結論
トレーディアは、大阪・神戸を地盤に、輸出入の通関と国際輸送を請け負う会社だ。船も大きな倉庫も持たず、荷主から貨物を集めて船会社に運ばせる仲介業にあたる。営業収入は 164 億円で、営業利益は 2.3 億円と薄い。
筆者の結論は、本質価値は今の時価総額をやや下回る、というものだ。事業の利益は薄いが、上場株式を 29 億円持ち、配当が営業外の利益を支えている。純利益は 3.6 億円で、時価総額の 1 割を超える。
最大の気がかりは、売上の半分が中国向けという偏りだ。日中の関係が荒れれば、取扱量は大きく動く。
借入は 46 億円ほどあり、財務制限条項も付いている。
10 年後の中立では、利益はゆるやかに増える。ただ資本の稼ぐ力は資本コストに届かず、安全域を取れるほど安くはない。
安さの理由は、事業の強さではなく、保有株と自己資本の厚さにある。この違いを、読む人には見分けてほしい。
10 年先を見ても、利益がどこまで本業から出るかが、評価の分かれ目になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は、安全域が厚いとは言えないが、見かけほど悪くもない。事業の利益は薄く、国際輸送の仲介は堀が浅い。
一方で、保有株の約 29 億円と、毎年の配当収入が利益を支えている。借入約 46 億円と保有株 29 億円、現金 10 億円を差し引くと、実質の借金はわずかだ。
気がかりは資本の使い方だ。稼いだ利益の多くは、事業に再投資されるより、保有株と倉庫の改修にたまっている。資本の稼ぎは資本コストを下回る。
それでも、時価総額が自己資本の 4 割という値段は、悲観をかなり織り込んでいる。ただ安さの理由である中国偏重を、筆者は軽くは見ない。持つなら小さく、日中の関係に注意しながら持つ。
配当は払われるが、その多くは営業外の収益から出ている。
この会社を持つ意味は、安く買える資産にあり、事業の成長にはない。
何で稼ぐ会社か
事業は国際物流の仲介だ。部門は 4 つある。国際部門が売上の約半分で、海外からの貨物を運ぶ国際輸送を請け負う。輸入部門が 3 割で、輸入貨物の通関や港での取扱を担う。輸出部門は 2 割弱で、輸出の書類作成、通関、船積みを手がける。
倉庫部門は、自社の倉庫の一部の賃貸で、売上は 0.5 億円と小さい。利益率は高く、利益のほぼ全額が残る。
顧客は機械メーカー、商社、小売業が中心で、輸出は上位 10 社で売上の 6 割近くを占める。中国関連は売上の約半分に及ぶ。従業員は 308 人で、平均年収は 580 万円台だ。
もとは 1941 年に創業した大日通運で、1994 年に今の社名になった。2011 年にトランコムと資本業務提携を結んでいる。
顧客の多くは関西の荷主で、神戸・大阪の港との関係が深い。売上には船会社に払う運賃が含まれるので、売上は大きいが粗利益は 6% 台と薄い。
営業利益率は 1% 台で、運賃が上がっても下がっても、手数料と粗利の差し引きが利益の大半を決める。人件費の上昇は価格に移しにくい。
優良さと弱いところ
優良さは中程度より下だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、通関や港湾の免許と、長く付き合う荷主との信頼にある。ただ国際輸送の仲介は、荷主が船会社と直接結べば不要になる。値段は運賃市況と競合で決まり、会社が決めにくい。
資本の効率は低い。営業利益率は 12 年の最高でも 2% 台で、ROE は 12 年のうち 5 期で 5% を下回った。直近の ROE は 6% だが、純利益は営業利益の 1.5 倍で、保有株の配当などの営業外の収益に支えられている。
強みは、経営が堅実で、赤字を出す年が少ないこと。最近の赤字は 2009 年 3 月期が最後だ。
10 年のあいだ、営業利益は薄いながらも黒字を守ってきた。弱みは、取引の中国偏重と、立替金(約 8 億円)という貸倒れのリスクを抱えること。資金は借入に頼り、財務制限条項が付いている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の国際物流は、輸出入のコンテナ量が横ばいで、運賃が市況で動く。国内港湾のコンテナ取扱量は 2024 年に 2,198 万 TEU で、前年比 0.9% 増だった。数量が伸びない中で、運賃と手数料が収益を決める。
荷主の調達は、中国から東南アジアやインドへ分散している。日中の関係が冷えれば、中国向けの取扱量は短期で動く。会社の売上の半分が中国向けで、他の物流会社と比べて偏りが大きい。
フォワーダーの業界には、日本通運や郵船ロジスティクスなどの大手がある。大手は世界の拠点網とデジタルの仲介で勝つ。トレーディアのような地域の中堅は、関西の荷主との関係で戦う。
デジタルの運賃比較サービスが広がれば、仲介の取り分は下がる圧力を受ける。
国内では、トラックの 2024 年問題で陸送の費用が上がり、通関と運送の一貫請負の費用も押し上げられる。荷主はその上昇分を受け入れるかどうかを、仲介会社ごとに比べる。人件費と倉庫費用は物価で上がり、価格に移せるかが利益率を決める。
輸入貨物の取扱では、関西の港は東京港や横浜港と比べて貨物量が小さく、規模の経済が働きにくい。
資本政策と M&A
配当は安定的な配分を方針とし、前期の配当性向は 2 割ほどだった。自己資本比率は 44% で、増えた利益は主に内部にたまっている。
上場株式を 122 銘柄、約 29 億円持つ。最大は三菱 UFJ(12 億円)、丸紅(7 億円)、豊田通商(5 億円)。時価総額を上回る額だが、借入と相殺して考えるべき資産だ。
借入は、コミットメントライン 14 億円とシンジケートローン約 15 億円が柱で、前期は倉庫の改修に約 15 億円を投じた。財務制限条項は、純資産の維持、経常損益の 2 期連続赤字の回避、有利子負債 55 億円以下だ。
TOB や、提携先による再編の可能性は残る。ただし足元で動きはない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額は自己資本の 4 割にすぎない。純利益 3.6 億円に対して、時価総額は 24 億円で、利益の 7 倍に届かない。上場株式を 29 億円持ち、配当が毎年の利益を支える。保有株を売れば、借入の大半を返せる。
自己資本比率も 44% あり、1 つの悪い期で傷む水準ではない。
事業は堅実だ。営業利益は 12 年とも黒字で、最近の営業総利益は 4.4% 増えた。会社は今期、営業利益を 4 億円に戻す計画で、改修した六甲の倉庫が賃貸で稼ぎ始める。
荷主との取引は長く、通関と運送の一貫した請負は、小さな荷主には便利だ。中国向けの取扱量が保たれれば、利益は着実に積み上がる。財務制限条項にも、今の利益では余裕がある。
保有株の含み益、倉庫の土地、安定した配当収入が、悲観の筋書きでも底を支える。
経営は借入を増やして倉庫の改修に投じ、賃貸という新しい収益の柱を作ろうとしている。投資が実れば、今の営業利益は低すぎる評価になる。
慎重な見方
売上の半分が中国向けで、上位 10 社が輸出の 6 割近くを占める。日中の関係が荒れる、あるいは荷主が調達先を分散すれば、利益は短期で消える。営業利益率は 1.4% しかなく、運賃の下落や手数料の値下げに耐える余裕がない。
純利益の大半は、営業外の収益だ。営業利益は 2.3 億円で、純利益の 3.6 億円との差は保有株の配当などによる。事業の稼ぐ力は営業利益で測るべきだ。
営業収入に占める運賃の比率が高く、運賃の動きで売上と見かけの利益率が振れる。売上を基準にした指標では、実力が見えにくい。
借入は 46 億円ほどで、財務制限条項が付く。経常損益の 2 期連続赤字や、純資産の維持に触れれば、返済を迫られる。立替金の約 8 億円も、貸倒れのリスクがある。
資本の稼ぎは資本コストに届かず、ためた利益は額面の価値を持たない。
さらに、保有株の評価益は市場の動き次第で、現金のように使えるとは限らない。
どちらに重みを置いたか
安さの中身は、事業の強さでなく、保有株と自己資本の厚さだ。中国偏重と財務制限条項は重く、慎重な側の言い分がやや強い。やや悲観と悲観の確率を合わせて 4 割弱に置いた。ただ強気の側の指摘のとおり、保有株の価値と配当収入は悲観の底を支える。結果として、本質価値は今の時価総額の 8 割ほどに収まった。
中立の確率は 37%、悲観側は合わせて 37% に置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,733 円40 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 506 円7 億円)。 今の値に割り戻すと 1,453 円21 億円、今との差 −10.5%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 9.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,549 円67 億円 | 999 円15 億円 | +241.7% | +13.1% | 388 円6 億円 |
| やや楽観 | 19% | 3,826 円56 億円 | 750 円11 億円 | +181.8% | +10.9% | 869 円13 億円 |
| 中立 | 37% | 3,175 円47 億円 | 539 円8 億円 | +128.7% | +8.6% | 1,374 円20 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,982 円29 億円 | 312 円5 億円 | +41.3% | +3.5% | 574 円8 億円 |
| 悲観 | 12% | 143 円2 億円 | 132 円2 億円 | −83.0% | −16.3% | 33 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,733 円40 億円 | 506 円7 億円 | +99.4% | +7.1% | 3,238 円47 億円 |
今の株価時価総額 1,624 円24 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 中国との貿易が保たれ、倉庫の賃貸が上乗せになる 利益 6 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 4,549 円67 億円
日中の貿易は 10 年間、大きな摩擦なく続く。中国発の輸入は衣類・雑貨に加えて、EC 向けの小口の荷物が伸び、国際輸送の取扱量が 1 割増える。会社は荷主との長い取引を生かして、通関と運送をまとめて請け負い、粗利益を厚くする。
六甲の物流センターは、定温倉庫としての改修が成功し、高い賃料で埋まる。倉庫の賃貸は年 1.2 億円の利益を生む。
営業利益は今の 2.6 倍の 6 億円台になる。
ただ、そこまで条件がそろう確率は低い。保有株の配当も増え、利益は 6 億円を超える。それでも ROE は資本コストに届かない。
- 輸出部門:数量 20.6(年間の取扱(千 TEU 相当、推定))× 価格 1.78(1 千 TEU あたりの営業収入(億円。手数料と運賃の上昇で物価並みに上がる))→ 売上 37 億円・営業利益 1 億円。輸出の取扱(千 TEU 相当、推定) 20.6、単価は今の 1.37 倍、営業利益率 2.8%
- 輸入部門:数量 30.1(年間の取扱(千 TEU 相当、推定))× 価格 2.18(1 千 TEU あたりの営業収入(億円))→ 売上 66 億円・営業利益 1 億円。輸入の取扱(千 TEU 相当、推定) 30.1、単価は今の 1.36 倍、営業利益率 1.2%
- 国際部門:数量 37.2(年間の取扱(千 TEU 相当、推定))× 価格 3.40(1 千 TEU あたりの営業収入(億円。運賃を含む))→ 売上 126 億円・営業利益 2 億円。国際輸送の取扱(千 TEU 相当、推定) 37.2、単価は今の 1.36 倍、営業利益率 1.9%
- 倉庫の賃貸:数量 6.0(賃貸の面積(千㎡、推定))× 価格 0.24(1 千㎡あたりの年間賃料(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。賃貸倉庫の面積(千㎡、推定) 6.0、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 92.0%
- その他:数量 25.0(受託の案件数(推定))× 価格 0.13(1 件あたりの営業収入(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。受託の案件数(推定) 25.0、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 18.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 67 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:日中の貿易が荒れずに続き、倉庫の投資が計画どおり利益に乗り、さらに運賃が追い風になる、という条件の重なりが必要で、少数に置く。
やや楽観 19% 貿易は横ばい、倉庫の新しい収益が加わる 利益 5 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 3,826 円56 億円
日本の輸入コンテナの量は横ばいに近く、国際輸送は 5% ほど増える。通関と運送の手数料は物価並みに上がり、粗利益率は少しずつ改善する。
倉庫の賃貸は年 1 億円の利益に育つ。荷主の上位 10 社との取引は続き、中国向けの比率は 4 割台に下がる。
営業利益は 5 億円前後になる。会社の計画の営業利益率 2% を、10 年かけて実現する形だ。保有株の配当は名目で横ばいに近い。
中国向けの比率が下がっても、東南アジア向けで同じ利益率を保てる。ただ新しい航路の開拓には、人と時間がかかる。倉庫の賃貸は、荷主との関係の深さを活かして埋まる。
- 輸出部門:数量 20.2(年間の取扱(千 TEU 相当、推定))× 価格 1.75(1 千 TEU あたりの営業収入(億円。手数料と運賃の上昇で物価並みに上がる))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。輸出の取扱(千 TEU 相当、推定) 20.2、単価は今の 1.35 倍、営業利益率 2.4%
- 輸入部門:数量 29.2(年間の取扱(千 TEU 相当、推定))× 価格 2.16(1 千 TEU あたりの営業収入(億円))→ 売上 63 億円・営業利益 1 億円。輸入の取扱(千 TEU 相当、推定) 29.2、単価は今の 1.35 倍、営業利益率 0.9%
- 国際部門:数量 35.5(年間の取扱(千 TEU 相当、推定))× 価格 3.37(1 千 TEU あたりの営業収入(億円。運賃を含む))→ 売上 120 億円・営業利益 2 億円。国際輸送の取扱(千 TEU 相当、推定) 35.5、単価は今の 1.35 倍、営業利益率 1.6%
- 倉庫の賃貸:数量 5.2(賃貸の面積(千㎡、推定))× 価格 0.24(1 千㎡あたりの年間賃料(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。賃貸倉庫の面積(千㎡、推定) 5.2、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 91.0%
- その他:数量 22.0(受託の案件数(推定))× 価格 0.13(1 件あたりの営業収入(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。受託の案件数(推定) 22.0、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 15.0%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 56 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社は今期、営業利益を 4 億円に戻す計画で、投資した倉庫が利益に乗ってくる時期でもある。計画に近い姿を、一定の確率で置く。
中立 37% 貿易は横ばい、粗利益は物価並みに増える 利益 4 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 3,175 円47 億円
日本の輸入コンテナは、人口減と中国からの調達の分散で、10 年で 1 割ほど減る。輸出は微減にとどまる。国際輸送は取扱量を保つ。通関と運送の手数料は物価並みに上がり、営業収入は 210 億円台になる。
倉庫の賃貸は、改修した六甲の倉庫が稼働し、年 1 億円ほどの利益を生む。営業利益率は 1.8% で、過去 12 年の山の 2.2% を下回る。
営業外の収益は、保有株の配当などで続く。ただし借入の金利が上がり、その分が差し引かれる。
配当は 2 割台の性向で続き、残りは自己資本に積み上がる。自己資本は厚くなるが、ROE は資本コストに届かない。
- 輸出部門:数量 20.0(年間の取扱(千 TEU 相当、推定))× 価格 1.74(1 千 TEU あたりの営業収入(億円。手数料と運賃の上昇で物価並みに上がる))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。輸出の取扱(千 TEU 相当、推定) 19.9、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 2.0%
- 輸入部門:数量 27.9(年間の取扱(千 TEU 相当、推定))× 価格 2.15(1 千 TEU あたりの営業収入(億円))→ 売上 60 億円・営業利益 0 億円。輸入の取扱(千 TEU 相当、推定) 27.9、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 0.5%
- 国際部門:数量 33.8(年間の取扱(千 TEU 相当、推定))× 価格 3.35(1 千 TEU あたりの営業収入(億円。運賃を含む))→ 売上 113 億円・営業利益 1 億円。国際輸送の取扱(千 TEU 相当、推定) 33.8、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 1.3%
- 倉庫の賃貸:数量 4.5(賃貸の面積(千㎡、推定))× 価格 0.24(1 千㎡あたりの年間賃料(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。賃貸倉庫の面積(千㎡、推定) 4.5、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 90.0%
- その他:数量 20.0(受託の案件数(推定))× 価格 0.13(1 件あたりの営業収入(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。受託の案件数(推定) 20.0、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 14.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.7% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 46 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上の半分が中国向けで、取引先の上位 10 社に偏る事業構造は、先の読みにくさを生む。それでも会社は営業利益率 2% 前後を保っており、平常の姿を最も厚く置く。
やや悲観 25% 中国向けの縮小と運賃の下落で粗利が削られる 利益 2 億円 · PER 7.8 倍 · 株価時価総額 1,982 円29 億円
日中の関係が冷え、中国からの輸入が 2 割以上減る。荷主が調達先を東南アジアやインドに移し、会社の得意な航路の取扱量が落ちる。
海上運賃の下落で営業収入が減り、通関と運送の手数料も値下げ圧力を受ける。輸入部門の赤字が拡大し、営業利益率は 1% を切る。
倉庫の賃貸は保てるが、会社全体を支えるほど大きくない。借入の金利が 3.5% 前後に上がり、利益は営業外で削られる。
配当は 1 割台に縮み、倉庫の改修で増えた借入の返済が先に立つ。保有株の配当も、銘柄の入れ替えで減る年が出る。
船会社との条件も悪化し、仲介としての取り分が薄くなる。
- 輸出部門:数量 17.9(年間の取扱(千 TEU 相当、推定))× 価格 1.66(1 千 TEU あたりの営業収入(億円。手数料と運賃の上昇で物価並みに上がる))→ 売上 30 億円・営業利益 0 億円。輸出の取扱(千 TEU 相当、推定) 17.8、単価は今の 1.28 倍、営業利益率 1.2%
- 輸入部門:数量 23.8(年間の取扱(千 TEU 相当、推定))× 価格 2.05(1 千 TEU あたりの営業収入(億円))→ 売上 49 億円・営業利益 0 億円。輸入の取扱(千 TEU 相当、推定) 23.8、単価は今の 1.28 倍、営業利益率 -0.3%
- 国際部門:数量 28.7(年間の取扱(千 TEU 相当、推定))× 価格 3.20(1 千 TEU あたりの営業収入(億円。運賃を含む))→ 売上 92 億円・営業利益 1 億円。国際輸送の取扱(千 TEU 相当、推定) 28.7、単価は今の 1.28 倍、営業利益率 0.8%
- 倉庫の賃貸:数量 3.5(賃貸の面積(千㎡、推定))× 価格 0.23(1 千㎡あたりの年間賃料(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。賃貸倉庫の面積(千㎡、推定) 3.5、単価は今の 1.30 倍、営業利益率 85.0%
- その他:数量 17.0(受託の案件数(推定))× 価格 0.13(1 件あたりの営業収入(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。受託の案件数(推定) 17.0、単価は今の 1.30 倍、営業利益率 10.0%
倍率:ROE 2.9% が k 9.25% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER は 1÷k=11.1 倍。純有利子負債 35 億円を足した EV ÷ 営業利益は 29 倍と高く、利益の倍率だけで割安とは言えない。利益が薄く、上限の 7.0 割の 7.8 倍に置いた。
確率:売上の半分が中国向けという偏りは大きい。貿易の摩擦、調達先の分散、運賃の下落が重なる確率は、物流の他社より高いとみる。
悲観 12% 中国向けの崩れと荷主の直取引で、仲介の価値が消える 利益 0 億円 · PER 7.8 倍 · 株価時価総額 143 円2 億円
中国との貿易が構造的に縮み、輸入・国際の取扱量が半分近くに落ちる。荷主は船会社やデジタル仲介と直接契約し、通関と運送の手数料だけでは固定費を賄えない。
営業利益は赤字に沈み、経常利益も 2 期続けて赤字になる。借入には経常損益の 2 期連続赤字を避ける条項があり、条件の見直しや返済の前倒しを迫られる。
保有株を売って資金を作るが、配当収入も減る。立替金の貸倒れが追い打ちになり、株主への還元は途絶える。
最後に残るのは、保有株と倉庫の土地、そして通関の免許だけだ。
従業員は 3 割ほど減り、拠点の統合が進むが、退職金などの費用が先に出ていく。
- 輸出部門:数量 12.6(年間の取扱(千 TEU 相当、推定))× 価格 1.56(1 千 TEU あたりの営業収入(億円。手数料と運賃の上昇で物価並みに上がる))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。輸出の取扱(千 TEU 相当、推定) 12.6、単価は今の 1.20 倍、営業利益率 0.0%
- 輸入部門:数量 17.4(年間の取扱(千 TEU 相当、推定))× 価格 1.92(1 千 TEU あたりの営業収入(億円))→ 売上 34 億円・営業利益 0 億円。輸入の取扱(千 TEU 相当、推定) 17.4、単価は今の 1.20 倍、営業利益率 -1.0%
- 国際部門:数量 20.3(年間の取扱(千 TEU 相当、推定))× 価格 3.00(1 千 TEU あたりの営業収入(億円。運賃を含む))→ 売上 61 億円・営業利益 0 億円。国際輸送の取扱(千 TEU 相当、推定) 20.3、単価は今の 1.20 倍、営業利益率 -0.3%
- 倉庫の賃貸:数量 3.0(賃貸の面積(千㎡、推定))× 価格 0.22(1 千㎡あたりの年間賃料(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。賃貸倉庫の面積(千㎡、推定) 3.0、単価は今の 1.20 倍、営業利益率 80.0%
- その他:数量 12.0(受託の案件数(推定))× 価格 0.12(1 件あたりの営業収入(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。受託の案件数(推定) 12.0、単価は今の 1.20 倍、営業利益率 5.0%
倍率:ROE 0.4% が k 9.25% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER は 1÷k=11.1 倍。優位を失った後は、市場の稼ぎでなく稼ぐ力(純利益÷k)で測り、上限の 7.0 割の 7.8 倍に置いた。
確率:中国向けの大幅な縮小と、荷主が船会社と直接契約する流れが同時に進む複合の筋書き。財務制限条項に触れるおそれもあり、確率を 1 割強に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
輸出部門
輸出の書類作成、通関、港での船積みの請負。
| 数量年間の取扱(千 TEU 相当、推定) | 価格1 千 TEU あたりの営業収入(億円。手数料と運賃の上昇で物価並みに上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 21.0 | 1.30 | 27 | 1 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 1.74 | 35 | 1 |
取り方:取扱量(TEU)は開示されないので、営業収入 27.25 億円を 1 TEU あたり約 13 万円と推定して約 2.1 万 TEU とした(推定)。数量は日本の輸出入コンテナ量に連動し、横ばい〜微減を中立にした。
輸入部門
輸入貨物の通関、港での取扱、運送の請負。
| 数量年間の取扱(千 TEU 相当、推定) | 価格1 千 TEU あたりの営業収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 31.7 | 1.60 | 51 | 0 |
| 10 年後 中立 | 27.9 | 2.15 | 60 | 0 |
取り方:営業収入 50.77 億円を 1 TEU あたり約 16 万円と推定して約 3.2 万 TEU とした(推定)。人口減と中国からの調達の分散で、10 年で 0.9 倍前後を中立にした。
国際部門
海上コンテナの国際輸送の仲介。中国関連が営業収入の 6 割超。
| 数量年間の取扱(千 TEU 相当、推定) | 価格1 千 TEU あたりの営業収入(億円。運賃を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 33.8 | 2.50 | 84 | 1 |
| 10 年後 中立 | 33.8 | 3.35 | 113 | 1 |
取り方:営業収入 84.48 億円を 1 TEU あたり約 25 万円(船会社に払う運賃を含む)と推定して約 3.4 万 TEU とした(推定)。運賃は市況で動くが、10 年で平均すれば物価並みに上がるとみた。
倉庫の賃貸
自社倉庫の一部の賃貸。2026/03 期に六甲物流センターの定温倉庫への改修に約 15 億円を投じた。
| 数量賃貸の面積(千㎡、推定) | 価格1 千㎡あたりの年間賃料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 0.18 | 1 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4.5 | 0.24 | 1 | 1 |
取り方:賃料収入 0.54 億円を、賃料 1 ㎡あたり年 1.8 万円と推定して約 3 千㎡とした(推定)。改修後の賃貸面積と賃料は未開示。
その他
システム開発の支援、損害保険の代理など。
| 数量受託の案件数(推定) | 価格1 件あたりの営業収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 17.0 | 0.10 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 0.13 | 3 | 0 |
取り方:営業収入 1.69 億円を 1 件約 1,000 万円と推定して 17 件とした(推定)。
リスクと懸念
中国向けの偏り
営業収入の約半分が中国関連で、国際部門では 6 割を超える。日中の関係の悪化や、荷主の調達先の分散で、取扱量は短期で大きく動く。他の物流会社より偏りが大きく、この会社の最大の弱点だ。
財務制限条項
借入には、純資産の維持、経常損益の 2 期連続赤字の回避、有利子負債 55 億円以下という条項が付く。業績が崩れた局面で返済の前倒しや条件の見直しを迫られる。
荷主の直取引
国際輸送の仲介は、荷主が船会社やデジタルの仲介と直接結べば不要になる。通関と運送の手数料は値下げ圧力を受けやすい。
立替金の貸倒れ
荷主のために港や船会社へ立て替える金が約 8 億円ある。取引先が倒れれば、貸倒れになる。上位の荷主への集中が、そのリスクを大きくする。
営業外の利益への依存
営業利益は 2.3 億円で、純利益 3.6 億円との差を保有株の配当などが埋める。配当が減れば利益の質は下がる。株価が下がれば含み損も出る。
運賃と為替
営業収入に運賃が含まれるため、海上運賃の動きで売上が大きく振れる。利益は手数料と粗利で決まるが、運賃の急落時は荷動きも弱く、利益が削られる。
今後の分かれ目
- 中国向けの比率が 4 割を切ったら
- 取引先の分散が進んだ合図で、悲観の確率を下げてよい。ただし東南アジア向けで同じ利益率を保てるかは別に確かめる。
- 営業利益率が 2 期続けて 2% を超えたら
- 六甲の倉庫と手数料の改善が構造に近づいた合図になる。中立の営業利益率を上げる材料だ。
- 経常損益が赤字に転じたら
- 財務制限条項に近づく。保有株の売却と借入の見直しが先に進み、株主の取り分は小さくなる。
- 保有株の売却や、増配が方針として出たら
- 資本の使い方が改善する合図になる。戻り方を 0.75 以上に引き上げる材料になる。
- 提携先や第三者が TOB を発表したら
- 自己資本の 4 割という時価総額と保有株が動機になりうる。買付価格を本質価値の前後で比べるだけで、筋書きの前提は変わらない。
見ておくもの
- 中国関連の営業収入の比率
- 営業利益率と、営業利益と純利益の差
- 借入の残高と財務制限条項の余裕
- 六甲の倉庫の賃貸収入と稼働
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や同業の倍率を見ず、ROE が資本コストに届かない会社の上限(1÷k)の何割かで置いた。中立の営業利益率は 1.8% と、過去 12 年の山の 2.2% を下回る。純利益÷営業利益は営業外の収益が名目で横ばいに近いため、営業利益が増える筋書きでは比が下がる。保有株は配当を利益に入れているので、余った現金として足していない。減価償却は取得時の値段のまま、改修した倉庫の分だけ新しい値段で足される。新リース会計は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→10.81 倍・やや楽観 PER 9.44→10.81 倍・中立 PER 8.89→10.81 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。