
専用物流の契約の集中
専用物流はコンビニなどの物流センターを丸ごと受託する。顧客の契約が更新されなかったり、顧客自身が運営方式を変えたりすれば、その分の売上が一度になくなる。2025年11月期の売上は0.3%減で、チェーン店の取引が減った。
大型投資の回収
中計は4年で400億円の設備投資を計画する。年あたり約100億円で、営業利益の約1.8倍にあたる。倉庫や車両の更新は必須だが、稼ぐ力が弱いままなら、投資が利益に変わらず、借金と減価償却だけが増える。
海外の買収の実行
2026年9月にインドの低温物流会社を27.5億円で取得した。先方の売上は約16.6億円、営業利益は約1.4億円で、取得額は、持分に応じた先方の営業利益の約38倍にあたる。許認可の遅れで手続きが延びた経緯があり、インドの事業環境や為替の読みを外せば、のれんの減損につながる。
新リース会計と固定の家賃
賃借の物流センターが多く、解約できない家賃が毎年の固定費になる。新リース会計基準が2028年11月期から入ると、貸借対照表に使用権資産とリース負債が載り、見かけの借金と自己資本比率が悪化する。利益の価値は変わらないが、借り入れの条件に響く可能性がある。
今後の分かれ目
- 共同物流の営業利益率が3%を超えたら
- 値上げが人件費の上昇を上回り続けている証拠。中立からやや楽観・楽観へ確率を移す。一過性の値上げか、取扱量の増えた分かを分けて見る。
- 日本アクセスやキユーピーなど大口の荷主が物流の委託先を変えたら
- 共同物流の量と値段が一度に削られる。やや悲観・悲観へ確率を移す。
- 10年国債の利回りが3%を超えて上がり続けたら
- 借り換えの金利が想定より高くなる。純利益はさらに削られ、中立の純利益を下方に直す。
- 三菱倉庫が持ち株を増やす、または経営統合の協議を始めたら
- 再編で価値が変わる可能性が出る。ただ買収の値段は事業の稼ぐ力で決まるので、価値の評価は利益の面で行う。確率の組み替えは慎重に。
- インドの子会社が営業利益率10%を超えて拡大したら
- 関連事業の数量の伸びが想定を超える。楽観側の確率を少し引き上げる。
- 2028年11月期の営業利益が中計の73.5億円に届いたら
- 中立の利益率の置き方(2.9%)を引き上げる。届かなければ、やや悲観の確率を厚くする。
見ておくもの
- 共同物流・専用物流の四半期ごとの営業利益率(値上げの浸透)
- 運転手・倉庫の賃金の上昇率と運賃の改定の差
- 日本アクセス・キユーピー向け売上の変化
- 純有利子負債と支払利息(借り換えの金利)
- インド子会社(コールドラッシュ)の売上・利益と、中計の2028年11月期目標(営業利益73.5億円)の進捗
倍率と資本コストの決め方
今の株価(PER で約29倍)には寄せず、セグメントごとの取扱量(推定)と名目の単価から利益を積んだ。倍率は PER の式の上限(ROE が資本コスト以下なので 1÷k=12.5 倍)の9割に置いた。利益率の薄さと交渉の弱さは k の値決め・借金で引いたので、二重には引かない(やや悲観だけは構造が弱まる筋書きとして上限の6割強)。資本コストは基本7.5%に、借金の重さの+0.5を中心にした合計+0.5%で8.0%。利払いの増加(10年で約10億円)は純利益に入れた。悲観は、稼ぐ力ではなく、固定資産と流動資産の回収率による売れる資産で測った(回収率は筆者の推定)。新リース会計(2028年11月期から)で営業利益と借金の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ、家賃を営業費用に入れる形でそろえた。再編の思惑(三菱倉庫・キユーピー)は価値に入れていない。持ち合い株の評価差額金12億円(有報、税後)は半分の戻り方で余った現金に足した。賃貸等不動産は注記が省かれる規模で、含み益は入れていない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.5% を足した 8.0%。事業は傾いておらず、extra は置かない。三井倉庫 HD・住友倉庫と同じ +0.5。三菱倉庫は借金が軽く、澁澤倉庫は景気に連なる度合いが高いため、その間に置く。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.75%。